無口な女の子とやっち ..
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185:名無しさん@ピンキー
09/10/11 23:06:06 kLMSkj8i
「……へーき? ………痛く…ない?」

186:名無しさん@ピンキー
09/10/12 19:07:08 3h6Xxu8q
>>185
何が?
俺の息子の事だったら、お前の握力50kの手から息子を解放してもらえれば助かる。

187:名無しさん@ピンキー
09/10/12 20:07:13 gqcOcvyk
>>186は不能になりましたとさ、ナンマイダブ…

188:名無しさん@ピンキー
09/10/13 19:08:59 L2iM00Z4
これで避妊を気にせずヤり放題だな。

189:名無しさん@ピンキー
09/10/13 19:14:56 T619s2tR
もはや存在がないのだからやれないのではないか

190:名無しさん@ピンキー
09/10/14 19:27:46 1EwnSrDk
不能男×無口っ娘か。

191:名無しさん@ピンキー
09/10/17 07:18:10 QFJ92kLL
『・・・・・だいじょうぶ』

『・・・・・おにいちゃんだったら・・・・・いいよ』

192:名無しさん@ピンキー
09/10/18 12:17:39 W5Os/3RW
妹が無口なのを良いことに、悪戯しちゃう兄。

193:名無しさん@ピンキー
09/10/18 15:28:12 0i6r9ZwC
兄を拘束してひたすら悪戯し続ける無口な妹

194:名無しさん@ピンキー
09/10/18 23:02:42 fj5W+VOL
「んー、今年もインフルエンザが流行しそうだってなぁ」
「…………?」
「ああ、確かに毎年言われてるけどw
でも今年は従来型に加えて新型まで流行るって言うからな」
「…………!」
「そんなに怯えるなってw
ちゃんと栄養とって、規則正しい生活して、外出中は出来たらマスクして、
外から帰ったら手洗いうがいして、あとは予防接種受けとけば大丈夫だって」
「…………」
「……ん? もしかしてお前……?」
「…………;;」
「こら、目を逸らすな。さてはお前、まだ予防接種受けてないな?
早めに行っとけよー? 新型との兼ね合いがあって、ワクチンも品薄って言うから」
「…………」
「まったく、相変わらず注射嫌いなのなw
 小さい頃はお前に予防接種受けさせるの大変だったよなー」
「…………?」
「あ? 覚えてないのか? まぁ仕方ないか、小さかったし
ホント大変だったんだぞー、俺が痛そうにするとお前が怯えて泣き出すから、空元気で
痛くない振りしてさ」
「…………」
「それでも受けたがらないから、手を握ってやって励ますんだけど、それでもダメでさ」
「…………」
「お? だんだん思い出してきたか? 仕方ないからこんこんと注射受けると風邪引かなくなるだぜー、
って言っても、いままで引いてないから大丈夫!とか言い出すしw」
「…………」
「いやだからそれは去年の予防接種のおかげだって言っても聞かないしよw
最後には注射受けないと風邪引いちゃって寝込んじゃって遊べなくなるぞって脅す羽目になるしw」
「…………!」
「お、思い出したっぽいな? でも、それでもまだダメだったのは覚えてるか?」
「…………?」
「そこまではまだかw くっくっく、いや、そのあとが傑作でさw」
「??」
「それでもダメならってんで、お兄ちゃんは最後の切り札を切ることにしたのですよ。
『……もし風邪引いて寝込んじゃったら、兄ちゃんお前置いて一人で遊びに行っちゃうからな』って」
「!!!!」
「そしたらお前、いきなり泣きながらお注射我慢するから置いてかないでって……
お前は昔っからお兄ちゃんっ子だったよなぁw」
「――!!」
「あ、こら、痛、やめろって! やーめーろーよーw」
「!!!!」

195:名無しさん@ピンキー
09/10/19 19:42:46 j8L0dQgF
>>>194
すみません遅れましたGJです。

で、今年も結局お兄ちゃんと予防接種にいくのですね。



196:名無しさん@ピンキー
09/10/20 19:15:44 2qU25h+K
今年はお兄ちゃんのを注射されちゃうんですね。

197:名無しさん@ピンキー
09/10/21 07:16:42 qkxLPeaq
>>196
その前に、ぐじぐじ泣いている妹にケーキをおごって、妹はデート気分で
〔ニンマリ〕があるのですよ。




・・・お兄ちゃんの注射はみんなが寝た後で………


198:名無しさん@ピンキー
09/10/22 17:29:05 lVDdRU5i
ポケモンHGSSで4番道路に無口さんがいたのに番号交換できなかったorz

何故だゲーフリ!

199:名無しさん@ピンキー
09/10/22 19:21:55 rMPsS0kO
>>198
無口っ娘から簡単に情報を引き出せると思ったら大間違いだ。

200:名無しさん@ピンキー
09/10/22 20:01:45 xFaWFPQh
表情で何が言いたいか読み取れないとな。

201:名無しさん@ピンキー
09/10/23 07:33:33 Oeoz0z6M
愛コンタクトってやつやね

202:名無しさん@ピンキー
09/10/23 09:20:38 e6PA8rBC
>>198
サファリにも無口さんはいるジャマイカ

203:名無しさん@ピンキー
09/10/23 18:06:31 O1ExImWp
主人公を女にすれば操作キャラが無口っ娘なんだぜ!

204:名無しさん@ピンキー
09/10/23 18:35:23 lkDusGdk
お前頭良いな

205:名無しさん@ピンキー
09/10/24 12:09:08 0pk+uzXp
鬼才現る

206:名無しさん@ピンキー
09/10/24 12:21:11 AKjkmb6f
>>203
気付かなかった。
これからは、RPGは女の子の主人公を選ぶよ。

207:名無しさん@ピンキー
09/10/24 19:23:27 BEpKp7qb
>>202
無口&熟女キラーか・・・できるな

208:名無しさん@ピンキー
09/10/28 16:01:14 +3KBBHve
すごく無口で無表情な従妹だけど



たまに会った時は常に後ろをちょこちょこ付いて来ます

209:名無しさん@ピンキー
09/10/28 17:35:24 nrnkaJ1S
>>208
人気の無い所に誘導するんですね。

210:名無しさん@ピンキー
09/10/29 22:34:42 MdWC7w9C
とりあえず膝の上に乗せて頭を撫で回すところから始めようか

211:名無しさん@ピンキー
09/10/31 11:53:05 QuYfK4uT
>>210
いつの間にか胸を撫でてるんですね。

212:名無しさん@ピンキー
09/10/31 12:15:31 JB3ESu1v
>>211
一度だけこっちを振り向くんだけど、「心配ないよ」って感じで微笑み返したら黙ってされるがままになるんですね?
その後悪戯は次第にエスカレート。散々胸を弄られたせいかトロトロになった下着の中に手を入れられて、終いには陰芽を軽く擦られただけで生まれて初めての絶頂を経験しちゃったりするんですね?
荒い息の中、紅潮させた顔と潤んだ瞳でじっと従兄を見つめちゃうんですね?



たまらん!

213:名無しさん@ピンキー
09/10/31 20:51:29 TVykh7mc

「・・・・・・これ・・・・・・すき」

「・・・・・・もっと・・・・・・して」


214:名無しさん@ピンキー
09/11/01 00:21:13 S4WK6ugL
>>212
そこまで妄想しておいて何故(ry

215:名無しさん@ピンキー
09/11/01 07:06:13 NMNSedzY
無口な分きっと口と尻使いと腰使いが凄いんだな
絶頂時は目に見えるくらいビクビクッってなったり。

216:名無しさん@ピンキー
09/11/01 10:38:26 Xy6e17h7
>>213
珍しく喋ったと思ったら変態おねだりとか、止められなくなっちゃう。

217:名無しさん@ピンキー
09/11/04 00:57:54 lbR+CAD4
このいやらしさんめ!

