■ 巨乳小学生をテーマにしたエロパロ その三 ■ at EROPARO
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250:名無しさんX ◆q5tFVKFOs2
09/01/07 23:46:46 +GCshh/t
投下終了です。

あんまり筆が進まない上前後篇に分けてすいませんでしたが
一言感想頂けたら嬉しいです。

それと作家方にご連絡

SDS ◆cStOEcFYHc様 へ
以前鷲沢奈津嬢の使用許可を与えてくれてありがとうございます。
とりあえずリスキー・ゲーム5とかの話もあるのですが、リリアム副キャプテンで使用する算段です。

また特に3サイズを決める予定とかなければこちらで奈津嬢の3サイズとか設定したいのですが構いませんでしょうか?
勿論大まか決めているのでしたらこの提案は無視してかまいません。

暴走ボート ◆z95s/qs7OM さんへ
檜舞台のストレート投下お疲れ様でした。
思いっきりラリナ×優子をやっちゃいましたが、これ以降は普通に友情としてって感じになります。

では失礼します、後半は少し遅くなるかもしれません。

251:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/08 01:23:02 dqSGaCs5
お疲れです。
やっぱりこういうのがあってこそエロパロ、と思いますね。
理奈がそういう風に使われるのが微妙に何ともいえませんが、
今後普通の関係、とするのならまあ別に気にすることでもないか。

ただ、いくつか設定が間違ってる気がします。
キャラを使ってもらっている身分で申し訳ないですが、
やっぱりズレが大きくなるのはまずいので一応頭に入れていただければ。

>ラリナ
土生はラリナとは呼びません。普通に理奈と呼んでます。監督も理奈と呼んでます。
ちなみに橡浦は姉御、山下はラリナ姉さんと呼んでます。
他の連中はラリナと呼んでいます。
ナレーションでも理奈で通してますが、みなさんは愛称の方を親んでおられるので
ラリナが完全に定着したみたいで、それはそれで嬉しい限り。

>光陵のエース土生翔平
これは野球の豆知識ですね。
エースとはチーム最強のピッチャーを指します。故に土生はエースではないですね。
キャプテンとか、4番とか(実際は3番ですが4番はチーム最強バッター、の意味があるので)がいいかも。

>最近は打撃に関しても凄い当てるようになったし
こっちの小説で、ラリナの打撃は箸にも棒にもかからない、凄まじく酷いものとなってます。
こちらの設定上、ウィークポイントを作った方がなじめるので;
…いや、「すごい当てるようになった」ってのはあくまで「当てただけ」と考えればいいのか(ぇ
以前は空振りばかりだったのが少しだけファールが打てるようになった…うん、そう考えるか(ぇ
余談ですが、土生のピッチングも凄まじくひどいですw


…やっぱりクレームばかりですね。すみません。
家にまでは行ってくるのだから、こっちも優子を使った方がいいですね。(許可をもらえればの話ですが)

252:名無しさんX ◆q5tFVKFOs2
09/01/08 16:42:00 19wxeA4N
暴走ボート◆z95s/qs7OMさんご感想ありがとうございます。
爆乳美少女小学生の絡みは書いてて私も楽しかったです、勿論これ以降はそういう直接なレズ展開にはしませんのでご安心を

それといろいろと間違っていて申し訳ありませんでした
>ラリナ
すいませんでした。みんなラリナ言っているので土生少年ともごっちゃになってました。

>光陵のエース土生翔平
これもすいません。野球だったらエースはラリナ嬢で土生少年はキャプテンまたはリーダーか4番というのが妥当でした。

>最近は打撃に関しても凄い当てるようになったし
これも勘違いでした…土生少年の指導で一塁打とか結構打てるようになったと思い違いをしてました。

いえいえ正直に言っていただけたらこちらもすぐに訂正とか出来ますし…こちらこそいろいろ勘違いしていてすいませんでした。
勿論優子に関しては暴走ボートさんの好きにつかってくれれば嬉しいですし話に支障が出なければ沙織・久美とかも使ってください!
では失礼いたしました。

253:名無しさん@ピンキー
09/01/09 10:45:33 m295P4Xo
前スレの後半辺りまるごと見落としてて気がついたらすでに落ちていました。
だれかdatあげてもらえませんか?

254:名無しさん@ピンキー
09/01/09 19:02:04 vrsrD1IJ
URLリンク(uproda.2ch-library.com)
多分これだと思う

255:GBH ◆GudqKUm.ok
09/01/09 22:00:30 jcMAcKep
投下開始

256:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:02:27 jcMAcKep
久しぶりの登校日、学校から帰ると玄関に見慣れない靴が並んでいた。女物の、やたらデカいのが二足。
イヤな予感に襲われながら居間に入ると、おばあちゃんが二人の女性を前に目を白黒させている。
一人は最近離婚して、一人娘とこちらに帰ってきた環叔母さん。今はデザイン事務所の女社長らしい。地味なスーツ姿だが相変わらず抜群のプロポーションだ。

「…お帰りなさい洋ちゃん、久しぶりね。」

元モデルの叔母さんの横で、所在なげに座っているもう一人の女性を見て僕は息を呑んだ。黒人の…女の子だった。

「この子はンディラよ。洋ちゃんと同い年。」

パニック状態のおばあちゃんの代わりに、僕が環叔母さんの話を聞く羽目になった。
早い話が、自分が出張の間、この黒人の女の子『ンディラ』を預かってほしい、というあいからず叔母さんらしい藪から棒の頼みだった。

…アフリカのヌワザという貧しい小国生まれのンディラは、偶然あるカメラマンにその美しい容姿を見出されてつい去年、僅か十歳で家族のもとを離れてモデルの道を歩み始めた。
紆余曲折はあれどヨーロッパでかなりの評価を受けた彼女は、次に遥か極東での仕事の為はるばる来日を果たしたのだが、この不景気でンディラを招いた小さな広告代理店があっけなく倒産、
突然慣れぬ異国でたらい回し…というのが、十一歳にしてまあ波乱万丈なンディラの境遇だった。



257:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:04:24 jcMAcKep
そしてお鉢が回ったのがンディラと少し面識があった上、業界では新参若輩の環叔母さんという次第。
たしかにどちらも気の毒だが、寝耳に水のおばあちゃんや僕はもっと気の毒だ。

「…で、何とか帰国させる段取りをつけたら、今度のクーデター騒ぎで足止めなのよ…」

『アフリカのヌワザ共和国、革命軍により空港封鎖』
…そういえば、朝のニュースで聞いたような気がする。政情不安による紛争が絶えない国らしい。
ちらちらと横目で窺うと当の本人、長い脚を崩さず正座を続けるンディラはたしかにモデルとしてスカウトされただけあって綺麗な子だった。
小さな顔は彫りが深くどことなく神秘的で、複雑に編み込んだ黒髪を長い首から姿勢の良い背中まで垂らしている、そしてその体はすらりとしつつも、同級生の女の子とは比べものにならない女性の起伏をしっかりと備えていた。

「…と、とにかく母さん達が帰って来なきゃ…」

俯いて答えた僕に、環叔母さんが縋るように言う。

「お願い洋ちゃん!! 急な出張なの。戻ったらすぐ迎えに来るから!!」

なすすべも無く顔を伏せてもごもご呟いていると、はじめてンディラが僕の顔をひたと見つめて言葉を発した。




258:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:05:48 jcMAcKep
「(-_-)×(@_@)〇」

