無口な女の子とやっち ..
[bbspink|▼Menu]
38:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:41:27 kOmgZ3sy
今日の日付を思い出す。
12月25日。
いわゆる『クリスマス』だ。
人々が、赤や緑やプレゼントやケーキに心と体を躍らせる、そんな日だ。
……まぁ、最近は、どちらかというと『クリスマス・イヴ』のほうがもてはやされ、
メインである今日は、なんだか盛り下がった感は否めない。
俺は視線を中空から、前に引き戻す。
汚いこたつの上には、食べかけのケーキがある。
昨日の臨時バイトでもらったものを、酔った勢いで食べ、それが残っているのだ。
……それはいい。
壁にかけてある時計は、すでに朝9時を指している。
目覚めたばかりで、いまだ少し酔いの残る頭は、しかし、すでに覚醒している。
……怠惰だがそれも、まぁ、いい。
問題は、だ。
「………………」
「………………」
俺は愛想笑いを浮かべながら、問題の中心人物を見つめる。
部屋の中心に設置してある、こたつの向こう側に座っている少女。
端々に白いファーがついた、正気を疑うほど真っ赤な服。
それと同色の三角形を崩したような帽子。
この際、格好の是非は問わない。
どんな服装をしようが、それは各個人の自由と言うものだ。
俺は自由を尊重する。
問題なのは服装ではなく、もっと根本的なこと。
「………君は、誰――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カーテンの隙間から差し込んだ光で目を覚ました俺は、時計より先にソレを捉えた。
見たこともない赤い少女が、朝、目を覚ましたら枕元に立っていたのだ。
まだアルコールの抜けていない俺は、直ぐには反応できず、寝ぼけ眼で彼女を見て、とりあえず席を勧めた。
「(あー、寒い寒い、……つーか、軽く頭痛ぇ。こんな姿、誰にも見せられん)」
そして、二度寝しようと体を布団にもぐらせた時、完全に目が覚めた。
「(………え、ちょ、……ちょっと、待ってくれ……。え、ええぇ!?)」
混乱するより前に、血の気が引いた。
………………。
それは昨日のこと。
ケーキ屋でのバイトのあと、(男の)友人同士で行った寂しいクリスマス会。
俺は飲みに飲み、荒れに荒れた。
だからだろう。
アルコールにそれほど抵抗力のない体はそれについていけず、意識は直ぐに飛び、記憶は断片的。
そんな部分的記憶喪失状態の俺の家に、見知らぬ女の子が居たのだ。
俺の貧困な想像力は、絶望的状況を想定した。

……むりやり連れ込んで、『乱暴』してしまったんじゃないか、と。

一度、そう考えてしまったら、もう、そうとしか思えない。
顔面蒼白の俺は、ベッドから飛び降り、彼女の前に跪いた。
そして、その勢いのまま、頭をカーペットにこすり付ける。
「………すいませんでしたぁ!!」
まだ、酔いが残っていたせいもあるのかもしれない。
それでも、俺が考えた唯一の道は、土下座。
ソレしかないと思った。
俺がしたであろうことが、土下座だけで許されるわけがない。
許されるわけはないが、それでも、心底から謝るしか、俺には思いつけなかったのだ。
………………。
朝日が薄く差し込む、仄明るい部屋。
土下座のまま動かない俺と、座ったままの少女。
静寂が場を支配し、時計の針の音だけが、それに逆らっていた。
女は音もなく立ち上がると、玄関の方角へと足を向ける。

39:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:44:24 kOmgZ3sy
………………。
朝日が薄く差し込む、仄明るい部屋。
土下座のまま動かない俺と、座ったままの少女。
静寂が場を支配し、時計の針の音だけが、それに逆らっていた。
………。
…………。
……………。
………………………。
長い沈黙。
暗い未来を自動的に想像する頭を、ほんの少しだけ浮かせ、俺は少女の様子を伺う。
少女は音もなく立ち上がると、玄関の方角へと足を向ける。
「(あぁ、警察にでも駆け込むのか……)」
そんなことを考えながら、俺は体を起こし、少女の行く末を見守る。
このまま行かせていいのか。
彼女を外に出せば、その時点で、俺の人生は終わりを告げるのだぞ。
順風満帆、ではなかったが、それなりの生活を送っていた。
恋人こそいなかったが、友人も少なからずいたし、両親だって健在だ。
知らず知らずのうちに、涙がこみ上げてくる。
友人たちは俺を軽蔑するだろうなぁ。
両親は間違いなく、ろくに表も歩けない人生を送ることになるだろう。
「(……そうだ。彼女をこの部屋から出さなければ)」
そんな思い付きが頭をよぎる。
だが。
「(そんなことしたら、少女の人生はどうなる……! 最低の人間に落ちぶれるつもりか……! 自分!)」
だから俺は、観念した。
さようなら、皆。
こんにちは、最低の人生。最悪の未来予想図。
どうしようもない絶望感が、俺の頭を苛む。
俺はカーペットに突っ伏し、そのまま、それに耐える。
たぶん、そう広くない部屋の中。
彼女はそろそろ玄関に着くに違いない。
そして、俺は聞くだろう。
彼女が出て行く、その音を。
しかし―。

コトン。

―頭を抱えたままの俺が聞いたのは、そんな小さな音。
まるで、こたつの上にコップを置いたような、音。
俺は、恐る恐る、上体を起こし、脇のこたつに視線をやる。
そこには―。
「………落ち着いて」
―水道水をまんま入れたような、透明の液体の入ったコップ。
そして、その向う、こたつの反対側に再び座っている、少女の姿だった。
………………。
さっき、聞こえた蚊のなくような声は、少女が発したのだろうか?
「(いや、俺が喋っていない以上、彼女の声なんだろう)」
そう断定することにする。
「………水を、どうぞ」
蚊の鳴くようなその声は、再び、俺の鼓膜に届いた。
「……はい」
………………。
確かに俺は落ち着いたほうがいい。
目の前に置かれたコップを手に取ると、ゆっくりとその中身を飲み下す。
中身は本当に水道水だったようで、普通に不味かった。
しかし、冬場の冷たい水道水は、頭を冷やすのに一役も、二役も買ってくれた。
俺は、今一度、現状を確認するために、部屋を見回す。
こたつの上には食べかけのケーキ。
昨日の臨時バイトでもらったものを、酔った勢いで食べ、それが残っているのだろう。
壁にかけてある時計は、すでに朝9時を指している。

40:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:45:15 kOmgZ3sy
「………………」
「………………」
俺は愛想笑いを浮かべながら、彼女を見つめる。
部屋の中心に設置してある、こたつの向こう側に座っている少女。
端々に白いファーがついた、正気を疑うほど真っ赤な服。
それと同色の三角形を崩したような帽子。
どんな服装をしようが、それは各個人の自由と言うものだ。
この場合、問題なのは服装ではなく、もっと根本的なこと。
「………君は、誰?」
「………………………」
………………。
答えはない。
うん。それはいいだろう。
よくないけれど、いいことにする。
問題なのは。
若干、震える声で俺は彼女に次の質問、核心に至るであろう質問を投げかける。
「……俺、もしかして、君に、………何か、し、しちゃったのか、な……?」
どうだ、どうなんだ……!
俺は真剣に彼女の瞳を見つめる。
すると―。

