■ 巨乳小学生をテー ..
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46:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:43:19 liy5uNAV
「ユキちゃんか…なんだ、急に。てか、どうしてここが…」
「いつもこのあたりまでランニングしていますから。」

同じ東小でこのあたりをランニングコースにしているやつがいたのか。
となると、ここに来たのは偶然という事になるが…

「で、どうした?」
「えっと、その…」

通りがかっただけだし、まあ用はないか。
理奈が飯を食べ終わるまで暇だし、こいつとでも話しておくか。

「ランニングって、スポーツでもやってるのか…そういや、空手をやってたんだっけ。」
「あ、はい。
 小さいころからずっと。でも喧嘩は好きじゃないし、それを親に伝えたら、」
「怒られて家を追い出されて、今に至る、と。」
「いえ、そんな!
 それじゃあ、他に別のやりたいスポーツを探さなきゃなって。」
「…スポーツなら何でもいいのか?」
「はい。」

変わった教育方針だな。
まあ、他人の家庭の教育方針に難癖つけたところで、なんにもならんか。

「しかし、スポーツなら何でもいいってやり始めた空手が、4段って言うのは…」
「やり始めたころは楽しかったです。どんどん強くなっていって。
 …でも、最近面白い勝負が出来なくなって。飽きてきて。」
(4段って言ったら相当なもんだろうからな。
 周りが弱かったら、そりゃあ楽しくないだろう。)
「だから、新しく別のスポーツを…あ、あの!」
「なんだ?」

何かを決意したような目。
そして、眼球が飛び出るような一言。

「野球をやられてるんですよね?チームに入れてもらえませんか!?
 あなたのチームで一緒にやりたいんです!」

…はあ!?

「あ、えっと、あなたのチームって言ったのは…その、他に知ってる野球チームの人がいなくって…」
「いや、別にそれはいいんだが…俺自身は別に迷惑じゃねえし。
 ただ、いきなり野球転向を宣言して、いきなり入団志望を言われても、こっちは驚くしかないが。」
「す、すみません!えっと、でも、あなたのチームで…」
「とーりーあーえーず!
 明日監督に話しつけてみるから、とりあえず家に…」

家に…は、超軽装の理奈がいる。
流石にまずい。変な疑いを持たれかねないし、その上その疑いは事実だし。

「家はちょっといま取り込み中だから…どうしようか…」
「誰か来てるんですか?」
「そういうわけじゃないが…」

47:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:44:14 liy5uNAV
軋むような音。すなわちドアの開く音。
姿を現したのは当然この家の住人、理奈。ちゃんと服を着ている。

「どうしたの?翔…って、その子は!」
「あ…どうも。一緒に住んでらしたんですね。てことは、お二人の関係って…」
「ああ、いや、べ、別に俺たちは…」
「そ、そうそう!その…」

まずい。非常にまずい。
そう思ったのは、半分体の関係を持っていたこの2人だけの感覚に過ぎなかった。

「兄妹だったんですね。」
「…え?」

普通に考えれば。
一緒に住んでいる同じくらいの年の男女。どう見ても兄妹である。

「ああ、いや…そういうわけじゃないんだけど…さ!
 とにかくあがってよ。ここじゃなんだからさ。」
「あ、はい。」


とりあえず、『昨日たまたまお泊まりに来たお友達』という事で通し、
親がいないという事になるとそれもまずいので朝早く用事で出て行った、と言ってごまかした。

「この子が野球を?」
「ああ。やったことはないらしいけど。」
「しかしまたどうして?」
「空手に飽きて、他のスポーツをやりたいんだってさ。ある程度の運動神経は保証されてると思う。」
「あ…えっと、それで…」
「とりあえず監督には言っておくからさ。明日にでも入団できると思うよ。」
「あ、ありがとうございます。」

かなり物静かな性格のようである。
時計を見ると10時を指していた。そろそろ午後の事を考えてもいいころかもしれない。

「で、午後の事どうする?翔。」
「ん?そうだな…そうだ、ユキちゃんに野球を教えるのも兼ねて、バッセン行くか!」
「いいね、それ!ねえ、そうしない?」
「あ…あ、はい!おねがいします!
 えっと、この服装じゃあれなんで、一旦家に戻っていいですか?」

ユキの姿はジャージ。
そんなのではとてもお出かけ、とはいくまい。

「それじゃあ…どこで待ち合わせしよう。そうだ、公園の近くに新装開店したコンビニに…12時半!」
「パパから今日の分のお小遣い貰ってるから、お金は持ってこなくていいよ!」
「あ…どうも。それじゃ!」

少し恥ずかしそうに家を出て行った。
なにも今家を出ることはないんじゃない?…と言いかけたが、なぜか口から出なかった。

「さって、お昼ごはん♪」
「まだはやいぞ。ったく…はいはい、何作ってやろうか?」
「オムライス!」

48:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:45:04 liy5uNAV
新装開店したコンビニに行くのは、わけがあった。
ソフトクリーム1つ31円。資金の少ない子供の強い味方がそこにいるからである。

「あ、いたいた!おー…あ。」
「ん?…って、西小のボスじゃん!」

また厄介な相手に出会ったもんだな、瞬時にそう感じていた。
そして、隠れる場所もなく、ユキも来ていたのでやむなくコンビニの前へ向かう事に。
明を含め、3人の男子が何かを話している。

「あ……いや……。なんか、さっきから……誰かに、見られてたような気がして―」
「誰か? って」
「……誰もいねーぞ……?」
「あれ?」

あーあ、見つかったか、そう思っていたが、どうやら別の相手のようである。

「っかしいなあ……。気のせいかな?」
「昨日の今日だしな。さすがにお前も疲れてるんじゃね?」
「うーん……」

どうやら気付かれていないのか。真相は『国境地帯』参照。
とにかくユキのもとに向かうが、ついにばれた。

「あれ、またあったな、土生君!」
「…どーも。」

その声で気がつき、ユキも土生のもとへ小走りしてくる。

「君も31円アイス目当て?」
「今日は近くのバッティングセンターに行くんで、その途中です。な、2人とも。」
「うん!」
「あ、はい。」

以前より口調が明るくなっている。こっちが本来の明なのだろうか。
おそらくは土生が東小だという事を最初から受け止めているからだろうが。
喧嘩が達者な明、そして真夏の日光。2つの圧力が土生に襲いかかり、汗を絞り出させる。

49:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:47:18 liy5uNAV
「明、誰だよこいつ?」
「ん?ああ、野球やっているんだけど、いろいろあってな!まあきにするな!」
「男の方じゃねえ、その2人の女の子が、おまえのなんなんだよ!」
「こいつら、2人とも…すげえ!片方は谷川以上なんじゃね!?」
「ば、馬鹿!」