思ったより高く、よく通る澄んだ声。

「へ!?」

でも環叔母さんは彼女の言葉を翻訳してくれず、そればかりか僕がキョトンとンディラを見つめた隙をついて、素早く腰を浮かせて居間から玄関へ逃げ去った。

「ち、ちょっと叔母さん!!」

必死に追いかけたが、環叔母さんは手回し良く呼んでいたタクシーに飛び乗り、窓を開けて僕に叫ぶ。

「…あ、洋ちゃん、今のはね、ヌワザ語で、『ちゃんと人を見ないで話す者は、死んだら悪霊の手下になる』って。」

…なんだよ、それ。

遠ざかるタクシーを呆然と見送り、肩を落として振り返るとンディラが立っていた。彼女の途方もなく巨大なおっぱいと、キュッと締まった腰回りにまた視線が泳ぐ。

…まあ、環叔母さんの無茶は今に始まったことじゃない。そういえば僕と同い年の叔母さんの娘も小さな頃から母親と同じ、モデルの道を歩んでいた。
こちらの学校に通い、今は林間学校に行っているらしいが、きっととんでもない女になっているに違いない…

「(・_・ヾ」

『よろしく』といったところだろうか、ンディラは短い言葉を発して僕を見つめ、僕はこわばった笑顔で必死に彼女を見返した。



259:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:07:43 jcMAcKep
そして気まずく沈黙しつつ、僕とンディラは居間で両親の帰りを待った。おばあちゃんは近所の知り合いの所へ逃亡したようだ。
叔母さんは、彼女は片言のフランス語が話せるから安心だ、などと勝手なことを言っていたが、僕は日本語でも、クラスの女子とすら会話できないのだ…
姿勢よく座布団を暖めているンディラの顔をチラリと盗み見ると、彼女の視線は、テレビに繋ぎっぱなしだったゲーム『太鼓の名人』の太鼓型コントローラーに向いている。

そうだ、こんなときはゲームだ。別に話せなくても、お母さんが帰ってくる位までは間が持つ…

カラカラの喉を絞って、恐る恐るンディラに声を掛けた。

「…ゲ、ゲーム、する?」

再び彼女の大きな瞳が僕を見た。怯えきった僕の顔が映る程の、澄んだ大きな瞳。

「…た、太鼓。ゲ、ゲーム。」

逃げるように這って、テレビとハードの電源を入れる。デモ画面ももどかしく、僕はバチを握り締めた。

「…でね、狸の顔がここへ来たらドン、子狸ならカッ、難易度は…」

ひたすら画面だけを見つめ、日本語でまくし立てる。これをフランス語で初対面の黒人の女の子に説明出来る奴がいたら僕はそいつの奴隷になってもいい…



260:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:10:22 jcMAcKep
「…と、とりあえず僕がやるからね。曲は『リッター×リッター』劇場版主題歌…」

すぐ背後に陣取った、ンディラの静かな息遣いとエキゾチックな香りにキュッと胸が締まる。
とりあえず難易度を『神』まで上げて、流れる狸に意識を集中した。
無意味に緊迫した空気のなか、ようやくイントロが流れ出す。

ドン!! ドドン!!! ドン!! ドドン!!!…

僕はこのゲームにはかなり自信がある。通っている附属小、いや市内の小学校全ての中でも恐らく僕の右に出るものはいない筈だ。しかし、クラスにそれを知るものは誰もいない。僕にはゲームセンターで他人の視線を浴びながらプレイする勇気すらないのだ…
時々、いじめっ子の藤田なんかが、失笑モノの得点で周りに騒がれているのを見ると少し悔しいが、実力を誇示してまたいじめられる原因を作るのもイヤだった。

…ドン!! ドン!! ドン!!

曲が終わり、ちょっと悦に入って振り向くと、なんとンディラの目に賞賛と興奮の色が溢れていた。

「ヾ(≧∇≦*)ゝ」

可愛い笑顔だった。
僕は味わったことのない感情に戸惑い、むやみに頭を掻いて、サッとンディラにバチを渡した。

「…や、やってみる? 同じ曲がいいよね…」




261:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:12:08 jcMAcKep
バチを握った彼女は、再び凜とした表情になると、小刻みに頷いてリズムを取りながら、イントロに合わせてバチを振るい始めた。タンクトップの胸がゆさゆさと揺れる。
ドン、ドドン…



「ひ、洋!! その人…」

いつの間にか帰っていた母さんの悲鳴で我に帰ったとき、ンディラはぶっ通しでの十八曲目をプレイ中だった。しかも初めてとは思えない凄い腕前だ。
コーヒー色の額に汗をうっすらと浮かべ、恍惚と完璧なビートを刻み続ける彼女は神々しくさえあったが、帰宅していきなりその姿を目撃した母さんが腰を抜かすのは無理もない。
環叔母さんのこと、ンディラのこと、ここまでの事情を話すと母さんは酷い小姑を持った泣き言を、また一通りぶちまけた。

「…なんで早川の血筋は無責任な人ばっかりなのよ…」

突如脱サラして小説を書くと言い出した父さんといい、確かにうちの血統は無鉄砲な者と内向的な者の差が激しい。もちろん僕は後者の代表格みたいなものだが…

「…じゃ、引き受けたのあんたなんだから、ええと、ンディラちゃんの世話は全部あんたの仕事だからね!!」

ぎこちないお辞儀をするンディラに愛想笑いを返しながら、母さんは僕にそういい放った。



262:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:13:55 jcMAcKep
彼女は別に好き嫌いもなく、母さんが恐る恐る出した夕食を全部食べた。
気を良くした父さんは無謀にもフランス語で彼女と会話しようとしたが、無惨な失態を家族に晒した挙げ句、すごすごと書斎へ撤退して行った。

「…やっぱり子供同士だねぇ…」

おばあちゃんの言う通り、ふと気付くと別に言葉は要らなかった。類は友を呼ぶ、というやつだろうか…

「ヒロシ。タイコ!!」


食事を終え、再び二人でバチを奪いあうように『太鼓の名人』に没頭したが、あまりに威勢のいい彼女の叩きっぷりに、夜になるとさすがに母さんが辟易して言った。

「…洋!! もう遅いから、ンディラちゃんお風呂に入れて寝なさい!! お布団あんたの部屋に入れとくから!!」

母さんの言葉に僕はだしぬけに現実へ戻る。少しマズいのではないだろうか。『男女七歳にして…』と言う格言もある。
しかし、いそいそと来客用の寝具を用意する母さんの顔には、そういうデリケートな心配は微塵も浮かんでいなかった。
内気な僕が女の子とどうこう…などと考えも及ばないのだろう。



263:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:15:39 jcMAcKep
「…ええとね、ここは服を脱ぐとこ。あ、着替えある?」

短い間にジェスチャーの力を実感した僕は、ンディラを浴室に案内し、身振り手振りでお風呂の使い方を説明した。タイルにしゃがみこんでタッチパネルをいじる。

「こっちがシャワー温度で、給湯温度がこれ。今は四十度。判るよね?」

…まあ、彼女も昨日密林から出て来た訳じゃない。ゲームも操作出来るんだから…

そう考えながら振り返ると、僕の目の前にンディラの密林があった。
クラクラしながら見上げると、なんの躊躇もなくンディラは艶やかな黒い裸身を晒し、僕を見下ろしていた。僕の脱衣所での身振りを、きっちり実行したらしい…
そして彼女はまだ入浴設備の説明を待っているらしく、小首を傾げてじっと僕を見ている。バクバクと響き渡るような自分の心音のなか、僕の口は勝手にお風呂の説明を続けていた。

