【貴方なしでは】依存スレッド5【生きられない】
at EROPARO
[前50を表示]
450:名無しさん@ピンキー
09/09/18 10:21:16 1MYb7+gx
作者じゃなくて作文書きな
451:名無しさん@ピンキー
09/09/18 18:39:37 LKz0Xe6O
>>448
ネトゲ風世界依存娘のことじゃないか?
452:名無しさん@ピンキー
09/09/18 18:59:16 5i8GRel7
保管庫見てきた。
確かにあの人のは続きが楽しみだ。
453:名無しさん@ピンキー
09/09/19 10:17:36 UQcMRfH/
保管庫更新乙
454:名無しさん@ピンキー
09/09/19 20:39:10 f7Aao6rX
てか管理人にdatファイルの質問したって奴、まずググろうぜ……
455:名無しさん@ピンキー
09/09/21 18:54:52 0jXB0ExM
保守
456:名無しさん@ピンキー
09/09/21 20:02:36 jmVne1p4
投下があるように、悔し紛れの保っ守ぅぅぅっ!
457:前のそのまた前のスレの180
09/09/22 00:42:54 N1kWvK17
リレーか……
例えば依存君がとある依存神が宿っているバトンをひろってしまってだな
私は非常に困っている。ああ、困っているとも。
通学途中に隣に住む幼馴染と義妹(両人とも、かなりの美少女だ)が周囲の目を引くほど
私にまとわり付いてるこの現状は困っている以外の何物でもない。
私の記憶が正しければ昨日まで幼馴染には苛められ義妹には汚物を見るような眼で見られていたはずだ。
昨夜、日課の散歩の途中でバトンを拾わなければ。
依存神「気分はどうかな童貞君wwwwwww」
バトンに憑いていた自称依存神をぶん殴ろうとするが、両脇を幼馴染と義妹に抑えられているためできない。
この依存神とやらは、生き物に依存心を植え付け自由に強弱をつけられるという。暇をもてあました神々の遊び
とやらでバトンを拾った奴に依存娘を作ってるとか。……誰か止めろよ……。神の力により捨てることが出来ず
手放すには依存スレにリレーSSを書かなければならないということだ。
朝食を食べている時に義妹が「あんたの匂いで朝食が不味くなるわ。自分の部屋に引きこもって
出てこないでくれない?」といつもどおりのお言葉を頂いたところ、この依存神(笑)が「うはwww
ツwwwwンwwwwデwwwwレwwww」とか良いながらバトンで義妹の頭叩いたとたん
私の匂いに依存してしまった。今も恍惚の表情で「あ、あんたの匂いなんて嫌いなんだからね!」
とか言いながら私の腋の匂いをくんかくんかしている。
また、幼馴染も玄関口で登校しようとしていた私を捕まえ蹴りと共に罵倒が飛んで来たところで
依存神(キリンさん)が「Sが好きです。でもMのほうがも〜っと好きです!(キリッ」と(略により今は虐めてオーラ
を出して何故自分を虐めないかと延々と問い詰めてきている。
どうしたものかと思いつめ学校に向かっていると、いかにも清楚な黒髪ロングお嬢様で、しかし実は幼馴染
と一緒に私を虐めていた先輩が若干引きながら前方から近づいてきた。私はげんなりとしながら
肩を落とすと依存神(爆)が「見た目が清楚で中身が淫乱はマジぱねぇっすww鉄板っすwww
ここは一つ童貞君の精液依存にwwww」とのたまいながらバトンを振りかぶった。
空を見上げながら目頭を押さえる。正面から抱きつかれた。半ば達観した思いで下を見る。
目を血走らせ鼻息が荒い先輩がチャックを下ろし逸物を取り出していた。
私は困っていた。貧乳しか愛せないのに依存娘が皆巨乳なことに。そしてリレーSSが書けるように
なるまでにどのくらいかかるだろうかということに。
実はこうやって依存神付きバトンによってリレー(SS)を繋いでいるなら自分も参加したいがね
プロットも無しにたださえ難しいジャンルでリレーSS書くのは自分の実力不足的に考えてむりぽ
458:名無しさん@ピンキー
09/09/22 09:32:25 btshTiY+
確かに。
459:名無しさん@ピンキー
09/09/22 13:48:35 y1R452bw
>>457
読みにくい
460:名無しさん@ピンキー
09/09/23 10:12:19 4llXYbTf
せめて、改行と草さえ何とかしてくれれば…
そして主人公が一人称私なのかよ。
461:名無しさん@ピンキー
09/09/23 11:13:46 XvVFpsJm
読みにくいけど、読んだら面白かったので許す。
依存バトン、渡された人が渡した人に依存恋着する仕様なんだが誰もそれに気付いてないとか面白そう。
462:名無しさん@ピンキー
09/09/23 11:37:37 TJ1XKfmZ
改行もしてないし読みづらい。
携帯から書いているのか?
リレーSSスレは別にあるからそっちでやった方がいい気はするなぁ、こっちの
ネタを交えるのなら誘導すりゃいいし。
463:名無しさん@ピンキー
09/09/23 12:20:57 ZQWxcduX
>>457
意味わからんけど、なんかこのスレはリレーダメみたいだよ?
464:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:24:40 ZQWxcduX
投下しますね。
465:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:25:03 ZQWxcduX
壊れた宝物を元に戻すにはどうすればいい?
―直せばいい。
じゃあ直せない宝物なら?
―時間を巻き戻す。
その力が貴女にはありますか?
―ないから別の物で補うしかない…。
それで溝が埋まりますか?
―…埋まる。
本当に?
―……うるさい。
補われたその別の物は貴女の大切な宝物になるのですか?
―うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい―
所詮は代用品―タカラモノにはならないのでは?
―うるさい!
アナタが望んだ宝物はもうナイ―。
―違―ワタシ―望ん―物―あの頃―暖か―い―
466:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:25:38 ZQWxcduX
―
―
――
――
―――
「はぁ……嫌な夢…」
最近よく見る夢がある。
もう一人のワタシが私の宝物を否定する夢。
夢から目覚めると決まって身体が小刻みに震えている。
この夢だけは何回見ても慣れない…。
「まだ9時か…はぁ…悪夢ほど長く感じる夢はないわね……」
頭を軽く押さえながらベッドに腰を掛ける。
春くんの家から帰宅してまだ一時間しか経っていない…。
「…」
春くんの事を想像したらまた腹がたってきた…。
春くんは本当に私の兄になる気があるのだろうか?もう昔の戯言として春くんの中では片付いている問題なのかも知れない。
それでも春ちゃんのことは忘れていないはず…春くんが春ちゃんの事を忘れない限り、再構築の機会はいくらでもある。
ただ美幸ちゃんが春くんの心の中に入ってるのも確かだと思う。
それが私にはどうしても許せない。
友達なら許せるが美幸ちゃんの目的は多分春くんと付き合う事だろう…。
春くんに限って付き合う事は無いと思うが、もし美幸ちゃんと付き合う事になれば、今まで築き上げてきた私達との接点が将来無くなってしまう可能性だって出てくるのだ。
467:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:26:19 ZQWxcduX
春くんが秋ちゃんやなっちゃんと結婚してくれるのが一番の理想なのだけど…。
「…そんな上手くいくわけないか…」
ため息を吐き、目を瞑りもう一度ベッドに寝転ぶ。
私の宝物…大まかに言えば家族。ピンポイントで言えばお母さん。
お母さんの宝物も私達だと信じたい…。
その宝物の中には春くんも入っているはず…。
じゃあ、春くんの宝物は―?
