【貴方なしでは】依存スレッド5【生きられない】 at EROPARO
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250:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:17:46 5VKgrtZv
 大きなため息をついて、自分の持ち物を確認してみる。
 相も変わらぬ、ひょろりとしたにょろにょろボディだ。食生
活が改善されたせいで、肌には張りと潤いが戻ってきた。色が
白くてすべすべなのは、実は数少ない自慢だ。けれど、そんな
のは十代だったらどんな子でも、健康に暮らしていれば当たり
前に持っているわけで、何のアドバンテージにもならない。
 杜守さんがかまってあげた女の子の中でも、一番残念賞スタ
イルなんだろうな、なんて思うとナチュラルにへこむ。

 わたしの「左側」の後ろ向きで杜守さんに寄りかかりたい気
持ちと、「右側」の杜守さんを甘えさせたい、杜守さんの役に
立ちたいという気持ちは、わたしの中で衝突して、せめぎ合っ
ている。

 バランスなんて、とっても悪いのだけど。
 だって物心ついてからずっとダメ女子だったのだ。「左側」
の発言力が強くて、どうしたって恐れ多いというか、罪悪感で
一杯になってしまう。
 心の中で思っただけで、本当に申し訳なさでいっぱいになっ
てしまうのだ。わたしみたいなダメ女子がそんな大それた願い
を持ってごめんなさい。いえ、その。自信があるとか、絶対手
に入れるとか、杜守さんにふさわしい女性になるなんて自信は
ちっとも無いんですけれど。わたしは杜守さんが居なきゃだめ
な引きこもりなんですけれど。
 よりによって、一番始めに願う宝物が、杜守さんだなんて。

 でも。それでも、やっぱり。
 幸せって麻薬なのだ(良薬だったっけ?)。その魅力には、
ダメ女子のわたしは、ダメであればあるほど逆らいがたい。
 だってわたしの身体には、杜守さんに抱きしめられた感触が
残っているのだもの。腕の外側から大きく締め付けられる、鳥
肌に似た気持ちよさを覚えている。可愛いだなんて、あんなこ
と言われたのは生まれて初めてなのだ。雛鳥だって刷り込まれ
れば懐いてしまうと云うではないか。

 その小さいけれど決して消えない願いは、どんなに諦めよう
としても、そんなの無理だと理性が告げても、執拗にわたしの
中で燃え続けた。
 わたしは、杜守さんの留守がちな十日間をとおして、ダメ女
子であるばかりか、自分がえっちで変態でその上欲深い贅沢も
のだと云うことも思い知らされてしまった。


251:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:24:01 5VKgrtZv
 長い長い杜守さんの修羅場が終わって、やっと何とか一息付
けたのは、九月の2回目の週末だった。「もーやだ。終わり。
仕事しない」と云って家庭用電話の線まで引っこ抜いた杜守さ
んは連続で10時間も寝て、わたしの作ったおにぎりを食べて、
それからまた昼寝までして、やっと体調が元に戻ったようだっ
た。

 かくいうわたしも我慢しきれず、お昼寝はご一緒させてもらっ
てしまった。ううう。10日ぶりの杜守さんですよ? ぬくいの
です。大きいのです。
 本当は疲れているのだし、1人で寝かせてあげるべきなのは
判っていたのだけれど、わたしの方も不安な気持ちとか、頭の
中がぐるぐるしてしまっていて、杜守さんが手招きしてくれた
のにまんまと乗っかって一つのタオルケットで昼寝をしてしま
った。

 目が覚めたのは夕暮れ時。
 やっぱり杜守さんの寝顔はみれなかった。なんだか悔しいし、
ちょっぴり悲しい。でもそのせいで「やっぱり」というように
確信が持てた。多分、おそらくだけど杜守さんは、やっぱりわ
たしに気を許してくれている訳じゃないのだ。

 優しくしてくれるし、気を遣ってくれるし―こ、こんなダ
メ女子ですけど? そのぅ「女の子扱い」してくれる。それは、
嬉しい。杜守さんの腕の中で目覚めるのは格別に幸せで、昼寝
の数時間だけで、3日分くらいぐっすり眠ってしまった。

 でも、杜守さんにとってはやっぱりわたしはどこか、お客さ
んなのだろう。それはわたしにはどうすることも出来ないけれ
ど、とても寂しい。本当はわたしがもっと自立して、素敵な女
の子で、杜守さんが居なくても生きていければ、こんな寂しさ
に耐えることも出来るのかも知れないけれど、それは無理。杜
守さんは、わたしの中でそれほど大きくなってしまっている。

 例の「右側」は杜守さんに甘えたい、甘えたいっ、かまって
欲しいと騒ぎ立てている。でも「左側」は「左側」で杜守さん
の本音の部分が知りたい、出来れば杜守さんもわたしに夢中に
なって欲しいなんて分不相応な願いを繰り返す。
 真ん中のわたしは杜守さんの事を好きな気持ちで湧かしすぎ
たお鍋のように沸騰しているし。そんなわたしすべてを、「杜
守さんに迷惑を掛けるのだけは絶対ダメ!!」と細くて頼りな
ーい理性が御している状態だ。

252:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:32:12 5VKgrtZv
 杜守さんは、そんなわたしのぐるぐるに気がついてないわけ
もなかったのだけれど、何も言わないでいてくれた。夕暮れの
部屋の中でもそもそ起き出した2人。
 視線を合わせられないわたしは、メールチェックをする杜守
さんの横顔を、こっそりと見つめる。

 卑しくて自分勝手な考えだけど、誤魔化すことが出来そうに
もなくて、思い知る。わたしは、杜守さんにも癖になって欲し
いのだ。わたし以外じゃ、ダメになって欲しい。
 杜守さんに必要とされたい。
 杜守さんみたいな何でも出来る人に必要とされるって、そん
な方法全然判らないけれど。

 杜守さんが、さりげなーく。本当にさりげなーく。モスバー
ガーとポテト食べたいな〜なんて云う。確かに食べたい。お腹
がきゅるるんなんて音を立てて鳴く。
 仕事が一段落した今、ちゃんとした食事を杜守さんに作って
あげなきゃいけない立場なのだけど、もちろんそのつもりで準
備もしてあるのだけれど、昼寝をしちゃったせいですぐに食事
が出る、と言うわけにも行かない状況だった。

「眞埜さん、眞埜さん。久しぶりに買い食いってことで」
 杜守さんが、悪戯小僧みたいに笑う。

 引きこもりのわたしとしては、外出はちょっと怖いのだけれ
ど、駅前くらいまでなら何とか……。なんて考えて、顔を洗い
に向かう。コンビニに行くくらいなら今までだってやってきた
のだ。幸いもう夕暮れ時だし。


253:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:37:21 5VKgrtZv
 マンションから外に出たわたしたちは、まだ熱気の残る街を
2人で歩く。
 青鉄の色に染まってゆく空に、宵の明星が輝いている。手を
つないでみたりなんかしたりしたら、も、もしかしてすごく幸
せかも知れない。なんて考えては見たのだけど、そんなこと自
分から出来るはずもなく、並んでいるような、後を付けている
ような、微妙な角度で歩く杜守さんとわたし。

 云うまでもなく、ちょっと後方から追跡しているのがわたし
だ。手をつなぐのはともかく、あのシャツの裾の辺りをちょこ
んとつかんで歩く、位は良いのじゃなかろうか。―なんて考
えてたから、杜守さんの言う言葉を聞き逃してしまった。

