ひこうかばん
著者名:アンデルセンハンス・クリスチャン
「わたしは、トルコの神さまをおがんだよ。」と、ひとりがいいました。「目が星のように光って、ひげは、海のあわのように白い。」
「神さまは火のマントを着てとんでいらしった。」と、もうひとりがいいました。「それはかわらしい天使のお子が、ひだのあいだからのぞいていた。」
まったくむすこのきいたことはみんなすばらしいことばかりでした。さて、あくる日はいよいよ結婚式の当日でした。そこで、むすこは、ひとまず森にかえって、かばんのなかでひと休みしようとおもいました。――ところがどうしたということでしょう。かばんは、まる焼けになっていました。かばんのなかにのこっていた花火から火がでて、かばんを灰にしてしまったのです。
むすこはとぶことができません。もうおよめさんのところへいくこともできません。
およめさんは、一日、屋根のうえにたって待ちくらしました。たぶん、いまだに待っているでしょう。けれどむすこはあいかわらずお話をしながら、世界じゅうながれあるいていました、でも、マッチのお話のようなおもしろい話はもうつくれませんでした。
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