―冬子のことも絶対に守ってやるからな。
「…………春くんのバカ……」
―っ―た―
「…?」
ベッドにうつ伏せで寝転がっていると微かに下から声が聞こえてきた。
もう一度耳をすまして声を聞く。
「………お母さんだ…!」
微かにしか聞こえないが紛れもないお母さんの声。沈んだ気持ちは一瞬で消え去り、素早くベッドから飛び起きて私室を後にする。
階段を降り、リビングに近づくにつれてお母さんの声もハッキリと聞こえてきた。
「―に手をだしたら警察じゃすまないから。」
リビングの扉を開けようとした手が止まった。
誰かと話をしている…?
「えぇ…これが最後の忠告よ?私の家族に手をだしたら――」
聞いてはダメだと思い急いで両手で耳をふさぐ。
468:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:26:57 ZQWxcduX
確かにお母さんの声だった…だけど何故かお母さんの声には聞こえなかった。
悲しいような…怒ってるような…よく分からないけどあの優しいお母さんが話し相手に対して感情をむき出しにして話していた。
5分ほどして少しだけ耳から手を離すとリビングの中からお母さんの声はもう聞こえてこなかった。
恐る恐るリビングの扉を開けるとソファーに座っているお母さんが視界に入ってきた。
「あら、冬子。どうしたの?」
リビングに入ってきた私に気がついたお母さんは優しい笑顔を見せてくれた。間違いなくいつものお母さんだ。
「う、ううん。なんでもないよ?二階で寝てたら下からお母さんの声が聞こえてきたから帰って来たのかな〜ってね。」
お母さんの座っているソファーに近づき、横に座る。
お母さんの匂いがする……甘いような…切ないような…。昔から変わらない私の大好きな匂い。
「あぁ、ちょっと知人と電話してたのよ。」
「でも、なんかお母さん怒ってなかった?」
「えっ?あぁ、まぁちょっとね…。」
誤魔化すように苦笑いすると私の頭を軽く撫でた。
「そう…お腹減った?私がなにか作るよ。」
469:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:27:29 ZQWxcduX
「えぇ、ちょっと疲れたからお願いするわ。」
そう言うとお母さんはソファーへ無気力に倒れ込んだ。
仕事疲れもあるのだろう…最近はよく疲れて帰ってくる事が多い。
その疲れを少しでも軽減できたらと、なるべくお母さんの負担にならないようにお母さんの身の回りの事は私がするようにしている。
それで私も誉めてもらえるので一石二鳥だ。
―「あっそうだ。」
「んっ、なぁに?」
何を作るか冷蔵庫の中を確認していると、お母さんが何かを思い出したように呟き、ソファーに座り直した。
「ハルの手はどうだった?」
「春くん?もうギブス外して元気にしてたよ?」
「ふふっ、そう。」
声で分かる…多分お母さんは今満面の笑みを浮かべているのだろう…。
春くんが羨ましい…。
私が春くんを家族にしたい理由の80%はお母さんが喜ぶから。
これは今でも変わらない気持。
後の20%は単純に私が春くんを独占したいという気持ちだと思い込んでいた…。
だけど違った。
小さな復讐―最近気付いた私の20%の本音。
その20%が私の中で徐々に膨らんでいく。
―お母さんの笑顔を悲しみに変える春くんが妬ましい―
470:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:28:03 ZQWxcduX
◇ ◇ ◆ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇
「お母さん、ただいまぁ〜。あっ、春樹先輩も遠慮せず入ってくださいっ!」
「あっ、うん…お邪魔します……。」
美幸ちゃんとおじさんに誘われて美幸ちゃんの家に来たのだが……新築独特の綺麗さに少し圧倒されてしまった。
玄関の地面は大理石のような綺麗な石が敷き詰められており、お母さんの趣味か壁紙は白一色で統一されている。
それに、赤部家以外の他人の家に来たのは何年ぶりだろうか…見慣れない場所に緊張もしている。
「ははっ、緊張するかな?美幸が言うように気楽にしてくれて構わないよ。」
顔にでてたのか、俺の心を見透かしたようにおじさんが笑いながら話しかけてきた。
一応笑って返事を返したが、気楽にするのは少し難しいかもしれない…。
美幸ちゃんに手を引かれリビングに通されると、洋色が強い玄関とは違い落ち着く和テイストの風景が広がっていた。
リビングの真ん中にはガラス張りの白いオシャレなダイニングテーブルが置いており、美幸ちゃんのセンスかお母さんのセンスかダイニングテーブルの真ん中には綺麗なすずらんの花が飾られている
471:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:28:33 ZQWxcduX
というかリビングのあちらこちらに花が飾られている…どれもすずらんの花。
美幸ちゃんが花好きなのはお母さんの影響だと言っていたので家全体にその影響が及んでいるようだ。
「すずらんの花…好きなんですか?」
周りを見渡しながらおじさんに問い掛ける。
イスに座らされたのだが、ビックリすることにイスもガラス張りだった…。ここまでくると家に招かれていると言うより、店に来ている感覚に近い。
「んっ?あぁ…妻と美幸がね…」
目を細め、俺と同じように周りを見渡す。
その姿にどこか違和感を覚えたが、「そうですか」としか言えなかった。
「春樹先輩はモンブランとイチゴショート、あとチョコレートケーキもありますけど、どれがいいですかぁ〜?」
冷蔵庫の中からケーキが入ってるであろう四角い箱を持ち出してきた。
小さな箱をテーブルに置くと、俺の前のイスに美幸ちゃんが腰を降ろした。
それに続いておじさんが美幸ちゃんの隣に座る。
和やかな雰囲気なのだが、どこかバイトの面接を思い出す。
「どれでもいいから先に春樹くん選びなさい。」
おじさんがケーキの箱を開けると中から色とりどりのケーキが姿を現した。
472:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:29:08 ZQWxcduX
食欲をそそる見た目をしているのだが、残念ながらすずらんの花の匂いが嗅覚を刺激してケーキの甘い匂いはまったくしない。
唯一箱に見たことがある専門店の名前が書かれているので有名な店だということは分かった。
「あの…俺はどれでも…」
「それじゃ中から選びなさい。」
そう言われたので一番オーソドックスなイチゴのショートケーキを貰うことにした。
美幸ちゃんはモンブラン。お父さんは俺と同じイチゴのショートケーキを選んだ。
美幸ちゃんもそれに気がついたのか慌ててモンブランからショートケーキに変える。
意味が分からなかったが、美幸ちゃんは基本意味の分からない行動が多いので、気づかないふりをしてケーキを食べ始めることにした。
「そう言えば春樹先輩、鈴村先輩が家で待ってるんじゃないですか?」
ケーキを頬張りながら思い出したように美幸ちゃんが呟く。
「ん?なんだ、家に友達が待ってるのかい?それじゃ、少し悪いことしたかな?」
「あっ、いえ…一応メールしたから大丈夫だと思いますけど。」
おじさんが申し訳なさそうに頭をさげる。
これは早く帰れそうな雰囲気だ。
473:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:29:37 ZQWxcduX
