【貴方なしでは】依存 ..
[bbspink|▼Menu]
53:名無しさん@ピンキー
09/08/07 03:39:12 Mtamf1Ts
うーむ。こりゃ凄いですよ。ホントに・・・
GJ!

54:名無しさん@ピンキー
09/08/07 06:48:27 vJ8KATag
GJだけど…ここは◆ou.3Y1vhqcが投下したすぐ後に投下するのが流行ってるの?
別にルールとかないけど普通ちょっとぐらい間開けない?

55:名無しさん@ピンキー
09/08/07 07:34:05 CJCjQGP3
このスレは初めて来たけど
何だこれおもすれー
GJ

56:名無しさん@ピンキー
09/08/07 08:21:28 FJ56ybm9
イイヨイイヨー

57:名無しさん@ピンキー
09/08/07 14:46:59 rN+W5ljD
>>54
へえ他のSSは◆ou.3Y1vhqcの後に投下されてたのか
全然気づかなかったわ。あんまり作者とかみてないし、乞食の俺は感想の有無に関係なく読んでるから知らなかった
お前は◆ou.3Y1vhqcのことをよく見てるんだな
いや、◆ou.3Y1vhqcのこと というよりは◆ou.3Y1vhqcが投下した後のこと の方が正しいか

58:名無しさん@ピンキー
09/08/07 16:32:44 72H1AFye
お前は誰と戦っているんだ

59:名無しさん@ピンキー
09/08/07 22:10:50 IM2ULake
戦ってるんじゃない!依存しているんだ!
こうですか、わかりま(ry

60:名無しさん@ピンキー
09/08/07 22:12:32 p5KEpixB
>>54
21 名前: ◆ou.3Y1vhqc [sage] 投稿日: 2009/08/06(木) 08:46:16 ID:/GW3XAKI

23 名前: wkz ◆5bXzwvtu.E [sage] 投稿日: 2009/08/06(木) 14:56:59


◆ou.3Y1vhqc氏が書き込んでる最中に割り込みまくるならともかく、
6時間も間が空いてるんだし何の問題も無いのでは?
レス番号だけなら「すぐ後」かもしれんけどさ。

◆ou.3Y1vhqc氏がコンスタントに書き続けているから、そう見えるだけかと。

>>57
気持ちは分かるが落ち着け

61:名無しさん@ピンキー
09/08/07 23:52:53 Hrb/ZWEV
>>60
>>54は6時間が速すぎると思ったんだろう
スレによっては一日ぐらい待てってところもあるしな

>>54
このスレはほとんど職人さんの投下がないからか
>>1にも投下は時間を空けての文言はないし
投下間隔をみんな気にしていないだけじゃないかな
>>54もあまり気にするなよ
レスを流そうとしてるとかそういうんじゃないんだからさ
まったり依存していこうぜ

62:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:06:38 +ERTFzLW
>>54
 ごめんなさい、配慮が足りませんでした。
実は前スレ後半には出来上がっていて、残容量の関係で
投下を控えていたために、新スレになって早々流して
しまった状況で、心遣いが不足してました。
 今後は無いようにします。ごめんなさい。

 そんな訳で、とりあえず、最終回。

63:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:08:44 +ERTFzLW
              わたしの棲む部屋(3)

「あぁ。えっと……」
 言葉を失う杜守さん。それも当たり前だ。わたしだって、
わたしがこんなことを言い出す人だなんて先週まで全く知ら
なかった。びっくりしてしまうのは良く判る。でも。びっく
りされてるのは、とても辛いのだ。なぜって、わたしだって
恥ずかしいと思ってるんだから。

 杜守さんの目の前で、長めのシャツの裾をまくり上げる。
―どこまで見えてるか判らないけれど、太ももを限界まで、
もしかしたら恥ずかしい染みがあからさまに広がってる下着だ
って見えてるかも知れない。
 わたしは羞恥心で顔を上げられない。視界に見えてるのは、
値段の高いパソコンチュアに腰掛けている杜守さんの、ひざ、
腰、胸、意外にきれいな手、そして喉元。その喉元が何かを
嚥下するようにごくりという動きを見せるのを発見してしま
って、わたしの身体の中の恥ずかしさが、一瞬で陶酔にも似
た甘い期待感に変わる。

 杜守さんも少しは……発情してくれてるのかな。

 視線を伏せたまま、半歩近づく。
 本当は滑るように優雅に接近したかったのだけど、無理。
おそらくわたしの足取りは酔っぱらいのそれでしかない。無
理な体勢に危機感を覚えたのか、杜守さんの両腕が反射的に
伸ばされる。わたしはその両腕をプラットフォームにして、
杜守さんに顎の下辺りに、おでこを着地させる。


64:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:11:27 +ERTFzLW
 だって、顔なんて恥ずかしくて絶対上げられない。
 茹だりすぎて、きっと変になってる。
 こうしてたって、唇が勝手にわなわな震えちゃうし、酸素
が足りなくて頭が馬鹿になりそうな自覚がある。

 杜守さんの顎の下、胸と云うにはちょっとばかり高めの場
所におでこをくっつけて、不自然な体勢のまま、訊ねる。

「杜守さん……。わたし、発情してます。えっちしたくて、
おかしくなりそうです」
 声は途切れ途切れだし、かすれたり、引っかかったり、到
底色っぽい誘いにはなってない。精々が哀れっぽい救命要請
にしか聞こえなかったと思う。でも、その言葉で、杜守さん
の呼気が詰まったようになって、大きな手のひらがわたしの
腰の後ろ辺りに回される。
 次の瞬間、わたしはあまりにもたやすく杜守さんのひざの
上に抱きかかえられる。向かい合わせのまま、杜守さんの脚
にまたがるように。子供扱いのような体勢だけど、いまの状
況ではかえって恥ずかしい。普段の身長差がうまって、わた
しはあわてて杜守さんにしがみつく。
 しがみついていないと、わたしの顔が杜守さんに覗き込ま
れてしまうのだ。俯いてるとか、視線を落としてとか、通用
しない距離と角度になってしまっている。

「ひゃ、わ、ぁ、ああぁ」
 どこの誰が立てる声だ。って自分で突っ込みを入れたいよ
うな甘くてかすれた声がわたしの。事もあろうにわたしの口
から自動的に出る。杜守さんがわたしのおしりの位置を(臆
病なわたしは無意識的に、杜守さんとくっつかないように腰
が引けていたのだ)調整するように、ぐいっと引き寄せて、
そのまま背筋をさぁっと撫で上げたのだ。


65:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:13:32 +ERTFzLW
 は、恥ずかしい。
 セックスってこんなにも恥ずかしい物だとは知らなかった。
 杜守さんとはこれで三回目のはずなのに。
 何でこんなに恥ずかしいんだ。わたしはおかしくなってし
まっている。

 杜守さんの指先が、Yシャツの布地の上から、わたしの背
筋を、何回も撫でる。始めの数回は安心させるように大きな
手のひらを使っていたのに、次第に悪戯っぽい動きになって
ゆく指先が、まるで背骨の形状を確認するかのように、一個
一個のふくらみを肉の薄い背中の上で探索する。
 わたしの身体は、それだけの動きにあきれるほど敏感に痙
攣してしまう。それはわたし自身でも制御できない不如意な
反応で、声を立てないように食いしばった口から、湿った吐
息が次々に漏れ出す。
 背筋を降りていった指先は、尾てい骨方面へと進行し、や
がてパンツの縁まで到着する。そこでからかうようにそのゴ
ムをたどった後、さらりとお尻に接触する。わたしは、パニ
ックになって杜守さんにしがみつく。