何の話だろう、首をかしげる。
もっとも、内容がばれると豪速球と周り蹴りが飛んでくる可能性もあったが、土生がそれを制す。
…げんこつで。

「てっ…いてえよ、明!」
「今日の学校でも痛い目にあったってのに、まだ俺たちを殴らねえと気が済まねえのか?」
「え?学校…って、今日日曜日なんじゃ…」
「何言ってんだよ、今日は参観日だぜ?3時間目に親が来て、それから下校だっただろ。」

一瞬、頭が真っ白になる。
確かに今日は参観日なのだが、父親が出張中という事もあり理奈の頭から完全に離れていた。
なお、1時間目の前後で国東も含めいろいろあり、3時間目の千晶の変貌ぶりには保護者も少し戸惑っていたとか。
(『はじめての日』と同じ時間帯だが、つじつま合わせの完全オリジナル設定なのであしからず。)

土生とユキは東小なのでもちろん休みなのだが。理奈は完全に固まった。


「お、おい…まさか、知らなかったとか言うんじゃねえだろうな?」
「…。」
「理奈!?」
「今日言ってた用事って、参観日の事ですよね。なんで行かなかったんですか…」

ユキにまで突っ込まれる。どちらにせよ、理奈の頭は完全にショートしていた。
そんなとき、偶然ショートの赤松が通りかかり。

「ん?土生さん!ラリナ!」
「お…?あ、赤松!おい、ちょっと来てくれ!」
「な、なんです?」

チーム内では橡浦に次ぎ、土生と同等の俊足を持つ快足を飛ばす赤松。
汗をふきだしながらたどり着くと、土生の質問一閃。

「なあ、お前確か西小だったな!今日参観日あったの、本当か!?」
「そうですよ!ラリナのいる5年生のフロア探したのに、今日はどこにもいなかったんですよ?
 聞いたら休みだって言うし…風邪じゃないんですか!?」

光陵リトルで、理奈を除けば唯一の西小である赤松。
赤松が1年下だが、理奈がリトルに入ってからは暇を見つけては会っている。

「…ど、どうしよ…」
「と、とにかく、もう終わったことはしょうがないからさ、な?」
「明日…先生になんて言おうか…」
「か、風邪ひいてて親もいなかったって言えばいいんだよ!
 電話できなくてすみませんでした、ってさ!」
「雅人くん(=赤松)に風邪ひいてないってばれてるのよ!?」
「そんなもん関係ねえだろ!赤松、このことはだまってろよ!」
「は、はい!」

パニックとパニックの応酬。
参観日なんて言わない方が良かっただろうか。明は何とも言えない顔をするしかない。

50:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:48:37 liy5uNAV
「はあ…ふう…だ、大丈夫、だよね!」
「ああ、だから落ち着け!」
「そうだよ、ラリナ!だったら俺が見舞いに行ったって先生に言っておくから!」
「と、とにかく何か食って落ち着こうぜ!31円アイスで頭冷やすぞ!」
「は、はい!」

4人がコンビニになだれこむ。
その姿に呆然としながら、外からコンビニ内部を覗くと。
両手にアイスの千晶と理奈がぶつかり、レジ前でパニックを売る羽目になっていた。

「あーあ…あぶねえなあ。」
「何とかアイスは落とさなかったか。」
「さすが谷川。食べ物の執着心。」
「やれやれ…谷川の胸といい、あの2人の胸といい、今の騒ぎといい…」
「そういや、さっきも明が言ってたけど、谷川の胸って…」

慌てたり、謝ったり、戸惑ったり。
そんなこんなでなんとか千晶達数人は店内からクーラーの冷気とパニックの余韻と共に出てきた。

(なんだったんだろ、さっきの子たち。危うくボクのアイス2つが…)
「いちきろ……いちきろぐらむ……」
「谷川……お前ってやっぱスゲーな!」
「へっ……?」

無論『国境地帯』の作者にとって、作中にこんなトラブルがあったなどとは思いもよらなかっただろう。
正直、つじつま合わせや話の流れをつくるのに大変でした、ハイ。

「でも、作中に1ヶ所、『平日』って書かれてるよな。by明」
「無理に世界観共有しようとするからこうなるんだよ。by土生」
「もうそういう突っ込みとかなしね、
 2日という短い設定の中に3話もぶち込む無茶を人に言ってよ。by暴走ボート」
「知らないわよ。感想の代わりにクレームが来たって。byラリナ」

…。


アイスとクーラーに体だけではなく意識も冷やされ、何とか落ち着いた。
31円アイスに舌鼓を打ち、コンビニを出るころには明たちはおらず、ようやくバッティングセンターへ。

「ふっ!」 パキーン!
「ふっ!」 カキーン!

一瞬で吐き出す呼吸。気持ちのいい打球音。
この流れが土生の理想の打撃を作り出す。130kmのボールを軽々と打ち返す。
周囲の人間も土生のバッティングに見とれている。

「すごい…」
「ね?しょ…土生君はすごいんだから!」
「土生さん、次俺の打撃見てもらえます?」
「ああ。」

51:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:49:10 liy5uNAV
いつもはチーム方針から、赤松たち下っ端の選手には守備練習に特化したメニューを組んでいる。
当然バッティング練習はさせてもらえないが、今日は楽しむために、遊ぶために来ている。
土生も今日は何も言ったりはせず、バッティングを見てやることに。

「少し脇が甘いな。もっと閉めろ。」
「あ、はい!」
「あと、スイングの軌道が少しぎくしゃくしてるな。
 スムーズにバットを動かすために、バットを縦に持たずに少し寝かせて持ってみろ。」

パキーン。


…スカッ、…スカッ、

「…理奈、お前には何も言う事はない。」
「わーん!」

投球は一流、守備も軽快にこなしたりと、ここまでは普通の男子よりよっぽどいい選手。
…打撃は、箸にも棒にもかからない。これが光陵リトルのエース、野村理奈。


「打てるかい?」
「えっと…見よう見まねでやってみます。」

打席に立つ。
ここのバッティングセンターはケージの外からもボールの操作を出来るようになっている。

「まずは…100kmかな。速いかな?まあいいか。」
(脇を閉めて…脚は開きすぎずに…バットは立てずに斜めに…)

先ほど赤松にアドバイスしていた土生の言葉、
そして、見ていた赤松や土生のフォームを思い出す。

(お、割といいフォームじゃん。)
(ふん、どうせ素人なんだから、あたしより下手に決まってる!)

100km/hの軟球が、飛び出してくる。


カキーン!


…ドン。


打球音と…『ホームラン』と書かれた的に当たる音。
それは即ち、周囲を驚きの渦に巻き込む音。

「な…嘘だろ…」
「い、今の打球…」
「土生さんでも、あんな鋭い打球は…」
「ま、まぐれよ、どうせ!2球目は豪快に空振り…」

52:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:50:02 liy5uNAV
カキーン!


「…当たったよ。」
「…当たったな。」
「…当たったね。」

土生、理奈、赤松。驚き3兄弟。
そして、イタズラで球速をアップさせる三男・赤松。

(ひひひ…球速を120に…!)

