モノノ怪でエロパロ 2札目 at EROPARO
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600:秋宵華蝶 五
08/11/12 23:24:18 ksPGOik7
・・・

「男で身売りなんて商売してんのアンタぐらいじゃないの」
あれから二刻程たったか。ようやく落ち着いて来た花紫は横に侍る男に向かって言った。
「さぁて…どうだか…」
「立ち入った事聞くようだけど…嫌なら答えなくていいんだけどさ、
何でこんな商売してんの?本業薬屋なんだろ。売れないの?」
「薬は売れますよ。…本もね。皆さんお好きなんですねぇ。」
くつくつと男は笑った。
「じゃあなんで…?その、…普通に嫁貰って本業だけやってればいいのに。
…話によるとアンタ、身売り男女関係なく、なんだろ?」
やや思いきったように花紫は言った。
「私はまだ嫁を貰おうとは思ってませんからねぇ。それに身売りって感覚は御座いませんよ。
確かにおっしゃるように男性の御相手する場合も御座いますがね」
男の目が妖しく光った。
「私は人をある程度選びますから、嫌なら払えない程の高い金要求したりしてお引き取り願いますし。
単なる道楽の一端ですよ…」
ほんとにそうだろうか、と花紫は何となく思った。確かに嫌々やっているようには見えないが、
…もしかしたら、この男にはさして取るに足らぬ事なのかもしれない。楽しくも無いが嫌がるほどでもない。
ただの仕事の一貫。かくいう自分もそんな所だから。最初は嫌で嫌で仕方なかったが今はある程度割りきれている。
これが悟りというものだろうか。

601:秋宵華蝶 六
08/11/12 23:25:15 ksPGOik7
花紫はこの男が薬の商いとこの仕事のみをしていると思っていた。
よもや人間以外が相手の奇っ怪な「別の仕事」をしているとはつゆしらず。
「変わった人だね…」
「そう、ですか?」
男は再びくつくつと静かに笑った。花紫はまじまじと男の顔を見つめる。うねる髪が邪魔をしてよく見えないが、
緋色と濃い睫毛に彩られた切れ長の目に、これまた緋をのせた筋が通った鼻。口元は上唇のみ蒼く隈取りを施されている。
たまに金に輝いて見える、うねる髪は南蛮から来たという一枚の絵を飾る額縁のよう。
この男の色香は化粧のせいだけではあるまい。花紫は軽く溜め息をつく。
「…アンタを見てると女の自信を無くすよ」
「…そうおっしゃられては私が男の自信を無くします」
「…そういう意味じゃない」
こちらの言いたい事を分かった上でのこの物言い。しれっと眉をひそめて困ったような口振り。
どこまで役者なんだか、と軽く花紫は舌を打つ。

602:秋宵華蝶 七
08/11/12 23:34:37 ksPGOik7
鳥の囀ずりが聴こえてきた。室内は窓も無いので暗さは変わらないが恐らくもう夜明けも近いのであろう。
「――そろそろおいとまするよ」
「…では着付けして差し上げましょう。お立ち下さいまし」
だるそうに花紫は立ち上がる。男は手馴れたもので、脱がせた時同様、迷い無く着付けしてゆく。
ものの数分で来た時の姿に戻った。
「相変わらず手馴れたものよ。早いねぇ」
「…恐悦至極」
「…また来るから。一月後にでも」
どこからかカタカタと金属音がしたように花紫には聞こえた。
「…お待ち申し上げておりますよ」
笑んで男は言う。

からり、と鈴が鳴った。寒椿が戸を開け帰って行ったのだ。
「やはり…取り付かれている」
一人ごちたのは男だ。手元には赤い短刀がある。鞘の部分には赤い鬼のような、夜叉のような首が彫り上げられている。
「あの女…以前より伸びている。…首が。…一月後にはカタが着きましょう」
男の言葉に反応するように、刀の首がカタカタと鳴った。


一応、おしまい。




「読んだけど、つまんないじゃんよ!」という方ホントごめんなさい。
でも読んでくれてありがとう
続きもぼんやり考えたけど、こんな終わり方で。
もしかしたら薬売りが見せた幻想かもね…と書いてて思ったけど、わかりません。
形と真と理受け取って頂きたく候。

603:名無しさん@ピンキー
08/11/13 20:18:52 Gk9mWnxr
GJ。よかったよ
モノノ怪女郎屋でやったらきれーそーとかおもった

604:名無しさん@ピンキー
08/11/13 20:33:49 gxUUBMZj
退魔ものktkr!
CPものもいいけど、こんな風に目的のため淡々と不特定を相手する薬売りも
それっぽくてイイね。
できれば3カチンまで希望。


605:名無しさん@ピンキー
08/11/14 02:01:55 O3sSIhC7
きぼー

606:名無しさん@ピンキー
08/11/15 02:27:29 QQa/iS17
忘れてる方もいらっしゃるかと思いますがドSです、触手×お庸がどうにも煮詰まってしまいまして一旦他のを書きに来ました。
前に出た高校野球の話から生まれた薬売り(高校球児)×加世(チアリーダー)です、本番なしですが暇潰しにでもどうぞ。

607:薬売り×加世
08/11/15 02:30:26 QQa/iS17
晩夏の夕刻、薬売りは練習を終え重い体を引き摺り野球部部室に向かっていた。
誰もいないグラウンドに長い影が伸び未だ厳しい日射しが容赦なく彼の肌を刺す。