コクリ。

―彼女は、小さく頷くじゃないか……!!
やっぱ、やっちまってたかぁ……!!!
俺はなんということをしでかしてしまったんだぁ!!
「(あぁ、もう、駄目だぁ! 灰色の人生は確定され、かくして、俺には絶望しか残されていない……!!)」
あぁ、友人たち、両親たち。
そして何より、目の前にいる少女よ。
本当にゴメンナサイ。
生まれてきて申し訳ない。
生きてきてスミマセン。
「(ハ、ハハ。もう、死のうか……)」
そんなことを考え出し、体を傾かせる俺に届く、少女の声。

「………アナタは、……出しました」

かぁあああああ!!
やっぱり、出しちまってたのかぁ!!
出すといえば、この際、アレしかない。
それでも、俺は、勇気を振り絞って、言った。涙声で言った。
「だ、だだだ、出すというと、やっぱり、あの、し、……白い、アレ? ですか?」
そりゃそうだろう。
この場合出すといえば、白濁色のアレしかない。

彼女は大きく頷いた。

……見間違えようもないほど、ハッキリと頷いたのだ。
俺は、半泣きで頭を下げた。
「……本当に大変な粗相を……!!」

「……可愛かったですよ、とっても」

………………?
………………!!
えぇぇぇぇぇええええええぇぇええええええええぇえ!!
乱暴してしまった少女にそう思われるほど、粗末なものだったのか、My、SUN!!
先程とは違う衝撃を桁外れに受ける。
なんてこった……!!
まさか、可愛いと評されるとは……!!

41:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:46:00 kOmgZ3sy
………。
いや、いやいやいやいや。
問題はそんなところにはない。
確かに、ショックではあったが、……大変、ショックではあったが……!
俺は彼女に、とんでもないことをしでかしてしまっているのだ。
そのほうが、重大な問題だ。
「その、昨日の事に関しては、一生をかけて償い―」

「………可愛かったです。―イラストつきで」

……。
………。
………………………。
………………………は?

イラスト?

「………もう、十年も前の話、です」

………。
なにを、いってるんだろう。このこは。
ぼく、わかんない。
………。
じゃない! じゃない!!
え、えぇ!?
何、何々。何!!
現状を、現状を把握しなければ!!
「俺は出したんですよね……!?」

「………出しました。―十年前、白い“ハガキ”を」

「………………………ハガキ?」
「………サンタ・クロース宛に」
彼女の口から出てきたのは、昨日、嫌というほど見た白ひげの、赤服の、老人の名。
今更気づくが、彼女の格好はまさに。
俺はもう一度、彼女に問う。
「……君は、誰なんだ……?」

「………私の名前は、サンタ・クロース」

「ハ? ハハハ? え、えっと、なんの冗談……?」
混乱の極みにある俺の脳裏が聞いたのは、可憐な少女の、断定的な声。

「………あなたの、十年前の願い事―」

俺は、僕は一体、何を願ったというのか。

「―叶えに来ました」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

俺がサンタの正体に気づいたのは、小学校三年生のときだった。
何故気づいたのか、その時どう思ったのか、なんてことはグダグダ言うつもりはない。
ただ言える事は、俺は毎年出していたサンタへの手紙をその年限りでやめた、ということだ。
『その年限り』。
つまりは、その年には出したということ。
俺はその時、今まで騙してくれていた親を困らせようとしたのかもしれない。
あるいは、単なるイタズラ心だったのかもしれない。
俺がハガキに書いたのは、純粋な願いではなかった。そのことだけは確かだ。
なぜなら、俺がその手紙に書いたのは、親では絶対に用意できない代物だったからだ。

42:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:46:47 kOmgZ3sy
『           サンタさんへ

      ボクは、今は欲しい物はありません。
 でも、大きくなったら、キレイなおよめさんがほしいです。

          ゼッタイ、かなえてね!          』

そんな内容の手紙を、母親に渡した。
それを見た母親はどんな顔をしたのだろうか?
思い出せない。
結局、その年のクリスマス明けの朝。
枕元においてあったのは、その当時大流行した、なんらかの玩具(なんだったかは覚えていない)と、一通の手紙だった。
『○○○くんへ

 およめさんは君が大きくなったら、ちゃんと出会うだろうね。
 だから、それまではリッパな大人になるために
 いっしょうけんめい、べんきょうして、いっぱいあそぼう。
 そうすれば、ステキな人がきっと君の目の前にあらわれるはずだよ。
 がんばってね。             サンタ・クロースより 』
………………。
親としては苦肉の策だったのだろう。
子供心に俺は、親を傷つけてしまったのではないかと、いたたまれない気持ちになった。
俺は、まだサンタを信じている子供を演じ、母親に手紙を見せた。
母親は、手紙に驚いたフリをしていた。
俺は、心の中で、残酷なまねをしたことを謝った。

こうして俺は、一つ、大人への階段を上った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

………………。
でも、よく思い出せ、自分よ。
あのときのあの手紙は、母が書いたには、あまりにも可愛らしい字ではなかったか
(ちなみに、間違いなく父が書いたのではない。そんな器用なまねのできる人間ではない)?
あのとき、驚いているフリをしているだけだと思っていた母親は、本当に“フリ”だったのだろうか?

「………あの」

鈴が鳴るような可憐な声。
耳を澄まさないと聞こえないような、小さな音。
その音が、俺の思考を、過去から現在へと至らせる。
声の主の彼女は、心なしか顔を紅潮させ、俯いたまま言う。
「………あまり、見つめられると……」
「ん、あぁ。ゴメンナサイ」
昔を思い出しながら、彼女の顔をガン見していたようだ。
どうやら、その視線が恥ずかしかったらしい。
……かわいいじゃないか。
っていうか。こういう大人しめ系の娘って―。
………………。
イカンイカン。
今一度、冷静にならなければ。
俺は立ち上がると、コップを手に取り、台所へ向かう。
そして、汚いシンクを見ないようにしながら、蛇口からコップに水を注ぐ。
いい感じに水が溜まると、水を止め、一息に、それを飲み干した。
………………。
よし、冷静になった。
俺は、水切りの中から洗ってあるコップを取り出すと、冷蔵庫を開けた。
ほとんど空っぽの冷蔵庫の中には、賞味期限がそろそろ危ない牛乳が入っていた。
それを、二つのコップに注ぎ、牛乳を使い切ると、彼女の待つこたつにそれを運んだ。
ぼうっと中空を見つめている彼女の目の前に、牛乳の入ったコップを置く。

43:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:47:23 kOmgZ3sy
その音で我に返ったのか、彼女は俺を見上げる。
俺はその視線に気づかないフリをしながら、彼女と対面する席にコップを置き、座った。
……うん。
仕切りなおそう。
「粗茶ですらありませんが、どうぞ」
「………あの、あ、ありがとう……」
何故か赤面しながら礼を言う、自称サンタクロース。
俺は殊更に真面目な顔を造り、頷く。
そして、嬉しそうにコクコクと牛乳を飲む少女に、俺は言った。
「じゃあ、詳しい話を聞かせてくれるかい?」

彼女は、静かに、たどたどしく、舌足らずに語った。
自分は『サンタクロース』であり、十年前の願いを叶えに来たのだ、と。
そもそもサンタとはアンドロイド(?)のようなものであり、世界中に分散して存在する。
人々のサンタを、そしてクリスマスの奇跡を信じる心が、原動力。
十年前の俺が信じていた純粋なココロが、今、奇跡となって此処に顕在したのだ。