「はい? はい」
 何を訊ねられたかも判らないで返事をするわたし。杜守さん
は嬉しそうにしているので、まぁいいか、と納得すると、なん
と杜守さんが手を握ってくれるではないか!! ううう、手を
つなぐって想像以上に恥ずかしい。膝の力が抜けてしまう。

 世間の人たちはこんな事をやっているのでしょうか?
 よく事故も起こさないで歩けますですよ。

 なんて自己突っ込み。杜守さんの手は大きくて、本当に大き
くて、わたしはなんだか宝物を渡されたような気分で、ぎゅぅ
っと握ってしまう。杜守さんはちょっと振り返って、駅前の水
銀灯とイルミネーションに逆光になって、ニヤっと人の悪い笑
みを浮かべる。……人の悪い? わたしはそこで気がついて直
後に涙ぐみそうになる。

 だ、騙されたっ! はめられましたっ!
 杜守さんはにやにや笑うと、わたしが苦手なのを知っていて、
何食わぬ顔でわたしを美容室に連行する。引きこもりが最も恐れ
る場所の一つが美容室だというのにっ!

254:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:42:39 5VKgrtZv
 杜守さんはなんだかすごく手慣れた様子で、こぎれいな女性
の人へ挨拶したりして。知り合いじゃないらしいけれど、何で
そんなに物怖じしないのだろうと悩んでしまうようななめらか
さで、わたしの意見など一切斟酌せずに注文を付けて、代金も
先払いしてしまう。
 これだから社会人は〜。
 わたしは泣きそうな表情で杜守さんに助けてください、お願
いって思ってみるけれど、杜守さんは聞こえていないみたいだ。
当たり前ですよ、そんなの。

「では、どうぞこちらへー」
 くすくす笑いをこらえたヘアカットの人がわたしをチェアに
案内する。ううう。杜守さん! 杜守さん!! この落とし前
はきっちり付けますからねっ! なんて鏡の中を睨むと、杜守
さんは例のいじめっ子風の笑顔でにこにこしてる。
 ううう。あの表情には、弱いのだ。癖を付けられたのが、えっ
と、その。……えっちの最中なので、あの意地悪そうな、しか
し相当に楽しそうな杜守さんの顔を見ていると、恥ずかしいこ
とに抵抗する気力がすぐに甘く蕩けてしまう。

 わたしは俯いて視線をそらして、お姉さんにごにょごにょと
口の中で挨拶をすると、大きくて座り心地の良いチェアに腰を
下ろす。美容室によくあるその大きな椅子はふかふかだけど、
わたしは電気椅子もきっとこんな感触なのだろうな、と絶望的
な気分になる。

 だいたい、わたしは引きこもりだし、別に可愛くもなんとも
ないのだ。
 髪の毛は毎日洗って綺麗にしてあるけれど、そんなにおしゃ
れじゃなくて、適度な短さで整っていればいいではないか。そ
れなのに杜守さんはこんな高そうな店に飛び込みで押し込んで、
にこにこしてたりして、すごく意地悪だ。

 ヘアサロンのお姉さんは、愛想良く何事かをわたしに話しか
けてくれる。そのたびにわたしはパニックに襲われる。昔はさ
ほどでもなかったけれど、半年も引きこもると他人に話しかけ
られるのがすごく怖い。
 被害妄想なのかもしれないけれど、こうやってニコニコされ
ると、わたしのことをくすくす笑っているんだという気持ちが
どうしてもぬぐえない。
 杜守さんはそんなわたしを見てにこにこしてたけど、途中で
モスバーガーに行って、ちゃっかりテイクアウトを買ってきた
らしい。コーヒーなんかしてくつろいで、鏡越しのわたしの恨
みの視線も飄々と受け流している。


255:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:47:45 5VKgrtZv
 やっと完成したのは1時間以上かかってからだった。

「杜守さんは意地悪ですよ」
 はっきりと抗議したつもりだったけれど、やっぱり強く云え
ないわたしは、ごにょごにょと恨み言を呟いてしまう。

「眞埜さん髪綺麗なんだから、もったいないでしょ。軽くなっ
て、似合ってるよ?」
 むぅ。そんなお世辞に誤魔化されたりはしないのだ。なんて
思っていても、ちょっとだけ頬が緩む。背中の中程まである髪
は確かに最近重くなっていた。長さは調えるくらいで、ボリュ
ームを減らしてもらったので、すんなりまとまって、ちょっと
清楚なお嬢様風に見える。……もちろん中身はダメ女子のまま
なのだけど、自分でも可愛いかな、と思えていたわたしは杜守
さんの言葉に他愛なく嬉しくなってしまうのだ。
 もしかして、わたしは杜守さんに洗脳されつつあるのかも知
れない。

 陽が暮れて藍色になった街を2人でマンションに帰る。
 帰る場所があるというのは、本当に素敵だ。短かったけれど、
ネットカフェで寝泊まりしてた、どこにも行く場所がない、切
り離されてしまった感覚をわたしは良く覚えている。
 もちろんこのマンションは杜守さんの家で、わたしは居候。
でも、杜守さんが「居て良いよ」と云ってくれている間は、わ
たしの住み処なのだ。杜守さんが「ここが眞埜さんの寝床ね」
とロフトを調えてくれた時、わたしは安心感でじわーっと涙が
溢れそうになってしまった。その部屋へ、2人で帰るのは、く
すぐったくて幸せな気分だ。

256:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 16:55:25 5VKgrtZv
 部屋に帰ると、早速ハンバーガーのテイクアウトを広げる。
杜守さんはチーズバーガーとフライドチキンとポテト四つだっ
た。ポテト四つ。ポテト四つですよ? と言う表情のわたしに、
杜守さんは「いいじゃん。たまに食べたくなるんだよ」と拗ね
たように云う。ちょっと可愛い。
 わたしはキッチンへアイスティーを入れに行く。冷蔵庫で冷
やしてあるので、シロップを入れるだけですぐに出来て簡単だ。
戻ってきたわたしは、ちょっとだけ迷ったけれど、ソファに座
る杜守さんの横に腰を下ろした。

 2人で食べるハンバーガーは美味しかった。家の中で食べて
いるのだけれど、どこかへお出かけしている気分で楽しい。わ
たしもお腹がすいていたし、一生懸命食べていたのだけれど、
杜守さんはいつにもまして早かった。わたしがハンバーガー一
個食べる間に、ポテト四つまで綺麗に平らげてしまったのだ。
 杜守さんは、お腹一杯、と言うようにごちそうさまをすると、
ソファによりかかって、のびのびとしている。杜守さんは、目
を細めて、まぶしそうな少しだけ眠そうな表情で、わたしに話
しかける。

「うん、綺麗になったよ。髪の毛、つやつや」
「杜守さんは、髪の毛好きなのですか?」
 いつかの夜明け、撫でてもらった髪を思い出しながらわたし
は訊ねる。杜守さんはその言葉に不意を突かれたように考え込
み、しばらくしてから「うん、云われてみればそうらしい」な
んて答えた。そうかーそうだったんだー。なんて意外そうな声
で呟きながら、わたしの髪の毛を触ってくる。

 それはとても嬉しいのだけど、照れくさいわたしは両手でア
イスティのグラスを持って俯いてしまう。氷を入れたグラスが、
ひんやりして気持ちいい。気がついてみれば、指先まで桜色に
染まっている。頬だって茹だっているに違いない。

