無口な女の子とやっち ..
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2:名無しさん@ピンキー
07/12/24 01:25:48 kF5KjtxK
>>1
お疲れ様……です……

3:名無しさん@ピンキー
07/12/24 01:40:17 8BLUmzFv
・・・3・・・ゲット
>>1・・・乙

4:前スレ604
07/12/24 01:42:04 mdL8k6lq
>>1

5:名無しさん@ピンキー
07/12/24 01:55:11 OS0gWg/F
>>1
がんばったね・・・・・・おつかれさま・・・・・・

6:名無しさん@ピンキー
07/12/24 03:45:20 tbE1nzn6



7:名無しさん@ピンキー
07/12/24 07:59:00 3jpeC9xO
>>1乙……
7……
スレ立て……ご苦労さま……
即死……回避……?

8:名無しさん@ピンキー
07/12/24 08:45:49 IBn4oqzw
…ん。お疲れ。
その……ご、ごほうび…とか…


なっ、何でもないっ………!

9:名無しさん@ピンキー
07/12/24 10:46:44 NbQSpePr
……。

ん。

10:名無しさん@ピンキー
07/12/24 12:03:33 jHPqtQfv
>>1乙だよ…………
なにか……したいこと……ある?

11:名無しさん@ピンキー
07/12/24 14:52:55 pu6ADgN3
えと、あの、その…………、これ……………………。



       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       |                    |
       |                    |
       /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
       /              /ヽ__//
     /     >>1  乙      /  /   /
     /              /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /

12:前スレ593
07/12/24 18:54:32 X55T4Wvf
なんとか一区切りついた・・・・・・
今から投下
次の項目に引っかかる人はスルーよろしく

・ご都合主義全開
・SS初心者による勢いで書いたヘタレSS

では、投下

13:「ソラカラノオクリモノ」1
07/12/24 18:57:19 X55T4Wvf
「はぁ………」
バスから一人降りた若い男は疲れたようにため息をついた。
今日は12月24日、クリスマス。
もう空は黒く夜になっており、星が輝いている。
バスは街の方向へ独特のエンジン音を響かせながら戻っていき、残されたのは一人の男と、
男と同じように寂しく立っているバス停の看板。
男は更にため息を付いた後、トボトボと街とは反対の暗い夜道を歩き始めた。
「何だってクリスマスの日にバイトやったんだろ、俺………ん?」
ブツブツ呟きながら点々と点いている街灯を頼りに、住んでいるアパートに向かっていると、
男は空からちらちらと降ってくる白い物に気が付いた。
「雪かよ・・・・・・ホワイトクリスマスってか。けっ、喜ぶのはカップルだけじゃねーか」
更に肩を落とした男は、バス停から約5分の道のりを足重く歩く。
思えば、安さに目が眩んで住み始めたアパートだったが、住んでからすぐに安かった理由を
思い知らされた。
バスは1時間に1本で乗り遅れれば講義に遅刻は確定。
近くにコンビニなど便利なものは何も無い。
アパートは2階建てで合計10部屋あるうち、自分も含め5部屋しか住んでない。
しかも基本的にお互い不干渉という感じで、引越しの挨拶をしてもそっけなく今は交流すらない。
「彼女でも居れば少しは違うんだろうけどなぁ………」
もやもや(妄想開始)もやもや
「お・か・え・り〜!」
自分の部屋を空ければミニスカサンタ服を着た可愛い女の子が抱きついてくる。
「もう、遅かったじゃない。待ってたんだよ〜?」
「ゴメンゴメン、バイトが長引いてさ」
「むぅ、まぁいいや。帰ってきてくれたんだし。それより早く早く!もう準備できてるよ!」
「わかったわかった」
彼女に急かされて部屋に入れば、そこには豪華な彼女の手料理がせまいテーブルを埋め尽くし、
まるで早く食べてくれと待ち構えているようだ。
「おぉ〜、すごいな」
「腕によりをかけて作ったから。ね、早く食べよう?」
トテトテとテーブルに向かう彼女の後ろ姿。ミニスカと白いニーソの間の絶対領域。
俺は我慢出来なくなって後ろから彼女を抱きしめて、びっくりする彼女が何か言う前に唇を塞ぐ。
「だ、ダメだよぉ………料理冷めちゃうよぉ………あん」
「ゴメン、もう止められない」
俺は真っ赤なサンタ服に手をかけて………
「あぁ、ダメェ………」
もやもや(妄想終了)もやもや
「………うへ、うへへへ」
ここが車すらあまり通らない人気が全く無い道なのが幸いだろう。
暗い夜道の中、一人怪しく笑いながら歩く男は誰がどう見ても立派な変質者だった。
そんな変質者に強い風が吹きつけ、
「うへへ………っくしょん!」
鼻水を垂らすほど大きなクシャミをして、変質者はやっと現実に戻ってきた。
「チクショー………見も心も寒いぜ」
妄想している間が長かったのか、いつの間にかアパートからさほど離れていない自動販売機の
前まで来ていた。男はポケットからサイフを取り出し、ホット缶コーヒーを買う。
「あ゛〜………生き返る」
男の吐く息が更に白くなって吐き出される。
「クリスマスの日に暖めてくれるのは缶コーヒーのみ………クッソー、やっぱ彼女が欲しいぜ」
缶コーヒーを見つめながら一人呟く男。
俗に言う負け組。危ない人。毒男。シングルベル。痛い人。
しかも完全に作ろうと努力しなかった自分のせいだから救えません。
「うっせー!!」
あら、聞こえてました?
「………なんだか誰かに馬鹿にされてたような幻聴が聞こえたぞ、クソ」
更にイライラし始める男。缶コーヒーの中身を一気に飲み干し
「クリスマスの馬鹿野郎〜!!」

14:「ソラカラノオクリモノ」2
07/12/24 18:58:28 X55T4Wvf
一人身のお約束な台詞と共に缶コーヒーを空に投げつけた。NO、ポイ捨て。
カ〜ン!
「………?」
空から空き缶がぶつかる音がした。おかしい、落ちて音が鳴るには早すぎるし、空から聞こえるなんて。
ここには上に何も無いし、あるのは空から落ちてくる雪のみ。時刻はもう19:00を過ぎて
鳥も飛んでいないはずだ、たぶん・・・・・・。
男が不思議に思い空を見上げると
「?!?!?!?!?!」
目の前に赤い何かが落ちてきた。もちろん、平凡な男には漫画の主人公のような
反射神経など皆無な訳で………
「ぐぇっ!」
潰されたヒキガエルのような情けない声をあげてあっけなくそれに押し潰された。
「いってぇー!な、なんなんだ??」
何かに潰され仰向けで道路に倒れた男は、胸の上に乗っているモノを見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おんにゃのこ?」
錯乱してるのか言葉がおかしい男は放っておいて・・・・・・
男の胸の上に居たのは、年は女子高生ぐらいの赤いサンタ服を着た女の子だった。
身長は男の身長より約頭1個分、大体150センチぐらいだろうか?小柄な感じだった。
お決まりの赤い三角帽子、セミロングぐらいの長さがあるサラサラな銀髪。気を失っているのか、
瞳の色はわからないが、目を閉じていても美人と言わざるを得ない日本人的な整った顔立ち。
柔らかそうな薄い桃色の唇は微かに動き、肌は男が見ても綺麗でスベスベしてそうだ。
服は男用のサンタ服を着せ、更にスカートも追加し、白い手袋に同じく白いブーツ。
素肌が露出してるのは顔の部分だけという、色気など全く無いという程の厚着。
しかし、身長の割には大きく胸の部分が膨らんでいる。
結論。女の子はとても魅力的な美人だった。
カ〜ン!
「あたっ!」
呆然とする男に空から落ちてきた缶コーヒーが直撃した。空き缶はゴミ箱へ捨てましょう。
コロコロと転がる缶コーヒーと女の子を交互に見つめ、男は・・・・・・
「・・・・・・もしかして、この女の子は俺の願いを缶コーヒーが叶えてくれたのか!」
と、トチ狂った事を言い出しやがった。
「・・・・・・んな訳ねーだろ」
右手で誰も居ない空間に突っ込む。・・・・・・虚しい
よく分らない状況だが、男はとりあえず女の子を起こそうと頬・・・・・・は止めて肩を掴んで
「おい、大丈夫か?起きてくれ」
ゆさゆさと揺さぶる。その際、胸が揺れるのに思わず男の目が釘付けになったのは内緒だ。
「まいったな・・・・・・・・どうしよ?」
女の子はなかなか目を覚まさない。辺りを見回しても自動販売機と道路、後は広がる林のみで、
休める場所はどこにもない。
「・・・・・・仕方ない、アパートまで運ぶしかないか」
このまま放って置く訳にもいかないし、男は仕方なく女の子をおんぶして背負った。
力仕事のバイトをしていたおかげか、女の子は意外と軽かった。
「違うぞ、これはこのままここで介抱するより、家が近くだからそこで介抱したほうがいいからだ。
決して連れ込んで変な事する訳じゃないぞ。背中に胸が当たって気持ちいいのもこうしないと
運べないからだ。決して下心は無いんだからな」
何故か口で必死に言い訳をブツブツ喋る男だったが、意外と大きい女の子の胸の感触で、
顔が知らないうちにニヤけていた・・・・・・そこはやはり童貞の男だった。

