■ 巨乳小学生をテーマにしたエロパロ その二 ■ at EROPARO
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300:迷わずストレート!
08/10/12 21:24:03 /77rj5VF
…。


「そろそろあがるか。」
「うん、パパ。ありがとうね。」
「またリトル探してやるからな。がんばろうな。」
「…つぎは、いいリトルがといいな。」

カコン

「…何の音だ?」

ふと、音のした後ろの方を振り向く。すると。

カコン

「だれだ、石を投げるのは!」
「…僕です。」
「何者だ。」
「娘さんに用がある。…あなたにも聞いてほしい事です。」

柵越しに、少年の姿が見える。
だが、暗くて顔はよく見えない。

「えっと、誰?」
「…さあな。君が女の子ピッチャーだな。」
「う、うん…」
「今、どこのリトルにも入ってないらしいな。」

聞いてたんだ、と思い、うつむく。
その様子を見ながら、話を続けた。

「…あの川の河川敷のグラウンドに、リトルチームがある。
 来い。」
「え…。」

理奈に差し出された、救いの手、願ったりかなったりの手。
だが、今までと同じじゃないのか、という不安もあった。

「不安か?今までと同じかもしれないという、不安が。」
「そ、そんなんじゃ…あるかも。」
「ま、見に来いよ。
 うちの荒くれやんちゃ坊主ども、異性とかなんざ知ったこっちゃないし。」
「…でも、なんでわたしのために?」
「簡単な事だ。
 …お前が、欲しい。それだけだ。」

そう言い残して去っていった。
結局、顔はよく見えなかった。明日河川敷に行けば、会えるのだろうか。


…。

301:迷わずストレート!
08/10/12 21:25:50 /77rj5VF
「ここね…あ、あった!」

いつもよく見る近所の川だったが、不思議とそのチームやグラウンドの存在には気づかなかった。
5,6人の子供が、楽しそうに野球をしている。

「楽しそうにやってるけど…でも、本当にこれ、リトルのチームなのかな…?
 子供会とか、リトルじゃない少年野球もいろいろあるし…」

リトルチームはスポンサーがいることも多く、ほぼ例外なく設備が整っている。
が、このチームはどう見てもボロのグラウンドに薄汚れたユニフォームや道具で練習している。
練習の雰囲気もどこか違う。普通は監督の指示で決められた練習を厳しい雰囲気のもとでさせられるが、
このチーム、子供たちだけで自由に楽しそうにノックをしている。

…そもそも、リトルは2,30人は普通いるが、このチームは9人にも満たない。あまりにも少なすぎる。
これが本当にリトルのチームなのだろうか。

(でも、今のところ行くあてもないし、ここで野球ができるのなら…
 うん、まずは聞いてみようっと。)

河川敷に続く石階段を下ると、すぐ横のベンチにだれか座っている。
間違いなく大人なので、おそらくこのチームの監督だろう。ただ笑いながら選手の練習を見ている。

「あ、あのー。」
「…あ、俺の事呼んだ?
 てか君、どこかのリトル?練習試合の申し込み?」
「あ、わたし、どこのリトルにも今所属してないんです。
 このユニフォームは、以前在籍したリトルのもので…」

振り向いた監督。かなり若い。20代半ばだろう。
理奈は以前在籍したリトルのユニフォームを着ていたので、練習試合の申し込みと間違われた。

「こ、ここにリトルがあるって聞いたんですけど…
 …本当にここってリトルのチームなんですか?」
「はは、悪かったね、設備はぼろぼろ、チームは弱小、人数ギリギリだから、そう思うのも無理ないわな。」
「あ、す、すみません!」
「いやいや、仕方のない事さ。
 でもね、彼らは、俺が何も言わなくても、自分たちだけで率先して練習しているんだ。
 それに対して、俺は何も口を挟む必要はない。こんな監督、リトルの監督らしくないわな。」

そう言って朗らかに笑う。
とりあえず、ここがリトルのチームだという事は間違いない。

302:迷わずストレート!
08/10/12 21:27:00 /77rj5VF
「俺の名前は中井。明るく楽しくをモットーに、このリトルチームを作ったのさ。
 優勝を目指す、なんてことより、明るく楽しく、ね。」
「はあ…。」
「女の子だけど、ユニフォーム着てグローブを持ってきてるって事は、選手志望かな?」
「あ、はい!ピッチャーをやりたいんです!」

今までの監督は、こっちからしつこく言わないと、マネージャー扱いしていた。
だが、この監督は最初から選手として見てくれている。それだけでもうれしかった。

「そうかい。そういえば、誰にこのチームの事聞いたんだ?」
「あ、えっと、暗くて顔も見えなかったし、名前も言ってなかったけど、
 …なんか寡黙な人でした。」
「ああ、あいつか。名前を言わないなんて、奴らしいな。
 奴の紹介なら、君は見どころのある選手のようだね。」
「あ、あの、奴って一体…?」
「おーい、悪いが集まってくれー!」

完全無視された。
全員がぞろぞろ集まってくる。…合計、たった8人。理奈を入れても9人ぎりぎり。
だがその中に、昨日の男の子らしい子は見えなかった。

(ん?別のリトルのユニフォーム…スパイか?)
(んなことよりみろよ、すげ…なんだあの胸…)
(揉んでみてえな…吸ってみてえな…)
(しかもカワイイ…)

ひそひそ声が聞こえる。
聞き取りにくい声だったが、過去にも同じ事が何度もあり、こういう事には敏感だった。
いやらしい目で見られているのも感じる。ここでも同じなのかな、嘆く。
だが、それは杞憂に過ぎなかった。

303:迷わずストレート!
08/10/12 21:28:20 /77rj5VF
「今日からウチに入る事になった…名前は?」
「え!?も、もうこのチームのメンバー扱いですか!?」
「そのために来たんだろう。何寝ぼけた事言ってるんだい。
 ていうかね、うちは人数ギリギリなんだ。入ってもらわなきゃ困るんだよ。なあみんな。」

大爆笑が起こる。

「監督、強引すぎだぜ!」
「らしいっちゃらしいけどな!」
「新入り、あきらめた方がいいぜ、うちに興味持ってきた以上、監督はもう逃がしちゃくれねえよ!」

何が何やらもうわけがわからない。
だが、1つだけわかったことがある。
…ここの選手は、年頃の男の子である以上、確かに性に対する興味はあるみたいではある。

だがそこには、自分を選手として見てくれる、確かな仲間意識があった。
その証拠に、(性的なものではない事で)自分をからかっている。
初対面時のいやらしい目だった最初を除けば、仲間と分かれば自分を仲間として見ている目をもっている。

確信を持った、ここならやれる、と。自然と笑顔になった。
今まではこんなことなかったのに。男の子の前で笑顔になれるの、いつ以来だろう。

「わたしの名前は、野村理奈(のむら・りな)です!よろしくお願いします!」

「よろしくぅ!」
「いよっ、新入り!仲良くやろうぜ!」
「これでお前、ラリナが入ったからレギュラー陥落だな!」
「なにぃー!?」

あらら、喧嘩が始まっちゃった。…ん?ラリナ?