 下着、濡れてる。ぐちゅぐちゅになってる。
 そんなの部屋に入る前からだけど。それを杜守さんに知ら
れちゃう、確認されちゃうと云うのは、こんなにもいたたま
れない気持ちだとは思わなかった。ううん、予想も覚悟もし
てたのに、全然足りなかった。

 でも、杜守さんの指は割合あっさりとそこから離れて、背
中に戻ると、わたしをなだめるかのように暖かくぽんぽんと
叩いてくれる。わたしは粉々になってしまった脳内をとりま
とめようと、杜守さんの首筋に顔を埋めて、荒い呼吸を続け
る事しかできなくなっていた。


66:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:15:37 +ERTFzLW
「いっぱいいっぱい?」
 杜守さんの言葉に、こくりと頷く。
「じゃ、降参して終わりにしよっか?」
 ええっ!? そ、そんな。真っ白になるわたしの頭。杜守
さんの声は、かすかに笑いを含んで意地悪っ子のようになっ
ている。わたしは必死になって、顔を振る。首筋に埋めたま
まなので、肩口を頭でぐりぐりしているようにしかならない
けれど。

「じゃぁ、胸。みせて」
 ううう、あんまりだ。

 わたしは、その言葉からたっぷり1分ほど躊躇ったのち、
のろのろと上半身を杜守さんから引き離す。えっちしたいっ
て申し込んだのはわたしだから、仕方ない。そんな風に自分
に何十回も言い聞かせながら、身体を起こす。

 太ももを大きく開いて杜守さんの腰にまたがったまま、わ
たしはYシャツのボタンを外してゆく。普段、当たり前のよ
うに上から外していくのに、往生際の悪いわたしは、下から
順番にしかボタンを外すことが出来ない。サイズが大きいか
ら、外しただけで肌がすぐさま見えちゃうようなことは無い
と思うのだけれど。

「あ、おへそ見えたよ」
 思うのだけれど、現実は違った。からかうような杜守さん
の声。嬉しそうな響きで、わたしの頬が余計に加熱される。
ううう、見ないで欲しい。たいしたものじゃないのだから。


67:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:18:12 +ERTFzLW
「ひゃわ、わ、くうっ、うぅっ……」
 突然杜守さんの手のひらが、脇腹に当てられる。その大き
さと暖かさは容赦がないほどで、動きの止まったわたしに杜
守さんはにこりと笑いかけると、自然な態度で手のひらを上
の方にスライドさせる。
 両手の平はわたしの脇腹を撫で上げて、決して無い訳では
ないけれど、かといってとても豊富とは言えないわたしの胸
の膨らみを、文字通り手中に収める。
 下側からふわりと支えられたわたしの胸は、別にたいした
刺激を受けた訳でもないのに、杜守さんの掌のなかでじんじ
んと甘ぁい疼きを発信し始める。脇の側からふにふにと手の
ひらを動かす杜守さん。乳首には触れてないけれど、胸をさ
わさわと触られる度に、Yシャツの布地がこすれて、はした
ない感触が走る。
 一番上のボタンは外せてないから、その瞳にわたしの胸は
見えていないはずだけど、何でそんなにジャストな位置でさ
われるのだろうか。

 わたしの脳内は、もう完全にパニックになりかけている。
 そもそも前にしたときは、部屋は暗くしてたし、ベッドの
布団の中だった。いまは電気も灯ってるディスプレイの青白
い光に照らされた部屋の中だ。パソコンチュアで、杜守さん
のひざの上で、わたしはえっちでえろえろな女の子宣言をし
ちゃってて、どこにも隠れる場所はないのだった。

 杜守さんはゆっくりとその温度でなにかを融かすように胸
を触っている。わたしは恥ずかしさで身動きも出来ない。杜
守さんはまた微笑むと、わたしにすいっと近づいて、ちろり
とわたしの唇をなめた。それだけで。それだけのことでわた
しは太ももに力を入れてがくがくしそうな腰を我慢しなけれ
ばならなくなる。


68:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:20:16 +ERTFzLW
 睨もうとしても、杜守さんは手柄を立てた悪戯小僧みたい
な微笑みでわたしを見ているだけだ。この人は、こんな人だ
ったのですか? わたしの脳内で、あうあうとパニックだけ
が雪だるま式にふくれあがってゆく。

「落ち着いて」
 落ち着いてなんかいられる訳無いでしょう! わたしはや
けくそになった突っ込みをしたいのだけれど、あいにくそう
いう台詞が言えるようには生まれついて無く、ましてやこの
状況下では云えるはずもなく、ただ恨みがましい視線で杜守
さんを見つめることしかできない。

「まだ、余計なこと、考えすぎ」
 杜守さんがささやく。どういう意味だろうと思った瞬間、
杜守さんはその一瞬の隙を突いて、またわたしの唇をちろり
と舐める。うううっ、それは卑怯ですよ、と思った瞬間、杜
守さんの両方の親指が、いままでは見逃してくれていたわた
しの乳首をくるんとこすり上げる。
「〜っ!!」
 杜守さんの肩に置いたわたしの指先が、ぎゅっと掴みかかっ
てしまう。胸が、胸の中心がつーんとなって流れ出してしま
いそうな甘い感覚。

「気持ちいい?」
 杜守さんの言葉に頷く。恥ずかしくて、浅く頷いたら、杜
守さんは非道にも、羽のように軽く挟んだ乳首をすりすりと
してきた。わたしは慌てて、気持ち良いです、すごく、なん
て降参の台詞を吐いてしまう。

「ご褒美に、キスして良い?」
 一も二もなく頷くわたし。杜守さんの舌先が、何度かわた
しの唇を舐める。その後、わたしの下唇をはむっと挟まれて、
ぺろっとされて、わたしの閉じていることすらも出来なくなっ
た口はあっさりと杜守さんの侵入を許してしまう。


69:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:22:27 +ERTFzLW
 キス、されてる。
 杜守さんと唇を合わせている。頭の中は蜂蜜をたっぷりと
掛けたシュークリームのような、もう甘ったるくてふわふわ
な何かに占領されて、ろくに思考も出来なくなってる。

 杜守さんが、乳首をきゅうっとひねるとその刺激はわたし
の脚の指先まで走って、空中で何かをつかむように丸まって
しまう。一方、何か大切なもののように乳首を丁寧にすりす
りされると、もっとそれが欲しくて、合わせた唇の間から、
甘え声が止まらなくなる。

 唇の周りが唾液でべとべとになってもキスをやめられない。
すればするほど、杜守さんの唇が美味しくて、気持ちよくて、
夢中になって味わってしまう。杜守さんが始めたキスなのに、
わたしのほうがおねだりするように舌を絡め続けている。

「えっちになった?」
 やっと唇を外すと、杜守さんが聞いてくる。こくこくと頷
くわたし。えっちになったというか、それ以外無くなったと
いうか、発情しきったわたしは杜守さんに触れているのが気
持ちよくて、それだけで身体中が勝手にひくひくしてしまっ
ている。