「こ、これが鏡で、顔が映る。それから、この桶は湯が汲めるし…」

ヌワザの文化では彼女はまだ裸体を恥じる年齢ではないのかも知れない。僕さえ騒がなければ問題なしと思うと、ようやくパニックと動悸は収まり、変わって激しい興奮と欲望がむくむくと頭をもたげてきた。



264:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:17:25 jcMAcKep
『ちゃんと人を見ないで話す者は、死んだら悪霊の手下になる』

そうだよな。
その言葉を心の楯に、僕はンディラの裸を存分に鑑賞しながら説明を続ける。
きめ細かなチョコレート色の肌。細身なのに力強く張りつめた長い手足。唯一無防備な柔らかさを湛える二つの雄大な乳房はツンと吊り上げたように重みに抗って上を向いている。
まるで奇跡を目撃したように、身動きできなかった。…本当のところ、僅かでも股間に刺激を与えるのがヤバかったのもあるが。
しかし僕がいままでの人生で、多分一番綺麗なものを見て感動したのは真実だった。


「…だ、大体わかったよね?」

やがて入浴剤の効能についてまで説明を終えてしまった僕は、後ろ髪を引かれつつ浴室を出た。
扉を閉める最後の瞬間に名残惜しく振り返ると、ンディラの形よく締まった褐色のお尻が大きくバスタブを跨ぐのが見えて、その瞬間、僕の下半身は限界を迎えた。

「う!!」

…股間を押さえてぶるぶる痙攣する僕の耳に、ガラスの扉越しの鼻歌と、シャワーの水音が聞こえる。…幸い脱衣所だ。替えのトランクスは沢山あった…





265:『ンディラのいた夏』前編
09/01/09 22:19:39 jcMAcKep
…慌ただしい一日に疲れたのだろう、僕が風呂から上がるとンディラはもう二階の僕の部屋で床に就いていた。
屈託のない彼女の様子に、ちょっぴり罪悪感が込み上げたが、ンディラが枕元に並べた明日の着替えや目覚まし時計を見ると、残り少ない夏休みがふいに眩しく輝きだすのを感じた。明日は何をしようか…
ざっくりした白い部屋着で横たわった彼女は、もっと白い歯を見せて微笑み、「ヒロシ、タイコ。」と囁いてから、タオルケットに潜り込む。

「…うん、また明日ね。」

僕は答えて明かりを落とした。そして目を閉じると、低く静かなンディラの歌声が聞こえてきた。

…ああ、子守歌だ…

緩やかで優しい声音に耳を傾け、恍惚と眠りの縁を漂っていると、やがて単調な調べはときおり、押し殺した嗚咽で悲しげに途切れ始めた。
…動乱の祖国ははるか遠く、彼女はまだ僕と同い年なのだ。涙の理由など問うまでもない…。
僕は慌てて飛び起き、彼女をそっと抱き起こし尋ねる。

「大丈夫!? やっぱり、心細いよね…」

僕に凭れ身を起こしたンディラは異国の月を濡れた瞳で眺めながら、子守歌の続きのように小さな声で囁いた。

「…ンディラ、ジラ、ナジャ、ハイダ、ナアダ…」

指折り数え、最後に赤ちゃんを抱きかかえる仕草。ンディラは故郷の兄弟姉妹を案じているのだ。

「…五人兄弟だね…」

僕は五本の指を立て、人差し指でンディラの鼻をちょんとつついた。
涙を拭いた彼女は頷くと、月明かりの中で言葉もなく僕に語り続ける。
干魃、空腹、銃を抱えた兵士、…あらゆる身振りが、まるで紙芝居のように理解できた。不安、恐怖、そして彼女の憤りと悲しみの全てが。
…気がつくと臆病なはずの僕はしっかりとンディラの肩を抱きしめ、やがて彼女が静かな寝息をたてはじめるまで、でたらめな子守歌を歌い続けていた。


後編に続く



266:GBH ◆GudqKUm.ok
09/01/09 22:21:16 jcMAcKep
投下終了

267:名無しさん@ピンキー
09/01/09 22:24:58 PS9VVJOP
リアルタイム投下遭遇、GBHさん今回もGJ!!!
そうかー、こういうのもありか、ありなのか……!
顔文字フランス語かわええw
続きwktk

268:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/09 22:54:52 bxc8KO+3
GJです。
普段は顔文字を忌み嫌う俺ですが、この使い方は非常に感銘を受けました。

…その国自体は実在するんだろうか(そこかい
俺も続きを書かないと。

269:名無しさん@ピンキー
09/01/09 23:41:49 Zlf6h+ID
色々考え付くのが凄いのう ここのスレは

270:名無しさん@ピンキー
09/01/10 15:13:36 MJ7z8eWk
すごいな〜黒人少女ンディラちゃんのHな活躍に期待しますし
野球&ソフトボールの小説もよかったです

271:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/11 10:36:57 ZWN3PEPd
さて、投下します。今回と次回は試合です。

まあ、野球ものにした地点で、エロパロにもかかわらず試合になるのはしょうがないので。
極力短くするように努力はしたので、それで勘弁。

272:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:38:49 ZWN3PEPd
(涌井もかなり疲れている…
 この回が最終回ならともかく、まだ5回だ、精神的にも負担はあるはず!)

甘い球だけを狙う。
そしてインコースに甘く入った球を思い切り叩く。


「どう思っているんだ?戦況を。」
「今から3点差をひっくり返すなんて、無理だと思う。」
「そうか?野球は結構大逆転が起こるもんだろ。それにあと5回も攻撃が残ってるし。」
「…健太。リトルリーグは、6回までしか無いのよ。」

紗英の冷静な指摘に、目を明後日の方向に泳がせるしかない東小の魔王。
小学生の体力で、9回まで野球が出来るわけがない。

「じゃあ、なんで見てるんだよ。勝負がついてると思ってるんなら、見る価値なんざ…」
「カナたんがまだ出てない。」
「それ見たら帰るのか?」
「…カナたんは、何かを私に見せようとしている。それを見るまでは、帰れない。
 たとえ負けても、何かを見せてくれるはず。」
「ふーん。…信頼度高いな。」

観客はほとんどが野球好きの人ばかりで、西小東小関係の観客はほとんどいない。
せいぜいシバケンと紗英くらいのものである。
土生が心の中で掲げていた、スタンドを2つの小学校のるつぼにする、という理想は、いばらの道である。


『2番、ショート、赤松君。』

(橡浦が出てくれた…本来なら送りバントだけど、3点差だと打って出るしか無い…
 ただ、俺のバッティングじゃ、間違いなく三振かゲッツー…)
(となれば赤松、あれだ。)

土生がサインを送る。
サインの中身は、『必殺技を使え』。

涌井がセットポジションからモーションに入る。
そしてリリースの瞬間、バントの構えに入った。

(セフティーだ!)
(そう来たか!)
(突っ込め!)