「ちょ、ちょっと、ラリナって?」
「え?のむ・らりな、だろ?名前。」
「いや、き、切るところが違う…」
「え?そうなの?ま、いいや、いいんだってこれで!ニックネームって事でいいだろ?」
「ラリナ!ラリナ!ラリナ!」

ラリナの大合唱。もはや仲間を通り越している。
確かにこんな形を自分は求めていたのだが、流石にこれには戸惑った。だが、もはや逆らう術はないようである。

(ま、いっか…)

304:迷わずストレート!
08/10/12 21:30:02 /77rj5VF
「そういえばさ、ラリナ。なんでこんな弱小リトルを選んだんだ?
 てか、知名度も低いのに、よくここがわかったよな?近所なのか?」
「あ、えーと…」
「ああ、土生の紹介でここに来たらしい。」
「あ、兄貴の!?」

一同がどよめく。
突然、選手の一人が目の色を変えて理奈の前に飛び出してきた。

「あ、あの、俺!」
「…な、なんですか?」

今までの場合、このシュチュエーションでは巨乳目当てで付き合いを求める先輩選手ばかりだった。
いやらしい目が見え見えだったので断ったのだが、この大柄な少年の目にはそんな様子はない。

「俺の名前は山下力(やました・ちから)です!ら、ラリナ姉さんと呼んでいいですか?」
「…はい?」
「この山下力、土生のアニキの一番弟子です!
 その兄貴が認めたという事は、相当の実力者、ぜひ、下においてください!」

どこかおかしい、このリトル。
監督も含めて、変わり者が多すぎだ。

「…ぐおっ!?」

山下の頬に、グーパンチが飛んできた。
山下が吹っ飛び、今度は山下よりも小柄な少年が目の前に現れる。

「お、おいらの名前は橡浦隼人(とちうら・はやと)!姉御と呼ばせてください!
 橡浦隼人こそ、あんちゃんの最強の子分です!」
「んだと橡浦!このチビ!」
「山下、てめえのようなデカブツ、暑苦しくてたまんねえんだよ!」

目の前で火花が飛び散る。
理奈は、ただ呆然と眺めるしかなかった。

305:迷わずストレート!
08/10/12 21:31:16 /77rj5VF
「と、とにかく、俺たちに、ラリナ姉さんの球を見せて下さい!」
「あんちゃんが認めたんだ、姉御はすごい球を投げるんですよね?」
「へ?」

他の連中も理奈がすごい球を投げるものと思っているらしい。
それほどまでに土生と言う少年は慕われているのだろうか。

「あ、で、でも、もし期待に応えられなかったら…」
「そんなわけ、あるわけがないじゃないですか!」
「あうう…か、監督…」
「気にするな。仮に期待に応えられなくても、勝手に期待するこのガキどもが悪い。
 とりあえず、投げてくれないかな?君の球を見せてよ。」

初めて、自分の球を見てもらえる。
周りの期待こそ気になるが、これほどうれしい事はなかった。
急ぎ足でマウンドに向かう。キャッチャーが装備を付け、ミットを構えた。


(初めて…野球選手として、リトルでプレイできるんだ…よし!)

左手でボールを握り締め、大きく振りかぶる。
そして、左腕がうねる。

次の瞬間、キャッチャーの後方にあるフェンスが、カシャンと音を立てた。

「…へ?」
「な、なんだよ、今の速さ…」
「あいつ、捕れてねえじゃん…」
「お、お前がやってみろよ、絶対にとれるわけがないだろ!」

密かに、監督はスピードガンでスピードを計っていた。

(118!?アップなしでこれか!?)

小学生6年男子で、全国トップクラススピードが125くらいと言われている。
7キロは結構差があるが、アップをしていないうえ、理奈はまだ小学5年生、しかも女子。

理奈にも驚いた。自分はこれだけの球を投げられるのか、と。
父親こそ平然と取っていたが、自分の球はこんなにもすごいのかと。自信になった。

「す、すげえよ、ラリナ!」
「でもよお…これ、だれが取るんだ?」

みんなが顔を見合わせる。
誰かがこの球をとらないといけないのだ。となると、当然この2名が名乗りを上げる。

306:迷わずストレート!
08/10/12 21:34:15 /77rj5VF
「ラリナ姉さんの球をとれるのは、がっちりとした体のこの俺、山下力だ!
 ラリナ姉さん、俺に投げ込んでください!」
「馬鹿言うなこのデクノボー!反射神経抜群のこの俺、橡浦隼人に!」

また喧嘩。
慌てた理奈は、こう提案する。

「あ、ありがとね、二人とも。わたしの球をとるって言ってくれて。
 とりあえず、捕れたほうがわたしのキャッチャー、ってことにしない?」
「「じゃあ、俺が先に!」」
「あうう…じゃ、じゃあ、先に名乗りを上げた山下君からでいい?」
「いえーい!おまえは指くわえて見てるんだな!
 俺が取れてお前は取れないから、お前の出番はまったくねーぜ!」
「なんだと!?姉御、容赦なくこいつを豪速球で捻じ伏せてください!」

やれやれ、と思いつつ、装備をつけた山下に対し、豪速球を投げ込む。
案の定、

「ぐああっ!」

捕れない。
もう1度、と催促され何球か投げ込むが、結果はやはり同じ。

「けっ、だから捕れないと言っただろーが!俺に代わりな!」
「うるせえ!どーせお前も捕れねーよ!」

意気揚々と装備をつけてミットを構える。だが、やはり捕れない。
山下同様何球も催促するが、結局捕れなかった。

「やっぱダメだ、俺たち全員、取れっこないよ…」
「無理だ、速すぎる…」

全員理奈の速球に歯が立たない。
これではいくら気に行ったチームでも、意味がない。
やはりもっと強いチームに行くべきなのか、この素敵なチームを涙をのんであきらめてでも。

307:迷わずストレート!
08/10/12 21:35:30 /77rj5VF
「やっぱり、土生さんにしか、この球はとれないよ。」
「そうだな。土生さんなら、この球をとれる。」

土生?
さっきから、その名前が何度か挙がっているけど…

「えっと、その土生さんは、いつ来るの?」
「いつもは時間通りくるんだけど、今日は日直で居残りしてますよ。
 そろそろ来ると思います。」
「土生さんは、ウチ一番の実力者ですよ!」

山下と橡浦が、口をそろえてそう言った。
…そして、噂をすればなんとやら、である。

「あ、来た!」
「土生さん!あなたが紹介した女の子が、来てますよ!」


…階段を降りてくる少年が一人。
その落ち着いた、物静かな雰囲気、間違いなく昨日声をかけてくれた、あの少年。

「…そうか。」
「土生さん、さすがですよ、こんなすごいピッチャーを連れてくるなんて!」
「…たまたまだ。」
「なんですけど、あまりにすごい球なんで、俺たちじゃ無理なんです。」
「…分かっていたことだ。」

全員がその台詞に唖然とした。
よーするに、最初から自分がキャッチャーをするつもりだったらしい。
無言でプロテクターとレガース、マスクをつけ、構える。

「あの、…昨日は、どうも。」
「…。」
「あの、わたしに、何か、言う事とか、その…」
「…何を言えばいい?」
「…いえ、なんでもないです。」

確かに何も言う義務はない。だが、何か言ってほしい、と思う願望も自然だと思う。
とはいえ、土生は聞き入れてくれそうにもない。泣く泣く投球フォームに入る。

(ううう…なんか調子狂うなあ。)
「…。」
(ええい、とにかく、投げればいいんでしょ、投げればあ!)