15:「ソラカラノオクリモノ」3
07/12/24 18:59:21 X55T4Wvf
〜〜〜アパート205号室〜〜〜
「ふぅ〜」
女の子をベットの上にゆっくり寝かせ、コートを壁にかけてあるハンガーにかけ、
インスタントコーヒーを飲みながら男は一息ついていた。
10畳の程度の部屋にキッチンとバストイレが付いた一人暮らしならば充分なスペース。
部屋の真ん中には小さなテーブルと隅にベッド、多少古いタイプのパソコンとTV、あとは本棚と
タンスだけで綺麗に整理されていた。どうやらこの男はあんまり物を置きたくないタイプのようだ。
「・・・・・・で、どうしよう?とりあえず部屋に連れてきちゃったけど、同意も得てない状態で部屋に
連れ込んだらまるで誘拐じゃないか」
まるでもなく誘拐なんですけどね。男はテーブルの上でしばらく頭を抱え込んだ後、女の子を見た。
「・・・・・・・・・」
女の子はまだ目を覚まさない。胸が僅かに上下している。
男はいつの間にか自分でも気が付かないうちに女の子の前に立っていた。
改めて見れば見るほど女の子は綺麗で可愛かった。胸に視線を移せば、これまた男好みな大きさ。
ゴクリ
知らずに男はつばを飲み込み、手が胸へと伸びる。
天使君(止めるんだ!寝ている女の子を襲うなんて事はしちゃダメだ!)
お、天使君登場。男の目の前に手の平ほどの小さな体全体を使って両手を広げて止めようとしている。
悪魔君(ちょっと胸揉むぐらいいいじゃねぇーか、幸い今は寝てるんだから気が付かねぇよ)
今度は悪魔君登場のご様子です。天使君と同じくらいの大きさで男の耳に甘い罠を囁いてます。
天使君(駄目だ!君は犯罪者になんかなりたくないだろう!)
悪魔君(うるせぇーな!バレなきゃ犯罪になんないんだよ!)
あ、両手で頭を抱えながら男が迷ってます。
天使君(君が!泣くまで!殴るのを!止めない!)
悪魔君(俺は人間(善人)を辞めるぞ!ジョ○ョー!)
天使君(オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!)
悪魔君(無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!)
天使君と悪魔君の壮絶な拳と拳で語る戦いが始まったようです。なにやら途中で不思議な効果音が
文字つきで現れたりとカオスな状況ですね。
あ、決着が付いたようです。天使君が変な効果音と共に吹っ飛ばされました。
悪魔君(へ、へへへ・・・・・・これで邪魔者は消えたぜ、今の内に揉め、揉んじまえ!)
男(そ、そうだよな?介抱してあげてるんだし、寝てる間にちょっと胸ぐらい揉んでもいいよな)
悪魔の囁きに負けた男は手を伸ばそうと顔を上げ、
「・・・・・・・・・?」
女の子が上半身を起こし、初めて見る銀色の瞳で男を見つめながら首をかしげていた。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・?」
男が呆然として見つめてると、女の子はもう一度首を傾げると、男がやっと動いた。
「うわぁぁぁああああ?!ちょ、ちょっと待て!お願いだから騒がないでくれ!別に何もしてないから!
いや、本当に!お願いだから騒がずに俺の話を聞いてくれ!!」
そのまま2歩程下がり男は土下座しながら一気に喋る。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
お互いに無言。おそるおそる男が顔を上げて女の子を見ると
「・・・・・・(コクリ」
わかっているのかよくわかっていないのか、どこかぼーっとしたまま頷いた。

16:「ソラカラノオクリモノ」4
07/12/24 19:02:42 X55T4Wvf
「えっと・・・・・・コーヒーでよかったら飲む?」
とりあえず、騒がれて犯罪者になる事を免れた男は、湯気がまだ残ってるコップを指差して女の子に
聞いてみた。
ふるふる
女の子は首を振って拒否する。サラサラと銀色の髪が揺れて、思わず触ってみたくなるほどに綺麗だ。
「じゃ、じゃあお茶は?」
ふるふる
これも拒否。
「う・・・・・・暖かい飲み物はそれぐらいしか・・・・・・あ、もしかして飲みたくない?」
ふるふる
どうやらこれも違うらしい。女の子は表情をあまり変えない上に、喋ってくれないのでなかなか
その意図が分りづらい。
「え?じゃあ・・・・・・冷たいの?」
コクリ
頷いた。暖房を入れてるものの、まだ寒いのに冷たいものが飲みたいなんて不思議な子だな、と男は
思いながらも冷蔵庫を空け、
「う、何もねぇじゃねぇか」
冷蔵庫の中にはキムコしか入っていなかった。
「・・・・・・そうだ、買い物しようと思ったんだけど、カップルばかりで買う気力無くしたんだっけか」
そうなると、水ぐらいしか無い訳なのだが、男はふと思い出したように上部分の冷凍庫を開けた。
「・・・・・・アイスでよけりゃ、食べるか?」
夏に買ってそのまま食わずに冷凍庫に放っておいたカップアイスを取り出して、聞いてみた。
まぁ、冷凍品だし、腐ってたりはしないはずだし腹を壊す事はないだろう。この季節に食べると
別の意味で壊しそうだが。
コクリ
頷いた。マジすか?しかもなんか心なしか目が輝いて嬉しそうに見えるんですが(汗
「じゃあ・・・・・・はい」
スプーンと一緒に女の子に渡すと、さっそく蓋を開けて食べ始めた。しかも幸せそうに。ヤバイ、
何故かこっちが寒くなってきた。男は自分の熱いコーヒーを飲み、
(でも、なんか可愛いな・・・・・・)
まるで子供のように一口食べる度に、幸せそうな顔をする女の子を見て男は思わず見とれる。
(銀髪に銀色の瞳、やっぱ外人?・・・・・・の割には顔立ちは日本人っぽいよなぁ。ハーフ?)
色々考えてみるが、やはり聞かなければそこは分らない。とりあえず男は自己紹介をしてみる事にした。
「とりあえず、自己紹介しとこうか。俺は伊東 耕太(いとう こうた)。君は?」
耕太が自己紹介すると、女の子はスプーンの動きを止め、しばらく何かを考えた後、
スプーンを口に咥えたままサンタ服のお腹に手を突っ込み、何やらごそごそと探し始めた。
「???」
喋って教えてくれれば、と耕太は思いながらも訳が分らず、とりあえず女の子の行動を見守る。
女の子はどうやら目的の物が見つかったらしく、女の子はサンタ服から引きずり出すようにして
白い大きな袋を出した。
「え?ちょ、ちょっと待って?どこにそんなもの隠してたの?!」
明らかにおかしい。白い袋は少ししか物が入ってないようだが、もっと詰めればまるで本物のサンタが
背負ってるぐらいの大きさになりそうなほど大きな袋だった。間違いなくそんなのを服の腹の中に
入れてたら妊婦ぐらいの腹の大きさになり、ここに運ぶ時に気が付くはずだ。
女の子は一旦手を止めて耕太を見たが、首を傾げると次に袋の中に右手を入れてごそごそ探し始めた。
「て、手品??」
前にTVで外人の手品師がすごい手品をしていたのを見たし、とりあえず耕太は手品だと思いこむ事にした。
やがて白い袋から女の子が右手を引き抜くと、その手にスケッチブックとペンが握られていた。
耕太はますます訳が分らなくなった。なぜ名前を聞くのにそんなものが出てくるのだ?
女の子は訳が分らない耕太を放っておいて、自分の作業を続ける。表紙をめくり、白い画用紙に
なにやら書き始める。

