無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目 at EROPARO
[bbspink|▼Menu]
[前50を表示]
650:名無しさん@ピンキー
10/08/31 20:18:01 XEu79Jgs
パーフェクトだ >>646-649

651:名無しさん@ピンキー
10/09/04 22:01:31 Z2IGa290
「…………」(がぶがぶ)

652:名無しさん@ピンキー
10/09/05 04:58:16 he4nA61d
ほら沙夜さん甘スレに帰りますよ

653:ファントム・ペイン番外編2 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:28:49 DPvrt8Dm
今回も番外編ですが、8レスとちょっと頂きます。非エロ

654:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:31:17 DPvrt8Dm
爽やかな朝であった。
開け放たれた窓から適度な風がそよぐ。
太陽はまだ地平線近く、日差しも穏やか。
今なら蝉の声すら心地よく聞こえる。
日中大地が溜め込んだ熱もあらかた宇宙空間に吹き飛び、関西地方の夏場としては格別に涼しい。
着替え終えた伊綾泰巳は大きく伸びをして自室を出ると、台所へ向かう。
何時もより少し早い時間。
弁当を用意した後は、朝食に何か一品付け加えても良い。
普段はご飯に味噌汁と簡単な卵料理だけだが、これではビタミンが足りない。
果物のヨーグルト和えでも良いし、生野菜をサラダにしても良い。
――さあ、何を作ろうか。
直後、泰巳は足に何かを引っ掛け、盛大に転倒した。
寝起きでまだ覚束ない足取りであった故、受身も取れず床に顔面を打ち付ける。
爽やかな朝が、爽やかでなくなる。
身を起こして背後を見やると、見慣れた少女が寝巻き姿のまま床の上で身を丸め、すやすやと眠っていた。
「…………」
思わず頭を抱えながら、流石にそのまま放置するのも憚られたので、泰巳は少女を揺り起こす。
「起きろ、絵麻」
「―――ン」
泰巳は身じろぎする絵麻の左中指に、昨日は見なかった包帯が巻かれているのに気付いた。
一瞬いぶかしむが、直ぐに少女の瞼が蠢き始めたのでそちらに気を取られてしまう。
イモリの様にタイル床に頬をくっ付けていた絵麻は黒目がちな瞳を薄く開けた。
「ぅ―……、おはよう?」
「ああ、御早うだな。それより何でこんな所で寝ている」
絵麻は開けかけた眼を再び閉じると、そのまま床に突っ伏した。
「タイル……冷たい」
「ベッドで寝ろ」
返事が無い。
少女は再び夢の中。
泰巳は溜息をつくと、絵麻を肩に抱え上げ、彼女の部屋まで運んでベッドの上に放り込んだ。
日本の夏にばて気味の絵麻は、この所涼しい場所を探しては勝手に眠り込むことが多い。
「……犬猫かあいつは」
ドアを閉じ漸く食事の準備に取り掛かろうとしたその時、ポケットの中の携帯電話が小刻みに振動を始める。
相手を確認してから通話ボタンを押すと、耳慣れた溌剌とした声が響いてくる。
『もしもしー。おはようさん。伊綾起きてんかー』
「寝ていたら出ていない。こんな朝早くから何だ渡辺」
マイクの向こうの友人、渡辺綱はここ数日泊り掛けの旅行に赴いているはずだ。
不慮の事故でもあったのか、それにしては声が呑気過ぎる。そんな事を考えながら泰巳は少し不安に駆られる。
「何か遭ったのか」
『あー違う違う。スー(削除)ーヒー(検閲)ータイムの録画忘れただけ。
ウチに今父さんいないし母さん機械音痴だし、悪りぃけど録画お願――』
「……俺は特撮など見んし、家のテレビに記録機能は無い」
こめかみを押さえて早口にそれだけ告げると、二の句も告げさせず一方的に通話を切った。
「―― 一瞬でも不安に思った俺が馬鹿だった」
泰巳、再び溜息。
今となっては外の蝉の声も只喧しいだけだ。
爽やかな朝は、完全に破綻していた。
東側の窓からさんさんと差し込む日光にうんざりしながら、泰巳は予約しておいた炊飯ジャーを開けて飯を解し始める。
「今日も、先が思い遣られるな」



655:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:33:50 DPvrt8Dm
事の発端は、一週間ほど前の夕飯の時であった。
「だめ」
例によって夜遅くに帰宅した伊綾家世帯主の靖士は、子供達から夏休み旅行の計画を聞くなり却下した。
茹で鳥のバンバンジー風と鶏がらで作ったモロヘイヤとオクラの冷製スープを父親の前に出しながら、泰巳は目をしかめた。
「何が駄目だ。ガキだけで旅行に行くのがか」
「それだけならいいんだけど」
何も言いはせずとも見るからに気落ちしている絵麻の姿を気まずそうに眺めながら、靖士は続ける。
「絵麻の健康診断の結果が出たんだよ。
特に問題は無かったんだけど、"強い紫外線を浴びる事は出来る限り避ける"旨の注意がついてね。
真夏の浜辺なんてもっての外だよ」
泰巳は目を細める。
「紫外線? こいつの色が白いからか?」
気をつけて見ないと判らない程度だが、絵麻は標準的な日本人からすると若干肌の色が白い。
「まあ、そんなところ」
ずるずるとスープを啜りながら靖士は話を打ち切ろうとする。
「とにかく、梅雨も開けたしこれからは強い日差しは避けること。
旅行に行くんなら屋内メインじゃないと認められないよ」
「……わかった」
普段通り簡潔に受け答えする絵麻だが、明らかにしょげている。
「医者の言う事だ。諦めろ。渡辺達には俺が連絡して置く」
ソファクッションを抱きしめて体操座りする絵麻の肩を叩きながら、泰巳は携帯電話に友人の電話番号を打ち込む。
「……もしもし、渡辺か。伊綾だ。
すまんが旅行は行けなくなった。絵麻もだ。……ああ。二人分キャンセルで頼む。
――判っている。そっちは楽しんで来い。じゃあな」
通話ボタンを切って振り返った泰巳は、不思議そうにこちらを見ている二人に気が付いた。
「何だ」
「いや……いいんだけど」
目を泳がせる靖士。
「泰巳は別に旅行行ってもよかったんだよ」
同調して頷く絵馬。
「…………」
言われてみれば、それもそうか。
いつの間にか自分も旅行を取りやめて当然と考えていた自分の思考に、泰巳は戸惑う。
「まあ、親父も絵麻も自炊が出来んからな。
二人も家にいて外食ばかりなのは問題だろう」
半分自分に言い訳しながら、泰巳はカレンダーの予定日につけた赤丸を削除し始めた。
「良かったのかい」
「今からなら宿のキャンセル料金は取られない。無駄は無い」
父親からの確認に泰巳はぶっきらぼうに応える。
「水着、無駄になったけど」
口元をクッションに埋めながら、絵馬は何処となく嬉しそうに呟いた。
「ヤスミがいてくれるなら、ちょっと嬉しい」
「甘えるな。さっさと自分で自炊を憶えろ」
泰巳は絵麻の言葉に僅かに動揺するが、それをおくびにも出さず突き放す。
残ったスープを小鍋ごと冷蔵庫に仕舞いながら、泰巳は急に予定が空いた日程をどうしようかと思案した。
塾の夏期講習もあるし、今から別の旅行先を考えるのは難しい。
「仕方が無い。屋内のプールでも探すか」



656:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:36:26 DPvrt8Dm
と、言うわけで夏休みのしょっぱなから、泰巳は早起きして二人分の弁当を用意し、8時過ぎには絵麻を叩き起こして、ヒートアイランドな夏場の街中に赴く羽目になったのであった。
とは言え、一度電車に乗り込んでしまえば、後はクーラーの聞いた車内で待っていれば良い。
目的のプールは駅から地下道で直通となっている。
折り良く駅に入ると同時に到着した地下鉄に乗り込んで、泰巳は大きく息をついた。
「家から徒歩で20分程度だが、あの炎天下だときついな。
お前は大丈夫か?」
横でクーラーの風に当たっている少女は、暑さに辟易はしていたものの、特に体調を崩している様子はない。
今日の絵麻は白いサマードレスに麦藁帽、オプションに真っ白な日傘と、何処となく深窓の令嬢を思わせる格好であった。
が、帽子を団扇代わりにパタパタ扇いでいる姿は全くお嬢様っぽくない。
泰巳はポケットから百円の扇子を取り出した。
「……使え」
扇子を渡された絵麻はしばらくきょとんとしていたが、何を思ったか腕を伸ばして泰巳の首元を扇ぎ始めた。
「誰が仰いでくれと頼んだ。お前が、お前の為に使えと言ったんだ」
ケラケラと、二人ものでない笑い声が近付いてきた。
「相変わらずやな、お二人。見てて飽きんわー」
髪を後ろで一つに縛った、縁なし眼鏡の少女が気安げに手を上げる。
「絵麻嬢ヤスミン、おひさー。ちゅうても3日やそこらやけど」
「何であんたがここにいる、北大路」
丁寧にお辞儀を返している絵麻を尻目に、泰巳は車両を跨いでやって来た少女、北大路侑子を睨んだ。
「メールで絵麻嬢に誘われたんやけど――、色々ばたばたしとって返事せえへんかったからなあ」
「旅行行ったと思ってた。渡辺さん達と一緒に」
呟く絵麻に対して若干気まずそうに侑子は釈明した。
「身内でちょっとあってな、昨日まで忙しかったんよ。すまへんね。
てな訳でいまから飛び入りでご随伴、あかんかね?」
「歓迎」
「別に構わんが」
嬉しそうな絵麻の横でむっつりと同意する泰巳を見て侑子はにやりと笑った。
「もしかして、デートのお邪魔だったかねえ」
「あんたは何を言っている。
こいつは単に水場で涼みたいだけで、俺はどこかで泳ぎたいだけ。
目的が一致したから一緒に行くに過ぎん。
逢引き等では無い」
「はいはい」
侑子は笑いながら、素早く絵麻の隣に回り込んで顔を覗き込んだ。
「絵麻嬢はヤスミンと一緒ならどこでもええんやろ?」
「……ん」
絵麻は少しはにかみながら、素直に肯定する。
ほれみい、と勝ち誇ったように泰巳をからかう侑子。
「でも」
と絵麻は続ける。
「みんなと海、行きたかったかな」
「海位お前の里にもあったろう」
絵麻の出身はオーストラリアらしいが、日本人の泰巳にはグレートバリアリーフのイメージが強い。
だが、絵麻は首を振った。
「じゃあ、絵馬嬢おったんは南ん方かえ? シドニー?」
尚も首を振る。
「ずっと砂漠にいた。赤い土と岩ばっかりのところ」
「ふうん。それて、エアーズロックとか、ウーメラとか、そういうの?」
「どっちも聖地だろう、先住民の」
簡単に住める物か――泰巳がそう続けようとした所でブザーが鳴り、アナウンスが目的地への到着を告げる。
結局、二人とも絵麻の故郷の具体的な場所は聞きそびれた。



657:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:39:10 DPvrt8Dm
その郊外にある某プールは、ショッピングモールに隣接し、流れるプールや遊園地、温泉まで備えた総合レジャー施設である。
人ごみが嫌いな泰巳としては乗り気ではなかったが、一部テラスを除けば殆どの施設を屋内に収容し、天井はUVカットガラスで覆われていると聞いて、止む無くここを選んだのだった。
ボクサータイプの水着に着替え終え、プールに出た泰巳は慣れないコンタクトレンズの調子を確かめながら辺りを見回した。
人の少ない午前中を狙ったのだが、それでも家族連れや健康目的の老人で結構な人出が見られる。
「まあ、どうせ俺は水深の深い所しか行かねえしな……」
これが午後を回ると、若者やカップルで溢れ返るらしい。
泰巳としてはそうなる前にさっさと帰りたいのだが、連れの女二人は中々脱衣所から出てこない。
騒がしく走り回る小学生達を無視し、苛立ちを表に出さぬ様努め待つこと10分、最初に出てきたのは侑子だった。
ツーピース水着らしいが、パーカーを羽織っているのでビキニかタンキニかは判別できない。
「やっほー。ヤスミンお待たせ」
「遅い」
手を振りながら近付いて来る侑子に文句を言いながら、泰巳はその背後を見回した。
「絵麻はどうした」
「サンスクリーン塗っとる。私も塗るの手伝っとって遅れたんやけど」
何時もの如くにやにやと笑いつつ、侑子は泰巳を突付いた。
「絵麻嬢、どんな水着か気になるやろ?」
「渡辺妹が選んだらしいから、奇異でない普通のものを期待している」
絵麻とも仲の良いらしい綱の双子の妹は、泰巳の知る限り極めて常識人であった。
侑子の指を避けつつ泰巳は鬱陶しげに掌を振る。
「そんなこと言うて、実のとこマイクロビキニやらスクール水着やらを期待しとるんやろ、このムッツリ」
「もしそんな物を着て来ようものなら、俺は他人の振りをさせて貰――」
脱衣所から見慣れた少女が見慣れぬ姿で現れる。
ホルターネックの黒いビキニ。
布の量が多くパレオを付けている為露出度は低めだが、それでもヘソが出ている事に変わりはない。
てっきり大人しめのワンピースだと思っていた泰巳には少し意外だった。
「どない? 意外にムネあるやろあの子?」
「着痩せするんだな、あいつ」
「ハラのほうは締まっとるけどな。まだまだAやけど、そろそろBに……って知らんかったんかい」
実に意外そうに侑子は泰巳を見詰める。
「ほら、あるやろ。二人全裸のまま風呂場でばったりとか、うっかり部屋に入ったら着替え中とか。そういうラブコメした展開。
1ヶ月以上一つ屋根の下なんやし、視姦する機会はいくらでもあったんやないか?」
「有り得ん。馬鹿馬鹿しい。それ位双方共気を遣うに決まっているだろう」
二人の姿に気が付いた絵麻が近付いて来る。
「ごめん」
「別に待っていない」
泰巳は遅れて来たことを詫びる絵麻から微妙に視線を逸らした。
少年の羞恥心など判らない絵麻は不思議そうに自分から目を逸らす泰巳を見詰める。
「なんか、私の時とずいぶん態度違うな……」
「知らん。取り合えず揃った事だし、後は集合時間まで解散だ」
言うが早いか一人で泳ぎに行こうと背を向ける泰巳の腕を、絵麻が掴む。
「何だ」
つと指差した方向には、やたらと全高の高いウォータースライダーがとぐろを巻いて鎮座していた。
看板の説明文には、やたらと大層なネーミングの固有名詞の下に、"ゴムボート二人乗り限定"と書かれている。
何かを期待するような眼差しで泰巳を見詰める絵麻。

658:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:41:24 DPvrt8Dm
「……まさか俺と乗りたい等と言い出す気じゃ無いだろうな」
「ええやんか、二人っきりでひっつきもっつきできるチャンスやで」
茶化すように言う侑子を半眼で睨みつつ、泰巳はそちらの方に顎をしゃくった。
「あの女と行け。女同士の方が問題も少ないだろう」
「冗談やないで! 絶叫マシンとか、わたし全然ムリムリ、無理や。心が繊細やからな。
あんな高いとこから滑り落ちたら死んでまう。
おふたりで、どうぞ気兼ねなく、楽しんできてください♪」
「……」
案外ビビリなんだな等と心中で呆れる泰巳。
その腕を、絵麻は尚も引っ張る。
「おい」
「行こう。きっと、楽しいよ」
にこやかに誘う絵麻。
この少女にしては珍しい事に、いやに積極的だ。
泰巳は溜息をついて絵麻の手を振り解いた。
「1回だけ付き合ってやる。準備体操が終わってるなら、さっさと行くぞ」
先に大型スライダーに向かって行く泰巳を眺めつつ、侑子は呟いた。
「……何だかんだ言いつつ、楽しそうやん」



1回だけでは済まされなかった。
それから小一時間、泰巳はジェットコースターにアスレチックに迷路に、散々連れ回される羽目になった。
「…………だりィ」
最後にもう一度別のスライダーにつき合わされた後、出口付近のプールで仰向けに浮かんだまま、泰巳はぐったりと呟いた。
その腹に突然の衝撃。
負荷された運動量で水中に沈み込んだ泰巳は、訳が判らないまま水面を目指す。
何とか空気中に顔を上げ、呼吸を荒げながら周りを見回すと、眼前で見慣れた少女が悪戯っぽそうに笑っている。
遅れて落ちてきた絵麻が、勢いそのままに泰巳に抱きついて来たのだ。
「お前なぁ……」
束の間反撃してやろうかと考えるものの、大人気ないので止める。
それよりも、少し気になることがあった。
「お前、何か今日テンション高くないか?」
そのまま泰巳と並んで仰向けに流されながら、絵麻は小さく頷いた。
「水の感触、好きだから」
目を閉じて呟く少女。
「自分の境界が溶けて、拡散していくみたいで、不思議」
水を吸って首筋に張り付く、少し長くなった髪の毛とか。
女らしさが垣間見える華奢な骨格とか。
普段は出来るだけ気にしないようにしている胸や尻の膨らみとか。
水滴が流れる滑らかな白い肌とレースのあしらわれた黒い布地のコントラストとか。
先程までの行動が幾分幼稚であった分、静かに水を感じる少女の横顔は、どこか大人びて見えた。
背筋にゾクゾクと未知の感覚が走る。
並んで流されて行く少女に妙な色気を感じた泰巳は、思わずそこから目を逸らした。
「恥ずかしいポエムだな」
恥ずかしさを誤魔化すように泰巳は言い捨てると、体の向きを変えてプールサイドに向かう。
「俺は疲れた。少し休ませて貰う。
お前も適当な所で休憩を入れろ」
頷きながらも残念そうな表情で見送る絵麻はやはり歳相応には子供っぽい。
泰巳は首を振って先程受けた少女への印象を忘れることにした。



659:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:43:17 DPvrt8Dm
『背中に押し付けられる柔らかな双球の感触。平静を装いつつ、彼は全身の血が情欲に滾るのを感じていた。
――あのふくらみを、昨晩は心行くまで吸い尽くしたのだ。
臀部に密着する股間部の熱。平然としながらも、彼は全身の血が己が一極に集中するのを隠そうと必死だった。
――あそこにおれは、昨晩何度も何度も己を突き入れたのだ。
昨日あれほど果てたにも拘らず、彼はもう既に臨戦態勢に入っているのを自覚する。
――夜までだ、夜になるまで我慢してやる。さあ、今晩もこいつを散々に可愛がってやろう……』
「……あんたは一体何を書いているんだ」
「おー、ヤスミンおつかれさん」
一人ベンチに座って音読しつつ携帯電話に何事か打ち込んでいた侑子は、顔を上げて近付いて来た泰巳に手を振った。
「退屈しのぎに、ちょっくら妄想私小説でっちあげとったんよ」
「何でも良いが、声で読み上げるのは止めろ。
詳しい内容等聞きたくも無いが、とても子供には聞かせられない様なモノなのは判る」
携帯を折りたたんで、侑子はベンチから立ち上がった。
「で、どないやった?」
「何がだ」
「背中に押し付けられるムネの感触と、臀部に密着する下半身の感想や! 決まっとるやろ!」
泰巳は殊更深々と溜息をつく。
「あんたは、俺が気まずい思いをしている事を判って茶化しているのか」
「あ、気にしてるん?」
泰巳は憮然と頷いた。
「俺はな。あいつは全く頓着しない。俺を男とも思っていない様だ。
それならそれで距離を取れば良いのに」
「でも本心では嬉しいんやろー。気になるあの娘の肉体とひっつき放題。いちゃいちゃし放題。
向こうが気にしないのに付け込んでこっそりお触りしたりも……」
泰巳はこめかみを押さえつつ、プールの方で泳ぐでもなく水と戯れている絵麻の方を振り返った。
「絵麻! 今度は北大路がスライダー相乗りに付き合ってくれるそうだ!」
「なぬ!」
寝耳に水と目を剥く侑子。
絵麻は聞くや否やプールから飛び出て、期待に満ちた眼差しで侑子を見上げる。
「いや、だからわたし高いところあか……」
目を輝かせて上目遣いで見詰めてくる少女に言葉を失う。
謀ってくれたなと侑子は泰巳を睨んだ。
「楽しんで来たらどうだ。胸の感触とやらを」
半ば引き摺られるようにスライダーへ連行されて行く侑子を見送りながら、泰巳はそう嘯いた。
そのままベンチに座り、2人の帰還を待つ。
上の方から、ギャーだの、高いのいややーだの、こわい助けてーだの。悲鳴を聞き流しながら、泰巳は購入した缶ウーロン茶をすすった。
「……悲鳴を肴に飲む茶の香りは格別だ」
所詮缶だが。
やがてドップラー効果を引き摺りながら段々と悲鳴の発生源が降りて来る。
最後には人影が凄い勢いで排出口からプールに飲み込まれて、悲鳴は途切れた。
侑子のぐったりとした顔が水面から浮上する。

660:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:46:08 DPvrt8Dm
「大丈夫か」
「……大丈夫やないで。マジで死ぬか思っ――ぶぎゃああ!!」
女の子っぽくない悲鳴を上げながら侑子が再び水中に潜る。
泰巳は咄嗟にプールに駆け寄った。
「おい! 何があった!」
「ななななな! 何でもあらへん!
心配無用やから、ヤスミンあっち行っといて!」
「何でもないって、どう見てもそうは――」
侑子を庇うように立ちふさがる絵麻を見て、言葉が途切れる。
侑子の妙に前かがみな姿勢と腕を体の前で交差させている様子から、泰巳は何となく状況を察した。
「誰か来ないか警戒して置く」
背を向ける泰巳。
侑子は人気のない方に移動して、何かストライプ模様の布地を携えて来た絵麻に背中を向けた。
「すまへん、おねがいするわ」
絵麻は頷いて侑子が付けていた三角ビキニの紐を結び始めた。
「ごめんなさい」
「絵麻嬢のせいやあらへん。パーカー脱いだわたしの失敗や」
スライダーに無理に付き合わせたことを謝る絵麻に、苦笑しながら答える侑子。
「にしても……見られてへんとは思うが、まさかあの鬼畜眼鏡の前で恥かかされるとは。
ああああ、お先真っ暗や。もう嫁に行けん。
まあ、ヤスミンが貰おてくれるゆうても真っ平ごめん、絶対にお断りやが」
暫し見詰め合う侑子と絵麻。
「ゆうとくけどツンデレやないからな」
「詰んで?」
「恥ずかしさが先にたって、本心で好きなモンを言葉では嫌いやゆう手合いのことや……ええと、違ったかも。
とにかく、ヤスミンみたいな連中と憶えとき」
絵麻は素直に頷いて再び作業に取り掛かった。
「侑子さんは」
慣れない手つきで出来るだけ固く紐を結びなおしながら、絵麻は呟いた。
「私だと見られても、恥ずかしくない?」
「え? あ、うーん。まあ、恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけど……。同性やし」
同性でも同級生のクラスメートともなれば話は別だろう。
だが絵麻の様に無頓着な少女を前にすると、思春期にありがちな体型へのコンプレックスなどは抱くのが馬鹿らしくなってくる。
侑子は思わず苦笑した。
「絵麻嬢はホンマ、水着姿でも堂々としとるからなぁ」
「医者とかに体見せるの、慣れてるから」
侑子は一瞬言葉を詰まらせた。
少女が初めて語った己が過去の燐辺に、立ち入って良いものか判断できなかったからだ。
結局侑子は、その件から話を逸らした。
「まあ女の子なんやし、少しは気にした方がええで。
ヤスミンも男の子や。あいつも意識しとるし」
絵麻は首をかしげた。
良く判らないらしい。