やけくその全力投球。
…次の瞬間、乾いたミット音。

「…。」
「と…とった…」
「土生の兄貴、捕ったぜ!」

歓声が上がる。みんなが土生によってたかる。
理奈も感動して土生のもとに駆け寄った。

308:迷わずストレート!
08/10/12 21:36:38 /77rj5VF
「す、すごい!完璧に取った、すごい!」
「…捕るだけで、精一杯だ。」
「もう、照れなくていいって!」
「…。」
「あ、いや、なんでもないです。」
「監督。俺、今日からサードからキャッチャーにコンバートします。」

どうやら、本職はサードの様である。
キャッチャーでないにもかかわらず軽々と捕っている、という事実に、再び驚かされた。

「ふーん?好きにすればいいよ。」

そして、コンバートという重要で大事な事を適当に受け流す監督に、三度驚かされた。


「それじゃあ、野村。今日から…これ、背番号1だ。」
「あ、…え、いいんですか?」
「いいも何も、うちのエースはお前で決定た。
 …このゼッケンは使い回しなんだが、ずっとこの1番は、」

少し監督の様子がしんみりしている。
まわりを見ても、すこし選手たちがおとなしくなっている。

「新たな、持ち主にふさわしいエースを、待っていたんだ。」
「え…それって、どういう…!?」

どう言う事、と聞こうとしたその瞬間、右肩に手を置かれた。

「は、土生君?」
「…。」
「え、えっと…。」
「聞くな。」


こうして、理奈の新たなる野球ストーリーが、幕を開けた。

309:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/10/12 21:38:25 /77rj5VF
とりあえずここまで。
じき続きを投下することになるでしょう。

西小東小シリーズと比べて、決定的な違いは心理模写ですねえ…
短くまとめているのに内容が濃いですもん。
俺の書く小説はどれもこれも長ったらしい…

努力してるつもりでも、治りません。=努力してないってことだけど。

310:名無しさん@ピンキー
08/10/13 00:32:44 747EVQYt
GJ!
エロとは無関係に先が気になるw
もちろん、土生の兄貴が理奈をどうみるのか期待してます

311:名無しさん@ピンキー
08/10/13 00:39:33 Y758bDtJ
GJ!!
シチュはまさにストライク!! 次回に期待してます。ラリナのルックスもっと知りたい。

312:名無しさん@ピンキー
08/10/13 22:38:21 qRzYS8zS
GJなんか新しいすげエ新しい

313:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/10/13 22:43:09 7HXkr/zl
某板と違いエロ要素なくても何にも気にしないでくれるのはありがたい限り。
とりあえず続きを投下です。

>>311
西小東小シリーズ同様登場人物設定はあったほうがいいか。
問題はバストサイズだが…
最高球速と同じ、と言うのも考えたが、それは流石にとんでもなさすぎる。
素直に西小東小シリーズを参考にすればいいですね。

314:迷わずストレート!
08/10/13 22:44:15 7HXkr/zl
「おーい、そろそろ練習終わるかー?」

時計を見て、そろそろ頃合いと判断した監督がそう呼びかけた。
理奈と土生のバッテリーが投球練習を、他の連中は守備練習に時間を割いた。

「ど、どうかな、今日の投球は。」
「…チェンジアップは今日覚えたばかりだ、これからじっくりコントロールしていけばいい。
 少しでも変化していた、それだけでも収穫だ。」
「あ、ありがと。」

あいかわらず寡黙な口調の土生。理奈は変化球を持っていなかったため、
とりあえず速いストレートを生かし負担の少ないチェンジアップを覚える事にしたらしい。

監督のところまで行くと、監督に呼ばれた。
他の連中に聞かれないように、小さめの声でしゃべる。

「ところで野村。お前のユニフォームを用意してやらなきゃいけんが…」
「あ、そういえばそうですね。」
「…こういうのもなんだが、その、なんだ。お前の…その胸のせいで、サイズが合いそうなのが今の地点でない。」

普通のサイズのユニフォームの場合、当然理奈が着れるわけがない。
胸の分だけどうしてもきつくなってしまう。
今日理奈が着てきたユニフォームも、理奈の身長よりふた回り大きなサイズである。

だが、光陵リトルのユニフォームは当然必要になるし、
そもそも違うリトルのユニフォームをいつまでも着用するわけにはいかない。

「とりあえずユニフォームを特注しておくから、しばらくはそのユニフォームで練習してな。
 …あと、こんな事聞くのセクハラかもしれないけど、ピッチングの時に、
 胸が邪魔になったりとかしない?こう、ピッチングの動作の時に激しく揺れ動いたりとか…」
「あ、大丈夫です。特注したスポーツブラつけてるんで。
 これで胸をがっちり支えて、動きをセーブしてますから。」
「そうか。それなら、何かしてやる必要もないな。」

いろいろ気を使ってくれる監督である。
そうこうしているうちに、

「監督、もう帰っていいすか?」
「おーう、そんじゃあ解散だ。」

橡浦がせかし、解散命令が出る。
すると、赤星がこんな事を言い出した。

315:迷わずストレート!
08/10/13 22:44:48 7HXkr/zl
「よーし、今日はラリナの歓迎会だ!
 土生さん、ラリナを例の場所に連れていってもらえませんか?俺たちは買い出しに行ってくるんで。」
「…ああ。」
「?
 土生君、例の場所って?」
「…あいつらの憩いの場だ。ついてこい。」

土生と理奈が他の連中と別行動する事に。
しばらくついていくと、だんだん人気のない場所に差し掛かり、

「ここ、どこ?」
「…山のふもとだが。それがどうした?」
「な、なんでもないです。」

右側には山林。しばらく道路を進むが、突然山の方に歩を進める土生。
理奈もそれについていくと、獣道のような道に差し掛かり、そして、

「あ、すごい。秘密基地?」
「…リトル伝統の基地だ。」

ボロボロの木の低いテーブル。雑多なものが所狭しと置いてある。
雨をしのぐトタン屋根もあり、周りは木で囲まれているので暴風で飛ばされることもなさそうだ。
床は段ボールなので土の上に座ったり寝転がったりする羽目になる事はない。

「このノートは?」
「…それか。後で説明する。適当に読んでいろ。」

テーブルの上に、『俺たちの仲間』と題されたノートが置いてある。
そこに何かの名前が書かれている。おそらくはOBの選手だろう。変なコメント付きで。
ノートの罫線を無視してごちゃごちゃに書かれている。

『俺が最強!坂本裕也』
『エースは俺だ!三宅哲史』
『4番は任せろ!4番サード、村田修一』

…もはやだれが歴代のエースで誰が4番か分からない。だって全員がそう主張してるもん。
誰が活躍して誰がベンチで…いや、みんなエースで4番気分にこのノートで思い込んで浸ってるのかな。
よくわかんないや。

316:迷わずストレート!
08/10/13 22:46:03 7HXkr/zl
書かれているページの中で最後のページを開くと、土生や山下、橡浦の名前もあった。
3人とも出しゃばったコメントをしている。今在籍している他の6人も同様に。

…だが、その9人のコメントの上部が、塗りつぶされていた。
はっきりとはしないが、他の選手のコメントのスペースから考えて、4,5人分ほど黒く塗りつぶされている。

「ねえ、これって…」
「…なんだ。」
「なあに、これ。黒く塗りつぶされているのは…」
「…俺たちの歴史を、抹殺したものだ。」

言っている意味がよくわからない。
詳しい事を聞こうとしたが、土生はそれを許さなかった。

「…その部分についてこれ以上聞くな。もちろん、あいつらに対してもだ。
 いいな。」
「う、うん。…わかった。」

さらに周りを見渡してみると、1枚の写真を見つけた。

(この写真…)

15人ほどの集合写真。
その中には、今いるメンバーも何人か含まれていた。知らないメンバーもいた。

(これは…土生君?)