17:「ソラカラノオクリモノ」5
07/12/24 19:04:47 X55T4Wvf
カキカキ・・・・・・
すぐに書き終えた女の子は、画用紙に書いた二文字の漢字を耕太に見せた。
「・・・・・・小雪?」
コクン。
「えっと、君の名前?」
コクン。
どうやら女の子の名前は小雪と言うらしい。なんで名前をわざわざ書いた教えたのか疑問に思ったが、
耕太はすぐにある可能性に気が付いた。
「・・・・・・もしかして、喋れないの?」
コクン。
なるほど、だからさっきから頷いたり首を振ったりしか出来なかったのか。
小雪はスケッチブックを置いて、アイスをまた食べ始める。
とりあえず耕太は小雪が食べ終わるのを待つことにした。
やがて小雪はアイスを食べ終えると、律儀にきっちりと蓋を閉め、その上にスプーンを置いて
ペコリと耕太に頭を下げた。
(ごちそうさま、って事かな?)
「いや、こんなものしかなくて悪いね」
ふるふる。
(クソ、可愛いじゃねーか。・・・・・・にしても、どう説明したもんか?)
君は空から落ちてきて俺とぶつかり、気を失ってきたからとりあえず俺の部屋に運んだんだ。
これでは完全に耕太が痛い人だ。しかし、これしか説明しようが無い。
とりあえず、なんで暗い夜道のなか、一人でサンタ服を着ていたのか聞いてみるか?
新手の詐欺の可能性もあるかもしれないし、ある程度警戒しておくべきか・・・・・・?
と、耕太が色々と頭を悩ませていると、ふと服をくいくいと引っ張られた。
見ると小雪がいつの間にか耕太の隣まで四つん這いで移動して服を引っ張っている。
「な、なに?」
四つん這いなので小雪の胸が寄せられ、更に大きさを増した胸に思わず目が向いてしまう
耕太がどもりながら聞く。小雪の服装が露出の高いものだったらさぞ絶景だっただろう。
カキカキ・・・・・・
『こーたは私を助けてくれた上に、アイスまでご馳走してくれたいい人。ありがとう』
小雪は微笑む。
「・・・・・・どういたしまして」
(その殺人的な笑顔止めてくれ、理性が!)
カキカキ・・・・・・
『私、これからお仕事にいかなきゃいけないんです。それでもし、こーたがよければ私のお仕事を
手伝ってくれませんか?』
「お仕事?」
(な、何の仕事だ?まさかそうやって詐欺に?にしても、書く姿も可愛いじゃねーか・・・・・・

18:「ソラカラノオクリモノ」6
07/12/24 19:06:42 X55T4Wvf
カキカキ・・・・・・
『子供にプレゼントを渡すお仕事です。私、仕事するのが遅くて、このままだと時間内に配る事が
出来ないんです・・・・・・』
しょぼん、と肩を落とす小雪。
「で、でも、俺そんな仕事した事無いし・・・・・・」
(だーーー!!仕草がいちいち可愛い過ぎるぞコンチクショー!!)
カキカキ・・・・・・
『ダメ、ですか?』
スケッチブックを両手で持ち、恥ずかしそうに口元を隠しながら上目使いで耕太を見上げる小雪。
「うぅっ!」
(落ち着け、落ち着け俺!)
もはや耕太の心は小雪に関する警戒心はボロボロに崩されていく。
「ちょ、ちょっと考えさせてくれ・・・・・・」
とりあえず、自分のコップと小雪の食べていたアイスを片付けようして立ち上がろうとする耕太。
(と、とりあえず、もう一度よく考えよう。彼女は詐欺をするような人間じゃなさそうだし、
そこは信用するとしても、引き受けて失望させるぐらいなら最初から断った方が・・・・・・)
しかし、耕太の思考はそこで小雪の行動に中断された。
小雪はギュッと耕太の服を掴み、上目遣いのまま喋れない口で何かを伝えようと必死で動き、
銀色の不思議な瞳は不安げに揺れながらも耕太を見つめ、やがて小雪は顔を伏せた。
完全にトドメだった。耕太だって女友達と話した事はもちろんあるが、今のは今まで
経験した事のない感情が爆発している。
(これが萌えというやつですか?!先生!!)
「任せろ!俺が手伝ってやる!」
口が勝手に動いていた。もう耕太の心には小雪の警戒心は全くなく、可愛い小雪の為に
手伝ってあげようとしか考えられなかった。
耕太の言葉に小雪は最初に驚き、そして笑顔で抱きついた。
「HAHAHAHAHA!任せなさい!!」
男は単純なものである・・・・・・
「それで、具体的にどうすればいいんだ?」
耕太が小雪に仕事の内容を聞くと、小雪はまた例の白い袋に右手を突っ込んでごそごそし始めた。
こうして二人して立つと、小雪の頭が耕太の胸の部分にあたる。やはり大人っぽい顔立ちにしては
低めの身長で、ますます可愛い印象の方が強くなる。
そんな事を耕太が思っていると、白い袋からまた何かが取り出された。
「サンタ服・・・・・・」
一目でサンタ服と分る赤い衣装は、きっちりと折りたたまれたまま小雪の右手に握られていた。
しかも、白い手袋にブーツ、お決まりの赤い三角帽子、更には白いヒゲ付きで。
「・・・・・・突っ込んだら負けか?」
小雪は不思議そうに首を傾げるだけなので、耕太はもう気にしない事にした。
(まさか21歳にしてサンタのコスプレするとは思ってもいなかったぜ・・・・・・)
とりあえず、サンタ服を今着ている服の上から着込む。大き目のサイズなのでコートみたいな
感覚で着ると、不思議な事にジャストフィットだ。
カキカキ・・・・・・
『似合ってます』
「・・・・・・ありがとう」
乗りかかった船だ、耕太は少し投げやり気味で答えた。