ボール発射。

(速い!?)


カキーン!


「…当たったよ。」
「…当たったな。」
「…当たったね。」

土生、理奈、赤松。驚き3兄弟。
遂には、イタズラで球種を変更する三男・赤松。

(…な、ならば、変化球MIX!)

ボール発射。
ユキは左足を踏み込むが、その直前、ボールが斜めに落下。

(あれ!?)


カキーン!


「…当たったよ。」
「…当たったな。」
「…当たったね。」

土生、理奈、赤松。驚き3兄弟。
もはやいたずらの手段もなくなった三男・赤松。
女の子が快打連発、この事実に周りにいた他の人たちも、驚き兄弟と化していた。


空振りはおろか、打ち損じすらほとんどなかった。
120kmの後の80kmくらいのチェンジアップすらうまく打ち返していた。

「すごいな…」
「なによ!どっかで野球やってたんでしょ!」
「そうだそうだ!俺が球速変えたり、変化球混ぜたり、緩急したのによ!」
「あ、いえ、単に無我夢中でバット振っただけで…
 ボールが曲がったりもしたけど、慌ててその変化に合わせて…」

もうこれは天性の打撃センスを持っているとしか言いようがない。
空手で4段を取っただけあり、運動神経は抜群、と結論付けるしかないのである。

53:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:50:51 liy5uNAV
(ええい、みてなさい!こうなったらあたしのすごさ、見せつけてあげる!)

ストライクゾーンの中を9つに分け、番号がふってある。
そこにいくつボールを当てられるか、というピッチング競争。
一番手はもちろん、本職が投手の理奈。

「は、はやい…」
「だろ?あれがうちのエースのラリナさ!」

(なんだ?あの女の子…)
(おっぱい大きいけど、それ以上になんだ、あのストレート…)

周りがざわつく。
110kmを大きく超える豪速球。それを子供、しかも女の子が操っているとなれば、当然の運び。
ピッチャーとしてのコントロールは悪いが、それでも12球投げ、9マス中6マスが命中。


「あれ、あまり当たらない…」

赤松の球速はそこそこ。一般人と同じくらい。
当然コントロールもままならず、結果は9マス中3マス。…そして。


「てりゃ!」
「そりゃ!」
「おりゃ!」

…。

「な、なんでだよ…」
「ま、まあまあ。しょ…土生君、しょうがないって。」

12球全部外れ。しかも枠にすら当たらないという超ノーコン。
ピッチャーとしての才能は0に等しい。

「で、最後はユキちゃんか…行って来いよ。」
「あ、はい。」
「バッティングであれだけの打撃を見せたんだ、あのセンスを持ってすればそこそこは…」

ビュッ!ドン!

「…え?」
「な、なんだよ、あの速さ…」
「理奈には負けるにしても、110は超えてるんじゃないのか?」

ビュッ!ドン!ビュッ!ドン!ビュッ!ドン!

「…っ!」
「10球で全部…当てやがった…!」
「あたらかなかったボールも、最後に残った的の横スレスレ…」

とんでもないコントロールである。
プロでも9分割のストライクゾーンを思い通りに操れる選手はほとんどいない。

「お、おまえ、どこかで野球を…」
「い、いえ…理奈さんのフォームを見よう見まねで…」

確かに理奈のオーバースローは理想的なフォームではある。
だが自分にフィットするフォームは人それぞれであり、仮にフィットするフォームだとしても
一朝一夕で自分のものにする事などとてもできない。

54:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:51:25 liy5uNAV
「むーっ…」
「理奈、そう怒るなって…」
「なんでよ、なんでなのよ…」
「だーいじょうぶ、ボールの速さだけならお前の方が早いんだ、」
「…速さだけ?」
「う。」

3時はおやつの時間。ファストフード店で思い思いに頼んだメニューにかじりつく。
向かって右側の席には理奈と土生。店内の一部の人から、やはり胸に目線が来る。

「速さだけって…速さは重要だぜ?
 ユキのボールは確かに早いが、あの速さのボールを投げる選手はほかにも何人かいる。
 だから、あのボールを打てる選手もたくさんいる。
 …でも、理奈ほどのボールならほとんどだれも投げられない、誰も打てない。エースは理奈だよ。」
「しょ…土生君。明日からまた練習よ。」
「…あ、ああ。やる気になるのはいいことだ。」

向かって左側はユキと赤松。
ユキの胸も大きいが、理奈のおかげであまり目立っていない。

「でもすごいね、あんなに野球がうまいなんて。うちのチームに入るんだろ?」
「うん。明日から。」
「俺も数少ない4年生さ、よろしく!」

口数は少ないが、最低限の会話はきちんとする。
ユキのコミニュケーションについてもとりあえず問題はないだろう。

しかし、もう1人の女性選手とのコミニュケーションは、どうだろうか。

「明日からよろしくです、理奈さん。」
「ふん、まあ、上下関係はしっかり守るこtあいたっ!」
「リ・ナ〜…焼きもちはその辺でな…」
「なによ!いいじゃない翔!こっちが1つ上よ!」
(え、ショウ?)

赤松の目の前で2人でいる時の土生の呼び名。
非常にまずいが、今はそんな事は二の次である。

「こうなったらユキ、勝負よ!」
「え?」
(あーあ…ったく、理奈の奴…)
(だから、ショウってなんなんだ?)


で、結局街からグラウンドに戻ってきた。

「ったく、どうするつもりだ、理奈。」
「あたしとユキ、交互に互いの球と勝負して、多くヒットを打った方の勝ち、単純かつ明快な勝負でしょ?」
「…。」
「…。」
「何、どうしたの?」
「ラリナ、すごく単純かつ明快かつ…簡単に勝負がつくよ。」
「理奈。お前がピッチャーの時ユキちゃんを抑えられるのはともかくとして…
 お前、確実に打てないぞ。」
「ラリナ。90kmも満足に打てないのに、打てるわけないだろ。
 ラリナの球もそうそう打たれないけど、いつかヒットの1本くらい、ユキなら打つよ。」
「…。
 ええい、翔!雅人!力を貸して!」

2人が戸惑う中、赤松をショートに、土生をセカンドに移動させる。

55:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:52:33 liy5uNAV
「こっちの守備はあたしと翔と雅人君のみ!
 あたしがストライクを10球投げる!
 そのうち、内野安打でも何でも、1回でもファーストにたどり着けたら、ユキの勝ち!」
「え?でも…」
「おい理奈!外野に飛ばされたら終わりだぞ!内野も2人だけじゃ、ファーストとサードのホットコーナー付近は…」
「任せなさいって!
 外野に飛ばさせない直球が、あたしの武器!迷わずストレートを投げ込めば、あたしは勝てる。」
「ラ、ラリナ…」

バッティングセンス抜群のユキ。理奈のストレートに十分ついていくポテンシャルはある。
どう見ても不利だが、土生はやれやれと思いつつ。

「ま、好きにやらせてみようや。負けたところで何があるわけでもなし。」
「翔!あたしが負けるとでも思ってるの!?」
「いや…相変わらず面白い奴だなって。さ、投げろよ。」
「うん!ユキ、準備はいい?」
「…ええ。楽しみです!」

いろいろごちゃごちゃあったが、勝負となればユキもやる気になる。
先ほどの構えを思い出し、バットを掲げる。

(でもね。
 エースとして、そう簡単に打たれるわけにはいかないのよ!)
(速い!)

