無口な女の子とやっち ..
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749:黒い犬は懐かない ◆MZ/3G8QnIE
09/07/12 19:00:10 wr+Ezf7r
「何をヌルい事言ってる。
本当は判ってるんだろう? 認めたくないなら、俺が言ってやる」
それは禁句。彼女を傷つける醜い言葉。
言ってはならないと知っていたから、今まで黙っていた。
彼女も恐らくは気付いている。
けれど、お互い口にしないことで表向きの平穏を保っていた。
もう、口が止められなかった。
「捨てられたんだよ、お前は!
飼うのが面倒になったからなのか、新しい家に場所が無かったのかは知らないけど。
他にどんな理由があって、引越しと同時にはぐれるなんて事がありえる。
今さら飼い主探したって、何の意味もない。
ご主人様のお家には、お前の居場所なんかとっくに無くなってるんだ!」
彼女は、ただ呆然と、俺の言葉を聞いていた。
大きく見開かれた目に、じわりと滴が浮かぶ。
不意に少女の顔が歪み、堰を切った様に瞼から涙が零れ落ちた。
口から漏れ出る微かな嗚咽。
ベッドの上、仰向けで、声もなく、少女はこの姿で初めて泣いた。
「……ごめん」
痛々しくて、俺は目を逸らした。
捨てられたと、決まっている訳ではない。
ひょっとしたら、飼い主は今でも彼女の帰りを待ってるかもしれない。
「けど、どんなに望んでも、なくしたものは取り戻せない。
少なくとも、昔の家には帰れないんだ。
だから、どうせなら……」
この言葉は、俺の願望。
弱っている彼女につけこみ、自分の都合の良いように、彼女を誘導しようとしている。
罪悪感に、ちくりと胸が痛んだ。
「どうせなら、ずっとここに、いないか」
彼女が泣き腫らした目で俺を見上げる。
俺は上からその瞳を見下ろした。
黒目がちなその瞳が、そっと閉じられて行く。
顔と顔が近付く。
唇は温かかった。


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