19:「ソラカラノオクリモノ」7
07/12/24 19:07:54 X55T4Wvf
「ところで、どうやって配りまわるんだ?自慢じゃないが、車の免許は持ってるが貧乏な大学生の俺は
車なんて物を持ってないぞ?・・・・・・まさか、この格好のままバスに乗ったりして移動するんじゃないよな?」
ここは街外れだ。徒歩だと街まで時間は掛かるし、さすがにこの格好でバスには乗りたくない。
小雪は大丈夫、と安心させるように微笑んだ後、窓を開けてポケットからホイッスルみたいな物を
取り出し、勢い良く吹いた。
ピィーーーー・・・・・・
音は思ったよりも大きくなかったが、雪の振る夜空に響くように響き渡った。
相変わらず耕太は小雪が何をしようとしてるかが分らない。
(なんで笛を吹く??本当に小雪がしようとしている事がわからん)
何はともあれ小雪のお仕事の手伝いなので、耕太は意味が分らなくても手伝いが必要な部分が
来るまでは小雪に従うしかない。
笛を吹いて10秒ほどが経った頃だろうか?やがて耕太の耳に何かが聞こえてきた。
「・・・・・・鈴の音?」
シャンシャン・・・・・・
鈴の音はだんだんはっきりと聞こえてきた。不思議に思った耕太は小雪の隣まで来て彼女と同じ
方向を見て、
「し、鹿が飛んでるぅ?!」
信じられない事に耕太の目には2匹の鹿がこちらに向かって見えない地面を走るようにして
飛んでいた。鈴の音も鹿が近づくに連れて大きくなる。
カキカキ・・・・・・
『鹿じゃないですよ、トナカイのトナとカイです』
「いや、トナカイなんて見たことないし。・・・・・・てか、名前にネーミングセンスを感じないんだが」
やがて、しk・・・・・・じゃない、トナカイは窓のすぐ傍で空中のまま止まった。良く見ればトナカイの
後ろには木製のソリが有り、手綱と共に繋がれている。
「・・・・・・これじゃ、まんまサンタじゃねーか」
耕太は理解が追いつかず、ぼーぜんとしたまま誰とも無く呟く。
カキカキ・・・・・・
『はい、私はサンタクロースなので子供にプレゼントを配るのがお仕事です。こーたにはソリの
操縦と、私と一緒にプレゼントを配るお手伝いをしてくれませんか?』
「マジっすか・・・・・・」
未だにぼーぜんとする耕太を置いて、小雪は白い袋を持ってソリに乗り込むと、耕太の腕を
クイクイ引っ張る。
「・・・・・・えぇい!もう何でも来いや!」
どうやら理解する前に開き直ったご様子。意を決して耕太はソリに乗り込んだ。
(触れる上にマジで浮いてるよ・・・・・・。サンタって本当に居たのか。しかもこんな美少女が・・・・・・)
ソリは二人座ればもう座れない横幅で、後ろには荷物を載せる空きがある。ソリにはクリスマスらしい
装飾が施されている。よく絵で見かけるタイプの典型的なサンタのソリだ。
耕太は右側に、小雪は左側に座り、手綱を小雪から手渡される。
カキカキカキカキ・・・・・・
『操縦は簡単です。手綱で叩けば前に進みます。左右に曲がるにはその方向に手綱を引っ張って
下さい。上昇は足で1回だけソリをトナとカイが聞こえるように叩いてください。下降は2回です。
止まる時は手綱を自分の方へ引っ張って下さい。』
「・・・・・・OK、覚えた。で、どこに行けばいいんだ?」
小雪がソリの前方にある四角い物を指差す。
「って、カーナビかよ?!ソリにカーナビなんで無駄にハイテクじゃねーか!・・・・・・なんだ、
この右下にある50って数字は?」
ソリには違和感バリバリのカーナビは、目的地らしき場所を矢印で表示している。ところで、
電源はどうなっているんだろうか?
カキカキ・・・・・・
『最近の科学はすごい便利ですね。助かります。右下の数字はプレゼントを渡す子供の数です』
耕太は腕時計を見てみる。時刻は20:54。
「・・・・・・一応聞くが、何時までに配り終えなきゃいけないんだ?」
カキカキ・・・・・・
『今日の24時までです』
「あと3時間しか無いじゃねーか?!あぁもう!行くぞ!!」
耕太は手綱を振って空へと飛び出した。

20:「ソラカラノオクリモノ」8
07/12/24 19:09:05 X55T4Wvf
「おおおおおぉ!すげーー!!」
耕太は思わず歓声をあげる。
誰もが抱いてたであろう「空を飛ぶ」という行為を、ソリとはいえ体験しているのだから
それも仕方が無いだろう。
風を切り、どんどん加速していく。試しに履いたブーツで1回ソリを叩くと、トナとカイは
まるで坂道を駆け上がるかのように力強く、更に空へと近づいた。
シャンシャンシャンシャン・・・・・・
(まるで夢みたいだな!サンタ服着て、更にソリで空飛ぶなんてマジでサンタになった気分だぜ!
しかも、となりには美少女ま・・・・・・あれ?)
ふと、耕太が隣の小雪を見ると、
「・・・・・・(ブルブル」
まるで初めての面接で緊張してしまい、ガチガチに固まってしまったように座っている小雪の姿が。
いつの間にか右手で耕太の服の端っこを掴み、目をぎゅっと閉じて小さく震えていた。
(何だ、寒いのか?・・・・・・いや、この時期に嬉しそうにアイスを食う小雪が寒がる訳無いよなぁ?)
耕太はチラチラと小雪を見るが、小雪は目を閉じたままで全く気が付いていない。
(そういえば・・・・・・こんな寒空の中、風を受けてるのに全然寒くないな、俺?)
確かに寒い風を感じてるのに、体は全然寒くない。反対に暑過ぎでもなく、ちょうどいい感じだ。
(まぁ、それはいいや。とりあえず、寒い以外の理由で震えるのって何だ?)
ふと、景色を見回してみると、もう街のすぐ傍まで飛んでいた事に気が付いた。時計を見ると、
まだ2分しか経っていない。すごい速さだ。
足元にはクリスマスでいつもより一層光り輝く街のネオンがはっきりと見えてきた。
(速っ!もうこんなところまで着たのか。にしても、こんな高さから見る街の明かりって綺麗だな〜。
・・・・・・・・・・・・あ、もしかして)
「・・・・・・小雪、もしかして、高いの苦手?」
耕太が聞いてみると、小雪はビクッと大きく震え、やがて恥ずかしそうにコクリと頷いた。
どうやら図星だったようだ。
「・・・・・・ぷ、あははは!」
耕太は思わず笑い出してしまった。小雪はやっと目を開け、「そんなに笑わなくても」と
ちょっと拗ねながら非難めいた目で耕太を見上げた。
「ゴメンゴメン。馬鹿にした訳じゃないんだ。でも、怖かったらそんな服の端を摑むんじゃなくて
俺に体に摑まったんだっていいんだぞ?」
もちろん冗談だ。しかし、小雪は冗談をまともに受けとるほどの素直だった。
ピト・・・ギュ
(おおおおおおぉ?!)
小雪は耕太に寄り添って、横から両手で抱き締める様にして摑まった。自然と小雪の胸が
耕太の脇腹に押し付けられる。
(サンタってのは全員こんな積極的なのか?!こっちが恥ずかしくなってくるじゃないか・・・・・・
今更冗談だから離れてくれなんて言えないし・・・・・・それにしても、胸、柔らかいなぁ・・・・・・)
いろんな意味で意識が飛びそうな耕太。とにかく、意識が飛ばないように話しかけてみる。
「も、もう怖くないか?」
コクリ
しっかり摑むものが出来て安心したのか、震えは止まって目を開けて前を見ている。
(それにしても、高所恐怖症のサンタか。それで俺に手伝いをお願いしてきた訳ね。
目を開けられないからカーナビも見れない訳だ。でも、それなら低空で・・・・・・)
「・・・・・・あ。」
「・・・・・・?」