「んっ…、痛っ…」

ふと聞こえた声に足を止めると水飲み場に少女がいた。

チアのユニフォームに身を包んだ少女はシューズとソックスを脱いでおり蛇口からの流水に方足首を浸している、

「加世さん」

薬売りは声をかけた。

少女が振り向き束ねた髪が狐の尻尾の様にふわりと弾んだ。

「あぁ、薬売り君。お疲れ様」

「足、どうかしたんですか?」

薬売りが問うと加世は少し困った顔をしてはにかんだ、

「チアの練習で捻っちゃって…腫れてたから冷やしてたの」

痛めた足を擦り溜め息をつく。

「それは可哀想に、捻挫ならよく効く薬があるから私が診ますよ」

薬売りは加世に背を向け地面にしゃがみこんだ。

「はい…どうぞ」

「へ?…あっ、それは…」

おぶされと促す薬売りに加世は勢いよく首を振った。
「わ、私って結構筋肉質で重いから!薬売り君は細いから折れちゃうよ!」

「折れやしません…よ」

思春期の少女は頬を染め辺りをキョロキョロ伺うと、遠慮がちに少年の背に身を預けた。

608:薬売り×加世2
08/11/15 02:32:57 QQa/iS17
「よっ…と」

薬売りはすっと立ち上がり背中の加世に負担がかからぬよう深く背負い直す。

「やっぱり折れそう…」

加世が恥ずかしそうに呟いた、薬売りはふっと微笑んで歩き出す。

「これくらいで折れませんよ…、それより…柔らかくていい気持ちだ」

薄いユニフォームごしに柔らかな乳房が薬売りの背中に当たり本来の形を変えている、それが歩を進めるたびに揺らされ二人の体の間で窮屈そうに弾むのだ。

「んー…大きな玉蒟蒻を二つ背負っているような…、おっと」

「もう!変な例えしないで!」

耳まで真っ赤にした加世がこつんと薬売りの頭を拳で叩いた。



「じゃあそこに掛けてください」

促され加世はベンチに腰掛けた。

体育倉庫に連れてこられるとは思わなかった加世は終始そわそわとしている、その部屋はやや埃っぽく汗と土の匂いが染み付いていた。

暫し無言の時間があった後、ロッカーを探っている薬売りに加世が声をかけた。

「あの…薬売り君て野球部なのに何で髪長いの?」

「まぁ…そういう仕様ですよ」

「何で野球部なのにお肌真っ白けなの?」

「仕様…です…よ」

「へぇ、仕様かー」

無難な会話を二三交わすと薬売りは薬箱を抱えて戻って来た。

「かさばるからここに隠してるんですよ」

引き出しから優美な入れ物に入った軟膏を取り出し加世の脚を持ち上げる、粘った液体を指先ですくい熱を持った足首にそっと塗りつけた。

「ひゃ!冷たっ」

「…動いては駄目です…よ」
軟膏を塗り終えるとガーゼを貼り、包帯を手際よく巻き蝶結びを飾った。

「はい…これで大丈夫。念のため病院で診てもらって下さい」

「ありがとう、痛みも引いたみたい」

609:薬売り×加世ラスト
08/11/15 02:35:10 QQa/iS17
だが、薬売りは未だ床に座り込み加世の脚を持ったままでいる。

「…薬売り君…?」

すっと包帯を巻いた足首からふくらはぎを一撫でし薬売りは呟いた。

「綺麗な脚…ですね」

そして目線を落としたままゆっくりと足の甲に口付けた。

「あっ…!やだっ!離して!」

加世は驚いて脚を引こうとしたがその脚は薬売りに掴まれ彼の手の中に止められた、唇の温度が伝わり熱い息が皮膚を掠める。

眼球だけ動かし加世を一瞥し薬売りは薄く笑った、足の甲に押し付けた唇を滑らせ膝まで登るとぺろりと柔らかい皮膚を一舐めした。

「んひゃぁ!」

こそばゆさに身をよじりベンチからずり落ちそうになる加世、またも薬売りに軽々受け止められ元に戻される。

「まぁ…まぁ…、いいじゃありませんか…。おや、ここも擦りむいてますよ」

足首を支えていた手を膝裏に移動し脚を開かせ、プリーツスカートに隠された内腿に唇を這わせる。

「あ…」

「ほら…ここですよ…、疼きませんか?」

くしゃくしゃになったスカートの向こうの薬売りに見据えられ加世はもう抗うことはなかった。

―ぺちゃ―

小さな水音が静かな部屋に鳴り、

「こ、こらぁ―!!!何をしとるか―!!!」

怒号でかき消された。

いつの間にか入り口にジャージを着た厳つい男がわなわな震えて立っていた。

「…ちっ…」

「あ…小田島先生…」


終わり

610:名無しさん@ピンキー
08/11/15 02:38:23 QQa/iS17
全部書いてからなんですが舞台は現代の学校です。以上お粗末でした。


611:名無しさん@ピンキー
08/11/16 15:41:43 dAnA4JFY
どS氏だあ!!
寸止めww
薬売り残念ww

612:秋宵華蝶
08/11/16 21:50:15 R0jsEOfr
>>603 >>604 >>605

ありがとう!
3カチンまで希望してくれてありがたいです。
という事で完結させました
結構長くなってしまった…。
内容重視のためもあり、エロは相変わらず弱いです…ギリギリです…
ドS氏に恐縮しつつ、
ひとまず「秋宵華蝶 第二夜」投下します

613:秋宵華蝶 第二夜 一
08/11/16 21:53:00 R0jsEOfr
――からりからから。
「…約束通り」
「下弦の月に」
「今宵も一月前と同様、善い月でございますね。しかし地上の月に比べれば天の月もかくや」
江戸吉原は玉屋の太夫、花紫がこの男を以前訪ねたのは丁度一月前の下弦の月の宵の事。
「相変わらす口が減らないね。…いい?」
いつも通り煙管片手に艶やかな着流しで座す男に問う。男は煙を一つ吐くと、こくんと童のように頷いた。
「勿論。……お待ち申し上げておりましたよ。首を長くして、ね」
いつもの男の笑みに、なぜか花紫はいつもと違った僅かな暗雲のようなものを感じた。
ぞくり、と背筋を走るものがある。
「…どうなさりました?」
「…いや。今宵は冷えるな…」
「もうすっかり秋も深まって御座いますから。お風邪を召されぬよう」
例によって花紫は金を男に手渡した。
男は確かに、と金をしまうとこちらも例によって戸の札を返し鍵をかける。
「では、参りましょうかね」

そこはいつもと同じ部屋――

のはずだった。
否、確かに同じ部屋なのだが――。
「………御札?」
怪訝そうに花紫は壁一面に貼られてある白い紙を見つめた。
「…単なるマジナイですよ。ほら、巷で何とか言うモノノケが出るとか出ないとか。…御守り程度に、ね」
「…にしても、気味悪いね。何もこんなに張らなくても…これで客が寄り付くのかい?」
花紫は眉をひそめて男の顔を見る。
「…今日誂えたばかりですから。花紫様がお客様第一号で御座いますよ」
笑んで男は言う。花紫には男が本気なのか冗談なのか判りかねた。
「…でもこれじゃあ…あまりにも気味が悪い…」
花紫は顔をしかめ呟いて自分を抱き込むように両手を交差し肩を抱く。
絢爛豪華な内装は手のひら程の白い紙に覆われ、
その上には蝋燭の火に浮かび上がった自分たちの影が踊る。
花紫でなくとも気味が悪いであろう。
男は立ち尽くす花紫を片手でふわりと抱き込み、耳元で低く囁いた。
「今日ばかりは我慢なさって下さいまし。なに、いざとなれば札の事すら忘れさせて差し上げますから」
「……うん」
甘い言葉もこの時の花紫の不安を完全にかき消す事は出来なかった。花紫はただ黙って男の胸に顔を埋めた。
それはただ、札から目を背けんがためであった。


614:秋宵華蝶 第二夜 二
08/11/16 21:55:32 R0jsEOfr

「では太夫様。畏れながら今宵、お相手させて頂きます」
「…うん」
男は未だ不安げに立ち尽くす花紫を不意に抱き締めた。思わぬ事に花紫ははっと息をのむ。
先程と違い、今までに無い位の強い力だった。そのまま男は呟く。
「…目が覚めましたか。どうか私を見て下さいな」
「…うん…」
花紫は急に顔が火照るのを感じた。男の力が緩んだ。帯に手を掛ける。
するり、とゆっくり、しかし手際良く着物を脱がせていく。
着物一枚の花紫を床へいざなうと、男は再び抱き締める。
「寒くは御座いませんか。お風邪を召されては大変ですから」
「…大丈夫。どちらかというと…今はちょっと熱い」
「…よろしいことで」
笑みを含んだ低い口調に花紫はくらりとする。

テンプテーション。

誘惑というものがもし呪術だとしたら、きっとこんなものなのかもしれない…
思考力を奪うというか、頭の中が痺れる感じ…。花紫はぼんやりと思う。
男は穏やかに花紫を見つめるとツと顔をひとなでする。
「…なんか今日いつもとちょっと違わない?」
「…どうして?」
「なんていうか…あんた、前まではあまり抱き締めたりしなかったのに」
「花紫様をこちら側へ戻すためですよ」
「…こちら?」
「札に嫉妬したので御座いますよ。あまりにも札に注意がいきすぎるから」
くつくつと男は笑う。この男はどこからどこまで本気なのであろう、と花紫は虚ろに思う。
「私は常に本気で、御座いますよ」
花紫の心を読んだように男は言った。
「…そう…」
「何もかも忘れさせて差し上げましょう。…お喋りはそろそろお仕舞い」