誘ってくれた美幸ちゃんやおじさんには悪いけど、やはり少し居心地が悪い。それに長い時間鈴村を放置する訳にもいかない。
「そっか…帰らないといけないのか…しかたないか…」
おじさんが残念そうに言うその姿にどこか胸が痛くなった。
美幸ちゃんも少し残念そうだ。
「そうですね……それじゃッ、きゃッ!!?」
「おっと、すまん。」
立ち上がろうとするおじさんが手元に置いてある水の入ったコップを盛大に倒してしまった。
運が悪いことに美幸ちゃんの方へとコップが転んでしまい、美幸ちゃんの服やスカートが水でびしょびしょになっている。
(ん…?俺の見間違いか?コップを倒す動作が少しわざとらしかったような…)
「もぉ〜〜お父さんなにしてるの〜!」
美幸ちゃんが怒ったように立ち上がると、水を吸い込んだ服をタオルで拭き始めた。
「いや、悪かった。コップが目に入らなかったんだ…。私室に行って服を着替えたらどうだ?」
「まったく…あっ春樹先輩少しだけ待っててくださいね?すぐに服を着替えてくるので。」
「えっ?いや、俺は…」
俺の返事を聞かず急いで私室へと走っていってしまった…。
474:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:30:09 ZQWxcduX
多分美幸ちゃんの事だから見送ってくれるのだろう。有り難いが、これ以上長居する気は無い。
「…」
チラリとおじさんの方へと目を向ける…。
先ほど美幸ちゃんが使っていたタオルでテーブルの上を綺麗に拭いている。
「えっと…すいません…。」
「んっ?なんだね?」
テーブルを拭く手を止めると。タオルをテーブルの端に置き、イスに座り直した。
「あの…そろそろ…」
「…………春樹くん……先ほど外で話したいことがあるって言ったの覚えているかい?」
俺の言葉を遮るように、おじさんが話しかけてきた。
先程の優しい声とは違い真剣な声に体が一瞬硬直する。
「あっ、はい…覚えてます。」
確かにおじさんは話したいことがあると呟いていた。
やはりケーキよりこっちの話しがメインのようだ…。
「美幸がいる場所では少し話し辛いことなんだ…イスに座ってくれるか?」
水をわざと溢したのも見間違いではなかったようだ…。
だとしたら余程美幸ちゃんに聞かれたくない話なのかもしれない。
「…はい…わかりました…」
緊迫したこの空気に押し潰されそうなのだが、逃げるわけにもいかない…。
渋々先ほど腰掛けていたイスに再度座ることにした。
475:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:30:43 ZQWxcduX
「まず、美幸と仲良くしてもらって本当に感謝している…。先ほど感情的になったのも謝る…悪かった。」
そう言うとテーブルすれすれまで頭を下げた。
俺はと言うと、そのおじさんの謝罪にあたふたするだけでなにも言えなかった。
「それでキミをこの家に招いた本当の理由……それは、キミが美幸の親しい友達だと見込んで美幸のことで話しがあったんだ。」
「話ですか…?」
「あぁ……キミは普段美幸とどんな会話をしている?」
「会話って…日常会話のことですか?いや、普通ですけど…学校であったことや、パルのこと…あっ、あとお母さんの話は多いですね。」
よく分からないが尋問ではなさそうだ。
「そうか、分かった……。自分勝手なお願いだが、今から話すことを驚かないで聞いてもらいたい。そしてこの話を聞いて決して美幸から離れようとしないでほしい……頼む。」
「わ、わかりましたからっ、頭をあげてください。」
悲願するようにもう一度頭を下げる。今度は流石におじさんの肩を掴んで頭を上げさせた。
「美幸はね……軽度の精神的な病気なんだよ…」
「はっ?精神的な病気?」
唐突な発言に頭が追い付かず、言われたことをそのまま返してしまった。
476:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:31:16 ZQWxcduX
精神的な病気と言われても美幸ちゃんにそのような傾向を感じたことは一度も無い。
むしろ明るく、元気で充実した日常を送っている気がする。
「鬱とはまた別のモノなんだけどね…。さっきキミは美幸はよくお母さんの話をする……そう言ったね?」
「はい。仲良さそうに電話もしてますし、本当にお母さんが好きなんだなぁって思いました。
よく美幸さんにお母さんが作った弁当美味しいんですって自慢されますから。
あっ、あと母の日に花をプレゼントしたら財布を買って貰ったって喜んでましたね。」
学校でもよく昼を一緒に食べることがあるのだが、普通に美味しそうな弁当だった。
プレゼントされた財布も美幸ちゃんにぴったりな可愛らしい財布だった。
「その弁当……私が作ってるんだよ。」
「………はっ?」
「財布も私が買って美幸の机の上にこっそりと置いておいたんだ。」
「えっと……意味がよく…」
「私の妻……………美幸の母は二年前に病気で亡くなってるんだ。」
「……え…」
亡くなってる?美幸ちゃんのお母さんが?
おじさんはいったい何を言ってるんだろう?
477:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:31:44 ZQWxcduX
冗談か?だとしたらタチが悪すぎる。
てゆうかその冗談を俺に言う意味が分からない…。
「いきなり言われて理解できることじゃ無いと思うけど……今からなるべく解りやすく説明するよ?」
「はい…お願いします…」
頭がまったく回らない…さっきからおじさんは何を言ってるのだろうか?
信憑性がまったく無いので、おじさんの妄想話を聞かされている気分だ。
「美幸はね…昔から友達もできないぐらい人見知りで内気な性格の持ち主だったんだ…。
小柄な見た目もあって小学生の時はよくイジメられたし、泣きながら家に帰ってくることなんて毎日のようにあったよ。」
「…」
確かに美幸ちゃんは小柄な女の子だ。小学生の時ならイジメの的になりやすいかもしれない。
初めて会った時もキョロキョロと落ち着かなかったし、俺に対して警戒してるような素振りも見せていた。
「イジメが原因で次第に学校にいかなくなり、気が付けば私と妻にしか心を開かなくなっていた。
私と妻は単純に学校に行っていれば、いつかは友達もできるだろうと浅く考えていたんだ…。
子供の辛さを分からないなんて親として失格だな。」
478:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:32:18 ZQWxcduX
自虐的に苦笑いをするおじさんを見て、この時やっと事の重大さに気がついた。
「妻と話し合った結果、美幸を転校させる事にしたんだ。
転校させればどうにかなる…。そう思っていたんだがね…違う小学校に行っても馴染めず、同じように学校に行きたがらなかったよ。」
「そんなに…」
「あぁ、それでも転校した小学校はみんな優しくてね。何度も美幸を迎えに来てくれたし、イジメはなかったよ。
だから小学校は休みがちだったけどなんとか卒業もできた。
美幸が中学に上がるぐらいかな…妻の体調が悪くなっていったのは…。」
「…」
「妻は昔から体の弱い体質でね……。美幸が中学に入学して3ヶ月ほど経ったある日、家事をしている時に心筋梗塞を引き起こして倒れてしまったんだよ……。
幸い命は助かったんだけど検査の結果、末期の胃癌だと判断されて手術のしようがないと言われたんだ……。
」
話を聞いていて頭がクラクラしてきた…なぜおじさんはこんな重い話を他人の俺に話すのだろうか?
