【貴方なしでは】依存スレッド5【生きられない】 at EROPARO
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300:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:16:33 nCcOMd7x
 杜守さんの永遠の味方。
 杜守さんがどんなに甘えても、格好悪くても、失敗をしても、
きっとわたしよりずーっとすごい。杜守さんが居なければ情緒
を保てないくらい、杜守さんにメロメロなわたしは、絶対に杜
守さんを裏切らない。

 好きだな。
 わたし、杜守さんの事、大好き。

「良い子、します……だからぁ……」
 わたしはもぞもぞと動くと姿勢を直して、仰向けに寝転んだ
まま、二つの手を両耳の脇に上げる。それは喉もお腹も見せて
しまう、絶対従順の降伏の姿勢。
 軽く握って力を抜いた赤ちゃんのような手のひらをふにふに
させながら、太ももさえもじわじわ開いて、女の子の弱点とい
う弱点を全部杜守さんにゆだねる。

「して? ……杜守さん以外……じゃ……ダメになるように…
…して?」
 ううう。恥ずかしさと甘ったるい快楽で、言葉がもつれる。
 今のわたしはどうしようもない恥ずかしい女の子だ。
 唇からも太ももの間からもだらしない蜜をこぼして、全面降
伏の姿で、杜守さんの発情を誘っている。杜守さんに甘えて欲
しくて、とても他人には見せられない、媚びた姿を晒している。

「ちゃっと、力を抜いて……」
 杜守さんののど仏が動く。
「言いつけに……した……がいますから……いいこいいこって
……シテ……ください……」

 杜守さんが降りてきて、ぎゅぅっと抱きしめてくれて。可愛
いよ、って云ってくれた。ううう、それだけでお腹の底が、ひ
くひくしてる。あそこの内側からきゅぅっと蜜を絞り出すよう
な、じれったくて待ちわびるような疼きの恥ずかしさって、男
の人には絶対判らないんだろうな、なんて思うのだけれど。
 杜守さんの言葉がいつもみたいに余裕たっぷりのいじめっ子
と言うよりは、少し照れくさそうだったので、わたしは全てを
許したくなってしまった。


301:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:17:40 nCcOMd7x
ごめんなさい
299と300、逆でしたっ。以下続行。

302:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:19:22 nCcOMd7x
「飼い主様ぁ」
 わたしはほてった顔で出来る限り無邪気そうに微笑みながら、
自分でもやり過ぎだと思うほどの甘い声で杜守さんに呼びかけ
る。
 ぎくり、と杜守さんの身体に力が入るのが判る。わたしの中
に埋め込まれた杜守さんがびくんと跳ねるのだって、わたしに
は判ってしまう。
 内心では照れくさくて恥ずかしくてパニックになりかけてい
るわたしだけど、そんなことは押さえつける。ううん、押さえ
つけるまでもなく、いまのわたしは「えっちな娘」になってし
まっているのだ。普段のわたしなら出来ないけれど、こんなに
ピンク色にのぼせ上がった状態なら、こんなことだって出来て
しまう。

「飼い主様ぁ」
 甘えるように、懐くように微笑みながら、頬のすぐ横にある
杜守さんの腕にうっとりと頬を擦りつける。杜守さんのものが
、またひくりと大きくなる。
 さっき居間の時も、この呼びかけで杜守さんが動揺しちゃっ
たのは忘れたりしないのだ。杜守さんが意地悪するなら、わた
しだって少しくらいお返しをする権利があるはずだ。
 それは……多分自分自身の変態を認めちゃう、自爆テロに近
い攻撃だけど。杜守さんに甘えるのが気持ち良いって癖を付け
られちゃってるんだから、こんな呼びかけしてわたしの方だっ
て無事に済むはずがない。甘えるような声を立てれば立てるほ
ど、わたしのあそこはくちゅくちゅと噛みしめて、どんどんわ
たしも登っていくのが判る。
 それでも杜守さんが動揺して、動揺以上にわたしの甘い声に
反応しているのは、わたしのなかにざわざわした優越感とうっ
とりするほどの幸福感を呼び覚ます。

「飼い主様ぁ……して?」
 腰を揺する。わたしは飽和しそうな心地よさだけでどんどん
とえっちになってゆく。腰を揺する度に深く埋め込まれたもの
が粘膜の中で微妙に動いて、甘痒い刺激で脳が蕩けそうになる。
発情して、杜守さんしか考えられなくなって、わたしは微笑む。


303:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:20:07 nCcOMd7x
 ずるい。
 ずるい。
 飼い主様にこんなに幸せにされたら、甘い声も、えっちな微
笑みも止められるはずがない。わたしはくぅんくぅんと仔犬の
ような鼻声をだしながら、潤んだ必死の視線でおねだりをする。

 ぎゅむん、ねじりこまれるような、奥まった内蔵をすりつぶ
されるような衝撃。わたしはお腹の底から呼吸をしぼりだされ
る。音も熱もない乳は苦笑のまぶしさだけが脳裏を占める。後
頭部が痺れるほどの快美感。

「眞埜さん、そうゆーのは、反則っ」
 もう一つ。
 さらに一つ。
 杜守さんが奥まで突き刺して、ぐちゅぐちゅにかき回して、
ほおばりきったわたしの甘痒い所も、ヒリついたところも満遍
なく擦り立ててくれる。わたしの口からは、断続的な啼き声と、
飼い主様、飼い主様というかすれた呼びかけが途切れることな
く続く。

「うー。判った。……するから。眞埜さんが欲しいから。うう
ぅっ。ずるいなぁっ」
 何度も何度も疲れて、その度に沸騰しそうな背骨を、甘美な
電流が走り抜ける。だらしなく舌をこぼした唇がわなわな震え
て、飼い主様に気持ちよくなってもらって褒めてもらうことし
か考えられなくなる。

「飼い主様。飼い主様ぁっ……。ぎゅ、して……甘えて……好
き、大好きっ……いいこするからぁ……。もっと、熱いっ……
あんっ。くださ……奥ぅ……シて、んぅっ!……欲し……」
 飼い主様はわたしを痛いほどの力で抱きしめてくれた。一分
の隙間もないほどみっちりと詰まったわたしの内側を、飼い主
様の熱い固まりが充たしている。奥に擦りつけられるような動
き。
 それだけで何度も何度も登り詰めて、わたしは幸福感で真っ
白に塗りつぶされてしまう。

 抱きしめられる。
 繋がって、弾けて、甘く充たされる。
 さざ波のように繰り返す痙攣の中で、蕩けきった心は杜守さ
んと同じ桃源郷に行って戻ってこれなくなってしまう。

304:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:21:33 nCcOMd7x
「ぅぁ……」
 わたしは布団の中で身もだえする。目下タオルケットを巻き
付けた体勢で、茹だりきっているのだ。
 もちろんわたしを背中から抱きしめているのは杜守さん。
 あれからもう一度抱かれてしまって、多分真夜中をすでに回っ
てしまっている。