615:秋宵華蝶 第二夜 三
08/11/16 21:59:45 R0jsEOfr

男は浴衣のまま女を封じるかのように四肢を女の左右に配し真上から見下ろす。
緋に隈どられた涼しげな目元に蒼い隈どりを配した上唇。
なんとなくいつも笑っているように見えるのは隈取りのせいだろうか。
花紫は心の臓が高鳴るのを悟られまいとする。
男はゆっくり顔を下ろしそっと口付ける。男のしだれかかる長い髪によって外界は完全に遮断された。
花紫にはもう男しか見えなかった。

柔らかい触りから、玩ぶように舌が絡む。不意に花紫に鈍い痛みが走った。犬歯で唇を甘噛みされたのだ。
咄嗟の事で両腕が動いたが、瞬間片方づつ手のひらを指を絡ませるように握り込められ
顔の左右に押し付けられた。花紫が目を見開くと男はツと目を開け笑むように細め再び閉じた。
男の指がいやらしく、勿体つけて絡む。
これで花紫は完全に動きを封じられたようなものだ。この男には今まで感じたことの無い束縛感。
しかしその束縛が花紫にはなぜか心地よかった。
――女は目を閉じた。


616:秋宵華蝶 第二夜 四
08/11/16 22:06:44 R0jsEOfr



辺りはしんとしている。
男は眠る女をスと見つめる。
己は床の傍らに座し、行灯に手を伸ばすと、油皿を枕元に置く。
黙って男は女を見つめる。

いかほど経っただろうか。
ちりん、と鈴の音がなった。布団を挟んで女の体の上に配置した天秤が傾く。
壁の札が紋様を描き一気に赤く染まった。直後女の首がわなわなと動き出した。
「…来たか」
女の首は身じろぎするように震えが激しくなり、徐々に伸びる。
まるで震えの反動を利用して首事態が伸びんと欲するよう。
「…油が欲しいか」
男は首に向かって言った。元の位置から三寸ほど伸びたところで首は震え続ける。
「…結界を貼ってある。あがいても好きには動けまいよ」
「…おのれ…」
この世のモノとは思えぬ声で呻き、女の首がぐりん、と男の方を向いた。
蝋燭の僅かな光の中に浮かび上がったその顔は夜叉のようでありもはや花紫の面影も無い。
首は目を見開いて男を睨み付けた。
「その人を解放しろ。…ろくろ首…いや、寒椿。貴女でしょ。……姿を表せ」
カチン、と短刀の首の歯音が響いた。
黒い影がむくりと花紫から起き上がる。
男は影を見据えた。


617:秋宵華蝶 第二夜
08/11/16 22:08:45 R0jsEOfr
読んで頂いた方、ありがとうございました。

続きはまた後日書き込みます
楽しんでいただければよいのですが…

618:名無しさん@ピンキー
08/11/16 23:02:38 MMib6QUy
ドS氏の書く文章は、相変わらずエロくてGJ!
「仕様ですよ」の問答が、赤頭巾とオオカミの会話に見えたwww

「どうしてそんなに大きい耳をしているの?」
「あんたの悦い声が、よぉく聞こえるように、ですよ……」

こんな感じにw

>>612
完結させたってことはもう手元では完成済み?wktk

619:名無しさん@ピンキー
08/11/16 23:20:08 R0jsEOfr
>>618

い、一応、完成済み…(-ω-;)

620:名無しさん@ピンキー
08/11/17 00:28:38 /OTR6SPR
>>612
やばいハマってきたww
首長くして待ってるわ

621:秋宵華蝶
08/11/19 18:52:06 6038hnDF
>>620
ウエンツされちまいますぜwww

待ってくれた方ありがとう
ちょっと長いですが、「秋宵華蝶 満願成就の最終夜」
一気に投下します。怒涛の(とか自分で逝ってみる)最終回です
…誰にも突っ込まれないうちに自分が突っ込みを入れてやる…

薬売り…お  ま  え

いろんな意味でね。つか自分にも突っ込みどころ満載。
ではどうぞ↓

622:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 一
08/11/19 18:54:00 6038hnDF

「ねぇ…あんた一人身なんだろ?」
「…だったら?」
「アタシをもらってくれないかい?」
「申し訳ないのですが…当分は一人身でいるつもりなのでね」
女は笑った。
女の名は寒椿という。寒椿は格子であった。太夫に次ぐ身分の花魁である。
ある時寒椿のいる店で化物騒動が起こった。
その時、たまたま薬の商いで居合わせたのが、この男だったのだ。
化物に襲われそうになった寒椿は万が一の所でこの男に助けられた。
寒椿は店では相応の地位もあったので化物に関して男に数々の情報を提供し、協力する事が出来た。
男に接する内、寒椿は次第に心惹かれていった…。


「…貴女…ご自分が亡くなってからいかほど年月が経ったと思っているんです?」
男は影に向かって声をかける。影は黙って立ち尽くす。
「…アヤカシとなった貴女は今やただの化物でしかない。よって斬らねばならぬ。
…貴女の為にも…この娘の為にもね。ろくろ首は夜眠りについてから油を舐めようと首を伸ばす…
眠ってからじゃないと姿を表さないとは、まことに厄介なモノノケになってくれたもんですね…」
「…どうして…アタシだと…」
影は呻いた。
「この娘、貴女にちと似たところがございましたからね。それに…たまに貴女の顔が出てましたよ」
男は影を見つめる。影は狼狽するかのように揺らめいた。
「貴女の想いが花紫の想いと同調し、人を欲し想う心が首を伸ばしろくろ首となった。それが…真」
カチン、と渇いた音が響く。
「…人を欲してはいけないのか。お前を欲してはいけないのか。…二度も死ぬのは嫌じゃ。
お前を忘れられなかった私は一人入水した。六つで売られた頃から生きるため、
家の借金を返すため芸を磨き客におもねり、格子にまでなったが結局欲しいモノは手に入らなかった…
好きな男には振り向いてもらえず、好きでもない男の相手をしなければならぬ毎日。
…世は不条理じゃ。こんなにも侘しく、虚しい。
生き延びんがため、生きてきたがお前にでおうて望み叶わぬまま生きるのがこんなにも辛いことを知った。
あたしをこんな形にしたのはお前なのだよ?そのお前があたしを斬ると言う。お前は人を想うた事があるか?」
男は黙って影を見つめる。
影は間をおいてぽつりと呟いたが男に聞こえたかどうかは定かではない。
「…否、あたしが怨んだのはお前等ではない…」


623:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 二
08/11/19 18:55:37 6038hnDF

