無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目 at EROPARO
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450:名無しさん@ピンキー
10/04/08 22:46:59 XOI5Y5Fr
ファミ通文庫の「BAD」二巻の白雪さんがとてもとても萌えたのだが、
無口キャラと言うにはちょっと壮絶で悩む

451:名無しさん@ピンキー
10/04/09 00:03:58 URpmzAZc
何せ物理的に舌切り取られてる娘だもんな。

452:名無しさん@ピンキー
10/04/09 22:09:33 SBKM3O7i
BADの女性キャラは皆結構饒舌だしなぁw

453:名無しさん@ピンキー
10/04/13 13:10:08 zBr+2Tl4
無口な女の子をイメージすると、何故か動物に近くなってしまう

犬バージョン
男「ただいまー」
駆け寄ってきて嬉しそうに微笑む女の子
頭をなでてやると身をすり寄せてきて、男を台所へと促す
男「どうした?…すげえ、ごちそうじゃん!」
褒められて顔を赤らめながらもさらにニコニコと男を見上げる女の子

猫バージョン
男「ただいまー…ってよく寝るなお前」
ソファーでうたた寝してる女の子
撫でてやるとうっすらと目をあけ、もっと撫でろと言わんばかりに頬を手にすり付けてくる。
男「わかったわかった。…言ってる側からまた寝るし」
至福を満喫するかのような微笑みを浮かべて寝息をたてる女の子

こんな感じ

454:名無しさん@ピンキー
10/04/13 19:39:07 8suG5OV9
猫…、素晴らしい。

455:名無しさん@ピンキー
10/04/13 23:50:01 dXl5NSyH
便乗して兎バージョン

男「ただいまー……ってうおっ!?」
走ってきて男にダイブする女の子
そのままとろんとした目で男を見つめながら、待ちきれないとでも言う風に男の股間をまさぐり、飛び出した人参を嬉しそうに咥え



ああ、性欲強いのは雄の兎だったか。
寂しいと死んじゃう? やだなあ都市伝説ですよw

456:名無しさん@ピンキー
10/04/14 15:13:23 CqclAPdw
便乗の虎バージョン

男「ただいまー…って酒臭っ!」
虎「……………………」
男「これはマズい、避難しよう…あ」
目が合う、酔っぱらいの目が獲物を見る目に変わる
虎「………………遅い」
男「いつもより早い位じゃゲフッ!」
のしかかられゴロゴロされる、響きはいいが190cmオーバーの彼女は正直重
男「いえ、何でもないです」
…喰われるかと思った、性的な意味でなしに。

457:名無しさん@ピンキー
10/04/15 00:44:33 uJijd5Gm
巨無口はちょっと…

458:名無しさん@ピンキー
10/04/15 09:20:05 RLGnxbAf
全然あり

459:名無しさん@ピンキー
10/04/15 12:10:46 r1FLdZ6w
自分より頭一つ大きいのに態度は自分より遥かに小さくて奥ゆかしい恥ずかしがり屋とか最高だす

460:名無しさん@ピンキー
10/04/15 23:00:51 H/ZiZr3b
男「ん? どうしたんだ無口子? 壁に向かって座り込んで」
無「………………」
男「?? なんだ、一体……?  ん? 書置き?」
無「………………」
男「えーと……『今日、嫌な事があったのでスネてます。再起動させるためには、私が世界で一番喜ぶ
  言葉をかけてあげてください』、か」
無「………………」
男「えーと………………」
無「………………」
男「今日も可愛いなっ!」
無「………………」
男「い、いや可愛いというか美しい!」
無「………………」
男「しかも、料理上手だし! 美人の彼女の手料理が毎日食えるなんて俺って勝ち組だね!」
無「………………」

………
……


男「こ、こんだけ褒めつくしてもだめか……」
無「………………」
男「く……ほかに、ほかに後は……くそ、俺の無口子への愛はこんなものなのか?!」
無「………………(ぴく)」
男「(ん? 今反応した?)」
無「………………」
男「………………あー」
無「………………」
男「無口子……愛してる」

無「………………(にこ)」

461:名無しさん@ピンキー
10/04/17 02:53:57 xl3hu5ns
ちくしょーいちゃいちゃしゃーがって!

462:名無しさん@ピンキー
10/04/18 04:45:30 diMd2HKz
何も言わずにそっと男の背中にもたれ掛かる無口っ子

463:名無しさん@ピンキー
10/04/19 07:10:11 bhPvthWB
「ああ〜、だりぃ」
(ゆう、くん)
「どした?」
(んしょ)
「何だよ」
(眠いの。だから、背中、貸してね)
「やめれ。この姿勢はきつい」
(温かい、な)
「〜〜」

(あのねゆうくん。私しばらく、ここに来られなくなるかもしれないんだ)
「はぁ。相変わらずベタベタすんの好きだな」
(そうだね。でも、ひょっとしてひょっとしたら、これが最後なんだよ?)
「少しは遠慮しろよ。そして言いたいことははっきり言え」
(ごめんね。けどやっぱり、直接言い出すには、強さと広さと勇気が足りない)
「お前はそうやっていつも無言だ。肝心な時に、肝心なことを言わないのな」
(うん、分かってるよ)
「ったく。ほら、離れろ。眠いんならベッドで寝とけ」
(ゆう、くん)
「っておい。未練がましく抱きつくな」

「どうしてほしいんだ? なぁ」
(ゆう、くん)
「はぁ、する気もないのに世話焼かす奴だな」
(ごめんね。でも、でも好きだって、分かってほしいよ)
「子どもじゃあるめぇし、もっと分別ってものをな、」
(何言ったって良いから、その代わりに少しでも長く、このままでいさせて?)
「それに都合さえあればいつだって会えるだろ。一週間空いたり一ヶ月空いたりが、当たり前じゃねぇか」
(でも、でもねゆうくん、)
「って、俺も何言ってんだか。疲れてるんだな」
(ゆうくん)

「帰るのか」
(うん)
「そっか。何か、悪ぃな。せっかく来てくれたのに」
(ううん)
「一ヶ月ぶりか。こんな体がだるくなけりゃな。でも、また近い内に来いよ」
(そうだね)
「付き合ってもう一年くらいだし、そん時は今日の埋め合わせも兼ねて、何かしてやるよ」
(そっか。嬉しいな)
「しっかし、相変わらずお前何も喋らねぇのな。加えて無表情だし」
(そうかな? うん、ごめんね)
「心配すんなよ。捨てたりなんて、しねぇよ」
(うん。分かってる)
「で、一々抱きつかなくても良いよ。変わった奴。よしよし」

「じゃな、気をつけて帰れよ」
(さよなら)

(ゆうくんは手を振ると、いつものようにゆっくりドアを閉じた)

(何だか、不安で泣きたくなった。独りぼっちになったみたいで)

(独りの時は独りでいても平気なのに、ゆうくん、こんなのって、変かな?)

(もう二度と開かないかもしれないドア)
(ごめんね。さよなら、ゆうくん)


それではまた、いつか

464:名無しさん@ピンキー
10/04/19 10:48:11 I59Hmvqh
もちろん続くんだよな…?

