キモ姉&キモウトの小説を書こう! part23 at EROPARO
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350:名無しさん@ピンキー
09/09/10 19:23:26 7tt814/3
ところで『桔梗の剣』って何て読むん?

351:名無しさん@ピンキー
09/09/10 19:23:54 /3L2nCoX
ノスタルジアが待ち遠しい

352:名無しさん@ピンキー
09/09/10 19:24:52 ocnJ7gFG
>>348

男を捨てることで逃げ切ろうとしたら、より姉好みに改造されてしまうのか…

353:名無しさん@ピンキー
09/09/10 20:05:53 8bi2Pvbv
「姉さん好みに改造しちゃった☆」って言われて自分の体を精査してみたら包茎を治されてるだけだった
死にたい

354:名無しさん@ピンキー
09/09/10 20:06:00 GpO1MRUA
ききょうのソードに決まってるだろ。
そんなことも知らんのか!

355:キモウトで分かるGENOウイルスの流れ
09/09/10 20:08:43 LRSOeLe7
1レス消費 コピペ改変ネタ
『キモウトで分かるGENOウイルスの流れ』


感染 (誘惑)

ねえ、兄さん
近親相姦って響き、いいと思わない?
    ↓

再起動で発動 (逃走で覚醒)

もう兄さんったら勝手にどこかにいっちゃうんだから……
そんなことしたら僕、怒っちゃうよ?
    ↓

勝手に海外のサイトからウイルスDL (援軍要請)

姉さんも怒ってるんだよ
姉「お楽しみはこれからだ」
    ↓

再起動で不死身化 (再び逃走で真・覚醒)

あはは、またどこかいっちゃったよ
ほんと兄さんは照れ屋さんなんだから♪
そんなところも可愛いけど、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだよ
    ↓

勝手に自サイト更新 (住所を探る)

兄さんが今住んでいるところってここかぁ……
    ↓

FTPパス更新 (鍵の形を調べる)

へぇ、兄さんの家ってこのタイプの鍵を使ってるんだ……
これなら僕でも合鍵作れるね
    ↓

BOTがサイトに不正アクセスして改竄 (ヤりたい放題)

この合鍵を使えば……
やっほー! 兄さん来ちゃった♪
え、なんでここに?
やだな〜兄さんったら♪
お嫁さんとは同居するものでしょ!
あぁそうそう、お隣さんに挨拶済ませといたよ
僕達結婚しましたって♪
ほら、ちゃ〜んと戸籍も書き換えといたからもうばっちりだよ!
    ↓

自分のサイトがウイルス配布 (拡散)

ねえ兄さん、今日病院に行ったんだけどね……
お腹の子、双子だって♪
えへへ……もう幸せ!!
兄さん、この調子で一人っ子政策が可決されちゃうぐらい頑張ろうね♪
    ↓
上に戻る

356:名無しさん@ピンキー
09/09/10 20:38:47 oFlFhRHU
>>354
…どこのルー??w


357:名無しさん@ピンキー
09/09/10 21:47:31 0JDzxQgM
>>355
姉さんはどこいっちゃったんだい

358:名無しさん@ピンキー
09/09/10 23:38:02 4rWA9y3o
>>357
そこに触れるとはなんと命知らずな…

359:ポン菓子製造機 ◆lsywFbmPjI
09/09/11 04:18:28 27wBdzN1
二話目、投下開始します

360:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:19:03 27wBdzN1
 長いようで短かった夏休みが終わり、蝉の声もなりを潜めはじめる。
学校が始まってすでに二週間が経過していた。そろそろ多くの生徒が夏休みの自堕落な生活から、普段の学校生活のリズムへと完全に移行していた。
私、北見そらや数少ない友人たちもほとんどがそうなった。と言うか、そうならざるを得なかった。
ただし、ただ一つの例外を除いて。
「おーい、景ー」
ぽふぽふと私は隣の席で夢の世界にトリップしている定山景(さだやまけい)の頭を叩く。
まだ夏休みの遅寝癖が抜けてないのか、最近はずっとこの調子で夢の世界に突入してることが多い。
「ふぇ?」景はおでこに赤く腕の当たっていた跡を残し、まだ半分夢の世界にいるような表情で不思議そうにそらを眺めていた。
よく見れば特徴的な丸眼鏡は脂でべったりで、口元には唾液の川の跡があり、まるで青いネコ型ロボットの
出した暗記用の秘密道具のように、頬に景の特徴的な丸文字で昨日の世界史の授業内容が写っていた。
「あれ?あたしいつから……」
別の世界への旅行から帰って来たばかりの景はまだ頭が回らないらしく、ただぼんやりとしている。
「四時間目の途中。ホームルームから眠たそうだったけど、昨日何やってたの?」
「四時まで全然寝れなかった……」
「自業自得。夏休みにそんな時間まで起きてたからでしょ」そう言って私は鞄からお弁当の包みを取り出す。
北見そら特製の、兄貴とお揃いのお弁当だ。
といっても同じ材料や冷凍食品を使ってる以上、お揃いになるのも当然だが。
「あと景、顔洗いに行ったほうがいいよ。ほっぺたにワシントン軍縮条約って書いてる」
 しかも、主力艦の保有率までご丁寧に。
景はすぐに席を立って、教室を抜け出す。
そして景と入れ替わりになるように、よく見知った女子がお昼のパンとおにぎり、そして飲み物の入った購買のビニール袋を持って、私の机の前にやってきた。
活発なイメージを持つショートカットと、快活な笑顔。ブレザーよりも体操着のほうが似合ってそうな少女。
「そらー、生きてるー?」
「まーねー」
私の数少ない友人B、藤野千尋である。
「にしても景の顔すごくなかった?」
「うん。あれはいくらなんでもなかったと思う」
「本当。景、顔はいいのにね」
前の席の男子がどこか別の席へ移るために席を立つと、千尋は目ざとくその席をかっさらう。
昼は窓際のこの席が千尋の専用シートとなる。
「さぁーて、おっひるーおっひるー」
妙な節の歌を歌いながら、千尋は慣れた手つきで袋からメロンパンと紅茶を出して、私の机に置いてゆく。向かい合う私は千尋のスペースの外にお弁当と水筒を広げた。
「お待たせ〜」
 ちょうどその時、どんな熱血漢だろうと一瞬でやる気をなくすような能天気な声を出して、景が帰ってくる。
「おー、景が美人さんになって帰ってきた」
 メロンパンをかじり、口をもごつかせながら千尋が言う。
 えへへー。と気の抜けそうな声をあげて、机の上いっぱいにお弁当を広げた。景のお弁当はお母さんが作ってるらしく、小食の景に合わせたちいさな二段のお弁当箱だ。
「……にしても、そらのお弁当はいっつもおいしそうだよね」
 千尋は私と景のお弁当と、自分のメロンパンを見比べてはぁ。とため息をつく。
「そんなことないって。冷食も結構多いよ、コレ」
「冷食でもおいしそうなものはおいしそうに見えるよ」
 千尋が反論する。
「それにそらのお弁当はお兄さんのと一緒に作ってるでしょ。やっぱりお兄さんへのとめどない愛の籠った献立で作られたお弁当だからおいしく見えてるのよ……」
「何言ってるのよ千尋!」
 私は反射的にばん! と机を思いっきり叩いてしまう。
周囲が潮が引いてゆくように急激にざわつきはじめ、教室にいた全員が音の中心であろう私たち三人をこわごわとした表情で眺めている。
「…………千尋が変な事言うから」
「あれ?てれ隠し?てれ隠し?」
そう言って私の頬をつついてくる千尋の頭に、私は思いっきり鉄拳を加えてやったのは言うまでもない。

361:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:19:43 27wBdzN1

さっきは殴って誤魔化したものの、千尋の言ったことはあながち嘘ではない。と言うかかなり真相をついている。
兄貴のお弁当は私が妥協できる範囲内でしか手を抜いていないような一品だ。
それにおかずの入れ方も私のはそれこそ適当だが、兄貴のはきちんとおいしく見えるように配置していたりする。
(にしても、狂おしいほどの愛かぁ……)
たこさんウィンナーをつまみながら、私は千尋の言葉を思い出す。
狂おしいほどの愛。とは一体どのくらいの愛のことを言うのかはわからないが、私の兄貴に対する思いはきっと、そこまではいってないだろう。
確かに兄貴のことは誰よりも好きだし、北見千歳を世界で最も愛している人間も恐らく私だろう。結婚雑誌を立ち読みして、花嫁と花婿を私と兄貴に置き換える妄想も中学のころから続いてるし、兄貴をオカズに一人でしたことなんて数えきれないほどある。
だが、狂おしいほどの愛と言うのは、例え兄妹と言う禁忌も関係なく契りを結び、自分が相手とともに破滅に向かい、全てをぶち壊してもなお揺るがないような愛のことなのだろう。
そんなものを意気地の無い私が持てるわけがない。
兄貴の人生も、自分の人生も滅茶苦茶にしてしまうようなことなど、私みたいな意気地なしには出来るはずもないだろう。
兄貴といっぱいいちゃついていたい。
兄貴と結婚したい。
兄貴といっぱいシたい。
兄貴の子供が欲しい。
兄貴とずっと、死ぬまで一緒にいたい。
そんな思いも倫理感や社会不安という巨大な隔壁の前にはかなわない。
隔壁を破れるほど思いの濁流は強くなく、ただただ悔しさと切ない思いの水かさだけが無意味に増してゆくだけだ。
「ねぇ、そら?」
 千尋の突然の声に、思考が現実へと引き戻される。
「ごめん……ちょっと考えごとしてた」
まぁ、いいんだけどさ。と千尋は言うと、さっきまでしていたのであろう話を再開させる。
内容は千尋の兄で私の兄貴の数少ない友達、健史さんへの愚痴だった。
「で、うちの兄貴がまたネットオークションでまーたエアガン落として、『これで千歳に勝てる! 明日千歳に自慢してやる!』って昨日すっごい舞い上がっててさぁ……」
 うんうんと千尋の会話に合わせて私と景は何度も相槌を打つ。
 兄貴と健史さんの共通の趣味に、軍事というものがある。
私にはよくわからないが軍事趣味といっても結構中は広く深いらしく、兄貴と健史さんはあまり共通して好きなものは少ないらしい。
しかし中には兄貴も健史さんも珍しく気の合うモノがあり、その一つがサバゲーだった。
兄貴も小遣いをやりくりし、リサイクルショップで買い揃えた自慢の装備で健史さんや他の友達たちと近くの山で戦争ごっこを繰り広げている。
「千尋、それは私が一年前に歩んだ道だ」
私は千尋の肩をぽんぽんと叩いてやる。一年前にライフルを買ってきた時の兄貴の舞い上がりようと言えば、それはそれは酷かった。
普段滅多に感情をあらわにして喜ぶようなことがない兄貴が近年小躍りしながら喜んでいたのは、たぶん免許を取った時とそのときだけだろう。
「そうそう、千歳さんって言えばー」
 景は突如思い出したように間延びした声で千尋の話に割り込んだ。
「四組の友達の話なんだけどね、四組で千歳さんのことが好きな子がいるんだってー」
 私は自分の耳を疑った。
「ねぇ、景。今なんて言ったの?」私はもう一度千尋に訊く。全く意識していなかったが、私の声はかすかに震えていた。
「だからー、四組に千歳さんのことが好きな子がいるんだって」
「それ誰?」気づけば私は考えるより先に強い語調で千尋に詰めていた。「四組の誰?私の知ってる子?兄貴との接点は?」
「し……知らないよぉ……」ふるふると震える景の声に、私はやっと我を取り戻した。
「そあ、いきなりどうしたのさ」訝しげにそうに訊いてくる千尋。
 私はふるふると首を横に振り、そして笑ってみせる。
「ちょっと驚いて、興奮しちゃった。兄貴のこと好きな子なんてこの世にいないと思ってたもん」
 さっきとは打って変わって私たち三人の間にくすくすと微笑が生まれる。
「そら、それは酷いって」千尋が苦笑する。「ウチの兄貴ならまだしも、千歳さんならファンの一人や二人はいるはずだよ」
 千尋も十分酷いってー。と景が突っ込む。
私は表情でこそ二人のやり取りに苦笑していたが、内心では焦りが抑えきれなかった。
これは昼の授業はたぶん手に着かない

362:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:21:40 27wBdzN1
「でよ、終了一分前に思い切って千円余分につぎ込んだら、周りの連中がそれ以上高額出してなかったらしくて
なんとか買えたんだって! 程度のいいM4A1が九千円だぜ、九千円」
 いつも通りの昼下がり、俺は前の女子の席を占領し、昨日ネットオークションで落としたM4カービンの
電動ガンを自慢する健史に適当に相槌を打ちながら、そらの作った弁当をつまんでいた。
「で、送料込みだと何円なんだ?」
 その瞬間、健史の顔色がまずくなり、窓の外へ急に視線を向けた。
どうせ送料やら手数料でもう二千円は取られたのだろう。
電動ガンと言うのは定価だと酷く高くつくものだが、逆に多少は安くなるオークションや通販なんかを使うと今度は重い分送料がかさむ。
そこ行くとリサイクルショップで定価の半額近い値段で電動ライフルを買えた俺はかなりラッキーな方なのかもしれない。
それでも送料を含めても健史のものとそう値段的には変わらないのだが。
「ま、とりあえず頑張れ」
 俺は再び昼食を再開する。
俺が次に狙いを定めたのは冷食のミニグラタン。俺はこれが好物だったりするのだが、そらは結構、だが食い飽きない程度に弁当に入れてくれたりするのでうれしい限りだ。
「…………にしてもだ」
 ミルクたっぷりの缶コーヒーに口をつけた健史が、不意に呟く。
「お前は本当にいいよなぁ。そんな見るからにうまそうな弁当を妹に作ってもらってよ」
 それに比べて俺の妹は……と嘆く健史を尻目に、俺はアスパラに箸を伸ばした。
「何とか言ったらどうだよ、千歳ぇ」
 俺はそれでも健史を無視して弁当を食べていた。
「大体よぉ。お前のとこの兄妹仲、異常に良くないか?」
「別に」
「いや、異常だ。大体高校生になっても同じ部屋使ってるってあたりでもう凄いぞ」
 はぁ。と俺はため息をつく。
「部屋がないんだよ、ウチは」
 2LDKのマンションを一部屋が父さんが使っているのだ。残った部屋を二人で使うしか無いに決まっているだろう。
「というか食いカス飛ばすなバカ。きたねーだろ」
 ああ、すまん。と健史は片手を立てた。
「しかし、しかしだ」健史は俺の机を握りこぶしでとん、と叩く。
「お前は意識してなくてあれほど仲がいいとしたら、そらちゃんからお前に寄ってるなのかもしれんな」
「そんなわけあるかっつの」一応反論してみる。
「だがもしそうだとしたらだ。兄に密かな、だが強い恋心を抱く妹……兄として受け止めてやりなよ、北見千歳くん」
 ……何から突っ込めばいいのやら。
大体こいつの脳内で空がどういう風に改変されているのかがとても気になる。人の妹を勝手に外道にされるのは、それこそ兄として成敗しなければならんだろう。
「そんなアニメみたいな話があるわけねーだろ。いい加減殴るぞ」
と、言う前にすでに俺の拳は健史の頭を殴っていたわけで。
別にいつも口より手が早いというわけではないものの、なぜか今日だけは手の方が早かった。
そらのことだったからか?などと疑問に思いながら、俺は頭をさする健史を眺めていた。
「で、謝罪の言葉は無しかよ」
「当然じゃ」
 おれは 空になった弁当箱に蓋をして、机の横にかかった鞄を膝の上に移し、ファスナーマスコットを引っ張った。
半分ほどまでファスナーが開くと、音もなくファスナーマスコットはファスナーに結ばれた金具と分離し、マスコットを握る俺の手だけが空を掻いた。
「不吉じゃ」健史が妙な口調で言う。
「単に間の金具がガタガタなだけだよ」
しかたないのでファスナー金具の本体を握って、ファスナーを開く。そしてノートや本が詰まった鞄の中に、弁当箱を戻した。
「結構使ってるからなぁ、コレ」
 塗装の禿げかかった、何年か前のアニメのヒロインを模したPVC製のマスコットは、俺の手のひらで緊張感もなく笑っていた。

363:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:22:29 27wBdzN1


 今日最後の授業は、よりにもよって俺の嫌いな英語のリーディングだった。
どこぞの19番目の人造人間のような風体の教師が淡々と癖のある字で書いてゆく板書を書き写しながら、しかし、頭の隅で先ほどの健史の言葉を思い出していた。
『お前は意識してなくてあれほど仲がいいとしたら、そらちゃんからお前に寄ってるなのかもしれんな』
『だがもしそうだとしたらだ。兄に密かな、だが強い恋心を抱く妹……』
そらが俺になついているのは俺もよくわかっている。だが、あくまでそれは兄妹として仲がいいというわけだ。
それにそらが俺になついてるのには、母さんが死んで以来、俺がそらの面倒を見てきたというのもあるのだろう。
しかし、そらが時折必要以上に甘えてくるのはどうだ?女の子が積極的に肌をすりつけてくるなんて、高校生になっている以上、なついている程度では説明がつかない筈だ。
それにたまにそらが送ってくる熱っぽい視線。あれはどう考えたって妹としての眼じゃない。
そして、そこで俺の脳裏をよぎったのは、夏休みのいつだかに父さんが口走った一言。
『お前じゃないと駄目なんだ』
父さんじゃ駄目で、俺じゃないと駄目なこと。やっと俺はその意味がわかりかけてきた気がする。
しかし、健史ならともかく父さんまでそらを一体どう見ているのかと疑いたくなってきた。
だがもし、もし本気でそらが俺のことを異性として愛しているとしたら。
俺はどうすればいいんだろうか。
しかし、そんな事はまずないだろう。と思考を中断し、俺は黒板に視線を戻した。
そして戻した瞬間、俺は深くため息をついた。
俺がそらの事を考えている間にも板書は早足のまま進んでおり、さっき書かれていた場所はすでにきれいさっぱり消えていた。
俺は舌打ちすると、とりあえず抜けた部分を適当な行数だけ空けて板書を書き写す作業を再開させる。
ノートはあとで健史のを見ればいいだろう。そう思って俺は健史の方を向く。
 考えが甘すぎた。
健史は俺よりもっと深刻だった。夢の国と現世の間を必死に行ったり来たりしており、ノートなどとってる余裕などどこにもなさそうだ。
 仕方ない。ともう諦めて、俺は空白の数行が非常に気になってゆくノートを、引き続き取ることにした。


今日最後の授業は家庭科で、黒板ではまだ若い女教師の字で食物の栄養素に関する内容が延々と書き込まれていた。
私はそれを見るでも、女教師のたどたどしい説明を聞くでもなく、ただひたすらに左手でペンを弄びながら、思考を張り巡らせていた。
兄貴のことが好きな四組の女の子。いったいどんな子なのだろうか。
もし私がその子を好きになれば、私はその子に兄貴を大人しく渡すだろうか。
…………いや、ありえない。
人一倍嫉妬深い私には、そんな真似など出きるはずがない。きっと後から酷く兄貴のことを後悔して、その女の子を脅すのがオチだ。
だが、嫉妬深いくせに人一倍臆病な私は、ドラマや映画の女の人のように、私は平然とその子を殺せるような殺人鬼にはなれないだろう。
なんて中途半端な女。私はため息をつきたくなった。
しかし、それ以前に兄貴が―北見千歳が私以外の恋愛対象になることがあり得ることを忘れていた全く油断していたとしか言いようがなかった。
まぁ、兄貴が好きなのは私以外いないなどと勝手に思っていたのがそもそもの間違いだったのだろうが。
だがもううかうかしてはいられない。
もう私だけが好きなだけじゃ北見千歳は永遠に私のものにはならない。
兄貴も私を好きになってもらわないといけない。
兄貴が私に振り向かないといけない。
兄貴が私を受け止めてくれないといけない。
そのためには。と私は左手のペンを回しながら、心の中で呟く。
兄貴に私という異性の存在を気付かせてあげないといけないわよね。
兄貴が私に恋してくれないといけないよね。
それに、私がもっと兄貴にふさわしい女の子にならないといけないよね。
待っててね。そら、世界で一番兄貴……ううん、お兄ちゃんにふさわしい女の子になってみせるから。
だから、お兄ちゃんも私がいることに気づいてね。
そうなれば。と私は授業そっちのけで、家庭科のノートに今後の計画の案をいくつも書き起こしはじめた。
家庭科の授業など聞いていなくても別段困るものではないし、それにこの授業で習うことなど、家事全般を任せられている私にとっては、とうの昔から知っているようなことだ。

364:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:23:52 27wBdzN1


「付き合わせて悪いな。千歳」
そう言いながら健史は市立図書館の自動ドアをくぐる。
俺もそれに続くようにしてドアをくぐった。

「別に。それに何か面白い本が見つかるかもしれない」
この町最大の市立図書館は、何万冊もの蔵書を二階分の図書室に納めてなお、まだ閉鎖された書庫にも蔵書があるという始末で、正直本を探してさまようのもそれはそれで楽しい。
健史はそのまますたすたと周りの雑誌に目もくれず、まっすぐと小ぢんまりとしたカウンターと、巨大な吹き抜けを通り過ぎ、いくつもの背の高い書棚の林が群生するコーナーへと向かう。
健史の目的地は林に入ってすぐのコーナーだった。
機械工学。とりわけいわゆる「乗り物」関連の機械の本のコーナー。いわゆるのりもの図鑑を呼んでいたかつての男の子たちがそのままその趣味を抱えて大人になったような連中の
好きそうな本が溜まっているコーナーだ。
健史は何の迷いもなく棚の中から航空機関連の本や鉄道関連の本を無造作に一冊か二冊ひっつかみ、品定めしてゆく。
「いい本あるか?」
「新刊が入ってた」
健史は『こうして重大航空機事故は起こった』というタイトルの本を脇に抱える。
「それか?」
ん。と健史は答える。「結構おもしろそうだったからな」
 ふーむ。と俺は唸りながら健史の傍を離れ、一路文学コーナーへ向かった。
文学青年という柄でもないが、俺も読みだせば週に一冊くらいのペースで小説を読んだりする。
しかしそれが外国文学や古典になると何故か妙に遅くなり、読むのに一ヶ月や二か月もかかるので、大体にして読む本は国産のできるだけ軽めの文学にしている。
「さて……と」俺は文学コーナーへ立ち入って、適当に良さそうな本は無いかと捜索を始めた。
といっても、重ったるそうな本は除外。架空戦記は読み飽きたので除外。と次々に本を除外してゆく消去法でしかないが。
そうして半ば消去法の捜索を進めてゆくうちに、俺は空色の表紙が装丁されたハードカバーの本を手に取る。
あらすじを見ると、一通の携帯メールから話が広がってゆく、まぁ楽しめそうな話だった。
よし。と俺はその本を抱えて健史の所へ戻ろうとする。
その途中だった。
書棚の林の中で、腕いっぱいに読み切れないほどの本を抱えた少女を見つけたのは。
少女は首の付け根ほどまでのびたショートヘアーで、細縁の丸っこい眼鏡。服装はうちの学校の制服を着ており、一年生の証である紺色のリボンを胸元に結んでいた。
いまどき絶滅危惧種の文学少女が、これほど完全な形で存在しているとは。
まさにトキかニホンオオカミでも見つけた感覚とはこんなものなのであろう。
少女は観光コーナーの書棚から不意に眼を離しこちらを向くと、俺の方に釘付けになる。
「あ、すみません」
やはり絶滅危惧種だとおもって凝視していたのが悪かったのか。俺はばつが悪そうにア氏は屋に健史のもとへと立ち去って行った。
健史はすんなり見つかった。ほぼ近くの棚にある兵器工学のコーナーでまた書籍を漁っていたのだ。
さきほどの文学少女ほどではないが、健史も五冊ほどの本を脇に抱えている。
「お前も見つかったか?」
「一応な」
俺は健史に向かって空色のハードカバーを掲げる。
「んじゃ、行くべ」
 健史と俺は貸出カウンターへと広い図書室内を歩いていった。
貸出カウンターには前に何人か小学生がいたものの、本を借りるとすぐにどこかに消えてゆき、すぐに俺の番が回ってくる。
俺はカウンターの司書の女性に財布にはさんでいた貸出券と空色のハードカバーを差し出す。
司書さんは貸出券とハードカバーのバーコードを読み込むと、ハードカバーを俺に差し出す。俺はそれを受け取ると、鞄の中に突っ込んで、ファスナーを閉めた。

365:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:24:29 27wBdzN1
ふと、書棚の林の方を眺めると、林の方から例の文学少女が大量の本を抱えてこちらに向かってくるのが見えた。
きっとあの大量の本を借りるのだろう。
「千歳、行こうぜ」
 大量の本をなんとか鞄の中に収めたらしい健史が俺の背中を押す。俺達はそのまま自動ドアをくぐって、外の電停へと向かった。
空はもはや澄み渡るほどに真っ赤に染まっており、東の空の端の方に至っては濃紺が滲みだしてきているほどだった。
顔を線路の方に向けると、隣の電停を発車したらしい、新聞社のラッピングを施した連節車が小刻みに左右に揺れながらこちらへ向かってくるのがわかった。
何の気なしに顔を元に戻すと、図書館からこちらに人影が走ってくるのが見える。
俺はその人影に見覚えがあった。
ショートヘア、丸っこい眼鏡、紺色リボンの制服。
間違いなくさっきの文学少女だった。
文学少女は点滅しかけた信号を疾走し、電停の島にのっかるとその足を停める。
俺と、何事かと思ってそちらを向いた健史は、息を切らす彼女をただ呆然と眺めていた。
「これ……」
少女は俺に向かって握った右手を持っていく。
 ほのかに汗ばんだ彼女の掌の中で、俺のファスナーにつけてあるはずのPVCのファスナーマスコットがいつものように能天気に笑っていた。
俺はもしやと思って鞄を見ると、案の定、マスコットは金具ごと外れている。
「あ、ありがとうございます……走って届けてきてくれて」
 俺はしどろもどろに彼女に礼を言う。
健史もようやく事情が掴めて来たのか、ふむ。と口元を緩ませた。
そしてちょうどその直後、俺たちの立つ電停へと、連節車が夕陽を受けながらゆっくりと滑りこんできた。
「君、こっちの電車?」
 健史の言葉に、文学少女はうなずく。
連節車は俺と健史、そして文学少女を乗せると、低いモーター音を響かせながら加速を始めた。
部活の終わる時間にもかかわらず車内はいやに空いており、乗客のほとんどと同じように俺たちは手近な席に座ることにする。
電車のモーター音が止んだ頃、俺は不意に文学少女の方を覗き込んだ。
 別に彼女が気になるというわけではないが、なぜか気になったのだ。
文学少女は、うつむくようにして床に顔を向けている。恥ずかしいのかな。と、俺は何故かそう感じた。
まぁ、確かに見ず知らずの異性に声をかけて、さらに隣の席に座るのは恥ずかしいことなのかもしれない。
今時こんな純情な子も珍しいな。などと変な関心をする。
連節車は停留所をひとつ飛ばして、また加速を始める。

366:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:25:01 27wBdzN1
「私」
 突然少女が口を開いた。
「里野藍、1年4組です出席番号6番です!」
 藍と名乗った少女はそう言いきると、耳たぶから頬から顔中を真っ赤にしてより深くうつむいてしまう。
全く状況の読めなかった俺と健史は次第にようやくそれを掴みだすと、ああ。とうなずく。そして、唐突な藍の自己紹介に返すべく健史が少し震えた口調で言った。
「お、俺は3年2組の藤野健史な。で、こいつも同じ組の北見千歳」
 俺はよろしく。と藍に手を振ってみせる。
藍はまだうつむいたままだった。
俺たちと気まずい雰囲気を乗せ、連節車はゆっくりと走りつづけた。


「ふぅ……」
 学生よりも社会人の割合が多いような連節車の中で、私は息をつく。
「買い物してたらこんな時間になるなんて……ちょっとゆっくり選び過ぎちゃったわね」
もう陽は完全に傾き、空は濃紺に染まって月が青白い光を放ち始めてしまっている。
「さて」私は天井を仰ぐと、ぱん、と頬を叩いて気合いを入れる。
「今日の晩御飯は兄貴の大好きな、そら特製鳥の唐揚げ。おいしく作んなきゃね」
 兄貴に気に入られるためにも、いっぱい頑張らなきゃ。
そうだ。と私はあまりにも変態的な行為を思いつく。
(兄貴の唐揚げ、レモン汁の代わりにわたしのお汁をちょっと混ぜちゃおっと……)
何故そんな変態的な行為突然を考えついたのかはわからなかったが、私はこれからおそらく実行するであろう変態行為に頬を焦がす。
(その後もおっぱい押し付けたりして、兄貴に私がオンナノコってことを教えてあげなきゃね)
背徳的な妄想に浸りながら、私は連節車の揺れに身を任せた。

367:名無しさん@ピンキー
09/09/11 04:27:23 27wBdzN1
以上です。前回の多くの声援とご指摘ありがとうございます。

あとコピペミスを一か所発見しました。
「これは昼の授業はたぶん手に着かない」のあとに「だろう。」が入ります。



368:名無しさん@ピンキー
09/09/11 05:10:20 rhpd/+FA
GJ!
早起きしてよかったw

369:名無しさん@ピンキー
09/09/11 09:48:40 quIok6n+
GJ
普通のブラコン妹っぽかったのに、ナチュラルにキモウト化していくな

370:名無しさん@ピンキー
09/09/11 17:39:41 SfmtyHRv
GJ!
こうやってキモウト化していくのか…

371:名無しさん@ピンキー
09/09/11 18:22:33 YiUEELxp
実にGJ
「狂おしい愛」を否定している割に既に両足突っ込んでるw
っていうか兄貴も少しシスコン気味か?
続編を期待します!

372:名無しさん@ピンキー
09/09/11 23:28:41 fTYtVcKA
GJ!