影は発狂するように大きくうねる。
「…嫌じゃ、嫌じゃ…もう、一人は嫌じゃ!もう嫌じゃ…」
「…それが…理」
カチン、と短刀の首がなった。
「形と…真と…理によって剣を…」
「お前を道連れるのが叶わぬなら、この娘を貰うてゆく!」
「…解き放つ…」
影は一瞬広がり大きく蠢き、娘の中へ戻ろうとした。
「その娘の体は天秤が守っている…もう戻れまい。大人しく斬られよ」
夜叉の頭を持つ剣を手にする男は金の衣に金の紋様を褐色の体に纏っている。紅い帯が鮮やかに宙を舞う。
そこには先ほどまでの白い肌の細く女のような男は居なかった。
「憎し憎し…」
影は花紫に入れぬとみるやいなや男に襲いかかった。迫り来る影は二本の赤黒い細い影をたなびかせていた。
後方にたなびくそれは、さながら涙のよう。
「あなうらめしや!!」
男は剣を振るう。呪詛のような刃は美しいほどの光と彩色を放つ。男の長い銀髪がなびいた。
「静まれ…転生の地で安寧に生きよ」

「滅!!」
男は一心に剣を降り下ろした。
閃光が、走った。



辺りは静まりかえっている。
男は一人床の傍らに座し佇んでいる。床では花紫が安良かに寝入っていた。
男は女の頬をさらりと撫でて一人ごちた。
「……人を想うた事があるか……世は不条理……」


624:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 三
08/11/19 18:57:26 6038hnDF

花紫は目を覚ました。傍らには男が寝入っているようだ。花紫は男の腕の中にいた。ぼんやりと辺りを見回す。
どこからか光が漏れているようで、光の筋が数本、室内に走っている。
「……朝…?」
花紫は呟いて、はっと慌てた。
「…ん…」
男も目を覚ましたようだ。
「…おはようございます」
花紫を抱いたままの姿勢で眠たそうににこりと笑んで挨拶する。
「…う、うん…あたし…もしかして寝ちゃったの…?」
花紫は青ざめて恐る恐る男に問うた。
「そうですが…何か問題でも?」
「い、いや問題っていうか…あ、あたし自分ではわからないんだけど、
寝相悪いみたいだから一人の時しか眠らないって決めてたんだよね。それで昔客一人逃しちゃって…」
ひきつった笑いを浮かべ花紫はおろおろと話す。声のトーンもどこかおかしい。男は、ははぁと心の内で呟く。
「安良かに寝入られて御座いましたよ。この通り、大人しく私の腕の中に収まって……」
蠱惑的に男は笑んで言う。花紫は一気に赤面した。
「それより…よく眠れましたか」
男は穏やかに問うた。
「う、うん、それはなんか久しぶりにぐっすり眠った感じ…肩こりっていうか、
いつもの起きた時に感じる首の痛みも酷くないし」
「肩こりですか…?」
「いつもは起きた時に酷くてね…そうだ、なんかいい薬ない?」
男は少し考えると一人で妖しく笑んで答えた。
「…それではしっかり効く善いものが御座います。お出しして差し上げましょう。
……あぁそういえば昔、ろくろ首の女を治したとかどうとか言う、逸話も残っている妙薬でしてね…」
「ほ、本当!?」
女の顔が心なしか輝いたように見えた。
「逸話ですけどね。…でもまぁ火の無いところに煙は起たぬと申しますから…。一粒で効果覿面、ですよ」
「じゃあそれ貰っていくよ」
花紫は嬉々として笑顔で答えた。


625:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 四
08/11/19 18:58:30 6038hnDF
「…そう言えば…御札は?」
安堵して辺りを見回した花紫は怪訝そうに呟いた。
昨夜貼ってあったはずの御札が一枚残らず消えていたのだ。
「…あれは昨夜の内に処理しましたよ。客が怖がるんじゃあ元もこもない…」
「全く、顔はいいのに趣味悪いんだからね…」
「私の所に通う貴女も十分悪趣味で御座いますよ…」
「それは…」
赤面して花紫は顔を背ける。
「お仕事の方はどうです?」
不意に男が話題を変えた。花紫は眉を潜めて答えた。
「どうって…別に。もう慣れたし」
「私はね…この仕事畳もうと思っているんですよ」
「えっ…?」
花紫の顔色が変わった。
「元々、目的も無くふらりと始めたもの。そろそろ別の地へ行こうかと」
「そんな…じゃあ…」
花紫の目からは自然に涙が溢れた。この男の存在が花紫にとって生きる糧となっていた。
今までの逢瀬はたった数回だったが、花紫にとってこの男は生きる意味そのものとなっていたのだ。
男は黙って女を見つめた。
「…あんたがいたから…私は生きてこれたのに…」
「…違います。私なんかよりもっと近くにいて貴女を大事に思っている人がいるはずだ」



花紫の脳裏にちらりとある男の顔が浮かんだ。



626:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 五
08/11/19 18:59:43 6038hnDF

その男は花紫の側にいて雑用をこなしていた。
分をわきまえ、従順で優しい目をした男だった。
落ち込んだ時はいつも決して近寄らず、側に侍りただ言葉で励ましてくれた。
「ち、違う…」
「やはり思い当たる節がおありですね…
私なんかよりその男の方が余程貴女を幸せにすることができるはずです」
花紫は寝返りをうち男に背を向けると黙って聞いていた。
「花魁の定年は確か二十八あたりでしたね…貴女にはまだ先だ。
しかし…そろそろ自分を一番に思われても良いのではないですか。
…そうそう、今まで頂いたお金はそっくりそのままお返ししますよ。
貴女がこれからどうするのか、それは問いませんがこれだけあれば暫くは何もせずとも楽に生きていけましょう」
花紫は顔を伏せ、暫く言葉も出てこないがやっとの体で口を開く。声が震える。
「…わかった…あんたの事は諦める…だからもう少しだけ…ここに…居させて…」
「…良い子だ」
男は腕を伸ばし花紫をこちらへ向かせると優しく強く抱き締めた。
女は男の胸に顔をうづめ泣いた。男の髪が柔らかく絡む。嗚咽が込み上げてきた。




「……柄に無い……」
女が去った後の戸を虚ろに見遣り、男は自嘲めいた口調でぽつりと言った。
男はふらりと、よろける様に立ち上がった。着崩した浴衣の裾と長い波打つ髪が弱々しく揺れる。
床に置かれていた緋色の短刀が物言いたげにカタカタと音をたてた。

昔からろくろ首は美しい遊女の姿で描かれる事が多い。
「悲しき…モノノケ」
自ら刃に飛び込むほどに。


627:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 六
08/11/19 19:00:41 6038hnDF


「ここ辞めようと思うんだ」
目の前の太夫の言葉に男は目を見開いた。
「辞めて…どうするおつもりで…?」
「どうしようかね…寺にでも入ろうと思うよ。心穏やかに暮らせるかな」
「…本気ですか」
男は動揺を隠せないようだった。物静かなこの男には珍しい、と花紫は思う。
「うん」
穏やかに太夫は頷いた。
「では…」
男はやや言葉につまり、後に思いきったように口を開いた。
「で、では私の元へ来ては頂けませんか?無礼は承知の上で御座います。
私は貴女の側に侍るだけで幸せで御座いました。貴方をお守りするためならなんだって致します。
…勿論、お断り頂いて結構ですが…」
暫しの沈黙があった。男は俯きつつ、その沈黙に耐えた。
「…本当に?」
キ、と男は顔を上げた。
「冗談でこんなことが申せましょうか。ずっとお慕い申し上げておりました。
高嶺の花と、自分に言い聞かせてきた私は今、一世一代の覚悟を決めた所で御座います」
花紫は呆然と男を見つめ、目に涙を浮かべた。
「こんな近くに…いたのに…」
花紫は弱弱しく呟いた。
「…ありがとう…佐吉。あの人が言ったこと…本当だったんだ…」
「…?あの人とは…?」
「西のあの小さな山の上に変わり者が住んでいてね。その人が教えてくれたんだ」
花紫は外を指さし説明したが、佐吉は怪訝な顔をする。
「…失礼ですが…あの山の上には今は落ちぶれた古寺しかないはずですよ。人が住んでるわけは…」
「それは古い話だろ。今はもっとちゃんとしたものが建ってるよ」
「…おかしいですね…」
佐吉は未だ納得の行かない様子で首を傾げる。
「じゃあ案内するよ。あの人まだいるか分からないけど…。
もしいたらあんた紹介して、薬のこととか…お礼もいいたいし」
花紫は楽しげに笑んだ。