218:名無しさん@ピンキー
09/11/06 02:31:20 Kugg7d3w
エロもいいけど>>210のシチュは普通に和む感じの方が好き

219:名無しさん@ピンキー
09/11/06 16:09:31 4x7TKf06
 木枯らしも吹き始めた秋の土曜。
 俺は一日、従妹の糸麻の相手を頼まれた。
「糸麻はお前によく懐いているからな」
 だそうだ。そんな叔父夫婦は仕事が忙しいとのこと。
 一人家でのんびりも良かったのだが、従妹直々の指名とあっては断れまい。

「……ときお」
 小声で下の名前を呼ばれる。糸麻は結構、無口で大人しい子だ。
 それに比べ、両親は随分と開放的な性格。俺なんかに全面的に信頼寄せてくれちゃってる。
 返事の代わりに頭を撫でてやると、時めいたような表情で見てくる。
 はっきり言って、懐かれてるなんてもんじゃない。

 ああ、悪気はあるとも。でも、最近寒くなったので許してほしい。
「…」
 ここは俺の家のより、断然広い浴槽。そう、今日はこちらにお邪魔している。
 そして温かいお湯の中に、俺と糸麻。二人一緒に入っても問題ない。
 そう―お風呂に入っている訳で。

 少し寒くなったから―と前日に誘ってみると、意外にもOKを貰った。
 ただ恥ずかしいのか、糸麻は一応、黒に黄色いラインの入った競泳水着を着ている。
 俺も一応、水着は着ているんだけど…うん、変態も良いところだね。
 しかし、目の前で可愛い顔して見つめてくれると、何か萌えてしまって仕方ない。
「乗る?」

 そして膝の上に、華奢な体を乗っけた。上半身から下半身にかけて、その感触が応える。
「……温かい」
 強要しているみたいだが、糸麻って俺の言うことだけは、何故か何でも素直に聞いてくれるんだよな…。
 俺はそっと両腕を後から回して、糸麻を抱き締める。
 でも、ぴく、と反応はしても、拒否しない。されるがままというか、されたがっている感じ。

「糸麻…」
「……?」
 向けてくる横顔は、とろんと緩んでいて、のぼせたように赤い。
「このまま、良い?」
「……うん」

 糸麻の小振りな胸に手を置き、そっと揉む。
「っ…」
 ぞくぞくする感覚が、ついその動きをエスカレートさせていく。
「…んっ…!」
 漏れる息遣い。二人きりの時は度々、こうして―弄ぶ。

 上からが物足りなくなり、肩から水着を擦り下げる。
「…ひゃっ…!」
 直に触れる膨らみと、突起。幼いそれに興奮する俺は、多分ロリコン。
 でも、切なく喘ぎ続けながらも、嫌がらない。本当に、従順で可愛い。
 気づけば片手は、糸麻のハイレグラインをなぞっていた。

 正直に言おう。水着姿が見たかった。そしてそれはとてもフィットしていて、俺を駄目にしてくれた。
 もう、止まらない。その成長途上の下に触れ、くにくにと擦る。
「…き、おっ―!」
 やがて俺の名前と共に、果てる糸麻。すぐにぎゅっと包んで、切なさを共有する。
 と、くたびれたはずが、すぐに手首をくいくいしてくる。

 体ごと振り返る糸麻。小さな顔、その目に涙を溜めて、求めるような女の表情。
「……まだ、して」
 我慢のしようがない。俺は、迷わず唇にキスをする。
「ふ…うむ…ん…」
 舌を絡めるキスも、思えば随分と上手くなった。

220:名無しさん@ピンキー
09/11/06 16:11:39 4x7TKf06
 少しずつHなことを繰り返してきて、その度に糸麻の可愛い部分を、見つけていく。
 湯船に半分浸かりながら、俺は張り裂けそうだった自分の竿を、ようやく解放した。
 そして水着をずらして糸麻の小さな入口へと、挿し込む。
「あっ…う…!」
 キスと愛撫で充分に解してから中に、そして徐々に摩擦を始める。

 風呂の中でやるのは、独特の感覚がある。ただやっぱり、気持ち良い。
「んっ…くぅ…うっ…!」
 しっかりと支えにされて、求められる。自分の性感にもどかしく流されながらも、俺と繋がる気でいる。
 最初から、ずっと。そんなにも俺のことが好きなのかと思うと、何か誇れて幸せで、更に熱くなれる。
「…出るっ!」
 
「―ううっ……!!」
 射精の勢いは凄まじかった。それが中にたっぷりと……。
 しかし、もうこうなったら右も左もない。そのまま糸麻の気力が尽きるまで、俺は体を貸す。
「あ…あぁっ……!!」
 変な話だが、最近は俺よりも糸麻の方が、無口なりにだが、積極的にも見える。

「…はっ…はぁ…」
 水着を脱がせ裸にした糸麻の肢体が、行為を終えても絡みついてくる。
 その好意を独占出来る俺は、同じように糸麻だけに全てを許して、糸麻だけを愛す。
「…ときお…だい、すき…っ」
 同意の代わりに、素肌のまま抱き締める。もう一度、優しくキスをしながら―。

 風呂から上がると、体はすっかりほかほかしてしまっていた。
「……」
 糸麻の、程よく濡れた髪が、どことなく色っぽい。
 それに俺の使ったタオルを受け取り、じっと見つめたかと思うと自分の顔に埋めたりして、口数は少ない割にたまにこう、大胆なことをする。
 ただ着替えた姿を見ると、改めてまだ幼い女の子なんだと分かる。

「遅くなったが、昼飯でも食いに行くか?」
「……うん」
 頷く糸麻の仕草から、少し控えめな態度まで、全てが愛らしい。
 家でのんびりしたいなんて、本当は嘘。
 二人きりでいられる時は、いつでもこうして過ごしたい―最近はそう、思うようになった。


おしまい
最近の流れがついツボに入って、こんなの書いてしまいました

221:名無しさん@ピンキー
09/11/06 16:12:58 m1qXN07S
あなたが神か

222:名無しさん@ピンキー
09/11/06 20:31:18 QGp68dgl
入信します。
空中浮遊中の愛撫を教えてください。

あれ?

223:名無しさん@ピンキー
09/11/06 22:01:34 28TW2Tf5

>>219 GJ!!
無口だから好き勝手じゃなくて、好きだからってところが良いですね。





でっ、出来れば続きを・・・。

過去の話を・・・。

224:名無しさん@ピンキー
09/11/07 00:46:15 UUUbm7xl
あなたがかみか
GJッ!