465:名無しさん@ピンキー
10/04/19 19:53:42 SMd6uIJn
せつなすぎる……

466:名無しさん@ピンキー
10/04/22 00:57:56 DkHipJKx
弟「姉さんただいま」
姉「………遅い」
弟「ごめん、友達と遊んでたら楽しくてつい」
姉「……嘘」
弟「えっ」
姉「…あの女とデート」
弟「どうして」
姉「……楽しかった?」
弟「ち、違うよ、買い物に付き合っただけって。
どうしてそんなに怒ってるの?」
姉「………」
弟「大体、僕が誰と付き合おうと勝手だろう?
門限に少し遅れたのは悪かったけどさ。そんなに怒らないでよ。」
姉「………」


467:名無しさん@ピンキー
10/04/22 01:34:01 DkHipJKx
弟「姉さん?」
姉「……に……ない……」
弟「姉さん何言って」
姉「別に、怒ってなんかないっ……!
あんな女に、やきもちなんか妬いてないっ……!」
弟(姉さん、泣いてる…)
姉「グスッ……私には……関係ないもん……」
弟「違うよ」
姉「………?」
弟「僕が大切な人は、姉さんだけだよ」
姉「………」
弟「今日は本当に女友達の買い物に付き合っただけなんだ。
その帰りに、告白されたけど、断わったよ」
姉「………」
弟「さっきは意地悪言ってごめん。でも僕は、姉さんが一番大切なんだ。
だから、泣かないで、ってうわあ」
姉「…………(ギュッ」
弟「姉さん、苦しいよ」
姉「弟くんの………ばか………大好き……」
弟「胸当たってるって」
姉「もう……離さないから………(ちゅっ」


どうしよう無口にならなかったごめんなさい。
失礼しました

468:人間は難しい
10/04/22 03:06:33 IXFldx/O
 高校から自宅に帰ると、玄関の前に身長160cmくらいの綺麗な女性が立っていた。
 うちの玄関の扉に背を向け『ボーーー』と空を眺めている。
 何してるんだろ……、ちょっと怖いな……。
「あのー、うちに何か御用でも……?」
 僕が尋ねると、その美人さんは眠そうな目をこちらに向け、
「……………」
 向けただけだった。無言。超無言。
 整った表情から滲み出す『無口』オーラがハンパない。
 美人に見つめられるのは決して悪い気はしない。が、このまま見つめ合っていても話が進まない。
「ひょっとして訪問販売か何かですか?」
 美人さんが足下に置いている大きなバッグを指差しながら聞く。
 すると美人さんは僕の指先をチラッと見て、すぐに視線を僕の目に戻した。
 うわっ、気まずい!何この人!
「あの……?僕の顔に何かついています?」
 僕が言うと、『ハッ!』と何か重要な事を思い出したかのような顔をした美人さんは、唐突に地面に座り込むと大きなバッグをゴソゴソやり始める。
 そしてバッグの中からスケッチブックのようなものと黒のマジックペンを取り出すと、
『やっほー、おにいちゃん』
 スケッチブックにペンで大きくそう書いた。
 ……あぁ、そうか。この娘は喋れないのか。気まずいとか思ってしまって申し訳ない……。
 ……ん?おにいちゃん?
『私、15才になりましたので。おにいちゃんと結婚をしにきました』
 15才?結婚?……確か結婚って女性は16才からじゃ……。
『16才までの1年間は花嫁修行期間です』
 あ、そうなんだ。……凄いな、どちらも一言も声を出していないのに話がテンポよく進んでいく。
『えへへ、きっと私たち、相性がすっごく良いんだね』
「おいおい、極々自然に人の心を読むなよ」
「…………顔を見てたら、わかる」
 平坦な声で言う美人さん。
「喋れたの!?」
 今までの筆談は何!?
「…………これでもう、今日の事を、おにいちゃんは忘れない」
「へ?」
「…………おにいちゃん、結婚の約束。忘れてた」
「結婚の、……約束?」
「…………私の顔見ても、気付いてくれなかった」
 顔。顔。……うーん、こんな美人の知り合いなんて僕には……、僕よりも年下なら僕の物心の付く前って事も無いだろうし。
「…………おにいちゃん、昔、私を助けてくれた」
 助けた……?余計にわからん……?
「…………近所の、怖い子供たちから。凄く、嬉しかった」
 それ本当に僕か……?人違いなんじゃ……。
「…………人違い、じゃない。ずっと近くで、おにいちゃんの事、見てた」
「やっぱり心読んでるだろ」
「…………うん。読んでる」
「まさかの肯定!?」
 なにその特殊能力!
「…………私は、あの日、公園でおにいちゃんに助けられた」
 公園……?
「…………猫です」


469:人間は難しい
10/04/22 03:07:41 IXFldx/O
 
「猫!?」
 猫ってお前そりゃないわー。あ、もしかしてこの娘、ネコって名前なのか?
 ……でもネコなんて名前に覚えは無いよなぁ。
「えーと、ネコちゃん?ごめんね、全然思い出せないや」
「…………名前はルキ」
「え?じゃあネコは名字?」
「…………名字は無い。猫は種族名」
「……種族名?」
「…………猫は猫でも、猫又だけど」
「猫又って、……化け物の?」
「…………その言い方は、ひどい」
「あ、あぁ、ごめん」
「…………わかってくれた?」
「何を?」
「…………私、猫。猫又。」
「自分を猫だと主張していることはわかった」
「…………信じてくれた?」
「僕の心が読めるんだろ?」
 信じてないです。
「…………変身」
 突然、目の前からルキが消えた。
「にゃーん」
 消えた彼女の場所には何故か、銀色の毛をした綺麗な猫。
「……イリュージョン?」
「いや、いい加減信じろにゃ」
「猫が喋った!」
 うわ!よく躾られた猫だなぁ!
「躾で喋れるようになると本気で思うのかにゃ?」
「いえまったく」
 そりゃそうですよね。
「やっと私の事を信じてくれたかにゃ」
「……はい」
「変身!にゃ!」
 耳に馴染むかけ声の後、銀色猫から黒髪美人へと変わるルキ。
「…………おにいちゃん、大好き」
 そういうと僕に抱きついてくるルキ。猫とは思えない甘い香り。
「…………ずっとずっと、こうしたかった」
 ルキは二重の目を細め、僕の胸に顎をこすりつける。
「少し気になったことがあるんだけどさ」 
「…………何?」
 鼻をひくつかせながら上目遣いのルキ。
「猫の時の方が流暢に話せているよね?何で?」
「…………人間は、まだ慣れない」
 言いつつ僕の背中に両腕を回すと、僕の胸に左頬をペタリとつけ『…………ほー』と安心したような息を吐く彼女。
 とりあえず僕はそんな彼女の顎を指先で軽く撫でてやった。……猫だし。

470:名無しさん@ピンキー
10/04/22 03:18:40 scCkJ0pM
> うわ!よく躾られた猫だなぁ!
>「躾で喋れるようになると本気で思うのかにゃ?」

思わず吹いたww

471:名無しさん@ピンキー
10/04/24 22:00:02 JWK1DYyG
久しぶりに来てみれば
何と言う糖化ラッシュ

472:名無しさん@ピンキー
10/04/25 01:20:28 tSdFf/eZ
GJ! リバーシブルを楽しむかどちらか一方を愛でるか……
個人的には猫耳娘姿で語尾が「にゃ」で饒舌が究極状態かな。
つばさキャットは可愛かった。