628:秋宵華蝶 満願成就の最終夜 了
08/11/19 19:04:31 6038hnDF
下弦の月の晩をぼんやり思い出しながら花紫は佐吉を案内した。夜以外でこの道を通った事は無かった。
「こんなとこを夜な夜な共の者もお付けにならずお一人で行かれるとは無用心すぎます」
佐吉は眉を顰め地味に抗議したが、まさか夜這いに行くためだからとは花紫でも言えず、黙って聞き流した。
長い石段を登り、たどり着いたその先には、建物が見えた。
「…やはり…」
佐吉は頷いた。花紫は呆然と立ち尽くす。まさしく古寺だ。今にも崩れそうな体である。
近づいてみたがあの男がいた建物には到底見えなかった。
一陣の風が吹いた。

からりからから。

聞き覚えのある錆び付いた音にはっとして花紫は辺りを見回す。
寺の賽銭箱の真上に吊るされた鈴に目が止まった。
古びた鈴の音は、まさしくあの男に迎えられる時に何度も聞いた音だった……



後日、江戸の町は一つの話題で持ちきりとなった。
「あの、花紫太夫が消えたらしい」
「消えたって…どういうことだね?」
貰い手が決まったのか、それともただ一人姿を晦ましたのか。もしくは病にでもなって…。
様々な憶測が飛び交う中ただ確かなのは、玉屋を訪れてももうそこには花紫は居ないという事だ。
真相は江戸の小市民には分かりえなかった。
真相が分からぬ人々は、ただただ「消えた」とばかり噂した。
天保十年。玉屋の花紫太夫をもって、太夫という地位も江戸吉原から完全に消えた。
後の世に、花紫は江戸吉原最後の太夫として未来永劫語り継がれることとなる。







629:秋宵華蝶 満願成就の最終夜
08/11/19 19:13:06 6038hnDF
終わりました!
読んでくれた人ありがとう。
パロってみて、モノノ怪の脚本家さん達凄いなって事を改めて感じました

「秋宵華蝶」の段階ではまさか主人公が花紫になるとは思ってなかっ(ry
三かちん希望してくれた人、ホントありがと!

そしてエロ無しと言いそびれた…ウエンツされて来ます

630:名無しさん@ピンキー
08/11/19 22:03:52 O3dX/KL9
GJ!めっちゃ気持ちよく読めたぁ

631:名無しさん@ピンキー
08/11/20 20:37:05 Mr7jr5FZ
>>629
エンディングにナツノハナが聞こえたやうな

632:名無しさん@ピンキー
08/11/20 21:03:09 a8R8O1gp
合いそうだね

633:名無しさん@ピンキー
08/11/27 23:42:03 04Mkq2Ww
保守!

634:名無しさん@ピンキー
08/11/30 17:44:16 Y5ukJDjn
最近知ったけど花紫って実在の人だったんだね

635:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:26:44 ZYfTGbrx
え、そうなん?
詳細うpよろしく



636:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:48:57 OVa3B1nq
URLリンク(www.himejifan.com) 
一番下の『吉原の太夫とは』のところ

URLリンク(www.seibidou.com)
歌麿の「玉屋内花紫」

637:名無しさん@ピンキー
08/12/02 01:59:06 42vT5F/H
>>636
玉屋かぁ。画像まで上げていただいてありがとうございますっ!


638:名無しさん@ピンキー
08/12/07 09:42:29 GDo2IjbY
保守

639:名無しさん@ピンキー
08/12/13 00:24:45 bO1mKlyn
保守るとき保守れば保守る!

640:名無しさん@ピンキー
08/12/15 21:05:55 sRTfq7Jt
万人の万人による万人のための保守

641:薬加で薬受け風味
08/12/16 00:01:09 GDUh34YQ
今のところ加→薬で、前半薬受け気味。
途中ですが、投下してみます。



642:薬加で薬受け風味1
08/12/16 00:03:02 FZuBnRIz
男が長屋の戸を引く。
いつもならすぐに、おかえりなさい!と満面の笑みで迎えてくれるはずの娘の姿が、ない。
おかしい。こんな時分に家にいないなんてことは、今まで一度もなかった。
おそらく夕食になるはずだったはずの食材達は、桶に浸かるか、まな板の上に転がるか、
はたまた鍋の中。なんとも中途半端な有様。
留守中に何かあったのか・・・。不安がよぎったその時、がらっと背後で鳴る引き戸の音。
すぐさま振り返ると、今まさに姿を探し求めていたその娘が引き戸にもたれかかる様に
そこに立っていた。
「加世さん・・・?」
怪訝な顔でその娘の名を呼ぶ・・・が、反応がない。様子がおかしい。
顔はうつむき加減でよく見えないが、まとっている空気が、明らかにいつもと違う。
あの溌剌とした雰囲気が微塵も感じられない。何事かと側に駆け寄り、重心を自分に移すようにして
引き戸にもたれかかっていた肩を抱き寄せた。
「・・・んー?」
とようやく娘の声がしたかと思うと同時に、男は眉根を寄せた。
こいつぁ・・・・・。なんだって、こんな・・・。とため息をつく。
立ち込めた匂は、いつもの娘の柔らかく甘い香とはほど遠く、鼻の奥まで刺激する。
「どこに・・・行ってたんです?」と、不機嫌な色を帯びた声色で問うと、ようやく娘は顔を上げた。



643:薬加で薬受け風味2
08/12/16 00:06:24 GDUh34YQ

「・・・あーくすいういさんじゃないれすかー。おかえいなさーいv」
へらっと締まりのない顔で、答えになってない応えをする娘。
頬はまるで情事の後のように薄紅に染まり、唇は熱を持ったように紅く、いっそう厚みを増して見え艶やかである。
半落としの瞼の向こうには、潤んだ漆黒の瞳。・・・・あぁ。と、男は先ほどより深いため息をつく。
脊髄の芯がにわかに疼く。
その全てを貪りたい衝動を抑えながら改めてもう一度、語気を強めて問う。
「ど・こ・で。飲んでたんですか?」
これだけは確かめておかなくてはなるまい。
このあたりは長屋が並ぶばかりで、飲み屋は一軒だってない。見れば、足もともおぼつかないあり様。
一体どこで飲んでいたのか・・・いや、正確には「誰と」飲んでいたのか。
それだけは聞き出さなくては、この先の娘への対応も変わってくるというもの。
それがもし、男であろうものなら・・・と勘ぐる男をよそに、娘は気持ち良さそうに瞳を閉じてしまった。
「ちょっと・・・!加世さん?!」質問に答えて下さいと男が肩を揺さぶると、
娘の首ががくっと振れて、仕方なくといった風に散漫に、とろんとした瞳を開く。
その焦点の合っていない瞳が、達した後の様に似ていた。
男は心の臓ではないところで拍動を感じ始める。
「今まで、誰といたんです?」
焦れた響きを帯びる問掛けに、ようやく娘が答える。
「・・・さえさん。おむかいの・・・」
あと・・・ご近所のみんなもー。にこにこと答える娘に、さらに問いかける。
「みんな、とは。」
「みんなはみんなですよぉー・・・。」
結さんとかー。お静さんとかー。それとー・・・と、たらたらとした応えに痺れをきらし、男が核心を問う。
「そこに、男衆はいなかったんですかい?」
「いませんよぉー?・・・・・だってねぇ」
と娘は上目づかいで男を見つめると言った。
・・・おんな同士の話をしたくて、集まったんですもん。