赤松のバントの構え。それは紛れもなく、ファースト方向へのプッシュバントの構え。

マウンドの涌井がファースト方向に意識を傾け、ファーストの石井が猛ダッシュをし、
セカンドの片岡がファーストのカバーに入り、ショートの中島はセカンドのカバーに。

273:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:40:00 ZWN3PEPd
(かかった!)

…そして、サードの中村は、その打球に全く反応できなかった。

「サード!」
「くっ!」

涌井の体重はファースト方向に傾き、打球に体がついていけない。
肝心の中村は、ファースト方向に転がるものだと瞬時に思い込んでいた。

…これが、赤松の必殺技。
右打者の方が不利とされるセーフティーバントを、プッシュバントというフェイクをかけるという形で逆手に取った。


「ノーアウト、1塁2塁…やっと運が向いてきた。」
「よっしゃ、いけえ!」

土生のつぶやきに乗せられ、ベンチが声援を送る。
その対象はもちろん、今日3番に座るユキ。

(打たなきゃ…5点も取られて、このまま取り返せないまま終わりたくなんてないっ!)

プレッシャーもある、疲労もある。
それでも、意地でも打ち返す。

『3番、ピッチャー、瑞原くん。』


「おお、あいつか。」
「…なに目を輝かせてるの?」

紗英のやきもち。
ユキを見た瞬間、シバケンの目は輝いていた。

…もちろん、恋愛的要素ではない。あくまで、格闘に身を置くものとして、目を輝かせたまで。

「いや、あいつ、昨日俺の頭に蹴りを入れようとした奴だろ?
 あんな蹴り、久しく見なかったぜー。」
「…。」

安心感を感じる一方で、呆れた。
何か違うだろうとツッコみたくなったが、ツッコんだところで意味はないと瞬時に悟った。
浮気でないだけ、マシと思う事にしよう。

…よく考えると、激しい戦いに身を投じてないという裏返しである。いい事なのかな?

274:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:40:49 ZWN3PEPd
「ストライーク!」
(くそ、当たらない…)

いくら運動神経に長けていても、まだピッチングそのものになれていない。
3回の大量失点も響き、スタミナがほとんど切れかけている。

…それでも、意地でも打たなければならない。

「三遊間!」
「抜けろ!」

三遊間のど真ん中を、転がっていく。
決して鋭い打球ではないが、しぶとく抜け…

「させるか!」

ショート、中島が飛び付き、好捕。
不安定な体勢のまま、セカンドに送球。

「アウト!」

俊足の橡浦との競争になり、間一髪アウト。
それでもセカンドのフォースアウトで精一杯のはず…だったが。

「ユキ!」
(ユキちゃん!?)

バッターランナーのユキが、倒れている。
疲労で足がもつれ、転倒。本来の足の速さならそれでも1塁には余裕で間に合うが、

(体が…思うように動か…)

やっとの思いで立ち上がり、よたよたと走りはじめ、しかし時既に遅し。


「あの野郎…何してるんだよ。」
「健太、あんまりそんな事言うもんじゃないよ。」
「でもよお、なんであんなにへとへとなんだ?俺ならまだガンガン動けるぜ。」
「ピッチングはみてる以上に疲れるものなの!…あたしもやったことないけど。」

2人にもあきらめムードが漂い始めた。
ノーアウト1塁2塁が、2アウト3塁。初めてながらよく頑張ったユキを責める選手はいないが、

…この事実は、重い。

275:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:41:57 ZWN3PEPd
「ご…めん…」
「は、ははは、いーよ、きにするなよ…」
「そ、そうだ、まだ9回もあるし、山下が2ラン打って1点差に詰め寄っとけば…」

土生は相変わらず表情1つ変えない。
…そして、冷静に状況を見つめている。

「…その山下が敬遠されているぞ。」
「え!?」

1階にタイムリーを撃たれているので、危険と判断しての敬遠、フォアボールの宣告。
5番以降が貧打のこのチームにとって、非情の宣告に他ならない。

「…どこへ行く。」
「もう、投げられないよ…」
「…。」

ユキがダグアウトに入ってしまった。
ふがいないピッチング、ふがいないバッティング、それに疲労がのしかかる。


『5番、サード、青野くん。』

「な、なんとか、しないと…」
「…青野、どうかしたか?」
「い、いえ、絶対に打ってきます!なんとか1点でも…」
「ほう…」

周りの人間全員が、青野を見つめている。
…土生の狙いが、見事に的中した。

「…今までならお前たちは俺に頼っていただろう。
 正直、ずっと俺も試合に出たかったが、お前らの依存心がなくなるまでは、試合に出ないつもりだった。」
「え?」

ゲッツーという大ピンチに、自然とチームはまとまっていた。

「ハッキリ言って、一刻も早く交代したかった。でないと負けるからだ。
 でも、それじゃあお前たちが成長しない、だからリスクを承知で動かなかった。
 この回でもし俺が動かなかったら、負けてただろう。ギリギリセーフってとこかな。」

知らず知らずのうちに、チームはまとまっていた。
もし、この場面にいたっても依存心がなくなっていなければ、土生は代打を出せず、完全に手遅れだった。

276:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:42:28 ZWN3PEPd
「それじゃあ!」
「だが、俺はまだ出ない。緒方!…行ってくれ。」
「…うん。」

てっきり土生が出るものだと思っていた。

「ま、まずは土生さんが出て、3ランで同点に…」
「ここは何としても1点が欲しい。何が何でも、な。
 勝負への執念は、経験豊富な緒方の方が上だ。緒方に任せよう。」
「でも、緒方はブランクが…」
「執念は衰えていないみたいだがな。さて、代打告げに行ってくるよ。」

土生が審判のもとへ行く。
ネクストバッターズサークルまで緒方と一緒に歩き、1人球審のもとへ。

「絶対土生さんの方がいいと思うけどな…」

確実に、緒方に失礼である。
だが、緒方は無視していた。…いや、聞こえていなかった。

「あんまり言うな、怒るよ、緒方が。」
「…そ、そうだな、あんなに怖い眼してる…」

ものすごい集中力が、青野たちには鬼の目に見えた。
周りのウジ虫を黙らせる、オーラが緒方にはあった。それは決して、今の土生でも身につけられないものである。


『バッター、青野くんに代わりまして、緒方くん。』

「あ、カナたん!」
「出てきたな。あいつが、紗英に何を伝えたいのか…」
「うん。」
「でもな、喧嘩も柔道も、勝たなきゃ評価もらえないんだよな。
 ここで求められるのは、内容じゃない、結果。
 ハッキリ言うが、紗英が内容を見ているとしても、結果出さなきゃ全く意味がないと俺は思うぜ。」
「…分かってる、この場面は、そんな場面だよね。」
「!」

てっきり反論されると思っていた故、意外だった。

「だったら、カナたんは、絶対にヒットであたしに応えてくれるよ、…あたしに、ね。」


「ストライーク!」

際どいコース。
少し球威は落ちたが、その分さらに制球に気を配る事でカバー。

(さすが涌井、と言ったところか?)
「ガンバレ、緒方―!」

2球目、少し甘く入る。
そこをフルスイング。

「!」
「お、緒方!」

277:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:43:00 ZWN3PEPd
空振りの直後、膝をついてしまった。
左膝の踏ん張りが利かず、フォームを崩してしまう。

(そんな…)

緒方は立ち上がったので、幸い古傷の再発は無いようだ。
だが、青野が思わず叫んだ。

「は、土生さん、今からでも遅くはないです!」
「…あいつのプライドに、かかわるだろう。」
「そんな事言ってる場合じゃ…」
「プライドがあるからこそ、何が何でも打ってくれるさ。とにかく信じろよ。
 たとえそれでだめでも、それは結果論だろ?」

「ファール!」

辛うじて当てる。
だが、直球のスピードについていけず、タイミングが合わない。

(ふん、代打が女なんざ、なめんじゃねえ!)