「じゃぁ、ベッドに行こうか」

 別段すごい憧れがあった訳じゃないのだけど、お姫様だっ
こと云われているものをされてしまった。恥ずかしいと云う
より、照れくさい。でも、そんな照れくささよりも、いまは
杜守さんにくっついていられるのが嬉しい。
 えっちになったわたしというのは、どうやら普段のわたし
自身よりも、相当欲深いらしい。それも、原始的な欲深さだ。
まず、杜守さんの近くに居たい。出来れば触れていたい。い
や触れていないと、気が済まない。しかもその上、触れてい
る面積を限りなく大きくしたいらしいのだ。
 確かにわたしは寂しがり屋で、自己嫌悪的な気分の時は、
胸をつく孤独感だけで一晩中眠ることも出来ないで過ごすこ
ともあったけれど、動物化してしまうとここまで甘えん坊に
なるのかと、自分でもびっくりしてしまう。


70:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:25:02 +ERTFzLW
 手の平で触れていたい。
 でも、それだけよりは抱きついていたい。
 ただ抱きつくよりは脚を絡めたい。脚を絡められたなら、
唇を付けたい。望ましいのは唇へのキスだけれど、それが出
来ないのならどこでもかまわない。首筋でも、胸でも、指先
でも、いまなら杜守さんの身体中にキスをして、唇でなぞる
のだって、絶対してみたい。
 それはご奉仕とか対価とかサービス精神では全くなくて、
ただ単純にわたしの我が儘で「触れる面積を増やして甘えた
い」だけなのだ。

 だから、ベッドに投げ出されたわたしは、必然的に離れて
しまった杜守さんに強い不満を覚える。杜守さんのシャツを
つかんで、子供のようにつんつんと合図を送る。もっとくっ
ついていたいから。
「そんなに引っ張らないで、俺も脱ぎたいし」
 なんて杜守さんが言っても、わたしは少しも納得できない。
服を脱ぐなんて些末なことだ。くっつく方がよっぽど大事。
なぜかわたしの動物部分は確信してしまっている。

「あの」
「ん」
「わたしが、脱がせます」
 反論は一切許さない断固たる態度。つまり挙動不審気味に
視線を泳がせつつ、真っ赤になった頬を隠して小声で呟く。
という手法でわたしは意思表示をする。発声はこの際重要で
はないのだ。実力行使が重要なのだ。


71:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:27:16 +ERTFzLW
 ベッドの上に無理矢理上がってもらった杜守さんに、まず
はめいっぱい抱きつく。大きい。180cmを越える杜守さんは、
わたしから見れば本当に巨大だ。抱きつく甲斐がある。
 ひとしきりぎゅっとハグをしたあと、本格的に服をぬがす。
抱きついたままベルトをはずし、ファスナーを引き下げる。
シャツのボタンは、片手で外す。だって、そうすれば、もう
片方の手は杜守さんにしがみついていられるから。
 杜守さんの胸に頬をこすりつけながら、シャツの下のTシャ
ツをずらして、肩を抜き、どんどんはだけさせてゆく。杜守
さんの胸板が現れると、そこにも頬ずり。何回かキスをして、
味を確かめて、またシャツを脱がす作業に戻る。
 杜守さんの身体に触れたい。動物的に発情したわたしの身
体を擦りつけたい。
 そんな具合に趣味全開で進めていたら、服を脱がすだけで
20分くらいかかってしまったらしい。それでも、杜守さんの
パンツまで全部脱がせて、思いっきり抱きしめる。
 ちらりとみえた杜守さんのそこは、もう固くなってる様に
見えて、思わず。思わずなのですが、ぎゅっと握ってしまう。

「えうっ?」
 杜守さんの声で、我に返る。
 に、に、に。握ってしまったらしい。大胆なことをしちゃっ
たことに気がついたわたし。でも、身体の方はいっこうに手
を離す気配がない。杜守さんを抱きしめて、左手は首筋に絡
めるように両脚を杜守さんの右足にからめ、胸板に頬ずりし
ながら、右手であそこを握っちゃったりして。
 そうなのだ。つまり、触る面積を増やしたいのだ。わたし
の身体は、わたしよりもずっと素直で、責任を取るわたしの
身にもなって欲しい。

 やけくそになったわたしは、無理矢理顔を上げる。わたし
の腰に手を回したまま、ちょっとびっくりしてる杜守さんと
視線が逢う。慌てて目をそらした後、もう一度視線を合わせ
て、もうどうにでも慣れなんて気分で、微笑んじゃったりし
て。
 あああ、ごめんなさい。ごめんなさい。でも、あれを握っ
たまま微笑む女って相当にダメダメだ。なんて突っ込みもし
てみたりして。いえ、そんな体裁はもう良いんです。


72:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:30:15 +ERTFzLW
「上手に……脱、がせられまし……たか?」
「うー。ちょっと上手すぎ」
「ダメですか」
 ぎゅぅっと腰に回された手に力がこもり、わたしは抱きし
められる幸福感で自動的に杜守さんにしがみつく。

「ううん、良くできました。……ずっと握ってる辺りが、す
ごくえっちだね」
 にやっと笑われて、羞恥で体温が上がる。けれど、握って
いる手のひら自体は、杜守さんの鼓動と、興奮が伝わってき
て、どうしても離す気になれない。変態同然。というか、変
態そのものなのかも知れないけれど、触ってるだけで、安心
とスリルという本来逆の性質の感情が渦を巻いて、くらくら
するほど気持ちがよいのだ。

 わたしも悟ったことがある。

 実を言えば、わたしはその。口で愛撫するという、つまり、
いわゆるあれの経験がないのだが、いまなら出来る。出来る、
というか、かなり没頭して、楽しめてしまう実感がある。
 さっきキスをして脳みそをとろかされたわたしにはそれが
想像できてしまっている。粘膜をふれあわせるというのは、
境界があやふやになるほどの快楽だから、肌を触れあわせる
のより深いスキンシップ欲を満足させてくれる。
 つまり、白状してしまうと、口でするのは楽しそうだ。わ
たし自身のイメージががらがら崩れそうだけれど、正直な気
持ちだから仕方ない。いまなら、一時間でも二時間でもしゃ
ぶっていられると思う。甘えたい欲求を相手にぶつけて、そ
の結果相手が気持ちよさそうにしてくれたりするのなら―
そんな様子を想像しただけで、半日でもしゃぶっていられる
って保証できる。


73:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:32:17 +ERTFzLW
「えっちで、すみません」
 不埒な―おしゃぶりするなんて妄想に浸っていたわたし
は、真っ赤になってわびる。

「ううん。可愛いです」
 杜守さんは、そう言うとわたしをくるりとひっくり返す。
小柄なわたしは、まるでお好み焼きのように見事に反転させ
られて、杜守さんの身体の下になる。

「あ、あぅ」
 そうされて見下ろされると、さっきまでのえろえろで積極
的だった脳内が、一気に弱気になって恥ずかしさが倍増する。
でも、杜守さんは「動いちゃダメですよ」なんて云って、わ
たしの身体にキスを始める。
 まず、おへそ。腰骨。パンツに指がかかって、桃の皮のよ
うにぺろん、とめくられる。視界の隅でちらっと確認すると、
哀れなほど濡れちゃってるパンツとあそこの間には粘液の糸
まで引いちゃっていたけれど、幸い杜守さんはコメントせず
にスルーしてくれてほっとする。