ホームベースを通過し、後方のフェンスに激突。

「どうよっ!」
(ユキでも手が出ないか…でも、あと9球もあれば、合わせてくるはず。)

ギューン…ガシャン!
ギューン…ガシャン!

(すごい、ラリナの奴2球連続で空振りを…)
(…。)

キン!ガシャン!

(だがやはり、タイミングが合ってきたか…
 ファールボールが後方のフェンスに一直線という事は、タイミングが合っている証拠だ。)

カキーン!

「まずい!」
「いや、これはファールだ。」

打球がサードベンチの向こう側に飛んで行く。
そろそろ打球が前に飛び出してくる頃。ここからは土生や赤松に対するウェートも大きくなる。

56:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:53:11 liy5uNAV
「えいっ!」
「セカンド!」
「理奈!お前もベースカバーだ!」
「あ…そっか!」

センターよりのセカンドへの打球。
ファーストがいない以上、理奈がベースカバーに入るしかない。

「!?…速い!」
(打ってからのスタートダッシュも早いし、あきらめずに全力で走ってやがる!
 スポーツへの真摯な姿勢もかなり強い!)

何とかベースカバーに入りつつ、送球を受け取る。

「ふう…間一髪。」
「理奈、ユキちゃんが右打ちだから良かったものの、左打ちだったらセーフだったかもな。」
「う、うるさいわね!あと4球、全部空振りよ!」

だが、何球もそのストレートを目に焼き付けたユキに、もう空振りはあり得なかった。

「しまった、がら空きのサード方向に!」
「理奈!いいからベースカバーだ!」
(本来ならサードがとる打球…でも、これだけショート寄りなら!)

逆シングルで取り、右足でフルパワーで踏ん張り、大遠投。

「ラリナっ!」
「ナイスキャッチ!」

少々危なかったが、なんとかラリナもキャッチ。
元から守備範囲はかなり広く、最近は特訓の成果も出て守備の確実性も増している。

(守備で一番成長を見せているのはこいつだ。
 もともとセンスはあるし、時間をかけて教えればバッティングも橡浦クラスに匹敵する。
 足も俺に迫る速さだしな…)

8球目も真っ芯で捕らえる。センター前へ抜けようと言うあたり。
赤松が飛び付くも、抜けて行く。

(だめだ、追いつけない!)
「まだまだ、そんなんじゃ甘いぜ、赤松。」
「え?」

土生が飛びついて捕る。

「え?」
「理奈!捕れ!」

そして倒れこんだ不安定な体勢のまま、送球。
だが、ボールは理奈のグローブへ一直線。完璧なコントロール。

「あと2球だ、理奈!」
(すごい、ピッチングはあれだけノーコンなのに…)

野手としての感覚が身についているのだろう。
ピッチャーのように、ゆったりした、体勢の安定したマウンドで自分のタイミングで投げるよりも、
体勢的に不安定な、ぎりぎりの状態での送球でこそ、精神が研ぎ澄まされ、土生の真価が発揮される。

57:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:54:18 liy5uNAV
(けど、もうだいぶ慣れられてしまった。
 2球とも完全に真っ芯でとらえられてたし…)
「赤松。状況だけで勝ち負けを判断するのは、どうだろうな。」
「え?」
「理奈とユキちゃんの決定的な違い。それは、野球に対する経験、そしてプライドだ。」

ギューン…ガシャン!

「こ、ここにきて空振り!?」
「理奈の中にも、秘められたポテンシャルがある。負けたくないという思いが、さらにボールを加速させる。
 勝負の中では何が起こるか分からない。その何かを起こせる、それが理奈がエースたる所以さ。」

ここにきての空振りに、一番驚いていたのはほかでもないユキ。
知らず知らずにうちに自信を持っていた彼女にとって、この空振りは信じられないものだった。
そして、精神的にも理奈が圧倒的に有利となって…

(うそ…)
(これで決めるわよ、おしまいよ!)

低めぎりぎりいっぱいの素晴らしいストレート。
ユキも必死になってバットを出し、

「当たった!」
「打ちとったが…バウンドが高い!理奈!ファーストに行ってろ!」

高い高いバウンド。土生が構えるが、ユキは俊足。
理奈がファーストに行って思い切り体を伸ばしてグローブを構え、送球を待つ。

「理奈っ!」

理奈に伝わる、ボールの感触。
それとほぼ同時に、ベースにユキの足が踏みつけられるのを感じた。

…。


「アウト!」
「セーフでしたよ。」
「アウトったらアウト!」
「どう見てもセーフでしたって。」

「さっきからあんな調子ですね。」
「ま、いいんじゃないか?頼もしい仲間が加入したところで、春の前哨に意気揚々と乗り込めるわけだし。」
「ですね。」

その言葉に気が付く女子2人。
この2人は当然、リトルリーグの大会に出るのは初めて。ちなみに赤松もだが。

58:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/08 19:56:42 liy5uNAV
「春の前哨戦?」
「言ってしまえば全国大会のない大会だな。まあ秋の大会の前座ってところか。2週間後にある。」
「え?もうそんなに早く!?」
「おめえら2人にかなりのウェートを示させることになるが、…まあ頑張れ。
 この大会に本気になってるリトルもあれば、全力でやらないリトルもあるがな。
 本番は全国大会にいける秋の大会、それまでに経験を積む上では、重要になってくる。」
「県内一を目指して、みんなで頑張っていこうよ!」

秋の大会は知っていたが、春に大会があるのは全く知らなかった。
だが、そうときまれば練習あるのみ。

…練習、あるのみなのだが…

「だからって、もうちょっとメニューを軽くしてよー!」
「コラ立て、理奈!ほかの奴もだらしがないぞ!」
「う…うえーい…」

翌日。ユキがチームに加入し、すぐにチームに溶け込んだ。
チーム自体が溶け込みやすい体質であり、女性選手という点も理奈がチームにいる地点で違和感はみじんもなかった。
…そのユキは、ほとんどへばっていない。

「…はあ…はあ…」
「ユキちゃん、君はまだまだ行けそうだね。」
「ええ、まあ。」
「てめえら、まさか新入りに負けるつもりじゃねえだろうな!」
「な、なにを…」

全員立ちあが…らなかった。
白井だけはうずくまったままである。

「おい、白井!お前も立てよ!」
「あ、ああ…」
「待て!白井、脚を見せろ!」
「え?…うあっ!」

足首が赤くなっている。
内出血を起こしている、おそらくは打撲か捻挫の類だろう。

「どうしたんだ!」
「いえ、さっき練習が一段落ついて倒れこんだ時に、」
「変に倒れこんで足をひねったってわけか。病院行って来い。」
「いえ、まだまだ…」
「ダメだ、さっさと行け!」
「!…はい…」