このようにキモウト化していく様が見られるとはなぁw
続き期待してるぜ!

それと、>>364のア氏は屋は、足早の変換ミスかな? あしばや で変換すると良いですよ


373:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:39:05 cZaP5DBO
遅くなりましたが投下します。
(最初で最後かもしれない)18禁的シーンがあるので注意してください。

374:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:40:45 cZaP5DBO
本来、彼女は自由に動けるような立場ではなかった。
ダイニングの家族会議では後ろ手に手錠を掛けられていたが、自室に戻った後は父によって柱に繋ぎ直されている。
しかしピッキングは父親の専売特許ではない。こうなることを想定して、彼女は貪欲に技術を習得している。
後ろ手という条件では手錠を外すのに一時間、掛かった。今も優香の手首は赤い痣が残っている。
それでも早い方であり、当初想定していた父親の監視がなかったことが大きい。これを彼女は天佑と解釈した。
だが、もしも誰かが立ち塞がっていたとしても、問答無用で襲いかかっていただろう、その結果どちらかが死に至るとしても構いはしなかった。
そうして、この時のために予め用意していた装備を持ち出し
榊優香は兄の部屋を訪れた。




「黙れ」

その一言で、榊健太の動きが魔法のように止まった。驚愕の声を上げようとしたまま、固まる。
もちろんそれは魔法などではない。その低く押し殺された声音に秘められた、底知れない重さで圧しきったのだ。
榊優香は悠然と部屋を進む。カーテンから差し込む月明かりだけで、床に散らかった障害物を全て避ける。
服装はダイニングにいた時と同じ、水色のワンピース。腰にはその時は着けていなかったポシェット。左手にはじゃらじゃらと手錠を四つ提げている。
歩きながら、流れるような動作でポシェットからスタンガンを取り出して右手に持つ。ベッドに横になった兄の元まで到達した。
「喚くな」
「――!」
無造作に健太の首筋に押し当て、スイッチを入れる。びくんと、健太の体が硬直した。
スタンガンには元々、対象を気絶させるような効果はない。押し当てている間、相手の筋肉を硬直させるのが精々である。
ただしこれは優香が改造を施したもので、最大出力にすると気絶にまで追い込める。元々は虚弱な恋敵を仕留めるために用意した代物だった。
今回の出力設定は中にしてある。優香は兄が朦朧としたのを確認すると、その両手足にガシンガシンと手錠を掛け、反対側をベッドの四隅に掛けた。
健太の体はベッドの上で強制的に大の字の格好になる。更に優香はその場で自分のパンツを脱いで丸め、兄の口の中に押し込むと持参したタオルで猿轡を噛ませた。
捕縛完了。
そこまでの作業を、優香は一切迷いなく行った。今まで幾度も幾度も練習してきた手順であり、その成果は十分に発揮された。
最後に仕上げとして、ドアに戻り施錠し、気合一閃して戸棚をドアの前に押し込む。ずりずりとカーペットを擦りながら、唯一の出入り口が封鎖された。

そうしてこの部屋は、朝が訪れるまで牢となる。

「ん……んぐっ! んぐぐぐっ!」
意識を取り戻した健太が、ようやく状況を把握し始める。両手足を手錠でベッドに繋げられ、猿轡によって声を発することもできない。
完全に無力な状態である。鼻を摘むだけで遠からず死に至るだろう。
優香は自分の成果に満足し、ベッドに戻りながらポシェットから折り畳みナイフを取り出した。ぱちんと、刃が飛び出す。
それを見た兄が体を硬直させ、ぎゅっと目を瞑る。どっと冷たい汗が湧いた。
――健太は一瞬、覚悟した。
刺されるだけのことを、自分はした。刺されるだけの裏切りを、自分はした。妹が復讐に来たのだとしても、それは正当な行為なのだと。
ぴたりと、腹部に冷たい感触を感じて健太は歯を食いしばる。ナイフが肌の上をなぞりながら、喉に向かっていく。びりびりという音。
……けれど結局、健太の覚悟していた激痛は体の何処にも発生しなかった。
おそるおそる目を開けるとそこには――月明かりに浮かび上がる、榊優香の裸身があった。


375:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:42:16 cZaP5DBO
ワンピースもブラジャーも、床に脱ぎ捨てられている。部屋に来た時点で裸足であり、右手に持ったポシェットを除くなら、一糸纏わぬ姿だった。既にナイフは仕舞われている。
状況を忘れて、健太はその裸身に一瞬、見惚れた。幼少期を除くなら、女性の全裸を見るのは初めてだった。
日々の鍛錬で鍛えられた体を、うっすらとした脂肪が角を隠すように覆っている。滑らかな肌は染み一つない。乳房は小振りだがバランスよく収まっており、均整の取れた体付きだった。
健太の幼い日の思い出とはかけ離れた、年頃の少女の体。匂い立つような魅力はないが、蕾のような美しさがそこにはある。
優香は固まった健太を尻目にベッドに乗り、兄を跨いで腹に女の子座りで馬乗りになった。
そうして、大の字に拘束され猿轡をされた兄に、薄く笑って声を掛ける。
「刺されると思いましたか?」
「…………」
ナイフで切られたのは肌ではなく、健太の着ているシャツの前面だけだった。開かれたシャツから、ごつごつした腹筋や胸板が露出している。
季節柄、健太の寝る時の服装はシャツとトランクスだけだ。今日も熱帯夜であり、人間二人が密着することにより部屋にはじっとりとした空気が充満しつつあった。
「刺したりなんかしませんよ。そんなことより、もっと酷いことをするために、私は来たんですから」
「んんっ!?」
そうして榊優香は
体を前に倒し、上半身をぴたりとくっつけて、猿轡をされた兄の唇に、口づけた。
タオルは上下の歯で噛むようにして猿轡になっている。唇と歯に触れることは可能になっていた。
同時に、両手が裂かれたシャツの隙間から潜り込み、兄の胸をまさぐる。驚愕のあまり硬直した兄の耳元で、妹は淫蕩に微笑んだ。

「レイプします。兄さんの童貞を、今、ここで、私が奪います。もちろん生で。抵抗は無意味です」
「――」

何を言われたのか一瞬わからず、健太の頭の中が真っ白になる。
その隙に、優香は左手で兄の顎を掴んでロックし、再度口づけた。それだけでなく、唇と歯の間から唾液を流し込んでいく。
同時に、自分の乳房を相手の胸板に押しつけた。ぷにゅりと、崩れないマシュマロのような感触が健太の脳に伝わる。熱い。
その熱さを感じた瞬間、榊健太は我に返った。
「んー! んんんー! んんー!」
暴れる。
ベッドの四隅に繋がれた手錠はびくともしない。ぎりぎりと手錠が手首足首に食い込んで痛みが走るだけだった。
せめて自分の上に乗る妹を振り落とそうと、胴体を激しくよじる。それを嫌がったのか、優香は不機嫌そうに体を起こして
脇に置いたポシェットからスタンガンを取り出し、最小目盛で兄の脇腹に押し当てた。スイッチ。
衝撃。
文字通り、健太の全身を電流が支配した。全身の筋肉が硬直し、声無き叫びが迸った。今度は気絶するほどの電撃ではないが、それでも本来のスタンガン程度の威力は出ている。それを優香は、押し当て続けた。
「――!」
「あ……はあ。こっちまでビリっときましたよ。もう濡れてますから、多少通電したみたいですね」
時間にして十数秒だが、健太にとっては十数分にも感じただろう。優香がスタンガンを離すと、筋肉が弛緩してぐったりとする。継続して浴びせられた電流は、健太の体力をごっそりと奪っていた。
優香が手早く消耗した電池を交換する。バラバラと使用済みのアルカリ電池が床に転がった。
ぐったりとした健太を見下ろして、優香は淫靡に微笑んだ。しなだれかかる様に前のめりに倒れ、ぐちゃぐちゃと唾液を兄の口の中に流し込む作業を再開する。
更に押し付けた胸を、体を揺すって前後に動かす。コリコリと、お互いの乳首が時折こすれあう。狙ってやっているのだ。見る見るうちに乳首が固くなっていく。
「ん……はあ。胸はどうですか? 小さいですが気持ちいいでしょう? 兄さんが母親以外で初めて触る女性の胸は、私のものですよ。揉みしだけなくて残念ですね……おや?」
無抵抗の兄に唾液を流し込んでいた優香は、不意に唇を釣り上げた。
むくむくと大きくなったものが自分の尻に当たっているのに気付いたのだ。
優香はにまりと笑い、空いている右手を後ろに伸ばしてトランクスの中に滑り込ませた。ぎゅうと根本を掴まれて、呻き声が上がる。


376:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:43:23 cZaP5DBO
「はは、なんだ。兄さんも犯る気満々じゃないですか。そんなにこのチンチンで妹の処女膜をぶち抜きたいんですか、ねえ?」
「ぐう……」
そのまま形を確認するように、優香は右手をまさぐっていく。陰嚢、竿、亀頭と、もみもみと適度な刺激を与えながら言葉で責め立てていく。
既に優香の右手は先走りでべたべただった。時折、短い爪で引っ掻いては刺激でアクセントを加える。あっという間に、健太の怒張は張りつめた。
充分に固くなったと判断した彼女は、今度は竿の部分を握って上下にしゅっしゅと擦りだした。男が普段している自慰と同じ動き。違うのは自分の手ではないということ。
「こんな風に、毎日毎日シコシコ自分を慰めていたわけですか。オカズは私ですよね、知ってますよ。私の名前を呼びながら、このチンチンを擦ってたのは。夢が叶ったじゃないですか」
「むぐ……」
事実だった。
健太とて健全な男子なのだから一日に一度は自慰もしているし、優香を女として見ている以上、性の対象としたこともある。
けれどその後は、決まって深い罪悪感に苛まれるのも常だった。妹であることもそうだが、身近な女性を薄汚い欲望で汚すことに、倫理的な歯止めがあるのだ。
そのことをズバリ指摘され、動きが止まる。優香はその隙に手を離して、ぐるりと体を動かした。
それまで兄と順方向に向かい合っていた優香の体が、逆方向に馬乗りになる。
がしりと両膝で兄の頭を挟み込み、右手でトランクスをずり下げる。いわゆるシックスナインの体勢だった。
ぶるん、と解放され反り返った怒張に、優香が鼻を押しつけるようにして頬摺りをする。むあ、と立ち上った臭気を思い切り吸い込んだ。
「すう……はあ………くっさいですね、最悪の臭いです。何をダラダラ先走り液を垂れ流してるんですか、兄さん。妹の手扱きがそんなに気持ちよかったんですか? ねえ、教えてくださいよ」
「…………」
健太は答えない。猿轡をされていては答えようがない。
しかしそれ以外にも答えられない理由はあった。シックスナインの体勢によって鼻先に突きつけられた、生まれて初めて見る女性器に目が釘付けだったのだ。
優香の女性器は小振りで、陰毛も疎らに生えているだけだった。中心には興奮によってぱっくりと開いた貝のような中身が、呼吸と共にひくひくと震えている。
ぽとりと、そこから垂れた愛液が健太の頬に落ちる。
ごくりと健太の喉が鳴った、次の瞬間。優香が大声で笑い出した。
「あっはははははは。なんだ兄さん、そんなに私のオマンコが気に入ったんですか? チンチンがビキビキに固くなりましたよ、あはははは」
「…………!」
「それじゃあ味見もしてみましょう。可哀相ですから、兄さんにも私を味合わせてあげますよ」
「むぐっ!」
優香は畳み込むようにして腰を下ろし、目の前の怒張を口でくわえ込んだ。
健太は股間の先端に、今まで感じたことのない熱さとぬめりと締め付けを感じた。それがじゅぼじゅぼと卑猥な音を立てながら降りてくる。とてつもない快感だった。
だが同時に、優香の腰が降りてきて健太の顔を塞いだ。ぐにゅりと鼻が女性器にめり込む。猿轡をされているため、その状態は窒息を招く。息が止まった。
慌てて健太は逃れるために身をよじったが、頭は両膝でがっちりロックされているため逃げられない。
それでもできる範囲で呼吸を確保しようと必死で顔をよじり、その度に女性器が刺激され、優香は腰をびくびくと奮わせた。
じゅん、と溢れた愛液が猿轡を通して兄の口に注がれていく。独特の塩気がある味だった。
快感に抵抗するように、じゅぼじゅぼと優香が激しく頭を上下させる。唇で根本を締め付け、舌を情熱的に絡ませる。健太はその快感に奥歯を食いしばって必死で耐えていた。
「ううう……!」
彼を支えているのは、強姦されていることに対する男としての矜持と、妹への罪悪感である。
これ以上、妹に罪を重ねさせるわけにはいかないという、兄としての一念で未経験の快感に必死で耐える。既に妹を裏切ったという事実がその一念の裏付けとなっている。
それを打ち破るため、優香は右手を自分の股間に持っていって愛液で濡らし、手探りで兄の菊門を探り当てた。
びくりと健太の腰が跳ねる。
「んんっ!?」
優香は一旦奉仕を中断して口を離し、兄の腰を左腕で抱え込みながら宣言した。
「兄さんの処女、先に貰いますからね。無駄に力むと痛いだけですから、力を抜いてくださいよ」


377:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:44:24 cZaP5DBO
右手の人差し指を立てる。
そうして優香は再度、限界まで兄の怒張をくわえ込んだ。喉の奥に亀頭が当たると同時
ずぐりと、人差し指を兄の菊門に突っ込んだ。警告に反して兄は反射的に背約筋に力を込めていたが、一本抜き手のようにそれをぶち抜く。人差し指の根本近くまでが菊門に埋まった。
「んぐうううううう!」
貫くような痛みと異物感。
健太はひとたまりもなく射精した。
びゅるびゅると鈴口から噴出する精液を、優香は喉奥で受け止めてそのまま飲み込んでいく。胃に精液がたまっていった。
最初の勢いが収まると、指探りで痙攣する前立腺を見つけてぐりぐりと揉みほぐす。射精が勢いを取り戻す。優香はそれを繰り返して、できるだけ射精を引き延ばす。
そうして、噴出は優に十秒近くも続いた。間違いなく、榊健太の人生で最大量の射精だった。
「んぐっ……ごくっ………」
「う……あ……」
射精が収まってからも、優香は怒張をストローのように扱って尿道に残った精液まで吸い取る。舌の先端で鈴口をちろちろと掃除した。
加えて、やわやわと尻穴に突っ込んだ人差し指を動かす。必然、ぐったりと虚脱した健太とは対照的に、怒張は固さを保ったままとなる。
それを確認して、優香は吸い付きながら口を離した。ちゅぽんと水音。
「はあ……やっぱり味も酷いものですね。苦いし臭いし喉に絡みつくのも最悪です。多分、他の人と比べてもかなり臭いですよ。こんなものを飲んであげる女は私ぐらいのものです」
もちろん優香は他の精液の味など知らない。単に兄を傷つけるためだけの言葉である。
とはいえ、尻に指まで突っ込まれて射精させられた健太にはその言葉は深く響いた。既にプライドはズタボロとなっている。
ぬるりと優香が指を引き抜く。濡れそぼった人差し指をしゃぶる。
シックスナインの体勢から、向かい合って馬乗りになった姿勢に戻る。再度、見下ろす視線と見上げる視線が重なった。
「さて、お待たせしました。そろそろ貫通式と行きましょう。一回出しましたけど、まだまだ固いみたいですしこのまま行けますよね」
「っ!」
その宣言を聞いて
「んんんんっ!!」
今度こそ、猛然と榊健太が暴れ出した。
腰を跳ね上げ、両手で手錠の鎖を掴んで思い切り引っ張る。ベッドは木製であり、何処かが壊れるかもしれないと思ったのだ。
ぎしぎしとベッドがきしむ。手錠が手首と足首に食い込むが、歯を食いしばって我慢した。声なき声で叫ぶ。
女性の貞操というものが大事なものであると、榊健太は当たり前に信じている。大和撫子を好む風潮というか、彼の価値観はやや古臭い。
少なくとも、こんなことで失っていいものであるわけがない、取り返しの付かないことをするなと、声が出せたのなら枯れんばかりに説得していただろう。
お互いに望まない関係であり、お互いに不幸になるしかない関係になる。
兄として、これ以上妹の可能性を奪ってしまうことなどしてはいけないと、彼はありったけの抵抗をした。
けれど逆に、皮肉なことに。そういう価値観の持ち主だからこそ、榊優香はこのような行動に出たのだ。
優香は膝立ちになって振り落とされるのをかわすと、脇に置いてあったスタンガンを兄の胸に押し当てた。
先程と同じ全くよどみのない動作、衝撃、痙攣。
「ぐうううううううっ!」
獣のような絶望の呻き。
意志に反して体が勝手に硬直する。指が丸まる。目の奥で火花が散る。頭が真っ白になる。
ああ、ああ、どうしてこんな、どうしてこんな。
電極が離れるまでの十数秒。健太は数十回に及ぶ後悔の怨嗟を心の中で繰り返した。
「兄さん、パブロフの犬って知ってますか? あまり繰り返すとスタンガンでしかイケない性癖になりますよ。というか、まだチンチンが勃起してますから、そうなりかけてるみたいですね」
ぐったりと電撃で体力を奪われた健太に、どこか愉快そうに優香は微笑んで
腰を上げて、左手の人差し指と中指で、自分の花弁をぐっぱり開き。勃起したままの兄の怒張を押し当てる。
左手を離すと。ぐに、と大した抵抗もなく亀頭が秘裂に飲み込まれた。
「さて、暴れてもいいですよ、兄さん。多分そうしたら、兄さんが自分で私の処女を破ることになりますけど。そうしたらこれはもう和姦ですよね」
「ん……うあ……」
健太が力無く妹の名を呼ぶ。それは猿轡に阻まれ言葉としての形を為さなかったが
あとは腰を下ろせば一線を完全に越える。そんな状態で、榊優香は動きを止めた。


378:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:46:30 cZaP5DBO



……本当は
『……はい……普通の兄妹に……戻ります……』
本当は、口先だけで同意して、再起の時を待つつもりだったし、そうするべきだとわかっている。
たとえ引き離されようと、想いの褪せない自信が私にはあった。生まれてからずっと抱いてきた兄への想いは、既に私自身となってしまっている。
兄の想いは褪せてしまうだろうが、それは再度積み直せばいいだけのことだし、そうする自信もあった。
ここで足掻くのは、戦略的には逆効果でしかない。そもそも私は賭に負けたのだ。
両親が私の異常に気付いて完全に補足するのが先か、私が兄の気持ちを完全に掴むのが先か、これはそういう勝負だった。
そして私は分が悪いと知りつつも兄に賭け、負けたのだ。
『あの時頷いたのは、ごめん……けど……やっぱり、普通の兄妹に戻らないか……?』
兄を恨んではいない。あれは裏切りではなく、私の努力と運が足りなかっただけの話なのだから。
それに、敗北したからといって諦めたわけでもない。
今は引き離されたとしても、元の関係に戻った振りをして警戒を解き、必要ならば邪魔者も始末する。五年、十年と隙を伺えばどうとでもなるはずだ。
本当はそうするつもりだった。一度退いて、捲土重来を待つ。
兄と添い遂げるために、まず相思相愛になるように仕向けるという、戦略に沿った方針でもある。
……けれど、我慢できなかった。
『可愛いですよ、兄さん』
『お、お前なあ。さっきから男、それも兄貴に向かっていうことじゃないだろ』
あの日々が
想いをありのままに吐き出せるあの日々が、好きな人に好きと言えるあの日々が、あまりにも嬉しかったから。
もう、戻れなかった。私はルビコン川を渡ってしまった。理性よりも感情に、私は負けた。
兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん
貴方が恋しい、貴方が欲しい。
都会に来たロバのように、空を知った蝉のように、果実を食べた始祖のように、私は本当の喜びというものを知ってしまった。
もう我慢などできない。
今更、たとえフリでも、普通の兄妹に戻れるわけがなかった。
…………
それなら、私は
それなら私は、もう一度分の悪い賭をしよう。欲しいものを今、手に取る愚かな道を。
最善の方法を放棄する。戦略を転換する。
幸せになれないかもしれない――それでもいい。
日の当たる場所には出れないかもしれない――それでもいい。
愛し合うことはできないかもしれない――それでもいい。
この人を深く傷つけるかもしれない――それでもいい。
この人を不幸にするかもしれない――それでもいい。
本当に嫌われるかもしれない――それでもいい。
もう二度と、安らぐ場所には戻れないかもしれない――それでもいい。
それでもいい。
明日より今だ。





379:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:47:34 cZaP5DBO
ず、と榊優香の重心が移った。
それを感じて、涙さえ流しながら、榊健太が声にならない叫びを上げる。
めりめりと、芋虫のような速度で、彼女の腰が降りていく。
「さ、あ。いよいよ兄さんの童貞喪失ですよ。泣く程嬉しいんですね、兄さん。
 ほら、見えるでしょう。見てください。兄さんのチンチンが私のオマンコに突き刺さっていきますよ。
 いっ……つううううう……ほら、ぶちぶち、処女膜が破れていきますよ、兄さんの小汚いもので!
 そんなに嫌なら、くうっ……今すぐ萎えさせればいいのに、それができない時点で兄さんの意志なんです。
 このチンチンが、妹に欲情して処女膜を破りたがるから………こんなことになってるんですよ。
 は、あ……膜は完全に破れましたね。後はもう、私の中が兄さんの形に広がっていきます、よ」
自分の肉を裂きながら、優香はゆっくりと体を降ろしていき
兄の腹に両手がつくと、最後の一息を一気に押し込んだ。ごつん、と怒張が最奥を突き上げる。
優香の背筋が伸び、かは、と呻き声を漏らした。
兄と妹の腰が繋がり合い、その間から薄赤い液体が染み出してくる。愛液と混じった破瓜の血。二人が禁断の交わりを行った証である。