 でも、そのほっとしたのもつかの間、杜守さんはわたしの
左の足首をぎゅっとつかんで、そのまま持ち上げちゃったり
する。わたしは大きなベッドに背を預けたまま、(自慢する
ほどじゃない)胸の谷間に片ひざだけを抱えるような屈曲姿
勢で、杜守さんのキスを受ける。

 その場所は、ひざ。


74:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:35:09 +ERTFzLW
 なんでそんなところに!? なんてパニックなのはほんの
序の口。ひざにキスされて、ぺろっと舐められちゃうのは、
嘘じゃないかってパニクっちゃうほど気持ち良かったのだ。
 くすぐったさが極まって、何か別のものに化けちゃいそう
な、奇妙な刺激。身をよじって逃げたくなるうずうずは、恐
怖感にも似ていた。でも、そのくすぐったさから逃げようと
した腰を抱きしめた杜守さんの腕の中で、わたしは何かの間
違いですからって弁解したくなるほど濡れちゃっていた。
 ひざ小僧を舌がぺろぺろされてしまう。初めての愛撫で、
こんなに気持ちよくなってしまって、わたしはあうあうと逃
げ口上を小声で並べ立てるけれど、それは杜守さんに全部却
下されてしまったりして。そのまま唇が太ももの内側に降り
てきて、両脚の間のみっともないほど蕩けた部分にふぅっと
息を吹きかけられただけで、もう限界になってしまう。

 ごめんなさい。
 もうだめです。
 くっつきたいです。

 くっつくというのは、もう、抱きしめるとか、脚を絡める
とか、キスするとかじゃないです。そんなのじゃ我慢できな
くて、それは本当に、もっともっと繋がりたくなっちゃって
て。つまりしちゃいたいって事です。
 っていう事を必死になってもぐもぐ云ったわたしに、杜守
さんは笑いかけてくれる。相当意地悪な笑いに見えたのだけ
ど、切羽詰まっていたわたしは、お願いです。なんて懇願し
てしまう。


75:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:37:32 +ERTFzLW
「はい。じゃ、しますね」
 ずっとお預けされていたわたしのそこはぽってりと濡れきっ
ていて、久しぶりだけれど問題もなく杜守さんを受け入れて
ゆく。熱くて固いものが、狭くてみっちりした肉をかき分け
て侵入してくる感覚。押し広げられていく実感だけで、意識
が軽く飛んでしまう。
 みっちりとした質感。身体の内側にあってどうしても指が
届かないもどかしいむず痒さを、ぎちぎちと擦り癒される快
楽と、寂しさが埋まってゆく充実感で、わたしの口からはだ
らしない声が漏れてゆく。

 気持ちいい。
 気持ちよすぎる。

 吸う息も吐く息も自由にならない。身体のコントロールの
中心が下腹部に、杜守さんの突き刺された部分に集中してし
まって、その部分から伝達される快楽がわたしを支配し始め
ている。
 わなわな開く唇からは、押し出されるように舌がだらりと
出てしまいそうだし、自分でも緩みきった表情になっている
のが判る。

 ごりごりと押し込まれるときは、精神の中にぽっかり空い
ていた寂しさの穴がみっちりと満たされて、メープルシロッ
プのような幸福感が身体中を浸してくる。
 恥知らずな肉がまとわりつきながらも引き抜かれていくと
きは、手が届かなかったむず痒く発情しきった部分を、こっ
てりと擦ってもらう快楽で、太ももが自然とひくひく動いて
しまう。

 ううう、気持ちいいよう、ずるい。こんなに気持ちいいな
んて知らなかった。ごめんなさい、ごめんなさい。わたしは
ぐちゃぐちゃになった頭の中で、訳もわからないままに詫び
る。
 だって謝りでもしないと申し訳ないほど気持ちいい。


76:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:40:03 +ERTFzLW
 杜守さんが言ったの、本当だ。
 発情してないときにセックスしちゃダメだ。
 お礼で身体重ねるとか、良くない。すくなくとも、こんな
発情えっちを期待していて、お礼のためのセックスなんかを
提供されたら、公共広告機構に訴えられても仕方がない。

「きもちいいです、ごめんなさいぃ、あぅあ……うぅ……あ、
あ、あっいぇ……ずるぃ、ずるいですっ……」
 決してペースの速くない杜守さんの動きなのに、脳の中が
ぐつぐつに煮込まれて、訳がわからなくなっている。

「気持ちいい?」
「気持ちいいです……すごいよぅ……」
 ゆっくりと、でも有無を云わさぬような確かさで埋め込ま
れる杜守さんのもの。すごい。腰がぐっと押しつけられて、
わたしの行き止まり、一番深い部分にぎちゅっと接触する。
たまらない。身体の内側が溢れるほど満たされる。
 内蔵を通り抜けて、頭の内側まで圧迫されるほど、わたし
の内側が杜守さんで一杯になる。深くて、一杯で、寂しさも
自己嫌悪も絶望も入る隙間がない。

 わたしのエッチなあそこが、頬一杯に食いしん坊になって
杜守さんを抱きしめる。それでも収まりきらずに揺すられる
と、お腹のそこにしびれるような快楽が次々と破裂する。

「反省した?」
「しました、しましたぁっ……」
 身体も心もどろどろに液状化して、杜守さんの言いなりに
なってる。言いなりになっているのが気持ちいい。
 引き抜かれてゆく熱い固まり。引き留めようとぎゅぅっと
抱きつくけれど、それはすべての粘膜をぬるぬると未練がま
しく擦りつけるだけ。擦り上げられた内側がショートしそう
なほど気持ちいい。頭の中と直結されて、麻薬のような稲妻
がぱちぱちとスパークしている。


77:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:42:14 +ERTFzLW
「発情えっち、好き?」
「好きですっ」
 ためらうなんて出来ない。欲しくて、深い部分まで欲しく
てわがままな子供みたいに腰を揺すっておねだりをしてしま
う。

「眞埜(まの)さん、すごく可愛いですよ」
 その言葉は気持ちよさのあまり真空になったようなわたし
の心にダイレクトに入ってきてしまう。嘘だぁ。そんなの社
交辞令に決まってる。なのに、わたしの身体はその言葉だけ
で、一段どころか数段飛ばしで快楽の受信量を増大させる。
 社交辞令でもお世辞でも何でもいい。幸せだから。ずるい。
抵抗できる訳、無い。そんなこと、云われたこと無いから、
下腹部が狂ったように幸福になってゆく。

「見ちゃうね」
 わたしが未練がましく身につけていたYシャツの、首元の
最後のボタンを杜守さんは外す。はらりとはだけるシャツ。
自慢できないわたしの身体、めりはりに欠けてる、ムーミン
谷のにょろにょろみたいな胸も、胴体も、ウェストも丸見え
になる。

「白くて、きれいで、美人さんですよ」
「嘘だぁ〜……ぁぅんっ……」
 わたしは腕を持ち上げて顔を隠す。そんなことを云われたっ
て信じることは出来ない。わたしの身体は細いばかりだし。
胸だって大きくないし、お尻だってないし、ウェストのくび
れだって自慢できない。幼児体型ではなく、ただ単に貧相な
のだ。
 だから杜守さんのそれは社交辞令でお世辞だ。


78:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:45:26 +ERTFzLW
 問題なのは、そんなリップサービスが、わたしにとっては
涙が出るほど嬉しいということ。あんまりにも夢見ていたよ
うな言葉だから、嘘だと判っているのに、わたしの心のは舞
い上がって、勝手に幸福になって行ってしまう。社交辞令だ
と判ってるだけに涙がこぼれるほど切ないのに、幸福なのも
本当なのだ。

「お世辞ですか」
「社交辞令ですよぉ、そんなのぅっ」
 杜守さんのくすくすと笑う気配がした。だからわたしは確
信する。やっぱりお世辞なのだと。そんなこと事実であるは
ずがないのだと。それは痛かったけれど、慣れた痛みだから
そうだと信じたのだ。いま抱いているわたしに甘い言葉をく
れたのだろうと。

 しかし、本当はお世辞ではなかったのだ。
 いや、社交辞令であった方がいろんな意味で無難だったか
もしれない。杜守さんがあんなタイミングでくすくす笑うこ
との意味を、わたしは全然判っていなかったのだ。
 杜守さんはわたしの考えてた十倍も百倍も鬼畜なのだった。

「嘘なのですか?」
 ほんのすぐ近くで聞こえる声。ぎゅぅっと押しつけられた
腰が、わたしの性器を満たして、奥の奥までぎちぎちにして、
その上杜守さんが抱きしめてくれる。身体に含まれている媚
薬のような甘い成分が、ぎゅぅっと絞られて脳まで侵してく
るような、幸せすぎる充実感でだらしない声が止まらない。
 杜守さんはそれを判っているのか、ゆらゆらと揺れるよう
なリズムで、奥の方をこつんこつんと刺激してくる。


79:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:48:17 +ERTFzLW
「うそ……に……きま……って……ますぅ」
 それでも幸せで、だって悲しさも寂しさも、こんなに深く
密着して抱きしめられたら、入り込むことが出来ないから。
満たされすぎて、幸せしか感じることが出来ないから。

「そうなの?」
 今度はずるずると引き抜かれる。弾けるような刺激。引き
抜かれていく。あんなに深く満たされていたものが引き抜か
れると、身体の中心部にぽっかりした欠落が出来たような寂
しさを感じて泣きたくなる。
 なのに、身体中は快楽に痺れて抵抗できない。抵抗できな
いようにされて引き抜かれるという事実が、余計に快楽を深
めてしまう。寂しい、寂しいのに気持ちいい。

 先端だけが浅く埋まった、引き抜きと串差しの間のわずか
な間隙。だらしなく開かれたわたしの太ももの間のインター
バル。わたしのあそこは、次の侵入に焦がれて、じりじりと
灼かれてゆく。一番奥まで埋めきられた充実感と多幸感が欲
しくて、恥ずかしいけれど、腰をもじもじ動かして催促して
しまう。
 気持ちよさが一旦収まる方向へと向かうと、その余熱と、
ふくれあがる腰の中心部の物足りなさが、わたしの中の寂し
さと混ざり合って、狂おしいほど切なくなってゆく。

「眞埜(まの)さん、可愛いくないの?」
「可愛く、無いです」
 杜守さんは意地悪っ子笑いでたずねる。わたしは顔を背け
て、小さな声で言い訳をする。

「美人さんで、身体もきれいだよね」
「美人でもきれいでもないです」
 こんな中途半端な位置で止めて、杜守さんは意地悪だ。えっ
ちの最中にまでわたしのコンプレックスをえぐらなくても良
いのに……。視界にすっと影が差す。わたしより身長にして
30cm大きい杜守さん。背中を曲げるようにして、わたしの上
に覆い被さってくる。
 わたしの首筋に頭を埋めて、ちゅ、なんて音が聞こえたと
思ったら、耳たぶが軽くかまれていた。ぞくぞくするわたし
の耳元で、杜守さんの低い声が聞こえる。

80:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:54:59 +ERTFzLW
「眞埜さんは可愛い人だよ」
 ゆっくりゆっくりと杜守さんが腰を押しつけてくる。じっ
くりと、焦らすように。動物になっちゃってるわたしは、揮
発性燃料を追加されたようにどんどん発情して行ってしまう。
物足りなさも、寂しさも、朝露のように蒸発して、充たされ
てゆく。
「う、う、嘘です」
 半分も入っていないのに、今度は引き抜かれていってしま
うそれ。わたしはあの焦れったさを思い出して腰を揺するけ
れど、杜守さんは逃げていってしまう。

「や、やだぁ。……うう〜」
「眞埜さん、きれいでしょ?」
 またゆっくりと侵入ってくる杜守さん。声が優しい。じわ
じわ進んでくるときに、敏感な部分に当たるとそれだけでひ
ざががくがくするほど気持ちよくて、からだがイルカのよう
に跳ねてしまう。
「きれいだよね?」
「違います……もん……」
 途端にじわじわと引き抜かれてゆく。―そこまでされれ
ば、いくらわたしでも気がつく。うううう、うわぁ!? な
んて極悪な人なんだ。杜守さんはっ!! む、無理矢理わた
しに嘘をつかせる気なんだ。

「い、意地悪ですよ。杜守さん。嘘つかせるなんてっ」
「そんなことないよ?」
 優しい声。わたしの耳たぶを加えて、杜守さんは唇ではむ
はむして軽くキスをする。耳から伝わる刺激だけで、浅く埋
められたわたしのあそこは次から次へとおねだりの粘液を流
してしまう。

「眞埜さん。頭の中、どろどろにえっちでしょ?」
 こくりと頷くわたし。
「もっともっと発情して、病みつきになって」
 杜守さんの声に、酔ったようになってぎゅっとシーツをつ
かむ。いつのまにかゆっくり入ってきている杜守さん。かみ
しめるように締め付けると、満たされている快感で、欠落が
埋まってゆく。


81:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 00:57:21 +ERTFzLW
 なる。
 なります。
 病みつきになる、なるからっ。

「じゃぁ、可愛いのも、認めちゃおう」
 うううう。ひどい。なんて極悪なのだ。わたしは、しがみ
ついた杜守さんを離したくなくて、こくりと頷く。でも杜守
さんはその程度じゃ許してくれなくて、耳をはむはむしなが
ら、わたしのことをさらにえっちな生き物に改造する。
 杜守さんは「おねだりなんだけどな」なんて云うから。えっ
ちな刺激がほしくて発情しきったわたしは、その「おねだり」
という単語に我慢しきれないほど当てられてしまって、結局
杜守さんの求めるままに、呟いてしまう。

 嘘なのに。ううう。本当にダメ女子なのに。ダメダメなの
に。
「わたしは可愛いです」なんて。
 蚊の鳴くような声で。必死に抵抗したのに、云わされて。

 その瞬間、杜守さんは狙い澄ましたかのように、深ぁく、
わたしが我慢できないほど敏感な場所に、コツンとぶつけて
くるのだ。そんな場所にくちゅりと付けられたら、わたしが
満たされて幸せを感じてしまうの、杜守さんはとっくに判っ
ているはずなのに。ううう、悪魔だ。

 もっと。って杜守さんが言う。
 わたしはピンク色に狂っちゃったままの脳みそで、あの詐
欺台詞を再生してしまう。こつん。ご褒美に、奥の奥をかき
回される。腰の奥がぞくぞくして、水風船が膨らむように幸
福感を貯蓄していく。