473:名無しさん@ピンキー
10/04/29 01:16:34 gJH+q6OE
犬属性無口っ子と猫属性無口っ子にすりすりごろごろされたい

474:人間は難しい
10/04/29 23:12:34 EGh9Np2X
 高校から自宅に帰ると、玄関の前に身長160cmくらいの美少女と身長140cm程の美幼女二人組が立っていた。
 ああ、またこの展開か。
 呆然と二人―いや、たぶん二匹―の非常に端正な顔を眺める僕。
「犬」
「…………カラスです」
 まだ何も言ってないのに……。
 やはりこの二人も人の心を読むことが出来るらしい。
 ちなみに身長160cmの白髪が『犬』、身長140cmの金髪が『カラス』であるそうだ。
「で、何の用?」と、僕。
「兄さん、良い匂い」犬。
「…………お兄様に一目惚れです」カラス。
 どうやらこの二人もルキと似たような理由で来ちゃったみたいだ。
「あー……、名前は?」
「サヤ」
「…………キャルです」
 犬がサヤ。カラスがキャル。
「で、……うちで暮らす気?」
「はい」
「…………暮らしたいです」
 うーん。生活費は十分に足りるだろうし、部屋数的にも問題は無いんだよなぁ……。
「まぁ、いいや。とりあえず家に入ろっか」
 
 二人(二匹?)を背中に玄関の扉を開く、と、
「…………おかえり、おにいちゃん」
 すぐさまリビングから飛び出してきて僕に抱きつくルキ。
 初めの数日はドキドキしたものだが、もうさすがに慣れた。
「ただいま、ルキ」
 言うと、僕の胸に顔を必死で擦り付けていたルキが顔を上げ―固まる。
「…………おにいちゃん、この人たちは……」
 ルキの眼に今まで見たこともない殺気が宿る。
「犬。サヤ」
「…………わたしはカラスです。キャルといいます」
 そんな殺気立つルキを物ともせずに淡々と自己紹介をする両名。
「…………私は猫、名前はルキ」
 こんな表情をしながらもちゃんと律儀に返事をするルキはいい子だと思う。
 
 自己紹介の後は無言のままリビングへと向かい、四人掛けのソファーに腰掛けた僕たち。
 並びは左からサヤ、キャル、僕、ルキ。
 右側のルキはいつもに増して僕に身体をスリ寄せてくるし、左側のキャルは僕の左手の小指と薬指を『キュッ』と包むように握っている。
 そしてキャルの向こうのサヤは優しい微笑みで僕の顔を凝視していた。
 誰も喋らない。無言。ただただ無言。
 一人くらいお喋りな娘がいたって罰は当たらないだろうに……。
―ルキの身体の柔らかさ、キャルの手の温かさ、サヤの視線の恥ずかしさに耐えること一時間。
「そ、そろそろ夕食の準備でもしようかなぁー」
そう僕が言うと、
「…………おにいちゃん、私、魚食べたい」
「肉」
「…………わたしは割となんでも食べられます」
「はいはい、わかったわかった」
 言いながら僕は一人、キッチンへと向かった。


475:名無しさん@ピンキー
10/04/30 00:41:49 fXE6tXd3
全力でwktk

476:名無しさん@ピンキー
10/04/30 03:37:16 R0KIF9vK
無口娘達による修羅場空間…空気が、空気がッ

477:名無しさん@ピンキー
10/05/02 20:19:17 eYDChmwp
スケッチブックっ子は可愛い

478:名無しさん@ピンキー
10/05/03 23:07:30 HKevCP4r
エロ無し、投下します。

479:人間は難しい
10/05/03 23:08:44 HKevCP4r
 夕食を終えると満腹になったルキが、リビングの床にあぐらをかいた僕の脚の上でゴロゴロし始める。
 僕が顎の下を撫でてやると、目を細めて口をモゴモゴと動かす。満足そうに。
「かまって」
 横で寝そべっていたサヤはそう言いながら僕のシャツをずり上げ脇腹を露出させると、剥き出しになった僕の脇腹に軽く噛みつく。
 何度か『ハモハモ』と脇腹をくわえたまま口を動かしたサヤは、脇腹から口を離し床に仰向けに寝転がると、
「撫でて」
 少し甘えたような声で言った。
 恐る恐るサヤのお腹を服の上から手の平で撫でてやると、サヤはだらしなく口を開いて綺麗なピンク色の舌を出す。
 ダラーーーンと出す。
 おい、涎たれてるぞ、涎。
 しばらくの間、左手でルキ、右手でサヤを撫でていると後ろから「グワアアアア!」という凄い鳴き声が聞こえ慌てて振り返る。
 そこには無表情ながらも機嫌の悪そうなオーラを出しているキャル。
 この不機嫌オーラは比喩的な表現ではなく、実際にどす黒い炎のようなものがこの目に見えている。
「…………弛んでいます」
「はい?」
 キャルが小声で何かを呟いたがよく聞こえなかった。
「…………お兄様は弛んでいます」
「……弛んでる?僕が?」
 みんなの分も夕飯を作ったり、今だって二人にご奉仕したりそこそこに頑張っていると思うけど。
「…………よくわからない女の子を三人も家にあげておいて何を今更です」
「えっ!?そこ突っ込んじゃうの!?」
 な、なんかこの娘、理不尽だな。見た目も10歳くらいだし、頭もやっぱり見た目相応なんだろうか?
「…………とにかく、お兄様は弛んでいます。……これは教育が必要ですね」
 そう言いながらキャルは黒いオーラを大きな手のような形にして、それを使い僕の身体を持ち上げる。
「ちょっ、何これ何これ!」
 大きな黒い手に掴まれグググっと天井近くまで持ち上げられる僕。
「…………鳥類がその程度の高さで何をビクビクしているんですか」
「いや!僕、鳥類じゃないから!人類!人類だから!」
「…………あぁ、そういえばそうでした」
 依然として僕を掴んだままではあるものの、足が床に付く所まで下ろしてくれる黒い手、というかキャル。
「…………つい、同族のノリで接してしまいました」
 軽く頭を下げるキャル。
「…………そうそう、それ、私もよくある」
 横から話に入ってくるルキ。
「…………おにいちゃんからは、どこか、私と似た匂いを感じる」
 カラスや猫に親近感を持たれるって人としてどうなんだろうか。
「…………まぁ、それはひとまず置いておきましょう」
 自分の立っている食卓の近くまで黒い手で僕を引き寄せるキャル。
 すると突然、食卓の上、チラシの裏の白い面にマジックペンで何かを書き始める。
 カキカキカキキュッキュッカキカキカキ。
「…………出来ました」
 何かを書いたチラシの裏を僕の眼前に掲げるキャル。
 それには『月火水木金土日』と、そのそれぞれの文字を区切るように縦線が引かれていた。
「…………イチャイチャ予定表です」
「イチャイチャ予定表!?」
 凄い言葉のセンスしてるなこの娘。