225:名無しさん@ピンキー
09/11/08 18:12:16 MkZJV2Ax
>>219
GJ

226:名無しさん@ピンキー
09/11/13 14:59:38 uHvDfMQN
………………………だいすき。

227:名無しさん@ピンキー
09/11/14 00:17:47 26lSvrYv
俺もだよ

228:名無しさん@ピンキー
09/11/14 15:07:31 +aOdRvLO
>>226
昔、日本テレビでやってた深夜番組を思い出したよ・・・


229:名無しさん@ピンキー
09/11/14 17:58:26 YJgXMgmW
cmに入るときのアイドルとかの一言か。

230:228
09/11/15 08:16:36 5ynkETXV
>>229
よーおっさん!!
俺もだけど・・・

木立から振り返って
・・・・・だ・い・す・き

231:名無しさん@ピンキー
09/11/17 02:33:57 0wvYZkCy
ある夕方のショッピングセンターのフードコートの光景
制服がかわいいと評判の高校の制服を着たカップルが話していた

「で真白、本日相談したいことって何だ?」
もじもじ
「・・・。」
「制服のスカートを長くしたいのか?」
こくり
「そんなことしたら生活指導の鬼の木村に目をつけられるぞ。」
ふるふる
「・・・。」
「スカートがちょっと短いのを入るまで知らなかった?そんなの先に知っておけよ。」
「・・・。」
「わかったわかった、でもな書道部目当てで受験勉強に集中するのはいいがもうちょっと調べろよ。」
「・・・。」
「別に怒ってなんてないぞ。ところで体操着や水着は恥ずかしくないのか?」
「・・・・・・。」
「運動するための服だと割り切っても疑問なあるのだが。」
「・・・、・・・。」
「わかったわかった。」
「・・・。」
「さすがに手伝えんが、呼び出されたらついて行って説明する。」
こくり
「まあ、がんばれ。」
なでなで

後日、ほぼ同時刻に同じフードコートで
「・・・。」
「お礼でぶっかけうどんをおごってもらっていいのか?」
「・・・。」
ずずず
「いいんだな。」
こくり
「あの木村ですら校則違反だが短くされるよりましって言ってほめたぐらいだからな。」
「・・・。」
「まあな。俺もちょっと絞られたけどな。」
「・・・。」
「なんだ?」
「・・・・・・・。」
「俺は真由がかわいければどんなスカートでもいいさ。」
「・・・?」
「本当だ。」
「・・・・・・」(赤面)
「ただし俺の家の中だけだぞ、改造前ですら廊下を歩いてるだけで恥ずかしがってたくせに。」
「・・・。」

232:名無しさん@ピンキー
09/11/18 17:47:46 ZRMOIikh
全く、無口っ娘は行動が大胆だぜ。

233:名無しさん@ピンキー
09/11/21 21:35:28 hromEjqh
無口だけど甘えんぼうな従妹とスキンシップ

234:名無しさん@ピンキー
09/11/22 15:37:48 Agxl3NLo
萌えた

235:名無しさん@ピンキー
09/11/24 15:02:18 WxA4Gdl4
「ん」
「ああはいはい、すぐにメシできるから待ってなー」

「……ん」
「今レポート追い込みだからごめんなー。終わったら遊んでやるから」

「…………ん」
「だからごめんってー。何でも言うこと聞くからそんなに拗ねないでくれよー」

「ん……」
「……ん、っと。相変わらずキス待ちの顔可愛いなー、お前……って痛い痛い!」

236:名無しさん@ピンキー
09/11/24 16:57:03 ehptpCXA
>>235
短いくせに・・・





萌えました

GJ

237:名無しさん@ピンキー
09/11/25 03:08:12 zz/c2C6/
>>235
無口っ子の微妙なニュアンスの差がコミュニケーションのキモなんですねわかりますw

238:名無しさん@ピンキー
09/11/27 15:36:06 bXE+ShFt
エロなしで投下します

239:名無しさん@ピンキー
09/11/27 15:36:36 bXE+ShFt
 僕が隣のおばさんの家に呼ばれたのは、十分前。
 適当に準備をして徒歩約二十秒。
 ぴんぽーん。
「あら、いらっしゃい。助かるわ」
 そう言っておばさんは僕を歓迎する。
 用件はこう―”あの子、また引き篭もっちゃって”。
 別に学校にはちゃんと行っているし、外から見れば問題はないように見える。
 けど、雪花菜(きらず)は日常生活によくストレスが溜まるらしく、そんな時は部屋に篭る。
 彼女の部屋の前まで来て、いつもの掛札。

 どぅ のっと でぃすたーぶ

 平仮名でお茶目に書かれているけど、一日中この状態がザラでは体が心配だ。
「じゃあ私は買い物に出かけてくるから、あとはよろしく」
 昔から家族ぐるみで付き合いがあるからと言っても、おばさんも調子良いなあ。
 確かに、頼まれるのも分からないでもない。
 とん、とん。
「夕尾(ゆうび)だけど、雪花菜ちゃん?」
 …とた、とた、とた。
 がちゃり。
「……ぁ」
 やや小柄な雪花菜が、僕の目に映った。
 長い髪をツインテールにしている彼女は、いつ見ても可愛いと思う。
 そう、こういう状態の時も、僕とだけはコンタクトをしてくれる。
「―っ」
 無言のまま、抱き着いてきた。
 僕も抱き締め返すと、その体は温かくてふかふかしている。
「おはよう」
 言ってみれば、僕は彼女の精神安定剤みたいなもの…かな?

 手を引かれて部屋の中に入った僕。
 雪花菜が何をしていたのか、分かった。テレビゲームだ。
 それもどうやら、今日は彼女の大好きなレースゲームを一緒にしたい―ということらしい。
 彼女は、こういう時に用意して、今ではすっかりお馴染みになった僕用の座布団を敷く。
 ぽんぽん、と合図をして僕を待つ姿が、健気で愛くるしい。
 ありがたく座らせてもらうと、すぐに彼女も隣に座ってコントローラーを握らせてくる。
 嬉しそうな顔。一緒に遊びたかったんだと、言わなくても滲み出るくらいに。
「……じゃ」
 そして、一転して画面に釘づけになる視線。
 ボタンを押す。設定を決めて、使う車種を決めて、コースを決める。

 なう ろーでぃんぐ

 すぐにレーススタート。
 雪花菜は普段からこれをやっている。なのでそこそこ速い。
 ただ僕もたまに付き合ってあげている訳で、完全な初心者って訳じゃない。
「―!」
 白熱する展開。横目でちらっと彼女を見ると、真剣そのものなのが少しおかしい。
 彼女は意外とよくいるタイプだけど、加速の時は身を乗り出す。カーブの時は自分も一緒に体を傾ける。
 ―のめり込んでいる、って言うのかな。他のゲームでもそう。
 やっぱり、見ているとおかしい。そして、見ていて飽きない。
「あー…負けちゃった」
 僅差で競り勝つと、僕の方を見て、零れそうなほどの笑顔。
 彼女は意外と負けず嫌いで、時には適度に手を抜いてあげることが要求される。
 本気になって対抗は大人気ない…けど、したこともあって、そこでムキになる姿は可愛かった。
 でも、彼女のストレスになっては元も子もない。
 それに、年下の子をいじめるような感覚で、ちょっと気が引ける。
「……えへ」
 にっこりしてもう一度、と人差し指を立てる彼女。
 僕と彼女は同い年。けど、彼女の方が少し、子どもっぽい。

240:名無しさん@ピンキー
09/11/27 15:38:19 bXE+ShFt
 しばらく遊んで、休憩。
 一時間置きに休む。その辺は几帳面なのか、雪花菜は徹底している。
「今日は、ご飯は食べた?」
「……」
 途端に俯いて、首を横に振る彼女。
「ダメだよ。ほら、おばさんがお弁当作ってくれてるから、食べないと」
 そう言って、来た時に手渡された弁当箱を掌に。
 すると彼女は、しゅんとしつつも頷いてくれた。僕は頭を撫でてあげる。
「―ぅ」
 表情はまたすぐに明るくなった。それどころか、気持ち良さそうに目を薄く閉じて、声を漏らす。