21:「ソラカラノオクリモノ」9
07/12/24 19:10:12 X55T4Wvf
突然、耕太が素っ頓狂な声を上げ、小雪が何事かと耕太を見上げた。
「い、いや、何でもない。何でもないぞ?」
明らかに何でもない態度でどもりながら答える耕太。
(ま、まさか小雪が低空で飛んでいた所、偶然にも俺の投げた缶コーヒーが当たって・・・・・・
いや、でもまさかそんな訳・・・・・・でも、そうすると空から落ちてきた理由が一致する訳で・・・・・・)
まさかと思いながらも耕太はおそるおそる聞いてみた。
「と、ところで、何で小雪はあんな所で気を失ってたんだ?」
小雪は少し考え、スケッチブックを耕太の膝の上に置いて書き始める。
カキカキカキカキ・・・・・・
『高いのが怖かったので、低く飛んでいたら突然何かが飛んできて、私の頭にぶつかって来たんです。
それでバランスを失ってソリから落ちちゃったんです。後はこーたのご存知の通りです。』
耕太の背中に暑くない筈なのにダラダラと冷や汗が出てくる。予想的中。
カキカキ・・・・・・
『ご迷惑をおかけしたのに、こうやってお手伝いもしてもらって、本当に感謝してます』
ぺこり、と小雪は頭を下げる。
(言えない・・・・・・その原因を作った張本人が俺だなんて)
「・・・・・・いや、気にしないでくれ。・・・・・・・・・気を失わせたのは俺のせいだし(ボソリ」
耕太の最後の呟きに小雪は聞き取れず、首を傾げた。耕太は慌てて話題を逸らす為、
カーナビを指差して早口にまくし立てた。
「ほ、ほら!1件目に着いたみたいだぜ!あれじゃないか?!」
カーナビの画面に表示された地図が、目的地と思われる場所で点滅している。そちらに目を向けると
そこには住宅街にある2階建てのごく普通の家が見えた。
「なぁ、どうやって入るんだ?」
耕太が聞くと、小雪は2回のベランダを指差した。
「・・・・・・まぁ、今時の家に煙突なんてないしな」
耕太は手綱を軽く引っ張りながら、トナとカイのスピードを落としてベランダの横で止めた。
「ほら」
耕太は先にベランダに降りて、小雪に手を差し伸べる。小雪は耕太の手を摑んでベランダに下りると、
微笑んで頭を下げた。
「ところでさ・・・・・・」
「・・・・・・?」
「俺たち、かなり目立ってないか?トナカイとソリが飛んでるのを見られたらかなりの大騒ぎになると
思うんだが・・・・・・」
耕太が疑問に思ったことを口にした。
カキカキ・・・・・・
『大丈夫です。そのサンタ服は特別で、サンタクロースを信じている小さな子供達にしか
見えないんです』
「と、言う事は、そのソリも同じ?」
コクリ
(まるでご都合主義みたいだな・・・・・・。まぁ、大騒ぎにならないだけマシか)
「じゃ、さっさとプレゼント渡すか。時間も無いし・・・・・・って、やっぱり鍵かかってるじゃん」
耕太がガラス窓を開けようとして手を伸ばしたが、やはり2階とはいえしっかりと戸締りを
していて、開かない。

22:「ソラカラノオクリモノ」10
07/12/24 19:11:07 X55T4Wvf
「どーするんだ?」
耕太が聞くと、小雪は窓の内側にある鍵に向けて手をかざした。すると、
カチャ
鍵がひとりでに動いて、小雪たちを受け入れるように窓が開いた。
「・・・・・・サンタって、すごいな」
耕太は呆れ半分、感心半分で言うと、小雪はちょっとだけ得意げに胸を張った。
窓からカーテンをくぐって中に入ると、そこはちょうど子供部屋らしく、ベッドには
小学校低学年ぐらいの男の子が寝ている。
足音を立てないようにして男の子の近くに寄ると、小雪はあの不可思議な白い袋に手を突っ込んで
またなにやらごそごそし始めた。3秒ほど時間をかけて、目的の物を取り出した。
「・・・・・・戦隊物のロボット?」
白い袋から出てきた物は、日曜日とかにやっている子供向けの番組に出てくる戦隊物のロボットが
白いテープで飾られて、白いメッセージカードが添えられていた。それには、
『メリークリスマス  サンタクロースより』
と、シンプルに2行で書かれていた。
小雪がそっと男の子の枕元に置こうとすると、
「・・・・・・サンタさん?」
男の子の目が開いて俺達を見つめた。
「げ?!」
マズイ、騒がれる!と、耕太は思わずパニックになりかけたが、小雪は冷静だった。
口に人指差しをあて、しー、と子供に合図し、ロボットを渡してあげた。
子供は嬉しそうにそれを受け取り、抱き締めた。小雪も嬉しそうに微笑んで子供の頭を軽く撫でる。
それを見た耕太は、思わず見とれてしまう。
(ヤベェ・・・・・・本当に惚れちまったかも)
自分が居て、隣には小雪が腕の中で小さな子供を抱いて・・・・・・さっきと同じように優しく微笑みながら
幸せに過ごす日々・・・・・・
耕太は出会って数時間しか経ってないはずなのに、小雪と過ごす日々を想像してしまった。
「サンタさん、ありが・・・とう・・・・・・すぅ」
やがて、男の子は小雪にお礼を言い終えると同時に、目を閉じて眠ってしまった。きっと小雪が
さっきのようにサンタの力(?)で寝かしたのだろう。
小雪は起こさないようにそっと男の子にふとんを掛けなおし、立ち上がって耕太に
「1件目、終了です」と教えるように微笑んだ。
また起こさないようにそっと部屋からベランダに出た二人はしっかりと窓を閉め、ソリに乗り込んだ。
「1件目終了、か・・・・・・」
耕太は次の目的を確かめる為にカーナビを見ると、右下の数字が1減って49になっていた。
「よし、この調子でどんどん行こうか!しっかり摑まってろよ!」
コクリ、と小雪は頷いて耕太に摑まり、ソリはまた空へと鈴の音を鳴らしながら飛び出した。
次の日、男の子はサンタは夫婦だったと親に言ったトカ、言わなかったトカ。
それはまた別のお話である。

23:「ソラカラノオクリモノ」11
07/12/24 19:12:25 X55T4Wvf
それからは早かった。
住宅地のおかげで移動は短時間で済み、マンションの所では宅配便を渡すようにポンポン拍子に
渡す事が出来たりと、かなりのハイスペースで渡す事が出来た。
途中、気づかれそうになり、ヒヤヒヤした場面もあったが。
それでも、小雪は子供にプレゼントを渡す時は必ず嬉しそうに笑って、最後に頭を撫でてあげる。
耕太はそれを見るたびに、一緒に手伝えてよかったと思えた。
やがて・・・・・・
「次で最後か・・・・・・」
カーナビに表示された数はついに1になっていた。耕太は腕時計を見てみると時刻は23:00。
「時間が無いと思ってたけど、意外と早く配り終えそうだな。やっぱり空を飛んでの移動だと
回り道とかないから早いぜ」
摑まっていた小雪はふるふると首を振り、
カキカキ・・・・・・
『こーたが手伝ってくれたおかげです。手伝ってくれなかったら間に合いませんでした。』
「ははは、まぁ次で最後だ。気を抜かずにがんばろう」
コクリ、と小雪は頷いて笑った。
最後の目的地へ着いた。
地図を見れば、自分のアパートとは街を挟んでちょうど反対側まで来ていた。
「・・・・・・豪華な家だな」
そこは高級住宅地らしく、他の家も同じように高そうな家ばかりだ。そんな中でも3階建て、
しかも庭も含めた敷地の広さが他の家より2倍はある家が最後の目的地だった。
すっ、と小雪がいつも通り家に入る場所を指差す。耕太はそれに従い、3階の窓へトナとカイを止めた。
小雪が鍵をあけ、二人とも中へと入る。
「・・・・・・すげーな」
耕太は思わず呟く。
部屋の大きさは耕太のアパートの1室ほどの大きさがあり、所々に大小様々なぬいぐるみが並び、
部屋の真ん中には一般家庭用より一際大きいクリスマスツリーが鎮座して、静かに電球が光を
放っている。更に奥へ目を向けると、これまた高価そうなベッドでぬいぐるみを抱きながら
眠る女の子を見つけた。
そっと近づき、小雪が白い袋をごそごそし始めたが、
「・・・・・・?」
「どうした?」
小雪が不思議そうに首をかしげる。どうかしたのかと耕太が聞くと、やがて小雪は白い袋から
何かを取り出した。
「ビン?香水か何かか?・・・・・・そういえば、ラッピングされてない上にカードも付いてないな?」
今までのプレゼントは小さくても必ずラッピングされ、メッセージカードがあったのだが、
今回はそれが無かった。小雪もこんな事は初めてらしく、困惑している。
「どーゆー事だ??・・・・・・ん?」
耕太はベッドにかけられた靴下から、何か紙みたいなのがはみ出してるのに気が付き、それを
取り出して見た。そこには
『いもうとか、おとうとがほしいです』
と、小さな子供らしい拙い字で書かれていた。小雪も紙を覗き込み、困り始めた。