 もう一回、っておねだりされる。
 あの台詞を唱えるわたし。杜守さんは「もっと可愛く、色っ
ぽく」なんてリクエストをしてくる。とろとろにえっちなわ
たしは、甘ぁい声で「眞埜は可愛いです」って云ってしまう。
「すごく可愛いよ」っていうお褒めの言葉と、ご褒美にかき
回されて、一番奥にキスされる。お腹の奥でぐちゅりと麻薬
をお漏らしをしたような悦楽。あそこが幸せになっちゃう。
しがみつくわたしを、えっちな快楽が満たしてゆく。


82:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 01:01:48 +ERTFzLW
 ひどい。詐欺だっ。意地悪。悪魔っ。

 って、思ってるのは本当なのに、わたしの脳みそはどんど
ん幸せになって行ってしまう。幸福が溢れちゃっている。だ
らしなく緩んだわたしの口元は幸せそうな微笑みを浮かべて、
杜守さんに「可愛いです、美人なのです」なんて甘え声でさ
さやいて、そのたびに杜守さんはご褒美をくれる。

 気持ちいい。甘やかされるの、気持ちいい。
 甘えるのは、狂っちゃうほど、脳みそがとろけて病みつき
になるほど気持ちいい。

 幸せって麻薬だって初めて知った。こんなものを味わった
ら、抵抗できない。寂しいあの気持ちに戻れと云われたら、
死ぬ方がましだと思えるほどの幸福を味わってしまう。
 杜守さんと身体を重ねて、これ以上ないと云うほど深く触
れあいながら、こんな風に甘えてしまうなんて。
 もう口を閉じていることも出来ない。喘ぎ声と共に何でも
吐き出された舌は半ば痺れて、言葉も上手に紡げなくなって
いる。

「きもち、いいですぅ…あんっ…眞埜は、きもち……よくて、
可愛くて……うっ……スタイル、よく、なる……」
「反省した?」
 何言われてるか判らない。わからないけれど、する。反省
するぅ。ごめんなさい、ごめんなさい。とらないで、奥まで
ぎゅぅってしてるの、取り上げないでっ。

「癖になった?」
 なってる、なってます。癖になってる、可愛いってゆうの、
気持ちいい。云わされるのも、云われるのも、幸せすぎて、
頭ゆるゆるになっちゃう。なりました。中毒になりましたぁぅ。
「眞埜さん、かわいいよ。我慢しないからね」
 一際強く抱きしめられて、一番奥に埋められて、小さいわ
たしの身体は杜守さんの腕の中にすっぽり包まれるようにな
って、強い圧力をうける。

「かわいいから……杜守さんに……どろどろ…あ……あ……
から。してっ……まいにち……くだ……くださいっ。いっぱ
い……いっぱい……かわ……かわいがって……〜〜っ!!」
 その確かさ、どこかへ飛ばされてしまいそうなわたしは、
しっかりと拘束されて、その拘束さえ気持ちよい幸福感を止
めることは出来ずに、膨らみきった水風船が破裂するように
わたしは弾け飛ぶ。

83:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 01:05:50 +ERTFzLW
「杜守さんは趣味が悪いです」
 身体がだるくて、全身とろりとしたハニークリームみたい
に力が入らない。腰の奥が一杯になってしまったように甘い。
疲れてるしひりひりしているのに、満腹になった昼寝猫みた
いな幸福感が身体の奥にあって、身動きする気にもなれない
のだ。
 それでも、わたしはわたしを抱えてくれている杜守さんに
抗議の言葉をかける。

「なんで?」
 杜守さんはけろりと答える。でも、その杜守さんもちょっ
ぴりだるいようだ。力を抜いて、わたしを小脇に抱きしめて
いる姿は、普段より少しだけ油断しているようで、それがと
ても可愛くて、嬉しい。

「あんなこと言わせるなんて、は、反則です」
「そうかなぁ」
 わたしは趣味が悪いとか、信じられないとか、嘘つきとか、
詐欺師とか、ドSとか、えろえろ飼い主とかきっぱりと……
つまり、口の中でもぐもぐと云ってやった。

「でも、眞埜さんをいただくのなら、一番可愛い眞埜さんを
食べたいでしょ? 眞埜さん可愛いのに自己卑下強すぎだし」
 自己卑下なんかじゃない。ダメ女子はそんなことしない。
ダメ女子は存在開始時から、ダメなのですよ、杜守さん。わ
たしは、またもやべっこりと凹んでしまう。

「眞埜さんはまたそっちに行こうとする。まぁ、リセット」
 そんな風に云われたって、そう簡単にはいかない。だって、
引きこもりで、居候で、特別な技術もない、美人でも可愛く
もなくて、貧相な身体の、高校中退の家出娘なんて、この世
のどこにも行く当てなんて無いのだ。


84:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 01:09:44 +ERTFzLW
「だまされたと思って、ほら」杜守さんの胸に抱きかかえら
れる。
「イヤなら、声に出さなくて良いから。唇だけでね」
 ぎゅっという抱擁。杜守さんの汗のにおい。いまでは幸せ
の香りになっているそれを感じながら、その胸板に顔を埋め、
わたしはその皮膚にちょっと唇を付ける。乾いちゃってる唇
を、舌先で潤して、これでキスしても大丈夫。なんて、昨晩
までなら絶対に出来ない思考。わたしはそれしきのことで、
心臓がどきどきしてくる。

 さっきまでセックスをしちゃっていたというのに、なんだ
か異様なまでに恥ずかしい。けれど、頭の上から振ってくる
杜守さんの「おねだりだからね」なんて云う言葉には到底逆
らえない。

 眞埜は可愛いです。
 ―なんて、唇だけで云ってみる。だけなのに。
 うわぁ、うわぁ!?

 おかしい。わたしはおかしいのだ。変態なのだ。
 こ、壊れちゃってる。

 だって、幸せなのだ。杜守さんの胸に抱かれて、そんな詐
欺を言い立てる、自分に嘘をついちゃってるのが幸せすぎて、
こら、君は自重しなさい! って云うくらい、あそこだって
潤んで来ちゃってる。癖になってる。あの台詞を唇でなぞる
だけで、甘え狂っていた幸福感が再生されてたまらなくなる。
一気に体温が上がって唇がわなわなと震えてしまう。
 杜守さんに抱えられた身体がぎゅぅっと緊張して、我慢し
きれずにしがみつく。


85:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 01:12:24 +ERTFzLW
 一大事だ。
 うううう、ど、どうすればいいんだろう。わたしの頭の中
はパニックで一杯になってしまう。パニックで一杯なのに、
寂しさも不幸も感じれない。だって、シュークリームみたい
でちょっとえっちくさい幸福感が脳を選挙してしまっている
から。わたしの脳の指令を無視して、心の方は甘えん坊の快
楽を貪っている。

「幸福って、時に良薬でしょ?」
 良薬なんかじゃない。ただの麻薬じゃないかぁ!?
 わたしは顔を上げられない。杜守さんにしがみついたまま、
その胸をぼかぼかと殴ってやる。
「眞埜さんが可愛くなればなるほど、気持ちよくなっちゃう
んだよね〜。……また今度とか、したくないです?」

 杜守さんの囁きは、いままでかぶっていた猫を捨て去っちゃっ
て、本物の鬼畜人間になっていた。ドS杜守さんだったのだ。
だからといって、嫌いになんかなった訳ではない。なれる訳
がないではないか。この状況で嫌いになれる女子が居たら、
申告して欲しいくらいだ。
 ましてやわたしは、相当なダメ女子で。

 発情したえっちなんて、耐性はないし。
 幸せになったりしたら、抗えるはずも無くなる。
 好きな人から餌付けされたら、どんなものにだってなって
しまうのだから。絶対絶対に社交辞令で、嘘で、詐欺なのに。

「眞埜さん? 今度お風呂で、おっぱいも大きいって云わせ
てあげますね」
 うううう。わたしは、杜守さんに言われるのなら拒否なん
て出来ない。わたしの中で、幸せと杜守さんと気持ちいいの
は、同じ事になっちゃってるんだから。
「お願い……します……」
 他に云える事なんて、何かあるだろうか?


86:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/08 01:13:02 +ERTFzLW
 以上投下終了、お目汚しでした。とりあえず
 この三回でおしまいっと。
 甘やかな依存になってれば嬉しく思います。
 (本当は杜守も眞埜に依存しているのでしょうが)
 では! 心の師匠ゲーパロ師の帰還を祈りつつ
 流浪投下にもどります。またっ!


87:名無しさん@ピンキー
09/08/08 01:16:00 SoE0djmG
支援?

88:名無しさん@ピンキー
09/08/08 01:17:23 SoE0djmG
あれ、終わってた

>>86
乙でした。これはいい依存の形だな

89:名無しさん@ピンキー
09/08/08 02:18:04 tC8pwDH9
見事発情的仕事・・再見!再見!

90:名無しさん@ピンキー
09/08/08 02:37:14 bqItqAvw
>>86
これはいい……今まで自分が読んできたSSの中でも最高クラスだと感じた…GJ!

91:名無しさん@ピンキー
09/08/08 04:21:55 vpWLDNz/
こいつぁあ甘ったりいぃぃっ!南通天貞(1863〜1921)さんもビックリな甘ったるさだ!
ここまで甘ったるいエロ&依存は初めてだ。なにこのスイーツ?糖尿病?ヤりながら書いた?
こんなもんGJ言うしかないやないかい!GJや!GJやで!!

92:名無しさん@ピンキー
09/08/08 07:14:53 MfM71ksj
>>86
萌え死ぬってこういうことか・・・GJ

93:名無しさん@ピンキー
09/08/08 08:16:41 xWHXBLQr
>>86
もうちょっと読みたいというところで終わらせるとは…なんというSなSS師w

94:名無しさん@ピンキー
09/08/08 09:25:28 dUxG9tgZ
>>86
神GJです



しかし保管庫の更新早いなwwww

95:名無しさん@ピンキー
09/08/08 17:31:01 bHfGBET9
前スレ埋めようぜ

96: ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 21:57:05 oRFbHVQR
ちょっと短いですが、投下します。

97:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 21:59:05 oRFbHVQR
「コーヒー一つと、海鮮ピザと…後はムーのステーキお願い……おまえは?」

「…俺はコーヒーだけで。」

「んじゃ、コーヒー二つで。」
ホーキンズの言葉に対してエプロン姿の女性は「かしこまりました。」と深々と頭を下げ、奥の厨房に入っていった。




―俺達は今、港を後にして町中のとある飲食店に来ていた。
ホーキンズが腹が減ったと騒ぐので、朝早くから開店している店に来たのだが、ホーキンズとは違い食欲なんて俺にはまったく無い。

なぜかと言うと、港で聞こえてきた声が頭から離れないからだ。

幼い少女のような小さい…それでいてハッキリと聞こえた「たすけて」という言葉。

あの言葉は間違いなく俺に向けられていた。
しかし、たすけろと言われても俺にはどうすることも出来ない。とゆうか、まずなにをすれば良いのか分からないし、第一確信が持てない…。
もしかして、俺の幻聴かも知れない…そう考えると、少し気分が楽になった。

「おまえ、まださっきの事気にしてんのか?空耳だよ、空耳。」
店員が持ってきたステーキを頬張りながらナイフを目先に持ってくる。

「あぶねーな…別に気にしてないよ。ちょっと疲れてたのかもしれないしな。」

98:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:00:34 oRFbHVQR
考えるのはやめよう―明日の朝になれば忘れてるはず…。

声を頭から無理矢理消して、コーヒーに口をつける。






―「おっ?おい、あれ……ぷぷっ…くくっ…」
窓の外を眺めながらコーヒーを飲んでいると、ホーキンズが店の入口を指差しながら含み笑いをしだした。

意味がわからず「なんだよ?」と後ろを振り返ると、店の入口付近で挙動不審な行動をしている人物が視界に入ってきた。
入口の前を忙しなく行ったり来たりしており、店の中を覗き込むとまた少し離れて物陰に隠れる。何度も何度もそれの繰り返し。

その挙動不審者に自然と目を細めて誰かを確認しようとする。

身長は150センチ前後。
小さい顔に薄緑の大きな瞳…髪は綺麗な栗色で、その頭には幼さを際立たせる猫耳…。
服は青い花柄ワンピースを着ており、裾と袖には女の子が好きそうなフリルがついている。
そのワンピースの裾からは細い尻尾がピョコッと出ていて、一目でミクシーの少女だと確認できた。

「……はぁ」
その少女の姿を確認すると、盛大にため息を吐いた。

「ぷぷっ…可愛いじゃねーか……ぷっ…く…」
本人は笑いを堪えてるつもりなのだろうが、口の隙間から笑い声が漏れている。

99:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:01:05 oRFbHVQR

「…ちょっと、行ってくる。」
ホーキンズの笑い声に苛立ちを感じたが、気持ちを押さえて席を立ち上がり、少女の所へと歩き出す。

少女も俺を見つけたのか、嬉しそうに尻尾が右左に動いており、店の入口の前で俺が出てくるのを足踏みしながら待っている状態だ。




―「よう。」

「ライトっ!」

店を出ると、少女が俺の名前を呼びながら勢いよく腰に抱きついてきた。身長が低いのでなんとか踏ん張ったが、少し息が詰まってしまった。

「ん〜っ!」

「おい…周りに人がいるから…」
声が聞こえていないのか無視をしているのか……俺の服に頭を突っ込み、お腹に顔を擦り付けてくるので猫耳が胸に触れて物凄くくすぐったい。

「…人の服にいつまで頭突っ込んでだ。」

「あぁ〜!ライトの匂いが…」
いい加減周りの目が痛々しくなってきたので無理矢理頭を服の中から引っこ抜いた。

「あほか…。メノウ…おまえ、また抜け出してきたのか?」

「…神父さまどっかいった…だからライトと遊ぶの…」

幼さの残る声でそう呟くと、俺の服を掴み、不安そうな瞳で俺の顔を覗き込んできた。

100:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:01:56 oRFbHVQR

メノウと言うのはこの子の名前。
胸元にはグリーンメノウの宝石が輝いており、唯一親からの贈り物だと嬉しそうに話していたことがある。

一ヶ月前にその親にこの町の教会に預けられたそうだが、メノウ自身、親に見捨てられたと理解していないらしい。

いや…理解できないのだ。

「ねぇ、ライト、お花畑行こっ!私ね、お花の帽子つくるの!!」

「あぁ…わかった。ちょっと、ホーキンズに話してくるから待ってろよ。」

なぜ理解出来ないのか…それは脳の発達が普段の子より少し遅れているのだ。
年齢は14歳なのだがまだ5歳ほどの知恵しか持ち合わせていないので、行動や言動は五歳児となんら変わらない。
五歳児と違うところ。それは14年間の人生経験があることだろうか…。