 らんち たいむ

 そんな可愛いフォントで描かれた弁当箱を開けると、中にはとても彩りが良く、美味しそうなおかずが並んでいた。
 おばさんこんなに料理が上手なのに、普段あまり食べないなんて勿体無いなあ……。
 とん、とん。
「何?」
「……」
 雪花菜は必要な時以外は、言葉を紡がない。特に、僕と一緒の時は。
 何故なら、一つ一つ口にしなくたって、分かり合えるから。
 元々、彼女は体はそれほど強くなくて大人しい子。
 それで篭りがちで、話し相手もいなくて…そんな要因が重なって、無口になってしまった。
「…一緒に食べてほしいの?」
 こくり。
 でも、一緒にいる時間が長いと、こういうことも自然と感じ取れるようになってくる。
 小さなケース入りのお箸を手にとって、まずは彼女が一口。
 ごくん。
 そして僕に、箸を渡してくる。
 交互のやりとりは、そのまま何度か続く。これもいつものこと。

 食事が終わると、雪花菜は少し元気になったのか、部屋を出てお茶を用意してくれた。
 ただし、僕も手伝ったけど。
 こく、こく。
 部屋で二人、お茶を飲む。
 ゆっくりと、流れる時間まで遅くなるくらい、少しずつ飲んでいく彼女。
 どうしてこんなに可愛いんだろう―って思いながら見つめていると、異変。
「! …けほっ、げほ」
「大丈夫?」
 むせた彼女に寄り添うと、心配いらない―そんな表情で笑ってくれた。
 安心して視線を外すと、テーブルの上に写真立てと、添えられた青色の造花。

 ふぉーげっと みー のっと

 勿忘草。
 直訳”私を忘れないで”。
 僕と雪花菜、二人で写った写真には、小さくその言葉が書かれてある。
「…」
 彼女を、時には放り出したくなることだってある。
 頼られすぎていて、逆に恐いとも思う。僕がもしいなくなったら……。
「―っ!」
 僕の余所見が過ぎたのか、彼女は不機嫌そうに、腕を回してきた。
「雪花菜?」
「……」
 温もりが少し、熱っぽいように感じ始めて、彼女の顔も少しだけ、赤い。
 求めに応じて、そのまま抱き合う。
「……ふぁ」
 吐息と一緒に、体が寄りかかってくる。僕に、全て委ねるようにして。
 包み込んで、支える。頬擦りされると、少しくすぐったい。
 大丈夫。心配しなくても、きっと上手くいく。僕も、彼女も―。
「ただいまー」

241:名無しさん@ピンキー
09/11/27 15:39:21 bXE+ShFt
 びくっ!
 そんな反応と共に、慌てて僕の体から離れる彼女。
 でも、どんなに平静を装っても、顔が赤いよ? 僕もだけど。
 
 僕は隅に縮こまる雪花菜に近づいて、手を差し出す。
「一緒に、居間に出よう?」
「……」
 こくり。
 手を繋いで、立ち上がる。さあ、ドアを開けて。
 するとちょうど、買い物バッグをいっぱいにしたおばさんが、そこにいた。
「あら、夕尾くん…それに、雪花菜?」
「……」
 おばさんは、申し訳無さそうにしている彼女を見て、安心したように笑った。
「ありがとう」
 そして僕と手を握ったままの彼女に、近づいて―。
「夕尾くんと、仲良くね」
 …こくり。

 からめる ぷでぃんぐ
 
「美味しい」
 おばさんと雪花菜が作ってくれた、手作りプリン。
 僕も少し手伝ったけど、これは癖になりそう。レシピメモしようかな。
 るるるるる、るるるるる。
「私が出るわ」
 おばさんは席を立って、棚の電話を取る。
「……?」
 話が終わる。何やら、楽しそうな雰囲気だった。
 がちゃん。
「―ごめんなさい、安永さんからのお誘いだわ。少し出かけるわね」
 こく、と雪花菜が頷くと、おばさんはすぐに準備を始める。
 プリンを食べ終えた時には、軽いお洒落が出来上がっていた。
「行ってきます。夕尾くん、良かったらもう少しだけ…雪花菜の相手をしてあげてくれないかな?」
 …本当に、調子良いなあ。でも、了解です。
「……」
 そして再び、僕と雪花菜は家に二人きりになる。
 不意に彼女の方に目が行く。彼女も、僕を見ていた。
 笑った。こちらも思わず、顔が綻ぶ。
「……ゆー、び?」
 何に気づいたのか、ぱた、と椅子から下りると、彼女は僕の元に。
 手には、新しいプリンを持って。
「……はい」
 自分のスプーンで表面を掬うと、僕に食べさせてくれた。
 おかわりは、二人で分けっこということ。

 しかし最後の一口に、暗黙の駆け引き。
 僕は雪花菜にあげたいし、彼女は僕に食べさせたそうにしている。
「……!」
 何かを思いついたように、彼女は嬉しそうにそれを、自分で食べた。
 ホッとした僕―そのタイミングを見計らっていたのだろうか。体を寄せて、頬に触れてくる手。
 顎をそっと下げられたかと思うと、彼女は目を閉じて、キスしてきた。
「ちゅ……」
 甘く絡みついてくる舌。凄く積極的なアピールに、思わず腕が、その体をしっかりと抱き締める。
 切ないくらいに気持ちが昂って、熱はキスをより扇情的にする。
「ぷ、はぁ……」

 すうぃーと きす

 そっと顔を離して、どきどきしながら余韻に浸る。雪花菜もまた、同じように。
 可愛い顔が、僕を見上げてきた。

242:名無しさん@ピンキー
09/11/27 15:41:02 bXE+ShFt
「美味しかったよ、雪花菜」
 そう言うと、彼女はご機嫌な笑顔を見せて、僕の胸に埋まる。
 高鳴る心臓の音が、感情から心の奥底まで、全てを彼女に筒抜けにしてしまいそう。
 でも、凄く温かくてふかふかで気持ち良くて、愛しくて切なくて、苦しいのに止まらない。
 ただ優しくその体を抱いて、無心に抱いて、時間を止めたい。
 そうしたいだけ。
「……ありがとう」
 彼女が胸の中で、そう言った。消え入るような声だけど、優しかった。
 僕と会う日、どんな些細な用事でも必ずこう言う彼女。
「そんなこと、言わなくて良いよ」
 当たり前だから。本当はずっと、傍にいてやりたいくらいなのに。
 そしてまた、顔を覗かせてきた彼女の唇を、奪う。
 僕は雪花菜が好き。どうしようもないほどに。
 可愛い人を守りたい、という気持ちを、こうやって理解していく。
「……は、ぅ」
 キスを終えた僕らは、部屋に戻る。
 そしてベッドに二人で、横になる。限りある時間の中で、幸せに包まれて。
 向き合って、丸くなって、互いに指を絡ませる。額をくっつけて、目を閉じる。
『……』
 無言のまま儀式のように、心を落ち着けて意識を休める。
 安らかに、彼女だけを感じられるように。

 そのまま少しお昼寝をして、起きた。
 少しだけ早く目が覚めた僕を、追うように意識を取り戻す雪花菜。
「元気に、なった?」
 横になったまま、こく、と彼女は頷いた。
 体を起こして、もう一度抱き締める。
「……ふ」
 その意識が、僕の頭の中に流れ込んでくるようだ。
 ”ここにいてくれて、うれしい”―と。

 …… あい らぶ ゆー

 その後、二人でもう一度ゲームをして、少し遅くなりそうなおばさんの為に、家事と夕飯作りを手伝った。
 ほとんど雪花菜が自発的にやったんだけど、おばさんはとても喜んでくれた。
 一緒に食事をして、それから僕は、やっと任を解かれる。
「……ばいばい」
「うん。また明日」
 名残惜しそうな顔をされると、ちょっと辛い。家は隣なんだけどね。
 そして人前だとべたべた出来ないのは、僕も彼女も同じ。だから、思う。
 次、また呼ばれるのはいつだろう? 勿論、気兼ねなく来て良いとは言われている。
 でも、彼女が元気のない今日みたいな日でもないと、二人で気兼ねなく、触れ合えない気もする。
 看病してもらう優しさが、たまに恋しくなるような、そんな感覚と少し似ている?
「ただいま」
 家に戻り、簡単に親と話をして、部屋に戻る。
 とりあえず、元気になって良かった―部屋に置いたままにしていた携帯に、そう打ち込んでメールする。
 すぐに返事が返ってきた。
 ”だいすき”。
 