決めに来る涌井。インコースにストレート。
緒方が必死になってバットを出す。


「ああ、打ち上げた…」
「おっしゃ、打ちとった!ライト、いや、ファースト!」

ライトが前に、ファーストが後ろに下がる。ふらふらと上がった打球が、落ちてくる。

「お、おいおい、やばいやばい…」

佐藤も石井も、急いで落下点に向かう。…だが、なかなかたどりつけない。

「やばいやばい!落ちるぞこれ!」

両者飛び付く。
そして、両者の間で、…芝の上で、ボールがはねた。

「よっしゃあああっ!」
「タイムリーだー!」

スコアに1が点灯。2点差に詰め寄る。
山下も巨体を必死に動かし、3塁に到達。

278:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/11 10:43:28 ZWN3PEPd
「打った、打ったよカナたん!」
「…しかし、打った直後にコケなかったか?ひどい打ち方だったなありゃあ。」

素人目に見ても、ひどいフォーム。
だが、そんな事、紗英は意に介さない。

「結果がすべてなんでしょ?…これが、カナたんの答え。
 たとえカッコ悪くたって、執念だけでヒットにした、カナたんの答え、なんだね。」
「あいつの答え?」
「うん。
 カナたんが見せたかったのは、ほかでもない、自分が頑張っている姿。それは分かってた。
 でも、それをあたしに認めさせるには、ただ頑張るだけじゃダメ、結果を、あたしに見せたかった。
 だから、誘った。野球観戦に。カナたんの野球を認めなかったあたしをね。」

でも、結果を目の前で出されては、認めざるを得ない。
そして、ここまで来たら年下の自分にあれだけ大口をたたいた土生翔平にも、
自分に結果を見せてもらわないと気が済まない。


「ようし、みんな、ここまでよく頑張った。後は任せろ。」
「あ、土生さん、おいしいとこ取りですか?」
「ははははは!」

まだ2点負けている。だが、先ほどの悪い空気は、完全に消えていた。
…なぜなら、ホームランを打てば、逆転だから。

『6番、白井君に代わりまして、土生君。』

「さあて、決めるとするか。」
「いけー、土生さん!」

一方、マウンドでは。

「土生が来たか…なんでスタメンにいなかったかは分からないが…」
「ここは敬遠だな。」

土生の名前は県内のリトルリーグに知れ渡っている。
…だからこそ涌井は、引き下がらなかった。

「うるせえ!ここまできて引き下がれるか!
 さっさと守備位置に戻れ!」
「涌井、ここは」
「さっさと戻れ!」
「涌井…」

仕方なく守備位置に戻る。
こうなったら、何としても抑えてもらわねば。その細川の意志は…

「この野郎っ!」
(終わりだ。)

インローのストレートをたたかれて、打ち砕かれた。

「いったー!」
「いったーー!」
「いったーーー!」

文句なしの打球が、フェンスのはるか上を突き進んでいった。

279:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/11 10:43:52 ZWN3PEPd
投下終了。

…ありがちな展開、っていう批判はなしで;

280:名無しさん@ピンキー
09/01/13 22:18:57 xy/E43e9
乙っす!!
ここから大逆転劇の幕開けですね。

281:名無しさん@ピンキー
09/01/14 02:56:17 yHSBS5iE
a

282:名無しさん@ピンキー
09/01/15 13:39:08 nP+kYmKi
スレリンク(eroparo板)

283:GBH ◆GudqKUm.ok
09/01/15 21:41:06 AKfkpxwt
投下開始

284:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:42:59 AKfkpxwt
自分が遠く異郷の地にいることをいちばん実感するのは朝、目覚めて見慣れない天井を見上げた時だと僕は思う。

「おはよう、ンディラ。」

「ZZzz....(ρ_-)o」

ンディラと暮らし始めて一週間、僕は彼女より早起きして、少しでも孤独な時間を過ごさせないよう決めていた。それに、寝相が悪く暑がりな彼女の寝姿は、かなりの見ものなのだ…

「…ウリラちゃんは茄子の田楽、食べられるのかねえ?」

ようやく外国人への恐怖を克服したおばあちゃんは、「ウリラちゃん」の世話に夢中だ。そしておばあちゃんの辞書には、『ン』で始まる名前など存在しない。

「…ンディラさ、今日は海へ行こっか?」

茄子の田楽にシジミの味噌汁でパクパクと朝ご飯を食べていたンディラは、いつものようにキョトンと僕を見た。
吸い込まれそうな大きな瞳を見つめながら、これまたいつものように僕は立ち上ってジェスチャーを始める。

「海。水。ジャブジャブ。」

果たして判っているのか、彼女はすぐにニコリと頷いて『ゴチソウサマ』をやると玄関に駆け出した。
昨日から彼女は、ようやく一人で乗れるようになった僕の自転車に夢中なのだ。

「水着は…、ま、いいか…」



285:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:44:23 AKfkpxwt
『…誰か、この辺で女の子の水着売ってるとこ知らないか!?』

そう尋ねられる女友達がいたら、どんなにいいだろう…まあ、ンディラにあの海の最高の景色を見せてあげられたら、『心臓破りの峠』を二人乗りで駆け上がる価値はある。たしか彼女の国ヌワザには、海がない筈だった。

麦藁帽子だのお茶だのをせっせと用意して、ようやく玄関まで出ると、外からンディラの悲鳴と、ガッシャン!!という派手なクラッシュ音が聞こえた。

「\(≧Д≦)/」

大変だ。ンディラに怪我でもあったら環叔母さんに申し訳が立たない。
慌てて飛び出すと、案の定彼女は自転車ごと向かいの側溝に落ちてもがいていた。幸いに怪我は無いようだ。

「(>_<、)」

べそをかいているンディラと自転車を順番に引っ張っぱりあげて被害を確認する。
幸いにンディラは無傷でほっと胸をなで下ろしたが、自転車は重傷だ。あちこちひん曲がり、前輪はパンクしている。

「あちゃー、駄目だなこりゃ…」

悄然と涙ぐむンディラに笑顔を見せて慰め、今日の予定変更を思案した。

…まずは自転車を修理しなきゃ…別に海は好きなときに行けるしな…




286:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:46:07 AKfkpxwt
「ンディラ、商店街の自転車屋へ行こ。それから、ま、ぶらぶら店でも見ようか?」


ギイギイと鳴る自転車を押して歩き出した僕の後ろを、ンディラはしょんぼりと少し離れてついてくる。ひたすら笑顔で話しかけるのが、こんなときは一番だ。

『大丈夫だよ!! すぐ直るから。』

でも、まだ謝罪らしい言葉を繰り返す彼女に向けた僕の微笑みは、決して作ったものじゃなかった。

気まぐれに少し遠回りして河原を通る。
この『危険!!注意!!』の河原で蝉を捕ったり、キャッチボールをしている小学生は、ほとんど公立の児童だった。公立の連中はいいな、と少し思う。
僕の通う私立の附属小は成績とお行儀にだけはうるさいが、裏に回れば小派閥に別れての、陰険な足の引っ張りあいばかりの嫌なところだ。
高校までずっとそんな調子だと考えると少し気が滅入るが、河原を駆け回っていつもの陽気さを取り戻したンディラを見ると、すぐに憂鬱は吹き飛んだ。