土生の姿もあった。
だが、その表情は、非常に豊かなものだった。
とても明るい、今の土生からは考えられない笑顔。

(過去に、いったい何があったの?)
「…何を見てる?」
「あ、ううん?なんでもないの!」
「…そうか。」

慌てて写真をポケットに隠す。
土生も気付かなかったようで、一安心した。

「土生さん、ただいまー!」
「今日は姉御の歓迎会だー!
 ほら、弁当にお菓子ですぜ!」
「ラリナ姉さん、どのジュース飲みます?」

コンビニでいろいろ買ってきたようである。
過去に何があったのか気にはなったが、今は、楽しいひと時を満喫しよう、そう思った。

天井にぶら下げている懐中電灯の明かりのもとでの宴会。
いろんな話をしたり、一発芸をしたり。おなかも満腹になり、時計を見ると9時を回っていた。
それに気付き、みんな慌てて帰り出す。その様子にクスッと笑いながら、理奈も帰路についた。

317:迷わずストレート!
08/10/13 22:47:04 7HXkr/zl
「ただいまー。」
「ずいぶん遅かったな、どうだった?」
「うん、すごく楽しかった!ここなら楽しくやれるよ!」
「そうか。(この様子なら、本当に問題はなさそうだな。)」

帰るやいなや、風呂場に走っていく理奈。
あれだけ楽しそうな理奈を見るのは久しぶりだったので、心の底から安心した。

湯気が立ち込める浴槽に体を沈める。
透き通った水面の下には、たわわに実った2つの巨乳。

(いままでは、このおっぱいに、たくさんの男の子が嫌がらせをしてきたけど…
 もう、そんな事はないんだ。)

巨乳であることを恨んだことはない。
そんな事をしたら自分を生んでくれた、今は別々になっている母親を恨む事になってしまうと思っているからだ。
それでもやはり、巨乳が原因で今まで自分に大きな壁が出来ているのは悲しかったが、

でも、今はそんな事はない。
年頃ゆえに流石に性的な興味は持っているとはいえ、だれもそれで嫌がらせをしては来ない。

(これからは、どんどん野球を楽しんで、どんどんみんなと仲良くなって…
 …恋も、するのかな。
 その時は、この巨乳も役に立つのかな。や、やだ、あたしったら…)

野球が、楽しい。今のメンバーとの野球が、死ぬほど楽しい。
まだ1日だけだが、これからの事を思うと、わくわくしてしょうがなかった。
うーん、と伸びをする。お風呂のお湯がこんなにも気持ちいいのは、久しぶりだった。

318:迷わずストレート!
08/10/13 22:48:12 7HXkr/zl
次の日も、その次の日も、快速球を投げ続けた。
ピッチング練習では心地よいミット音を鳴らせ(チェンジアップはひどい有様だが)、
シート打撃では山下と橡浦以外はバットに当てることすらできなかった。

バシィン!

「…。」
「え、えと、どうかな?」
「…悪くない。」

土生は、相変わらずの調子だが。
だが、土生に球を受け続けてもらううちに、日に日になにかが強くなっていった。

(なんだろ、このドキドキ。)
「…どうした?」
「う、ううん!なんでもないよ!
(ど、どしたんだろ。土生君を見ると、なんかこう…)」

土生を見ると、恥ずかしくなる。
それは間違いなく恋愛感情なのだが、理奈はそうだとは分かってはいない。
ピッチングについての話し合いの時も、うつむいてばかり。

(…俺の前だと、うつむいてばかりだが…?)

土生もその様子に疑問を持った。
日を追うごとにうつむき加減は大きくなり、口籠るようにもなってしまった。

(なんでだろ。
 なんで、土生君の前だと、こんなにも恥ずかしくなるんだろう…)


ある日の事。
練習も終わり、さあ帰ろう、と思ったとき。

「…あれ?どこへ行くの?」
「え?あ、いや…ラ、ラリナは先帰ってて!」

土生以外の9人の男子が大慌てで逃げていく。
興味津々な女の子ならば、こういうときは気付かれずについていくのがセオリー。
追っていくと、見覚えのある場所に。

(ここって…秘密基地?
 どうしてここに…ん?)
「すげえな、これ。」
「へっへー、俺が拾ったんだ!」
「ナイス、赤松!」

9人が輪になって座り、何かを囲んでいる。
気になり、そっと近付く。

319:迷わずストレート!
08/10/13 22:48:52 7HXkr/zl
「何してるの?」
「わっ!あ、姉御!(か、隠せ、早く!)」
(?…何か隠した?)
「ら、ラリナ姉さん、俺たち、なにもしてませんから!なーんにも知りませんから!
 行こうぜ、橡浦!」

雪崩を撃つように去っていった。
何かを隠したあたりを理奈があさると。

(…古雑誌?これかな?
 立てかけてあるけど…!!!??)

捕りだしてみると、それはいわゆるエロ雑誌。
ページを開くと、裸かつ理奈には劣る巨乳の女性が映っている。

「な、何これ…いや、こんなのを読む年頃なんだよね…
 …でも、この姿をあたしと合わせて、読んでるのかな…」
「それは、ない。」

後ろから声がする。
慌てて背中に雑誌を隠す。

「は、土生君?どうして?」
「…気になったから、来た。隠しても無駄だ。まあ、どうでもいいことだがな。」
「うう…」
「だが、1つだけ言っておく。断じてあいつらはお前と写真の女をつなげて考えたりはしない。
 …あいつらは、『裸の女』に興味をそそられるだけだ。」
「え…。」
「お前を傷つけるような事を思っちゃいないってことだ。
 …その雑誌を見ながらお前を想像してるなんてことはない、安心しろ。」

そう言って去っていく。
…はずだったが、理奈が呼びとめた。

「ねえ!」
「…なんだ。」
「そ、その、土生君は、女の子の裸に、興味あるの?」
「…いまからここでヌードショーでも行うのか?」
「ぜ、全然!」

どーも話がかみ合わない。
それでも、聞かないと気が済まない。

「ど、どうなの?」
「…ある。興味はある。悪いか?」
「ぜ、全然。
 こ、こういう本も読んだりするの?」
「…あいつらにたまに見させられたりもする。」
「そ、そう。」

320:迷わずストレート!
08/10/13 22:49:24 7HXkr/zl
…やはり話しづらい。
だが、勇気を持って、一番聞きたかった事を聞く。

「あ、あたしの裸、見たい!?」
「…。」
「えっと、その。(い、言い間違えた!見たい、じゃなくて、見てみたい、だったかな?あれ!?)」
「…。」

気まずい。
ただただ気まずい。

「…。」
「ご、ごめんね、変な事聞いて!それじゃあ」
「雑誌を貸せ。」
「へ?」
「…貸せ。」

言われるがままに雑誌を貸した。
2,3秒ほどパラパラと見て、そして閉じて投げ捨てた。

(な、何がしたいの?)
「…悪い。」
「え…きゃあっ!」

理奈に抱きつく土生。
いきなりの事に混乱する。

「…え!?(ぼ、ボタンを…外して…)」
「…見たい。」
「な、何を!?」
「…裸。お前が、見たいか、って聞いた。」
(う、嘘!?はわわわわ…)