24:「ソラカラノオクリモノ」12
07/12/24 19:13:28 X55T4Wvf
カキカキ・・・・・・
『おかしいですね。何で赤ちゃんが出ないで小瓶が出てきたんでしょう?』
「いやいや、ちょっと待て!出せるのかよ?!」
耕太は突っ込む。もちろん、小声で。
カキカキ・・・・・・
『出せますよ?純粋に望めば』
「いやいやいやいや、物なら別にそんなに問題にならないだろうけど、赤ちゃんはマズイだろ、
常識的に考えて・・・・・・」
朝、目が覚めたら見知らない赤ちゃんがいたら警察沙汰は勿論、家庭崩壊になりかねない。
小雪はよくわかっていないのか、?を浮かべている。
「と、とにかく、ちょっとその小瓶、見せてくれないか?」
小雪は頷いて渡した。耕太はじっくりと小瓶を見る。
色は怪しいほどにピンク色で、なんだか怪しさ臭がプンプンする。ふと、小瓶の下を見てみると、
ラベルが張ってあるのを見つけた。そこには、
『超!強力媚薬スーパーDX  無味無臭』
と、これまた怪しさ全開の文字が踊っていた。
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
思わずAAな顔になった耕太は、とりあえず続きに書かれた説明文を見る。
『これを飲んだ人間はどんな堅物でも発情します。以上』
「説明文、短っ!」
もはや突っ込みどころ満載の媚薬(?)だが、それ以外何も書かれていない。
カキカキ・・・・・・
『何かわかりました?』
小瓶を見ていた耕太の服をクイクイ引っ張って小雪がスケッチブックを掲げて見せた。
「あー・・・・・・んーと(汗」
(何だよ、これ・・・・・・怪しい上に本当に効くのか?それに女の子の願いに何の関係が・・・・・・あ)
「分ったぞ。コレを使って親に赤ちゃんを作らせるんだ」
カキカキ・・・・・・
『この小瓶を使うんですか?それでどうやって赤ちゃんを作るんですか?』
「いや・・・・・・そりゃ赤ちゃんを作る上で必要な行為を・・・・・・」
(何を言わせるんだ?!もしかして素で聞いてるのか?)
耕太、思わず赤面。さすが童貞、ウブである。
「と、とにかく!この子の両親を探そう。」
小雪は?を浮かべながらも、耕太の言葉に頷いた。その時、
「今、帰ったぞ」
下のほうから渋い男の声が聞こえた。
「ナイスタイミング!さっそく行くぞ」
二人はゆっくりと部屋を出て、1階へと階段を下りていった。

25:「ソラカラノオクリモノ」13
07/12/24 19:14:15 X55T4Wvf
二人はゆっくりと1階のダイニングルームへ入る。
大きさはさっきの子供部屋の倍、TVでしか見たことが無い大きな黒いソファーに父親らしき中年の
男が疲れたように身を沈ませて、これまた大きい液晶TVを見ている。
周りには高価そうな物が綺麗に整理されて置かれている。成金とかにある、ごちゃごちゃと
置いてある感じではなく、見た目にもすっきりさせる為に計算されたて置かれてる様に感じた。
まぁ、耕太のような貧乏学生でも、一目で金持ちの家だと分るぐらいに。
「遅かったわね、あなた」
おっと、奥さん登場。髪を短く切った女性が台所から出てきた。
(う〜〜ん、とても小学生の娘さんが居るとわ思えない美人な奥さんだな。俺の大学の先輩に居ても
おかしくないぞ・・・・・・)
と、どうでもいい感想を浮かべる。
「会議が長引いたんだ、仕方が無いだろう」
「いっつもそればっかりじゃない。今日はクリスマスだって麻奈がとても楽しみにしてあなたの事を
待っていたのよ?」
「仕方ないだろう。仕事しないと生活出来ないんだから」
「仕方ないって・・・・・・!あなたっていつもその言葉で誤魔化してばっかり!」
「疲れてるんだ・・・・・・それに何も食べてないからご飯にしてくれないか?」
「・・・・・・!わかったわよ!」
旦那は終止疲れたように喋り、奥さんはイラだって台所へと戻った。
(うわちゃ〜・・・・・・まるでドラマのように夫婦仲悪いな、こりゃ)
耕太は点を仰いだ。このままだと離婚しそうな雰囲気ですらある。
「・・・・・・」
「・・・・・・小雪?」
小雪が俺の腕を摑み、悲しそうな目で二人の夫婦を見ていた。
(そう、だよな。このまま離婚なんてしちゃったらあの子が悲しいだけだ。そうさせない為にも
この媚薬で夫婦仲を・・・・・・って、イマイチ怪しすぎて信用出来ないんだけど)
「大丈夫だよ、小雪。きっとうまくいく」
耕太はそっと小雪に囁く。小雪は更に耕太の腕に力を込め、静かに頷いた。
「はい、出来たわよ」
奥さんが料理を持ってきて台所から戻ってきた。
「よし。じゃあ行ってくる」
耕太は小雪の腕を優しく振り解き、ゆっくりと二人の座るテーブルへ近づいた。見えてないと
分っていてもやはり、緊張する。それに、音は消せないので慎重に・・・・・・
まるでステルス迷彩を着た某伝説の傭兵になった気分だ。
「なんだ、温め直しただけか」
「あなたが遅かったからでしょう」
「贅沢は言わないが、食べ残しの物を出さなくてもいいだろう?」
「何よそれ!麻奈がどんな気持ちであなたを待っていたと思うの?!あなたと一緒にご飯を
食べるんだって、遅くまで食べずに待ってたのよ?!」
「だから会議で仕方なかったんだ!」
ついに旦那も怒り始め、どんどん言い合いがヒートアップする。

26:「ソラカラノオクリモノ」14
07/12/24 19:16:42 X55T4Wvf
(ヤバイ・・・・・・でも、言い合ってる今のうちなら気づかれずに・・・・・・)
耕太は小瓶の蓋を開け、とりあえず目に付く料理や飲み物に媚薬を振りかけまくった。
(これでよし、と・・・・・・頼むから料理食ってくれよ)
任務を無事に終えた耕太はゆっくりとその場を離れて小雪の元へ戻っていく。小雪はいがみ合う
夫婦を今にも泣き出しそうな顔で見つめていた。耕太は小雪の元へたどり着くと、優しく抱き締め、
「大丈夫、大丈夫だから。泣かないで・・・・・・」
子供をあやす様に頭を撫でると、小雪は小さく頷いた。
(泣かせたくないな・・・・・・小雪はいつでも優しい笑顔で居てほしい)
耕太は心からそう思った。
やがて、二人は無言で席に座りなおした。夜中なのと、子供が寝ているのを思い出したのかもしれない。
旦那は黙って料理を口に運び、奥さんは手元の水を自棄酒を飲むように煽って飲んだ。
無言の中、食事の進む音と、コップがテーブルに置かれる音だけが響く中、耕太たちはじっとそれを
見守った。
3分ほど経った頃だろうか。夫婦に変化が訪れ始めた。
旦那はどこか落ち着かなさ気にチラチラと奥さんを見て、奥さんは顔を伏せてもじもじし始めた。
(効いて来たか・・・・・・?)
「・・・・・・な、なぁ」
「な!何?!」
やがて、痺れを切らしたのか、旦那が奥さんに声を掛けた。
「いや、その・・・・・・」
「・・・・・・何?」
お互い、目を見つめ合ったまま、沈黙。
「その・・・・・・さっきは言い過ぎた。すまん」
「わ、私も・・・・・・感情的になって言いすぎたわ、ごめんなさい・・・・・・」
再び沈黙。耕太たちは静かに見守る。
(いいぞ、そのまま仲直りしろ!)
「か、片付けるわね、食べ終わったみたいだし」
奥さんが料理を片付けようと席を立ち上がる。
(あー!逃げるな!)
耕太、完全におばちゃんモード。
「あ、たまには俺がやるよ」
旦那も立ち上がり、奥さんの手を摑んだ。そしてまたお互いを見つめる。
(いいぞ!そのまま行け!)
「・・・・・・な、何?」
「・・・・・・お前、しばらくまともに顔を見なかったうちに、皺増えてきたな」
「なっ?!なんて事言うのよ!」
(あちゃー、おっさん。そんな事言っちゃ台無しじゃないか・・・・・・)
「スマン・・・・・・俺の知らないところで苦労して疲れていたんだな」
「・・・・・・え?」
「会社で働いてる間、俺はお前が家出のんびりしているものだと思っていた・・・・・・でも、
それは違っていてお前はお前で苦労してたんだな」
旦那はそっと奥さんの目元を撫でる。
(お〜・・・・・・これは予想外。そう繋げるとわ・・・・・・やるじゃないか、おっさん)
「私の方こそ・・・・・・ごめんなさい。いつも会議とかって言って遅くなるあなたに、もしかしたら
浮気してるんじゃないかって疑っちゃって、不安だったの・・・・・・」
瞳を潤わせて、旦那さんが添えた手を握り返す。
(う〜わ〜!奥さん可愛すぎ!その嫉妬心の告白は反則だ!)
やがて、旦那の顔と奥さんの顔が近づき、キスをした。
(いよぉし!逝ったぁ!)
くちゅ・・・ちゅぱ・・・
舌と舌が絡み合い、夫婦の口元から漏れる水音はお子様には刺激の強い大人のキス。
思わず時間を忘れて見入る耕太だったが、ハッと気が付いたように隣に居る小雪を見た。夫婦の
成り行きに夢中になりすぎて、すっかり忘れていた。
白い肌の頬が心なしか赤くなったまま、どこかぽ〜っと意識が飛んでるように夫婦を見ている小雪。
「小雪、小雪」
肩を揺らして小声で呼びかけると、ビクッと驚いて耕太を見た。頬は未だに赤い。