644:薬加で薬受け風味3
08/12/16 00:11:11 FZuBnRIz

そういう事か、と男は納得した。
そういえば今朝、近所の女衆が加世を訪ねてきているのを出掛けに見た。
あの時、今夜の女だけの飲み会の誘いを受けていたのだろう。
ひとまずは、安心した。男の劣情を煽って止まないこの娘の色は、他の輩には見られずに済んだようだ。
そう思うと、また腰が疼きだした。
そういえば、己が酔ってこの娘を貪ったことはあっても、その逆はなかったな。
などと考えていると、娘と視線が交錯した。

「ねぇ?・・・くすりうりさん。」
・・・あたしに、させて欲しいことが・・・あるの。と上目使いで言ったと同時に、娘が思いもよらぬ行動に出た。
その行為に、男は思わずうっと声を漏らす。
娘の掌が己を撫で上げたのだ。
ただでさえ、酔った娘の艶に疼いていた根が、にわかに立ち上がる。
その娘の手を思わず両手で掴むが、娘はもう片方の手でさらに擦り上げる。

「加世さん・・ッ」

声が上ずる。男は混乱した。
普段では考えられない行動。娘の掌から与えられる初めての快感に、思考が止まる。
娘は距離を縮めると、男の耳元で囁く。

「ね、お願いだから・・・。」
早く脱いで?と、可愛らしくおねだりをした。


645:薬加で薬受け風味4
08/12/16 00:19:46 FZuBnRIz

衣擦れの音が、明るい部屋に響く。

普段の二人の閨事は、文字通り閨(やみ)の中で為す。
それは男が初めて娘を抱いた夜からの決まり事のようでもあった。
娘は、男からの淫薬の強要を甘んじ受けることはあっても、闇だけは守り通してきた。
男は夜目の利くほうではあるが、闇にもどかしさを感じるのが常であった。
身体を重ねるようになってから、日が浅いわけではないが、一向に慣れず、恥じらう娘を愛しく思う。
一方で、己の一物を咥えこむ華を、律動に合わせ揺れる柔らかな実を、
乱れながら啼き、快楽に溺れる表情を、余すとこなく存分に眺めたいという劣情が男の中でくすぶっていた。

すでに襦袢姿の二人は脱ぎ捨てた着物の上で、膝立ちのまま互いの腰紐に手を掛けていた。
娘が男の衣を脱がせたことは、今まで一度もない。
それが今夜は、脱いでとせがむばかりでなく、自ら男の腰紐に手を掛けている。しかも明かりの下で。
男は、めったにないその状況を、楽しむことに決めた。
娘の腰紐を解き終えると、襦袢の前が肌蹴たが、あえてそれを肩から落としはしなかった。
そのまま腕を下ろし、娘の好きにさせてやる。

「いったい何を、してくれるんです・・・?」と言う男の口が厭らしく嗤う。
近所の年増な女衆に吹き込まれたことでも試してみたいのだろう、ということは大体予想がついた。
娘は男の下穿を下ろすと、下帯に手をかけながら言った。

「・・・さっきね、教えてもらったの。」
ぺたんと座り込むと、娘の目の前にはちょうど、下帯の下で既に十分に立ち上がっている男がある。
ゆっくりとそれを解いていく。
現れた男は、下帯から解放された反動で娘の目の前で軽く振れ、その先が娘の鼻をかすめた。
そのわずかな刺激にも男の腰がびくッと震えた。
思わず吐息が漏れそうになるのを堪える代わりに、眉根が寄る。

己自身の目の前に、紅く艶やかなふっくらした唇がある。
娘の大きく潤んだ瞳に見つめられている。
そしてそのさらに奥には、深く谷を作る乳房。
その光景に煽られ、拍動しながらさらに大きさを増す自身。
早くッ・・・その唇で、舌で、胸で、包みこんでくれ・・・!


646:薬加で薬受け風味5
08/12/16 00:26:44 FZuBnRIz
娘は初めて光の下で見る男に意識半分で感心していた。
きれいな肌色・・・あたしの肌と薬売りさんの肌とちょうど中間くらいかしら。
と魅入りながら、ふふっと笑った。その吐息がまた男の先端を刺激する。
「加世・・・さんッ!」
もう限界とばかりに、男は両手で娘の頭を押さえ腰を突き出してきた。

「やッ・・・、も〜ぅ!動いちゃだめですぅ〜」
娘は顔を反らし、男の先は娘の柔らかい頬に擦りつけられている。
はぁ・・・っ!と男が吐息を漏らした。
頬に触れただけでこの快感。それがその唇なら・・・ッ!と男の限界がすぐそこまで迫ってきていた。
娘は男からの頭の拘束を解くと、上目づかいで言った。

「お願いだから・・・じっとしてて?」
ね?と首を傾けながら言う娘の笑顔が憎らしい。
「では・・・早くッ・・・!」
と今まで聞いたこともない切ない声を上げる男とは対照的に、娘は余裕の表情で答えた。

わかってますから・・・。」

そう言うと、娘の両手が男の大腿に触れた。


647:薬加で薬受け風味
08/12/16 00:30:39 FZuBnRIz

王道スロー展開ですいません。

後半はまた後日。

648:名無しさん@ピンキー
08/12/17 21:11:55 RIbDdPMS
乙でーす

649:名無しさん@ピンキー
08/12/20 23:31:46 zCJsSa+j
そろそろ和姦秋田。前スレみたいなハードなやつキボン。

650:名無しさん@ピンキー
08/12/21 01:23:00 yDcNyBJH
性交以外はどうだろう
自慰とかSMとかおしっこ我慢とか

651:名無しさん@ピンキー
08/12/26 00:42:09 /cXTrYM/
で、>>646の続きは来ないんだろうか。
投げ出すのは感心しないな。

652:名無しさん@ピンキー
08/12/26 00:58:58 zrCJYUpM
投げ出しっつか
秋田って言われたから需要無いと思って自重したのかと思ってた
自重する必要は勿論ないけどね
まだ書き上げてないだけかもしんないが

653:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:46:26 NfMpCAaH
小田島キボン

654:名無しさん@ピンキー
08/12/28 13:46:54 0ef3QA5b
自重なんかいらねえ!
来いっ

655:名無しさん@ピンキー
08/12/30 21:05:11 oxA1kuYT
まとめると小田島で自重せずハードな自慰?
ハードル高えなおいw

656:名無しさん@ピンキー
08/12/31 03:12:13 XwR3VPpj
まとめんなw
圧縮落ち免れてヨカタ。よいお年を!