 ううう。いくら何でも今回のはやりすぎだ。前回の発情えっ
ちも変態でえろえろんでやりすぎではあったけれど、それにし
たって今回ほどじゃなかったように思う。
 ううう。自分が杜守さんに言ってしまったこと、やってしまっ
たことを思い出して身もだえする。変態というか、これは世間
で言うところの……ち、痴女に当たるのではないだろうか。そ
りゃ、多少は自覚があるけど。わたしは妄想癖もあるしきっと
えっちくさいダメ女子なのだ。

「ぅぅー」
 さらにそのうえ度し難いのは、こんなに身もだえするほど恥
ずかしいのに、実はあんまり困った気分になれていないのだ。
理性の方は、大きな問題を感じている。いくらなんでもこんな
えっち娘では愛想を尽かされてしまうと思ってる。でも。心の
方は勝手に幸福感をかんじとっていて、わたしがこんなに困っ
ているというのに、頬が緩んで笑みが浮かぶのを止められない。
 心さん、もうちょっと協力的になってください。同じわたし
なんですから。これじゃ泣きそうです。もうわたしは再起不能
かも知れません。

 それにやっぱり、杜守さんは意地悪のドSいじめっ子だ。あ
んなゆるゆるえっちを教えられたら、抵抗出来ない。身体も心
も際限なく甘えん坊になって、杜守さんと一緒のベッドに入る
だけで、どんな「おねだり」にも無条件降伏したい気分になっ
てしまう。強制的に懐かされているというか、こうして抱きし
められていても、指先が勝手に杜守さんの身体を探検しそうに
なったり、脚を絡めたくなったりして大変なのだ。

 一緒に眠る安心感と浄福の幸せを知ってしまったわたしは、
これからロフトで1人で寝るのが寂しくなりそうな気もする。
でも、それもしかたない。1人でいなければならない時は「良
い子でお留守番」すると約束したのだ。おそらく仕事場でも頼
られている杜守さんへの、それは出来る限りの協力。

305:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:22:02 nCcOMd7x
―1人で何でも出来ちゃうと、頼るのも甘えるのも忘れてし
まうから。
―どんどん無駄をそぎ落として、シンプルになっていける。
けれど、余計な部品を取り外していくと、動機も優しくしたい
気持ちも取り外してしまうんだよ。幸せかどうか考える部品も、
外しちゃうんだ。

 身体を重ねたあと、杜守さんは小さい声でそんなことを教え
てくれた。その言葉の意味はわたしにはちょっと難しかった。
完全に理解しきれないし、わたしは杜守さんにはなれないから、
実感は永遠に出来ないのかも知れない。
 けれど、良く判らないなりに、杜守さんも、つまり「何でも
要領よく出来てしまう人」というのも、それなりの苦しみや辛
さがあるんだろうなって思えたのだ。
 杜守さんの言葉は、だから杜守さんなりの意味合いで「眞埜
が欲しい」と言われたような……。ううん、そんなことを考え
ただけで恐れ多いという気分になってしまうのだけれど。
 こんなダメ女子が何の役に立つのか判らないけど。もし、わ
たしが杜守さんに甘えることによって、杜守さんが何かを失わ
ずにすむのなら、優しくなれるのなら……。あまりにも傲慢で
思い上がった考えかも知れないけれど、わたしは杜守さんにとっ
ての「良い子」になりたい。

 杜守さんが、ううん、飼い主様が「そうだ」と言ってくれる
なら。料理の上手な娘になりたい。か、か、かわいい娘にもっ、
頑張って、なってみたい。本当はなりたかったのだから。それ
から、そのぅ胸の大きい娘にだって……なりたい。
 なれると、良いな。ううん、なる。ダメ女子でも、「欲しい」
って云ってくれるなら、わたしは恩返しをする。
 どうせ杜守さんが居なければ、ダメダメ女子なのだし。

 そういえば、杜守さんは時期をずらしたお盆休みなのだった。
 今度こそ料理を作ってあげなければ。ほんのちょっぴりだけ
ど、作れるレシピだって増えたのだ。杜守さん、杜守さんで飼
い主様。どんな食べ物ならば美味しいって云ってくれますか?
 わたしは、わたしを閉じ込める杜守さんの腕の中でもがいて、
水面へ顔を出すイルカのように布団から浮上する。

「杜守さ……」
 タオルケットから鼻の上を覗かせたわたし。抱きしめてくれ
る飼い主様の腕は温かくて、泣きたくなるほど安心感を与えて
くれて、ここが憧れていたあの場所だという確信を与えてくれ
て。
 そしてわたしは―。
 杜守さんの寝顔初めて目撃したのだった。

306:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:24:39 nCcOMd7x
以上投下終了、お目汚しでした。
とりあえずBパート杜守編おしまい。
多分、こうゆう依存も有るのかなぁ、と。
ダダ甘依存で、趣旨とはもしかしたらそぐわないのかも
知れませんが、読んでいただければ嬉しく思います。
ではでは! 流浪投下にもどります。またっ!


307:名無しさん@ピンキー
09/08/27 22:42:11 zHJ9rb37
GJ!
読んでいてこっちまで恥ずかしくなっちまった。
そんでこっちまで幸せになった。

308:名無しさん@ピンキー
09/08/28 00:55:35 wJT8Taeq
>>306
よかった!マーマレードサンドか唐揚げを奢ろう!!

309:名無しさん@ピンキー
09/08/28 03:27:43 f45rE8Bn
>>306
1から10まで同じような話で飽きてくる。
ストーリー性が皆無。
>>278
「会話」

「会話」
こんな感じで会話の間に隙間をいれたら違和感がでる。

310:名無しさん@ピンキー
09/08/28 05:30:59 61QMzoRZ
おまえさんこのストーリーが読み取れないのか…
なんか、可哀想だな

311:名無しさん@ピンキー
09/08/28 05:45:18 aB/tWPbK
大方この話の表面だけ読んでとりあえず書いてみたってとこだろ
きちんと読んでたらストーリー性皆無とか言えるはずないもんな

312:名無しさん@ピンキー
09/08/28 06:24:39 61QMzoRZ
良かった安心したわ。
この話をきちんと読み込んでストーリー性皆無なんて言う可哀想な人はいないんだな。


313:名無しさん@ピンキー
09/08/28 06:55:03 R3aGGNvh
>>297
GJ
誤字どうにかなんない?

314:名無しさん@ピンキー
09/08/28 09:13:13 /9Nl84ih
甘々すぎて吐き気をもよおすほどGJだ!
素晴らしい依存だ。こりゃ居候→結婚で一生依存コースだな
俺もエロいダメな子に依存されてぇよ…

なんか頭が可哀想な子がいるけどピクルばりの金玉アッパーしとくんで気にしないでくださいね

315:名無しさん@ピンキー
09/08/28 10:46:36 5STYqE5/
GJGJ!!!
かわいすぎる!!