480:人間は難しい
10/05/03 23:09:44 HKevCP4r
「…………はい、こういった事は最初に決めておかなければいけません」
「なぜ?というかどういう事?」
 そもそもイチャイチャって予定を組んでするものなのか?
「…………先程のお兄様の行動を思い出してください」
「先程って、……鳥類のくだり?」
「…………もう少し前です」
「床であぐらをかいてた」
「…………何をしながらでしたか?」
「ルキとサヤを撫でながら……」
「…………はい、ストップ。そこです」
 ビシッと人差し指を立てるキャル。
「…………猫の人と犬の人を撫でながら、わたしの事は無視です。あれには思わず叫んでしまいましたよ」
 叫んだって、『グワアアアア!』って鳴き声の事か。
「いや、ルキはいつもの事だったし。サヤには撫でてと言われたから撫でただけで……」
 僕が言うと、僕の身体を覆うように掴んでいる黒い手に『グッ』と力が入る。痛い痛い痛い痛い。
「…………わたしは控えめな性格なので、猫の人や犬の人がお兄様にベタベタイチャイチャしているところには、どうしても入っていく事が出来ないのです」
 ひ、控えめ……?どこが……?あッ痛い痛い痛い痛い!あぁそういえばこの娘も人の心が読めるんだった!
「で……でもさ、夕食の前は僕の手を握ったり積極的だったじゃない」
「…………あれは勢いで何とか。冷静になると難しいのです」
「そ、そうなんだ」
「…………なので初めから、誰が、どの日にお兄様に甘えて良いのかを決めておく必要があるのです」
 と、そこまでは黙って話を聞いていたサヤが口を開く。
「サヤは甘えたい時に甘える」
 ムクリと床から起き上がりながらサヤは繰り返す。
「食べたい時に食べ、眠りたい時に眠り、甘えたい時に甘える」
 口の端から顎にかけての涎の跡とあわせて、とても頭が悪そうに見えるサヤ。
「…………私も、おにいちゃんには毎日甘える、だから却下」
 ルキも、サヤに同調する。
「…………お兄様はどうなんですか?」
 上目遣いで(身長差ゆえ)僕を見ながら尋ねてくるキャル。心なしかその眼は潤んでいるようにも見える。
「ぼ、僕は……」
 正直どっちでも良いのだけれど、確かにその日その日で懐いてくる相手が決まっていた方が楽な気もするし……。
 うーーーん。
「予定表……、あった方がいい……、かな?」
 それを聞くと、スッと僕からルキとサヤへ視線を動かすキャル。
「…………ほれみたことですか、犬猫の意見など聞く価値もありません」
 ベッと舌を出すキャル。こいつ性格悪いな。
「…………と、お兄様も言っています」
「そこまでは言ってないから」
「…………おにいちゃんは、そんなこと言ってない」
「言ってない」
 三人から一斉に否定されるも、それを軽く鼻で笑うとキャルは、
「…………まぁ、いいじゃあないですか。とにかくそれぞれの担当日を決めましょう」
 それに対しルキとサヤは、
「…………やだ」
「断る」


481:人間は難しい
10/05/03 23:11:04 HKevCP4r
「…………それじゃあ話が進まないです、バカ犬猫」
「進めなくて良い」
「…………そうだそうだー」
「…………うるっさいです糞共、このままではわたしは納得しませんよ」
「なら帰れ」
「…………帰れ帰れー」
 サヤの後ろに隠れてサヤの言葉を繰り返すルキ。
 これではまるでサヤの下っ端である。ルキは基本的に争えない子なのだ。
 ……それにしてもキャルは儚そうな見た目に騙されていたけど、実際はかなり性格がひど痛たたたたたた!
「…………あと、ずっと言いたかったんですけど、……おいダメ猫」
 ズビシッとルキを指差すキャル。
「…………な、なに?」
 サヤの後ろに隠れビクビクと震えながらルキ。
「…………お前、わたしと喋り方が被ってるんですよ」
 確かに、声質と話の間がよく似ている。でも口の悪さが全然違イタタタタタタタタタっ!
「…………か、被って、ない」
 涙声で反論するルキ。
「…………被っています。モロ被りです。この無個性アホ猫」
 ここぞとばかりに声をわずかに大きくするキャル。
「…………か、かぶって、ないっ」
 今にも泣きそうな顔でルキ。
「…………超被りまくりですボケ猫ォ、わたしの真似はいい加減やめてもらえませんかぁー?」
 仕留めにかかるキャル。
「…………かぁ、かぁぶっ、へぇ……、かぶっへ、……ふぇぇ」
 ついにはシクシクと泣き出してしまうルキ。ビジュアルだけだと小学四年生に泣かされる中学三年生である。無性に悲しい。
「こらこら、もうそこら辺でやめとけ」
 さすがにこれ以上はいたたまれないので止めに入る。
 黒い手に掴まれていて動けないから口だけでだが。
「…………はーい、この腐れ無個性をいじるのにも飽きましたし止めまーす」
 一言も二言も多いキャル。
「…………ひぐぅ、ひっひぅぅ」
 ほら、ルキも涙ボロボロ流しちゃってるよ。キャルとサヤに出会った時の強気な殺気が嘘のようだよ。
「あー……、そういえばルキ、僕の家に初めて来た時にスケッチブックで会話してたじゃない。あれなんか結構個性的だったんじゃ―」
 「ない?」と僕が言い終わる前に物凄いスピードで二階に駆け上がり、そして駆け戻ってくるルキ。
『おにいちゃん、これだね!』
 自信満々な顔で文字の書かれたスケッチブックを掲げるルキ。感情の切り替えが素晴らしく早い。
『ふふん!この高速文字書きはお子様カラスちゃんには真似出来ないでしょ!』
 ルキは紙の上ではやたらと強気だ。……ちょっと情けない。
「…………ええ、確かにわたしには真似出来ません」
 そう肯定したキャルは僕の身体を掴んでいた黒い手を消す。
 そしてトテトテと僕の方に歩み寄り。
 『ヒシッ』両手を僕の腰に回し、力強く抱きついてきた。
「…………ですが、スケッチブックを使って会話をしていたら、両手が使えませんよね?」
 更にキャルは僕の胸の下のあたりにペタリと寄せていた頬をスリスリと上下に動かしながら、
「…………それでは抱きつくことも、こうやって甘えることも出来ませんよ?バカ猫さん」
 その言葉に愕然とした顔でルキは、
『そ、それは盲点だったよ……!』
 と、スケッチブックに書いた。
 やっぱりこの娘はキャルの言うとおりでバカなのかも知れない。

482:名無しさん@ピンキー
10/05/03 23:14:15 HKevCP4r
とりあえず投下終了。
なんか全然無口じゃないですよね。


483:名無しさん@ピンキー
10/05/03 23:55:56 9r6T/TD8
ヒャッハーGJだぜ!
曜日制か…まさかこれ以上増えたりしないよな?