 杜守さんは、わたしの背中を軽く抱き寄せるように、自分の
方へと引き寄せる。わたしの身体が杜守さんにぴとっとくっつ
いて、体温がまた1度ほど上昇する。
「甘えてもらうのが好きなんだよ」
 独り言のようにもらした杜守さんの言葉は透明で、なんだか
随分素直に聞こえた。だからわたしも思わず、何の考えも無し
に「寂しいのですね」なんて云ってしまう。

257:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 17:01:23 5VKgrtZv
 杜守さんの反応が消えて、部屋の中には静寂が訪れる。街の
音も遠いこのマンションの中で、わたしの身体も固まる。やっ
てしまったかな、ううう、まずいことを云ってしまったんだ、
きっと。さっきまで上がっていた体温が一挙に低下する。
 心の中でごめんなさいすみませんとパニックになるわたし。

 久しぶりの杜守さんとの休日で気が緩んでいたに違いない。
ダメ女子なのに生意気なことを云ってしまった。ご、ご、ご、
ごめんなさいっ。わたしは内心で慌てふためいて、それをどう
にか取り繕おうとするのだけど、突然メンテナンス不良になっ
た身体は錆が浮いた機械のように動いてはくれない。
 神経だけが集中して、寄りかかった杜守さんの反応を背中で
探ってしまう。でも、杜守さんが何かに集中しているような気
配がするだけで、それが怖くて仕方ない。

 ひどく長く感じたけれど、実際には呼吸五回程度の時間しか
たっていなかったように思う。

「うん、それも本当みたいだ。眞埜さん賢い」
 杜守さんは小さく笑うような気配と共に、わたしの髪の毛を
撫でてくれる。その仕草でわたしはほっと一息つくけれど、で
も同時にすごく切ないような気分になるのだ。

 甘えられたいって云うのは寂しい気持ちの裏返しだって、わ
たしはこの十日間で思い知っていたけれど、それは杜守さんに
とってもそうなのか、それとも他の理由があってそう言ったの
か、わたしには判らない。そもそも、杜守さんみたいな何でも
出来る男の人の寂しいと、わたしみたいなダメ女子の寂しいが
同じものなのかも判らない。

「要領が良いとね。1人で色々出来ちゃうからねー。人恋しさ
が募るね。……修行が足りないなぁ」

 杜守さんの声には少しだけ自嘲するような響きがあって、で
も優しくて、わたしはその声だけで悟る。
 杜守さん、やっぱりそれは寂しさですよ。同じものかどうか
は判らないけれど。杜守さんみたいに何でもこなせる人が、な
ぜ寂しくなるのか、わたしには杜守さんの言っている言葉の理
屈は良く判らなかったけれど、その寂しさだけはよく知ってい
るように思えて、反射的に立ち上がると、杜守さんに向き直る。


258:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 17:02:16 5VKgrtZv
「あ、あ、あのっ」
 なんだか放っておけないような、居ても立っても居られない
気持ちに突き動かされたわたしは必死に声を絞り出す。でも、
話し始めてみたは良いものの、何をしゃべるか考えてなかった
のですぐ言葉に詰まってしまう。
 杜守さんがどんな表情をしているのか、気になるけれど、視
線を上げて確認するのは怖いし恥ずかしい。

 心臓が鼓動を早める。全身の血が熱くなって、杜守さんしか
見えなくなる。杜守さんが「どうしたの?」って云ってくれて
るけれど、わたしは勝手にわなわなしちゃってる口と、へばり
ついたようになっている舌を無理矢理動かして宣言する。

「と、杜守さん」
 俯いたまま上目遣いで杜守さんをちらっと見る。恥ずかしい。
これから自分が何をしようとしているのか、何を言い出すのか、
考えると恥ずかしくて恥ずかしくて逃げ出しそうになる。でも、
もう身体は甘やかな、あの蕩けるような延々とした快感を思い
出して準備を始めてしまっているのだ。

 わたしは意を決して、ソファに座った杜守さんに近寄る。
 杜守さんの膝の上。いままでそんなはしたないことを自分か
らしたことはないけれど、その上にまたがるように腰を下ろし
て、その肩に手を回す。
 緊張して、震えてしまっている手のひら。
 自分でも桜色になっちゃっているのが判る熱い頬。
 でも、その全部で。杜守さんを感じたくて、わたしは堰を切
る。
「今から、あの、ぅー……甘える、甘え……てしま。ちがう。
甘え、ちゃいますっ」


259:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/25 17:04:02 5VKgrtZv
以上、部屋(5)投下終了。今回は杜守の話なので
(視点は眞埜ですが)、その意味で1〜3と対になって
居れば嬉しいです。次回はえろえろんしたいんだぜ。
お粗末様でしたっ。


260:名無しさん@ピンキー
09/08/25 17:08:16 Z+IJm9K+
うわあGJ
あなたの文章が好きです。空気というか、雰囲気というか。とりあえず大好きです。
冗長なんて、とんでもない。遠回しな文章に味があって素敵です。

261:名無しさん@ピンキー
09/08/25 17:34:52 Yx5TZhbN
>>259
えろえろん期待

262: ◆ou.3Y1vhqc
09/08/25 18:52:37 ieXIgfsE
>>259
GJ!楽しみです。頑張ってください。

深夜に投下します。

263:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:49:56 zbpFSgfQ

―「ごちそうさまでした。メノウにもよろしく言っといてください。」

「えぇ、ありがとう。ごめんね?なにか用事があったんでしょ?ったく、あの子は……」

「はは、まぁいいですよ。」
アンナさんのため息姿に苦笑いで返す。
メノウのワガママにより、ホーキンズの約束の時間を大幅に過ぎてしまい、人通りも少ない夜の9時をまわってしまった。

夕食を食べたら帰ると言う約束だったのだが、メノウの本音は元々帰らせる気がなかったのだろう……メノウの食べるスピードがいつもより明らかに遅かった。
途中で帰ろうかと思ったのだが、後々メノウの相手をするのはアンナさんなので、仕方なくメノウの茶番に付き合う形になってしまった。
夕食を食べた後もメノウのワガママは続き、寝るまで本を読めだの、次はいつ会えるだの、お腹が痛いだの、なんだかんだメノウの相手は俺が最後までする羽目になってしまった。多分ホーキンズもこの時間では諦めているだろう…。

少しあのコンテナの中身が気になるが仕方がない。明日になれば忘れているはず。

「それじゃ、帰ります。本当にありがとうございました。」

「えぇ、また遊びにおいで。メノウも喜ぶから。」

264:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:50:32 zbpFSgfQ

「はい、それでは。」
また遊びに来る約束をして、アンナさんの家を後にする。

アンナさんも俺の言葉を聞くとすぐに家の中へと入っていった。あまりメノウと過ごす時間がないので少しの時間でもメノウといたいのだろう…本当に母親みたいな人だ。


「アンナさんも大変だなぁ……」

俺の場合は子守程度ですむのだが、アンナさんの場合そうはいかない。まぁ、アンナさんが自分から志願したのだから何も言えないのだけど、尊敬はする。



「……さむっ…早く帰ろ…。」
夜風が体の隙間を抜けていく。

アンナさんの家は民家街から少し離れた場所に位置し、尚且風の通り道である海側に面しているので潮風が容赦なく吹き付けるのだ。
逆に夏場は涼しく、海側の崖近辺には夏になるとよく人が涼みに来ているのを目撃することがある。