316:名無しさん@ピンキー
09/08/28 13:09:08 5wtoQPhO
なんか以前お付き合いした年上の人との関係に似てるなぁ。
もちろんひきこもり状態ではなかったけど。

317:名無しさん@ピンキー
09/08/29 01:24:09 MN/SC5ju
ふーん

318:名無しさん@そうだ選挙に行こう
09/08/30 14:16:27 W6/kmPrw
〉〉316
kwsk

319: ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:04:13 dr57vIpD
投下します。
夢の国のほうです。

320:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:04:45 dr57vIpD

―「……ほらな?飯なんか食ってるから……」

「いや、まぁ…悪い…」
ホーキンズが腰に手をあて、ジト目で此方を睨んでくる。
朝食を食べ終え、中央広場に三人並んで気楽に歩いてきたのだが…。流石にこの光景を見ればホーキンズが怒るのも無理はない。

「ねぇ、ライト…ここでなにがあるの?」
隣に並んでいるメノウが、周りをキョロキョロとしている。
並んでいると言うよりは、しがみついているが正しいのか…。
片手は俺の服を掴み、もう片方の手は迷子にならないようにしっかりと俺の手を握っている。

「あぁ、あそこにでっかいテントがあるだろ?

…見えるか?
あの中でなにかあるらしいんだ。」
この場所からは少し見えにくいが、テントの天辺部分が木々の隙間から見えるので、その場所を指差しメノウに教える。

広場まで来た…と言ったが実際は、まだ広場に到着していない…。
どういうことかと言うと、俺達が来た時にはもう既に広場前の歩道にまで客がごった返していたのだ。

無論俺たちも列に並んでいるのだが、先が見えないのでいつになるか…。

「まぁ、あんなでっかいテント張ってるんだから、一人、二人をチマチマといれないだろ。すぐだよ、すぐ。」

321:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:05:40 dr57vIpD
ホーキンズの言うようにテントはかなりデカイ。軽く50人は入ると思う。

俺達の前に並んでいる人は多分70人ぐらい…。後ろを振り返り、俺達に続いている列の続きを確認すると、後ろも先が見えないぐらい並んでいるのが確認できた。
やはり、町の真ん中にあれだけでかいテントを張れば、珍しさ見たさに人が押し寄せてくるか…。

「おっ?ほら、列が動くぞ。」
疲れたように地面に座り込んでいたホーキンズが待ちわびた様に立ち上がる。
それと同時に俺達の前に並んでいた人達も、ゾロゾロと広場の方へ列を成して進んでいく。

「これなら、すぐに入れそうだな?」

「あぁ、何時間待たされるかと思ったよ…。」
前にいた者達はあっという間にテントの中に収まり、俺達も難なく広場の入口までこれた。

なかに入る人と入れ違いにテントの中からも人が次々と溢れ出てくる。
テントの中から出てきた者は皆、どこか興奮しておりテンションもかなり高いようだ。

「おい、あんた、ちょっと待ってくれ!」

「んっ?なんだよ、兄ちゃん。」
興奮気味に出口から出てきた中年男性に声をかける。
顔を見る限りかなり楽しい物を見て来たようだ。

322:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:06:34 dr57vIpD

「ちょっと聞きたいんだが……中で何が行われているんだ?」

「へへっ…気になるのはわかるが、それは中に入るまで我慢したほうがいいぞ?俺の口から聞いたら楽しみが無くなっちまうからよ。」

「いや、そうじゃなくて…女や子供を中に入れても大丈夫なのか?」

「あぁ、それは大丈夫だ。まぁ、楽しんでこいや。」
そう言うと含み笑いをしながらスキップ気味に人混みの中へと消えていった。
中年のスキップ姿に、なにか痛々しさを感じながらも、少し安堵した。
中年男性が言うように出口からは小さい子供を連れた親子の姿も見える。
やはり、サーカスの類いか?
人が喜ぶとしたらモンスターを調教して何か芸をさせるとかその程度だろうか…。
あまり想像できないが、ここまで引っ張られると正直期待してしまう。



―「……んっ?……ッチ、なんだよクソっ!」
突然、前に並んでいる一人の男性がイラついたように呟き、鬱陶しそうに空を見上げた。
それにつられて周りにいる人達も次々に空を見上げていく…。

「あぁ〜あ……降ってきたよ…」

ポタッ、ポタッ、と空から小粒の雨が落ちてくる。

323:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:08:17 dr57vIpD

誰も雨が降って来るとは思っていなかったのだろう。傘なんて誰も持っておらず、皆急いで歩道沿いに並んでいる木々の下に身を隠した。

「思ったより台風早く来るかも知れないな?」

「そうだな…風も少し強くなって来たしな。」
海に広がる空に目を向けると、黒い雨雲が此方に近づいてくるのが見える。
あの船員は四日後…と言っていたが、二日後には嵐がもうこの町に来るかもしれない。

「…メノウ寒いか?」

「ちょっとだけ…寒い…」
暖かかったので薄着でも大丈夫だと思ったのだが。雨がふり、海から吹いてくる風が強くなっているので気温が低下したみたいだ。ワンピース一枚のメノウには流石に堪えるだろう…小さい耳がプルプルと震えている。

「ほら、風邪引くから…これ着てろ。」
着ていた上着を脱ぎ、メノウに羽織らせる。

「ありがとう、ライトっ!」
満面の笑みでお礼を言うと、周りの目を気にせず俺の服に顔を埋め鼻歌を歌いだした。


「すーはーっ♪すぅーはぁーっ♪」
いや…鼻歌を歌ってると言うより鼻息が荒いだけか…。

324:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:08:55 dr57vIpD

―「さぁ〜、さぁ〜、次の列に並んでいるお客様。前に進んでくださいよ〜っ!」


周りにいる人間と雑談をしながら時間を潰していると、入り口から団員らしき人物が姿を現した。
白いスーツに蝶ネクタイが妙に胡散臭い…。

その白スーツの隣には、白い犬の着ぐるみを着た奴までいる。その手には色とりどりの風船が持たれており、並んでいる子供達に配っているようだ。

「んっ…?どうした、メノウ?」
先程まで俺の服に顔を埋めていたメノウが、犬の着ぐるみを見た瞬間、ピタッと固まってしまった。

「……わんわん…」

「えっ?」

「……わんわん、こっちくる…」

わんわん…と言うのは犬の事らしい…。
確かに犬の着ぐるみを着た人物は、風船を子供達にわたしながら此方に歩いてくる。

「…」
メノウの耳と尻尾が立っているので、犬の着ぐるみに対して強い警戒心を抱いているようだ。

「別になにもしないって……ほらっ、風船貰えよ。」

「や〜っ!!」
俺の前まで犬の着ぐるみが歩いてきたので、後ろに隠れているメノウの手を掴み前に出そうとする……が、俺の右足にしがみつき一切離れようとしない。

325:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:09:41 dr57vIpD

「はぁ〜……ありがとう。」
仕方なくメノウの代わりに風船を受け取る。

犬の着ぐるみが風船を子供達に配る間、メノウは一切犬の着ぐるみに対して警戒を怠らなかった。と言うより見つからないように必死だった。

「おい、ライトっ。中に入れるぞっ!」

―犬の着ぐるみが皆に風船を渡し終えると、広場に設置してある小さな門がゆっくりと開いた。

それと同時にテントの中から先程入っていった人が次々と出てくる…。一度目と同じように皆、かなり興奮してるようだ。

スゲー!
もう一度見たいっ!
欲しいっ!
テントから出てくる人々の声を聞くと、やはり高評判な物が中にはあるらしい。

ただ、俺が考えていたサーカスの類いでは多分無い…。
俺達の前列がテントに入って、まだ三十分そこらしか経っていないのだ。

「なんだろうな…?ここまで待たされるとかなり期待するよな?」

「あぁ、そうだな。」
広場前の窓口でメノウと俺、二人分の入場料を払い、入場券を貰う。

メノウも犬の着ぐるみから離れたので安心したのか、俺の手が離れない範囲でウロチョロしだした。
同じようにホーキンズも入場券を窓口で貰い、三人でテントのある場所まで歩いていく。

326:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:10:53 dr57vIpD

「一番前の人から押さないように中にお入りくださぁ〜い!あっ、入場券はテントの前にいる人に渡してくださいねぇ〜!」

「はい、はい。」
テント前にいるバレン兵に入場券を見せ、テントの中に入る。

また、メノウの耳が少し立ったが、先程とは違い暗い場所にいるので軽く警戒してる程度のようだ。
メノウに風船を渡し座れる席を探すが、最前列の席は全て埋まってしまっている。仕方なく、中段の席に三人で座ることにした。
少しステージから離れているので見にくいが、この場所ならメノウに何かあっても出口が近いので、すぐに抜け出せる。

そんな事を考えながら軽く周りを見渡していると、ものの5分で全席が客で埋め尽くされ、入って来た入口がバレン兵によって閉ざされた。

「なにが、始まるんだろうな?」
ホーキンズが興味津々にステージを眺めている。

「多分見せ物小屋とかだろ……おっ?始まるぞっ!」
照明がステージを照らす。
恥ずかしいとに一瞬テンションが上がり、ホーキンズより先に声をあげてしまった。

照明が照らすステージの上には先程、客入れをしていた団員らしき白スーツの男が一人立っている。

327:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:11:34 dr57vIpD

「今日この場所に足を運んでいただき、誠に有難うございます!
私、ここの団長を勤めさせていただいております、コーセツと申します。
よろしくお願い致します。」
礼儀正しいのか、ふざけているのか…にやけた顔つきで自己紹介を終えると、深々と観客席の方へ一礼した。

「お客様方…今この場所にいることを誇りに思ってくださいっ!」
突然、声の音量を上げると、大袈裟な動きをしながらステージを端から端まで歩きだした。

「皆様っ!今日、あなた方は特別な……いやっ!衝撃的な物を目撃するでしょう!!
決して生涯終わるまで忘れることはなく、お客様の記憶に強く残る時間を過ごしていただけると願いっ!私、ここに断言いたします!!」
白いスーツを脱ぎ捨て熱弁する団長の姿は、少なからず客の期待感を煽るものだった。

ホーキンズやメノウも興味津々に団長の話を聴いている。
かくいう俺も期待感が膨れ上がっている一人だ。

「それでは、短い時間ではありますが!心行くまで楽しんでいってくださいっ!!」
汗をかきながら十分ほど熱弁すると、出てきた時と同様に深々と一礼し、投げ捨てた白スーツを拾い上げ、颯爽と舞台裏に消えていった。

328:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:12:17 dr57vIpD


「…長い演説だったなぁ…?」

「まぁ、それだけ期待しろってことだろ?」

団長が舞台袖に消えてすぐ、反対の舞台袖から黒い布を被せられたなにかが、団員二人の手によってステージの上へと運ばれてきた。

違う団員が木のテーブルを中央に置き、その上に黒い布が被せられた何かを慎重に乗せる。

「なんだ…?」

「あの黒い布の中身になにかあるらしいな…」

「おっ、おいっ!今、光ったぞっ!?」
周りの観客がざわめきたつ。
確かに黒い布の隙間から青白い光が微かに漏れた。


―「ふっ、ふっ、ふっ……」
先程、舞台袖に消えた団長がまた戻ってきた…。
多分皆んなが思っていることだが、出たり入ったりするなら始めからステージの上に立っててほしい…。

「皆様、お待たせいたしました…それではまいりましょう…夢の時間へ…。」
軽い足取りで中央まで近づくと、徐に黒い布に手を掛けた。






―「こちらが、おとぎ話に出てくる、あの有名な伝説の生物でございますっ!!!」

大きな声と共に勢いよく団長が黒い布を引き剥がすと、小さな鳥かごが一つ姿を現した。

329:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:12:56 dr57vIpD

―「………う、うっ……うぉおぉおぉぉおぉ、スゲぇえぇえぇぇーッ!?なんだよこれッ!!?」

「キャー!?可愛いぃぃいぃ〜!!!」

「は、始めてみた…なんて綺麗なんだ…。」
少しの静寂の後、ステージに近い前列だけが歓喜の声を上げた。

「なんだよ、くそッ!ここからじゃ暗くて見えねーよ!!」
イラついたように立ち上がるホーキンズに煽られたのか、後ろの席の観客が次々に立ち上がりだした。

「お客様、焦らないようにっ!明かりをつけるので、お座りくださいっ!!」
多分これもバレン側の作戦かなにかだろう…散々煽って見せびらかせたほうが記憶に残りやすい…それだけ商品に自信があると言うことだ。

5分ほど待っていると徐々にテントの中が明るくなってきた。
この5分が死ぬほど長く感じたのもバレン側の思うつぼなのだろう…。

「おっ?見えてきた、見えてきた……ってなんだ?カゴの中に何か………ッ!?」

―小さなカゴの中身を見て絶句した―

鳥かごの中身…それは、見たこともないような、鳥かごに収まるほどの小さな人の姿だった。

「そうですっ!あの、神々の涙の雫とまで言われた伝説の生物っ!フェアリーでございますっ!!!」

330:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:14:04 dr57vIpD

団長の声と共にテントの隅々まで驚きと歓喜の声で満たされた。

「おい、ライト見えるかっ!?妖精だってよ!!本物か、あれっ!?」

「さ、さぁ…俺もビックリしてる…よ…。」
妖精なんておとぎ話の中でしか聞いたことがなかったので、人間が作り出した空想の生き物だとばかり思っていた。

確かに本で見たように背中に羽がはえており、小さなカゴの中を器用に飛んでいる…。

「メノウどうだ…妖精だってさ。」

「…わかんない……でも、可哀想…」

「可哀想…か…そうだな…」
メノウに言われて我に返る。
確かに妖精は身体は違えど、人間と会話ができたり、仲良く旅をしているといったイメージが真っ先に頭に浮かぶ生物だ。