484:名無しさん@ピンキー
10/05/04 00:13:52 VYYsg/UL
一週間は7日だから数合わせであと4人…あ、いや4匹か。

485:名無しさん@ピンキー
10/05/04 01:17:33 YETpm4qy
ならば大和撫子な狐無口娘と、シルエットのエロいキス上手な蛇無口娘は確定だな

486:名無しさん@ピンキー
10/05/06 16:43:41 dhngpwVK
決して無口っ子=無表情っ子ではないのだよ

487:名無しさん@ピンキー
10/05/06 19:33:06 RZT46Rwx
エロ無し、投下します

488:人間は難しい
10/05/06 19:34:06 RZT46Rwx
【月曜日担当決め】
 
 
「…………はい、ではまずは月曜日から決めていきます」
 ソファーとテレビの間に立ち、『月よう日!』と大きく書かれたチラシの裏を掲げるキャル。
 チラシの無駄遣いだと思う。
 ソファーに座っている僕たち三人はこれ以上長引くのも嫌なので、適当に拍手をした。
「で、どうやって決めるの?クジ?じゃんけん?」
 僕が聞いてみるとキャルは無い胸を張って、
「…………料理です」
 と、言った。
「料理って……、もう今日は僕たち夕飯食べたでしょ」
「…………それはそうなのですが、軽い食事ならまだまだ入りますよね?それに……」
 少しの間をおくと、若干恥ずかしそうにキャルが、
「…………ス、スーパーというものを生で見てみたいですし」
 つまり食材を買うという名目でスーパー見物に行きたいという訳か。
「…………スーパー、私も、入ったことないから興味ある」
「サヤも行きたい」
 ルキとサヤも期待するような目で僕を見つめてくる。
「わかったわかった、じゃあちょっと財布を取ってくるから、玄関で待ってて」
 ソファーから腰を上げ、財布の置いてある二階の自室へと向かう僕。
 部屋に入ると財布をポケットに突っ込み、階段を下りて玄関に。
 そして三人と一緒に玄関から外に出て、歩いて7分のところにあるスーパーへと足を進める。
 僕の右手を握るキャル、左手を握るルキ、そして後ろから僕の首に腕をまわし、ダルーンとぶら下がるようにしているサヤ。
 凄く息が苦しい。そして歩きにくい。更にサヤの大きな胸が背中に当たって気持ちいい。
 すれ違う人達からの視線もある、……まぁそれは別にいいや。
 スーパーにたどり着き中に入ると、ルキがキョロキョロと周りを見回しながら声をあげる。
「…………凄い、野菜と果物、いっぱい」
 ルキは僕の手を引きながら安売りされているシメジの前で立ち止まる。
「…………シメジ、98円」
 僕と握っていない方の手で値札を指差すルキ。
「そうだね。安いね」
「…………安いの?」
「物凄く安いって程では無いけど、まぁほどほどに安いよ」
「…………買うの?」
「ルキが料理に使いたいなら買っても良いよ」
「…………使わない」
「……そっか」
「…………お兄様、お兄様」
 キャルが僕の手をグイグイと引っ張る。
「…………エノキも98円です」
「うん。98円だね」
「…………でも、こっちのエノキは128円です。何故ですか?」
 98円のエノキの隣に置かれている別のエノキに指を向け、僕の目を見つめるキャル。
「あー、詳しくはわからないけど。作っている場所だとか細かな品種の違いだとか、量の多い少ないで値段が変わってくるんだよ」
「…………そうなんですか」
 キャルは『うんうん』と頭を上下に動かし納得した様子だ。
「兄さん」
 耳元にサヤの言葉と吐息がかかる。
「そこのエリンギも98円」
「よし。もうキノコから離れようか」

489:人間は難しい
10/05/06 19:35:21 RZT46Rwx
 言うと、僕は三人に身体を離してもらい、買い物かごを手に持った。
「じゃあ、それぞれ料理に使いたい食材を持ってきて。基本的な調味料は家にあるから無しで。金額は一人600円くらいまでね」
「…………わかった」
「了解」
「…………わかりました」
 僕の言葉を受けて思い思いの売り場へと向かう三人。
 さて、僕はこの間に人参やら玉ねぎやら、人数が二人増えて足りなくなった分の食材を買い増しておく。
 小松菜、ピーマン、ニラも安かったので買い物かごに入れる。
 鮮魚コーナーに行くと、そこには真剣な目をして魚の切り身を眺めているルキがいた。
「鮭とカレイ?」
 後ろから僕は声をかける。
「…………うん、でも、どっちも三枚入りしか無い。一パックだと足りないし、二パックだと余る」
「一パックでいいんじゃない?味を見るだけなんだからさ」
「…………うん、わかった。ところで、おにいちゃんは、鮭とカレイどっちが好き?」
「あー……。どちらかと言えばカレイかなぁ」
「…………なら、カレイにする」
 僕の持つ買い物かごにカレイを入れるルキ。
「…………ねぇ、おにいちゃん」
「ん?何?」
「…………なんで、ここの棚、少ししか魚が置いてないの?……スカスカだよ?」
 ルキはポツリポツリと商品が並ぶ棚を指しながら聞いてくる。
「もう夜の8時だからねぇ、スーパーは遅い時間になると魚とかは置かなくなっちゃうんだ」
「…………そうなんだ。でも、ジュースはたくさん置いてあったよ?なんで?」
「ジュースはすぐには腐らないからじゃないかな?」
「…………腐らないの?」
「まぁ、モノによっては腐りやすいかも知れないけど。基本的には」
「…………腐らないのかぁ」
 ジュースの置いてあるコーナーの方に目を向けるルキ。
 どこか哀愁を感じさせる顔だ。
「ジュースが欲しいの?」
 答えはわかっているが一応聞いてみる。
「…………ちょっとだけ、ジュース欲しい」
 『ちょっとだけ』とはとても思えない顔でルキは頷く。
「じゃあ好きなのを一本だけ選んでおいで」
「…………ありがとう、おにいちゃん」
 早歩きで飲料コーナーへと向かうルキを見送り、僕は精肉コーナーでボケッと突っ立っているサヤの隣に立つ。
「何を買うか決まった?」
 僕が話しかけると、
「これ」
 サヤの指差した先にあるのは一枚2780円の国産牛のステーキ。
 半額シールは貼ってあるものの、それでも1390円。高い。
「うーん、これはさすがに高すぎるから……」
 僕はステーキの隣に置かれた国産牛の薄切り(半額シール付き)1000円を手に取り、
「こっちはどう?半額で500円だし、見た感じも悪くなさそうだよ」
 サヤは、僕の手の上の薄切り肉を『ポケー』っと眺め、
「兄さんはこれが食べたい?」
 僕は笑顔を作り答える。
「うん、食べたいな。あぁそうだ、サヤもルキと一緒にジュースを選んでおいでよ。好きなのを一本買ってあげるから」

490:人間は難しい
10/05/06 19:36:33 RZT46Rwx
「了解だ」
 サヤはペコリと僕に頭を下げると、「ジュースジュース」と口ずさみながら歩き出す。
 僕は半額の薄切り肉と半額の合い挽きミンチを買い物かごに入れ、ブラブラと適当に商品を見ていく。
 切れかかっていたガーリックパウダーをかごに追加し、僕はお菓子コーナーに足を向ける。
 そこには、座り込んで熱心に何かを眺めているキャルがいた。
「何見てるの?」
 僕が尋ねると、キャルは勢いよくこちらに振り向く。
 キャルの目はキラッキラに輝いていた。
 その両手には、
「……アニメの、カード?」
「…………はい、プリキュアのカードです」
 僕から自分の手元のカードに視線を戻し、ニコニコしながら肯定するキャル。
「…………プリキュア。テレビで見てるんです。こんな商品があるとは知りませんでしたが」
「そ、そうなんだ……」
「…………しかも見てください。このカード、きらきら光るオシャレなカードって書いてます。こっちはメタリックですって。これなんか商品名に『キラキラ』が入っていますよ」
 別々の三つの商品を僕に見せながら説明を始めだすキャル。
 やたらと『キラキラ』を強調している。カラスだから光り物に弱いんだろうか?
「でもさ。今回はおもちゃじゃなくて料理の為の食材を買いにきたんでしょ?」
「…………料理は家にあるもので作ります。それなら予算的に問題は無いはずです」
「食料品を買うのとおもちゃを買うのは違うんだよ?」
「…………でも、これとこれ。ガムとグミが付いてますよ。だからこれはお菓子です、食料品です」
「……そんなに欲しいの?」
「…………欲しいです」
「はぁ……、わかった。でも三つはダメ。二つにしなさい」
「…………え?…………え?え?」
 キャルは不安そうな表情でこちらの顔を見上げてくる。
「…………三つ欲しいです」
 僕の目を見つめながらおねだりをするキャル。う……うぐぅ、可愛いな。
 で、でも、だ。ここで買ってしまうと、今後も似たような調子でおもちゃをねだってくるだろう。
 それは良くない。
「ダメ。二つ。残りはまた今度ね」
 僕の言葉を聞くと、キャルはうなだれ、床に視線を落とすと細い肩を小刻みに揺らし始め―
「…………うぅぅ、ぅああああ、ひっ、ぐっ、うっうっ、やぁぁぁ……」
 泣いた。
「…………スーパー、ひぐっ、初めてっ、きてっ、きたのにっ、……初めてなのにっ、ふうぅ、プリキュア、ほしっ、欲しいっ……」
 キャルの泣き声はとても小さく、か細い。涙が涙腺からふっくらとした頬を通って丸みのある顎から落ちる。
「あっ、ああ、ごめん、ごめんね。買おうね。三つとも買おうね。スーパー初めてだもんね。買おう買おう」
 僕は買い物かごを一度床に置き、キャルのサラサラとした長い金色の髪を撫でながら涙を拭ってやり、ゆっくりとキャルを立たせると、
「ほ、ほら、あっちでジュースも買おうね。キャルはどんなのが好きかなー?」
 再び買い物かごを手に取り、歌のお兄さんを意識したような声を出しながら、キャルの商品を持っていない方の手を握り飲料コーナーまで連れて行く。
 飲料コーナーではいまだにルキとサヤがどれにするかを悩んでいた。
「…………オレンジ、りんご、……ぶどう、うむむむ」
「カフェオレ、コーヒー牛乳、ココア、どうしよう」
 僕はひとまずルキ、サヤ両名を放っておき、目と鼻を赤くししゃくりあげているキャルに優しく話しかける。
「キャルはどれが飲みたいかなぁ?」
 濡れた瞳を一度棚に向け、すぐに戻し僕の顔を見上げるとキャルは、
「…………わからない……難しい……」