 僕たちはストイックな恋愛をしていると、仲の良い友達に言われる。
 体も、たまに欲を払えずに熱くなることがある。男と女だから、仕方ないかもしれない。
 けれど、雪花菜は特別。恋人であり、家族のような存在でもある。
 関係に波が出来る時もあるけど、とても大事な人であることに変わりはない。
 だから、今現在の制約ある中で、精一杯愛し合いたい。徳に背かず、慎ましい仲で良い。
 それでも見出せる幸せに満足出来るほど、彼女が好きだから。
 ”僕も大好きだよ”。
 短い中に、思いを込めて。


おしまい

243:名無しさん@ピンキー
09/11/27 16:19:00 AERF1RJE
ものすごくGJ!!!

244:名無しさん@ピンキー
09/11/27 16:56:23 7QFD2mbS
>>241
GJ

245:名無しさん@ピンキー
09/11/27 17:39:21 QpkhxlS7
>>242
GJなんだぜ 

246:名無しさん@ピンキー
09/11/27 21:51:15 dEMJGYvS
>>246
GJ!
美味しいプリンと一緒で、甘さの中にほんの少しほろ苦さが・・・



247:246
09/11/27 21:56:31 dEMJGYvS
まちがいた・・・
>>242
とにかくGJです

248:名無しさん@ピンキー
09/11/28 19:05:44 dnOESaRJ
普段はお喋りなんだけど、セックスのときは恥ずかしくて無口になっちゃう女の子。

249:名無しさん@ピンキー
09/11/28 20:22:33 1DI9FKOZ
そ、それは・・・!?
マグロフラグですよお兄さん

250:名無しさん@ピンキー
09/11/29 11:40:11 u6bKIvuF
必死に声を殺してフーだのハーだの言ってるのが良い

251:名無しさん@ピンキー
09/11/29 15:13:07 7Kd0o0Ns
何か咥えて声我慢してるのとかいい

252:名無しさん@ピンキー
09/11/30 17:46:48 4KfYJ7tZ
>>251
女の子自身の髪とか。

253:名無しさん@ピンキー
09/11/30 20:31:37 7EF2o6+j
手とか肩とか枕とか

254:名無しさん@ピンキー
09/12/01 02:04:10 bEF1Gww9
スカートの裾とか……

255:名無しさん@ピンキー
09/12/02 17:42:03 MEX59daA
ずっーと、キスしてる


256:名無しさん@ピンキー
09/12/02 18:06:35 Gf+JcV0F
ブルマと巻物を即座に連想しない貴様らに絶望した!

257:名無しさん@ピンキー
09/12/03 06:09:27 f9dPnS+9
勢いで書いたので投下します

エロ無しなのと、完成度に一切期待しないで下さい

258:深夜の通い子・1
09/12/03 06:10:45 f9dPnS+9
 深夜二時くらいだろうか。俺は徹夜の作業で腹が減ったので、コンビニに買い物に出ていた。
 ま、ちょっとした創作の合間の、息抜きだ。顔に受ける冷たい風が、気持ち良い。
 今は帰り道。暗い街路を歩いている。人気はなく、静かな場所。
 昼間はしっかりと動いている信号機が、点滅していた。
 この辺りは飲み屋がある訳でもなし、出歩く人がいないのも頷ける。

 と、そんな闇に紛れて、街灯の光が照らす妙な姿。
 団地暮らしの俺の家は二階の一号。そこまで上る階段横の影に、蹲るようにしているのは、人だ。
 膝を抱えて、迷子で困るほど小さい子にも見えないが、じゃあ家出の類かな…。
「おい、どうかしたのか?」
 こんな言葉かけるだけでも最近は痴漢呼ばわりされたりするから、恐いんだが。

 瞳がその姿をしっかり映し始める。
「…」
 何と言うか、擬態のように闇に隠れている感じだ。
 無意識に通り過ぎたら多分、気づかなくても不思議はない。
 着ている服がまたどうも全身黒尽くめっぽく、顔まで隠してたらそりゃね。

「もしもし? 何だ、親と喧嘩でもしたのか?」
 尋ねてみるが、返事なし。
 俺は興味本位に近づいて、ものの試しにちょんと触れてみた。
「!!」
 その瞬間、まるで凍りつくような恐怖を覚えた。

 思わず後退った。その視線に入ってきたのは、見開かれた鋭い眼。
 俺は睨まれた。まるで、野生を帯びたような目だ。そして同時に、少女の顔立ちを見た。
「ごめん、な」
 危険を感じた俺は手で詫びつつ、もう一歩引き下がる。
「……」

 彼女は再び、俯いて顔を隠してしまった。
 だが、可愛い顔をしていた。それがこんなに気の立て方するなんて、一体どういう目にあったと言うのか。
 訊きたいが、今度は本当に噛みつかれでもするかもしれないと思うと、少し恐い。
「……」
 黙る相手に、黙って俺は……家に帰ることにした。

 朝、外を見ると彼女の姿はなかった。
 いくらこの辺は温かいにしたって、深夜に黒の、それも薄着っぽい格好はありえない。
 帰るべき場所に帰ったと、そう思ってこの話は終わりだな。
 丑三つ時―見たのは現実か幻かは不明だが、徹夜なんてするもんじゃない。
 そう思いつつも、つい居心地が良くて仕事も捗るからなぁ。

 そして夜は前の日と同じように、深夜に買い物。
 この前の場所に、彼女はいなかった。てか、あんなややじめじめした所に座り込むって、やっぱりありえない。
 ドラッグストアにでも行ってみるか? 幻覚が見えるとか言えばまず医者にかかれ、って返ってきそうだが。
 で、いつものように買い物をして、暗い団地内に戻って来る。
 人気がないのは相変わらずで、嫌なものに遭遇しそうな雰囲気ではある。

 嫌なものと言っても、妖怪とかそういう系とは限らない。
 むしろ不良どころか悪化した若い連中がここ最近問題になっていて、そっちの方が恐い。
 ラクガキ、花火、果ては通行人狩りまでし始めたとかいう噂もある、困り果てた子らだ。
 一時期警察の巡回で見かけなくなったのだが、どうもまた不穏な動きがあるらしく……。
 大きな公園を通るのと、コンビニという溜まり場に通うのも本気で考えものと言える。

 長くなったが、そんな訳で今の夜の散歩もいつまで続けられるのやら。
 こういう―って、あれ?
 昨日とは違うが似たような影溜まりに、似たような人影。
「……」
 しばらく見つめてから、確信した。まただ、と。

259:深夜の通い子・2
09/12/03 06:11:51 f9dPnS+9
 何? 虐待でも受けてるのか? 通報すべきなのか俺は。
「なぁおい…冗談だろ?」
「……」
 ダメだこりゃ。関わり合いにならない方が、良さそうなんだが…。
 とりあえずもうしばらく様子を見つめていたが、一向に動こうとしなかった。

 また諦めてその場を離れて、翌朝。
 ―やはりいない。
 そして深夜。徘徊と思われたらあれなので、控えめに似たような場所を探す。
 ―いた。
 夜にだけ現れる、黒尽くめの謎の少女。