「……そう、なんだ」
俺は彼女の時間がかかった割には、数行で済むような説明を聞き終わり、一つの結論に至った。
よし。
やるべきことは決まった。

「(………警察へ、行こう………!)」

どうやら、警察へ駆け込まなければならなかったのは俺のほうだったらしい。
電波系ストーカー。
とりあえず、住居不法侵入でしょっぴいてもらおう。
うん。それがいい。
それが現実的、かつ実際的。
でも。

「(……っていうわけには、いかねぇよなぁ〜……)」

何しろ、俺が十年前に出した、母親にしか見せていない手紙の内容を知っているのだ。
それに、サンタからの返事を諳んじて見せてもくれた。
俺のほうが記憶が定かではないが、それでも、大体合っていた、と思う。
ただの電波ではありえない。
………………。
だが、どうしろというのだ。
俺は無信心の、ただの馬鹿な大学生だ。
それがいきなり、目の前にメルヘンそのものを、デン、と置かれて戸惑わないわけがない。
っていうか、本当、どうしよう。
ため息が出てしまう。
「……ふぅ〜」
それとシンクロするように―

グキュ〜。

―聞こえてきたのは腹の音。
なんとも形容しがたいほど可愛らしいそれは、俺のものじゃない。
俺の視線は生暖かくなり、少女を見つめる。
少女は真っ赤になりながら、俯き、言う。
「………私じゃない」
「いや、君だろ」
「………違う」
「嘘をつくな。別に気にしないから」
「………私じゃ……」
「目を見て、語り合おうぜ」
「………う、うぅ。わ、私です……」
あぁ、本格的にどうするか、の前に、やるべきことは決まった。

44:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:48:12 kOmgZ3sy
………決まってしまった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『うまかっちゃん』
ハウス食品が1979年から九州地方限定で発売しているインスタントラーメン。
基本的にはとんこつ味だが、ごまとんこつ、黒豚とんこつなど風味の異なるシリーズが展開されている。
九州ではかなりポピュラーなインスタントラーメンであり、コンビニやスーパーに行けば、必ずといっていいほどに置いてある。
ばら売りはもちろん、お得な五個パックもある。

俺と彼女の目の前には、それが調理された姿で、器に盛られている。
味は勿論、基本のとんこつだ。
濃厚な香りが、部屋いっぱいに広がっている。
………ん?
『朝からとんこつラーメンかよ』だって?
………喝!!
貧乏学生には、これが精一杯の持て成しなのだ。
よって、『朝からくどいだろ』とか、『いきなり固有名称出されたってわかんねぇよ』などという苦情は一切、受け付けない。
……受け付けないったら、受け付けない!
俺と彼女は、目を合わせ、同時に頷く。
やるべきことは決まっている。
俺たちは手を合わせ、言った。

「「いただきます」」

そして、後は麺を啜り、スープを飲み下すまでだ。
少し固めの麺がほどよい歯ごたえを与え、喉越しが爽やか。
飲み込むときに、鼻をとんこつの香りが刺激するのがたまらない。
思いのほか空腹だった俺は、熱い麺を息で冷ましながら、一気に啜る。
彼女は猫舌なのか、息を吹きかける回数が心なしか多い。
それでも、俺たちは一体となって、ただただ食う。
食い続ける。
……。
………。
………………………。
そして、俺は、スープを最後の一滴まで飲み終えた。
ふ〜。
なかなかの満足感。
最近は貧乏すぎて、インスタント食品でさえ手軽には味わえなくなっているからな。
水を少し飲み、口の中をスッキリさせる。
あぁ、自分でも解る。
息がとんこつ臭い。
でも、そんなのは彼女も同様だろう。気にすることはない。
俺は空の器をそのままに、ベッドに寄りかかる。
テーブルの向うでは、未だに一生懸命、少女がとんこつラーメンと闘っている。
ちゅるるるるる。
彼女が麺を啜る音が、気持ちよく響く。
俺はそれを拝聴しながら、天井を見つめる。
「(さて、どうしよう。この状況)」
ともにラーメンを啜った、自称サンタクロース。
どうやらマジものらしい。
俺の願い『キレイなお嫁さん』になるためにやってきたという彼女。
家にいきなり現れたにもかかわらず、俺は何故か彼女に悪感情を抱けないでいた。
なにしろ、牛乳と、うまかっちゃんでのダブル接待だ。
貧乏学生であるところの俺にできる、今、最上級の持て成しだ。
「(俺は、一体何をしているんだろうな)」
だが、相手はメルヘンだ。
生半可なことでは通用しないだろう。
だから、俺は今できる、最大限の事やるしかない。
時計は、現在、11時を指している。

45:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:49:05 kOmgZ3sy
……うん。
決めた。やるしかない。
見ると、彼女は今、ようやくラーメンを食べ終わったところらしい。
俺と彼女は目を合わせると、姿勢を正し両手を合わせ、言う。

「「ごちそうさまでした」」

再び、俺たちは頷きあう。
「テレビでも見てて」と彼女に進言し、テレビの電源をつけた。
座布団から立ち上がると、空になった二つのどんぶりを台所のシンクに放り込む。
放って置きっぱなしだったケーキの食べ残しをラップに包み、冷蔵庫にしまい込む。
そして、そのまま台所で歯を磨き、顔を洗う。
シンクの中の器は、まだ洗わなくてもいい量だ。
そんなことを考えながら、顔を拭き、箪笥から外出着を取り出した。
「くれぐれもこっちを見ないように」
彼女に忠告すると、そのまま着替える。
なにしろワンルームのボロアパートだ。彼女から隠れて着替える場所などない。
手早く着替え終わった俺はおもむろにコートを羽織る。
携帯の充電を確認。まだまだ、大丈夫だ。
「(準備は万端だ……!)」
さぁ、出かけよう。
俺は、颯爽と玄関から足を踏み出した。
正確には足を踏み出そうとした。
しかし、それは阻まれた。
いつのまにか立ち上がっていた彼女が、俺のコートの端を掴んで離さないのだ。
無言で俺はそれを振り払おうとする。
抵抗する少女。
無音のまま、俺と彼女は互いに全力を出し合う。
………………。
とうとう根負けしたのか、少女が(しかし、手はコートを掴んだまま)言った。
「………どこへ……?」
俺は出来得る限りの真剣な表情を作り、宣言した。

「バイトだよ……!」

「………バ、バイト……?」
「あぁ、そうだ。バイトだ……!!」
そう。
昼から、昨日働いたケーキ屋での売り子のバイトが、今日も入っているのだ。
昨日思い知ったのだが、ケーキ屋での仕事は非常にハードなのだ。
今から気合を入れていかなければならない。
「………わ、私はどうすれば……?」
不安そうな表情の少女。
そりゃそうだろう。
初めての場所に一人取り残されるのだ。
不安なわけがない。
それじゃなくても、自分の身の置き場に困っているだろうし。
だが、それでも―!