「…夏…か…」

―その夏がもうすぐやって来る…。人間にとって過ごしやすい時期であると同時にモンスターの行動が活発化する時期でもある。

俺の仕事上、稼ぎ時期なのだが、あまり嬉しいことではない…。

265:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:52:44 zbpFSgfQ

―「おい、ライト!」
民家街に向かって足場の悪い道を歩いていると、民家街の方から人影がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
声から察するに男…

俺の名前を呼んでいるので知り合いなのだろうが、外灯一つ無いこの細道では、暗くて誰が誰かなんてまったくわからなかった。

「おい、そこで止まれ…。誰だ?」
なにがあるか分からない…一応警戒だけはしとこう…。

「はぁ?とまれだぁ?」
俺の声に反応したのか男が足の速度を緩め、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

「…あぁ……おまえか…」
月明かりで男の表情がうっすらと見えてきた。

「…あぁ……おまえか…じゃねーよっ!何時間待たせんだテメーは!!」
月明かりの中、姿を現したのは、汗だく姿のホーキンズだった。

「いきなり走って来るなよ…山賊の類いかと思ったぞ。」

「嘘つけっ!モンスターだらけのこのご時世に、山賊なんて聞いたことねーよ!!」
確かに、山賊なんて職を選ぶアホはいない。
それにしても今の今まで約束を守るために俺の帰りを待っていたのか…。

「おまえが女房なら、惚れまくってるな…」

「はぁ?気持ち悪いこと言ってないで、さっさと行くぞ!」

266:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:55:47 zbpFSgfQ

「行くぞって……中央広場に行くのか…?」

「当たり前だろーがっ!何時間待ったと思ってんだ!」
確かに約束を破ったのは俺なのだから、ホーキンズの言うことは聞くが、こんな時間まで開いているのだろうか?
行っても無駄な気がするが…。

「わかったよ…行こう。」
広場まで行って店が閉まっていればホーキンズも納得するだろう…。俺の返答に満足したのか、元来た道を降って行った。
ため息を吐き、ホーキンズに置いていかれないよう後を追いかける。

「待てって、ホーキンズ!」

「待てるかっ!早く行くぞ。」
慣れた場所なのでお互い外灯がなくても民家街まで続く道は熟知している。
子供の頃から遊び尽くした町なので、走っても転けることないのだが、この歳で町中を全力疾走するのも、かなり恥ずかしかった。

267:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:56:51 zbpFSgfQ

―――
――
――



「なんだ、あれ?」

「おぉ〜、スゲーな!!」

中央広場が見える道沿いまでくると、見たこともない大きな白いテントが視界に入ってきた。

広場の周りを大きな柵で囲っており、その中央にテントを張っているのだが、何故かテントの周りをバレンの兵士らしき甲冑を着こんだ人間が見張りをしている。

「なんで見張りなんか立ててんだ…?」


「知らん…てゆうかなんの店だよこれ…」
物を売っている感じではない…サーカスかなにかしてるのだろうか?

それにしては物騒な気もする…。

「まぁ、なにをしているのかテントの中を見ればわかるだろ?行こうぜ。」
ホーキンズの言うように突っ立ってても何も解決しないので、広場の入口に向かうことにした。


「よう、バレンの兵隊さん」

「ん?なんだ、おまえ?」
入口に立っている兵士二人にホーキンズが話しかける。
近くで見ると甲冑しかつけていない軽装だが、やはりサーベルを腰に装着している。

「いや、俺達も中見たいんだけど、まだ大丈夫か?」

「残念だったな…今日はもう終りだ。」

268:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:57:42 zbpFSgfQ

「ふざけんなっ!金は持ってきてるんだから、俺ら二人ぐらい見せてくれてもいいだろ?なっ!?」

「ダメだっ!夕方の18時から21時までの三時間だと港前の伝言板に書いてあるはずだ!」
確かにバレン兵の言うとおり、店を開く際に何処で何時に始まり何時に終わると伝言板に書くことが決まりになっている。

「ぐっ……クソっ!」
よほど見たかったのかホーキンズが悔しそうに地面に落ちている缶を蹴り飛ばした。
確かにここまで来て見れないのは少し腹がたつ…メノウを連れてきてもよかったのだがアンナさんが許さないだろうし…。

「……んっ?なぁ……兵士さん。」

「なんだ、まだいたのか?今日はダメだと言ってるだろ。」

「無理なのは分かった。…あんた、さっきから今日は今日はって言ってるが…またこの場所で店を開くのか?」

「あっ?…あぁ…嵐が近づいているだろ?嵐が通り過ぎるまではこの町にいる事になったんだ…。だから今日と、明日の朝と、明後日の夕方の三回、ここで店をだすことになったんだよ。」

「ほ、ほんとか、それっ!?」
諦め気味に帰路に就こうとしていたホーキンズが、バレン兵の話を聞くなり此方に急いですっ飛んできた。

269:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:58:32 zbpFSgfQ

「あ、あぁ…だから、見たければ明朝7時にもう一度来るんだな。時間内にくればお客様として、丁重にもてなしてやるよ。」
いやらしい笑顔を見せると、俺達の目先で片手をヒラヒラと揺らし、早々と帰るように急かしてきた。

「…まぁ、明日と明後日の二日あるんなら、別にいいよな?」

「はぁ……そうだな………それじゃ、明日の朝にお前の家に行くから絶ッッ対ッにいろよッ!」
俺の両肩をがっしりと掴むと、言い聞かせるように語尾を強めた。
むさ苦しい男が二人、往来で顔を近づけている…端から見れば気持ち悪いの一言だろう。

「分かってるって、暑苦しいな…。」
疑いの眼差しを向けてくるホーキンズを押し退け、広場前を後にする。
悔しいことに数時間前までの複雑な気持ちは一切無くなり、今はテントの中で何が行われているのか、気になってしょうがなかった…。

270:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 02:59:24 zbpFSgfQ

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇


―『ドンッ、ドンッ、ドンッ』

「ったく、なんだよ……クソッ…」
翌朝、昨日の疲れもあり、気持ちよく熟睡していた俺は、自宅の扉を雑に叩く音で目が覚めた。

眠気眼で壁に掛かっている時計に目を向ける…。ぼやけてだが、朝の6時だと確認できた。

「…早すぎるだろ…」
少しずつ能が覚醒するにつれて、昨日の出来事を思い出してきた。

多分、扉の外にいるのはホーキンズだろう。
確かに朝に来るとは言ってたが、まさか一時間も早く来るとは…。




―『ドンッ、ドンッ、ドンッ』
頭を抱えて項垂れている間も、一向に扉を叩く音は止む気配を感じさせない。

「あ〜っ、はい、はい……分かったから何度も叩くな。」
だるい体をベッドから無理矢理起こし、ふらふらとした足取りで扉に向かう。
まさか、今から広場に行って並ぶつもりなのだろうか…?
あれだけ大きく宣伝していたから、それなりに人は来るだろうが、朝早く並ぶのはめんどくさい。

「……はぁ。」
このままホーキンズを放置していても、俺が出るまで叩き続けるだろう。近所迷惑を避けるために、しかたなく鍵を開ける…。

271:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:00:47 zbpFSgfQ


―ガチャッ


「んっ…?」

鍵を開け、ドアノブを掴もうとした瞬間、あれだけ激しく扉を叩いていた音が止み、こちらが掴むより先にドアノブがクルッと一回転した。
それとほぼ同時に勢いよく扉が開かれる。