 それから何度か俺は深夜、会う度に彼女に挨拶をした。
 彼女はずっと無言だったが、声をかけるたびに、こちらを見てくるようにはなった。
 正体不明だが、深入りはしない。ただ軽く「おっす」なり、「また会ったな」なり。
 自分は何やってんだか。ただ、徐々に興味を持たれてきたのか、会う場所も最初と同じ、俺の部屋に一番近い位置に固定され始めた。
 そして不思議と、他に嫌な遭遇はしないで済んでいる。

 十数日経った。二日ほど家を空けていたので、やや気にはなっていた。
 深夜二時頃、用事はないがそこまで出てくる。少しどきどきしながら、階段横を覗く。
「……」
 いた。じゃ、ちと挨拶してみよう。
「よっ!」

 目の前に現れた俺に、びくりと反応してくれたいつもの少女。
 こっちを見ると、いつもはそれ以上の興味を示さないのに、立ち上がって近づいてきた。
「……何処、行ってた」
 初めて聞いた声と、その言葉が心にすっと、差し込むように響いた。
 見れば顔をむくれさせて、まるで心配していたんだぞとでも言うように、不機嫌に俯いている。

「仕事」
 俺は簡潔に答えた。可愛いとこあるなと思う反面、まだどこか(こいつが?)って気持ちがある。
「……」
 黙ったまま、時間が過ぎる。お互い、こんな場所で立ち尽くしても良くない。
「家に来るか?」

 こう付き合いが増えてくると、あまり気負いを感じなくなるもので、俺は大胆にもそんな言葉を口にしていた。
 そして、え? という表情で固まっていた彼女もまた、しばらく考えた末に頷いた。
 さすがに何だ、人の子としては扱いが行き過ぎている。親がまともとは思えないし、今更だが悪い判断じゃないはず。
 それにご近所さんにやんわりと訊いてみても、心当たりの人物さえ浮かんでこない訳で。
 どうするか。一応、こうするしか思い浮かばないよ。

 とりあえず部屋に上げて、とそのまえにやや汚れた服を簡単に叩いてあげて、バスタオル巻いた座布団に座らせてやる。
「何もない家だが、何か食うか飲むか?」
「……」
 緊張しているのか、不安そうにしている少女。
 その緊張を解してやろうと思って、近づいて訊いてみた。

「ん? ―て、わっ!!」
 顔をぐっと近づけたのが、まず間違い。
 驚いた。また威嚇してくるなんて思ってなくて、尻餅突きかけた。
 恐い顔をして、俺を睨む彼女。何で? 俺は一応そのつもりだったけど、優しさが足りなかったの?
 しかし中学生くらいの身長に華奢な体格、素は可愛い顔して大人ビビらせるって…やっぱり只者じゃない。

 その日は結局会話にならず、更に数日経過。
 ただ、徐々にだが関係はエスカレートしつつあった。
 夜九時。ぴんぽん、と来客を告げる音がしたので、俺は玄関に行き、ドアを開ける。
「……」
 目の前に、そんな少女が、立っている。

260:深夜の通い子・3
09/12/03 06:13:10 f9dPnS+9
 彼女は、日が暮れてから家にやってきて、夜明け前に帰って行く。
 正体がウワバミとかでないことを祈っているが、未だ素性を明かしてくれない。
「俺は岸上洋人と言います」
「……」
 食べるものは食べ、飲むものは飲む。しかし、無口だ。

 ちらちら俺は、彼女の様子を見る。どういうことを考えているのか、ってことで。
「……」
 大抵無言で、俺の方を見ている。ただ一定距離以上に接近すると、以前よりはましになったが、ぎろりと睨んでくる。
 さて、この先どうしたもんだろ。誰かに相談……しようがないし。
 家に入れたのは、いろいろと迂闊だったかもしれない。甘く見てた。

 しかしこういう子が身近にいると、悪戯心が湧いてくる。
 もう少し興味を引こうと、俺は今日、彼女に構うのをやめてみることにした。
 てか普段は作業してる時間だが、目の前で横になってみよう。
 という訳で、どうやら好きっぽいチキンフライを二、三本作ってあげた後、俺は布団に入る。
 眠くないが、寝たふり。

 数分して、場所を移動するような物音が聞こえる。
 まるでペット観察だなこりゃ、とか思いつつ、じっと目を瞑ってどう出るかを見る。
「……」
 数十分。何か、きつい。しかし面と向かって尋ねるのも、今更どうなのか自信がない。
「……」

 もう数十分経った頃だろうか。さすがに本気で眠くなり始めてきた時のこと。
「……洋人?」
 俺の名前を呼ぶ。これって初めてだろうか。
 更に少し経って、近くに寄ってきたのが分かった。畳の軋む音が、すぐ近くまで。
 よし、もう少し粘ろう。鬼が出るのか蛇が出るのか、楽しみだ。

「……勝手に、寝るな」
 体を揺すってくる。何か…面白い。
 しかし反応しないのが分かると、止まる。さぁどうする?
「……」
 離れていった。薄目を開けて見ると、いつもの座布団の上。

 つまらなさそうにしているのが、分かった。
「おはよ」
 呼びかけると、すかさず振り向く。
「……」
 そして俺が起きているのを確認してから、ぷい、とそっぽを向いてしまった。

「どうかしたか?」
 無視されてる。構ってほしい時に構ってくれないもんだから、拗ねたのか。
 普段存分に喋らない癖に、俺がやるとダメとか、とんだへそ曲がりだ。
「なぁ」
 しかしそんな部分も含めて、気になる。

 唐突に、古内東子の曲を思い出した。
 何か彼女から感じるのって、”裏腹”っぽいんだよな。
「言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってくれた方が、俺は嬉しいんだが」
 反応なし。もう少し、やんわりと優しく言った方が良いのか?
「…一応あれだ。もっと上手くお前のことを、分かってやりたいと思ってる。それは、ダメか?」

 彼女は黙って立ち上がると、俺を一瞥して、部屋から出て行った。
 そして玄関のドアが開いて閉まる音がする。
 ……嫌われた? 何だそれ。
 発言が拙かったのか、それとも本気で怒ったのか?
 俺は訳が分からず、彼女の座っていた座布団を見つめていた。

261:深夜の通い子・4
09/12/03 06:14:15 f9dPnS+9
 次の夜。寝不足の続いていた俺は、遂に倒れた。
 気づいたら、もう昼に近い朝だった。付けっ放しの照明の下で、呆然としてしまう。
 創作より何より心配なのは、彼女が来たかどうかだ。俺は呼び出しを無視してしまったかもしれない。
 最悪のタイミングだ。家の前で放置なんて想像するだけで顔が青ざめる。
 相手が普通の人なら、電話なりメールなりでせめてもの弁明の余地もあろうが、彼女は言わずもがな。

 それから丸一日、俺は罪悪感に苛まれた。
 あのまま愛想尽かして来ていなかったら、その方がまだ良い。
 ”最も”と言って良いかもしれない。やってはいけないことを、やってしまった。
 そして取り返しがつかない。彼女はもう来ない―そんな気がした。
 こんな時に寝過ごしてしまった、俺は救いようのない阿呆だ。

 夜九時。いつもの音は、鳴らない。
 十時になっても、十一時になっても、日付が変わっても。
 僅かな望みが、段々と失われていく。時間が経つのは早く、そして落ち着かない。
 俺はいてもたってもいられなくなり、家を出た。
 静かな夜。

 最初に出会った場所に、勿論彼女はいない。
 俺は階段に腰を下ろして、真夜中の外で、更に待った。
 来なくて当然。ただ、自分への罪滅ぼしの意味も込めて、ただひたすら待つ。
 寒かった。こんな時期一人で、あんな薄着で通っている。
 風呂にでもいれてやりゃ良かった。嫌がっても、もう少し俺が積極的なら、違ったのかもしれない。