「俺は、俺はバイトに行かなくちゃならないんだよぉお!!!」

なにしろ貧乏学生である。
日々の生活に困窮し、日々の成績にも困窮する。
そんなごくありふれた三流大学生なのだ。
目の前にサンタが現れようが、サタンが現れようが、そんなの関係ない。
なにより重要なのは、日々の糧。あるいは留年しない程度の成績。
それだけが命綱なのだ。
相手がメルヘンなら、こっちは現実だ。
それも、抜き差しならないほどに、冷たい現実だ。
俺の魂の叫びに目を丸くした彼女はそれでも、頷いた。

46:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:49:56 kOmgZ3sy
「………本気……?」
「……ああ、俺は行かなくちゃならない」
行って、戦場となるケーキ屋で稼がなければならない。
昨日友人たちと羽目をはずし、バカ騒ぎした分を取り返さなければ。
「………判った……」
彼女は、俺のコートから手を放した。
「判ってくれたか。ありがとう」

「………私も、がんば、る……」

「あぁ、君もがんば……れ、って、え……?」
………………。
いまなんつった、こいつ。
頭の処理が追いつかない。
呆然としたままの俺を置いて彼女はテレビを消すと、俺の手をとった。
小さな手は、子供のように暖かかった。
その暖かさ、柔らかい感触で、俺は我に帰る。
「………さぁ」
「……え、え? あの、君は一体何を……?」

「………私も、行く。バイト」
えぇ?!
「………ところで、“バイト”ってどういう意味?」
えぇぇぇぇぇぇえええええ!?

とりあえず、バイトが軽作業による仕事であることは理解してくれたのだが。
行く行かせないの押し問答を解決してくれたのは、結局、時間だった。
ギリギリの時間になっても、彼女は頑として俺の言うことを聞いてくれないのだ。
本当に時間が危なくなったので、しょうがなく、仕事場まで連れて行くことにする。
だが、こんな素性の知れない娘を連れて行って、雇い主になんと言われるか……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あぁら、いいじゃなぁい。とぉっても、カ・ワ・イ・イわ。ウフフ」
雇い主から返ってきたのは、そんな返事。
そのまま、雇い主は続けた。
「っていうかぁ、この子いたら、アナタいらないんじゃなぁい? フフ」
そういって、笑いかけてくる。
今、俺たちがいるのは通称『バック』と呼ばれる店舗裏。
寒空の下、俺と少女は小刻みに震えながら雇い主と話をしている。
自称サンタクロースの少女は雇い主に好評で、曰く、『今日は売り子が何人いても足りないぐらい忙しい』のだそうだ。
なので、バイトをしたいという少女の願いは簡単に聞き入れられた。
吹き荒ぶ寒風など物ともせず、雇い主は平然と俺に言う。
「早速入ってちょうだい。お客様がお待ちよ。仕事着に着替えて」
「……はい」
若干釈然としないが、雇い主の意向なのだ。
従わないわけにはいかない。
店に入ろうとした雇い主は、そこでようやく気づいたように、少女に顔を寄せる。
その動作に怯え、少女は俺の後ろに隠れると、コートの背中を、ぎゅっ、と掴む。
そんな少女の行動には一切構わず、雇い主は少女に向かって口を開いた。
「アナタァ、なんて、お名前なのかしらぁん?」
少女は寒さからなのか、雇い主に怯えているのか、震える声で言う。
「………わ、私は、サンタ―」
っておぉおおい!!
「っこ、こいつの名前は、サンタ、……じゃなくて、く、くろす、黒須聖子です!!」
俺は少女の声に無理やり重ねるように声を張った。
雇い主は、少し不審そうに眉を寄せる。
「アナタに言ったんじゃないんだけれどぉ?」
マズイ。誤魔化さなければ……!
「いや、あの、その。こ、こいつ人見知りなんで。それに俺が一応紹介者だし……」

47:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:50:39 kOmgZ3sy
く、苦しい……! 苦しいぞ、俺!
「ん、んん〜? あら、そう。ふぅーん」
当然のように、納得しかねるような顔の雇い主。
「……にしても、何か彼女言いかけてなかったぁ?」
「き、気のせいでしょう」
まだ怪訝そうな雇い主に、俺は話題のすり替えを試みる。
「あの、ていうか、いいんですか? こんなところで話し込んでいて」
雇い主は、ハッ、と顔色を変える(ニヤリ、計算通り)。
「そうね。そうだったわね。じゃ、アナタはサッサと着替えて、……聖子ちゃんはぁ〜―」
雇い主は、俺の後ろの少女の真っ赤な服をまじまじと見つめる。
「―そうね。そのままのほうがカワイイから、その服装のまま、売り場に立って頂戴」
そして、そのまま俺たちに背を向けると、雇い主(♂)は、その巨大な体を窮屈そうに折り曲げながら店に入っていった。
俺もそれに続こうと、足を踏み出すが、コートを引っ張る少女にまた阻まれた。
「……おいおい、俺たちも早く行かないと―」
「―聖子じゃない」
見ると、少女は思いっきり頬を膨らませ、そっぽを向いていた。
「………私は、サンタ・クロース。黒須聖子じゃない……!」
そんなことに腹を立てていたのか。
雇い主を誤魔化すために適当に言ったのだが、どうやら、少女のお気に召さなかったらしい。
それでも一応、説得を試みる。
「サンタクロースだなんて正直に言ったら、正気を疑われるぞ」
「……でも、『サンタ・クロース』は誇り……!」
『誇り』ときたか。しかし。
「あの人に正気を疑われれば、バイト、できなくなるぞ」
「………あ……」
ようやくそのことに気づいた少女は、それでも、腹を立てていることを訴える様に、頬を膨らませたままだ。
多少、気まずい空気が流れる。
「(っていうか、こんなことしている間にも、客は来ているんだよな)」
他にもバイトはいるだろうが、それでも忙しいに違いない。
それに、少女のプライドを傷つけてしまったことにも、俺は若干、引け目を感じた。
なので。
「解った。悪かった。君の誇りを傷つけたことは謝るよ」
「………許さない……」
『許さない』ときたか。
どうやら俺が思っていた以上に、厄介なことになってしまっているらしい。
こりゃ、相当、機嫌を損ねている。
「じゃ、どうすれば機嫌を直してくれるのかな。サンタ・クロースちゃんは?」
あぁ、っていうか、なんでこんなことを。っていうか、こんな事している時間が惜しい。
しかし、早く仕事に行きたい半面、少女に詫びを入れたい気持ちも本当だ。
少女は、ようやく俺を見ると、何故か真っ赤な顔を、しかし、足元に向けた。
そして、俯いたまま、軽く震えながら、言う。
「………ちゅ……」
「ちゅ?」
「………ちゅう、して……」
はいはい。なんだ。そんなことでいいのか。
OK、OK。じゃあ、さっさとすませて―。
……。
………。
………………………。
―って、えぇええええええええぇぇええぇええぇえぇええ!?
ちゅ、ちゅちゅちゅ、ちゅう〜!?
な、なんじゃそりゃぁあ!!
『Oh!! ヤマトナデシコのぉ、ツツシミはぁ、イマイズコォ』
頭の中のマイケルが、ボブに語りかけました。
ボブは答えます。
『HAHA! いまでワァ、そこらヘンでもぉ、チュッチュ、してますよォ』
マイケルは納得がいきません。
『それデモォ、このジョウキョウで、なんで、イキナリ、チュウやねん、ってハナシやで、ホンマ』
ボブは白い歯を光らせます。
『オンナゴコロは、エイエンニ、おとこにはリカイできないモノさァ、HAHAHA!』

48:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:51:15 kOmgZ3sy
『Oh! ソレモそうやね。HAHAHAHAHA』
『HAHAHAHAHAHA!』
こうして、マイケルとボブは去ってゆきましたとさ。
………………………。
「(ッハ! 俺は今、何を考えていた!?)」
俺は空白だった頭を、ようやく再起動させる。
っていうか、目の前の彼女は。
「…………………」
目を閉じ、俺からのアプローチを待っているではないか。
ど、どどど、どうしよう。どうしよう………!!
『スエゼンくわぬは、オトコのハズィ!!』
何か、頭の中で欧米人が喋りかけてくる。
「(邪念よ、………去れ!!)」
これでようやく、ココロの平静は保たれた。
……ハズもなく。
心臓はバクバクなり、頭まで血が逆流するのを感じる。
彼女に詫びを入れる、早く仕事に入る。
そのためには、彼女の唇を………!!
俺は、震える手を彼女の肩に乗せる。
見た目どおり華奢な肩の感触は、今以上に、心臓に悪い。
「(えぇい!! こうなりゃ自棄だ!!)」
俺は目を閉じ、ゆっくりと、唇を彼女に近づける。
そして、とうとう。

むぎゅ。

ん。
なんというか、唇って柔らかいって聞いていたけれど、意外とそうでもない。
どちらかというと、フワフワって言うより、ゴワゴワしてる。
俺は、恐る恐る目を開ける。
赤。
目の前を、赤い何かが塞いでいる。
……ていうか。
俺は思い切って、頭を離してみる。
すると、状況がよくわかった。
俺の唇が当たったのは、どうやら、彼女のかぶっていた帽子に当たったようだ。
というよりも、彼女は自分のかぶっていた帽子で、俺から唇をガードしたのだ。
「………やっぱ、駄目……」
帽子を再びかぶった彼女は、真っ赤な顔を逸らしながら言った。
「は、はぁ」
俺は、マヌケに頷き、ため息のような返事をした。
未遂に終わったとはいえ、キスをしかけた俺の頭はいまだ冷静になれていない。
どうして、彼女が自分から言い出したことを止めたのか。
解らない。
から、聞こうとしたのだが。

「ちょっとぉ! 早く売り場に入って頂戴!!」

出入り口から顔を覗かせた雇い主の怒声に、一気に現実に戻され、聞く機会を失った。

そして、俺たちは、ケーキ屋で売り子を始めた。
最初、雇い主は見た目のいい彼女に接客を担当させようとしたのだが―。

「あのこのクリスマスケーキをください」
「………………………」
「あの、ちょっと?」
「………………………」
「もしもし、ねぇ、聞いてるの!?」

俯き、真っ赤になった彼女が、視線をうろつかせる。

49:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:51:56 kOmgZ3sy
ようやく、彼女の窮状に気づいた俺は、割り込むように客と彼女の間に入っていった。
「申し訳ございませんでした、お客様」
「だからね。このクリスマス―」

―致命的に向いていないことが判明。
といって入ってもらった会計係も、同様の理由で(結局のところ接客技能が必要なので)駄目だった。
次に与えられたのは、路地でのビラ配り。
しかし。
一時間後、ただ突っ立っているだけの少女を目撃した雇い主は、すぐさま彼女を降板させた。
結局、彼女は服を着替え、厨房に回り、出来上がった予約用のケーキを箱に入れるという単純作業に始終、従事することとなった。
彼女のサンタクロースの衣装も、雇い主の思惑通りには発揮されなかったのだ。
俺はその間、売り場で接客を担当していた。
忍耐と集中が必要とされる作業の中。
それでも、彼女のことが気になり、暇を作っては厨房を覗いた。
少女は、単純作業には向いていたのか、集中し、俺の視線に気づくことはなかった。
……すぐにでも音を上げると思っていたのに。
彼女は文句一つ言わずに、やるべきことをしていた。
俺はその姿を見るたび、気合を入れなおし、売り場に戻った。
こうして、俺たちは閉店9時までこき使われた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あのあと、雪崩れ込むように家に帰り着いた俺たちは、ただただ空腹を満たすために
レトルトカレーを食べつくした。
『ぜんぜんクリスマスらしくない』とか『ロマンのかけらもない』なんていう文句は、圧倒的疲労の前では力を失うしかなかった。
そして、今、蛍光灯が照らす、生活感溢れたワンルーム。
目の前には空になった大皿が二つ。

「「ごちそうさまでした」」

そう言うと、俺たちはなんとはなしに見つめ合う。
すると、直ぐに彼女は俯き、目を逸らす。
「(俺って、嫌われてんのかなぁ……)」
疲れた頭でそんなことを考える。
……キスも拒絶されたし。
そんなことを思っていると、彼女は、何処からかシャンメリーを取り出した。
……っていうか、そんなもの、いつのまに。
と、呆気にとられていると、彼女はそれを開けようと、力を入れる。
……だが。
三分経過しても開かない。しょうがないので。
「貸してみ」
「………う〜……」
自分で開けることが出来なかったのが不服なのか、唸りながらも、彼女は僕にボトルを手渡した。

ポン。

あれほど頑なだった蓋は、俺の力では簡単に開いた。
「(……どんだけ非力なんだよ……)」
そう思いつつ炭酸が吹き零れそうになり、慌てて、俺は中身を自分のコップと、彼女のコップに注ぐ。
二つのコップの中では、薄い琥珀色の液体に、炭酸の泡がごく小さく浮かぶ。
俺は数年ぶりのシャンメリーに内心少し感動し、二人して恐る恐るコップに口をつける。
独特の甘みと、風味。
………?
っていうか、これ。
「アルコール入ってないか?」
シャンメリーではなく、これではただのシャンパンではないか。
彼女のほうを見てみる。
すでに彼女のコップは空っぽで、彼女の視線はどこか中空をさまよっている。
ほんのり赤く染まった頬。とろんとした目。
「おいおい。大丈夫か?」

50:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:52:40 kOmgZ3sy
メルヘンの住人は酒には弱いのだろうか?
そんなことを考え、心配していると、彼女は立ち上がり、ててて、と俺の隣までやってきた。
そして、そのまま座ると、俺の肩に頭を乗せてきた。
それだけに留まらず、全身を寄りかからせてきたではないか。
「………えへへ……」
えへへ、じゃないよ!
イキナリの大胆行為に、俺の心臓は高鳴る。
どうにか彼女の行為から気を逸らそうと、明後日のほうを向きながら口を開く。
「あの、シャンメリー、じゃなかった。シャンパン、どうしたんだ?」
少し、彼女の体温が遠ざかる。
「………てんちょうに、ヒック。……もらった」
「そ、そうか。……いつの間に……」
いいのか、雇い主。
明らかに未成年の少女にシャンパンを渡すなんて。
犯罪じゃないのか?
「(まぁ、もう、飲んでしまった以上、言っても始まらないか……)」
そんなことを考えながら、それでも明後日の方向を向いたままの顔は、火照ったまま。
すると、そんな俺に業を煮やしたのか、少女は俺の頭をがしりと掴むと、無理やり、自分の方向に顔を向けさせた。
「な、なにを」
「………ちゅう、しよ?」
………………。
またかい。
どうせまた、帽子でガードするに違いない。
そうして、男心を弄ぶのだ。
でも。
「……わかった」
俺を見つめる彼女の眼差しは、壊れそうなほど純真で、真摯だった。
「(………あぁ、っていうか。本当に可愛い娘だな、コイツ)」
だったら、彼女だったら弄ばれても、いい。
俺は景気づけにコップの中のシャンパンを一気にあおると、目を瞑る彼女に顔を近づける。
心臓は限界まで高鳴り、手が震える。
俺は、今度こそ失敗しないように、それでも目を瞑り、唇を彼女に寄せた。