661:男の子 / 女の子 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 13:51:10 DPvrt8Dm
「おうい、ヤスミン。終わったでー」
紐を結び終えた侑子はプールサイドに上がりながら、背を向けている泰巳に声をかけた。
泰巳もプールから出て、ベンチにかけてあった侑子のパーカーを持って近付いて来る。
「で、どうする。まだ泳ぐか」
侑子にパーカーを手渡しながら二人に尋ねる泰巳。
「わたし、もうこりごりや。けどアトラクションの方はまだ行ってみたいとこがちょこっと」
「私も、まだ……」
絵麻がプールサイドに足を置いて、身を引き上げようとした瞬間だった。
突然少女の全身から力が抜け、中途半端に背中側に置かれていた重心が重力に従って下へ沈む。
絵麻の体はそのままプールの水面に吸い込まれ――。
「と」
泰巳は素早く身を乗り出して、腕を伸ばし背中から絵麻の体を支え上げた。
「大丈夫か」
絵麻は呆然と泰巳を眺める。
眼鏡がなく焦点が合い辛いせいか、泰巳は顔を近づけても平然としていた。
「あ、ありが……」
「燃料切れだな。昼食を取って一度休憩したほうが良い。
まだ遊ぶか帰るかはそれから――」
少女の耳に言葉はあまり入っていない。
普段眼鏡に遮られている少年の素顔が。
少女のそれよりがっしりと厚い胸板が。
少女の体を支えるしなやかな腕が。
少年の体温が少女の意識の中に一気に雪崩れ込み。
絵麻の顔は一瞬で真っ赤に燃え上がった。
「〜〜〜〜ッ!!」
少女は突然暴れだし、泰巳の腕をかいくぐってプールの中に跳び込んだ。
「な、何だ!?」
慌ててプールを覗き込む泰巳を余所に、絵麻は背中を向けて先程の侑子の様に体を縮めて水の中に沈み込んだ。
「おい、何の心算だ」
「……だって」
突然の奇行に面食らう泰巳を横目に、口元まで水面に沈みながら絵麻は呟いた。
「だって、何だ」
「ヤスミの体、がっしりしてて、温かくて、……私のと全然違うし」
ぶくぶくと時折水面下に沈みつつ、ぽつぽつと心中を吐露する。
「それに、眼鏡ないから、直接顔が見えて、……その……、はずか、しい」
「…………」
顔を含羞の色に染める絵麻を見て、泰巳は絶句した。
「んな事、今更言っても……俺だって恥ずかしいわ、あほ」
シャッター音にふと横を見ると、侑子がにやにやと笑いながら携帯電話を向けている。
「スポットライトを当ててあげましょうかい? おふたりさん」
「……勘弁してくれ」
思春期の新たな段階に入った少女と、どう距離を取ればいいかなど泰巳には判らない。
茶化してくる外野の存在が、今はひたすら鬱陶しいだけだ。
何にせよ。
泰巳にとって絵麻と言う少女に対する懸念事項が、また一つ増えた事は事実だった。

…………

帰りの地下鉄で、自分の肩に頭を寄せて眠りこける絵麻を見て、先程見せた羞恥心は一体なんだったのかと泰巳が呆れたのはまた別の話。

662: ◆MZ/3G8QnIE
10/09/05 14:00:57 DPvrt8Dm
投下終了です。

漸く規制が終わった思ったら、夏休みも終わっていた。
時節的に1ヶ月ばかり遅いですね。

663:名無しさん@ピンキー
10/09/05 19:14:15 JaFcc80l
GJ! 絵麻がかわいすぎて悶えるw

664:名無しさん@ピンキー
10/09/06 05:01:54 aWuOxJfR
>>662
乙です
うは、絵麻ちゃん可愛い過ぎるw
自傷癖に鬼畜眼鏡が気付く展開はまだ先か?

665:名無しさん@ピンキー
10/09/12 10:28:03 asGM2Ao5
村の少女がある日、里山に出かけた時
道に迷って家に帰れなくなってしまい、空腹で倒れそうになって
川の源流、清水が流れる不思議な場所に咲いていた、綺麗な花を口にしてしまう

気がついたら村人に介抱されていて、布団の上
山の出口で倒れていたところを、発見されたらしい
少女は言葉が出なくなっていた。村人は何か恐い物でも見たのではないかと噂した
そして少女は、あの花の味が忘れられず、何を食べても美味しいと感じなくなってしまった

山に度々、一人で足を運ぶようになった少女
体の渇きに落ち着くことが出来ず、何度も奥に入っては意識を失って
いつの間にか村に戻って来ている。「あの花のあった場所」が分からない

少女は花を食べるようになった。道端に咲いているものや、頂いた花
洗って、そのまま食む。それだけで渇きは収まって、何も要らない
段々と変わっていく少女を、村人は恐れ始める
感情は希薄になり、物を食べず痩せ細っていき、虚ろな瞳には、人には見えない何かが映っているかのよう

少女は今日もまたふらりと、山の中へ消えていく


といった蟲が憑いたような無口っ子を書きたいが、雰囲気出すの難しいな
段々自然に埋もれるようにして心を忘れていく少女を、一度だけこちらに引き戻して抱きたい

666:名無しさん@ピンキー
10/09/16 01:04:51 FeEkqWWq
無口っ子と背中合わせで読書

667:名無しさん@ピンキー
10/09/16 18:41:44 4VdoRa/9
場所は木陰だな

668:名無しさん@ピンキー
10/09/18 19:08:31 usQzO7sj
むしろ無口っ子を膝の上に乗せて読書したい

669:名無しさん@ピンキー
10/09/19 22:52:04 eU4ZH6s7
寝転びながら隣で一緒に読書の方がいい

670:名無しさん@ピンキー
10/09/21 22:27:17 GNxjX/oy
こんな感じはどうでしょう?