 二時を回り、さすがに段々と気持ちに諦めが出てきた。
 一旦、何か熱い物でも飲もう。そしてもう少しだけ、外で待つかどうか―。
 俺は一人でいつものコンビニに行き、缶コーヒーを買った。
 チキンフライが目に留まった時、気持ちがぐらついたが、もう今日は買わない。
 外でコーヒーを飲み干し、空き缶入れに投げ込んで、道を戻る。

 行きと、空気が何となく違っていた。第六感が、その辺は不思議と働く。
 家の少し前に、青年が数人、固まっていた。
「へへ…お子様が深夜出歩いちゃダメだろ。なぁ?」
「お灸据えてやらねーとな」
 誰かが絡まれている。

 相手が数人。しかも相当に柄が悪い。
 下手に入ればこちらの身の安全が保障されない。携帯で警察呼んで、俺は迂回して帰るか。
「…!」
 しかし、囲まれた先にある姿を見ると、そんな考えは消し飛んだ。
 感情が反射的に、彼女を助け出そうと体を動かしていた。

「やめろ!」
 今にも危害が加えられそうだった。迷わず制止する。
「あぁ?」
「何だぁ、連れか?」
 三人が、俺を睨んでくる。

「どっちにしてもダメじゃん。こんな場所に置き去りにしてよぉ」
「……あうっ!」
 小さな悲鳴が、何をされてのものか。
「やめろっつってんだろうがよ!!」
 宣戦布告。脇目も振らずそいつに、殴りかかった。

 多勢に無勢だった。自分の力のなさを痛感する。
 一発与える前に、三発どころじゃない。殴る蹴るで一方的にやられる。
「ばーか」
「ぷっ…人間サンドバッグだな」
 もう、壁にもたれるのが精一杯だった。酷いやられようだ。

262:深夜の通い子・5
09/12/03 06:15:24 f9dPnS+9
 持ち物物色されて、無様な姿。
「こいつが持ってんの、小銭だけだぜ」
「使えねーでやんの。じゃ、代わりにカノジョ、貰ってっか」
 体のあちこち痛くて、重い。口元に温かいものを感じる。
「……洋人!」

 彼女が呼んでいる。けど、もう助けられない。
 温かいものに触れると、それは血だった。鼻、強打したせいか?
「心配すんなって、大事にしてやっからよ?」
「それとも、ここで返してやろうか? 目の前で遊んじゃうけどさ」
 ……そんなことしたら、ぶっ殺してやる。

 彼女に向かって、手を伸ばす。こっちに来い。
 しかし、目の前に立ったまま、動かない。俺をじっと、見つめている。
「弱い奴は嫌いだってよ。賢いなー」
 へらへら笑いながら見ている三人。
 と、俺の手に、ゆっくりと触れてきた。

「おっと、ダメだぜ。お前は今から、こいつの目の前で可愛がることに決めたからよ」
 肩を掴んで、引き戻される彼女。
「良いねー、ぞくぞくするわ」
 しかし、そんな言葉に動じていない。と言うより、耳にすら入っていないようだった。
 ただ触れた際に指に付いた俺の血を、凝視。

 凍りつくような恐怖―何故か今、それを感じた。
 初めて会った時のそれと似ていて、しかしより強い。
 彼女の表情が、変わった。静かに、落ち着いた……怒り。
 焦点すら曖昧に空を睨み、そして口を開く。
「―洋人、こんなにして、許さない…!」

 その刹那、ぱん! と何かが破裂する音。
 不動の彼女を取り囲んでいた三人だけが、爆発でも受けたように跳ね飛ばされる。
「うおぁっ!?」
 その衝撃は、俺にも届いた。突風のような圧力。
 人の力じゃない。やっぱり彼女は―。

 それでも立ち上がり、集まる三人組。
「ち、くしょ…っ!」
 と、静かな場所に、微かに聞こえてくる音。
「! …おい! これ、サイレンじゃねーか?」
「…やべっ、逃げるぞ!」

 誰かがきっと、通報してくれたんだろう。
 すぐに駆けつけた警察。面倒事は嫌だが、体が動かなかった。
 彼女は、いつの間にか姿を消していた。という訳でそのまま俺だけ、警察と病院を梯子することになる。
 あれこれ訊かれたが、俺なりに脚色して答えておいた。
 ややこしくなるので、とりあえず彼女の存在はないものとして。

 青あざに擦り傷など、軽い怪我ばかりだったのは不幸中の幸い。
 財布取られたが、小銭だけしか入っていないがま口だから、これも運が良かった。
 しかし、まぁ当然だが怒られた。こんな時間にふらふら出歩くなと。
 あーあ、これから事ある毎に何か言われる訳ね。しばらく深夜の外出も止めざるを得ない。
 それでもやっと家に帰って来られると、安心から気が抜けてしまった。

 俺は疲れからそのまま眠り、昼過ぎに起きた。
 狂いに狂った生活リズム。睡眠時間を削ってまで、創作に入れ込むのは無理がある。
 一段落ついたら、元に戻そうか。昼間の生活もあることだし。
 ただ、目が覚めた俺の頭に最初に浮かんだのは、未だ名前すら分からない彼女だった。
 多分…会いに来てくれていたんじゃないか?

263:深夜の通い子・6
09/12/03 06:17:54 f9dPnS+9
 夜九時、俺はいつものように、待っていた。いろいろと、心を決めて。
 そして来た。ぴんぽん、と普段のように鳴らして。
 玄関のドアを開けると、確かに彼女がいた。
「……」
 何て言えば良いか、というより何とも言えない気持ちになった。

 その顔は、不安そうに見えた。
「……洋人」
 だが視線を逸らそうとしない。胸が少し、苦しい。
「……洋人?」
 何だか、今にも泣き出しそうな気がした。

 俺は近づいて、その体を包み込んだ。
「ごめんな…」
 そうしていると、浮ついて散り散りだった感情が、全部収束されていくようだった。
「……洋人」
 腕が、俺を受け止めてきた。何も考えられず、ただ心地が良い。

 彼女を、俺の部屋に入れた。今日はしっかりと、入れた。
 いつもの座布団に座らせて、いつものチキンフライをあげて。
「今夜は寝ないで、何だって聞いてやる」
 少し気が緩んだような表情をした彼女は、俺を見てくる。
「…ありがとうな」

 彼女は目の前でもくもくと、好物を平らげた。
 見ているだけで、心が穏やかになった。退屈しない。
「……?」
 食事を終えた彼女が、何かに注目する。俺の手の甲の、湿布だった。
 ずい、と膝を突いて、体を俺の方に乗り出してくる。

「……痛い?」
 俺の手を取って、そして俺の顔を見て、尋ねてきた。
「ああ。でも、自業自得だ。そもそも一昨日お前を、多分無視してしまった俺が悪い」
 ぺらぺらと本音が出てしまう。彼女への気持ちが、そうさせる。
 それに相手が無口なら、まずは俺が正直に、そのままに感情を見せよう。

「……ずっと、鳴らしてた」
 その言葉を言い終わらない内に、抱く。不安で悲しい顔をされる前に。
 彼女の体は小さく温かい。安心させるつもりが、逆に自分の方が頼もしく、心強く感じてしまう。
「お前がもう来なかったら、どうかしてたと思う。本当に、ごめんな」
 もう一々考えて喋っていない。俺は多分、今の勢いならこのまま、告白までしてしまいそうだ。

「……勝手に帰って、怒ったと思った。嫌われたと、思った」
 至近距離で俺の顔を、見上げる。なんて切ない顔するんだ。
「怒ってない。嫌いじゃない。…もう、絶対しない」
「……分かった……ひっく…」
 くそ、きつく抱いてやる以外に、どうしたら良いか分からない。