こうして、榊優香と榊健太は、越えてはいけない一線を越えた。

「あ――は」
傷口を刃物で開くような痛みより、脳髄を焼く喜悦に突き動かされて妹が笑う。
「あ、ははははは。兄さん、兄さん。
 これで、兄さんは私のものです。兄さんの全ては私のものです!
 ファーストキスも初フェラチオも処女も童貞も、全て私が奪いました。
 この先兄さんがどんな人生を送ろうと、あらゆる全ての瞬間で、その事実は消えません。
 あは、あははははっ! 最悪で最高です! 兄さん、貴方は私のものです!
 もう喋っても良いですよ、どうせ手遅れですからっ!」
榊優香の手が乱暴に手拭を首まで引き下げる。瞬間、唾液と愛液でぐっしょりと塗れたパンツを吐き出して、榊健太が怨嗟の叫びを上げた。
「ゆうか! ゆうかああ!」
「あははは、なんですか兄さん。ちなみに父さんも母さんも、下で泥酔してましたから助けを呼んでも無駄ですよ」
「お前、何で、何でこんなっ!」
「そんなもの、愛以外の一体どんな理由があるというんですか」
「そんなの――むぐっ!」
なおも何か言いかけた健太の口を、上体を前に倒した優香の口が塞ぐ。妹の舌が捻じ込まれ、兄の口内を蹂躙する。二人は上と下で完全に繋がった。
体を倒したときに優香の膣にはねじれるような痛みが走ったが、彼女の脳はそれを快感に変換していた。十数年の悲願が達成された瞬間、彼女は絶頂さえ覚えている。
一方の健太にとっては、女性に挿入することは凄まじい快感だった。入れた瞬間に射精しなかったのは一度放出してたからで、今も腰を動かしそうになるのを必死で堪えていた。
片方は肉体の苦痛を精神が凌駕し、片方は精神の拒否を肉体が凌駕している。それはひどく歪な性交であり、強姦だった。
兄が首を振って、蛭のように吸いついてくる唇を外し、叫んだ。
「ぷはっ……やめろ、やめろ優香!」
「何をですか? 私の処女膜ぶち抜いておいて、今更何を止めろと言うんですか? そもそも、先に裏切ったのは貴方でしょう」
「それは……うぐっ!」
先に妹を裏切ったのは自分だという、負い目を突かれて怯んだ兄を、優香が膣で絞り上げた。
危うく快楽の一線を越えかけたのを、必死で堪える。そうでなくても、初めて挿入する女性の体はとてつもなく気持ち良かった。
限界まで張りつめた怒張に、肉の筒が全体をぴったりと包むように張り付き、締めつけてくる。それもひどく熱い。
手で擦るのはもとより、口でくわえるのすら到底届かないような密着感。
優香がゆっくりと腰を上下し始めると、その快感は更に増加した。張った傘が密着感に逆らうように、ごりごりと膣を削って行く。その抵抗はそのまま、怒張への快感になる。
そうして、ある程度まで腰を持ち上げると、どすんと一気に腰を下ろした。めりめりと閉じた肉を開きながら、兄の先端が妹の子宮を突き上げる。それもまた途轍もない快感だった。
猿轡は既に外されていたが、たとえ両親が健在でも助けを呼べるような状況ではなかった。気を逸らせば即射精してしまう。
耐える。初めて経験する快楽に必死で耐える。
それは、譲りに譲ったとはいえ、健太にとって絶対に越えてはいけない最後の一線を守るためだった。


380:未来のあなたへ11後編
09/09/12 00:48:16 cZaP5DBO
「く、はっ……気持ちいい……ですよ。最初から……こうしておけば良かった。ずっと我慢していたのがバカみたいです」
ずちゅん、ずちゅん、と兄の腹に手を当てて、優香が腰を上下させる。腰が沈むたびに、結合部からは白みがかった粘液が溢れてくる。
彼女の言葉は事実ではないが真実である。
貫通したばかりの膣は、愛液の潤滑があるとはいえ傷口を擦られる痛みが絶えず走っている。男にとっては快楽でも、彼女にとっては抵抗がそのまま痛覚を刺激するのだ。
また、こうして今繋がっているのも、総合すれば敗北した結果である。本来は、相思相愛になった上での過程でしかなかったのだから。断じてセックスが最終目的などではない。
だがそれでも、彼女の言葉は真実だった。十数年の想いという強烈な脳内麻薬は苦痛さえ快楽に変換し、後悔を含むあらゆるネガティブな感情を消し去っていた。
「どうしてこうなったのかって、思ってますよね? そんなの決まってます、悪いのは兄さんです、悪いのは兄さんです。
 兄さんが私を受け入れてくれたなら、こんなことはしないで済んだんです。私がどれだけ貴方のことを愛しているか、知っていたのに!
 元になんか戻れるはずがないじゃないですか。私は貴方がいなければ生きていけないし、私達は男と女なんです。
 家族で済むなら、最初から我慢してます。どうしても我慢できなかったから、私はこんな、こんな人間になったんですよ。
 わかってなかったんですね、わかってなかったんですか。やっぱり兄さんは頭が悪いですね。
 水を飲まずに生きろと言われても無理なんです、空気を吸わずに生きろと言われても無理なんです、私にとって貴方はそういう存在だったんですよ!
 義務感でもいい、同情でもいい、あの時頷いてくれたなら、私はそれだけで生きていけたのに。全部兄さんが裏切ったからですよ!」
「うっ……ぐっ………!」
言葉と体で優香は健太を責め立てる。ベッドがぎしぎしと軋み、手錠の鎖が擦れ合って音を立てる。まるで忍ぶ気のない嬌態であり、強姦だった。
両親が寝ていたとしても、飛び起きて駆けつけかねない。だが優香はそのことで全く遠慮してはいない。露呈するのは覚悟の上だ。

彼女は戦略の転換を行った。基本方針は変わらない。自分に好意を持つように仕向けるのは、人生を考えた時に絶対必要な要素だ。
今までの優香はその戦略を、長い長い時間を掛けて確実に進めてきた。行動すると決めてから二年と半年。想いを自覚してからは十数年に達する。
だが、彼女は戦略の転換を行った。年単位の時間を掛けるのではなく、今、この場で、兄への洗脳を完遂すると決めたのだ。
この数時間で、榊健太に拭いがたい条件反射を刻み込む。
それは恋愛などではなく、調教の部類に入る。しかもワンチャンスであり、失敗したら深刻な嫌悪を受ける。まさに賭であり、彼女の中の慎重な部分は成功する可能性が高くないことを告げている。
それでもいいと決めたのだ。
兄を責め立て罵倒する言葉も本心ではない。全て自己責任であることを彼女は自覚しているし、方針は間違ってはいないと分析している。ただ足りなかっただけだ。
足りなかったものを、今埋める。愛する人間の心に、自分という形をした深い傷跡を残すことで。
――思えば
彼女の中に存在する胸の空白が、自分の兄の形をしていたことが全ての元凶だったのだから
これでようやく、二人は最初の位置に着けるのかもしれなかった。

どすんと、一際強く、優香が腰を沈める。怒張の痙攣を直に感じて、彼女は嬉しげな声を上げた。
「あっ、は。出るんですね? またチンチンがびくびくし始めましたよ。さっき精液を飲む直前に、こんな風に震えたんです」
「よ、せ。や、めろ。ゆうか……!」
「なら出さなきゃいいじゃないですか。出したがってるのは兄さんですよ」
怒張が押し入った分、ぽこりと押し上げられた腹部をぐりぐりと優香が撫でる。そうして、ふと思いついたように呟いた。
「く、ふう……兄さん。もしも一つ約束してくれるなら、こんなことはすぐに止めますけれど……どうします?」
「な……ん……?」
歯を食いしばり、一線を越えようとする性衝動にギリギリのところで抑えながら。妹の口にした提案に、藁にも縋る思いで顔を上げる健太。
そんな兄に優香は意地悪く笑って……不意に目を閉じた。
「今からでも……一緒に逃げてくれるなら……誰も知らない遠い場所で、二人だけで暮らしてくれるなら……全て赦せます」
「そ、れ……」
それは
つい数時間前に
『あの時頷いたのは、ごめん……けど……やっぱり、普通の兄妹に戻らないか……?』
榊健太が、榊優香を裏切ったことだった。



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3459日前に更新/502 KB
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