本で得た知識なので本当の生態はまったくわからないが、実物を見ても人に害を与えるような行動をするようには見えない。

どちらかと言うと、人間に対して怯えているような素振りを見せている。

「それでは皆様、前列から一人一人ステージに上がって間近でフェアリーを見てください!」
また、客席から一際デカイ歓声があがった。

「スゲーなマジでっ!間近で見るどころか、一生見ることなんてないぞっ!」

331:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:14:46 dr57vIpD

ホーキンズの言うように妖精を間近で見るどころから、もう視界に入れることすら無いのかも知れない…。
そう考えると一度間近で見たくなってきた。

「メノウ…おまえはどうする…?」

「ライト行くなら…メノウも行く。」
解りきってた返答…メノウの手を掴みステージに向かって歩き出す。

「はい、はい。カゴに触れてはいけませんよ〜!お一人様、一分まででお願いしますね〜っ!」
一人一人ステージに上がり、見ては降ろされ、見ては降ろされ、次々に人が入れ替わっていく。

「次は俺だな!!」
俺の前に並んでいた、ホーキンズが待ちわびたようにステージに上がった。

「おぉ〜!なんか、元気ないけど本物っぽいぞ、ライト!」
此方に振り向き嬉しそうに話しかけてくる。

「はい、一分経過しましたぁ〜。次の方どうぞ〜。」

「はやっ!?」
渋るホーキンズを団員がステージの下に誘導する。

「それじゃ、行こうか?」

「うん…」
次は俺達の番だ…。
メノウの手を掴み、テージに上がる。

緊張しているのか握っている手が汗ばんできた。

「おっ?お二人様ですね?それでは倍の二分間お楽しみください。」

332:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:17:07 dr57vIpD

「なっ!?ずるいぞっ!それじゃ、俺と三人で上れば三分だったのかっ!?」

「女性の方にサービスは付き物です。さぁ、お客様此方にっ!」
ステージ下から文句を言うホーキンズに対して団長は軽く受け流した。
大人げないを通り越して知り合いとして恥ずかしい…。

ステージ下から叫び続けているホーキンズから目を放し、ふぅ〜っと大きく息を吐き妖精が入っているカゴに近づく。

「カゴには絶対に触れないでくださいねぇ〜。」

「あぁ、分かっているよ…メノウ、わかったな?」

「うん…。」
手を出さず顔だけカゴに近づけ中を観察する。

透明感のある金色の髪に海のような青い瞳…背中には小さな羽がついており、その羽を使って狭いカゴの中を精一杯飛んでいる。

「おっ?こっち向いたぞ?」
俺達の視線に気がついたのか、一定の高さを保ったまま此方に視線を向けてきた。

よく見るとホーキンズの言うようにどこか弱々しい…目には生気が無く、羽も少し傷ついている…。

「ライト…もう、帰りたい…」
メノウが妖精から目を離し腕を引っ張る。

他の者とは違い妖精を間近で見てもメノウはまったく喜ばなかった…それどころか嫌悪感すら抱いてるようだ。

333:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:19:35 dr57vIpD

確かにメノウの言う通り見ていてあまり楽しい物ではなくなってきた。
初めこそ伝説の生物だからと楽しみに見ていたのだが、今はどこか心苦しい…。

「そうだな……帰ろう…。」
妖精から目を離し、その場を離れようとした時―ふと、小さな疑問が脳裏をよぎった。




―あの声はなんだったんだろう?

昨日聞いたあの声…妖精の出現で浮かれていたが、あの声の主を探るためにこの場所に来たんだった。

「…ライト?」
メノウが考え込む俺の顔を不安そうに下から覗き込んできた。

メノウの頭を撫で、周りを見渡す。
別に変わった物や人物は見当たらない…。



―「…変わった物かぁ……」

変わった物――もう一度妖精に視線を落とす…。
妖精はと言うと、既に此方を見ておらず、キョロキョロと周りの人間を見渡しながら同じ場所で羽ばたいている。

「…」
団長に目を向ける…ホーキンズとなにか言い争っている…団員もホーキンズを追い出そうと此方をまったく意識していない。

妖精の前にいるのは俺とメノウの二人だけ…

―今しかない。

「な、なぁ…」

「ッ!?」
コンッと軽くカゴ叩くと、音につられて妖精が此方に勢いよく振り返った。

334:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:20:24 dr57vIpD

―多分…今からすることを周りの客が見たらさぞかし笑うだろうなぁ…。
頭から恥ずかしさを振り払い、一歩前にでる。




―「き、昨日の朝、話しかけてきたのは…お、お前か…?」
周りの人間にバレないように小さく呟く…。
妖精に話しかけたなんてバレたら町中の笑い者にされる…自分でもかなり恥ずかしいし、アホらしい。

「ラ、ライト…?」
メノウも俺のアホな行動にビックリしたのだろう…俺の顔をポカ〜ンと眺めている。

自分でも何故こんなことをしているのかまったく分からない…。ただ、アホらしく感じるが頭に直接話しかけてくるなんて人間以外の生物しか考えられないのだ。



「………バ、バレるか最後にするぞ……?あの…助けてほしいって……おまえが言った…のか…?」
妖精に向かって話しかける……が、まったく返答は無い。
それどころか、驚いたように俺の顔を見ると、そのまま硬直してしまった。

「ちょっ、お客様!?困りますよ、そんなに近づかれちゃ〜。
もう二分経ちましたから終わりでいいですね?。」

「あ、あぁ、悪い…」
カゴに近づきすぎたのか、ステージ裏から出てきた団員に気づかれ、妖精から離されてしまった…。

335:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:21:07 dr57vIpD

「……それじゃ、メノウ帰ろっか?」

「う、うん。」
仕方なくステージから降りる。
あの声のことばかり考えていたので、少し警戒しすぎたのかもしれない…。
実際は危険など何一つ無かったし、心配することも無かったようだ。
妖精には少し後ろ髪を引かれる思いだが、俺とかけ離れた存在なのでどうすることも出来ない…。

「…」
最後にもう一度だけ妖精を目に焼き付けようと振り返り、妖精を見つめる……




―たすけてっ!



「っ!!?」
妖精と目が合った瞬間昨日の時と同様に頭の中に声が響いた。

昨日と違う点…それは、はっきりと聴こえてくること。


―お願い!私をここから出して!!!

「…」
昨日の朝の時と同じ声に間違いない…だとするとやはりあの声の主はこの妖精だったのか?。

「おい、なにしてんだよ?早く帰ろうぜ、ライト。」

「あ、あぁ…分かってる…(ここから出して…?あのカゴから抜け出したい…と言う意味か?)」


―また、あの暗い場所に連れていかれる!お願い!ここから逃して!


逃がせと言われても、今カゴを開けて妖精を逃がせば間違いなく俺が殺される。


―助けて…お願い…

336:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:22:07 dr57vIpD


―「か、帰ろう…」
俺が下した決断―それは、声を聴かなかったことにする事だった…。



―イヤッ!待って!置いていかないで!!