―「おはよう、ライトっ!」
勢いよく開けられた扉の先に立っていたのは、ホーキンズとはかけ離れた低身長の小さな女の子…。

「こんな朝早くどうしたんだ、メノウ?」
立っていたのは大きなカバンを肩に背負ったミクシーの少女、メノウだった―。

大きいと言っても普通のカバンなのだが、体の小さいメノウが持つと、なにか拷問でもされてるような光景に見える。

「うんしょっと………えっとね……これじゃなくて…」
おもむろに地面に座り込み、肩に背負っているカバンを地面に置くと、そのカバンの中を両手でまさぐりだした…。

何をしているのか分からず、座り込んでいるメノウを見下ろすと、カバンの中がチラッと見えた。
…なにかヌイグルミのような物が入っている。

「ん〜と………あっ!そうだっ!」
カバンの中を荒らしていたメノウが、なにかを思い出したように立ち上がると、ワンピースについてあるポケットに手を突っ込んだ。

272:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:01:58 zbpFSgfQ

「はい、これっ、お姉ちゃんから!」

「アンナさんから?………って、なんだこれ?」
ポケットから出てきた物…それはクシャクシャになった紙切れだった。
その紙切れをメノウから受け取り、広げてみると、なにか文字が書いてある。
どうやら、アンナさんからの手紙らしい…。

「なんだろ……なにかあったのか?」
家の中に戻り、椅子に腰を掛けて手紙を読む。



『今日一日、用事ができたのでメノウを預かってください。明日の夕方、早ければ明日の昼頃には迎えにいきます。

アンナより。』

アンナさんからの手紙を読み終えると、盛大にため息を吐いた…。短い文だったが、事の重大さは把握した。
簡単な話、メノウを家に泊めろと言うことだ。

「よりによって今日は無いだろ……」
ホーキンズになんて言おうか…。

「メノウね、アップルパイ食べたい!」

「昨日の夕食で散々食べただろっ!お腹壊したくせにまだ懲りてねーのか!」

「え〜っ!食べたい、食べたい、食べたい〜っ!!」
昨日の夕食時に、メノウがあまりにもアップルパイをせがむので、アンナさんがしかたなくアップルパイを作っていたのだ。

273:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:18:42 zbpFSgfQ

だが、残念なことに俺はアンナさんと違って、アップルパイなんて高度なお菓子は作れない。

「諦めろ、俺はアップルパイなんて作ったこと無いんだ…。」

「うぅ〜……分かっy「まて、まて、待てぇ〜いッ!!」

―メノウが渋々納得しようとしたその時、何処からともなく…いや、先程メノウが入ってきた扉の向こうから男性の声が聞こえてきた。

「ふ、ふ、ふっ……俺を差し置いて菓子の話をしているのか…?」

「…あぁ…そうだ。」

「…ライト…」
メノウが不安そうにこちらに走りよってきた。

「ははっ、若いな……小僧、小娘……俺を誰だか知らないのか…?」

「いや、ホーキンズだろ?」
扉の端に身を隠しているが、ホーキンズだとバレバレだ…。知人の声ぐらい聞けばすぐにわかる。
何を遊んでいるのか…と言うか、いい年した大人が恥ずかしくないのか…?

「名前を聞いてるのではない!!…小僧…俺の職業を言ってみろ…」

「……パン屋…」

「そうだっ!俺はなんでも作れる!アップルパイだろうが、ミックスパイだろうが俺の手にかかればy「わかったから早く入ってこいよ…近所迷惑になるだろ。」
ホーキンズの台詞を横から割り込み、終わらせる。

274:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:19:43 zbpFSgfQ

―「ッチ……アップルパイ作ってやろうと思ったのに…」
扉の影から不機嫌気味な顔をしたホーキンズが姿を現した。

いや…不機嫌と言うより寝不足?
目の下にはクマができており、どこか体もだるそうだ。

「ホーキンズ…おまえ寝てないのか?」

「ん…?あぁ〜やっぱりバレたかぁ…」
恥ずかしそうに頭をかきながら、俺から視線をそらした。

あの店に行けるのが、そんなに楽しみだったのか…子供みたいなヤツだな。と、少し笑ってしまったのだが大間違いだった…。

「いや〜、昨日さぁ〜。あれからプッシーちゃんの所に行ってさぁ…楽しんできたんだけど、もう朝まで俺のモノ掴んで離さないわけよ?
はぁ〜…腰が抜けッブギャッ!?」

「あっ?」
ホーキンズが全て話終える前に拳骨を顔面にめり込ました。

「な、なにすんだテメーは!俺が誰だか知らねーのか!」

「パン屋だろーがッ!!おい…次メノウの前でその類いの話をしてみろ…舌切り落とすからな?」
俺と二人ならまだしも横にメノウがいる時はあまり汚れた話はしたくない。
それに、ホーキンズの話は生々しくて年頃の女の子には確実に悪影響を与えるのだ。

275:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:21:16 zbpFSgfQ

「グッ……わかったよ……んでっ?そのメノウはなんでライトの家にいるんだよ?」
自分に非があると悟ったのか、視線を俺から外すと、横にいるメノウに向けられた。
ホーキンズの視線に気がついたメノウは、ホーキンズと目を決して合わせず、怯えたように一歩下がって俺の後ろに隠れた。

「嫌われてるな、ホーキンズ。」

「…おまえがなつかれてるだけだろ?」
ホーキンズの言うように、なにもホーキンズだけ、このような態度をとってるわけではない…。
俺、神父、アンナさん以外と接触するのを極端に嫌がるのだ。

俺とメノウだって初めの頃はそうだった…。
決して俺とは目を合わさず、近づいてくることなんて絶対になかった。

メノウがこの町に来て一週間ほど経ったある日、町を歩いていたら飲食店で騒ぎがおきてるのを目撃し、それを覗きにいくと、何故か店内でメノウが店員に取り押さえられていたのだ。
食い逃げ容疑で捕まったらしく、神父から理由を聞いていた俺は、店員に理由を話してなんとか許してもらった。

メノウが言うには、アップルパイが店頭に並んでいたので眺めていると、店員から「アップルパイ美味しいですよ?」と言われたので作って貰っただけらしい…。

276:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:21:49 zbpFSgfQ

イスに座ってテーブルに置いてあるアップルパイを眺めていると、店員から
「食べないんですか?」
と言われたので、
「食べていいの?」
と返すと
「食べていいですよ」
と返事が返ってきたから食べたそうだ…。