根性を推奨する土生だが、怪我には相当気をつけている。
打撲やねん挫ならその場の応急処置で本来は十分だが、念のために監督と一緒に病院に行かせた。

「不思議ね、土生君。
 普段からあれだけ根性と練習量を前面に押し出すのに、怪我にはこんなにも…」
「そんなに意外だったか?
 俺は怪我しないようにメニューを組んでいるはずだが。」
「いや、こんなに練習がきついと怪我の1つもしちゃいそうよ…」
「練習の仕方、メニューにさえ気を使えばいくら練習したって怪我はしない。
 逆を言えば、怪我の原因は練習の仕方やメニューの組み方に問題がある。
 …まあ、試合のアクシデントだけは、どうしようもないけどな。」

土生が何かを思い出したようにうつむいた。
過去にいた選手?それとも自分自身?土生君の過去という黒い影、もっと知りたいよ。

59:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/12/08 19:57:29 liy5uNAV
投下完了。

名無しさんXさんと俺との二本立てでござーい。

60:名無しさん@ピンキー
08/12/08 20:03:25 s9OA8DjJ
二人とも乙!
リアルタイムで見てましたw

61:名無しさん@ピンキー
08/12/08 23:07:18 0EMAPCyi
>>国境を越えた夜に
スゲエ展開w つぎはだれの濡れ場を!?

>>新たなストレート
整合性より勢い!! 良いと思います。

どちらもGJでした!!



62:名無しさん@ピンキー
08/12/09 14:09:59 EbmItLqJ
Wgj!!

63:名無しさん@ピンキー
08/12/09 18:38:50 isV2DpN6
↑sageは半角小文字のほうが…
どちらもGJ!!
つかもはや二次スレだな…。


64:名無しさん@ピンキー
08/12/10 13:47:56 fss0+BQf
この流れじゃ本番ありの純粋エロはスレ違いになりそうだ…

65:名無しさん@ピンキー
08/12/10 14:01:36 Comt/ljh
んな事はないでしょ
住民は色々な作品楽しみに待ってます

66:名無しさん@ピンキー
08/12/10 14:40:59 Y0nBmB82
種の多様性はそれこそが強さだからな
質量ともに充実するなら歓迎

67:名無しさん@ピンキー
08/12/10 18:33:07 yLpdwK7U
本番歓迎だが今の流れも好きだ。
SSに挑戦したくなる。


68:名無しさん@ピンキー
08/12/11 18:26:45 zF+4ZRZ2
ある小学校の足のサイズデータ

       最大      最小      平均
女教師  24.0cm  21.0cm  23.1cm
小6女子 26.5cm  22.5cm  23.8cm

大人の女教師がみんな小学生に負けてるよ。



69:名無しさん@ピンキー
08/12/11 18:44:50 zF+4ZRZ2
足フェチの人は精神年齢が高めだと聞いた。
下に向かえば向かうほど精神年齢が高くなると聞いた。


70:名無しさん@ピンキー
08/12/11 19:15:50 gyMxOT0L
つまり胸の巨乳に集中しているこのスレ住人は、
今なおみずみずしい小学生の心を失っていないということだな

71:名無しさん@ピンキー
08/12/12 00:04:07 wKTCyjD8
>>68
小萌先生が近所の巨乳天然ロリ姪っ子に幻覚みせられて、
「もう大人なのにぃ・・・おとなぁ・・・かふっっ」
とかイッチャって延々といじられつつ、その子はこれまた天然で、童貞の幼なじみの子に処女を奪われるも、最初からあえいじゃうんですね、

先生、前が妄想でよく見えません。

72:名無しさん@ピンキー
08/12/12 03:21:55 XRuqnKnr
>>69
髪フェチが最も幼いんですか

73:名無しさん@ピンキー
08/12/12 04:20:28 J8xM+yim
胸に固執するのはアジアに多くて、欧米は尻が好きとは聞く。
確かにスパンキングとかは洋物ばっか。


74:名無しさん@ピンキー
08/12/12 07:08:19 1zi5GFoD
コピぺに反応しすぎ。


75:名無しさん@ピンキー
08/12/12 16:57:11 R7kxRhAq
保守ついでにSDS◆cStOEcFYHcさんと暴走ボート◆z95s/qs7OMさんに質問します
3サイズとかいくつくらいなのでしょうか?
SDS◆cStOEcFYHcさんに登場した4名
白瀬紗英
嶋野理沙
宮田桜
芹沢綾女
暴走ボート◆z95s/qs7OMさんに登場した2名
野村理奈(ラリナ)
ユキ
計6名のスリーサイズとかどれくらいかなって気になります。
もし差し支えなかったら設定資料集その2とかで公開してほしいとおもいお願いします

おまけに
現在小説で陰毛の有無について
ラリナ(パイパン)
千晶(パイパン…ただし外伝設定)
歩美(濃い…ただし外伝設定)とかなんで陰毛描写とかや
男の子のおちんちん
明(大人並みで12cm位)とか少し興味があります

76:名無しさん@ピンキー
08/12/12 17:17:18 JK79iKH4
>>75
SDSさんはそういう細かい数字は苦手とか言ってたような。
宮田桜は決闘少女空間でそのうち出るって話がなかったっけ?

77:名無しさん@ピンキー
08/12/12 18:22:54 FRH4ZYKE
紗英はちょろり希望!!
あとはパイパンかな・・・


78:SDS◇ ◆cStOEcFYHc
08/12/12 20:03:17 +stg17w3
おいおい設定したいと思います… 来週中には投下予定。またエロ無しかも…

79:名無しさん@ピンキー
08/12/12 23:04:39 1zi5GFoD
巨乳高校生(中学生)スレ立ったな。

80:名無しさん@ピンキー
08/12/13 07:37:15 gD5a0HFw
>>79
どうやって盛り上げていくつもりなんだろうな……?

81:名無しさん@ピンキー
08/12/13 11:24:30 48jLXqxi
ここの卒業待つとか?

82:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/12/14 17:00:05 SPeV5TE6
書けるかな?

83:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/12/14 17:01:55 SPeV5TE6
↑規制を喰らっておりました。

>>76
俺は結構そういう細かい設定を決めるの好きです。
登場人物紹介でも書こうかな。
でも、それを書くためにもう1つやっておかなければならないことがある。

ただ、スリーサイズなんてわからないぞ…
下手に数値を誇張してしまうとそれこそ大変なことに…

84:名無しさん@ピンキー
08/12/14 20:59:07 9kuDm9EV
美少女、バストカップ数測定スクリプト
URLリンク(www.d9.dion.ne.jp)

貼るべしと言われた気がした

85:名無しさん@ピンキー
08/12/14 21:18:13 ozlf/xGg
これ前スレでも出てたなw

86:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/12/15 20:54:28 RQH0fr2e
>>84
ありがたい。さっそく使わせてもらった。


とりあえず、新章投下。

87:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 20:56:49 RQH0fr2e
「あの事件ですか?もういいじゃないですか、俺達には関係ないし。」
「まあ、関係はないがな。…だが、同じ悲劇をお前たちに起こさせるわけにはいかないだろ。」
「そりゃそうですけど…今になってもまだ引きずっている姿は、見たくないです。」
「な、何の話?」

橡浦や山下は何か知っているようである。
土生とともに、去年ベンチ入りしていた4年生は他にはこの2人しかいない。

「実はな姉御、姉御はリトルには女性選手で名を残したとか、今活躍した選手は皆無と思ってるかもしれないけど。」
「え?うん。」

理奈は女の子はリトル選手としては不利な立場と考えていた。
なぜなら、女性選手で活躍した話を聞いたことがなかったからである。

「でも、いたんだよ。昔、男子に交じって活躍してた選手が。
 …巨神リトルに。」
「そ、そのリトルの事は…!」
「赤松。確かに俺達は巨神に仲間を奪われた。だが今は、巨神のとある女性選手の話をしたいだけだ。」
「え…まさか、1年前に移籍した4人の選手って…」
「まったく…話がどんどんややこしくなって行く…まあいいや、理奈、順に話すから黙って聞いとけ。」



―1年前・光陵vs巨神の練習試合―

「おっしゃあ、いいぞ新井!」
「すげえ、巨神とここまでいい勝負できるなんて…」

2点負けていたが、新井のタイムリーで1点差。
だが、後続は続かず、この回は追加点ならず。

「あっちゃあ、ツーベース…」
「ドンマイ西村。つぎ抑えろよ。」
「次は…ん?代打か?」

巨神の監督が代打を告げる。
6番の選手に代打を送るのだから、かなりの選手なのだろう。

「6番代わって、代打・緒方!」
「緒方…どんな選手なんだ…って!え!?」

88:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 20:57:36 RQH0fr2e
髪が長くくりっとした可愛い目。
胸も膨らんでるのがしっかりと目視確認でき、くびれや骨盤、下半身の膨らみ具合。

どうみても、女の子。
バッターボックスに入ると、腰を数回振り、膝と腰を曲げてバットを縦に揺らしながら構える。
腰の振り様は色気すら感じる。

(ど、どう言う事だ?)
(とにかく西村、いつも通りに投げろ、それでいい!)

白濱がアウトコースに構える。西村も白濱も、…無意識に弱気になっていた。
そして緒方は―その女の子は―アウトコースからシュート回転して甘く入った失投を、見逃さなかった。


…。

「6回の表まで終わって、6−2…」
「あの緒方って女の子が出てきて、全てが変わったな…」
「右中間に抜けそうな当たりをとられて、さっきの2ランに続いてタイムリーも打たれたし…」

緒方に全ての流れを変えられた。
結局逆転どころか突き放されるばかり。

「やばい、2アウト…何とかしろ、土生!」
「このまま終わって…たまるかよっ!」

初球を振りぬくと、打球はセンターへぐんぐん伸びる。

「いったか?」
「やばい、緒方が追いついてきてる!」
「抜けろー!」

激しい衝撃音とともに、緒方が倒れこむ。
審判が確認に行くと、

「アウト、アウトー!」
「ああ…」
「ちっ、だめだったか…ん?」

緒方が起き上がってこない。
フェンスにぶつかって、どこかを怪我したのか。

(おい、大丈夫か!)
(しっかりしろ、緒方!)

――。

89:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 20:58:12 RQH0fr2e
「後日調べたところ、緒方は抜群のセンスを持っていて、不動の1番だったらしい。」
「巨神の1番…」
「理奈同様いろんなリトルを回った物の女だからと受け入れてもらえずに、
 結局巨神に入ったのは5年生になってかららしかったがな。
 すぐにレギュラーに上り詰めて、あの日がデビュー戦だったらしい。」
「なんで試合に遅れてきたんだろう…」
「それに深い意味はない。単に親戚の法事で遅れてきただけらしい。」

だが、問題はそんな事じゃない。その後緒方がどうなったか、という事である。

「その緒方って人は、どうなったの?」
「…フェンスにぶつかった際、左膝の皿が割れたらしい。
 とにかく、緒方は大怪我をして、その後グラウンドに戻って来たという話は聞かないな。」

かなり残酷な話である。
西村や二岡達、4人なら何か知っているかもしれないが、連絡方法など分かろうはずもなく…

「目の前であんなの見せられちゃ、怪我に過敏になったって、当然だろ。」
「う…。」

全員が静まり返る。
こんな状態では、気の入った練習などできない。

「悪い、変な話聞かせちまったな。」
「それで、巨神に仲間を奪われたってのは…」
「何となくわからないか?あの4人を奪っていったリトルが、巨神だ。
 あの練習試合のすぐ後、あの4人をスカウトし、連れ去っていった。
 おそらく、練習試合でその高い能力を見てほしくなったか、緒方の代わりが必要だったのか…
 …もういい、今日は最後にランニングをして、あがるぞ。」


堤防の上のコンクリートの道を走る。
土生、理奈、橡浦、そしてユキは余裕の表情だが、

「…待ってくれー…」
「どこまで走る気だー…」
「お前ら、遅れるなー!」
「へーい…」

しばらく走っていくと、向こうから同じくらいの年の女の子が走ってきた。
そして近付くと、土生がある事に気付いた。

「…?
 ちょっと先を走ってるな。」
「え?ちょっと…」

さらに距離を縮めると、土生がその女の子に話しかける。

「(あの時少ししか姿は見えてなかったけど…間違いない!)
 おい、君!ちょっと止まってくれ!」
「…何?」

女の子が土生の呼び掛けに応じ、止まる。

90:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 20:58:44 RQH0fr2e
「お前、緒方だろ?」
「…それがどうしたって言うのよ。」
「そうか!1年前に姿を消してから行方が気になってたけど…ここにいたのか!」
「…何?巨神の奴?」

あんまり友好的な雰囲気とはいえない。
だが、土生はずっと気にかけていたのか、いろいろ聞き出そうとする。

「いや、そんなんじゃないけど…」
「巨神以外のリトルの選手で、わたしを知っているやつはいないはず。」
「練習試合に出たのが、一度だけだからか?でもその練習試合の相手が俺だったとしたら、どうする?」
「!
 …そう。そういうことね。」

理奈達も追いついた。
土生と緒方のやり取りを淡々と聞いている。

「あの試合の後、何があったか、聞かせてくれないか?」
「…何で言う必要があるの?」
「それは…。」
「わたしに、あのつらい事を思い出させたいわけ?」
「あ、いや…ごめん。」