491:人間は難しい
10/05/06 19:37:43 RZT46Rwx
 言いながらキャルは僕と繋いでいる手に『ギュッ』っと力を入れてくる。
 ……なんか幼児みたいになっちゃったなこの娘。
「キャルはオレンジジュース飲める?」 
 キャルの目を見つめ返しながら僕は尋ねた。
「…………飲める」
 キャルが頷いたので僕はオレンジジュースを買い物かごの中に入れ、ルキ、サヤをせかす。
「ほらほら、どうせまたすぐに来るんだから適当に選んじゃってよ」
 それを聞くと二人は、
「…………なら、私は、ポカリ」
「サヤもポカリ」
「りんごとかコーヒー牛乳で悩んでいたんじゃないのかよ」
 
 レジのおばちゃんに「あらお兄さんモテモテね」などと言われながら料金を支払い、トボトボと来た道を戻る。
 僕の右手にはキャルの左手、左手には買い物袋。
 少し後ろをルキとサヤが無言でついて来る。
 やや重たい空気の中、家にたどり着き、冷蔵庫に買ってきたものを詰めていると、キャルが、
「…………では、さっさと調理を始めますよ猫と犬。あと、お兄様は何があっても口出し禁止です」
 どうやら立ち直ったらしい。
「…………うん、やれるだけ、やってみる」
「料理初体験」
 ルキとサヤの言葉に不安を覚えながらの料理対決が始まった。
 
「肉を焼く」
 生肉をパックから取り出して何の味付けもせずにフライパンの上にのせるとサヤは、
「ほっほっほっほっ」
 中華の料理人っぽくフライパンを振り始めた。
 火も何もついていない。フライパンは冷たいままである。
 当然だが何回振っても肉は生のまま変化はしない。
「おかしい。テレビで見たのと違う」
 サヤは何を思ったのか、フライパンの中に水道の蛇口から直接に水を入れ、肉を洗い始めた。
 薄切り肉は蛇口からの水の勢いとサヤの手に揉まれボロボロと崩れていく。
「こんなはずでは」
 水で満たされたフライパンには切れ切れになった生肉が浮かんでいる。
 僕はサヤに失格を告げると、フライパンをそのままの状態で火にかけ、肉を煮てからポン酢で食べた。ボソボソとしていて不味かった。
「…………次は私が」
 ルキはカレイの切り身三枚をパックから取り出すと、まな板の上に並べ、調味料を振りかけていく。
 塩、コショウ、ガーリックパウダー、オレガノ、イタリアンパセリ、一味唐辛子、七味唐辛子、シナモン、ナツメグ、オールスパイス、
パプリカ、ターメリック、クミン、コリアンダー、フェヌグリーク、カルダモン、ガラムマサラ、味の素、顆粒ほんだし、顆粒中華あじ―
「…………ふんふふーん」
 鼻歌まじりで調味料まみれになったカレイをごま油を敷いたフライパンで焼き始めるルキ。
 そして焼きあがったカレイを皿に移すと、その皿を僕に差し出してきた。
「…………食べて、おにいちゃん」
 僕は箸を震わせながらこんがりと焼けたカレイの身をちぎり、それを口に入れ、
「マズッ!クサッ!」
 即、吐き出した。
 ルキ、失格。

492:人間は難しい
10/05/06 19:39:17 RZT46Rwx
「…………ふふ、ついにわたしの番ですね」
 キャルは床の上に寝そべり落ち込んでいるルキ、サヤを尻目に調理を開始した。
 まずは食パンを取り出し、その上に冷蔵庫にあったとろけるチーズをのせ、そこにコショウを軽く振る。
 最後にそれをオーブントースターで3分焼いて出来上がり。
「なんかズルくない!?」
 僕は思わず叫んでしまった。これも料理と言えば料理だが、どこか納得がいかない。
「…………肉や魚を焼くか、パンを焼くかの違いだけです。さぁ、食べてみてください」
「う、……うん」
 僕はとても良い匂いのするチーズのせトーストにかぶりついた。当たり前だけど、……美味い。
「…………わたしの勝ちですね」
 こうして月曜日担当はキャルに決まった。
 
「―さて、と。そろそろ僕はお風呂にでも入ってこようかな」
 料理対決を終え、リビングでダラダラすること30分。
 僕はソファーから腰をあげると浴室に向かう為、リビングのドアを開け―
「…………ちょっと待ってください」
 キャルに呼び止められた。
「何?あ、もしかして先に入りたい?」
 彼女たちは猫、犬、カラスではあるものの、歴とした女の子でもあるのだ。
 入る順番の確認もせずに勝手に入ろうとしたのはマナー違反だったか。
「…………いえ、そうではありません。……お風呂、一緒に入りましょう」
「一緒に?お風呂?」
「…………はい」
 キャルは僕の側まで歩いてくると僕の手を取り、
「…………さ、行きましょう」
 無邪気な笑顔で言った。
「待て、カラス」
 サヤが床から立ち上がりこちらへ歩いてくる。
「サヤもお風呂だ」
 サヤが僕の右腕に抱きついてきた。サヤの大きな胸が僕の腕でふにょりと形を変える。
「…………待って」
 ルキも慌てて走り寄り、僕の腰にすがりつく。
「…………私は、何日も我慢してたのに。二人は、すぐ、おにいちゃんと、一緒に入るなんてズルい」
 左にキャル、右にサヤ、腰にルキ。
「いやいやいや、僕は誰とも一緒には入らないから」
 僕がそう言うと、
「…………ダメです、入ります」
「サヤも入る」
「…………私だって、入りたい」
 三人の意志は固そうだ。目がギラギラと光っている。
 ……まぁ、いいか。一緒にお風呂に入るくらい。
「わかったわかった、じゃあみんなで入ろっか」
 僕は三人を連れて浴室へと向かった。

493:名無しさん@ピンキー
10/05/06 19:41:17 RZT46Rwx
投下終了です。
ルキの影が薄くなってきました。

494:名無しさん@ピンキー
10/05/06 19:47:12 y1l5xkX5
GJ
ニヤニヤし過ぎてほほが元に戻らないんだが

495:名無しさん@ピンキー
10/05/14 03:12:59 n788oKnH
おいおい、喋っても良いんだぜ?