「余命一年…。実際は一年ももたなかった…クスリで長引かす事はできるんだけど妻が嫌がってね…。
半年間頑張って最後は安らかに眠ってくれたよ。」
479:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:32:47 ZQWxcduX
なんて言っていいか分からず、ただうなずくだけ…。それしかできなかった。
単純に理解ができなかっただけなのかも知れない。
おじさんの言ってる事に対して嘘は感じられなかった…。
逆に美幸ちゃんが嘘をつくような子でも決して無いはずだ。
話の糸がこんがらがって頭の中で絡まっている。
「じゃ、じゃあ美幸ちゃんが言うお母さんって…」
「美幸が言うお母さんは間違いなく私の妻だよ。」
おじさんの話が矛盾だらけで頭が痛くなってきた…。
死んだ人間が生き返っているのか?
「美幸はね…お母さんが死んだ事実を理解できないんだよ…。」
「…ぅ…ぁ…」
この時、なぜか春香が死んだ日の事が脳裏に浮かんできた。
俺も春香が死んだ後はそうだった…「死」を理解できないのだ。
何度も探した…春香が起こしにくるまでベッドで待っていた事もある。
遠い死がいきなり訪れるとすべてが一転し、なにが事実でなにが幻がまったくわからなくなる……。
だから自分が楽な方を選ぶのだ。
「それじゃ電話をしていたのは…」
「留守電だよ…私の家の電話は妻の声が入っている。それに話しかけているだけだよ。」
「留守電…?」
480:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:33:24 ZQWxcduX
「あぁ、それとよく美幸の携帯に妻から電話がかかってくるはずだ。」
「はい…僕と遊んでる時もよく…。」
確かに美幸ちゃんから電話をかけると言うよりお母さんから電話がかかってきて話すことが多かった…。
その時は過保護だなぁ〜ぐらいにしか思っていなかったのだが…
「あれは、携帯のアラーム機能だ。
妻が入院している時、美幸が不安がってね……妻が美幸の携帯に自分の声を吹き込んでそれを留守電の時と同じようにアラームにしているだけなんだよ。」
「そ、そんなこと…」
ある訳ない…そう言いたかったが言えなかった…。俺も同じような状態だったので美幸ちゃんの行動を完璧に否定できないのだ。
「こんなこと普通は高校生の君に言うことではないと思うんだ…だけッ―「お父さんッ!!!」
「み、美幸ちゃんっ!?」
リビングのドアが勢いよく開くと美幸ちゃんが泣きそうな表情でリビングに入ってきた。
「なんでそんなこと言うのよッ!!?春樹先輩には関係ないでしょッ!!」
「み、美幸…ッ」
おじさんに走りより、強引に掴みかかると大声を張り上げてわめきたてた。
481:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:33:50 ZQWxcduX
「はっ、春樹先輩、ち、違うんです!!い、今いないだけッで…そ、そうです!すぐに帰ってくるのでッ!ま、まっててください!」
「ッ…」
此方に駆け寄ってくる美幸ちゃんの姿に恐怖を感じてしまい、イスから立ち上がり後ずさってしまった。
「ッ!!?お父さんのせいでしょ!やっど仲良くしてくれ、るッ人がっ!!なんでぇえぇぇぇ!!」
俺の行動を見て顔をしかめた美幸ちゃんは再度おじさんへと掴みかかった。
「悪いね…春樹くん…今日は帰ってくれて構わないよ。」
おじさんが美幸ちゃんの両肩を掴み申し訳なさそうに俺に呟いた。
「嫌ッ!まってください春樹先輩っ!話を聞いてください、お願いします!お願いぃいぃぃだからぁぁぁっ!」
おじさんから離れると、リビングの扉の前に立ちふさがり俺が出ていかないように大きく両手を広げた。
泣き声と叫び声が混じって聞き取り辛いが気持ちは伝わってくる。
友達を失うのが怖いのだろう…ここで抱き締めてあげるのが正解かもしれない…。だけどそんなことできなかった…美幸ちゃんが怖かった…。
「美幸やめなさい…」
おじさんが立ち上がり此方に歩み寄ってくる。
その姿に美幸ちゃんは睨み返す。
482:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:34:18 ZQWxcduX
「お父さんは黙っててよッ!!壊したのおどうざんじゃない゛ッ!!お願いです私の話を―!」
ポロポロと流れる涙は止まることなく流れ続けている。
震える指先がゆっくりと近づいてくる。
その手が―怖くて―怖くて。
「お、お邪魔しました。」
美幸ちゃんの横を通り過ぎ玄関へと向かう。
後ろからなにかが崩れる音と、子供のような大きな泣き声が俺の耳を支配した―
その声が痛くて―痛くて―痛くて―
自宅に帰るまで美幸ちゃんの泣き声と絶望に満ちた表情が頭から離れなかった。
「ど、どうしたの!?」
家に帰ってきた俺に向かって鈴村が慌てたように近づいてきた。
そんなに酷い表情をしているのだろうか…。
「なんでもない…」
「なんでもないのに涙流さないだろ!!」
「えっあれ…なん…うぅッ…う―」
なんで涙がでてくるんだろう…。
「夕凪くん…」
玄関で崩れ落ちる俺に優しく鈴村に抱き締められる。
どうしていいか分からず―ただ鈴村にしがみついて声をださず泣くだけ。
美幸ちゃんの辛さが自分の中に流れ込んでくるようでダムが決壊したように涙が止まらなかった。
俺は―美幸ちゃんを見捨てたんだ。
483:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/23 16:35:33 ZQWxcduX
ありがとうございました、投下終了です。
次もなるべく早く投下するのでよろしくお願いします。
484:名無しさん@ピンキー
09/09/23 17:03:17 pwCePVkH
>>483
ヒュー!更新楽しみに待ってた!
どろどろのぐちゃぐちゃになってきて楽しみだ。次も期待
485:名無しさん@ピンキー
09/09/23 18:59:53 RRZsA4D2
GJ!
これは続きが気になります
486:名無しさん@ピンキー
09/09/24 00:02:48 VFEkuR/K
GJ
次が待ちきれないぜ
487:名無しさん@ピンキー
09/09/24 00:26:22 uT9vXx4K
GJ!!!食い入るように読んだぜ。
488:名無しさん@ピンキー
09/09/24 01:27:07 oCa4Wkf5
>>483
俄然面白くなってきたな。GJ.
489:名無しさん@ピンキー
09/09/24 01:36:53 lyGFwq42
。・゚・(ノД`)・゚・。 俺今からおちんちん切ってくる 美幸ちゃんのお母さんになる
490:名無しさん@ピンキー
09/09/24 02:51:30 pCncy9bQ
>>489
韓国やモロッコに逝くのか…。
491:名無しさん@ピンキー
09/09/24 11:52:40 8VoN/GM0
>>489-490
性転換ならタイが良いらしいよ
椿彩菜もタイで手術したんだってさ
492:名無しさん@ピンキー
09/09/24 18:44:42 IESiPYUn
性転換するとオナニーできなくなるって本当か
493:名無しさん@ピンキー
09/09/24 19:47:19 TP2qq266
>>492
方法に依るんじゃない?
494:名無しさん@ピンキー
09/09/24 19:50:17 NfnfdTMR
>>492アナルオナニー的なものならできるのではないでしょうか
>>483乙&GJ!!
登場人物がみんなどこかしら壊れてるな。
この泥沼がどう結末を迎えるのか楽しみだ。
495:名無しさん@ピンキー
09/09/24 23:59:26 sxbuHSYt
ここって、依存ネタならエロなしでもいいの?