657:名無しさん@ピンキー
08/12/31 04:14:55 cbWq3tDo
小田島で自重せずハードな自慰で姫初め?
濃度も高いなw

>>646戻って来いっ
そして、よいエロパロを!

658:真央×小田島1
09/01/01 03:47:04 90YqCVdw
>>653-657の流れで即席書いた
小田島で自重せずハードな自慰をする真央様



長い黒髪を振り乱し、上下に揺れる白い体を、小田島は陶然と見上げていた。
ほっそりとした肢体には些か不釣り合いとも思える、豊かな乳房が弾力をもってはずむ様は煽情的で、目を逸らすことが出来ない。
堅物だの愚直だの言われても、己も所詮はただの男なのだな、と小田島はしみじみ自嘲した。
あ、あ、あ、と揺れに合わせて赤い唇からは細い嬌声がこぼれ、同時にじゅぶじゅぶと濡れた肉が絡み合う、粘ついた水音が股間の辺りから響いた。
硬く膨れた陰茎をぐにぐにと締め付け、扱き続ける肉筒は熱く、それでいて柔らかく、まさに甘美だったが、あと一歩のところでどうしても物足りなさが残る。
それがなんとも言えずもどかしかった。
肉壁からとろとろと滲みだす温かな蜜が陰茎を伝って袋まで濡らす、てろりとした感触にまた焦燥感が募った。
「く……、真央、様……っ!」
「あン! あ、あぁ、小田島、また硬くなった……あぁ、ふふ……」
切羽詰まった男の呟きに、跨る女はうっとりと目を細めて我が身を抱きしめた。

小田島が坂井家の一の姫である真央と肉の関係を持ってから、早二年が経とうとしていた。
とはいえ、仕える家の姫君と人知れず恋仲になった、という甘やかな話ではない。
この性交は、主の妻女である水江から言い渡された、れっきとした「お役目」だった。
曰く、いずれは名のある家の男の元に嫁ぐことが定められている真央への、『教育』とのことだった。
それなりに若く、加えて忠義に篤く、しかし美形ではない小田島は、水江の言葉を借りるなら『教育に最適の人材』だったらしい。
─どんな教育だって言うんだ、おい。
白羽の矢が立った時、殊勝な顔の裏で小田島は、心底呆れたものだった。

そしてこの二年で、真央はすっかり男の味を覚えたようだった。
母親の言いつけに逆らう考えはなく、しかし嫌悪と戸惑いが見え隠れする表情で、恐る恐る小田島に触れていた真央はもういない。


659:真央×小田島2
09/01/01 03:51:13 90YqCVdw
「はあっ、あっ、んん、んくぅ……んっ!」
恍惚に歪んだ汗まみれの赤い顔は淫乱そのもので、昼間の取り澄ました顔を持つ女とはまるで別人だ。
再び小田島の腹の上に手を付き、踊るように腰を振る。一層水気を増した淫猥な音がぐちゃぐちゃと結合部から響いた。
真央の動きは自分の快楽を追うためだけの動きだった。男には正直たまったものではない。
もはや小田島を男ではなく、ただの張り形、自慰の道具と見なしているのかもしれない。
あくまで『教育』である以上、小田島から真央へ触れることは必要とされた場合のみ、それ以外は一切禁じられている。
今は頭上で括られた両手を情けなく思いながら、「なんて拷問だ」と小田島は心中こっそりと毒づいた。

濡れそぼった互いの恥毛を擦り合せるようにして身をかがめると、白魚の指で男の乳首を捏ね回しながら、真央は蠱惑的な微笑みを小田島に向けた。
「素敵よ、小田島……」
うふふ、と熱く湿った吐息を吹きかけて、ちろちろと小田島の口腔へ舌を這わす。
男としての矜持を自ら踏みつけ、小田島は舌を出して真央と唾液を交換した。
「でも……まだ、駄目よ」
甘く囁いて、真央は指先を繋がった場所へと延ばした。
肉芽を軽く弄んでから、つうっと慈しむように己の秘処を貫く肉棒の根元をなぞる。
今にもはちきれそうな赤黒い陰茎に、さらに目の覚めるような赤色の組紐が結ばれていた。
「もっと感じさせて」

─いつか血が出るんじゃなかろうか。
快楽と苦痛の狭間で、小田島は力なく思った。



おっしまい!
あけおめことよろー

小田Gゴメソ(´・ω・`)

660:名無しさん@ピンキー
09/01/01 20:31:04 9ISme3Fs
非道すぎるあんまりだもっとやれ!
新年早々美味しいエロをありがとうGJ!!

661:名無しさん@ピンキー
09/01/03 22:43:49 K+PgiG8X
GJGJ!
この真央が塩野に嫁いでたら悲惨だったろうな、いろんな意味でw
若い男をくわえ込むか、いっそ小田島様が嫁入り道具のひとつwなんてなw

662:名無しさん@ピンキー:
09/01/05 01:19:28 GIjr277o
薬売りズ×加世の続きを待ってろくろ首になっちまいそうです、ぜ・・・

自分に文才があったら・・・っ!

663:名無しさん@ピンキー
09/01/08 23:06:13 7YhMKxL0
ろくろくび定着ww

664:名無しさん@ピンキー
09/01/13 09:04:13 QvgMnDnl
ろくろくび絡まるww

665:名無しさん@ピンキー
09/01/15 22:32:53 DAEBPt8M
>>664
いっぱいいすぎて??

666:名無しさん@ピンキー
09/01/17 22:51:41 ScymNngs
666(゜∀゜)

667:名無しさん@ピンキー
09/01/24 22:51:02 YyY0M43y
保守!

668:名無しさん@ピンキー
09/01/24 23:33:55 L6ra91ss
野手

669:名無しさん@ピンキー
09/01/31 01:23:25 rVCQ9Mvr
野生の薬売りがとびだしてきた!

670:名無しさん@ピンキー
09/01/31 04:53:38 gIJDrOQV
野生の薬売りは牙をむき出してうなっている!

手なづけますか?
 
 はい いいえ

671:名無しさん@ピンキー
09/01/31 18:41:18 xxCWZ3Ps
>はい
→…誘って、るんですかい?
それは、また…
貴女も「好き」なお方だ…
では、遠慮なく…アーッ→お持ち帰り

>いいえ
→ほう…興味がない、とでも?
…多少嫌がられた方が、俺もそそるってもんですけどねぇ…(ギラリ)
と、いうことで…アーッ→お持ち帰り

野生の薬売りの巣に持ち帰られてしまった!
この場を切り抜けるためにどのアイテムを使う?

・塩
・春画
・眠り薬
・己自信

672:名無しさん@ピンキー
09/01/31 20:17:34 nVGcGUTB
あ ら て の 乙 女 ゲ ー ムwww

じゃあ眠り薬で!!

673:名無しさん@ピンキー
09/02/01 11:02:33 HbWpOxjn
薬売りには 効果が ないみたいだ…

「大体、薬に頼って眠ろうっていう、その根性が気に食わない。
なに、そんなものなくとも、ぐっすり眠れるようにして差し上げますよ……」

GAME OVER



アーッがアッーに見えてまさかのryかと勘違いしたのは自分だけでいい。

674:名無しさん@ピンキー
09/02/02 02:48:38 44Opxxai
薬売りには薬は効かないのかw

…春画でお願いします

675:名無しさん@ピンキー
09/02/02 20:11:49 wtROS7JN
薬売りには 効果が ないみたいだ

「ほぉ・・・俺がこの程度のモノに動じるとでも?
もっとすごいヤツを、教えて差し上げますよ・・・」


これもGAME OVERw

676:名無しさん@ピンキー
09/02/03 15:59:30 /sDhWDfZ
あ、今更ながら誤字発見w

>>671
の選択肢「己自信」→「己自身」すいませぬ

677:名無しさん@ピンキー
09/02/06 22:09:19 CkRl+5/k
薬売りが持ってるものは効かないのかな

では塩でw

678:名無しさん@ピンキー
09/02/07 08:48:23 8olYZhnH
薬売りの 目の色が 変わった!