496:名無しさん@ピンキー
10/05/16 19:04:11 mUyyDwis
「………………ダッシュ」

497:名無しさん@ピンキー
10/05/17 20:39:23 UsTkw17X
無口っ子をヘッドロック

498:名無しさん@ピンキー
10/05/17 20:58:25 ASwH5CEb
「………………ぎぶ」

499:名無しさん@ピンキー
10/05/20 01:41:04 PFR9gruj
無垢痴っ娘

500:名無しさん@ピンキー
10/05/20 06:55:33 taGKRr53
エロい……。

501:無垢痴っ娘ってこうですかわかりません
10/05/20 14:47:35 oa1Ib/L8
「……ぅぅ…ひぁ!」クニクニ
「おはよ」
「あっ、むーちゃんおはよ。ってそーじゃなくてなんでぼくのちんちん、あしでくすぐるの」
「あんま」サス…
「だ〜か〜らなんでぼくにあんますんのさ」
「………」グニィ

「ひゃゎ、ねー、なん、で。むーひゃッ!」
「あんま」ブブブブブ
「ひゃぃぃいいい!!」
ブブブブ
「あはははははは」
ブブブ
「はははは」
「………」ブブ…

「はは……はぁ…」


「………せー」
「な、なにむーちゃん?」
「どしてげらげら?」
「…だって、くすぐったいんだもん」
「………せー、むーきらい?」
「えっ?」
「…かかととと、あいしあてるから、あんましたって。むー、せーのことあいしてるから、した。
なのにせーととと、ぜんぜんちがた。……せー、むーがきらいだから?」…スン

502:無垢痴っ娘ってこうですかわかりません
10/05/20 14:57:37 oa1Ib/L8
「そんなことない!ぼくむーちゃんがすき!あいじでる゛!!」グス
「うぞ!」
「ほんど!!」
「じゃ゛、だい゛どでじめ゛じで!!!」

ブッチゥゥゥ!

「「う゛あ゛ぁ゛ぁn
「やかましい!!!」ズギャン!
「にぃ!」「義兄さん!」
「こんのマセガキ共、ディープチッスなんぞ20年早いわッ!!」
「チッs「夢雨ッ!勝手に出てったと思えばあのバカ夫婦の真似なぞしおって!向こうで大人しく待ってろ!!」
「ひぅ…」
「義兄さん、チッスはふr「静也ァ!何時だと思ってやがる!姉ちゃん居ねぇからってチンタラしやがってッ!!さっさと顔洗って朝飯食え!!もうすぐお迎えのバスが来ちまうぞッッ!!!」
「はいぃ!」

「…んのバカ親ァ、いい歳して盛りやがって。それも幼い娘にさらりとたらしこむとか…」

〜〜〜〜〜

「あらあら。二人を小脇に抱えて、お説教したの?」
「いやいやお恥ずかしい。『また』夢雨がやらかしたもので。」ヒョイヒョイ
「あらあら。仲のよろしいこと。そういえば夢雨ちゃん、
この前も園庭の真ん中で静くんと指を絡ませあって…」ダブルキャッチ!
「止めてください。二人の将来が本気で心配です。」
「いやぁ、私もまた刺激的な恋愛を…」
「年甲斐もなくそんなこと言うから、貴女を恩師と仰げないんだよ。」
「あらあら、ホント可愛げが無くなって」ギリギリ
「「あばばば」」

ど完


とりあえず全員18歳以上ということにしといて下さい

カオスなのは徹夜明けテンションのせいです。ホンマすいません

503:名無しさん@ピンキー
10/05/20 15:05:07 0UNoBJ27
とりあえず日本語でおk

504:名無しさん@ピンキー
10/05/21 01:05:05 dR53iF3a
人間環境が読み取れん、誰が誰の何だか

505:名無しさん@ピンキー
10/05/21 22:37:00 S+Hs4+5r
無口っ子を抱きしめてむぎゅむぎゅしてなでなでしてすりすりしたらどうなるのっと。

506:名無しさん@ピンキー
10/05/23 00:11:46 tnI6Cupj
ぐしゃぐしゃになった髪をムスっとした顔で直しながら、時折にへっと笑います。

507:名無しさん@ピンキー
10/05/25 12:28:28 jUdNz7t5
にへっ

508:名無しさん@ピンキー
10/05/26 09:19:16 35Nk/Y7H
>>556の無口っ子は可愛い。
そのまま不機嫌を装って家に帰って、ベッドに飛び込んでにやけた顔を枕に埋めてばたばたしてたらもっと可愛い。

509:名無しさん@ピンキー
10/05/26 20:34:46 E4QPsUG3
>>556
俺が今まで見たみた中でも指折りの可愛さだなこの無口っ子は

510:名無しさん@ピンキー
10/05/26 20:59:35 +aSGVC/i
>>556は責任重大

511:名無しさん@ピンキー
10/05/26 22:17:18 fKvKCLHV
>>556
GJ過ぎて鼻血出たわ。
不機嫌を装う無口っ娘の可愛さといったらもう!

512:名無しさん@ピンキー
10/05/29 02:04:37 i660OTXu
あれ・・・期待したのにまだまだ先のことじゃね?

513:名無しさん@ピンキー
10/05/30 07:10:00 bongxKw/
………………かそく

514:名無しさん@ピンキー
10/05/31 00:43:18 P/RrSdqO
…………けいえすけい

515:名無しさん@ピンキー
10/05/31 08:43:27 gHf2eSD0
口を尖らして「むー」とか拗ねてる無口っ子は可愛い

516:名無しさん@ピンキー
10/06/02 00:41:44 fqMk+b/5
常に後ろをついて来る雛系無口っ子

517:こんな感じ?
10/06/02 01:30:20 iytOWlCf
 俺が叔父貴の家の縁側でぼーっとタバコを吸ってると、隣にちょこんと従姉妹のお子様が座り込んだ。
 何か用でもあるのかそちらを見やるが、従姉妹殿は手元の絵本を熱心に覗き込むばかりで、
こちらを見ようともしない。
 子供にタバコの煙を吸わせるのもどうかと思い、俺は3mばかり移動して、従姉妹殿から離れた。
 ……すると従姉妹殿は何を思ったのか、絵本から顔を上げてこちらを無言でじっと見詰めた後で、
絵本を片手にとてとてとこちらに歩いてくると、またぽすんと俺の隣に座り込んで……
それで何を言うわけでもなく何をしてくるでなく、また絵本に視線を落とす。
 俺は無言で空を見上げて、タバコを深く吸い込む。

 ……ははぁ、これはあれか。ここはいつもの自分のお気に入りの場所だから、タバコくさい余所者は
どっか行けと言う、無言のアピールか。
 まったく、喫煙家でいい歳した独身で手土産一つ持たずお邪魔した身の、なんと肩身の狭い世の中か。
 俺は最後にもう一息タバコの煙を深く吸い込んで味わうと、半分以上残ったそれを携帯灰皿でもみ消すと、
縁側から立ち上がって居間に引っ込む。
 ソファーに深く腰掛け、リモコンを手にTVの電源を入れる。なにか適当に暇が潰せる番組でもないかと
チャンネルをいじっていると……三度ぽすんと、俺の脚にもたれかかるようにして従姉妹殿が座り込み、
また無言で絵本を覗き込み始める。
 この期に及んでも従姉妹殿は、こちらを見ようともしない。
 てしてしと、無意味に首筋を叩きながら、しばし視線を宙にさまよわせる。
「……あー」
 意味もなく声を上げて、俺は足元に陣取る従姉妹殿を見下ろす。そしてTVを消すと、恐る恐る従姉妹殿に
声をかける。
「……来るかい?」
 ぽんぽんと自分の膝を叩きながら問いかけると、反応は劇的だった。
 従姉妹殿は弾かれたように顔を上げてこちらを見やると、にぱっと満面の笑みを浮かべる。そして、勢いよく
立ち上がると、その勢いのままに飛び込むように俺の膝の上に腰を下ろす。
 それからまた絵本を読み出すのだが……足はぶらぶらさせるわ、かすかに鼻歌はもれるは、明らかに
上機嫌である。
「……あー」
 俺はまた意味もなく声を上げ……観念して、従姉妹殿のソファー役を謹んで務めることとした。
 そんな、ある日の昼下がり。

518:名無しさん@ピンキー
10/06/02 02:28:14 RsOIpnAo
>>517
やだ、何これ…
凄く萌えます
とても素晴らしかった

519:名無しさん@ピンキー
10/06/02 12:20:42 U9F5J2rB
無口親戚ロリ!!!