27:「ソラカラノオクリモノ」15
07/12/24 19:18:44 X55T4Wvf
「もう大丈夫だろ。仲直りしたみたいだし」
コクリ、といけない物を見てしまったように、恥ずかしそうに頷く。さすがにもうこれ以上は
あちらからは見えないとは言え、見ていいものではない。
やがて、キスを終えた夫婦は恥ずかしそうに笑った。
耕太たちはゆっくりとダイニングルームから出て、3階へ移動した。
「あぁ・・・・・・駄目、ベッドに・・・・・・」
「スマン、もう我慢出来ない・・・・・・!」
「あぁん、あなたぁ・・・・・・」
なんて声が1階から聞こえて思わず後ろ髪が惹かれた耕太だが、小雪が居る手前、心の中で血涙を
流しながら耐えたのだった・・・・・・
シャンシャンシャン・・・・・・
暗い夜空から未だに降り続ける雪の中、鈴の音が響く。
カーナビは「みっしょんこんぷり〜と☆」の文字が表示され、プレゼントを配るお手伝いは終了した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
耕太と小雪はお互いに無言。さすがに最後に回った家の夫婦のキスは強烈過ぎた。
耕太としても、アレを見た後で小雪が横で抱きついてると気が気でない。こっちも抱き締めたくなる
衝動を必死で押さえながら自分のアパートへとソリを走らせる。
やがて、二人とも無言のまま、ソリは街の真ん中まで着た。
「・・・・・・綺麗だな」
「・・・・・・(コクリ」
街はまるでこの日を祝うように所々で電飾が輝き、深夜にも関わらず、人が溢れていた。
「これで、お手伝いも終わりか・・・・・・」
耕太は町を見下ろしながら、呟く。
(手伝えた事がうれしい半分、これからお別れで寂しさ半分、か・・・・・・)
偶然とは言え、小雪と出会い、夢のような信じられない出来事の連続。今までの耕太なら
「クリスマスなんてクソ食らえ」だったが、小雪と出会ってクリスマスもいいな、と思えた。
(出来れば、これからも小雪と一緒に・・・・・・)
耕太はそんな事を思いながらチラリと小雪を見る。小雪は安心したように穏やかな顔で耕太に
くっ付きながら、目を閉じていた。
やがて、二人を乗せたソリは街を離れ、耕太のアパートの傍に到着した。
時計を見てみれば時刻は23:55。
「おつかれ、間に合ってよかったな」
アパートの近く、耕太と小雪が出会った自動販売機の前で二人はソリから降りた。
雪は、もうそこそこ積もり始め、足の踝までの高さまで積もっていた。
カキカキ・・・・・・
『本当にありがとうございました。こーたのおかげで私の使命も無事終えることが出来ました』
「いや、俺のほうこそ貴重な体験をさせてもらえて楽しかったよ」
カキカキ・・・・・・
『お礼と言ってはなんですが、欲しいものを言ってください。特別にクリスマスプレゼントとして
好きなものを差し上げます』
「・・・・・・マジで?」
コクリ、と驚く耕太に頷く。
「欲しいもの・・・・・・」
真剣に考える耕太。そして、
「決めた」
耕太は小雪をじっと見つめ、言った。小雪も耕太の1メートル前で白い袋を持って準備している。
耕太はゆっくりと深呼吸して、自分が欲しいものを口にした。
「小雪が、欲しい」
「・・・・・・!」
「もちろん、小雪が迷惑じゃなければだけど。・・・・・・俺色々と考えてみたんだ。何が欲しいのかって、
そしたら真っ先に頭に浮かんできたのが、小雪の笑顔だったんだ。小雪と出逢って1日も
経ってないけど、今までの誰よりもすごく印象に残ってるんだ」
耕太はそこで一度区切り、小雪を見つめる。小雪は驚いたまま動かない。

28:「ソラカラノオクリモノ」16
07/12/24 19:23:15 X55T4Wvf
「俺、欲張りだからさ。小雪の笑顔が出てきたら止まらなくなっちゃって、街に出て一緒に
買い物したり、色んな所にデートしたり、食事したりしたいと思った。ずっと毎日小雪の笑顔を
見ていたい・・・・・・」
耕太の嘘偽りの無い言葉。
「だからもう一度だけ・・・・・・小雪が欲しい」
耕太の純粋な思いだった。
耕太は小雪の反応を見た。年甲斐もなく心臓はドキドキと早鐘を打ち鳴らす。
小雪の瞳から一筋の涙が流れた。
やがて、それは止まらなくなり、ぽろぽろと流れる。
「あぁ?!ゴメン!迷惑だった?」
耕太は慌てた。まさか泣くとは思ってもいなかった。
ふるふる、と小雪は泣きながらも首を振る。
「迷惑じゃない・・・・・・?じゃ、なんで泣いて・・・・・・?」
嫌な予感がした。今まで考えないようにしていた最後。
小雪は、泣きながらスケッチブックに文字を書く。でも、涙で視界が歪むのか、何度も涙を拭いながら
ゆっくりと書く。
『私は サンタクロース です。  私が私で 居られる のは24日 という今日だけ なんです。
24日を過 ぎたら  私は消えて  しまうんです』
今まで綺麗な文字で書かれていたスケッチブックが、涙で所々濡れ、文字も歪んでいる。
「嘘だろ・・・・・・?」
ふるふると、涙を流しながら俺の言葉を否定する。
小雪が、消える。
別れるのではなく、もう2度と会えなくなる。耕太は目の前が真っ暗になりそうだった。
「・・・・・・そんな」
耕太はそれだけしか言えなかった。消えると知らされてショックなのもあったが、これから
消えていく小雪に何と言えばいいのかが浮かんでこない。
それが悔しかった。
だから耕太は、叫んだ。
「嫌だ!俺は小雪と別れたくないんだ!一緒に居たいんだ!一緒に遊んだり、一緒にどこか出かけて
色んな景色を見たり、とにかく色んな事を小雪と一緒にしたいんだ!」
我侭と分っていても叫ばずにはいられなかった。
「・・・・・・だから!お願いだから消えないでくれ!頼む!」
日付が変わるまで、残り時間は5秒・・・・・・
ふわりと小雪が動き、耕太を優しく包むように抱き締めると、目を閉じてそっと唇へキスをした。
触れるだけのキス。耕太は驚いて目を見開く。何故なら小雪の肌に初めて触れた唇は、
まるで氷のように冷たかったからだ。それでも、そのキスは優しさを感じた。