タイトル 『カシマシィ!』

とある図書館。
二人の男女のパラパラと本を捲る音だけが静かに流れる。

と、

「ねえ、ねえ、智‘コレ,なんて意味?」
向かいに座る少女が、少年に質問をした。
「? ああ、‘ツンデレ,ってのは『ア、アンタなんか別にスキとかそういうんじゃないんだからね! 馬鹿!』とか言う女の子の事」
「へえ……じゃあサ、智はそういう風な女の子の事好き?」
質問され、少年は軽く首を捻ると。
「ん〜、あんまりにぎやかな女の子はちょっと苦手かな」
「そうなんだ、智ってにぎやかな娘が苦手だったんだ……あ、ねえねえ、これは?」
「ん? どれどれ? ‘無口っ娘, ああ、それは……」
少女から再び質問を受けて一瞬目の前の少女の顔を見た後。

『七瀬明菜』と、

‘無口っ娘て何? と、質問の書かれた紙,に名前を書き込み目の前の少女を指差す。
「私の事?」 と、言う顔をして少女は自分を指差し。
‘ふ〜ん,と言う顔になり、
‘先ほどまで質問を書いていた紙,を自分の下に寄せ、また目の前の本に視線を戻した。

二人の男女の本を捲る音。
そして時折ペンを滑らせる音だけが流れる。

加嶋市市立図書館。


671:名無しさん@ピンキー
10/09/23 00:37:17 EAWPArAQ
無口っ子が自己主張するのはどんな時か

672:名無しさん@ピンキー
10/09/23 20:35:04 /xul6FnP
>>671
巨乳無口っ娘とな

673:ファントム・ペイン 4話 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:37:38 47jMAnZI
本編です
13レスほど頂きます

674:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:39:34 47jMAnZI
お腹から?
そんな所から出て来るんだ、ヒトって。
「そう。人間は普通ここから生まれてくるの」
彼女はそう言って笑いながら下腹を叩いた。
「これぐらいの小さい赤ちゃんとしてね。
それまではずっとお母さんのお腹の中で、十分な大きさになるまで眠っているわ」
教科書に書いてはあったけど、何だか信じられない、そんな風に言うと
「女の子のコメントじゃないわねー」
彼女は深々と溜息を吐く。
「何にせよ、本当のことよ。実際に生んだことがあるから間違いない」
彼女の子供。
もう15歳になるのだと彼女は言う。
「すごく長い間ほったらかしにしちゃった。
きっと恨まれているんだろうな」
自嘲交じりの悲しげな顔。
でも大丈夫、と彼女は笑う。
「あの人に預けてきたから。きっといい子に成長してるって、そう信じてる」
私も、その子に会ってみたい。
そして、できるなら友達になってみたい。
「きっとなれるわよ」



675:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:41:52 47jMAnZI
「精密検査だと?」
南瓜のそぼろ餡掛けを突付きながら、俺は親父の唐突な依頼を訊き返した。
「うん、僕は明日出勤日だから。代わりに絵麻の付き添い、病院まで頼むよ」
「それは構わんが……」
ちらりと絵麻の方を見遣る。
青菜煮付けの汁を啜ったまま、ショートカットの小柄な少女も目を瞬かせている。
器から口を離して、掠れがちの声でボソリと呟く。
「……一人で大丈夫だよ」
「お医者様の日本語、専門用語が多いから。
きみの語学力なら問題ないとは思うけど、念のため、ね。
それとも―」
親父はにやりと笑う。
「泰巳と一緒はいやかい?」
絵麻は勢い良く首を振った。
「じゃ、決まりだ」
診察の予約の時間、出発の時間、病院のアクセスを確認する。
そこはかと無く嬉しそうな様子で、絵麻は小さく御馳走様を告げてから食卓を離れた。
彼女が洗面所に引っ込んだのを確認してから、俺は親父に詰め寄る。
「どう言う事だ」
「泰巳はいやなのかい? 絵麻とお出かけ」
俺は親父の戯言を遮る。
「精密検査だ。先月もだったろう。
何でこんなに頻繁なんだ」
親父は黙って肩をすくめる。
「先月、あんたは言ったよな。あいつの健康状態に問題はないと」
「そうだったっけ」
「なら何故こんな立て続けに検査を受ける必要がある。
持病があるのか? どうして治療を受けていない」
「泰巳」
静かに親父は俺の言葉を遮る。
「彼女は普通の健常者と変わりはないよ。
普通の生活が出来るし、切羽詰った問題があるわけでもない」
「あいつの塗り薬、相当強力な紫外線防護剤らしいな」
それ位の事は、ネットで検索すれば簡単に判る。

676:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:43:33 47jMAnZI
「まさか色素性乾皮症とか言う奴なのか」
「それなら夏の真っ盛りに昼出歩けるわけないでしょ。
個人差もあるけど、XPは簡単な処置で済ませられる病気じゃないよ」
「なら何だって言うんだ」
親父は小さく溜息を吐いた。
「絵麻本人に聞いたのかい?」
「……大丈夫の一点張りだ。話にならん」
「なら、僕からも話すことはないよ」
俺は拳を握り締めて苛立ちを抑えた。
「……俺が事情を知ることが、誰かの不利益になると言う事か」
「絵麻は少し辛い思いをするかもね。これだけしか言えない」
「俺が事情を知っても、何の役にも立たないんだな」
「……何をそんなにイライラしてるんだい?」
俺は出来るだけ深く溜息を吐いて気を静める。
要は部外者であると、当然の事実を指摘されただけだ。
俺はまだ子供だと自覚し、自然に唇が吊り上がる。
「ガキがガキだと言われて、不愉快にならないと思うか?」
「そうかもね。けど、きみはそれだけじゃないだろう。
どうして泰巳は、この件でそんなにムキになるの?」
一瞬、答えに詰まる。
「それは――
あいつが、絵麻が、身内だから」
「まあ、合格点かな」
親父は満足そうに笑った。
「できれば、家族、とストレートに言って欲しかったね」
「そう簡単に割り切れるか」
親父は話を打ち切るべく席から立ち上がった。
「絵麻は健康だし、何らかのハンデを負っている訳でもない。これは本当だよ。
きみは何の心配もする必要はない」
リビングに戻って来た絵麻が不思議そうな顔で二人を見ている。
親父は入れ違いで洗面所に向かい際、俺の肩を叩いた。
「傍にいてあげてくれ。それだけであの子の力になる」



677:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:45:00 47jMAnZI
「問題なし、か……」
早朝から午前中一杯かけての検診が終わり、俺と絵麻は病院内の食堂で軽食を突付いていた。
絵麻は検診の直後と言う事で重い物は食べられず、小サイズのうどんを黙々と啜っている。
前回より随分軽めの検査だったせいか、食はそれなりに進んでいる様だ。
出汁が辛子で真っ赤に染まっている様だが、見なかった事にしよう。
何にせよ、向こうは温かい分まだマシだ。
俺が頼んだ定食メニューは燦々たる有様だった。
衣が湿気た魚のフライ、火が通っていない肉じゃが、正体不明の茸、煮溶けたほうれん草、間違えてソースの掛かった杏仁豆腐。
大方のおかずが冷め切っており、白飯に至っては完全な中米で食えた物では無い。
そこそこの値段で栄養バランスが取れている事だけが救いだった。
上目遣いで俺の箸が進まない様子を伺う絵麻。
「……おいしい?」
「旨そうに見えるか」
俺は溜息を吐いて、手元の資料に目を落とす。
血液成分、代謝機能、MRI、レントゲン写真、等々。
専門用語が多くて判り辛いが、健康的な範囲に収まっている事は理解出来た。
目を上げて絵麻の様子を眺める。
するすると器用にうどんを手繰る彼女の挙動からも、特に不健康の色は見えない。
「全く、何の為に態々こんな面倒を……。
血液検査に身体機能テスト、先月は胃カメラまであったな。
俺だったら絶対にボイコットするぞ」
絵麻は箸を止め、真っ直ぐ俺の方を見る。
「ヤスミは、怖くないの」
「何がだ」
絵麻は自分の胸にそっと手を当てる。
「病気」
まあ、確かに。
現代人にとって最も高い死のリスクは、病によっている。
感染症や癌、精神疾患に機械的損傷、遺伝子欠損。
自覚症状が無くとも、常にその危険は誰にでも付いて回る。
けれど。
「限が無いだろう、そんな物。
四六時中考えていても、頭が可笑しくなるだけ。適度に無視するのが良い。
"気晴らしによってそれを忘れる"と言う奴だ」
絵麻は首を傾げる。
「……パンセ?」
正解だ。

678:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:46:26 47jMAnZI
「まあ、お前が何をそんなに怖がっているのか、俺は知らん。
無理に訊こうとは思わんが、少なく共身内の事だ、知って置きたいとは思う。
病気であろうと、何であろうと。
吐き出せる時に吐き出して置いた方が良いぞ」
絵麻は一瞬目を瞬かせた。
再び首を傾げる。
「お前の事だよ。
この御大層な人間ドックは何の為で、一体何を隠し事しているのかと訊いているんだ」
絵麻は口を開きかけるも、すぐに閉じる。
「言う心算が無いなら、別に良い」
「……聞いても、詰らないよ」
「詰まらなかろうが、知って置く必要があるかも知れん」
「…………知っても、何にもならない」
「俺が知りたいだけだ」
「………………」
ばつの悪そうな瞳から目を逸らし、昼食の続きに取り掛かる。
かちゃかちゃかちゃかちゃ。
食器を動かす微かな音が、やたらと耳に響く。
絵麻は尚も逡巡していた。
「……麺、伸びるぞ」
微妙な沈黙。
それを押し破ったのは、想定外の闖入者だった。
「あれ? 伊綾じゃね?」
聞き覚えの有る声に視線を上げると、食堂のすぐ外から活発そうな少年の見知った顔がこちらを伺っていた。
その後ろには彼の妹である穏やかな少女の姿も見える。
「渡辺か?」
手を上げながら近付いて来る少年の手には、百日草や百合の花束が。
休日なのに制服姿なのを見ると、誰かの見舞いだろうか。
「やっぱ伊綾じゃん、絵麻ちゃんも。奇遇だなあ。
なにしとるんだ、こんなとこで」
さしもの傍若無人な渡辺綱も病院内では大声は上げず、結と共に態々目の前まで寄って来る。
友人と出会えたからだろう、小さく手を振る絵麻の顔も僅かに綻んでいた。
お辞儀して来る結に会釈を返しつつ、質問に答える。
「絵麻の健康診断だ。俺は付き添い」
「ふーん。絵麻ちゃんどっか悪いの?」
「……さあな」
俺も良く判っていなかった。

679:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:48:15 47jMAnZI
話題を切り替える。
「そう言うお前らは何の用だ」
「あ、うん。俺らは―」
「何やってるの結。そっち食堂よ」
不意に前方から聴こえて来た声。
綱の肩越しに小柄な少女が三ツ編を揺らしながら早歩きでやって来るのが見える。
少女は俺の姿を認めるや、一瞬目を顰めた。
俺にも見覚えの有る顔だ。
「滝口も一緒か。珍しい組み合わせだな。
揃って誰かの見舞いか」
「おう! 聞いて驚け」
綱は小柄な少女、滝口睦月の肩を気安げに叩きながら、屈託なく笑った。
「滝口、お姉ちゃんになるんだぜ!」
「ほう」
要するに、滝口の母親が新しく子供を産んだ、と言う事だろう。
少し意外だった。
滝口は15か16の筈。
彼女の家庭事情は知らないが、これだけ歳が離れたきょうだいも珍しい。
「おめでとう」
「……有難う」
形式的かつ機械的な遣り取り。
滝口は若干気まずそうに付け足した。
「折角だから、伊綾君と、絵麻―さん、だったっけ、二人もお見舞い来る?
母子の様態安定したから、赤ちゃんも抱けるけど」
「いや――」
それは単なる社交辞令に過ぎなかったのだろう。
俺はすかさず辞退しようと口を開きかけて、閉じた。
絵麻が実に興味津々と言った風に、滝口を見詰めている。
普段感情が表に出ない彼女。
顔の筋肉に動きはなかったが、目の輝きが違う。
「……そうだな、お願いできるか」
結局俺は、申し出を受ける事にした。



680:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:49:50 47jMAnZI
「ご出産、おめでとうございまーす!」
昼下がりの総合病院。産婦人科の一角。
綱が満面の笑みで女性に花束を渡している。
「ふふ、有難う」
滝口の母親は産後の疲れも見せず、結構若く見える。
20台と言われても不思議ではない。
柔和そうな、ふくよかで柔らかな笑顔。無愛想で痩せっぽちな滝口とは似ても似つかない。
「赤ちゃん、抱っこさせてもらってもいいっすか?」
「どうぞ。ここから、こう、こうやって優しく、ね」
「おおお! 小っちぇー! お肌ぷにぷにー!
ほうれ高い高―すみません冗談です」
結に窘められている。相変わらずだ。
俺は個室から離れた廊下の壁にもたれ掛り、その様子をぼんやりと眺めていた。
外は快晴。布団を干して来れば良かった。
折角の土曜日にこんな所で、一体俺は何をやっているのだろう。
「あんたはあっちに行かないのか」
他にする事も無かったので、仕方なく俺は3メートルほど右でベンチに座っている少女に話しかけた。
髪を三ツ編にした身長の低い同級生は、先程の俺と同じくぼーっと病室の方を眺めている。
「別に」
どことなく詰まらなそうに滝口が応える。
「あんたの妹だろう」
「半分だけよ。お母さんが違うもの」
継母との確執、か。
「妹には関係ないだろうが」
「……」
滝口、無言で俯く。
その肩を、誰かがそっと叩いた。
「結」
いつの間にかこちらに来ていた渡辺結が、何時もの笑顔で病室の方を指差す。
「でも……」
「おうい! 滝口ー!」
妹に続いてやって来た綱が割り込み、未だに渋っている滝口の腕を強引に引っ張った。
「ちょ……っ! つ、綱っ。ま、待って!」
「お前もこっち来いよ。お姉ちゃんじゃねーか。
お見舞いの代表が席開けてちゃサマにならんだろ」
「……行くわよ。行くから!
手、離し――、……引っ張らないで」
顔を真っ赤にしながら病室へ連行されて行く滝口を見送る。
「……やれやれだ」
全くです。そんな感じで結も頷いた。
赤子を受け取る滝口は若干ぎこちない。
でも母親の方は気にした風でもなく自然だ。
赤ん坊は姉の方を見て笑い声を上げた。
「あ……」
「おー! 笑っとるわらっとる」
「あはは、お姉ちゃんがわかるのね」

681:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:51:10 47jMAnZI
はしゃぐ連中を遠くから眺めながら、俺は小声で毒吐いた。
「馬鹿馬鹿しい。不随意運動だろうが」
ふと横を見ると、結が俺に苦笑を向けていた。
「……すまん」
少し無神経な意見だった。
でも、俺はあそこに混じれそうに無い。
素直に生命の誕生を祝う気持ちが起こらない。
(生まれ出た時、人は皆悲しいと泣き叫んでいる。この世には馬鹿しかいないからさ)
どこぞの小説の一節が思い浮かんだ。
それでも、社会を維持するには子供は生まれなければならない。
祝福されようとされまいと。
人生が素晴らしいものであろうがなかろうが。
盲目的に生を賛美しなければ人は生きて行けない。
生殖を忌避するグノーシス主義やカタリ派は、"産めよ増やせよ"と唱えるローマに滅ぼされる。
別にどちらが正しい訳でもない。
必要だから生産される、そんな存在。
幸せを掴んだものが生を声高らかに肯定し、不運なものは死の間際か細い呻きで生を厭う。
だから世間には、生命の賛歌が溢れ返る。
大多数の報われぬ亡骸を踏み躙りながら。
(まぁ、どちらかと言えば恵まれている俺が言うのも何だがな)
こんなのは、生死の境に立たされた人間の考えるべき事だ。
平和に日々を過ごせる人間は、綱の様に馬鹿笑いをしていれば良い。
そうは思うのだが、それでも矢張り俺個人の感情は、結局赤ん坊の事を好きになれないのであった。
俺は異常なのだろうか。
鬱屈した思考を切り替えようと横を見ると、隣では結が飽きもせず赤ん坊を囲む兄達を眺めていた。
寂しさの混じった、羨望の眼差し。
決して手の届かないものを、羨む様な視線。
眩しそうな。
(……女って奴は)
矢張り俺には理解出来ない。
女。
俺はさっきからずっと病院の隅で物欲しげに赤子を眺めている絵麻に目を向けた。
彼女も一応、女か。
「滝口のお母さん、絵麻ちゃんにもいいっすかね?」
それを聞いて上目遣いでおずおずと近付いて行く絵麻。
「もちろんよ。睦月ちゃん、お願い」
滝口の手から絵麻に、赤ん坊が手渡される。
腫れぼったい眼、ぶよぶよとした贅肉。
俺の目にはとても可愛らしいとは思えない。
腹が減ったら泣き喚き、排泄物は垂れ流すだけ。
他者の存在を意識せず、善悪の判断も出来ない、劣った存在。
醜い肉のカタマリ。
自分の遺伝子を増やす為の、生殖と言う利己的なシステムの産物。
しっかりと、落とさない様に、それを抱えあげる少女。
赤ん坊が目を見開いて、眼前の絵麻を見詰めた。
小さな掌が、少女の頬を撫でる。
おっかなびっくり、そんな感じの顔が、見る見る内に綻んで行く。
俺が見たことも無い様な、素敵な笑顔。
俺は彼女との間に、決して乗り越えられない絶望的な隔たりを感じた。



682:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 21:53:27 47jMAnZI
「今日はありがとな、滝口。お母さんと妹さんにも礼言っといてくれ」
秋の日没は正に釣瓶落とし。日に日に早くなる。
朱に染まる空の下、一同は揃って病院から出た。
滝口には玄関口で車が待っている。
「みんなも、今日は……その、ありがとう」
滝口は若干目を逸らしながらそう呟くと、後部座席に乗り込んだ。
「親父さんにもよろしくなー」
別れを告げる綱と、その横で手を振る結。小さくお辞儀する絵麻。
頷く滝口を乗せて、黒い車は静かに走り出した。
じっと見送る俺を振り返ると、絵麻は首を傾げる。
「ヤスミ」
「何だ」
「滝口さん、ニガテだったり?」
「……どうしてそうなる」
半ば図星ではあったが、平静を装う。
結は苦笑して携帯電話に文字を打ち込んだ。
『似たもの同士ですからね。ちょっと近親憎悪もあるんでしょう』
「そうそう。二人ともアレだよ。なんつったっけ。
ピンチの主人公助けて、『勘違いするな! 貴様を倒すのはこのオレだからだ!』とか言うヤツ。
いわゆる――えーっと? ……そう! ツンデレ!」
鬼の首を取った様に同意する綱のピント外れな発言に、俺は頭を抱えた。
「……くだらん。人を勝手に訳の判らないカテゴリーに分類するな。阿呆か。
あとそこ、メモらんで良い」
メモ帳を開き『泰巳はツンデ―』等と書き込もうとしている絵麻を止めて置く。
実際、俺と滝口は反りが合わない。
以前の彼女は、今よりももっと排他的だった事も有る。
気に入らない物事に対し、文句を口に出さない癖に態度には出る滝口と、口が悪い俺とでは、それで無くとも相性が悪かった。
最近は互いに丸くなったものと思っていたが、絵麻には微妙に険悪な関係をあっさり看破されている。
妙に鋭い観察眼に驚きつつ、俺は話を打ち切るべく先を歩き始めた。
「そんな事より、もう行くぞ。日が暮れる前には帰りたいからな」



683:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 22:07:26 47jMAnZI
「可愛かったなー。赤ちゃん」
道すがら綱はそんな事ばかり連呼していた。
頻りに頷く絵麻。
俺は溜息を吐いた。
「ならさっさと相手を見つけて結婚してしまえ」
「俺?」
意外そうに綱は自分を指差す。
「無理無理。結婚なんて当分むーり。
だって俺、やりたいことあるし」
古生物学者か考古学者。
それが綱の夢だ。
言う迄も無く漫画の影響。
現在の綱も、部活に遊びに忙しい。
実に充実した青春だ。
「それに、さ」
綱は少し恥ずかしそうに笑った。
「恋愛とか結婚とか、相手の子のこと一番大切に出来ない奴に、する資格ないだろ。
俺にはまだ、無理だ」
今の綱にとって、最も大切な存在。
先を行く結の表情は伺えない。
少年に手を握られ、顔を赤らめる滝口の姿が脳裏に過る。
「お前は……残酷だな」
「ん?」
「……何でも無い」
綱は、例え滝口が泣いたとしても、結のことを優先するだろう。
だが、きっと滝口が好きなのは、そんな渡辺綱だった。
俺は話題を変える。
「あの赤ん坊も、すぐに可愛げのないクソガキになるだろう。
可愛い可愛い言っていられるのは今だけだ」
そして、何れは死ぬ。
「だからさ」
俺のネガティブな意見にも構わず、綱は笑顔で答える。
「今大事に思えるものを、それが出来るうちに精一杯抱きしめてやりたい。
だって、確実に生きていられるのは今だけだから」
だろ? と綱が笑い掛けて来る。
「刹那的な生き方だな」
「宵越しの金は持たねえ主義だし」
ふと、絵麻の方を振り返る。
何を思ってか、絵麻は微笑んで俺達を眺めていた。
結も苦笑している。
俺だけが、笑えなかった。



684:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 22:09:21 47jMAnZI
「あ、俺たちはここまでだから」
渡辺家への分岐点に当たる交差点に差し掛かり、黙礼する結の横で綱は手を上げた。
「また明後日だな、伊綾、絵麻ちゃん」
「ああ、お前らも寄り道せずにさっさと帰れ」
ふと、耳を澄ますと、遠くの方からサイレンの音が聴こえる。
一瞬、結の顔が強張った。
音は段々と近付き、交差点の向かい側から真っ赤な消防車が救急車を伴って走り抜けて行く。
「火事かな。最近多いけど」
「あっちは来た方だろう。滝口の親御さん達は大丈夫か」
気になって携帯電話を開く。ネットから火事の速報を確認。
直ぐに近場で火事があった場所が見付かった。
病院からは大分離れている。その近辺に知り合いもいない。
不謹慎ながらも、少し安心する。
まだその場に留まっていた綱が、液晶を覗き込んで来た。
「ん、滝口んとこは無事か」
「らしいな」
携帯を閉じる。
綱は笑いながら俺の肩を叩いた。
「やっぱ、なんだかんだ言いながら、伊綾っていい奴じゃん」
「何?」
突拍子も無い言葉に目を顰める。
「赤ちゃんのこと、心配だったんだろ?」
じゃーな、と言い残して、結を伴い綱は去っていった。
俺は呆然と見送る。
赤ん坊が心配だった?――そんな訳、あるか。
「ヤスミ」
心配そうな顔で、俺を見上げる絵麻。
「どこか、痛いの?」
「……違う」
俺は肺から無理矢理声を絞り出した。
自分でもぞっとするような、無機質な音。
「どこも、痛くない。それどころか何も感じないんだ。
あの赤ん坊を見ても、あれが笑う所を見ても、何の感情も湧き上がらない。
否、敢えて言うなら、憎悪とか、嫉妬とか、嫌な感情ばかり感じる」
彼女は言う。
『ヤスミは、いいひとだから』
違う、違うのだ。
俺はお前が思う様な人間じゃない。
「俺には、母親に愛されていたか、確証が持てない。
母さんが傍にいたのは、ずっと前の事だったから。
だからやっかみと言うのもあると思うけれど」
俺は、胸に溜め込んでいた澱を少しずつ吐き出して行く。

685:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 22:10:40 47jMAnZI
「俺には生命の尊さが、理解出来ない。
生きる事が無条件で良い事だなんて、思えない。
俺はお前達から見れば、血の通っていない冷血漢なんだよ」
絵麻はそれを聞いて一瞬目を丸くしたが、直ぐに笑顔に戻る。
そしてゆっくりと、俺に近付いて来た。
俺は僅かに後退る。
直ぐに商店の壁にぶつかった。
一瞬気を取られた隙に、絵麻は俺の目前まで歩み寄っている。
戸惑う俺に構わず、そっと手を伸ばす。
そして顔を横向きに、俺の胸に押し当てて来た。
「何、を……」
じっとしてて。
そう囁かれた気がした。
成す術も無く、二人寄り添ったまま。
とくんとくん。
左胸に当てられた、彼女の耳に。
とくんとくん。
心臓の、おと。
とくんとくん。
「……だいじょうぶ」
目を瞑って微笑む彼女。
「ヤスミの心、あったかいよ」
「それは――、恒温動物だからな。
それに、そこには心なんて無い。
心臓は、只の血液のポンプだ」
辛うじて、そう応える。
絵麻は頬を擦りながら首を振る。
「ブリキの木こりの胸には、とっくに心が入っている」
気付いていないだけ、そう付け加える。
「ヤスミは色々なこと知っているから、色々なこと考えちゃうから、素直に笑えないのかも。
でも、何が大切かなんて、難しく考える必要ない。
目を閉じて、抱きしめてあげれば、きっと判るよ。
赤ちゃんのことも、きっと」
「お前は――」
俺は彼女を押し退けようと手を伸ばして、結局止める。
通行人の奇異の目が気にはなったが、勘違いさせて置けば良い。
苦笑しながら、伸ばしかけたその手で彼女の髪を撫でる。
「偶に口を開けば、何時も、何時も。
お目出度いことばかり言うんだな」



686:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 22:12:03 47jMAnZI
絵麻は、自分の出自について語らない。
彼女の母親がどんな人間だったのかも、俺は知らない。
でも、一つ言える事は。
彼女がうまれて来て、よかったと思う。
仕合せでなければ生を肯定出来ないとするなら。
彼女には、しあわせでいて欲しい。
そしていつかは、彼女が望むならば、幸せな母親になって欲しい。
そう、願った。

687:掌 / 鼓動 ◆MZ/3G8QnIE
10/09/23 22:13:12 47jMAnZI
投下終了です。

投下前に非エロ注意を忘れていて、申し訳ありません

688:名無しさん@ピンキー
10/09/23 22:14:37 LAz9cP7P
gj!

いや、エロとか関係なくいい作品だー

689:名無しさん@ピンキー
10/09/24 06:20:17 bz30v7zQ
GJ!
すごい引き込まれるな……。これ程続きが気になる作品も珍しい。
一つだけ残念なのは、渡辺兄妹とかの前作や今作の前話が保管庫に収録されてないせいで、キャラが掴みにくいってとこだ。

690:名無しさん@ピンキー
10/09/24 06:57:34 pfTSgzE0
GJです。ヤスミンはマザコンなのか
しかし絵馬ちゃんホントかわいいな

691:名無しさん@ピンキー
10/10/02 10:31:50 v9eexgBK
GJです
続き期待してます!

関西弁無口とかどうでしょうか

692:名無しさん@ピンキー
10/10/03 06:40:51 wHj9fqnf
>>691
なでなで
「…………なに?」
「や、丁度良いところに頭があったもんで」
「…………」
「…………」
「…………何でやめるん?」
「へ? 何か嫌そうな気がしたから」
「嫌やない」
「!」
「…………い、嫌やないから、もっと、撫でて欲しいん、やけ、ど……」
「…………」
「…………」
「あーもう可愛いなコイツはー!!!」
「っ!? あかん、そんな強したら髪乱れっ、ん……駄目や言うとるのにぃ……」



こんな感じでしょうか>関西弁無口っ子

693:名無しさん@ピンキー
10/10/03 10:10:19 Ofv4Ber/
いいねぇ GJ
期待通りだ
続き期待!

694:名無しさん@ピンキー
10/10/11 06:40:36 /Bsg7M+y
関西弁無口っ子が来たなら……はんなり京都弁無口っ子が来ても良いはず……!

695:名無しさん@ピンキー
10/10/11 18:20:47 sVRpGahK
せやな

696:名無しさん@ピンキー
10/10/12 02:07:45 ER73A0+3
せやろか

697:名無しさん@ピンキー
10/10/12 02:44:53 mmfzp1OI
…んなごたないべさ

698:名無しさん@ピンキー
10/10/13 02:11:31 iipUXuM1
…そう…なんだぎゃー……

699:名無しさん@ピンキー
10/10/15 17:05:06 qJwE5+u8
FEに方言が恥ずかしくて人と話すのが苦っててキャラがいましたよ。
イベントが進むと話せるようになりますけど。


……同じ故郷のおっさんとだけですけど。

700:名無しさん@ピンキー
10/10/15 22:40:25 FmKj6/cN
ネフェニーだな
魔道士オバお姉さんとか道化師ともあるぞ

701:名無しさん@ピンキー
10/10/16 00:00:28 uw5BSpxc
むくち おれたち…

702:名無しさん@ピンキー
10/10/16 00:55:46 GjpG/pEr
………?

…!

///

703:名無しさん@ピンキー
10/10/16 01:05:07 GjpG/pEr
age……すまん

704:名無しさん@ピンキー
10/10/16 03:30:50 2stbig/Y
何故かライブアライブ原始編を思い出した

705:名無しさん@ピンキー
10/10/21 08:46:16 xu/rOlTz
ぽん
「無口すぎるぞ、少しは自己主張しろ」

706:名無しさん@ピンキー
10/10/21 17:26:17 4bWRfE3I
「…………(だって恥ずかしいの……)」

707:名無しさん@ピンキー
10/10/21 19:47:42 YAqcMnEp
森田さんは無口が流行れば……きっと書き手も増えるはずや……

708:名無しさん@ピンキー
10/10/23 14:08:23 6doGvnJZ
保管庫乙です

709:名無しさん@ピンキー
10/10/29 21:25:05 x64IjJGw
>>707
既に俺の中では大流行中だぜ。

710:名無しさん@ピンキー
10/10/31 01:04:02 PcsVJxto
>>707
キョージュ、師匠、つみきさん、なにげさん、山田のり子……
何気に4コマ界は無口っ子が豊富

あと、まんがぱれっとに大型新人が参戦したとか

711:名無しさん@ピンキー
10/10/31 02:27:28 rvwdqA9c
>>709
ナカーマ

>>710
ぱれっとチェックしてみるわ
サンクス


次ページ
最新レス表示
スレッドの検索
類似スレ一覧
話題のニュース
おまかせリスト
▼オプションを表示
暇つぶし2ch

3885日前に更新/480 KB
担当:undef