面白いけどエロなしの話ばっかりだから気になった
エロパロ板だし
496:名無しさん@ピンキー
09/09/25 00:23:29 w1Y4BeId
依存話で抜くんだろ?
常識だろ、なにいっちゃってんのこのひと
497:名無しさん@ピンキー
09/09/25 00:24:13 YhimGZvw
セックスだけがエロとか思ってる人って…
498:名無しさん@ピンキー
09/09/25 00:46:01 2Tj4UYgH
依存かもしながらエロに突入が最強
499:名無しさん@ピンキー
09/09/25 00:49:14 TxDyg1nf
>>495
まぁ、息抜きと思ったらいいんじゃない?
500:名無しさん@ピンキー
09/09/25 05:18:20 j7kJAicD
彼女が芸能人だか歌手で、主人公が彼女のお願いでヒモになってるssがあったと思うんだけどタイトル忘れた。
ラストで主人公が彼女が留守の時に電話で別れを切り出して出て行こうとしたら、玄関で肩で息してる彼女に気絶させられて監禁EDのはずだけど誰かタイトルしらないか?
501:名無しさん@ピンキー
09/09/25 08:26:26 MlBdlUAQ
>>500
URLリンク(ncode.syosetu.com)
502:名無しさん@ピンキー
09/09/25 08:28:19 uOtiEowM
URLリンク(ncode.syosetu.com)
503:名無しさん@ピンキー
09/09/25 10:01:12 TxDyg1nf
ヤンデレじゃない?
504:名無しさん@ピンキー
09/09/25 10:11:56 fTBxT4Rn
>>495
今投下されてるのが非エロパートばかりなだけ。
と信じたい。
505:500
09/09/25 13:14:50 j7kJAicD
>>501
>>502
あ、これこれ
サンクス
506:名無しさん@ピンキー
09/09/26 12:50:41 vRrBpJuP
エロパロだから非エロSSは導入くらいならまだしも長く続く
のはアウトだと思うがね。
まあ俺は非エロSSは全てNGにして無視しているが。
507:名無しさん@ピンキー
09/09/26 13:00:42 495y0P+x
>>506
まぁ、お前はそれでいいんじゃない?
違うスレにもいっぱいSSあるんだしエロが見たけりゃ別の物を見ればいいだけ。
508:名無しさん@ピンキー
09/09/26 15:57:08 rrAQ/MQZ
いつかはエロSSが投下されると信じてる。
509:名無しさん@ピンキー
09/09/26 23:50:21 vluedFpm
まあアニメの話はもういいいよ
ゲームなら、むしろ死霊状態の女版桃香のほうがどうなるのかが問題だ
510:名無しさん@ピンキー
09/09/26 23:50:42 vluedFpm
すまん誤爆
511:名無しさん@ピンキー
09/09/27 01:16:19 RxFOEwJk
逆に考えるんだ、抜ける非エロSSと抜けないエロSSならどちらがエロいのかって
512:名無しさん@ピンキー
09/09/27 16:59:11 KXB0idrb
内容によるが個人的には非エロがいいと思う
ギシギシアンアンラメェラメェは似たようなジャンルの某スレで見れるしな
エロばっかみてると純愛or依存ラブラブの性行為までいかないssが読みたくなる
読んだ後で死にたくはなるが
513:名無しさん@ピンキー
09/09/27 17:01:52 4TkG5PIl
楽しめて完結まで見せて頂けるのであればどっちでもいいな…
514:名無しさん@ピンキー
09/09/27 18:31:13 tKHQfLEP
>>511
よりエロい方。
515:名無しさん@ピンキー
09/09/27 23:54:19 0wH50EMo
>>511
落ち着けw
516:名無しさん@ピンキー
09/09/30 18:53:49 bEK9i69F
どのスレ見ても、途中で投げ出す奴が多すぎるな。
517:名無しさん@ピンキー
09/10/01 00:05:59 TKM0srEK
>>516
ごめんなさい。がんばります。
518:名無しさん@ピンキー
09/10/01 03:38:46 JkjgLlMw
ごめんなさい
いつかやります
519:名無しさん@ピンキー
09/10/01 09:58:06 5su0lVNH
「いつか」はもうやらないってことだな。
520:名無しさん@ピンキー
09/10/01 10:58:07 lpUGI+qD
いつかまであと4日だな
521:名無しさん@ピンキー
09/10/01 11:10:23 uY2Mpu0g
あまり完全を目指すのではなく、「とりあえずこんなんでええか」くらいのノリで投下してもらってもいいと思うよ。
後で余裕があればその際に改めて別verでうpしてもいいんだし。
一回こっきりの商業作品じゃないのだからそのへんは柔軟にしてもらっても個人的には大歓迎。
522:名無しさん@ピンキー
09/10/01 17:36:48 +ONSEacr
明日の明日はまた明日
「いつか」は決して来ない。
523:名無しさん@ピンキー
09/10/02 15:34:54 8Ogo6/xo
五日まであと三日
524:名無しさん@ピンキー
09/10/02 16:16:32 CCAVLz2r
>>523
5日は来月も再来月もくるんだよ?
525:名無しさん@ピンキー
09/10/03 00:52:59 3KpS2QND
完結させる・・・!完結させるが・・・今回まだその時と場所の指定まではしていない
そのことを諸君らも思い出していただきたい
つまり・・・書き手がその気になれば物語の完結は10年20年後ということも可能だろう・・・ということ・・・!
526:名無しさん@ピンキー
09/10/03 01:21:34 dR0rsDgf
>>525
せめて3ヶ月に一度は投下してもらいたいけどね。
完結できないなら始めから投下すんなって思う。
途中から飽きてきたなら無理矢理にでも終わらせてほしい。
527:名無しさん@ピンキー
09/10/03 01:26:35 ToYzYefK
なんでそんなに必死なの?
528:名無しさん@ピンキー
09/10/03 01:30:03 dR0rsDgf
さぁ?
529:名無しさん@ピンキー
09/10/03 02:22:39 jjFlZWN1
このスレに依存してるんじゃろ
530:名無しさん@ピンキー
09/10/05 07:07:07 9FbtqZQS
依存しているからこそ、作者に辛く当たり
結果作者を遠ざけてしまう
そしてその結果さらに悩み、作者に辛く当t(ry
最終的にスレもろとも死のうとする
まさにヤンデレループ
531:名無しさん@ピンキー
09/10/05 10:30:40 bMszNcE1
>>530
デレが見当たらない。
532:名無しさん@ピンキー
09/10/05 17:02:14 X7DNEdjy
>>531
投下があると絶賛する。
533:名無しさん@ピンキー
09/10/06 18:34:50 XdCU3YAy
今日も投下は無し……か…。
534:名無しさん@ピンキー
09/10/06 18:50:16 MWZ0DrBj
いつものことだ。
535:名無しさん@ピンキー
09/10/06 20:08:28 IRtlxf5U
まあクソくっだらねえ作文もどきが来るよりは静かで良いんじゃねえの?