完全に手詰まりになってしまった。
緒方はため息をつくと、

「はあ…いいわ、来なさい。話してあげるから。
 そこのファストフード店に行きましょ。お金なら出してあげるから。」
「あ、ああ…」

ようやく全員追いつく。
それを確認すると、緒方達は店に入っていった。

91:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 20:59:56 RQH0fr2e
「で、何を聞きたいんだっけ?」
「怪我の状態や、巨神からいなくなったその後だ。」
「なぜわたしが退団したとわかるの?」
「巨神は県内トップクラスのリトル。そこのレギュラーなら、おのずと名が知れるはずだ。」
「…そう、まあいいけど。」

11人全員が同じテーブルに着くのは不可能なので、
理奈、土生、山下、橡浦、赤松、ユキ、そして緒方が同じテーブルに座っている。

「知っての通り、わたしは膝の皿が割れた。ほかにも靱帯が損傷したりやらなんやらで、
 …二度と野球はできないって、医師から通告された。」
「マジかよ…」
「でも…膝が万全でなくっても、5分くらいなら持つ。
 そう考えたわたしは、代打専任としてチームに残してもらえないか…そう頼んだんだけど…」
「あの監督は冷徹だからな。
 おそらく、戦力にならないと言われチームを追われたんだろう。」
「でもおかしくない?
 プロ野球ならともかく、チームから選手に出て行け、なんて普通は…」
「あのチームならそんな事をしてもおかしくはない…そういう事だ。」

もう1つのテーブルでは全く関係ない話が繰り広げられていた。
書くのもめんどくさいので割愛。

「で、まあいくつかリトルを回っているものの、どこもかしこも女だからって受け入れちゃくれない。」
「でも、さっきランニングしていたって事は、野球をやりたいんだろ?
 見ての通りうちには女子が2人もいる。女子だって当然のように受け入れるさ。」
「…あんたたちのチームに、入れって事?」
「ああ、怪我をしているかもしれないが、少なくとも打撃は健在なんだろ?」
「…気が乗らないわね。」

そこ断るとこ!?
…いや、普通に入らない?そこはさ!

「あの5人のうち、4人がいない。わたしが分からないとでも思ったわけ?」
「!」
「あの時5年生だったはずの彼らに何があったかは知らないけど、
 あのスタメンの9人の中で、優秀な選手はあの5人だけ。…ほかの4人は、言ってしまえば数合わせね。」
「…。」
「今いるのはあんた1人。勝てないチームに、わたしは入るつもりはない。」

勝てるチームを選んでいたら、当然女だからと言って拒否されるのも無理はない。
弱小チームなら女子を拒むことはあまりないが、
強豪だと、ましてや怪我持ちの6年生なら拒まれることは多々ある。

「なぜそこまで勝ちにこだわる?」
「決まってるでしょ?
 あたしを捨てた巨神に、復讐するのよ。」
「なーる…その物静かな態度は、復讐を意味するってわけか。」
「復讐の何が悪い?
 試合でぶちのめす、その何が悪いの?」
「じゃあ、こういえばいいか?俺たちも、巨神に仲間を奪われた。
 さっき言ってた、いなくなった4人。巨神に奪われたんだ。」
「…ふうん。」
「目的は同じ、悪くはないんじゃねえの?」
「…でも、あんたたちが弱かったら復讐なんてかなわない。あんたたちにその実力はあるわけ?」

しめた。
この運びになれば、もうこっちのもんだ。

92:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 21:00:51 RQH0fr2e
「なら、俺たちが相手になってやる。
 それで俺たちの強さが分かったら、俺たちに巨神を倒すための力を貸してくれ。」
「…。」
「一生野球ができないと言われた以上、怪我の酷さも相当のものだろう。
 おそらく、野球を再開しても、その膝は長くはもたない。お前の野球人生は今年限りだろう。」
「花道を作ってやるとでも言うの?」
「人が言おうとしていたことを…」
「そんなのわたしが決める事。勝負したいのなら、さっさとグラウンドに案内してちょうだい。」
「やれやれ…まあいい、戻るぞ。…あ。」

隣のテーブルの連中はまだ食べ終わっていない。
というより、土生達は遠慮の意味合いを込めて水しか頼んでいない。

「まあいい…お前ら、それ食い終わったら各自勝手に解散!」
「へーい!うまいな、これ!」
「はあ…」
「こんなチームが勝てるなんて、到底思えないけど?」

反論できない。
とりあえず、理奈が何とかしてくれるだろう。


「当然ピッチャーは理奈。
 赤松がショート、山下がサード、俺がセカンド、橡浦とユキちゃんで外野を頼む。」
「もろい守備体型ね。」
「これで十分だ!キャッチャーは本来俺だが、人数が足りないから大目に見てくれ。
 3打席勝負でヒットを1本でも打てれば、そっちの勝ちだ!」
「…勝負の勝ち負けより、あたしは内容を見たいんだけど。」
「俺たちに、内容が伴っていれば仲間になれって甘えなんざねえよ!」
「入るかどうかはあたしが決めること。
 まあいいわ、そっちが勝ったら無条件でこのチームに入ってあげるわよ。」

たった6人の守備体型。
対するは、怪我のブランクがあるとはいえ県内最強クラスの強打者。

「それにしても、女子がエースなんて、このチーム本当に人数が少ないのね。」
「自分だって女のくせに。
 見せてあげるわよ、あたしの…」

第1球。

「ストレートっ!」


…。

93:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 21:01:28 RQH0fr2e
(な、何、今の…男子でも、巨神であんな球を投げるやつは…
 去年戦った西村ってやつも、ここまではやくはなかったはず…)
「もういっちょ!」
(くっ!)

辛うじて当てるが、ベンチ前にころころ転がっている。
そして、

「ウィニングショット!」
(速い!)

高めの釣り玉に、完全に引っかかった。
いや、その速すぎる球速に、バットを止める事自体が難しすぎる。

(?…今のスイング…)
「さあ、あと2打席!」
「…ああもう、やめやめ。」
「え!?」
「こっちはブランクがあるのよ、あんまり勝負が長引くと膝にも影響が来るし、このあたりであがるから。」

バットを放り出し、去っていく。

「おい、じゃあこの勝負は」
「だから、わたしは巨神以外との勝ち負けなんてどうでもいいの。
 あんたたちと白黒つける気なんて元からない。さよなら。」

階段を上っていき、去っていく。
それを、ただただ眺めることしかできなかった。

(緒方…何を思っているんだ、お前は?)