そしたら、店から出ようとした時、捕まったと…。

この事件でますます人間恐怖症に拍車が掛かり、触れられることは愚か、人間と話すことさえ恐れている。

始めは冗談だと思ったのだが、泣きながら話すメノウを見て本気なんだと確信した。

その後、人から物をあげると言われてもついていくな…食べる店はお金がなかったら絶対に入るな。など、一般常識をゆっくりと教えてあげた。

飲み込みは遅いのだが真剣に話を聞くメノウを妹の様に感じ始め、その頃には今みたいな関係になっていた。

昨日、店に入らず店前をウロウロしていたのも、俺が教えた「店は一人で入るな」と言う言葉をちゃんと守っているからだろう。

「でっ?メノウはなんでいんの?」

「アンナさんが用事で家を空けるんだよ…だから今日一日、メノウの相手をしなきゃいけない。」

「マジか!?」

「あぁ…マジだ。」
人生の終わりのような表情を俺に向けると、大袈裟に床に座り込んだ。

277:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:23:00 zbpFSgfQ

確かにホーキンズの気持ちは分かる。俺だって今は見たい気持ちでいっぱいなのだ…。

「しょうがない……メノウも連れていくしかないな…」

「……はぁ?」
項垂れていたホーキンズが顔をあげ呟いた。

「別にやましいことする訳じゃあるまいし…メノウが一緒でも問題ないだろ?」

「そりゃ…そうだけど…もし、ストリップのような店だったらどうするんだよ?」

「その時は外に出ればいいだけだろ?」
確かにメノウを連れていけば問題はないのだが、どこか引っ掛かる…。
あの声の主も分からないし、危険はないのだろうか…。

「大丈夫だって…一般人が見に行けるような店だぞ?それに出店禁止令が出されたにせよ、ストリップ小屋なんかパレードの日にだせば全員打ち首でこの町に来てねーよ。」

「そうだよな…わかった…ただし、なにか危険な物を感じたらすぐに離れるからな?」

「あぁ、分かってるって。それじゃ、行くか?」

「いや…まず飯だな。」

「よっしゃッ!俺が取って置きのアップルパy「メノウ、食パンでいいよな?」

「うん、メノウ、パンでいいっ!」




「……グスッ…」

278:夢の国 ◆ou.3Y1vhqc
09/08/26 03:25:18 zbpFSgfQ
ありがとうございました、投下終了です。


279:名無しさん@ピンキー
09/08/26 07:58:55 GwC8zv6l
GJ

280:名無しさん@ピンキー
09/08/26 08:28:55 cTIZCDhF
正直捕えられているミクシー、俺としてはどうでもよくなってきたwメノウ、可愛いよ。メノウ


281:名無しさん@ピンキー
09/08/26 22:55:03 a0+3ppg6
>>278
超GJ!!
>>280
コンテナに捕らえられてる人の事言ってるの?ミクシーだなんて一言も書いてないけど…人間かもしれないよ?

282:名無しさん@ピンキー
09/08/27 03:17:14 s6RLvnLF
メノウUZEEEE!
いい加減引っ張りすぎだろ・・・

283:名無しさん@ピンキー
09/08/27 08:44:06 elZn93q7
>>282
引っ張りすぎ?なにが?
こんなんで引っ張りすぎとか…

284:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:51:45 nCcOMd7x
wkzです。連載第二分最終回。
ダメ女子+甘々依存属性。 今回はえっち満載ないです。
ジャンル苦手な方も冗長な文章が合わない方も
トリップNG出来るように付けますのでよろしくお願いします。
では(6)投下ゆきます。


285:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:54:21 nCcOMd7x
              わたしの棲む部屋(6)

 視線を伏せたわたし。
 杜守(ともり)さんがどんな表情をしているのかは判らない
けれど、いつものとおり、余裕のある微笑みを浮かべているの
だろう。
 恥ずかしくて、視線は合わせるのはとても出来ないけれど、
杜守さんの唇は見える。

 ごくり、なんて。
 自分が唾液を呑み込む音がやけに大きく聞こえる。
 神様。神様なんて居ないのは判っているんですけれど、わた
しの脳内会議の一員として、この暴挙の成功を祈っててくださ
い。
 あと、懺悔が必要そうなので、今のうちにいっておきます。
 ごめんなさい。でも、この暴走ばかりは見逃してください。

 わたしは杜守さんの唇に、舌を這わせる。

 キスではなくて、甘えるために。
 杜守さんの下唇を舌先でなぞり、ちょっと荒れたその感触に
異性を感じてぞくりとする。杜守さんの膝の上のわたしの身体
には、いとも簡単にスイッチが入る。
 ただでさえ10日も杜守さんに触れないで居たのだ。その間も、
あの恥ずかしいオナニーを続けていたわたしの身体は、可燃性
の油をたっぷりぶちまけたわらの束のように燃え上がりそうに
なる。

 でも、ダメだ。
 わたしはわたしの身体に快楽を貪ることを禁じる。
 今は、杜守さんに甘えなければならない。
 宣言通りに、魂のそこから、杜守さんのために甘える。わた
しは自分自身を杜守さんへの捧げ物のように、大きなしっかり
した身体に寄せる。杜守さんの腕の中にしなだれかかって、わ
たしが少しでも美味しいごちそうに見えますようにと願う。

 ちょんちょんとノックをした舌先、わずかに緩んだ杜守さん
 の唇をくまなくおしゃぶりをして、ゆっくりと離れる。


286:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:54:55 nCcOMd7x
「杜守さん……」
 あの、そのぅ、と言葉が空回りする。
 身体の中では押し殺された欲求が、聞き分けのない駄々っ子
のように不満の声を上げているけれど、わたしはその誘惑を受
け入れながらも、受け流す。
 そりゃぁ、自分でも判ってはいる。わたしの下半身は甘く痺
れて、下着には潤みが広がっているのだ。

 でも、それを我慢することにわたしは慣れていた。

 ヒリつくような、むず痒いような、じわじわと満ちてはそそ
のかすこの誘惑を我慢すればするほど気持ちよくなれるのを、
わたしの身体はもう覚え込んでしまっている。
 それに今は、わたしが気持ちよくなることなんかよりも、ず
っとずっと大事なことがある。杜守さんに少しでも気持ちを許
して欲しいから。そのための方法を一つしか思いつかないわた
しは、茹だり上がってパニックになりかけた自分に叱咤激励し
て、続く言葉を探す。

「甘え、ちゃいます」
「えっと、発情しちゃった?」
 杜守さんの腕が腰に回される。たったそれだけの動きにわた
しの肌は敏感に反応して、ひゃうんなどと云う声が漏れる。わ
たしはだらしなく開きかける唇から熱い吐息をこぼして、それ
でも踏みとどまる。

「はい……もう、あそこも……くちゅくちゅになって……ます
……」
 上目遣いに杜守さんを見上げる。
 うううう。

 視線があった、杜守さんが見てる。わたしの顔を見てる。
 でも、もう逃げない。逃げる場所なんて無い。
 温度をぐんぐん上昇させる自分の頬を意識しながら、恥ずか
しさに脳を灼かれたわたしは続ける。

「でも、発情してるだけじゃなくて……。今日は、わたしが、
杜守さんに……甘えて、ご奉仕する、日」
 胸が苦しくて、それだけを告げるのに何度も息継ぎを必要と
する。わたしはとんでもないことをしちゃってる自覚をもちな
がら、シャツのボタンを外す。


287:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:55:20 nCcOMd7x
 杜守さんが見てる。
 杜守さんの視線がわたしの指先を追っている。
 変態だぁ。とは思う。じ、自分から見せつけるなんて。そん
なのおかしい、変態だぁなんて思う自分も入るけれど、これが
密かな妄想だったと判っているわたしも居るのだ。杜守さんに
膝に上にまたがって、自分からドレスシャツのボタンを外して
誘いかけるなんて、そんな妄想で1人えっちをしてしまったこ
とも、二回や三回でもない。
 自分でも、ちょっと引くくらいえっちな女子だと思う。