520:名無しさん@ピンキー
10/06/02 20:12:25 ZzXO97tO
>>517
絵本は読まんが、うちの猫そっくり。6`雄だけど。胡坐でも足がしびれる。

521:名無しさん@ピンキー
10/06/02 21:07:03 P0kKRpO/
>>517
GJ!
ぜひ続きを!

522:名無しさん@ピンキー
10/06/03 00:50:51 1CjMlh3I
何このかわいい生き物すごく萌えるんだけど

523:調子に乗ってみますた
10/06/03 22:58:31 PoGhk2Fz
 俺の目の前で、従姉妹殿が苦悩している。
 眉根を寄せて、握りこぶしを震わせて、そのつぶらな瞳を今は険しくして、問題を見据えて動かない。
 俺も、少しだけ後悔する。
 悪気は無かった。むしろ善意のつもりだった。それが、この子をこんなにも苦しめるなんて……。
 ああ、できうることなら俺は時間を遡り、この子を苦しめる原因を取り去ってしまいたい……!
 ……などと気分を盛り上げてモノロってみたが、まぁいつまでも従姉妹殿にむーむー唸らせておくわけ
にも行かないので、こちらか水を向けてみる。
「なぁ……ショートケーキとレアチーズケーキ、どっちがいいか決まったか?」
 ……従姉妹殿はじっと見詰めていた二種類のケーキから顔上げると、泣きそうな顔でふるふると首を
振るのだった。
 こんなに悩まれるなら、どっちか片方にしておくんだったなぁ。

 叔父貴に留守番を命じられるに当たり、俺が思ったのは従姉妹殿のことだった。何がいいかは知らないが、
どうやら俺はあの子に懐かれたらしい。らしい、と曖昧なのはどうにも無口な従姉妹殿の口から、その
あたりを明言されてないからであるが、まぁ間違いはないだろう。
 で、懐かれて悪い気もしないし、たまには手土産の一つもぶら下げていくかとケーキ屋に立ち寄ったのは
いいが……あの子の好みを知らないのでと、安全策に走って二種類のケーキを注文してしまったのが
この無間地獄の入り口であった。

 結局、大人の知恵を駆使することにした。要するに「半分こ」である。もちろん、ショートケーキの
イチゴ搭載部分は従姉妹殿に進呈した。
 そして従姉妹殿は、両方のケーキを代わりばんこに食べて、ご満悦だ。
 どちらも半分以上残してる彼女に対し、俺の方はといえばすでに平らげている。
 食後の一服が欲しいところだが、まぁ従姉妹殿の手前、コーヒーで我慢することとする。
 口の中に残る甘ったるさを苦味で洗い流しながら、俺は見るとはなしにテーブル向かいの従姉妹殿の
奮闘を見物した。
 どこか危なっかしい手つきでフォークを駆使し、口の周りを派手に白くしながら、しかし幸せそうにケーキを
頬張っている。 まぁここまでおいしそうに食べてもらえるなら、ケーキも本望と言うものであろう。
 そのまま俺が、おいしく召し上がられて天国にいけたケーキに対し、粗末に扱われて闇の世界に堕ちた
ケーキたちが宣戦布告する大河ドラマを妄想していると、ハタを顔を上げた従姉妹殿と目があった。
 俺の方は、闇の反逆ケーキ軍に王都を包囲された光の神聖ケーキ軍の、その最後の力を振り絞った
無謀な反抗作戦そのものを囮とした、王族脱出作戦の顛末を妄想しながらぼーっと従姉妹殿を眺めて
いたが、従姉妹殿の方は急に挙動不審になった。
 さっきまでの彼女のように眉根を寄せながら、俺の顔とケーキを何度も見比べている。


524:調子に乗ってみますた
10/06/03 23:01:03 PoGhk2Fz
「……?」
 そして俺の脳内で、主人公が母と思っていた人物の死に際に、彼女は王妃の侍女であり自分は神聖
ケーキ軍の王族の血を引く最後の一人であると打ち明けられ祖国復興のための旅立ちを決意する所まで
妄想が進んだあたりで、ようやく従姉妹殿に動きがあった。
 意を決したような表情でケーキをひとかけらフォークに刺すと、
「……ん!」
 それを俺に差し出してきた。
 ……どうやら、そちらをぼんやり見ていたのを、「ははん自分のケーキは食い終わっちまったぜでも
そっちにはケーキまだ残ってるなぁいいなぁいいなぁ欲しいなぁ分けてくんねーかなー」とでも思っていた
モノと考えられたようだ。
 とんでもない誤解である。俺が今考えていたのは、王子の旅立ちに同行を申し出た幼馴染兄妹の、
妹の方のツンデレ台詞だ。
 いやそうでなくて。
「いや、そりゃお前の分だ。気を使わなくていいから食え」
 俺は努めて寛容な大人の態度を装って丁重にお断りしたのだが。
「……んっ!」
 従姉妹殿はテーブルの上に身を乗り出し、ますます強い調子でフォークを突き出すばかりだ。
「……あー」
 これは、断れんか。
 仕方なく俺は身を乗り出し、従姉妹殿の手ずからのケーキを頂戴する。
「うまかったよ、ごっそさん」
 口の中の甘みを我慢しながら笑顔でこう言えた俺を、自分で褒めてやりたい。
 しかしまぁその甲斐はあったようで。
「…………♪」
 従姉妹殿は、にぱっと明るい笑顔を浮かべてくれたのである。


 まぁ、そんな俺の献身に対し、叔父貴夫妻の帰宅後「不規則な時間に余計なおやつは与えないように」
と遠回しに叱られる、と言う形で報われたのは、まぁいいオチがついたというべきだろう。

 そうそう、余談だが。



 王子はその後、救援を求めて和菓子の国に向かうそうだが、まぁ関係ない話だよな。


525:名無しさん@ピンキー
10/06/03 23:18:07 ObbaAsMV
いいねえ

526:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:42:04 X8xW6jsx
いいね。
闇のケーキ軍の指揮官が大人の色気をむんむんに醸し出すザッハトルテで
神聖ケーキ軍のお姫様は順当に甘甘なショートケーキで
ザッハトルテに追い詰められたショートケーキが主人公といちゃいちゃしてるのをみて
嫉妬から涙目になってるところを想像したけど
設定を見落としていたことに気づいて落ち込んだ俺の心が癒された。

ケーキの擬人化ってどうしても体型がふかふかボディーになるのは何でなんだろう


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