ちゃんとした面白いのが来るまで保守して静かに待ってればいいじゃん
536:名無しさん@ピンキー
09/10/06 20:22:10 AEB6oqSz
自信ないので投下自重します。
いつかもっと実力つけてから戻ってくるよ。
537:名無しさん@ピンキー
09/10/06 20:24:08 XdCU3YAy
面白いとかバカじゃねーのw
マンガでも読んどけw
538:名無しさん@ピンキー
09/10/06 20:25:00 XdCU3YAy
>>536
投下してよ。
539:名無しさん@ピンキー
09/10/06 20:25:18 K+9y2ayv
>>535
どんだけこのスレに依存してんだよw
540:夢と時間4話 ◆6ksAL5VXnU
09/10/06 21:24:17 FcP26FTO
おそるおそる、投下です
541:夢と時間4話 ◆6ksAL5VXnU
09/10/06 21:25:34 FcP26FTO
深夜のコンビニで出会った少女。いや、もう女性か。
彼女は、俺が教育実習生だった頃に出会った生徒だ。家庭の問題で高校を卒業する事無く、退学した。
その記憶が濃くて、接した期間は短かったが、一番印象に残っていた。
「川崎燕(かわさき つばめ)さん、だよな?」
「やっぱ先生! なつかしー!」
眠気などは何処かへいっていた。
「マジで一瞬判らなかったよ」
「ふふ、そう?」
学生の頃はパサパサの金髪に、パンダメイクという、非常にお粗末なギャルファッションだったが、今その面影は欠片もない。
髪は地味ながらも綺麗なショートヘアーになっており、化粧も巧くなっている。左目の泣きぼくろが印象的な、美人となっていた。
「本当に、変わったよな」
「あは、前は酷かったもんね。今は仕事とかあるから」
「今の方が綺麗だよ」
言ってから自分の言葉に気が付いて、年甲斐もなく赤くなる。これじゃまるでナンパだ。
チラッと川崎さんの方を覗いてみると、彼女も少し驚いているようだった。
「ありがと、先生。……ちょっとキャラ変わったね」
「はは、まあな」
笑って誤魔化した。彼女も釣られて笑ってくれた。
一瞬の沈黙。その後で、彼女は俺に尋ねてきた。
「先生さ、今何してんの?」
「ニート」
「え?」
「嘘」
受けなかった。
「今は、普通のリーマンって感じだな」
「教師には、ならなかったんだ?」
「色々厳しくてさ。まぁ、厳しいのはどこも一緒だけど」
「……疲れてるみたいだね」
心配そうに俺を見つめるその目は、何というか、とても綺麗で、何時までも見つめていたいような、そんな目だった。
「疲れてるのは、一緒だろ。そっちは、何をしてるんだ?」
「パートで何とか生きてるって感じ。家は実家だからそこまで厳しくはないけど」
「へぇ、パートって?」
「ファミレス。もう忙しくて」
ファミレスか。彼女は自転車で来ているから、この近くだろう。となれば。
「そこのガ●ト?」
呟くように聞くと、彼女はピクッと反応した。
「うん、そこ! もしかして、たまに来たりするの?」
「やっぱりか! 結構使うよ」
ファミリーレストランガ●ト。俺の重宝している店である。値段のわりに、店内はお洒落で、しかも中々うまい。
彼女は驚いていたが、俺も驚いていた。まさかあの店で彼女が働いていたとは。
「あれ? でも、中々会わないよね」
「いつも何時くらいに入るの?」
「あ、そっか。私、いつも夜8時くらいに入るから」
「あぁ、なら会わないな。俺は昼と、遅くても夜の7時くらいにしか行かないから」
そうなんだ、と彼女はまた落ち着いた。
「ラッシュ時は大変だろ?」
「大変なんてものじゃないよ」
言って、彼女は真底うんざりした顔をした。相当参ってるらしい。
俺のやっていたバイトは主に、裏で荷物を運んだりする力仕事だった為、彼女がどのような事をやっているのかわからないが、まぁ大変なんだろう。
彼女の愚痴を聞いているうちに、時計は午前2時を指していた。
「川崎さん、帰らなくていいのか?」
「私は良いけど。ごめん、先生は明日また仕事あるんだよね」
「いや、良いよ。それより、送らなくても平気?」
「毎日のことだから、大丈夫」
「そりゃそうか。じゃ、帰るわ。今度、夜に寄ってみるよ」
そういって、俺はリモコン操作で車のロックを外した。
ガシャン、と数メートル先の車の鍵が外れる音がする。
そして、彼女に手を振って別れようとしたとき、パッと冷たい感触が手首の辺りを掴んだ。彼女の手だ。
彼女は先程とは少し変わって、緊張した様子で此方を覗き込むように見つめていた。その仕草に思わず息を呑む。
大人っぽくなった彼女が、少女の表情をしていた。
542:夢と時間4話 ◆6ksAL5VXnU
09/10/06 21:26:20 FcP26FTO
「あの、先生……?」
「なんだい?」
俺は何でもないように答える。しかし、伊達に23年も生きている訳ではない。
彼女に出会って、話始めたときから薄々とだが気付いていた。
俺は、この表情を知っている。
「たいした事じゃないよ。ちょっと、メールアドレス、教えて欲しくて」
俺には三月がいるのだが、流石に断るわけにもいかない。
「なんだ。全然いいよ」
そういって、アドレスを交換して、俺たちは別れた。
家に帰って、床につく頃には3時になっていた。4時間しか眠れないのなら、帰らなくてもよかったかもしれない。
川崎さんと会った後に、まるで図ったかのように三月からのメールがあったので、正直焦った。いや、別にやましいことなどは何もないのだが、相手が美人だとつい意識してしまう。
メールの内容は「今から電話に出れる?」というものだった。
こういう所に、よく気がきく奴だ。
俺は携帯を操作して、三月に電話をかける。
待っていたのか、2コールほどで繋がり、小さなマイクから、恋人の声が聞こえてきた。
『あ、疾人?』
「おう。どうした?」
数日振りに聞く彼女の声。独特の訛りが今は懐かしい。
『いや何でも。ちょっと話したかっただけ』
「なんだそりゃ?」
『いいでしょ、別に』
「まぁ、俺もお前と話したかったし、丁度いいや」
半分冗談。半分本気。
受話器の向こう側で赤くなっている三月が見える。俺も赤いけど。
『……疾人。体、大丈夫? 無理してない?』
「お前は俺のオカンかよ」
お互い笑ってしまう。
『そういえば、お母さんじゃないけど、疾人のお婆ちゃんの具合知ってる?』
「百超えてるようなババアだろ。いつ逝っても満足だろ」
『そうだけど、たまには顔出してあげてね』
「今は、忙しいからな」
『そう。今度はいつ会えるの?』
「わからん」
『そう』
そういって、急に元気がなくなってしまった。
婆さんの事もだが、それ以上に、三月は俺に会いたいのだろう。言葉には出さないでも、声でわかる。
それは俺も同じだ。俺だって三月に会いたい。しかし、それは不可能なのだ。
遠距離恋愛なんて、つらいだけだ。想いが強ければ強いほど、つらい。
そして、つらい想いをして守っていても、ちょっとした事で脆く崩れ去るのだ。
「じゃ、明日つーか今日も仕事だから、切るわ」
『あ、うん、ごめんね?』
「いいって。それじゃ」
それで切った。
その後で、フーっとため息が漏れる。
最近はいつもこんな感じだ。最初盛り上がっても、最後はこんな風にずーんとした空気になってしまう。
余裕がないというのだろうか。お互いの気持ちを確認するので精一杯という感じ。
正直、疲れる。
三月の事は好きだ。でも、いやだからこそ、渇いてしまう。この街には三月(水)がない。
いや違う。この街に水はあるのだ。目の前を流れているのだ。しかし、それを飲むことは許されない。何という拷問だろう。
ふと今日、出会った少女を思い浮かべた。泣きぼくろが印象的な彼女。
(川崎さん、綺麗になってたよなぁ)
そんな事を考えながら、目を閉じた。
翌日、祖母が亡くなった。
543:夢と時間4話 ◆6ksAL5VXnU
09/10/06 21:28:21 FcP26FTO
終了です
前の投下が6月ですので、覚えている人はいないでしょう。
気楽にちびちびと書こうと思います。
544:名無しさん@ピンキー
09/10/06 21:36:39 XdCU3YAy
>>543
GJッ!!!続きも期待してます。
545:名無しさん@ピンキー
09/10/06 22:03:17 IRtlxf5U
4ヶ月ぶりに投下するのはいいけどさ、たった2レスだけじゃ投下されても反応しにくいだろうが
次に投下すんのも4ヶ月後ですか? とか気楽にチビチビってのは毎回2レス程度なんですか?