興味本位で尋ねただけだったが、まさかこんな事になるとは思わなかった。
何が何だか分からず、

「ごめんっ!」
「!」

逃げ出してしまった。
土生に対して、怒りとか、そういう感情はない。
…むしろ、別の感情が芽生えていた。裸を見てほしいのは本当だったから。

土生は、いつもの通り無表情で、追いかけたりせずに逃げていく理奈を目で追い続けた。
姿が見えなくなると、土生もゆっくりと秘密基地を後にした。

321:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/10/13 22:51:11 7HXkr/zl
第2部投下完了。
…特に他に何も書くことはないです。

322:名無しさん@ピンキー
08/10/13 23:05:03 Y758bDtJ
まずはGJ!!
微エロはおkだが、本作には汗と土にまみれたユニフォームの濃密なエロスを激しく希望!!



323:名無しさん@ピンキー
08/10/14 00:50:28 ZPxnLxI7
そういや、前スレで各作品巨乳キャラで野球を!!って話題あったなGJ


324:名無しさん@ピンキー
08/10/14 19:22:57 COZSmaer
>>313

>問題はバストサイズだが…
>最高球速と同じ、と言うのも考えたが、

将来は、100マイルの速球を武器にメジャーで活躍するんですね。

325:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/10/14 23:00:32 q/ta7Wh4
>>324
西小東小シリーズ同様、多分時は進みません。
仮に夏、秋、と過ぎて行っても次の年も小5のままです。
そこそこ続けていきたいので。
すなわち、西小東小シリーズの世界とリンクすることもできる。

ちなみに、最高球速は小学生なので125くらい。
バスト125なんていくらなんでもおかしすぎる。

一息ついたら追加投稿します。

326:名無しさん@ピンキー
08/10/14 23:39:35 scaaG2pT
>小学生なので125くらい
ねーよwww100でも相当速いぞ

327:名無しさん@ピンキー
08/10/15 15:56:44 2487gk5H
>>325
125wwwwww
小学生でそんなん投げれるわけねーよwwww

100でも小学生は出ない。

328:名無しさん@ピンキー
08/10/15 17:00:58 BlHxXUJf
ミラクルジャイアンツ童夢くんの通常ストレートが110kmで十分早いだったかな?
サンダーバキュームボールなら300いくから問題ないぜwwwwwwww!!

329:暴走ボート ◆z95s/qs7OM
08/10/15 20:13:06 jr5qc1cs

確かに小学生100km投げれるのはすごいし、速い。
(ちなみに俺は計ってもらうと90弱。)
だが、それはあくまで常人レベル。

リトルなら110以上投げられる投手は結構いる。
日本最速なら125までいく様子。

まあ、何が正しいかなんてわかることではないので、
設定としては「日本トップクラスくらいでとにかく速い」…なら問題はなかろう。

330:迷わずストレート!
08/10/16 01:17:15 wlWD/pIY
次の日も当然、練習はある。理奈も土生も、いつも通りにグラウンドへ行った。

だが、あのような事があれば、次の日以降練習に身が入らないのは当然の流れ。
ブルペンで数球投げると、土生がマウンドへ向かっていった。

「…調子が悪いな。」
「え、そう?あ、あはははは、ごめん。」
「…ストレートにキレがない。チェンジアップはいつもよりさらに滅茶苦茶だ。」
「あ、あはは、きょ、今日は調子悪いのかもー?(なんで平然としていられるんだろ…)」

いいボールを投げられない。しゃべり方を見ても誰の目から見ても明らかに理奈の様子はおかしい。
それはあのような事があれば当然なのだが。
にもかかわらず土生はいつもと変わらず無表情。
だが、実際には土生も相当ドキドキしていた。監督以外はだれも見抜けていないが。

「おーい、土生!」
「…はい。」
「あいつらにノックを撃ってやってくれ。理奈は少し休憩だ。疲れもたまってるんだろう。」

最近は監督も下の名前で呼ぶようになった。
練習に口出ししない監督だが、珍しく練習内容を指示した。
土生はうなずくとホームベースの方に向かっていく。理奈は監督のいるベンチに腰掛け、うつむく。


「何があった。」
「え?はい?」
「理奈はもとより、土生の様子もおかしい。喧嘩でもしたのか?」
「え?は、土生君の様子が、おかしいですか?」
「ああ。いつものあいつじゃない。見ていれば分かる。」

流石、と言ったところだろうか。土生の事を完全に理解しているのだろう。
理奈はだれの目から見ても様子が変なのは明らかなのだが。

「へ、へえー。な、何か悪いものでも食べたんですかねえ?」
「声が上ずってる。その様子じゃ、何か知ってるみたいだな。」
「い、いえいえいえ!そ、そんなことありません!秘密基地では何も起きていません!」
「…。」

モロ口走ってるじゃねえか。そうツッコみたくなった。だが、あえて何も言わなかった。
秘密基地で何をしたかまで口を滑らせなかったのは幸いだろう。

331:迷わずストレート!
08/10/16 01:18:27 wlWD/pIY
「…あ、あの…」
「ん?」
「こっちも、何かあったんですか?って聞きたいんですけど…
 過去に、このチームに、土生君に何かあったんですか?って…」
「…詳しく聞かせてもらおうか。(というより、このことを話すためにここに呼んだんだけどな。)」

背番号1を渡されたとき妙に全員しんみりしていた事。
写真にあった、今では考えられないくらいの笑顔の土生の事。
ノートのページの一部が、選手の誰かが書いた場所が黒く塗りつぶされていた事。

「ある程度は想像できているんじゃないのか?このチームの影に。」
「え…」
「いいさ。いずれは説明しなきゃいけないからな。
 土生が2年前に、ここにふらりと姿を見せた事があったんだ。」


…。

「おや、誰だい、君は?」
「…土生、翔平です。小学3年生です。」
「リトル入団希望かい?(あれ、でも小学3年って事は、まだ入団はできないはず…)」
「俺、親に捨てられました。」

その一言に、衝撃を受けた。
誰だって衝撃を受けるのは当たり前だが。

「手紙があって、親がごめんねって置き手紙だけ残して。
 数日後に引き取り手が来るとは思いますが、それまでは何にも当てがないんでね。
 さまよっていたら、楽しそうな場所があったんで。」
「ここが、楽しそうって感じた?」
「…野球、嫌いじゃないし。みんな笑顔で楽しく野球やっている。
 もっとも、俺が野球したところで、万年ベンチ入りすらできませんけどね。」
「やっていくかい?」
「え?」

…。

「なんの考えもなくただ誘ったんだ。
 少しでも楽しさを分けてあげたいと思ってね。そしたら…」

332:迷わずストレート!
08/10/16 01:19:37 wlWD/pIY
…。

「すごいな、あいつ…」
「ああ、やっぱり空振りは多いけど、当たったら飛ぶな…パンチ力は年上の俺たち以上だ。」
「守備でもエラーばかりだけど、たまにヒット性の鋭い辺りを捕っているし…うおっ!」