やはり、俺ではどうすることも出来ない…。
助けてやりたいが、助けかたが思い付かないのだ。

心の中で謝りステージ前から離れる。

―待って、お願いだからっ!助けて!!!お願いッ!行かな―いッ―で―

テントの中から外に出ると先程まで聞こえていた声がプッツリと聞こえなくなった…。


「………はぁあぁぁぁ〜っ…。」

「どうした?なにかテントの中であったのか…?」

「ライト、大丈夫?お腹痛いの?」
テントから外に出ると安堵か罪悪感か分からないが、足から力が抜け、その場に座り込んでしまった…。

その姿を見て二人が心配そうに話しかけてくる…。
嬉しいのだが、多分妖精と会話したと話をしたところで信用しないだろうな…。

メノウは信用するかもしれないが、ホーキンズは九割笑うに決まっている……のだが自分の中に押し込めていると、なんだかモヤモヤしてしょうがない。

「絶対に笑うなよ…?」

「あぁ?だからなんだよ…?」

「……昨日の朝…港で声が聴こえたって言ったよな…?」

337:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:22:52 dr57vIpD

「あぁ、言ってたな…」

「今さっき……テントの中でも声が聴こえた……」

「…」

「しかも、声の主は妖精だった。」

「へぇ〜…そっかぁ〜…」
明らかに信用していない目で俺を見ている…いや、見下している。

「やっぱり……もう、いいよ……おまえに話した俺がバカだった…。」

「嘘だって!拗ねんなよガキじゃあるまいし。」

「拗ねてねーよ!こっちだってバカにされるから言いたく無かったんだよ!」
一々回りくどい言い回しが腹立たしい…。
ホーキンズの横を通り抜け出口に向かう…。

―やっぱり忘れよう…。
始めから俺ごときがどうにかできるレベルじゃなかったんだ。

解りきっていたことだが、母の言葉が頭に残り半端な行動をとってしまった…。

―助けを求めるものを決して見捨てるな―

母の口癖が俺の心を半端に動かしてしまったのだ……結果、助ける所か見捨てて自己嫌悪に落ちることしか出来なかった。

「おい、待てって!悪かったよ、ふざけて。」

「…別に怒ってねーよ…ただ、あの妖精から助けてって…ここから出してって、言われたのになにも出来なかったからよ…」

338:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:23:42 dr57vIpD

「おまえ、そんなこと言われたのか……?

……まぁ、なんてゆーの?
おまえが冗談なんて言う人間じゃないことぐらい俺だって分かってるって。
ただ、正直俺は声が聴こえてねーから半信半疑なんだよ。」
俺だって未だに半信半疑な部分はある…昨日聴こえた声を小さな正義感で突き止めようとしただけなのだから…。

「だからさ…まず、そういうことに詳しい人に一度、相談しないか?」

「…相談?」
先程とは違い真剣な眼差しで話しかけてくる…始めからこれができないものか。

「最近知り合ったんだけどさぁ。他国の話や、さっき見た伝説のなんちゃらとかを何処で仕入れた情報なのか、かなり詳しいんだよ。」

「信用できる人なのか?ってゆうか笑われるんじゃないのか?」
見ず知らずの他人に爆笑されたら流石に恥ずかしくて違う町に引っ越しを考えるかもしれない。

「そこんとこは大丈夫だな。あの人もたまにお前と同じようなことを叫ぶから。」

「それはそれで怖いな…」

「まぁ、いい人だから気にすんなっ!
明日は朝から仕事があるから夕方にお前の家に行くわ。」

「あぁ…悪いな。変な妄想紛いに付き合わせて…」

「あほか……それじゃ、また明日な。」

339:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:24:27 dr57vIpD

広場の出口から出ていくホーキンズを見送り、空を見上げる。

昔からホーキンズには助けられてきた。
始めは必ずバカにするのだが、後々必ず解決の糸口を探してくれる。
ありがとう…なんて面と向かって言ったことは一度もないけど、心の中ではいつも思っていることだ。

「ライト…」
ホーキンズが出ていった出口を眺めていると、隣にいるメノウが小さな声と共に俺の服の袖をクイッと引っ張った。

それと同時にメノウに視線を落とす…。
上目遣いで俺の顔を眺めており、何か言いたそうにモジモジ、モジモジしている…。

「どうした?」





「……おしっこ。」

「えっ?おし……えっ!?ちょっ、ちょっと待て!!」
慌ててメノウを担ぎ、広場から離れる。




「…プルプル…」

「ちょっ、なにプルプルしてんだよっ!?
だしたのかっ!?
だしたのかメノウっ!?」

「……なにが?」

「はっ?えっ?なにがっておまえ―!」

妖精を見たこと……その妖精から助けを求められたこと……徐々に背中一面へと広がっていく生温かさを感じたこと…。

―団長の言うように今日は絶対に忘れられない一日となった。

340:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/31 03:27:16 dr57vIpD
ありがとうございました。投下終了です。

台風が近づいてる今日この頃…去年、風で飛んできた看板が頭に直撃して血だらけになったのを思い出します。

341:名無しさん@ピンキー
09/08/31 05:15:32 VCHrd6ht
どうなるどうなる

342:名無しさん@ピンキー
09/08/31 13:06:01 cR46595B
>>340
病院に依存してるんですね。

343:名無しさん@ピンキー
09/08/31 20:36:46 A9uSb7T4
体格差カポーを狙うとはこれまたマニアックな

344:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/02 18:01:24 vlGAseBw
春春夏秋冬夜勤の合間の深夜に投下します。

ここって本当に人いないね…

345:名無しさん@ピンキー
09/09/02 18:39:10 Yff/Ayxp
待ってます

346:名無しさん@ピンキー
09/09/02 18:46:43 C8K2G6W9
もちろん全裸で待ってます

347:名無しさん@ピンキー
09/09/02 20:29:02 PdhL79WZ
これは深夜までスレを占有するから投下する
んじゃねーぞと云う警告なんだろうな−。

348:名無しさん@ピンキー
09/09/02 20:37:44 vlGAseBw
>>347が投下したかったら投下すればいいよ。

楽しみにもなるし。

349:名無しさん@ピンキー
09/09/02 21:13:58 GL0HK5QH
>>347
深夜になる前に投下すればいいんじゃないか?

350:名無しさん@ピンキー
09/09/02 21:45:09 EZ3POTXt
でも、前にも「他の人が投下後に時間を置かずに投下するのは非常識」とかレスがついたことがあったよね。
(その時も2時間くらいは経っていたと思う)
その流れから行くと、やっぱり「深夜に投下」って夕刻に予告されたら他の人は投下しにくいよ。

今回は余計な一言も書くから余計に「どうせ俺しかいないでしょ」って風に読まれても仕方がないと思う。

351:名無しさん@ピンキー
09/09/02 21:54:53 vlGAseBw
余計な言葉って、まぁ普通に人いないなぁ〜って思って書いたからそんなつもりで書いた訳じゃないんだけどね。
次から予告はやめとくわ。

352:名無しさん@ピンキー
09/09/02 23:19:45 PdhL79WZ
そもそも予告にどんな意図があったか判らない。
他の人の牽制以外、何か意味があるの?
そのうえで、わざわざ鳥を消して
>>347が投下したかったら投下すればいいよ」なんて
云うのも相当に性格悪くないか?
もし投下があったらその数時間後に自分も投下するのか?