とか突っ込みたくなるわけよ。これでGJなんてどうして言えるんだよ?
どこぞの作文もどきみたいに行数減らしてレス数増やして投下しろとは言わんがもうちっと考えて投下しろよ
別に叩いて追い出したいわけじゃないからな。掛け持ち作文もどきよりは三倍程度期待してるから
546:名無しさん@ピンキー
09/10/06 22:04:28 K+9y2ayv
>>543
待ってたよ。乙乙。
>>545
ツンデレならもうちっとツンデレらしくしろや。
547:名無しさん@ピンキー
09/10/06 22:05:56 Gyirl8bB
>>545
とても香ばしいれす^p^
548:名無しさん@ピンキー
09/10/06 22:10:46 XdCU3YAy
>>545
期待とかおまえ何様だよチンパン。
誰もお前ごときの為に投下してる訳じゃねーだろ。
549:名無しさん@ピンキー
09/10/07 01:12:33 X98ypyF0
【会員制】PINK書き込みに●必須化か?
スレリンク(erobbs板)
管理人のJimさんが次のような提言をしました。
-----------------------------------------------------------
Let's talk with Jim-san. Part14
スレリンク(erobbs板:156番)
> I am thinking until the troll problem is fixed
> to make Maru a requirement on bbspink servers for posting.
(適当訳)
わたしは荒らし問題が解決するまで、
PINKの書き込みに●必須とするように考えています。
-----------------------------------------------------------
550:名無しさん@ピンキー
09/10/07 01:58:05 4IMeqdgO
>>545
最後の一行で台無しだよ
551:名無しさん@ピンキー
09/10/07 04:59:23 X98ypyF0
2chの子分BBSPINK、有料化へ 現管理人Jimさん「書き込み、●必須にする」
スレリンク(news板)
552:名無しさん@ピンキー
09/10/07 09:01:05 ed4gcnC1
>>551
これどういう意味?
553:名無しさん@ピンキー
09/10/07 10:59:12 2UL9eDh7
そのままの意味さ
書き込みをするには●っていうポイントが必要になるから有料化される
ROM専には関係ないけど作品の書き手はつらいよね
554:名無しさん@ピンキー
09/10/07 11:26:29 ed4gcnC1
>>553
あぁ、そう言う事か…まぁ荒らし対策にはなるけど、書く人も減るだろうね。
555:名無しさん@ピンキー
09/10/09 13:58:14 3ljC85T2
age
556:名無しさん@ピンキー
09/10/10 12:49:01 vCKxDJGb
そこまでして ここで書くよりは……
掲示板は他にもあるし……
っていう書き手が増殖しそうだね
557:名無しさん@ピンキー
09/10/10 20:21:01 IieuQBFg
有名な投稿サイトといえばなろうと理想郷か
どっちも閲覧数上位が最低系ばかりのネタサイトになりつつあるけれど……
558:4-263
09/10/10 23:40:52 zMS7fuIB
投下します。
以前リクエストを頂いたもの。
ドSで冷酷な奴隷扱いは私には書けませんでした。申し訳ない。
559:colorless
09/10/10 23:50:48 zMS7fuIB
黒の壁掛け時計が七時三十五分を示す。定時を五分過ぎたのを確認して、俊樹はその黒い電波時計が狂っているのではないかと疑念を抱いた。
駅からそこそこ近いアパートのそこそこ広い一室。その部屋の主である彼女は、毎晩七時三十分に帰宅する。
俊樹は卓上の皿を眺めた。一汁三菜を守った食事がこぢんまりと並ぶ。我ながらよくやるものだと思う。
昨年の今頃ならば、キャンパスとバイト先と飲み屋を往復して、時折家に帰ってはコンビニ弁当をかきこむような生活をしていたというのに。
全ては部屋の主たる小林柊子の体を慮てのことである。
俊樹は柊子の事を何一つ知らない。同時に、柊子も俊樹のことを何一つ知らないのだ。
去年の今頃―正確には、もっと暑くなっていた頃だった―俊樹がサークル仲間とのコンパでぐでぐでに酔っ払い、汗と吐寫物にまみれて転がっていたのが、このアパートのゴミ捨て場であった。
そして、汗と吐寫物にまみれて転がっていた俊樹に手を差し伸べたのが、他ならぬ柊子だった。
「あなた、大丈夫?」
心配するというよりは、むしろ突き放すよいな声音に視線を上げた。酔いやら汗やら涙やらで霞んだ視界に若い女性が映る。
俊樹は、何故そんなことをしたのか未だによく分からないのだが、へらりと笑って「オネーサン、綺麗っすね」と答えた。
事実、小林柊子は整った面立ちをしていたし、日々キャンキャンと喚く子犬のような女子大生ばかりを見ていた俊樹は、重たげな一重瞼から煌めく落ち着いた黒い瞳に惹かれてしまったのだ。
柊子は皮肉気に唇を歪めて「そうね、整備の賜物だもの」と呟く。次いで冷たく俊樹を見下ろして、細く白い手を伸ばした。
整えられたワインレッドの爪を眼前にちらつかされ、俊樹は呆然とする。無為にその爪を眺め続けた後、視線を少しだけ上げると、侮蔑にも似た色を浮かべた目と目があった。
「立てるの?ここ私の部屋だから、休んで行きなさい」
そうして、なし崩し的に俊樹は柊子の部屋に転がり込んだ。女のもとに転がり込んだ、と聞いて激怒した両親に仕送りも切られ、学生用のアパートも解約してしまった俊樹に、帰る場所は此処しかない。
しんと静まり返った室内に、携帯電話の初期設定着信音が響く。柊子からだろうか、と明滅するディスプレイを覗き込み、携帯へ手を伸ばした。
俊樹は「三上次郎」という表示に一瞬手を止めたが、鳴り止む気配ない携帯を手に取り渋々と通話ボタンを押した。
「あーっ!でたでた!」
きん、と携帯電話が壊れそうな高音が耳を突く。俊樹は眉をひそめた。確かに自分は高校からの友人の電話に出たはずである。これは、誰だ。
「あたし、覚えてる?」
うるせぇ、名を名乗れ。と言いたいのをこらえて俊樹は努めて穏やかに、そしておちゃらけたようにして答える。
560:colorless
09/10/10 23:52:09 zMS7fuIB
「あれ?次郎じゃないの?」
おそらく電話の相手は酔っているのだ。甲高い声の背後に居酒屋の喧騒が混じる。携帯電話のマイクから相手の酒臭い息が臭いそうなほどだ。
