無口な女の子とやっち ..
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139:ふみお
08/01/09 15:39:13 4Ls8jod9
勢いだけで書いた小ネタを投下します。

「髪を切ろう」

久しぶりに美容院に行ったのは、彼の気を引こうと思ったのか、どうか。
それは自分でも解らない。
けれど、何らかの明確なキッカケがあったわけではないことは確か。
髪が伸びるのが遅いワタシは三ヶ月ぶりの美容院で自分の番を待ち、
そして、いつも切ってもらっている美容師さんに対面した(ワタシは椅子に座っていたし、
美容師はその後ろに立っていたのだから“対面”という単語を使うのはおかしいけど)。

いつも切ってもらっているからといって、ワタシにとって美容師さんは、特別親しくもない他人。
極度の赤面症であるワタシは、鏡の中の美容師さんの顔をまともに見れない。
さらに、人と一対一で対話しなければならない局面というのが、酷く苦手で、頭の中が真っ白になってしまうのだ。
もちろん、美容師さんはそんなワタシの心境など知る由もなく、親しげに話しかけてきた。

「今日は、どうされますか?」
「………………」
どうしよう、ワタシは髪をどうしたいんだっけ?
「あの、お客さん?」
あ、そ、そうだ。
少しだけ、切りに来たんだ。……それを、伝えなければ。
「……あ、ああぁ、あの、その……」
うぅ、思いっきりどもってしまった……。
「はい?」
「……す……少し、………………短く」
勇気を振り絞っていった言葉は、たったそれだけ。美容師さんに伝わったかな……。
「あ、はい。判りました。短くすればいいんですね?」
よかった……。伝わってるみたいだ。
「は、はい」

寝不足だったのは確かだ。
昨日は仕事が忙しく、徹夜したも同然だった。
家に帰ってからも、その緊張感からうまく抜け出せず、熟睡できなかった。
つまり、完全に眠気が取れていなかった、ということ。
だから、ワタシはつい美容院で寝てしまった。
起こされたときには―もう遅かった。

「いかがですか?」
―っこ、これが、ワタシ……?
「ご希望通り、短めに揃えてみたんですけれど」
鏡の中のワタシ。
高校入学以来、背中まで伸ばしていた、私の長髪。
少しだけ、ほんの少しだけ自慢だった、ワタシの髪。
それが今や。
「……み、耳が。出てる……」
つまり、いわゆるショートカット。
「ええ。一応、切るときに何度もお伺いしましたが、そのたびに、『短くしてもいい』とおっしゃられたので……」
………………。
それは……、多分、寝言。
ワタシは床に散らばる、『元ワタシの髪の毛』たちを見つめる。
涙で視界がぼやける。
惨めだ。
どうして、ワタシはこう、失敗ばかりなんだろう。
「あの、お客様?」
ああ、なんということだろう。
でも、美容師さんは悪くない。
だからワタシは、短くなった前髪で瞳を隠しながら、言った。
「……これで、いいです。……ありがとうございました」
涙を誤魔化しつつ会計し、店を足早に去った。


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