#痴漢SSを書こう4# ..
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08/10/05 19:13:54 pMhHnUfv
愛理は、背後の男にだけ意識を集中していた。
背後の男が「敵」であり、周囲の人々は「環境」だと認識していた。
だから横の男に腕をつかまれたとき、ひどく理不尽な想いをした。

マリオをプレイしていたら土管やコインが突然襲ってきたような、
突拍子も無い罠に、彼女の思考は硬直する。
愛理の真横に立っていた、ネクタイをゆるめた二十代の男が彼女の右手首を掴んでいた。

そして、そのままゆっくりと手を握る。まるで握手をしているようだ。

「あぁ」と声が聞こえた。背後の男の声だ。
耳たぶを濡らすような湿った喘ぎ声だった。
それから「スーッ」という、歯の隙間から息を吸う音。

そこで彼女は、初めて気がついた。
―自分は見られている。
周囲の男たちは、愛理が痴漢に遭っていることに気付いている。

折りたたんだ日経新聞を読んでいる男も、i-podのイヤホンを耳に入れている男も、
ただ黙って吊り革に体重をかけている男も、立ったまま眠ったような表情の男も。
痴漢に遭っている女子高生に気付き、時折目線を送っていた。

この瞬間、愛理の心のなかに遅ればせながら初めて「恐怖」が生まれた。

小さく「いやっ」という言葉を彼女は発したが、ほぼ同時に始まった車内放送がそれをかき消した。
「まもなく、小象、小象、お出口は、右側です」

下着の上から、いつくしむように優しい指先が、陰核を撫でこする。
彼女にとって、他人に触れられたことのない、触れさせたことのない場所である。

「本日、電車混みあいまして、大変ご迷惑をかけております」


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