片信
著者名:有島武郎
三上氏が、僕のいったようなことをいう以上は、まず自分の生活をきれいに始末してからいうべきだと説いたのはごもっともで、僕は三上氏の問いに対してへこたれざるをえない。同時に三上氏もその詰問を他人に対して与えた以上は自分の立場についても立つべき所を求めなければならぬともおもう。すでに求め終わっているのなら幸甚である。
A兄
くたびれたろうな。もう僕も饒舌(じょうぜつ)はいいかげんにする。兄は僕が創作ができないのをどうしたというが、あの「宣言一つ」一つを吐き出すまでにもいいかげん胸がつかえていたのでできなかったのだ。僕の生活にも春が来たらあるいは何かできるかもしれない。反対にできないかもしれない。春が来たら花ぐらいは咲きそうなものだとは思っているが。
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