「明石の天然塩……。サバにしますか? アジにしますか? それとも鮎か岩魚?」

薬売りの 興味は 魚に移った!

どうしますか?

→魚で釣る
→良い塩は豆腐だろjk
→酒だ酒だ! 酒を持ってこい!

679:名無しさん@ピンキー
09/02/07 22:43:53 clloTuMr
>>678
そう来たかwww
酔わせてみたいな…ゴクリ…
→酒

680:名無しさん@ピンキー
09/02/10 22:34:10 +797dTZK
この流れマジおもろい。gjだ673

681:名無しさん@ピンキー
09/02/13 21:43:01 s+0YSVtf
がちゃーん!!

とっくり が 割れた!

「モノノ怪は……わたし……?」

野生の お蝶さんが 現れた!!

「YATTA! YATTA!」

ついでに 敦盛が 乱入してきた!!

→たたかう
→ようすをみる
→みんなで酒盛り!


……保守代わりのつもりだが、いつまで続くんだこれw
職人さん来ないかなー


682:名無しさん@ピンキー
09/02/13 23:47:20 i6ASbxwk
>野生の お蝶さん

想像できないwww

683:名無しさん@ピンキー
09/02/14 01:40:03 dUeRVhT/
これはこれで楽しいからいいんじゃね?


→たたかう で!!

カオスな乱闘決定w

684:名無しさん@ピンキー
09/02/16 22:19:29 iJ5eRL04
スレ、agesるっ!!

685:名無しさん@ピンキー
09/02/18 12:05:04 MhpPS0wH
>681
じゃああたしはみんなで酒盛る!

686:名無しさん@ピンキー
09/02/22 22:15:58 I3qBJjpE
>>683,685

(プレイヤー)の 塩投げ!

明石の 天然高級塩が お蝶さんめがけて 飛んでいく!

敦盛の かばう!

敦盛は お蝶さんを かばった!

「あなた……!」
「SHOPPEEE! SHOPPEEE!」

薬売りは 猪口を片手に 七輪で 魚を 焼いている!

「この塩の、甘みがわからぬ、とは……。実に哀れな、モノノ怪だ」



・・・ごめん。反省はしている。

687:683
09/02/22 23:53:43 SHjuwVi6
盛大に笑った!!
敦盛「SHOPPEEE!」てw


688:名無しさん@ピンキー
09/02/23 02:39:49 WpntaTUM
>>683
→たたかう
薬売り「そんなことよりも、魚・・・」
敦盛「ただの人に負けるような身ではない」

敦盛の煙管から煙を吹きかけられ、のっぺらになった!動けない!
それに気付いた薬売りが、怪しい笑顔と筆を携えつつ、近づいてきた・・・
GAME OVER


>>685
→みんなで酒盛り!
しばらくすると敦盛とお蝶さんが交尾し始めた。卑猥な単語が飛び交う気まずい空気、
ふと気付けば、杯を持ったままの薬売りの視線が、痛いほどこちらに向いている。

やばい!最初は逃げようとしていたのに、何で酒盛りなんかしてるんだ!?

そして>>671の選択肢へ戻る・・・保守


689:名無しさん@ピンキー
09/02/24 20:39:25 4R9Sh6BJ
ああああ戻ってもたぁぁぁっ
ってかSHOPPEEEEEEに吹いたwww


690:名無しさん@ピンキー
09/02/24 22:32:00 r9JSDObX
無限ループかw

691:名無しさん@ピンキー
09/02/25 13:31:08 tHbFxcts
>>678
→良い塩は豆腐だろjk を選んでみる。

692:名無しさん@ピンキー
09/02/28 21:28:30 WS2QeCS7
保守、満ちましてございます

693:名無しさん@ピンキー
09/03/05 20:56:55 uVYYGpMF
「満ちたようでございます」だ

694:名無しさん@ピンキー
09/03/09 23:31:50 Dx2szkID
くちゅり…

女より白くきめの細かい肌から玉になった汗がするりと音もなく滑り落ちる。間隔の短い息遣いが男の高ぶりを感じさせるようで、女はぞくりと身震いする。
自身の中心に、深く入り込んで熱を放つ男を無意識で絞りあげる淫欲。もっとほしいとひくつきながらさらに奥へと男を誘っていく…
『加…世さんっ…』

あぁこの声が好き…

たまりきらず、体内に勢いよく流れだす男の欲望に、体内まで舐められているよう。
そのみだらで不確かな感触に意識が白くなってゆく…


695:名無しさん@ピンキー
09/03/09 23:42:30 Dx2szkID
事がすむと、男はいつも優しく女をいたわった…
体のどこにも無理がかからぬよう、そっと抱きしめ髪をすき、背を撫でて

『…大丈夫…ですか?』

と、聞いてくる…。
ことに最近は念入りに。無理もない…女は老いる。
大丈夫…と、答える代わりにふわりと笑顔。そしてゆっくり目を瞑る。
いつものように…大丈夫を伝える。


男は女が若い時ほどではないが、変わらず求めてくる…。
『加世さんがどんなに老いようと、私の気持ちはかわりません』
歌舞伎役者顔負けの色男なのに、自分の言ったことを表す方法がこれなんだから、ほんとに不器用。
女はクスリとひとり満足した。


696:名無しさん@ピンキー
09/03/09 23:58:45 Dx2szkID
男が静かに眠りに落ちた頃、女はそっと目を開けた。
起こさないようにそっと男の顔をのぞき見る。この動作もいつからかとてもしんどくなった…今日はことにつらい気がした。

整った顔立ち、薄い唇に紅のくまどり、もうみ慣れはしたものの、やはり惚れ惚れしてしまう。

あぁ…大変いそがなくっちゃ…

不意にそう思って言葉を紡ごうとしたが、どういうわけか声にならない。

どうしよう、困ったな…、…そうだ!

動かない体になんとか力を込めて自分の額を男にすりつける。
…どうか伝わって。

薬売りさん、私が死んだら、お墓を作って…

あのね、私を埋めたらその上に石をおいてね。
大きくなくてもいいの。きれいじゃなくてもいいの。
その辺にあるようなのがいいの。

少し寂しいかもしれないけど、お花とお線香でも備えたら、それらしくみえるでしょ?


それに…あなたが私を忘れるくらいに時間がたてば、きっと苔がむして、それこそ大地にかえって、ありふれた景色の一つになるでしょう?

…あなたが悲しい事を思い出さなくてすむでしょう?


697:名無しさん@ピンキー
09/03/10 00:05:14 Dx2szkID


伝わってね。大好きよ。



朝、男が目を覚ます。
くるべき日が来たのかと、男は静かに…悟った。



以上、激しく後悔。ほんとにすいません。ただ最近の過疎化がどうしても…
しかし、自分は職人にはなれないんだと悟りました。


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