「ンディラ!! 河へ入っちゃいけないったら!!」



287:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:48:33 AKfkpxwt
やがて商店街に着くと、ンディラは興味深そうに寝具店だの仏壇屋の店先を熱心に覗いた。モデルの癖に洋服にはあまり興味がないらしい。
僕には全く縁のないそんな店の店員さん達はみんな、壊れた自転車を押した風変わりな二人組に親切に応じてくれた。

「…で、こちらが弥勒菩薩。いいお顔でしょ?」

「…ミロクボサツだって。」

「(´∀`)?」

…買う筈のない品物を挟んでの、トンチンカンなやり取り。でも普段見慣れたアーケードの下は、ンディラと歩くと不思議な別世界のような面白さに溢れていた。

行きつけの自転車屋に修理を頼み、身軽になって僕たちはまた商店街を歩く。修理は一日で終わるらしい。

この辺では大きなゲームセンターの前を通り、ちょっと寄ろうかと迷いつつ立ち止まると、店内にいやな連中の姿が見えた。
藤田将雄。僕のクラスで一番幅を利かせている乱暴者。取り巻きの矢口と加賀も一緒だ。
ンディラの前で馬鹿にされたり、冷やかされたりするのは嫌だった。顔を伏せ、足早に通り過ぎようと、僕は慌ててンディラの手を握る。

「ヒロシ!! タイコ!!」

しかし、最悪のタイミングで『太鼓の名人!!』のアーケード機を店頭に見つけたンディラは目を輝かせ、逆に僕の手をぐいぐい引いて店頭に走った。
まずい。非常にまずい。
ただでさえ目立つ彼女に、周囲の注目が集まる。ヒマそうな藤田たちに気付かれるのも時間の問題だ…




288:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:50:32 AKfkpxwt
バチを握り締めてやる気満々の彼女に泣き笑いを見せながら、僕はやけくそでコインを入れた。
もう、どうにでもなれだ。
彼女は当たり前のように『対戦モード』と、難易度『神』を選択し、さらに人目を引きつける。
どん底な僕の気分とはうらはらに、彼女の十八番、『リッター×リッター』劇場版主題歌のイントロが威勢よく流れ始めた…

…ドン、ドドン、ドン、ドドン…

機械的に僕の両手はバチを振るう。しかし、僕とンディラのバチが寸分の狂いもなく打ち降ろされてゆくうちに、不思議と気分が高ぶってきた。
…まあ、藤田たちに捕まるのは、とりあえず一曲片付けてからだ。よし、Aメロは思いっきり遊んで…
キョロキョロとよそ見をしながら最速のビートをこなす僕と、リズムの化身と化して精緻なバチ捌きを見せるンディラに、やがて人々が立ち止まって目を向け始めた。

「…お、すげ…」 「え!!『神』!?」

僕がずっと恐れていた『ギャラリー』だ。しかし、見られる緊張はどこにもない。むしろ…快感だった。

ンディラと一緒だと、こんなにも度胸が座るのだろうか?
サビに入る頃には、僕はもっと歓声が欲しくなってバックハンドに十字打ちと、立て続けに神技を披露した。



289:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:52:10 AKfkpxwt
うおう、というざわめきに少し背後を覗くと、半端じゃない人だかりが出来ている。
僕達に気付いた藤田や加賀はもう、その中の小さな一人に過ぎなかった。
よし、まだまだ聴かせてやるぞ…

「「YHAAAAAAAAA!!!!!」

ンディラの裂帛の気合いに、聴衆のどよめきがひときわ大きくなった。
彼女は腰をエロティックにくねらせ、キュロットのお尻をブンブン振って観衆を挑発しながら、完璧に僕の連打についてくる。
ギャラリーの最前列は柄の悪い高校生たちだ。普段の僕なら震え上がっているだろう。

し・か・し、彼らの腰は小刻みに揺れる/派手なスニーカーがステップを踏む/銀色のアクセがジャラジャラと鳴る!!

踊り出した不良たちは/ゲーセン牛耳るバッドボーイズ/いくぜヌワザ直送最高のノイズ/叩き込めN′dira!!/ただひとりの女神!!

恍惚の疾走感のなか、ンディラが最後のシャウトと共に、キャミソールの邪魔な肩紐をビリッ!!、と引きちぎった。

「うおおおおおお!?」




290:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:54:46 AKfkpxwt
ブルン!!と琥珀色の乳房が飛び出し、力強いビートに合わせて汗を飛ばしながら激しく揺れる。

窮屈な拘束から逃れた野生の半球は、クライマックスの連打に乗って沸騰したように暴れ狂い、この一曲に最後の華を添えた。


まだ鳴り止まぬ拍手と熱気のなか、ンディラの服の応急修理をしていると、いつの間にか近くに同級生が集まっていた。
ぽかんとしていた藤田がようやく口を開こうとしたとき、取り巻きの一人、ゲーム通で皮肉屋の加賀が僕の前に進み出る。

「…ブラヴォー、早川。彼女も最高だった。」

彼の声にはいつもの辛辣な調子は微塵もなく、僕は素直に彼を見つめ答える。

「…ありがとう。ちょっと羽目外し過ぎたよ。悪いけど、連れがこんな様なんで…」

「ああ。休み明けに、色々聞かせてくれ。」

胸を張って彼らと別れ家路につく。心地よい疲労と満足感。最高の相棒ンディラに感謝した。

「…でもンディラ、おっぱいはやり過ぎだよ。下手すりゃ、警察のお世話だ。」

くすくす笑いながらおっぱいのジェスチャーをする。

「オッパイ!?」

「そう、おっぱい。」



291:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 21:57:26 AKfkpxwt
彼女はちょっと考え、満面の笑顔で僕に答える。

「…ヒロシ、タイコ、オッパイ!!」

「…なんだよ、それ!!」

商店街のアーケードを出ると夏の日差しはまだまだ容赦なく僕たちに照りつける。
明日こそ海へ行こう。母さんならンディラの水着くらいなんとかしてくれる筈だ。
僕の前を踊るように駆けるンディラの、細く編み込んだ漆黒の髪が揺れる。

…夏の妖精みたいだ…

そんなメルヘンチックな自分の想像にひとり顔を赤らめて、僕は陽炎の中の彼女を追いかけて走った。


しかし、家に帰ると、突然の別れが二人を待っていた。
見覚えのある靴が玄関に並んでいて、僕とンディラは複雑な顔を見合わせる。
居間から聞こえるのは環叔母さんの声だ。仕事が終わり、ンディラを迎えにきたのだ…

「…長いことありがとう洋ちゃん。空港の封鎖がやっと解除になったの。今ならンディラは安全に帰国できるわ。」

…辛かった。立っていられない位に。判っていた筈のに、ずっと目を背けていた別れの時。
でも、浮かない顔の家族を見回し、僕は懸命に明るい声を出そうと努力して答えた。ンディラはやっと弟や妹のもとへ帰れるんだ…