 でも、止めることなんて出来ない。
 わたしは杜守さんと瞳をしっかり見つめながら、時間を掛け
て白いシャツのボタンを外してゆく。もう肌が見えてるかな、
とか、胸が見えちゃってるかな、なんて云う理性的な思考は、
あっという間に蒸発してゆく。
 杜守さんの視線の熱で暖められた肌の感覚は、痛いくらいに
敏感で、ブラの裏地にこすれるだけで視界が霞むような快感を
伝えてくる。
 ボタンをすべて外したわたしは、シャツを脱がずに、そのま
まブラをすりあげる。フロントホックだったら良かったんだろ
うけれど、わたしの胸はそれほど大きくないのだ。オマケに白
一色で、デザインなんかも割と普通っぽくて、居候だから当た
り前なのだけど、色っぽくもなくて。
 それが申し訳なくて、杜守さんにせめて謝罪しようかと思っ
 た瞬間、杜守さんののど仏がこくりと動くのが見えた。

 それじゃ、そんなに不合格というわけでもないんだ。

 わたしはほっとするよりも、酔ったように発情した気持ちに
なってそう思う。杜守さん、杜守さん。こんな貧相なわたしで
も、ちょっとは良いかもと思ってくれたりしますか?
 もしわたしを抱きたいと思ってくれるのならば、出来る限り
甘く食べて欲しい。そのためにだったら、どんな恥ずかしくて
えっちなことだって出来ちゃうのです

「……胸、もう、とがってます」
 わたしは大事な宝物のように杜守さんの手を取る。長くて器
用そう指を持つ杜守さんの右手。それをわたしは両手で捧げる
ように支えて、わたしのシャツの隙間から忍び込ませる。
 ブラに無グリコませるように誘導して、コントロールするよ
うにその指に自分の指を絡ませて、しっとりとした肌に押しつ
ける。
 杜守さんの掌は熱くて、わたしび口から動物的な声が漏れて
します。わざと杜守さんの右手にわたしのそれを重ねて、自分
の胸の柔らかさを確認するようにこねてみる。


288:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:57:12 nCcOMd7x
 とがりきった乳首が杜守さんの指先をかすめ、やがて捕らえ
られる。揉むと云うよりも揺するような刺激を加えられて、甘
い嬌声が漏れる。自分のものとは思えないほど艶っぽい声に、
頭のどこかで羞恥心が湧くけれど、それもこれも気持ちの良さ
を煮え立たせる燃料になってしまう。

「えっと、眞埜(まの)さ……ん?」
「はぁ……。はい……」
 杜守さんの声に少し戸惑いが含まれてるのが判る。でも、杜
守さん。ごめんなさい。甘く蕩け掛けた頭の中で、わたしはも
う決断してしまっている。一生に一回しか出来ない決断を、身
体の欲求でしちゃってる。

「ん……」
 杜守さんは結局何も言わず、わたしの腰を引き寄せて、抱き
しめようとする。でもわたしは、その杜守さんの手の指にしっ
かりと指先をからめて、胸に抱えるように離さない。
 抱き寄せようとする自分に抵抗するわたしを杜守さんはいぶ
かしげに見る。その視線を、出来る限り頑張って受け止めて答
える。
「だめ、です。……今日はわたしが甘えて……ご奉仕する日な
ので、杜守さんは、動いちゃ、ダメ」

 普段合わせない視線を絡めているから、恥ずかしくて、切な
くて心臓の音が耳の中でうるさいほど。
 ううう。こんな状況で表情を見られるのがこんなに恥ずかし
いなんて。わたしはきっとリンゴみたいに真っ赤に染まってい
る。えっちなおねだりをする、欲情した表情をしちゃってるん
だ。泣きそうに潤んだ瞳を、それでも杜守さんにじっと合わせ
る。

 杜守さんの表情に困惑以外の欲求もゆれてるのに、少しだけ
救われる。恥ずかしくて、胸がどきどきして、ポンコツのダメ
女子としては壊れそうだけれど、杜守さんの事を気持ちよくし
たいという気持ちだけで、わたしはつっかえながらも、かすれ
た声で再度「ダメです……」と告げる。

 胸に擦りつけた杜守さんの右手。それをそのまま捧げ持って、
キスをする。杜守さんの指先は一瞬逃げるみたいに動くけれど、
唾液をたっぷりと絡めた舌先でペロッてしたら、金縛りにあっ
たみたいに緊張してる。
 わたしは少しだけ楽しくなって、心の中でいただきますをし
てから、口の中に迎え入れる。


289:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 21:57:38 nCcOMd7x
 唇で甘くかみしめるように咥えて、ぺろぺろと犬みたいにな
める。わたしは杜守さんの指先だと思うとそれだけで嬉しくて
幸せになってしまう。もちろん味が有るわけではないけれど、
幸福と欲情にたっぷりと侵されたわたしの脳は、その指先の情
報をあっさり「美味しいもの」と判定してしまう。

 杜守さんの指は美味しい。
 そう言うことだと脳が認識してしまえば、あとは一直線だっ
た。舐めてるだけで、腰が痺れて、ゆるゆるとした動きを止め
ることが出来まない。ううう、わたしえっち女子だぁ。
 おしゃぶり気持ちいい。
 指でこんなに気持ちいいなんて、その先のことを考える時が
遠くなりそうだ。

 わたしはぺろぺろしたまま、泣きそうな瞳で杜守さんを見る。
……あ、杜守さんも照れてる。それに、杜守さんだって発情し
ている。わたしの視線に気がついて、不意にそらした杜守さん
のその表情。わたしはそれだけですごく嬉しくなってしまう。
 そうかぁ。こんなダメ女子の廉価版ボディでも、杜守さんは
欲情してくれるんだ。嬉しい。嬉しすぎる。もっともっと甘え
たい。もっともっと杜守さんを気持ちよくしたい。

 杜守さんの指も手も唾液でべとべとにしながら、そっと離脱
した右手の指先で、今度は杜守さんのシャツのボタンを外す。
杜守さんはちょっと抵抗したそうだったけれど、自分でもえっ
ちくさいと思うくらいあふれた唾液で、指先をあむあむとした
ら、観念したみたいだった。

 はだけた杜守さんの胸板。あれも美味しそう、なんていささ
か物騒な考えが頭をよぎりながら、わたしは杜守さんの膝の上
を十五センチほど接近する。

 杜守さんの裸の胸に手を触れて、ちょうど良い位置を探して
腰を下ろすと、太ももの間に熱くてボリュームのある感触。そ
れが何なのか想像がついた途端、わたしはまるでお漏らしをし
てしまったような恥ずかしい快楽にさらわれる。
 固く張り詰めた杜守さんのもの。小さなため息みたいな声が
杜守さんの唇から漏れて、わたしの脳は羞恥心と、もっと湿度
の高いねっとりとした感情で一杯になる。


290:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:00:45 nCcOMd7x
「杜守……さ……ん」
「……んぅ」
 きっとそれは、少しだけ杜守さんにお返しをしたいわたしの
欲情。杜守さんの腰を太ももでぎゅぅっと締め付ける。
 杜守さんからはスカートに遮られててまだ見えないと思うけ
れど、下着の中のあそこは杜守さんの固い下腹部にしっかりと
あてがわれて、どろどろと蕩け始めている。

「杜……守さ……ん」
「なに……?」
 わたしは無理矢理視線を上げる。杜守さんの瞳を覗き込む。
わたしがお漏らしみたいに濡らしているはしたない娘だって、
きっとばれちゃってる。

「眞埜は……」
 でも、いい。
 自分のことを名前で呼ぶなんて、とても恥ずかしい。でも、
恥ずかしいのが気持ち良いのだ。こんな甘ったるい声で媚びた
おねだりをするだけで、身も心もどろどろになってゆく。そう
杜守さんに癖を付けられちゃっている。
 恥ずかしいのに、えっちなのに、それが嬉しくてたまらない
中毒患者にされてしまっている。