 取り留めなく泣きながら、彼女はたどたどしい言葉で、教えてくれた。
 素直になれなかった。嬉しいのに、きちんと自覚出来なかった。
 心の中で、俺が占める割合がどんどん大きくなって、それに戸惑って。
 一人で居たくて、誰の同情もいらなかったのに、勝手に入って来て、突き放されると不安になって。
 だから、我慢していたけどやっぱり、会いに行くことにした。

 自分を助けようと体を張って、流した血。
 それを見た瞬間、怒りで我を忘れた。それほどの感情は、誰の為か。誰を思うが故か。
「……ひろ、と」
 …洋人。
 言葉が焼きついている。確かに、俺の為だった。

264:深夜の通い子・7
09/12/03 06:19:08 f9dPnS+9
 優しく、頭を撫でる。彼女は俺の体にきつく密着して、涙で服を湿らせてくる。
 こんなに異性が可愛いと思ったのは、多分初めてだ。
 そして俺を理解したから、彼女は今日、ここに来た。俺と同じように、心を決めて。
 やっと、分かり合えた気がする。嬉しいというか、感動してしまった。
 目を閉じると、何時間でもそのままでいられそうな気がした。

 顔を離した彼女が、俺に一度だけ、笑いかけてくれた。
「―名前を教えてくれ」
「? ……ない」
「じゃ、”椎”で良いか?」
「……しい? ……分かった」

 俺もまた彼女を見つめて、笑いかけた。そして、感じるままに―。
「……」
 口づけた。軽く、唇に唇で触れる。
 彼女はやや呆然と、しかし徐々に目を閉じて、受け止めた。
 その感触は柔らかく、少しだけ彼女の食べた、チキンフライの味がした。

「俺は、椎のことが好き」
 唇を解放すると、今度はそう言って、勝手に抱き締める。
「……言い、過ぎ」
 ああ、言っちまった。でも、こんな状態で何を憚れる?
 それに彼女はやっぱり、抵抗してこない。それどころか腕をしっかりと俺に、回してきた。

 時間は過ぎ、彼女と一緒にいられるのも、残り僅か。
 今度は、お風呂に入れてやる―そう、約束した。
 多分、今日とは違う覚悟が必要になるような、熱っぽい妄想に一人気まずくなる。
 別の服か何か、着せてやるのも良い。スカートなんて、似合うかもしれない。
 考え出すと、尽きない。

 本当は、夜出歩かせるのは恐い。柄の悪い連中が、あれで懲りるとは思わない。
 家にいても良い―そう言ったが、無言で首を横に振られた。
 彼女は俺の腕を離れて、これまでと同じように、何処かへと帰って行く。
 でも、いつかは俺の知らないことも、教えてくれる日が来るはず。
 そして、いつかはずっと一緒にいてくれる日が、来るはず。

 心配しなくたって、昨日までとは違う。
 今はその日が分からなくとも、明日からも付き合いは続いていくのだから―。
 玄関を出て見送りながら、そう思っていた。
 そして冷静になって、すっかり自分の世界に入り込んでしまっていたことに気づく。
 こっ恥ずかしくなって、俺はそのまま家に引っ込み、布団を被った。

 暗くなってからが楽しみになって、何度目か考える。
 夜型愛人、いや通い人? ―変な言い方をすれば、そんな存在だ。
 多分、生活リズムは元に戻せそうにない。
 ……。
 俺はそう、思っていた。

 彼女はこの日、来なかった。外が明るくなってくるまで待って、諦めた。
 何か理由があるに違いない。だが、俺には待つしか出来ない。
 次の日も、来なかった。座布団もフライドチキンも、用意してあるのに。
 三日、四日、五日―それでも、信じて、待つ。
 しかしその繰り返しで、時間ばかりが流れて行く。

 とある日、ふと思った。
 俺は、何してるんだ? 何してたんだ? こんな真夜中に。
 ついに頭の中で接触が切れてしまったのだろうか。
 会った日が遠くなるにつれ、現実で起きたことが、まるで夢か幻だったかのように、感じてくる。
 何で、こんなことになったんだ?

265:深夜の通い子・8
09/12/03 06:20:09 f9dPnS+9
 薄々感じ続けてきたが、限界だった。信じたくなかったが、彼女はもう来ない。
 気持ちに整理をつけないといけない。もう、あれから既に一ヶ月。
 体がもう、保たない。精神的にも、ぼろぼろだった。
 俺は脆い。でも、こんなのって、ないだろ―。
 そう心に問いかけても、誰も答えてくれない。

 三ヶ月経った。ショックも段々と和らぎ、薄らいだ。
 俺に集団リンチかけた奴らも漸く捕まり、普段のつまらない日常を取り戻した。
 今更言うのも何だが、深夜の創作というのは小説のことだ。
 毎年の募集の時期だけ、俺は夜に時間を取って、書いて送る。
 今年は出せなかった。まぁ、それでも良いかなと思ってるが。

 昼夜逆転生活は、もうしていない。昼働いて、夜はきっちり眠る。
 誰かが何かの間違いで尋ねてきても、多分俺は気づかないし、相手もそのことを理解してくれているはずだ。
 ただ不意に、思い出すこともある。たまに癖が移ったかのように、無言になる。
「……」
 そういや、スパークスゴーゴーの曲に、印象深い奴があったな。

 俺の中の、エピローグ。
 古いCDを求めて、休日外に出かける。
 例のコンビニより少し先の、県道沿い。古めかしく小さい店だが、楽器なんかも置いてある。
 久々に来たが、変わらない。近くに小さな山があって、長い階段とその先に社。
 日頃運動不足なので、少しここを登ってみよう。

 社を潜り、質素な宮を目の前にする。木々に囲まれて昼なのに薄暗い。
 何気なく賽銭箱に十円を放り込んで、適当に礼をする。
「?」
 物音。何だろうと思って、振り返った。
「…椎?」

 一瞬、彼女が見えたような感覚に陥った。
 しかし、目の前には誰もいない。そんなことは、ない。
 ふと、もう一度宮の方を見る。すると足元に、白い蛇がいた。
 珍しい、純白の蛇。爬虫類は特に好きでもない俺でも、思わず見惚れてしまう。
 そういえば彼女もまた、髪と服装によるコントラストが際立つが、綺麗な白い肌だった。

 蛇は何故か俺に懐いたように、なかなか離れようとしなかった。
 家に帰ってからも、気になって忘れられない。御利益でもあるんじゃなかろうかと、少し期待する。
 その夜。夕食を終えて、テレビを見て、風呂に入ったら九時過ぎ。
 ぴんぽん、と鳴ったので、新聞の集金か何かかと玄関に出る。
 開けて、目の前に立っていたのは―。

「……洋人」
 俺の顔を見て、笑った。
「椎……どうして」
「……会えて、嬉しかった。…私が消えてしまうって、言えなかったけど…好きだった、から」
 そしてふわりと風が吹き、俺の顔を、撫でる。

 夢心地が覚め、はっと我に返る。
 目の前に立っていたのは―よく似ているが、椎じゃなかった。
 身長は高く、外見もより大人っぽく―高校生くらいになったらこんな風なのかもしれないが、違った。
「受け取って下さい」
 彼女は、俺に蛇の抜け殻をくれた。

 両手に受け取ると、それが俺に、何か語りかけてくる。
「……」
「私の一部に残っている彼女の意識が、ここに導いてくれました」
「……」
「私たちは脱皮する毎に、生まれ変わります。彼女はそれが嫌で、毎晩抜け出して…」


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