ちゅ。

今度は、ゴワゴワしなかった。
驚くほど柔らかい唇は生々しく熱く、そして、シャンパンのせいか、ほんのり甘かった。
俺は恐々と目を開けると、ゆっくりと顔を離した。
自分で自覚できるほど顔が赤い。というよりも、熱い。それを誤魔化すように俺は言った。
「今度は、帽子を使わなかったな」
彼女は少し微笑み、答える。
「………詫び入れでも、ご機嫌取りでもない。本物のちゅうだから」
………………。
あぁ、そうかい。
その『本物のちゅう』のおかげで、今晩は眠れそうにない。
八つ当たり気味に言う。
「君のせいだぞ。今晩、眠れなかったら」
「………? 何の話?」
あまりにも無垢な少女の顔。その唇。
心臓の高鳴りが限界までに達した俺は、これ以上彼女の顔を見れない。
「あ〜、もう、いい!」
大声で心音を打ち消し、強引に立ち上がると、俺は天井を見上げ、宣言した。
「寝る!!」
ビンの中のシャンパンを一気に飲み下し、皿とコップを持つと、台所にそれを置きに行く。
彼女の分も片付けると、俺は勢い良くベッドにダイブした。
未だに心臓がうるさいが、しかし、構うものか。
俺は窓のほうを向くと、わざとらしく寝息を立て始めた。
………………………。
しばらくすると、彼女が電気を消した。
そして、彼女は、もぞもぞと、一人用のベッドに潜り込んでくる。

51:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:53:30 kOmgZ3sy
……あぁ、そうだ、失念していた。
寝るとなると、当然、彼女もベッドを使うことになるだろう、ということを。
それでも、俺は眠ったフリをし続けた。
直ぐ隣に、熱いぐらいの体温を感じる。
「(あぁ、もう!! こんな状態で寝れるか!!)」
しかし、今更、起きるわけにもいかない、という、なんだか訳のわからない強情が、心に巣くう。
「(とりあえず、彼女が寝ているかどうかだけでも確認してみるか?)」
俺は、ゆっくりと体を動かすと、彼女のほうをチラ見する。
「………………」
「………………」
目が合ってしまった。
それでも俺は、
「ぐ〜、ぐ〜」
寝たふりをし続ける。
すると、彼女は、消え入るような声で言った。
「………ねぇ……」
「ぐ〜、ぐ〜」
「………しよ……」
「?」

「………婚前交渉……」

「ブゥッ!!」
思わず噴出してしまった。
っていうか、なんという爆弾発言だ。
俺の思考が止まる。
そして、奴等が……!
『Oh!! ヤマトナデシコのぉ、ツツシミはぁ、イマイズコォ!!』
頭の中のマイケルが、ボブに語りかけました。
ボブは答えます。
『HAHA! セイなるヨルだZE、コンヤはぁ!!』
マイケルは納得がいきません。
『それデモォ、このジョウキョウで、なんでイキナリやねんって、ハナシやでホンマ』
ボブは白い歯を光らせます。
『オンナゴコロは、エイエンニ、おとこにはリカイできないモノさァ、HAHAHA!』
『Oh! ソレモそうやね。HAHAHAHAHA!』
『HAHAHAHAHAHA!』
こうして、マイケルとボブは去ってゆきましたとさ。
「(あぁ〜もう、こいつ等はいいっつうの!!)」
俺は頭の中の、謎の欧米人たちを追い払う。
そして、目を開け、彼女を見つめてみる。
予想外に、近い少女の顔。
先程のキスを思い出し、さらに顔が赤くなる。
あたりには、シャンパンの甘い香りが漂い、外からは外灯が差し込み、薄暗い。
どうしよう。
俺はとりあえず、説得を試みることにする。
「今日はいっぱい働いたよな」
「………うん。働いた……」
「というわけで疲れているよな?」
「………大丈夫……」
「いや、ヘトヘトなハズだ。そうだろ?」
「………平気……」
ち。
朝から思っていたが、こいつ、言い出したら聞かない性格か。
方向性を変更してみることにする。
「なんでいきなり、っこ、婚前交渉、なんだ?」
「………キレイなお嫁さんになるため……」
何の関係が?
そう問いただす前に彼女は静かに言う。
「………契りを交わしたいの……」

52:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:54:33 kOmgZ3sy
「……契り?」
なんのこっちゃ。
「………約束のこと……」
「約束……」
サンタクロースはかくも律儀なものなのか?
十年前の、少年のイタズラなお願いにこうまで固執するとは。
体を張ってまで。
……正直、ちょっと怖いぞ。
そんな俺の内心など知りもしないで、彼女は言った。
「………それに、“今日だけ”だから……」
「? 何が」
「………今日は、クリスマス……」
だからなんだというのだろう。
今日だけ……?
何の話だ。
軽く混乱する俺の目を、彼女は真剣に見つめる。
「………お願いだから、あなたの十年前のお願い、叶えさせて……」
「………………」
あぁ、だめだ。
この目に弱い。
この真剣な眼差し。
混じりっ気のない純粋な眼。
今日会ったばかりだというのに、弱点を攻められている気分だ。
『スエゼンくわぬは、オトコのハズィ!!』
うるさい。解ってるよ。
「(ええい……! どうにでもなれだ……!!)」
俺は覚悟を決め、布団から出ると、彼女に向かって正座をし、頭を下げる。
「不束者ですが、よしなに」
彼女も姿勢を正し、俺に向き直る。
「………こちらこそ……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「………ユニーク……」
ズボンから露出させた俺のペニスを見た、彼女の一言。
……そう言われてもな。
「他の男の見たこととかないのか?」
「………現実に顕在化した実行体としては、昨日が最初……」
「は?」
「………『サンタ・クロース』というのは集合意識体。最初から実体のあるものではないの……」
「………………」
「………それが、人々のサンタを信じる、クリスマスの奇跡を信じる力が、願い事を実行する力になる……」
「………………」
「………私が、今、存在できるのは、その力のおかげ、なの……」
………………。
意味が解らない。
ので、この発言はスルーすることに。
……まぁ、男性器の形に驚かれたり、引かれたりするよりはマシか。
ちなみに、現在の体勢を説明すると、俺が胡坐をかき、彼女がその前に前のめりに座り込んでいる、という感じ
(ちなみに二人とも、服を着たまま)。
最初、俺はリードしようと、彼女の胸を触ろうとしたのだが、
「………まずは、私のターン……」
という意味不明の俺ターン宣言により、こういう状況になってしまった。
彼女はおずおずと、俺の性器に手を伸ばす。
「………平気? さわっても……?」
「あ、あぁ」
小さな掌が、俺の竿の部分を優しく包む。
柔らかく、そして暖かい感触が、なんともこそばゆい。
そんな俺の感覚など露知らず、彼女は感心するように言った。

53:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:55:16 kOmgZ3sy
「………暖かい……」
「そうかい」
「………それに、硬い……」
「だろうな」
彼女はその手を、軽く上下させる。
その刺激で、俺の性器は、俺の意思に関係なくビクリと震える。
「………痛い?」
「いや、大丈夫だ。……もう少し、強くしても平気だ」
彼女は真剣な顔して、軽く頷く。
どうやら、集中しているようだ。
片手は竿の部分をしごきながら、もう片方の手は性器の先端を弄る。
「………あ、ここは柔らかい……」
「うっ」
電気が走るような感覚に、思わず声が出てしまう。
彼女は、それに驚いたように、両手の運動を止める。
「………ご、ごめんなさい。……痛かった?」
俺は、彼女を安心させるために少し笑いながら、彼女の頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫。ただ、先のほうは敏感なだけだ。そのまま続けても平気だ」
「………うん……」
どうやら安心したらしい彼女が、再び、両手を使ってペニスを弄る。
その動きはやがて激しくなり、ペニスの先端から粘液が漏れ出す。
「………なんか、出てきた……」
「気持ちがいいと、出てくるものなんだ」
出てきたカウパー液で指で濡らすと、彼女は集中的に先端を責めてくる。
その感触に、俺の腰が思わず浮き上がる。
「くっ」
「………あ、もっと出てきた……」
何を思ったのか、彼女は手を動かしながら、ペニスに顔を近づける。
「………やらしい、匂いがする……」
「そりゃあ、悪うございましたね」
気持ちいい事をされているという事実を、誤魔化すように言ったのだが。
「………ううん、この匂い、すき……」
「………………」
そう返されれば、言葉も出ない。
絶句している俺の返事を待たずに、彼女は両手を俺の腰に回すと、ペニスの先端に吸い付いた。
「うくっ、君、な、何を」
余りの快感に声が上ずる。
彼女はそのまま、口を使って、ペニスに奉仕する。
「んんっ、じゅる、じゅるる。………うぶっ、んぶっ!」
「くっ……、ふぅ……」
思わず、吐息のような声が断続的に出てしまう。
少女はそれに気づくと、ペニスから口を離し、言う。
「………あ、いやらしい声、出た……」
「悪かったな」
「………かわいい……」
「うるさいよ」
「………えへへ、んぅ、ちゅ、………れろ、ぴちゃ………」
先端を丁寧に舐めまわし、舌を使い、尿道口から裏筋まで、嬲るようにくすぐる。
熱い舌、滑らかな唾液の感触が一段と、ペニスを刺激し、大きくさせる。
「………ちゅる……、ぴちゅ……っ」
「うぅう!」
彼女が敏感な部分を刺激するたびに、俺は声を上げ、先端からは、もう唾液と区別のつかない程のカウパーを分泌させる。
そのたび、彼女はその透明な液体を吸い上げ、さらに行為に没頭する。
柔らかく熱い、小さな口先が、いやらしく動き、液体を咀嚼していく。
「ちょ、ちょっとまて……!」
俺は彼女の頭を掴むと、強引に奉仕を中断させる。
不思議そうに俺の顔を見上げる彼女。
「………気持ちよく、なかった……?」
「気持ちいいとか、悪いとかじゃなくてだなぁ……」
今日初めての奉仕にしては、いやらしすぎだろう。

54:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:56:06 kOmgZ3sy
っていうか、もうちょっとは恥じらいとかを……。
「………? でも、気持ちいいんでしょ……?」
彼女には俺の戸惑いがわからないようだ。
「ああ、気持ちいいことは気持ちいいんだが、……もうちょっと、さぁ」
俺の意思が通じたのか、彼女は得心が言ったように頷く。
「………もっと、気持ちよくなりたいんだ……ね!」
「………………」
解っちゃいねぇ!! コイツ、全っ然、解ってねぇ!!
しかたなく、説明をしようとする俺を遮るように、彼女は口による行為を再開しだした。
「………ん、ちゅるるっ……れろ、れろっ」
あぁ、クソッ! 気持ちいいなぁ!
俺の意識とは裏腹に、次々に粘液を分泌するペニス。
彼女は舌をいっぱいに伸ばし、それを丁寧に舐めとっては、口の中へと嚥下していく。
「………ぴちゅ、ちゅ、……いっぱい、出てる、ね……」
「ああ! そりゃ、気持ちいいですからね!!」
逆ギレ気味に返す俺。
そんなことには構わず、唾液と先走りでベトつく肉棒を何度も何度も舐め上げて、少女は口をだらしなく汚す。
一瞬も舌を休ませることなく、つたない動きで、しかし、積極的に性器を責める。
「………んぅ、また、おっきくなったよ……?」
「くぅ……、そろそろ出そうだ。動きを……」
「………ちゅるぴ、ちゅぱちゅ、れろれろ……、出る? なに―」
「―だから、口を離せ―」
と、言い終わらないうちに、射精感は昂ぶり、そして―。
「―うっ、で、出るっ……!!」
「………!?」
―俺の制止を聞かなかった彼女の顔に、勢い良く白濁色の精液が降りかかる。
「うっ、うぅ……!」
しばらく、その奔流はとまらず、彼女の額、鼻先から頬までを汚しつくす。
彼女は呆然と、液体を流し続ける性器を眺めていた。
そして、なんともいえない気まずい空気が流れる中で、彼女は口を開く。
「………これ、なに……?」
「精液だよ、精液! だから、動きを止めろと言おうとしたのに……、っておい!」
俺の言葉などに耳を貸さず、彼女は、顔にかかった白濁の液体をペロリと舐めとる。
「………へんな、味……」
そりゃそうだろうよ。
俺はベッドの脇にあるティッシュを取ると、強引に彼女の顔の粘液をふき取る。
予想以上に溜まっていたらしいそれは、なかなかキレイには取れない。
それでも奮闘していると、彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「………正直、今は反省している……」
「いや、悪いのは俺だ。もう少し早く、君を止めていれば、汚い目にあわせずに済んだのに」
こんなベトベトした、匂いのきつい汚いもの。
それを顔中にかけるなんて、なんてことをしてしまったのだろう。
「………私は平気。……でも、怒ってる……?」
彼女は俺の顔色を伺ってくる。
「(なんか、お互いに機嫌を伺いあってるな)」
俺はなんだか可笑しくなって、少し吹き出しながら、彼女の両頬をつまんだ。
「怒ってないよ。っていうか、拭き取り辛いから、顔を上げろ」
「………うん」
数分後、何とか顔にかかった精液をふき取り終わった俺たち。
未だに少し怯えている少女を安心させようと、俺は笑顔で言った。
「気持ちよかったよ。ありがとう」
「………うん」
「……さて、こうやって、綺麗になったし―」
「………?」
訝しげな少女。俺は少し照れながら言う。
「―そろそろ、俺のターンだろ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

55:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:56:58 kOmgZ3sy
「………あ、あんまり、Hなのは、だめ……」
暗闇の中、ベッドの上に押し倒した格好の少女は、真っ赤になりながら言った。
つうか、さっき、あれほどいやらしいことをしたのは誰なんだよ。
そんな思いが去来するが、しかし、目の前には小刻みに震える少女。
どうやら本気で、怖がっているらしい。
なので安心させる意味も含めて、俺はなるべく優しく言った。
「……解った。善処する」
「………うん」
「じゃあ、脱がすぞ」
俺は真っ赤な衣装に手をかけると、ワンピースのようなサンタ服を肩口まで捲り上げた。
「………うぅ、は、はずか、しい……」
先程、散々俺のMySUNを弄んだのと、同一人物とは思えない発言。
彼女の初々しい言葉に若干照れを感じながら、俺は少女の体に視線を移す。
白い肌は、薄暗い室内の仄かな光を反射し、滑らかな肌を強調する。
俺は少女のブラジャーを少し手こずりながら外し、そのむき出しの中身を両手で触れる。
「………ふぁぁ、お、おっぱいに触ったぁ……」
「そりゃあ、触るよ」
「………“小さい”って、思った……?」
「いや、むしろ」
着やせするタイプなのか、外見以上にボリュームがある。
「………むしろ?」
「いや、正直、驚いた。柔らかいし、手にちょうど収まっていい感じだ」
俺は回すようにして、リズムよく双丘を揉む。
あまりにも柔らかいそれは、俺の手を吸い込むように捉えて離さない。
掌の中で硬くなり始めた小さな乳首を、指先でかるく摘む。
「………そ、そこ、ダメ。んんっ、ビリってする……」
初めての刺激に戸惑うように、少女は肩をくねらせる。
……ちょっと、おもしろい。
俺は彼女をからかうように、胸を揉むリズムを変えながら、乳首を転がす。
そのたびに彼女は身をよじり、吐息を漏らす。
「………だ、だから、いじっちゃ、んんっ……ダメ……!」
もちろん、そんな意見は聞く耳持たない。
そのまま、しばらく胸を愛撫し続けると、少女の肌が汗ばみ、さらに熱くなる。
そろそろいいかと、俺は次の段階に向かうために、手を少女の足の間に持っていく。
その感触で、少女は全身をビクつかせ、不安そうに俺を見る。
「(っていうか、おれも不安なんだが)」
彼女を気持ちよくすることなど出来るのだろうか?
しかし、俺が怖がっていてもしょうがない。
だから震える声で言うしかない。
「心配するな。出来るだけ優しくするから」
俺の小心を見抜くように彼女は顔を俯かせる。
「………不安……」
「大丈夫だって。……たぶん」
「………でも―んぷっ!」
そろそろ煩いので、唇を奪い黙らせる
(一応、断っておくが、スケコマシではない俺にとっては、この行為だって心臓破裂ものだ)。
そのまま動かずにいると、驚いたことに、少女のほうから舌先を差し入れてきた。
戸惑いながら俺は、それを歓迎し、手厚く舌を絡ませる。
「………ん、んちゅっ。………ぷはっ」
どうやら、息が苦しくなったらしい。
彼女は、しばらく肩で息をすると、俺のほうをじっと見つめる。
「つーか、息、止めてたのか」
可笑しくなり、俺は吹き出す。
そんな俺の唇に、彼女はさらにキスを重ねる。
……キスが好きなんだろうか。
などということを考えながら、俺は思い出したように、秘所に当てた手を動かす。

くちゅっ。

妙に高く水音が響く。

56:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:57:31 kOmgZ3sy
「君、感度いいんだなぁ。もう濡れて―痛たた」
よほど恥ずかしかったのか、彼女は渾身の力をこめて俺の首筋をつねる。
「悪かった、悪かった」
俺は謝りながら、キスをし、そのままの体勢を維持しながら、指先を動かす。
「(たしか、AVとかではこう動かしていたような……)」
そんな今では遠い記憶となりつつ映像を思い出しつつ、俺は震える指で愛撫し続ける。
「………んっ、んんぅっ、……や、ダメ……!」
キスを受け入れながらも、足をよじり俺の手から逃れようとする少女。
しかし、決定的には逃げずに、俺の愛撫を受け入れている。
そのことを確認しつつ、愛液を絡めた指を、敏感な部分ではなく、入り口付近をなぞる。
あまり激しくして、彼女を追い詰めすぎないよう配慮した動きだったのだが―
「………は、んあっ……あ、ふぁぁ。く、くすぐったい……」
―どうやら、成功したらしい。
少女は熱い吐息を漏らしながら、両手で俺の頭を挟み込む。
柔らかく熱い部分をなぞりながら、指は徐々に上にのぼり、より敏感なクリトリスへと辿り付く。
少女が頭を抑えているので定かではないのだが、どうやら少女の見た目どおりに幼いそれは、薄い皮に守られているようだった。
俺は丁寧に包皮をめくり、その中の、小さな蕾を愛撫した。
「………ダ、ダメ! そこ、感じっ、過ぎちゃ………う………!!」
シーツを掴んで喘ぐ少女の嬌態に、俺は昂ぶりを禁じえない。
あくまで、責め立てすぎないように、神経を払いつつ、指の動きを次第に早めていく。
少女の俺の頭を抑える力が弱くなったのをいい事に、俺は、少女の秘所を覗き見る。
すでに蜜口からあふれる愛液で、シーツはグショグショになっていた。
「(やっぱり、よほど感度がいいんだろうなぁ)」
なんてことを口に出さずに考えていると、少女が俺の手に、手を重ねてきた。
「………もう、十分だから。……だから」
「ああ、解った」
俺は、彼女のショーツに手をかけると、一気に脱がせた。
そして、大きく彼女の足を開かせる。
よっぽどその体勢が恥ずかしいのか、彼女は真っ赤な顔をあさっての方向へと向けた。
俺は、そんな彼女を微笑ましく思いながら(まあ、顔が赤いのはお互い様なのだが)、
すでに限界まで反り返っていたペニスを、秘所に押し込んでいく。
亀頭の先端が、熱く濡れた粘液に触れる。
膨張したペニスをゆっくりと沈めていくと、少女の入り口が形を変えていった。
初めて男を迎え入れるのだろうそこは、かなり痛々しく広げられていた。
「………はあっ、はぁ……。入って、来るの……分かる……」
若干苦しそうな様子の彼女。
このまま、腰を押し進めて行くのは躊躇われた。
苦肉の策として、入り口付近を擦るように動かす。
「この辺りだったら、まだ痛くないか?」
「………………ふぁ、あっ、……あん、し、知らない……」
少女は、そっぽを向いたまま、言う。
……どうやら少し気持ちがいいらしい。
侵入させすぎないように注意をしながら、ペニスの先端で粘膜を愛撫し続ける。
腰を前後させるたびに、押し殺した吐息が少女の口から漏れ出る。
………………。
やがて、しだいに部屋の中に音が響くほど、愛液が溢れてきた。
「(そろそろ、頃合か……)」
少女もそれを感じたのか、顔を正面に向け、俺を見つめる。
「本当に、いいんだな?」
俺の言葉に、少女は微笑を返す。
「………『キレイなお嫁さん』に、して、ください……」
そんなことを言いながらも、しかし、不安は隠せないのか、腰を抑える俺の手に、小さな手を重ねてきた。
その手は小刻みに震え、彼女の内心の怯えを俺に伝える。
「じゃあ、いくぞ」
「………一気に、お願い……」
「了解した」
狭い入り口付近から、さらにキツキツの内部にペニスを挿入させる。
熱い粘膜の壁が俺の性器を圧迫する。
しかし―。
「………んんっ……! ん、あああああぁぁッ……!!」


次ページ
最新レス表示
スレッドの検索
類似スレ一覧
話題のニュース
おまかせリスト
▼オプションを表示
暇つぶし2ch

3615日前に更新/500 KB
担当:undef