案の定、電話の相手は酔っ払い特有の躁じみた笑い声をあげた。
「あたし、あたし。茜。覚えてるっしょ?」
茜。たしか、同じゼミにそんな名前の女生徒がいた気がする。服も小物も化粧も流行りで固めた女子大生ほど無個性なものはない。
俊樹の脳裏には、茜の笑ったときに剥き出しになる出っ張った前歯しか浮かばなかった。
「今、ゼミのみんなで飲んでるんだけどさ、俊樹君も来ない?」
俊樹は苛々とテーブルを指で叩く。思い出した。この茜という女生徒は、何かにつけて自分を担ぎ出したがる。友人曰わく自分に好意があるらしいのだが、俊樹はこういうやり方が好きでは無かった。
悪いけど、と前置きして俊樹はさも心苦しいような声を作る。
「用事があるから、今晩は無理。ごめん」
途端に、電話の向こうの温度が2℃程下がった気がした。「だから言っただろ」と友人の聞き慣れた声が微かに聞こえる。
ふぅん、と茜は鼻を鳴らした。
「あの噂、本当だったんだ」
どく、と俊樹の心臓は鷲掴まれたかのように脈打つ。
「俊樹君さ、年上の女の人のところに居候してるんでしょ?それって、どうなの?ヒモじゃん」
頭の中心が火でもついたかのように熱くなる。ぎゅ、と乾いた唇を噛んだ。
「はは、ごめんね。じゃあ、また」
―ヒモ、か。
俊樹は暗い気持ちで携帯電話の電源を切った。柊子の部屋に転がり込んでから、めっきり人付き合いは悪くなった。
仲間達と大騒ぎするのも嫌いではない。だが、柊子が帰って来るまでに夕飯の準備をしなくてはならない。別に強制されたわけではないが、俊樹は毎日食事を用意している。
心地良いのだ。柊子のいる空間は時間の進み方がゆっくりとしている気がする。
561:colorless
09/10/10 23:53:32 zMS7fuIB
「行けばいいのに」
一人しかいないはずの部屋に不意に声が響いて、俊樹は肩を震わせた。玄関へ続くドアに手をかけて、ベージュのスーツを纏った柊子がこちらを見つめていた。
「友達は大事にしないと」
シャンパンゴールドに染められた爪が、俊樹の携帯電話を指し示す。
何故か粗相を責められる子供のような気分になって、俊樹は携帯電話を握って隠した。
「いや……、あんまり好きじゃないんです。大人数とか」
嘘ではない。だが、十分な真実でもない。
柊子は「そう」と素っ気なく呟くと、ベージュの上着を脱ぎながらリビングを渡り、自室へ向かう。
歩いた際に揺れた空気が、嗅ぎなれた香りをふわと俊樹へ運んだ。
「柊子さん!」
とっさに呼び止めると柊子は少しだけ眉を上げて振り返る。
「お帰りなさい。……遅かったですね」
柊子は少しだけ訝しげに眉をひそめると、次いで緩やかに唇で笑みを形作る。
俊樹は柊子の笑い方が好きだ。決して歯を剥き出しで笑うようなことはなく、いつも僅かに唇を緩める。
その笑顔には少しの翳りがある、気がした。
「そうね」
たった一言を残して、ドアはぱたんと閉められる。
お預けをくらった犬のように手持ち無沙汰に膝を見つめた後、俊樹は短く息を吐いて食事を温め直しにかかった。
時折、自分は何者なのだろうかと思う。自分は間違いなく樋田俊樹である。そんなことは分かっている。
柊子にとって、自分は何者なのだろうか。
恋人?友人?厄介な同居人?放っておけない年下の坊や?
(或いはヒモ、か)
考え、自嘲的に笑う。上手く笑えず歯の間から息が漏れて、一層虚しい気持ちになった。
562:colorless
09/10/10 23:54:29 zMS7fuIB
柊子との間に体の関係はない。それどころか、触れたことすら数度しかない。一年近く男女が一つ屋根の下に棲んでいて、こんなことがあるのだろうか。
悩んで悩んで尚、柊子のもとを離れられないのは経済的な問題があるからだけではない。
俊樹は元来思い悩むたちで、高校の時分にはそっちの医者にかかったこともあった。
人と付き合っていると、自分を偽っているような、仮面を被って接しているような気がして、自分を殺して周囲に迎合する自分に嫌気がさす。本当に自分を殺したくなる。
だが、柊子には何一つ偽る必要が無かった。柊子は女性であるというのに、酷く口数が少ない。(尤も、女性は多弁であるというのが偏見であるかもしれないのだが)他ではどうなのかは知らないが、無為に表情を作ることもしない。
人によっては冷たい印象を受けるのかもしれないが、俊樹には気にならなかった。むしろ柊子と接している時だけは、自分が人間である気にさえなった。
それを、柊子に漏らしたことがある。柊子は彼女にしては珍しく一重の目を丸くして、呆気にとられたような様子であった。
呆れられただろうか、気持ち悪いと思われただろうか。と俊樹は言わねば良かったと後悔した。だが、柊子は長い前髪を指先で払うと「そう。なんだか、文豪みたいね」と笑った。
そのときの柊子の動作を、俊樹は全て目に焼き付けている。人差し指で前髪を払い薬指と小指で耳にかけるその動作も、伏せられた睫毛の震え方も。
その切り返しに並々ならないセンスを感じた、と言ったら言い過ぎだろうか。とにかく、自分はその言葉に少なからず救われたのだ。
カウンセラーの吐くお仕着せの言葉よりも、医者の出す得体の知れない錠剤よりも、柊子の「そう」の一言の方がよほど俊樹の暗く淀んだ脳髄を揺さぶった。
とにかく、俊樹には柊子が必要であるのだ。それだけは、俊樹の狭い世界の真理であった。
ことり、と卓上に茶碗が置かれる。はっとして顔を上げると柊子は不思議そうな顔をした。
「電子レンジ、何度も鳴っていたのに」
「あ、すみません」
調理が完了すると、中の皿が取り出されるまで定期的にアラームを鳴らし続けるタイプの電子レンジである。どうやら思った以上に思考に耽っていたらしい。
「文豪だもの。仕方ない」
柊子は茶化すように言うと、ダイニングテーブルにつき箸を手に取る。
「いただきます」
赤い塗り箸が、白いご飯を掬う。俊樹はそれを眺めながら黒い塗り箸で魚をつついた。
柊子は細面に一重瞼で、鼻も小作りである。その中に唇だけがぽてりとしていて、そのアンバランスが色っぽい。柔らかそうな唇に触れる箸が羨ましいと感じるあたり、既に自分は異常である。
俊樹の視線に気付いたのか、柊子は視線を上げる。最後の咀嚼、嚥下を終えて柊子は口を開いた。化粧を落とした唇が、赤い。
「別に、先に食べていてもいいのに」
いえ、と俊樹は首を振る。
「俺が、柊子さんと一緒に食べたいんです」
柊子はふうと笑って、前髪を指先で払う。
「そう」
待ち望んだその返答に、俊樹は自分の顔が勝手に笑むのを感じた。
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