353:名無しさん@ピンキー
09/09/02 23:46:06 vlGAseBw
>>352
別に牽制とかのつもりはないですよ?別に深く考えないで書いたので気にさわったのなら申し訳ないです…。
次からは気を付けます。
すいませんでした。

354:名無しさん@ピンキー
09/09/02 23:48:24 m2DpuhvK
まあまあ落ち着いて。

355:名無しさん@ピンキー
09/09/02 23:54:24 Psjc8t4i
なんにせよ投下そのものは歓迎&GJだし、
夢の国も春春夏秋冬どっちも好きなんでガンバ。

356:名無しさん@ピンキー
09/09/02 23:57:33 DGxUwrGo
作者いなくなる理由分かるわ…。


357:名無しさん@ピンキー
09/09/03 00:38:43 8KrzXIi8
ていうか作者の方が立場上だろうに
読ませてもらってる事を忘れているんじゃないか?

358: ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:22:32 D3R2sUx8
投下します。

359:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:25:16 D3R2sUx8


「それじゃ、お願いね?私はリビングにいるから。」

「はぁ…わかりました…。」
秋音さんが俺に申し訳なさそうにお願いすると、階段を降りてリビングに向かった。

―春香の墓参りから一週間…何故か今、見慣れた夏美の部屋の前に立っている。

「どうしろって言うんだよ…」
秋音さんから受け取ったストラップを見ながら考える。

美幸ちゃんを送って行った日、自宅に帰ってくると秋音さんがフローリングに散らばった何かを掃除している最中だった。

何してるの?と聞くと
「夏美のストラップ切れちゃってね…拗ねて夏美家に帰っちゃった。」
そう言うとクマのストラップであろう物体を俺に見せてきた。

あぁ、だからあいつ変だったのか…と思い、仕方なく俺の携帯からストラップを外すと、秋音さんにこのストラップを夏美に渡すようにお願いした。

それだけあのストラップが気に入ってたのなら俺の物をあげればすむ話だ。

しかし秋音さんはそのストラップを受け取らず、ビックリしたように俺のストラップと切れた夏美のストラップを交互に見比べた。

「な、なんで夏美と春が同じストラップ着けてる…の…?」

360:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:26:25 D3R2sUx8
そう聞き返してくる秋音さんは普段と違い、どこか挙動不審にも見えた。

隠す理由が無いので理由を話すと「そう…」とだけ呟き自宅に帰っていった。
それから一週間…学校を休んで平和な日々をおくっていたのだが、今朝、秋音さんから夏美の事で話があると相談を持ちかけられたのだ。

相談の内容は食事をあまり取らず学校もたまにサボると言うもの。
俺ならまだしも夏美が学校をサボるのは本当に稀で、ここ一週間、午後の授業をしょっちゅうサボってどこかにいくらしい。
秋音さんや恵さんが何度も注意したのだが一向に話を聞かず、お金遣いも荒くなっているそうだ。

俺的には年頃の女子高生なら欲しい物に多少はお金も使うだろうし、反抗期な年頃なのだろうから気にするような事ではないと思うのだが、教師の秋音さんはそうはいかないのだろう…。

悩んでいる秋音さんに軽く「俺が言ってあげようか?」と言うと五秒もしない内に「お願い」と言われてしまったのだ。

自分から言い出した事なのでやっぱり無し、とは言えず仕方なく夏美に話を聞きに行く事になってしまったのだ。
クマのストラップは秋音さんが直したらしく、元通りとは行かないが苦労して直したのは一見して分かった。

361:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:27:08 D3R2sUx8

まさか、このストラップが切れた事で非行に走ったとは考えにくいが、秋音さんから念のために夏美に渡してほしい、と言われたので一応渡すつもりだ。

「ふぅ〜。」
いつまでも廊下に立ってるわけにもいかない…。大きく息を吐き出し、夏美の部屋の扉をコンッコンッとノックする…。

―……

返事無し…

もう一度ノックをするが、やはり返事は返ってこない。

「…夏美、入るからな〜?」

「えっ……春…兄?ちょっ!?なっ、ま、待って!!」

「うおっ!?あぶねーな!」
仕方なく扉を開けて中を覗き込もうとすると、向こう側から勢いよく扉が閉められた。

「なんで春兄が家にいるんだよっ!?」

「いや、ちょっと話があるんだ。」

「は、はなしって…」

「いや、だから開けろって。」

「い、いきなり入ってこようとするなよ!!」

「いや、ノックしたけど?」

「わ、私は返事してなかったろ!」
夏美の声が少し声が震えていた気がするが気のせいか?
夏美の部屋に無言で入るなんて昔なら当たり前のようにしてたことだけど、夏美も高校生だと言うことを忘れていた…。

「あぁ、少しデリカシーが無かったよ…馴れ馴れしく考えてた……悪かったな。」

362:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:27:47 D3R2sUx8
「い、いや…そんなつもりで言ったんじゃ…」
最近あまり赤部家の人間と接していなかったから昔のような行動を取ってしまった…反省しなければ。

「でっ?どうするよ?部屋に入られるのが嫌ならリビングで待ってるけど。」

「あの、嫌じゃなくてっ!じゅっ…十分だけ待って…すぐに開けるから。」
そう言うと扉前から離れる足音と、部屋の中からガチャガチャと何かを漁るような忙しない音が聴こえてきた。

「ふぅ〜…」
廊下の吹き抜けから一階を見下ろす。
子供の頃はこの場所から見下ろす玄関はとてつもなく高くて怖かった思い出がある。
、今となっては淵に掴まれば普通に飛び降りれそうな程の高さに感じる。
まぁ、実際飛び降りたら怪我するだろうけど…。

「……んっ?…メールか…」
風が通る吹き抜けで涼しんでいると、右ポケットに入っている携帯の着メロが鳴った。

誰かを確認すると、画面には「美幸ちゃん」とでている。

別に驚く事ではない。
最近美幸ちゃんとはメル友感覚でメールをしている間柄なのだ。

話題が尽きない日は時間を忘れるぐらいメールをしていたこともあった…。
いつものように受信メールを見て。美幸ちゃんに返信メールを送る。

363:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:28:29 D3R2sUx8

「……よし」

美幸ちゃんとのメールの内容は、ほとんどが雑談のようなメールばかり。
怪我でなにもする事が無く、暇潰し程度で美幸ちゃんにメールを送ったところ、何故かメールが終わらず、三時間ほどメールのやり取りをしていたのを思い出した。



―「は、入ってもいいよ…」
夏美が言ったように十分ほど経過すると、部屋の中から小さな声が聴こえてきた。それと同時にガチャガチャとした忙しない音も無くなった。

「おう、分かった…それじゃ、おじゃましま〜す。」
入ってきても良いと言うと夏美の許可が出たので、ゆっくりと扉を開けて部屋に入る。

「…」

「ひ、久しぶりだな〜、お前の部屋に来るのも…」
自分でも解らないが、何故か緊張してきた…。

気を紛らわす為に、周りを見渡してみる…部屋自体は別に何も変わった雰囲気は感じない
高価な物だって別に目につかない…。
部屋の隅には小さなクローゼットが置かれている。やはり、お金を使うとすれば服とかアクセサリーの類いか…。