結局、翌日以降、緒方は姿を見せなかった。
打撃力が決定的に不足している光陵リトルにとって、
1打席限定とはいえ緒方の打撃力は、代打の切り札として非常に魅力的な存在なのだが。

「探さないの?このあたりをまた走ってるかもしれないよ。」
「無い物ねだりしたところで、しょうがないだろ。
 だめならだめ。そこで終わり。はいおしまい。」

練習の合間の休憩のときも、土生は素振りを欠かさない。
かと思えば、バットをバトントワリングのようにくるくる回す。

94:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 21:02:11 RQH0fr2e
「もー。本気で勝つ気あるの?」
「俺もそう思うぜ。」
「赤松。
 今日からお前も打撃練習をしてもらう。バントと守備は、だいぶうまくなったからな。」
「俺も…打つ、役割を?」
「…やっぱ間に合わないか。そだ、必殺技の練習でもすっか。
 おーい、あとは各自勝手に守備練習してろ。」

緒方と会ってからというもの。
練習内容が奔放になった。土生の様子も何か腑抜けた様子。
もちろんだれ一人練習を手抜いてはいないものの、以前の厳しい練習は影をひそめた。

「赤松はバントの時、右足に体重がかかり過ぎている。
 正確なバントをするためには、本来体のバランスをしっかり保ってないといけない。」
「はい、すみません。」
「だが、それでもそんなアンバランス状態できっちりバントを決める事が出来る。
 だったら、バランスを調整して安定感を磨くより、この短所を逆手に取るんだ。」
「へ?」


緒方を加えた12人という青写真。
それが崩れ去り、優勝から大きく遠のき、どこか以前の土生に戻って、

…そんなのは嫌だ。

「…翔。」
「なんだ?今特訓中だ。(その呼び名は2人だけの時だろ!)」
「…いいよ、聞こえないようにすれば。あたしの親しい人として、今話してるんだから。
 あたしちょっと走ってくる。」
「好きに練習すればいいって言ったろ、なーにが親しい人だ。
 そういう内容ならチームメイトとして…」
「…何も分かってないね。いいよ、許可さえもらえればそれでいいから。行ってくるね。」

土を蹴る音がリズミカルに聞こえる。
なんで理奈はあんな事を?チームメイトとしてではなく、親しい人として…

「…。やれやれ、練習のために走ってくるわけじゃないって事かよ。」

新しい友達を作りたい。
そういう話はチームメイトではなく、親しい人にするべきだからね。



「…とはいったものの…そうそう都合よく見つけられるわけないか…」

うろついている間に、賑やかな所に出てきた。
もっとも、買い物しようにも今は持ち合わせがあまり無かったりする。

…ふと、因縁の場所にたどり着いた。
『スポーツアミューズメントパーク バビッチャ』

「…。」

95:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 21:02:46 RQH0fr2e
ブン!ブン!ブン!

「もう1回!」

ブン!ブン!ブン!

「もう1回!」

ブンブンブンブンブン…


金と引き替えにボタンを押す権利を与えられる、自動販売機。
ボタンを押す権利と引き替えに、ガコンとジュースを落してくれる、自動販売機。

「ぷはぁ…なんなのよ、もう。」
「ひどいスイング。ピッチングとのギャップが激しいにもほどがあるわよ。」
「そうなのよ…って、緒方さん!?」
「胸が大きいせいで必要以上に内角球を怖がり、外角に手を出せない。おまけに内角を捌くこともできない。
 そりゃ打てっこないわよ。」
「…しょうがないじゃないですか…昔はそれなりに打てていたけど、
 前に在籍していたリトルで…」

前に在籍していたリトルでは、監督の目の見えないところで打撃練習させてやるとは名ばかりに、
チームメイトにわざとボールを胸に当てられていたりもした。

「ふーん…」
「…だから必要なんですよ。」
「え?」
「あたしが打てないから、緒方さんの力が必要なんです!」
「…そう。
 じゃあ、わたしからも1つ問題を出そうか。」
「へ?」

問題。
なぜわたしはあの時の勝負を途中でやめたのでしょう?

「えっと、そりゃあ、怪我を悪化させちゃいけなかったから…」
「確かにわたしの怪我の具合はまだよくはないし、守備にも問題はある。
 でも打撃だけなら、3打席ぐらい余裕でこなせるわよ。」

目の前のマシンが空く。
コインを入れて、バットを持ち、構える。

「その答えはね…」
「…!」

飛んできたボールを、カット。
…そのスイングを見て、理奈はその理由にはっきりと気付いた。

「あの勝負、間違いなく負けていた。」
「まさか…スイングが戻ってないって事!?」
「昔なら簡単に飛ばせていたのに、今はちゃんとミートできるのは半分ほど。
 当たり前よね、怪我で下半身にガタが来てて、筋力も落ちて。
 なによりも、そんな状態で、一振りに賭ける代打なんて、無理よ。それにね…」
「それに?」
「わたし、ひとつ嘘をついてた。」

緒方がボールを撃ち続けながら、自分の過去の嘘を告白していく。

96:迷わずストレート!『新たなストレート』
08/12/15 21:03:50 RQH0fr2e
「女だから最初から入団を拒否された、なんてのは嘘なの。
 女だって入団か、入団テストだけならどこのリトルだってやってくれる。」
「え…」
「4年生なら入団テストなんてなくたって入団できるけど、5,6年生は即戦力でないといけない。
 これでも巨神のレギュラー張ってたんだから、表向きには有名でなくても、
 各リトルの監督は、みんなわたしの事を知っていた。」
「…じゃあ、まさか。」
「ええ。
 怪我の状態も知っていた。だから、どのリトルも、怪我の状態の回復さえ見込めれば入団していい、
 そのためにテストを受け、テストの合格を入団条件としてくれた。でも…」

打てなかった。
膝がまだ完全に治っていないのと、衰えている筋力。
そもそも、二度と野球ができないとすら通告された怪我。完全に治せという方が酷だ。

「…単にあたしの実力がないだけ。
 あの時あなたとの勝負を打ち切ったのも、あなたに負けて恥をさらしたくなかったから、
 …巨神への復讐のためにわたしを必要と言ってくれた土生を、落胆させたくなかったから…」
「緒方さん?」

話を進めれば進めるほど、涙があふれてくる。
初めて自分を必要と言ってくれたリトルがある、選手がいる。
…その選手に応えられない自分を責めていた。嘆いていた。

打ち終わって出てきたときの彼女は、もう理奈を正視できる状態ではなかった。

「…でも、それでも野球やりたいんですよね、巨神を倒したいんですよね。」
「え?」
「だって、バット振ってるじゃないですか。ランニングしてるじゃないですか。
 怪我の状態が良くなってから、ずっとずっと練習してきたんでしょ?」
「!」

涙をぬぐいながら、今までの練習を思い出す。

「あたしは信じますよ。
 そのひたむきな努力が、あたし達に、とても大きな力を与えてくれるって。」
「…あなたの、名前は?」
「ラリナ、って、呼んでください。」
「ラリナ、ちゃん…」
「いつでも待ってますから、信じて待ってますから!」

理奈は走って去っていく。希望を胸に去っていく。

彼女に足りないのは、そう、自信だけ。
自分に出来るのは、ここまで。後は彼女自身が強く決断し、光陵に来てくれることを信じるだけ。

…だって、バットを振っている限り、野球をやりたいはずなんだからさ!


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