「…ンディラ、良かったね。戦争は終わったんだ…」

唇を噛んだンディラにそう言って、無理に笑いながら手を差し伸べたとき、父さんが静かに呟く。

「…洋。戦争は終わっていない。ヌワザはもう三十年も、こんなことを繰り返しているんだ。」

「え!?」

動転した僕は叫んだ。砲火の中へンディラを送り帰すというのだろうか、救いを求めるように見つめた叔母さんも、父さんの言葉に頷いた。

「…政府軍の反攻は、長続きしないでしょうね……」

「…そんな、そんな…」


292:『ンディラのいた夏』後編
09/01/15 22:00:06 AKfkpxwt
…身勝手な僕は、父さんと叔母さんの言葉を憎み、遠い国の貧困を、飢餓を、戦争を激しく憎み、最後に、自分の無力さを一番憎んだ。
部屋の隅で、涙もろい母さんの背中が震えている。
でも僕は、男の子として絶対に、ンディラに崩れ落ちて泣く姿など見せる訳にはいかなかった。
重苦しい空気のなか、僕たちは茫然と立ち尽くす。
そのとき、最近めっきり足元が頼りなくなったおばあちゃんがよろよろとみんなの前に進みでた。

「…ウリラちゃん。これを持ってお行き。おばあちゃん、朝から深國神社へ行って、貰ってきたんだよ…」

「…ミクニ…神社?」

おばあちゃんはンディラに赤いありふれた御守りを渡しながら続けた。

「深國姫っていう…女の子の神様が祀られてるお社だよ。環たちも、ちゃんと持ってるね?」

「…うちの子はランドセルに付けてるわね…」

環叔母さんはスーツの胸元から、古ぼけた同じ御守りを取り出す。

「…おばあちゃんが保証するよ。どこにいても、なにがあっても、深國姫の御守りは、ウリラちゃんを守ってくれる…」


御守りを握りしめたンディラの唇が震えながら動く。

「ヒロシ…」

彼女はもどかしげに言葉に詰まった。
教えてやれなかった幾つもの言葉。

「さようなら…」

…神様なんか信じたことはなかった。でも僕はおばあちゃんの言葉と深國姫に全身全霊で縋り、去って行く彼女と、彼女の兄弟の幸せを祈りながら、精一杯の笑顔で『さようなら』をンディラに教えた…



テレビは今日もヌワザの混迷を伝え、僕はそのたび深國姫に祈る。
…ンディラ、ちょっとだけ強くなった僕は、ちゃんと胸を張って話しているよ。
そして遥かな君に追いつけるまで、僕の祈りはずっと続くだろう。


おしまい



293:GBH ◆GudqKUm.ok
09/01/15 22:01:45 AKfkpxwt
投下終了

294:名無しさん@ピンキー
09/01/15 23:20:31 kGN13Phr
顔文字の次は沖方文体ときましたかw
個人的には本来どっちも苦手なんですけど、それがぜんぜん気にならないというか、
むしろピンポイントに投入することで絶妙に上手く働いてますね。すごいなこのSS。
何より、このえろさと切なさの絶妙のミックスアップはすばらしいです。藤田や高校生たちの反応とかいいなあ。
世界観もつながってきましたし、非常にGJでした! 次回作お待ちしてます。
ンディラはええ子や。ばあちゃんもええ味出しとる……


295:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/16 03:23:30 OPQfH11J
>>280
どうもです。
すでに逆転している展開ですが;

>GBHさん
おつかれです。楽しませてもらいました。
いいですねえ、やっぱり、こういうの。
胸がプルンと飛びだすのはやっぱりお約束w

…やっぱり、野球にしたのは間違いだった気がする;

296:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
09/01/17 18:56:55 qh/5ZPz4
というわけでさっさと試合の方を終わらせてしまいましょう。

あくまでもエロパロ、の趣旨は忘れずに…
といってもほとんど全員エロ抜きでやってるし、それでも問題はないですよねw

297:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/17 18:57:49 qh/5ZPz4
6−5。
緒方の執念と土生の他の追随を許さない実力によって得たリードである。

「よーし、あと2回…って、あれ、ユキは?」
「大丈夫だって、ラリナが何とかしてくれるさ。」

あとは理奈に任せれば…その思考を真っ先にたちきったのは、まぎれもなく土生だった。

「…今日はあいつに完投させる。ちょっと待っててくれ。」

ベンチ裏に出て行くと、更衣室へと続く廊下を進んでゆく。
案の定、女子更衣室にはユキがいた。…上半身裸で、ベンチに寝転んでいる。


「何をしている。さっさと試合に出ろ。」
「…なんで?いいじゃないですか、あとは」
「理奈に任せるってか?馬鹿な事言うな、今日は最後まで投げてもらう。」
「…最低ですね。女子の更衣室に、それも裸の女子のいる場所にはいるなんて。」

話をはぐらかそうとする。
しかし大人との比較でも巨乳といわれるほどの胸があるのに、裸を見られているにしてはかなり冷静な様子。
一方の土生も、日ごろから理奈の裸と付き合ってる故かまったく動揺していない。

「とりあえず、さっさとアンダーシャツ着換えろよ。見苦しい。」
「昔から、熱い時は普通に男子の様に裸でいましたけど?胸が膨らんでからも。」
「…逃げるのか?」
「!」

核心を突かれた。今一番言われたくない言葉。

「…しょうがないじゃないですか。それに、これ以上投げたって…」
「逆転したぜ。6−5だ。」
「!?」
「まったく、せっかくかっこいいとこ見せたかったのに、なんで消えてるんだよ。」
「…あたしは、あなたの彼女じゃない!」

すっと起き上がると、ベンチを蹴りあげた。
大きな音を立てながら、数センチ移動するベンチ。そしてしばらく広がる静寂。

298:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/17 18:59:01 qh/5ZPz4
「〜〜〜っ!」
「…別に泣いてもいい。
 でも、ユキちゃんは泣けても、理奈は果たして、涙を流せるかな?」
「…どういうことですかっ!」
「あいつはエースだ。たとえどれだけ打たれても、誰にも頼れずに、歯ぁくいしばって投げ続けなきゃいけねえ。
 エースの宿命だからしょうがない。逆にいえば、ユキちゃんには理奈っていう逃げ道がある。」
「そうですよっ!だから、あとは理奈さんに!…。」
「どうした?」

空手を始めて5年。
常に同年代から尊敬のまなざしで見られ、それを生きがいの1つとして戦ってきた。
常に頼られ、常に勝たなければいけない使命のもと、その使命を感じつつもプレッシャー等感じずに勝ってきた。
頼られることが、快感だった。

それが、ここでは2番目ピッチャー。
球速以外では圧倒的にこっちの方が上なのに、球速故に、エースになれずに。
…いや、違う。オーラっていうのか、理奈さん、緒方さんに持っているものが、あたしには欠けてる。
同い年の赤松君ですら、実力はこっちのはずなのに、あたしの方が…


「ああもう、わかりましたよ!投げればいいんでしょ!?」

気が付くと、そう言い放ち、手が勝手に服をつかんで体に着せている自分がいた。

(…言いたい事は伝わったみたいだけど、こうも簡単に説得できるとはな。)
「なんなんですか、あたしを馬鹿にしてるんですか!」
「いや、別に。」

追いつきたい、追い越したい。
エースになって、チームで一番になって、みんなに頼られたい。尊敬されたい。
だったら、こんな事で折れてちゃだめ、今日の結果じゃみんなあたしを認めてくれるはずはない…

でも、じゃあせめて最後まで投げて、見返さないと、やり返さないと!