ジャストミート。
大きく弧を描いた打球は、推定飛距離100mオーバーの特大弾。
その感触と飛んで行く打球に、気持ちよさを覚えていた。

(すごい…打球を飛ばすツボを持っている。
 いや、そんなことより、さっきまであれだけ暗い顔をしていたのに、今はあんなに楽しそうに…)

…。

「俺は決めたんだ、この子に賭けてみようって。
 数日後引き取り手である親戚が来るって聞いて、強引に俺が土生の引き取りを希望したんだ。」
「ええ!?」
「どうやら向こうも、土生の引き取りは嫌がっていたらしい。喜んで土生を譲ってもらった。」
「土生君は…」
「あいつもそれでいいって言ってくれたんだ。
 とにかく野球ができるのが嬉しかったんだろうな。」

親戚の住んでいるところはここよりもずっと遠い町にある。
ずっとここで野球をやりたい気持ちが、監督の引き取りを決断する後押しとなったのだろう。

「もともといい物を持っていたんだ。すぐにあいつの野球の腕はメキメキと上がった。
 当時から弱小だったこともあるが、夏にはあいつはレギュラークラスまで上り詰めていた。」
「え、でも、3年生は大会には…」
「だから残念だったよ、あいつを出せなくて。
 でも、その年はいい4年生達が入っていてね。ほとんど素人だったけどいいものを持っていた。
 そいつらも土生同様すぐに野球が上達して、レギュラーになってチームを引っ張った。」

4年生たちがメキメキ腕をあげて頭角を現し、レギュラーになった頃に土生が入ったらしい。
ゆえに土生も、その4年生たちに憧れ、尊敬していた。

「そして土生も4年になり、今年はいけるって雰囲気があった。俺もそう感じてた。
 だから本気で優勝を狙うと公言した。
 そこで俺はいろんなリトルチームが集まる夏の合同合宿に参加することにしたんだ。
 グラウンドを借りて練習したり、気軽に他のチームと練習試合を組めるんだ。…それが失敗だった。」
「え?」

333:迷わずストレート!
08/10/16 01:20:12 wlWD/pIY
…。

「おっしゃああっ!」
「ナイスバッティング、白濱さん!」

土生が笑顔でハイタッチで出迎える。4番の一振りで3点を先行した。

「最強だな、俺たち!」
「1番二岡、2番土生、3番エース西村、4番白濱、5番新井!最強だなこの打線は!」

敵チームも唖然としていた。

「な、なんだ、確か去年も2回戦負けの弱小だったはずだ…
 ええい、打て!打線だけのチームなんだ、絶対!」
「ストライーク!バッターアウト!」
「え…」

うなる快速球。理奈と負けず劣らずの快速球。
監督はまっすぐに絞れと指示するが、

「ストライーク、バッターアウト!」
「か、カーブ…」

ブレーキの利いた、大きなカーブ。
練習試合は連戦連勝。全員が大きな希望を持っていた。
…だが、それらの練習試合を見ていた、一人の男がいた。

…。

「強豪チームの監督から、選手に直接オファー?」
「電話で、うちに来ないか、と言われたらしい。設備やメンバーを餌にな。
 そのチーム、結構暗い噂が立っていたが、その監督は選手にこういったらしい。」

『監督にもちゃんと話はつけてある。安心していい。
 よりいい環境で野球をした方がためになるから、将来のためにも新天地に移籍しなさい、と監督も言っていた。
 他の4人も監督にそう言われて移籍を決断したよ。』

「そんな…そんな事言ってませんよね?」
「もちろん俺はそんな事を言っていない。だがすでに土生以外の4人は移籍し終わっていた。
 1度でも会えばその監督が嘘をついていることに気がついたろうが、
 移籍を了承してから数十分後にすぐに連れて行かれたらしい。
 そのチームは遠くの町にあってしかも全寮制だから、今も連絡がとりようもない。」

おそらくこの時に学校も転向させたのだろう。
ウソがばれないように徹底している。

「当然土生にも電話が着ていたが、流石に向こうも俺が同居しているのは想定外だったらしい。
 電話をした当時俺も家にいたから、すぐにおかしいことがわかった。」

334:迷わずストレート!
08/10/16 01:20:44 wlWD/pIY
…。

「監督、…(略)…ってことをそのリトルの監督が言っていたんだが、本当なのか?
 本人が近くにいるから確認するって言っておいたけど。」
「移籍?…何の事だ?」
「え?」

もう少し詳しく話すと、話の食い違いが鮮明になった。
話を聞く限りでは、他の4人にも話が行っている。すぐに連絡をとり、事の矛盾を伝えようとした。だが、

「もう、…行ってしまった?」
「はい、電光石火の様に連れて行かれて…連絡もとりようがないんです。
 中井さんがいいと言ったときいて、私どもも安心して…」

親たちから勝ち取った信頼が、こんな形で裏目に出るとは思わなかった。
ここまで強引に連れて行かれそうになったら、普通とりあえず止めようとする。
だが、『中井監督の了承を得ている』の言葉が、印籠のような役割を果たしてしまっていた。

…結局、4人とも手遅れだった。
そのチームそのものに連絡しても、「ウチは知らない」の一点張り。
結局、土生以外の主力4人以外は全員失ってしまった。

土生のオファーもあれから来ない。「本人が近くにいる」と言ったおかげで、矛盾がばれると思ったからだ。
真相を知る選手が入団し真相をほかの4人に知られたら、獲得に失敗したも同然だからだ。
だからこそ、迅速に土生や監督と4人を強引に隔離する手段に打って出たのだろう。


「…すまないな、土生。俺がこんな頼りないばっかりに。」
「あのチームが悪いだけです。せっかく、今年はいけると思ったのに…」

土生が涙を流す。
だが監督は意外にも冷静だった。

「まあ、もともとウチは優勝より、野球を楽しむのがモットーだ。優勝する気はあまり無い。
 そんなチームにいても、確かに実力のあるあいつらのためにはならないだろう。
 確かに俺から向こうのチームにそう言ってはいないが、あながち間違いでもないしな。」
「なっ…!?」
「それであいつらが大成するなら、それもまたいい。
 もうあのチームの入団は無理だが、お前も別のチームに言ったらどうだ。
 俺に遠慮するな。引き続きここで暮らして、強豪の中で自分を磨けばいい。」

土生が下を向く。
ごめんなさい、俺も移籍します、と言うと監督は思っていた。だが、

335:迷わずストレート!
08/10/16 01:21:59 wlWD/pIY
「ふざけるな!俺はここに残る!」
「土生…だが、それではお前のためにはならない。遠慮するなって言って」
「そんな問題じゃねえ、遠慮でも何でもねえ!
 身寄りのない俺を、どん底だった俺を監督は救ってくれた!
 何より野球選手として、俺をここまで育て上げてくれた!
 光陵リトルで育った以上、俺はここで野球をやる!俺が優勝させる!このチームを!」