「ホーキンズ…少しメノウの相手してくるわ。」
ホーキンズのいるテーブルまで行くと、先程頼んだ食事はすでにたいらげており、次の食事が店員により運ばれてくる所だった。

「おう、また夕方にお前の家まで行くわ。」

「は?なんで?」

「なんでって…さっき港でバレンの人間が言ってたじゃねーか。」
メノウの相手をしていたのですっかり忘れていた。
嫌なことを思い出させる…。

101:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:02:50 oRFbHVQR

「本当に…いくのか?」

「おまえは気にならないのか?あんだけもったいぶられたら気になってしょうがねーよ。」
ホーキンズの言うようにあの男の誘いかたは、見に来なければ損をすると言った感じで自信に満ち溢れていた気がする。

「……わかった。それじゃ、夕方に。」
反論しても無理矢理つれていかれるので諦めることにした。
それに、正直言うとあのコンテナの中も気になる…。
多分、中央広場に行けばあのコンテナの中身もわかるはず。

「おい、メノウ…行くぞ。」

「あっ、うん!ばいばいっ!」

俺を待っている間、店の飼い猫と遊んでいたのか、猫に手を振りこちらに走り寄ってきた。

よく猫に話しかけている姿を目撃するので会話ができるのかと思ったのだが、基本無視されているのでメノウの独り言なのだろう…。
純真無垢な心だからこそなにか動物と通じる物があるのかも知れないが、道端では少し控えてほしい…。

「ねぇ、ライト!今日はいつまで遊べるの?」

「夕方までなら大丈夫だよ。」

「やった!!あのね、メノウね、お花の首輪も―」

「わかった、わかった。」
よほど嬉しかったのか、花畑に到着するまで一切俺の手を離さなかった。

102:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:03:43 oRFbHVQR

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇


―暗い―寒い―痛い―

なにも見えない…お腹もすいた…私はここで死ぬの?
みんなどうなったんだろう…私みたいに捕まったのかな…。

どうでもいいか…どうせ死ぬんだし。

さっきも外の人間に念話をしようとしたけど怖がられて逃げていってしまった…。

まぁ、人間相手に念話なんてしても意味がないか。



―ガチャッ。


何度聞いても嫌な音…

暗い箱の中に一筋の光が差し込む。

―「くっ、くっ、くっ……また稼いでくれよ?」
下品な声…顔を見なくても低脳だとわかる。
こんな男の金儲けの種にされるなんて…。

「おまえは珍しいからな…国につくまで、くたばんなよ?死ぬんならちゃんと稼いでから死ね。」

薄汚い笑いに寒気がする。

だから人間は嫌いなんだ―醜いヨクのカタマリ―無能な癖に欲が絡むと人外如き振舞い。

「よし、行くぞ。」

鉄の箱に無理矢理押し込まれ、連れ出される…。




―はぁ……もう一度だけ。




―もう一度だけ、帰りたかったなぁ―

103:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:04:22 oRFbHVQR

◆◇◆†◆◇◆

「うえぇぇぇぇぇえん!!、ヒッ、ヒック、びぇえぇぇぇえぇぇん!!!」

「み、耳元で泣き叫ぶな!てゆうか、離れろっ!」
俺の服を掴み大声で泣きわめくメノウ……本当に十四歳かと思うぐらい力が強い。
この光景を事情を知らない人が見たら何事かと思うだろうな…。



―なぜ、こんなにメノウが泣き叫んでいるのかと言うと、俺が大嘘をついたので怒っているらしい。

らしいと言うのは俺自身、嘘なんてついたと思っていないからだ。

メノウが言う俺がついた嘘と言うのは「夕方までなら大丈夫」と言う約束のこと。
時刻はもう十八時…嫌と言うほど遊んだつもりなのだが、メノウの言う夕方は太陽が沈むまでだそうだ。

「メノウ…いっぱい遊んだだろ?また遊んでやるかy「やだぁあぁぁっ!!ライド、う、うっ、うぞっ、ウソついだぁあぁぁ〜!!!」

俺が教会から出ていこうとすると、わざわざ俺の前に回り込んで教会の中に押し返そうとする。

先程から何度もこれを繰り返しているのだ。
「ほら、メノウ。ライトも用事があるんだから…いい加減にしなさい。」

隣にいる女性がメノウを優しく諭す。

104:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:05:09 oRFbHVQR

この人は、教会の隣に住むミクシーの女性であり、この教会のシスター。

名前はマリ・アンナ。

10日に一度、ノクタールの教会に出向く神父に代わってメノウの世話をしている女性で、メノウの親代わりでもある。

自分からメノウの世話をさせてほしいと志願したらしい。

神父から聞いた話だがどうにも子供ができない体らしく、メノウの里親になりたいそうだ。

メノウもよくなついている……のだが。

「やだっ、まだ、遊ぶのっ!ライトと一緒にご飯食べる!」

こうなると誰も止められなくなる…。

アンナさんも片手で頭を抱えて下を向いてしまった。

ため息を吐き、時計に目を向ける…。あの店がいつまで開いているのかわからないが、そんなに早く閉まることはないだろう……ホーキンズは……まぁ、いいや…。



「よし…それじゃ、夕食を食べたら今日はちゃんとバイバイできるな?」

「…」

「約束しなきゃ、もう帰るぞ?」

「………うん…。」

かなり怪しい返答だが、しかたがない…多分このまま押し問答をしていれば本当に日が暮れるまで続けるだろう。

「…それじゃ、ライトも家に来なさい。夕食はもうできてるから。」

105:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/08 22:05:47 oRFbHVQR

「…はぁ…わかりました。」

「よかったね、ライト!お姉ちゃん、メノウね、アップルパイがいい!!」
先ほどの鬱陶しい雰囲気は何処へやら…もう頭の中は食べることでいっぱいらしい。

「アップルパイはダメ!あんた、ベッドまで隠し持っていって、夜遅く布団の中で食べるじゃないの。」

「メ、メノウのアップルパイじゃないっ!」

「あんたのベッドがアップルパイのカスだらけなのよ!洗濯する身にもなりなさい!ってゆうか夕食にアップルパイなんて作らないわよ…。」

―この二人を見ていると本当の家族のように見えてくる。

だけど、本当の家族にはなれない…多分アンナさんもそれは分かっているはず。

メノウを寝かせると、決まって夜中、寝言で母親を呼ぶらしい。

…涙を流しながら…。
突然、母親がいなくなる恐怖…俺は嫌と言うほど理解している。
メノウの場合は親から離されたあげく、知らない町に連れてこられたのだから心寂しくなるのも無理はないだろう…。
少なからず境遇が似ているのでほっとけないのかも知れない。

「アップルパイ!アップルパイ!」




…どちらにせよ今は夕食にアップルパイが出てこないことだけを願おう。


次ページ
最新レス表示
スレッドの検索
類似スレ一覧
話題のニュース
おまかせリスト
▼オプションを表示
暇つぶし2ch

4145日前に更新/500 KB
担当:undef