「おーい!守備どうするんだー!審判が早くしろって、急いでくれー!」

青野さんが呼んでる声がする。
…さあ、行かなきゃ。あたしにはセンスがある。そのセンスがどこまで通用するか、試してやる!


『光陵リトル、選手の交代を、お知らせします。
 先ほど代打に入った土生君がそのままキャッチャー、先ほど代走しました野村君がファースト、
 ファーストの山下君がサードに入ります。
 4番、サード、山下君、5番、ファースト、野村君、6番、キャッチャー、土生君。以上に変わります。』

緒方の代走で理奈が出ていたので、そのままファーストに入れる。
誰もがリリーフ登板だと思い込んでいたので、

「今日はユキちゃんに任せるのかな?」
「ラリナの方が…」
「土生さんとラリナが遅刻したことなんて、もうどうでもいいと思うけどなあ…」

土生には聞こえてなかったが、その雑音はしっかりとユキの耳には届いていた。
…見返さないと。絶対に最後まで投げて、勝ってやる。

299:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/17 18:59:38 qh/5ZPz4
…だが、更衣室で寝転んで少しリフレッシュしたはずだったのだが、やはり疲労は溜まっている。

「アウトォ!」

ショートライナー、赤松のファインプレー。だが、あと一歩でヒットになっていた。

「アウトォ!」

青山が必死に追いかけ、背面キャッチ。これもファインプレー。
だが、いつ崩れてもおかしくはない。

…そして、思ったよりも早く、打ちこまれ始めた。


「フェア!」
「フェア!」

ライト線、レフト線にシングルヒット。ツーアウト1塁2塁、そして…

「てっ!」
「デッドボール!」

…最悪の形で塁上をにぎわせる。
そして、最悪の打順に回ってきた。

『4番、ライト、佐藤君。』
「行けー!ジジィ!」
「そのあだ名はやめろ!」

今度は向こうのベンチが盛り上がっている。
ジジィのあだ名に苦笑しながらも、意気揚々と打席に入る。

流石の土生も、マウンドに向かわざるを得なくなった。

「土生さん、もうここはラリナに…」
「そうですよ。」

山下も赤松も黒田も口をそろえる。
そして理奈も、

「ユキちゃん、辛かったら、いつでも変わるからね。
 大丈夫、あたしは投げたくて、うずうずしてるんだもん!」

土生は何も言わない。続投を強制はさせない。
…ユキから、強い続投の意思を示させるために。

「絶対に抑えます。下がっていて下さい。」
「…だそうだ。もし負けたら、俺を恨め。いいな。」
「は、はい…」

内野4人衆が散っていく。

「…なんで自分を恨め、っていったんですか?
 仮に打たれたとしても、責任はあたしにある!」
「プライド高いな。それは結構なこった。でもな、ユキちゃんは野球を始めてまだ日が浅すぎる。
 どんな時でも、結局責任はトップの奴が追うって決まってるんだ。…そんな奴になりたいか?」
「はい。」
「それじゃ、まずは目の前にいるあいつを撃ちとるための、作戦を立てるか。
 疲れているユキちゃんが、あいつを撃ちとる方法は…」

300:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/17 19:01:24 qh/5ZPz4
土生がホームベースに戻り、マスクをかぶる。

(初球、アウトローストレート。球が遅くなってもいいから、ギリギリに入れろ。)

コントロールを気にするあまり、フォームが縮こまらないのが、ユキのいいところである。
腕の振るスピードを少しだけ遅くし、その分フォームに細心の注意を払えば、

「ストライーク!」
(うおっ!…こりゃ手が出ないな。なるほど、球威は落ちても制球はまだ健在って事か。)
(第2球、カーブを…)

「ボール!」
「っと、あぶねえ…ワイルドピッチで同点になっちまうからな…」

変化球が大きく外れ、あわや後逸。
ストレートはともかく、疲労のせいで変化球はコントロールできない。

(なるほど、変化球は入らないか。ならば、ストレートに絞って…)
(3球目、インローストレート。球威が落ちている以上、高めは釣り玉でもタイミングが合ってしまう。
 球威が落ちているとアウトコースでも向こうが力負けしない以上、確実にここに入れろ!)

流石にユキは度胸が据わっている。
要求どおりにインローに投げ込む。が、

「いったー!」
「しまった!」

ユキが思わず声を上げた。レフトに高々とあがるボール。
…だが、ボールはポール際、わずか左を通過。

「ファール!」
「あ、危なかった…」
(ち、タイミングが早すぎたか…)
(インローは思い切り引っ張るべき球、プルヒッターの傾向があるこの打者なら、なおさらだ。
 球威、球速が落ちている今、引っ張りすぎてファールになるのは必然の流れ…)

狙いはカウントを稼ぐ事、その1点。
佐藤のストレート狙いは土生もしっかりと分かっていたので、あとはカーブをストライクに入れるだけ。

…だが、そう簡単にはいかない。

「ボール!」
(やはりカーブは入らない!)

カーブがまた外れる。これで2−2。
ストレートの威力が落ちている今、ボールカウントを2つ増やす前に、カーブでストライクを取らなければならない。

301:迷わずストレート!『檜舞台のストレート』
09/01/17 19:02:01 qh/5ZPz4
(カーブは入らない、ストレートだけを…!)
(…。)

5球目。
カーブは入らない、絶対に振らない。その先入観の中で、投げ込まれるカーブ。
当然、手を出すことはない。…たとえストライクに入ったとしても。

(何!?く、バットが…)

ど真ん中、甘く入るカーブ。
だが、バットは、ぴくりとも動かない。

「ストライーク!バッターアウト!」

してやった。
そんな感情を隠しつつ、捕ったボールをその場に放り捨てる土生。

(ま、まさか…カーブがコントロールできないふりをしていた、だけ…!?)

佐藤が棒立ちの中、光陵ナインはベンチへと帰っていく。




「さて、理奈。エースの仕事だ。
 1点では追いつかれる可能性は十分にある。追加点を取って、ユキを楽にしよう。」
「え?でも、ラリナは打撃は…」

そう。理奈は全くと言っていいほど打てない。
普通、こういう状況ならリリーフしてくれ、というが、理奈にポイントゲッターを任せるという、傍目には暴挙同然。

「心配するな、ユキ。お前には完投してもらう。
 そして、理奈には間接的にプレッシャーをかけてもらう。一緒に来い。」

言われるがままについていく理奈。
ファールグラウンドの一部には、屋外ブルペンがある。マウンドからも見える位置に。

…これを、生かす。

『7番、レフト、青山君。』

「涌井!この回抑えて、最終回逆転だ!」
「おう!」

ドゴォン!

「え?」

理奈が、屋外ブルペンで豪速球を投げ込む。

(こ、光陵にはまだ、あんなピッチャーがいたのか!?)
(て、点を取れるのか?あのリリーフから…)

ブルペンからプレッシャーをかける。
理奈の豪速球から受ける絶望感に耐え、

(お、抑えないと…)

涌井に、何としても抑えないといけないというプレッシャーをかける。
そして、コントロールを乱したスキをついて、打ち込む。


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