そう言ってバットを手に部屋を出ていった。
監督は、ただ呆然と土生が出ていったドアを見続けていた。

…。

「じゃあ、ノートに塗りつぶされていたのは…」
「その4人の名前だ。西村、白濱、二岡、新井。
 チームの恩を裏切った以上、チームからその過去を抹殺する意味でやったことだろう。」
「…土生君があんな性格になったのも…」
「親に裏切られ、仲間にも裏切られた。ああなってしまうのも当然だ。
 ここにいても腐ってしまうだけなのに。あれから何度か、ここを去っていいんだぞと言っても。
 俺はここに残ります、の一点張りだ。」

相当監督を慕っている証拠だろう。
自分の選手生命うんぬんより、違う何かを重んじているのは間違いない。

「だからこそ勝たせたいんだが、結局その年の秋の大会は1回戦負け。
 土生は5打数5安打4打点と縦横無尽の活躍だったが、他がな…
 あそこまで言ってくれてる以上あいつに勝たせてやりたいが、言っちゃ悪いがこのメンバーでは無理だ。
 優勝、優勝と叫んでも、橡浦、山下はともかく他の連中にそれは酷だ。
 だからチーム方針を野球を楽しむという、元の方針に戻した。土生もそれでこのチームを見限ると思ったんだが。」

それでも土生はチームに残っている。
チーム内で、特に同い年なのに橡浦や山下が彼を兄貴分として慕っているのは、実力だけではなく、
自分たちを見捨てずにチームに残ってくれたからだろう。
土生も仲間のために優勝したいと強く思っている。

「本当は俺も優勝したい。とにかく土生のために。
 そして、わずかにその可能性が生まれた。」
「え?」
「理奈…頼む。あいつらを勝たせてやってくれ。
 おまえは、直球だけならかつての西村より速い。県内でもトップクラスだ。
 …そして、土生の、あの頃の明るかったあいつを、取り戻してくれないか。」
「取り戻す?」
「あのころの明るいあいつが戻れば、そして優勝目指すぞと大声で言ってくれれば、
 チームの士気も高まる。確実にチーム力は上がる。
 …頼む。今それが出来るのは、お前しかいない。」

黙々とノックを撃ち続ける土生。
その体から伸びる影法師が、妙に切なく感じた。

336:迷わずストレート!
08/10/16 01:23:22 wlWD/pIY
以前の土生に戻ってほしいのは理奈も同じこと。とにかく、話さないと始まらない。彼を家に呼ぶことにした。
ついでに理奈の父親にも土生を紹介しておきたかった。
ただ暗い性格なだけで人嫌いと言うわけではないので、土生も理奈の誘いを受けてくれた。

「ただいまー!」
「お、今日は早いな。…そっちの子は?」
「…おじゃまします。土生です。」
「そうか、君がね。いつも理奈から話は聞いているよ。とにかく上がりなさい。」

居間のソファーに体を置く。
理奈の父親は茶と菓子の準備をしている。手慣れたものだが、ある理由があった。

「…電話だ。もしもし。
 あ、はい…そうですか、すぐ行きます!」

あわてて用意した菓子を持ってきつつ。
その様子を見て、理奈には大体の察しが付いた。

「すまないが言ってくる!マークした外国人がマイナー落ちした!」
「あはは、はいはい。行ってきて。うまくいくといいね。」
「ああ、それじゃ!」

荷物を持って飛び出してしまった。
土生はポーカーフェイスの中で、唖然としていた。

「…悪いが、どう言う事か説明してくれるか?」
「いやー、あたしのパパ、プロ野球チームの3A外国人獲得の担当スカウトなんだ。
 駐米スカウトが別にいるからあたしのパパは日本で活動してるんだけどね。
 でもさっきの様に事態が変われば、すぐに飛んで行くわ。多分数日は帰ってこないよ。」
「…シーズン中でも外国人獲得は行うからな。」
「ちなみに、ラミレーズやルウィズも、パパの担当なの!」
「ラ、ラミレーズにルウィズ!?片や去年の打点王、片や去年の最多奪三振…」

珍しく表情を変えて驚いた。やはり野球少年だけあって、その言葉に驚くのも無理はない。
パパの仕事が理奈にとっても誇りだった。胸を張る。

「えへへー、すごいでしょ。今日は出前ね。何か頼もうか?
 …ていうか、今日はちょっと話があるの、長くなるから、晩ご飯は食べていって。」
「…わかった。監督にもそう言っておく。」

電話を交互に使い、監督に伝言をし出前も取った。

337:迷わずストレート!
08/10/16 01:23:55 wlWD/pIY
…そして再び座ると、理奈はうつむいた。
これから話す、土生のつらい過去の事を考えると、こうなるのも仕方ない。

「…話って?」
「うん、話すね。あのノートの事、そして秘密基地で見つけた写真の事…」
「…話すなと言っただろ。」
「全部、監督から聞いた。」
「!」

真相を知られた以上、さすがに理奈の言葉を無視するわけにもいかない。
とにかく、理奈が監督から聞いた事を、全て聞き終えた。

「…その通りだ。」
「うん…。」
「で、それがどうした?」
「え?」
「その話は本当だ、それに間違いはない。…で、それで俺にどうしろと?」

確かに、真実を確かめるだけでは、何の解決にもなっていない。
一瞬戸惑ったが、監督から言われた昔の土生を取り戻す、と言う事を思い出した。

「昔の…以前の明るい土生君に、戻ってほしいって…」
「!
 …バカバカしい。おそらく監督の差し金だろう。」
「…。」
「違うって言うのか?」

少し考えた。
そのままうんと言って、土生が納得するはずがないと。

本気で土生に元に戻ってほしい。覚悟を決めた。

「違うわよ。」
(雰囲気が変わった?)
「…確かに監督からすべての事を聞いた。そして、あたし自身が土生君が元に戻る事を望んだ。」
「理奈自身が、か?」
「望んじゃ、迷惑だったかしら?」
「…。」

まさかこう切り返してくるとは。
監督に頼まれたと言われたら即座に帰ろうと思っていた。
…だが、理奈の目は本気だ。本気で俺を元に戻そうと思っている。…なら、

「元に戻ったところで、なんになる?」
「みんな喜ぶよ、昔の、明るい土生君に戻ってくれたって!」
「それで俺はまた誰かに裏切られるのか?」
「!」

俺は裏切られ続けた人生だった。
親に裏切られ、仲間に裏切られ、…そして、お前がこのチームに来た。
…なんで理奈をチームに呼んだんだ、俺は!?

338:迷わずストレート!
08/10/16 01:24:26 wlWD/pIY
「俺は親と楽しい生活を送っていた。
 別に金持ちとかそんなんじゃなかったけど、親と一緒にサッカー選手目指してたからな。」
(そんな過去もあったんだ…)
「…だが、倒産かなんかでいろいろあって、見捨てられた。
 その生活が楽しかったからこそ、見捨てられたんだ。」
「それで、監督に拾われて…」
「ああ、監督やあの4人、その他の奴とやる野球は、最高だった。
 本当に最高だった、楽しかった。なのに…」

何熱くなってるんだ、俺は!?
感情を殺す、って決めたじゃないか!もう2度と、あんな目に合わないように…

「また見捨てられた、チームごとな!
 そして俺は気付いた。人間、誰だって裏切る。」
「そんな…」
「俺は決めた。俺だけは、何があっても誰も裏切らねえ!
 そして、誰かが裏切る事を、いつも覚悟しておこうってな。」
「まさか、感情を殺した理由って…」
「ああ。
 いつまた裏切るかもしれないなんて思ってたら、明るくなれるわけないだろ。」

…ここまで深く傷ついている土生君を、あたしが元に戻せるの?
監督はあたししかいないって言ってたけど、むしろ土生君と会ったばかりのあたしに一番可能性はないような…
…もう、無理だよお。

「…もういいか?」
「あ、あともう1つ!」
「ん?」
「えっとね、怒っちゃいないんだけどね。
 …その、なんで、あたしのおっぱい触ろうとしたの?」
「!」

…あれ、黙っちゃった。まあ、当たり前か。

「…ごめん。」
「う、ううん、別に謝らなくったっていいの!
 …でも、どうしても理由を…!」

あ、あわわ!涙を流し始めちゃったよ!
どどど、どうして?どうして!?