29:「ソラカラノオクリモノ」17
07/12/24 19:24:16 X55T4Wvf
残り、3秒・・・・・・
キスをした途端、何故か耕太の頭の中で小雪といる場面と文字が次々と浮かび上がってくる。
嬉しそうにアイスを食べている小雪。
『美味しかった・・・・・・』
ソリで耕太に抱きついてる小雪。
『とても安心した・・・・・・』
プレゼントを耕太と一緒に配り回る小雪。
『仕事なのに、とても楽しかった・・・・・・』
最後の家で耕太が小雪を優しく抱き締めてくれた時。
『とても優しい人・・・・・・』
最後の仕事を終え、アパートに帰るときの小雪。
『そろそろお別れだと思うととても寂しい・・・・・・でも、せめてその時まではこーたと一緒に
居たいと思った・・・・・・』
耕太は頭に流れ込んだ映像から気が付くと、小雪を見る。
残り、1秒・・・・・・
小雪は、涙を流しながらも優しく微笑み、ゆっくり口が動いた。
ありがとう
喋れないはずなのに、耕太にはそう聞こえた気がした。
「こゆ・・・・・・!」
0。日付が変わり、魔法は解ける・・・・・・。
次の瞬間、耕太の目の前が全て白に変わり、崩れて音を立てた。
「こ・・・・・・ゆき?」
目の前に、誰も居なかった。
「なぁ、嘘だろ?どこに行ったんだよ・・・・・・?」
耕太は辺りを見回す。あるのはあの自動販売機だけだ。
ふと視線を下げると、そこには不自然に盛り上がった雪があった。まるで、そこにあった物が
崩れてしまったかのように・・・・・・
思わず耕太はソリが止まっていた場所に目を向けた。やはりそこにも不自然に雪が
盛り上がっている。
「・・・・・・ははは、冗談だろ?」
もう耕太には訳が分らない。思考がうまく働かない。
(・・・・・・夢。そうだこれは夢だ。俺の妄想が、きっと実際にあった様に勘違いしてたんだ。
・・・・・・そうだ、そうに違いない)
目の前の出来事に、耕太は信じる事が出来ず、そう思うことにした。いや、そうしないと
頭がおかしくなりそうだった。
しかし、耕太は気づいてしまった。目の前の雪から、埋もれるようにしてあのスケッチブックが
あるのを。
耕太は無意識に雪の中からスケッチブックを取り出し、開く。
そこには、小雪が書いた文字が確かに並んでいた。それは紛れもなく、小雪が存在していた証拠と、
数時間足らずの耕太と小雪の思い出。
涙が流れた。流れた涙は頬を伝い顎へ、そしてスケッチブックへと落ちる。
「小雪ーーーーーーーーーー!!」
耕太の叫びは、いつの間にか雪が止んだ夜空へと響き、そして消えていった・・・・・・

                            耕太編 完

30:「ソラカラノオクリモノ」
07/12/24 19:28:40 X55T4Wvf
以上です


とりあえず、色々とゴメンナサイ・・・・・・OTZ
勢いで書いていたものの、最後集中力切れそうでgdgdっぽくなった
しかもマジメに完結してないときた・・・・・・
ちょっと小説を読み直して勉強してくる

31:名無しさん@ピンキー
07/12/24 19:42:41 N9fsc13h
>>30
規制でPCから書き込め無いんで携帯からGJ!!
とりあえず続きがあるっぽいのでそれに期待。

32:名無しさん@ピンキー
07/12/24 23:57:21 SpA8Vfo6
>>30

無口なサンタ娘にGJ!
続きが気になるなあ…



ちなみに保管庫の作者名は「ふみお」さんでよろしいか?

33:名無しさん@ピンキー
07/12/25 07:31:10 Rgm3x69v
>>30
GJ!
久しぶりにエロパロ板で泣きました

34:名無しさん@ピンキー
07/12/25 08:17:35 A2F0rCbB
泣いた

35:名無しさん@ピンキー
07/12/25 08:30:34 dqB4jJIc
ああ・・・

ここで泣きそうになったの初めてだよ・・・。

執筆お疲れさまでした!

36:ふみお
07/12/25 08:58:34 q6hlQ1QP
>>32さん

私と>>30氏は別人です。
現在、SSの製作の進行状況は難航中。
でも、昼ごろには投下できそうです。


……というか>>30氏GJ!!
素で感動しました。

続編、期待しています!

37:ふみお
07/12/25 18:40:27 kOmgZ3sy
今から投下します。
ご都合主義な展開、駄文がお嫌いな方はスルーを推奨します。
それでは、開始します。

38:聖なる夜の小噺
07/12/25 18:41:27 kOmgZ3sy
今日の日付を思い出す。
12月25日。
いわゆる『クリスマス』だ。
人々が、赤や緑やプレゼントやケーキに心と体を躍らせる、そんな日だ。
……まぁ、最近は、どちらかというと『クリスマス・イヴ』のほうがもてはやされ、
メインである今日は、なんだか盛り下がった感は否めない。
俺は視線を中空から、前に引き戻す。
汚いこたつの上には、食べかけのケーキがある。
昨日の臨時バイトでもらったものを、酔った勢いで食べ、それが残っているのだ。
……それはいい。
壁にかけてある時計は、すでに朝9時を指している。
目覚めたばかりで、いまだ少し酔いの残る頭は、しかし、すでに覚醒している。
……怠惰だがそれも、まぁ、いい。
問題は、だ。
「………………」
「………………」
俺は愛想笑いを浮かべながら、問題の中心人物を見つめる。
部屋の中心に設置してある、こたつの向こう側に座っている少女。
端々に白いファーがついた、正気を疑うほど真っ赤な服。
それと同色の三角形を崩したような帽子。
この際、格好の是非は問わない。
どんな服装をしようが、それは各個人の自由と言うものだ。
俺は自由を尊重する。
問題なのは服装ではなく、もっと根本的なこと。
「………君は、誰――」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カーテンの隙間から差し込んだ光で目を覚ました俺は、時計より先にソレを捉えた。
見たこともない赤い少女が、朝、目を覚ましたら枕元に立っていたのだ。
まだアルコールの抜けていない俺は、直ぐには反応できず、寝ぼけ眼で彼女を見て、とりあえず席を勧めた。
「(あー、寒い寒い、……つーか、軽く頭痛ぇ。こんな姿、誰にも見せられん)」
そして、二度寝しようと体を布団にもぐらせた時、完全に目が覚めた。
「(………え、ちょ、……ちょっと、待ってくれ……。え、ええぇ!?)」
混乱するより前に、血の気が引いた。
………………。
それは昨日のこと。
ケーキ屋でのバイトのあと、(男の)友人同士で行った寂しいクリスマス会。
俺は飲みに飲み、荒れに荒れた。
だからだろう。
アルコールにそれほど抵抗力のない体はそれについていけず、意識は直ぐに飛び、記憶は断片的。
そんな部分的記憶喪失状態の俺の家に、見知らぬ女の子が居たのだ。
俺の貧困な想像力は、絶望的状況を想定した。

……むりやり連れ込んで、『乱暴』してしまったんじゃないか、と。

一度、そう考えてしまったら、もう、そうとしか思えない。
顔面蒼白の俺は、ベッドから飛び降り、彼女の前に跪いた。
そして、その勢いのまま、頭をカーペットにこすり付ける。
「………すいませんでしたぁ!!」
まだ、酔いが残っていたせいもあるのかもしれない。
それでも、俺が考えた唯一の道は、土下座。
ソレしかないと思った。
俺がしたであろうことが、土下座だけで許されるわけがない。
許されるわけはないが、それでも、心底から謝るしか、俺には思いつけなかったのだ。
………………。
朝日が薄く差し込む、仄明るい部屋。
土下座のまま動かない俺と、座ったままの少女。
静寂が場を支配し、時計の針の音だけが、それに逆らっていた。
女は音もなく立ち上がると、玄関の方角へと足を向ける。


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