「眞埜は、発情した……甘えん坊です……よ?」
「……」
 杜守さんの視線が強くなる。身体が緊張して、筋肉が震えて
いるのが判る。わたしも必死に我慢をしているから、杜守さん
の我慢が自分自身のことのように判ってしまう。

「眞埜の……からだ、えっちで……どろどろ……ですよ?」
 わたしは腰を浅く浮かせると、じれったいほどゆっくりと、
確認するように杜守さんの熱いこわばりの上に降ろしてゆく。
わたしに太ももの間の身体中で最も軟らかい肉が、杜守さんの
性器にねっとり絡みつくように。体重を掛けるその刺激で、脳
の細胞がどんどん光になって壊れるのが判る。
「うんっ」
 杜守さんの腰がもどかしそうにうねる。それを咎めるように、
強い力で太ももを締め付ける。


291:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:03:52 nCcOMd7x
「甘えんぼでも……良い……ですか?」
 腰を揺する。重心をずらして、杜守さんの上でゆらゆらと腰
を舞わせる。それだけで、口がだらしなく緩んで、甘え声が止
まらない快感が背筋を走り抜ける。それでも、わたしは、必死
で視線を杜守さんに搦めて、自分のすべてを杜守さんに捧げ続
ける。

「うんっ……。うんっ」
「杜守さん……が」
 もう限界が近かった。
 締め付けた腰の下着とズボン越しではあったけれど、杜守さ
んの熱いこわばりが欲しくてわたしのあそこは、甘痒い切なさ
をどんどんとため込んでいる。何かにしがみついて必死にぎゅ
ぅっとしたくて気が狂いそうだった。

 でも、それでも。どうしても杜守さんに言わなきゃならい事
があるのだ。
「……杜守さんが、甘えて……欲しぃ……ときに、甘え……る
ので。杜守さんが……いないと、ダメなの……で。……杜守さ
んのものに。……杜守さんのものに、なりたいっで……す」
 杜守さんの動きが止まる。何かを必死に考えるように。何か
を追いかけて、突き止めようとするように。

「杜守……さん、が。……寂しい……時に……ぁ、あんっ。…
…甘え……ます。良い子に……してますっ」

 もどかしかった。
 わたしの脳は、やっぱりお粗末で、思ったことの何十分の一
も上手く云えない。こんな色仕掛けみたいな方法で、杜守さん
が意志を変えるはずなんて無いと判っている。けれど他の方法
なんて思いつかなくて。


292:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:04:16 nCcOMd7x
 ……杜守さんは、たぶんわたしには想像もつかないほどセキュ
リティが固い人なのだ。杜守さんの「内側」に入るためには、
限りなく難易度の高い試験に合格する必要があって。一緒に暮
らしているだけでは、到底「内側」に入れてもらった事にはな
らなくて、わたしはいつまでも「居候だけどお客様で」。
 そう思った時の切なさと苦しさを思い出して、涙ぐみそうに
なる。
 もし杜守さんの「内側」に入れるのだとすれば、それは完全
に杜守さんの味方しかいないんじゃないか。杜守さんを絶対に
裏切らない。杜守さんが居なければ生きていけないような人じゃ
ないと、杜守さんの「内側」にはなれないんじゃないか?
 ―そう思いついたら、わたしは杜守さんに「おねだり」を
するという欲求に耐えきることが出来なかった。

 だって、杜守さんを絶対に裏切らないなんて。
 そんなことはわたしには当たり前すぎて。
 それを証明するのは目もくらむほどの誘惑で。

「杜守さん、杜守さんっ……」
「眞埜さん……」
 抱きしめようと腕を伸ばす杜守さんを必死に拒絶する。今抱
きしめられたら、ちゃんと告白出来ない。杜守さんは優しいか
ら、わたしがこんな風に自分を売り渡すことを自分からは望ま
ないと思う。でも、それは違う。全然違うのだ。
 ……わたしは、杜守さんが居ないとダメで、それは杜守さん
の側の事情とは関係なく、ただ単純にわたしが杜守さん無しで
は狂ってしまうと云うだけなのだ。
 もしかしたら、わたしと杜守さんは、こんな言葉を交わさな
くても、長い間上手くやっていけるかも知れない。
 でも、それは卑劣な行為だ。わたしはダメ女子で変態で堕落
もしているけれど、それでもちゃんと言葉にしたい。たとえ相
手から何ももらえなかったとしても、自分の「本当のこと」だ
けは言葉にしておきたい。

「杜守さんが居ないと、ダメ……です。もう、杜守さんで……
すっかり、癖になっちゃったの……です。……毎日、杜守さん
で……オナニーしてます。……いかないように、してます。杜
守さんに抱かれないと……イケないように……癖を付けて……」
 杜守さんに見られてる。
 えっちな告白をしてる、泣きそうな、でも快感にゆるんだ顔
を見られてる。杜守さんが居なくなったら行くところのない、
だめな娘の顔を見られてるっ。

293:wkz ◆5bXzwvtu.E
09/08/27 22:05:00 nCcOMd7x
「杜守さん、杜守さんっ。……杜守さんのこと、絶対絶対、裏
切らないです。……杜守さんの言いつけは、なんでも……云う
こと、きき……聞きます……」

 荒い呼吸と弛緩のせいで、口を閉じておくことも出来ない。
 油断するとわなわな震える唇から舌がこぼれて、透明な唾液
と共に、胸の谷間へと落ちてゆきそうになる。

「ぎゅっとして……欲しい……。撫で撫で、して……欲しぃ。
……かまって、キスをして……抱きしめて……突き刺して……。
頭の中がぁ……うぅ。真っ白になって……杜守さんの……熱ぅ
い……あぅ。その、うううぅっ。…………精液で……お腹の中
を一杯にして欲しい……ですけど」

 自分のえっちな妄想を、恥ずかしい言葉で告白する。
 もうわたしの脳はどこもかしこもスパークしていて。
 シャツが肌を擦る度に、ゆるゆると杜守さんに擦りつけてい
る下着の中でクリトリスがひしゃげる度に、まるで自白剤を打
たれたみたいにいやらしい懇願の言葉が紡がれる。

「眞埜は、良い子……なので……ちゃんと、あおずけっ……ん
くぅ……できますっ」

 杜守さんっ。杜守さんぅっ!!
 頭の中は、その名前だけで一杯になる。
 キスしたい。杜守さんの身体のどこでも良い。唇を付けて、
ぺろぺろして、全身で抱きついて、何もかも判らなくなるくら
いほおずりしたい。でも、その狂おしい欲望を押さえつけて
「良い子」であることを証明しなければならない。

「お預け……も……我慢も……、良い子……にするぅ。……し
ます、から……甘えて、ください……」

「眞埜さん……」
「甘えて……杜守……さ……」
 甘えて欲しい。油断して欲しい。
 入れて欲しい。
 杜守さんの「内側」へ。
 そうしてくれるなら、わたしなんてどうなってもかまわない。
杜守さんの居ないこの部屋で一ヶ月放っておかれても、杜守さ
んが甘えてくれるなら、かまわない。

「うぅ。うー。……か、か、飼い主様ぁ」
 自分の死刑執行書類にサインをするような気持ちで、心の中
で呼びかけていた秘密の呼び名を杜守さんに告げる。


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