「い、いいんだって、ね?おっぱい見たいって言ったのはあたしなんだから!」
「…理奈を、俺のものにしたかった。
 その豪速球も、ふかふかのその胸も。俺のものにしておきたかった。それだけだ…」

あ、あたしを、土生君のものに?
それって、もしかして…
…そうか、わかった!土生君が感情を殺している理由が!

339:迷わずストレート!
08/10/16 01:25:22 wlWD/pIY
…。言っちまったな。
これで俺は変態扱いされてもしょうがない、か。
あーあ、また俺は、仲間を失ってしまうのか…今回は裏切りじゃなく、自業自得だがな、まだマシか。

…り、理奈!?

「な、何を…」
「え?見れば分かるでしょ?服を脱いでるの。
 あたしのおっぱい、興味があるんでしょ?」
「ば、馬鹿!確かに興味があるとはいったが…」

な、なんなんだ!すぐに止めねえと!
…で、でも、やめろって言えない、なんでだ…?

「ふふ、真っ裸。おっぱい丸出し。」
「な、何を、理奈…」
「そんな事言ってる割には、視線はこっちに釘付けじゃない。」

だああっ!そうだ、まずは後ろを振り向かねえと!
…く、首も、動かない…体が、動かない!後ろから押されている感覚だ…

「ようやく、分かったの。土生君の心の中。
 土生君は、覚悟を決めてるから、感情を殺してると言った。でも、本当はそうじゃない。」
「な、何が…」
「土生君は、怖がっている。」
「!?」

ふ、ふざけるな!
俺は、裏切られたから、裏切られたから覚悟をきめて…俺は…

「本当に覚悟を決めているなら、あたしの事も諦めている。
 あたしがどこかへ移籍してしまうかもしれないって事を、諦めてる。」
「そ、そうだよ!」
「でも、そうじゃなかった。でなければ、土生君はあたしを自分のものにしようとなんてしない。
 おっぱいが欲しいなんてエッチな考えじゃなく、ただただ、あたしを手放さないために。
 どこかへ行ってしまう前に、自分のものにするために。」
「う、うるさい!」
「そうしようとした土生君の根底にあった感情は何か。
 それは決して、覚悟というものではない。」
「や、やめろ…やめろおっ!」
「翔平!」

パシン!

340:迷わずストレート!
08/10/16 01:27:27 wlWD/pIY
土生の体が、凍りついた。
その眼だけが、ただただ理奈を見つめていた。
すぐに理奈は表情を和らげる。

「覚悟を決めるってのは、これから生きていくうえで、とても大事なこと。
 でもね、あたしには、もっともっと、大事な事があるの、なんだと思う?」
「…。」
「それはね、自分に正直になるって事。」
「!」
「自分に正直になれなかったら、今のチームメイト達も、本当の意味で土生君についてきたりはしない。
 慕う気持ちは本当だけど、みんな以前の土生君の方がいいと思ってる!」
「以前の…俺…」
「自分に、正直になって、ね?
 土生君の根底にある感情は、なあに?」
「知っている、くせによお…」

上半身裸のまま、理奈が両手を広げた。
その、大人のグラビラアイドルのそれをも大きく凌駕する巨乳が、土生を受け止めようと待ち構えている。

「おいで、…受け止めてげる。
 あたしのおっぱい、好きにしていいよ。」
「…理奈あっ!」


胸の谷間に、土生の顔が飛び込んだ。巨乳が土生を包み込む。
背中に手をまわし、がっちりと理奈を抱きしめる。

「そうだよ!怖かったんだよ!
 せっかくいい仲間が出来たのに、理奈が他のチームに連れて行かれるかもと思うと、怖かった…
 …毎日、おびえてた。お前を連れてくるんじゃなかった、とすら思うようになったんだよ!」
「辛かったよね、苦しかったよね。ごめんね。…きゃっ!」

理奈も土生を受け止めて謝る事しかできなかった。
土生が理奈の乳首にしゃぶりつく。無我夢中で巨乳を揉む。

「…もう、甘えんぼさん。
(そっか、親に会えないから、人恋しい性格でもあったんだ。かわいいなあ♪)」
「どこにも、行かないでくれ…
 もうこれ以上、大切なものを失いたくない、理奈だけは絶対に手放さない!」
「土生君…」
「親なんかより、あの4人なんかより、ずっとずっと大切な…女の子なんだよ!」
(え…)

さっきも理奈を自分のものにしたいと言っていた。だがそれは、どちらかと言えば捕手としての土生の想いだった。
今度は違う。はっきりと「女の子」と言った。

「そ、それって…」
「俺は…」「土生君…」

341:迷わずストレート!
08/10/16 01:28:32 wlWD/pIY
こういうときは、必ず邪魔が入るのがお約束である。

ピンポーン。

「理奈ちゃーん?出前持ってきたよー。」
「あ。」

完全に忘れていた。
理奈は行こうと思ったが、まず服を着なきゃいけない。

「えっと…」
「俺が行く。もう涙は止まってるし、大丈夫だろ。
 …っと、金を…」
「あ、大丈夫、そのまま行って。」
「え!?」
「いいからいいから。そのまま受け取ってきて。
 …あたしはずっと、ここにいるから。」

そのほほ笑みは、安心感を与えた。土生もその言葉の意味はきっちり理解している。
だが、疑っているわけじゃない、それでも、理奈がどこかへ移籍しないとは限らない。
移籍せずとも、仕事柄、転校なんてことは十分に有りうる。

不安を胸に、玄関の扉を開ける。『野球軒』と書かれた制服を着た中年の男がいる。
おそらく中華料理かなんかの店の名前だろうが、このネーミングはまずいだろう。

「理奈ちゃ…君は?」
「同じ野球チームのものです。ちょっと今取り込み中で、俺が出てきました。」
「ああ、そうかい。じゃあ、君にこれ渡しておくね。」

よいしょと岡持を渡される。思い出したように尋ねてみる。

「えっと、お金は…」
「ははは、いつも通りツケでいいよ。今回も親父さんのスカウト出張だろ?
 …って、君は何も知らなくてもおかしくはないか。」
「一応理奈さんの親父さんの仕事の事は聞いています。」
「ああ、それなら話は早い。よーするに常連さんなんだよ。
 スカウト業は1年通して忙しいから、よく家を空けるんだ。
 で、そのたびに理奈の食卓を頼むって言われてね。もう完全に常連だよ。」

確かに、そういう事情があればツケが通用するほどの常連にもなるだろう。
だが、常連になっている理由は、それだけじゃなかった。


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