その夏美はと言うと、何故かフローリングに正座をしている。

これは俺も正座をしろと言う意味なのだろうか…?
よく分からないが、夏美の前に正座することにした。

364:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:29:22 D3R2sUx8
「あのさ…俺から言うのもなんだけど、秋音さんから話を聞いたんだよ…」
なるべく夏美を刺激しないように話し掛ける。
気性が荒い部分があるので頭ごなしに注意してもまず聞かないだろう。

「ち、ちがうよっ!?も、元はと言えば秋姉さんが悪くて!」

「はっ?な、なに?秋音さん?」

「わたっ、か、勝手に私の!春兄が…!」

「えっ?俺も?」
優しく話しかけたつもりだっだのだが、俺の話を聞いた途端、情緒不安定の如く夏美が意味の解らない事を話し出した。

「それで、私もう一度同じ物をって…でも、行ったら、無くなってたんだよ!!そ、それでいろいろな場所探してっ…探しても、探しても……どこ探しても無くてっ!」
探した?よく解らないが何かを無くしたそうだ。

「落ち着けって、な?」
なんとか落ち着かせようとするが、興奮してるのか、俺の話を一切聴こうとしない…いや、聴かないようにしている。

「で、昨日やっと見つけたんだ!隣町の繁華街まで歩いて探した!」
徐にベッドの下に手を突っ込むと何やら白い袋を引きずり出してきた。

「何それ?」

「で、でも何回やってみても違う物しか出なくて…。」
夏美から白い袋を受け取り中身を確認する。

365:名無しさん@ピンキー
09/09/03 02:29:39 m87iTMGF
支援

366:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:31:03 D3R2sUx8

「な、なに、これ?」

袋の中身…それは袋一杯のクマのストラップだった。

「友達に聞いたら私と春兄のストラップってレアな物らしくて、だからっ…!で、でも大丈夫っ!明日また行ってくるから!ねっ?」
ねっ?の意味が解らないが、あのクマのストラップが欲しいと言うことだけ唯一解った。

「ほら、これ。」
ポケットから秋音さんに渡されたクマのストラップを夏美に渡す。

「……これ…私の?」
俺の手からストラップを受けとると、恐る恐る目先に持っていき、本物かどうか確かめている。

「秋音さんが直してくれたんだぞ?」

「秋姉さん…が?」

「あぁ、切れたから悪いことしたって…」

「…」

「後でお礼言っとけよ?それと姉妹であんまり喧嘩すんな。」

「……」
俺の声に反応せず、なにも言わずに自分の携帯にストラップを着けた。
余程お気に入りだったのだろう…変なことにお金を使ってなくて秋音さん達もホッとするはずだ。

「てゆうか、早く用意しろよ。」

「えっ…?あれ?春兄制服着てる…学校に行くのか?」

「あぁ、あんまり休めないからな。」
本当は休みたいのだが秋音さんをあまり怒らせたくない…。

367:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 02:49:01 D3R2sUx8

「待っててやるから早く降りてこいよ。」
着替えの邪魔になるので部屋から退散する。
そう言えば服は着替えてなかった癖に化粧はしてたな…と変な所に気がついた。

「うん、ちゃんと待っててね…」
扉が閉まる直前、夏美の声で女の子らしい発言が聴こえた…。

身震いするので深く考えず一階に降りていく。
リビングに入ると秋音さんはもういなかった。

「大変だな…秋音さんも…」
家族の事…学校の事…苦労が一番絶えないのは秋音さんだと断言できる。
生徒に妹を持つと他の教師からの目も気になってくるはずだ。

「一応秋音さんにメールしとくか…」
心配してるといけないので解決したことだけでも報告することにした。

「よしっ…と…」
携帯をマナーモードにしてポケットに放り込む。
椅子から立ち上がりリビングから出て、玄関に向かうと、二階から階段を掛け降りてくる足音が聞こえてきた。



―「春兄、お待たせ。」
少し息切れしているので慌てて制服に着替えたようだ。
実際はまだ5分ほどしか経っていない。

「おっ?早かったな。んじゃ、行くか」

「うん。」
夏美と一緒に赤部家を出てると、走るのを嫌がる夏美を無理矢理引っ張り駅へと急いだ。

368:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 03:00:20 D3R2sUx8
――
――



「あっ、春樹先輩!」
駅に着くと、先に着いていた美幸ちゃんが此方に駆け寄ってきた。

「おぉ、おはよう。」

「…」

「おはようございます。今日から学校に行けるんですね?」

「あぁ、この手が治るまで休みたかったんだけど秋音さんに無理って言われてさぁ…」

「ふふっ、しょうがないですよ。骨折はすぐに治る怪我じゃないんですから。」

「いや、そうは言ってもさぁ〜」

「それに休んでばっかりだと単位落としますよ?」

「う〜ん…てゆうか後輩が言うなよ…。」

「だって留年とかしたら、どうするんですか?そもそy「な、なぁ、春兄…」

「んっ?なに…?」
俺と美幸ちゃんが会話をしている最中ずっと無言だった夏美が小さな声で話しかけてきた。

「ふ、二人は…そんなに、その……親しかったっけ?」
不安そうに話しかけてくる夏美を少し不思議に思ったが、夏美は俺と美幸ちゃんがメールしている事を知らなかったんだ…。

「いや、ここ一週間美幸ちゃんとメールしてたからな。」

「はぁっ?メール!?なんだよそれっ!?」
不安そうな顔が一変。ベンチから立ち上がると、怒ったように俺を見下ろしながら声を荒げた。

369:春春夏秋冬 ◆ou.3Y1vhqc
09/09/03 03:01:46 D3R2sUx8

「な、なんでって…だから暇だったからで…」

「隣に住んでるんだから私にメールすればいいだろっ!?」
隣に住んでいるからメールする意味が解らない。
どちらかというと隣に住んでいるのなら、メールしなくても口で話した方が早いぐらいだ…。
ただ、怪我をしている時は動くのも辛いからメールに頼っただけ。

「いや、メールするも何も、俺、お前のアドレス知らないし。」
そう、まず俺は夏美のアドレスすら知らないのだ。携帯を買った初日に教えてもらったのだが、夏美のアドレスがよく変更されるので面倒くさくて登録はしていなかった。

「なっ!?わっ、私は春兄の番号もアドレスも知ってるんだぞっ!?なんで春兄が知らないんだよ!」
そう言うと徐にポケットから携帯を取り出し、慣れた手つきでボタンを押していく。

俺のアドレスを知っていて当たり前。俺は購入した時からアドレスが変わっていないのだから。

数十秒後、俺の携帯が震えた。
中を見なくても解る、多分夏美が俺の携帯にメールをしたのだろう。
夏美からだと分かっていたが、一応携帯を開いてメールを確認する。




『件名:なし

本文:登録しとけや!』



「…」
なにも言わず消去する。


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