モララーのビデオ棚in ..
278:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 7/13
09/06/17 14:47:16 GtFezprp0
だが、と。赤音は思う。この魔剣には―欠陥がある。
致命的、あまりに致命的な。彼の天賦の才や努力では埋めるべくもない欠陥が。
「―やはり、無理があると思うか」
問われてはっと我に返り、赤音は努めてゆっくりと、言葉を選んで答える。
「……そう……ですね。ひとつだけ、大きな穴があります。それは―」
「それは?」
一拍の間を置いて、赤音は悪戯めかして片目を瞑ってみせた。
「練習相手の不在です」
ぽかん、と盲点を突かれた様子の彼を見て、あはは、と破顔する。
「おれでよければ手伝わせてください。人目に付かない特訓場所も知ってます。
斬られ役でもなんでもやりますよ。もちろん真剣以外で、ですけど」
「赤音……」と、彼は思い直したように首を振る。「……いや、駄目だ。お前まで
俺の酔狂に付き合わせるわけにはゆかん」
「水臭いですよ今さら。聞いたからにはおれも同じ穴の狢です。先生にも皆にも、
誓って他言しません。大事な夢を、酔狂だなんてどうか卑下しないでください」
「だが―」
「理論上は完璧です。確かにあなた以外には絶対に無理ですけど。実際の人間を
相手に練習を重ねればきっと、いえあなたなら必ず成し遂げます。おれにできる
ことはなんでも言ってください。おれも、あなたの夢を見てみたいんです」
「……赤音」
かなりの葛藤を見せたのち、意を決したように彼は右手を差し出した。
「……ありがとう、赤音。恩に着る。よろしく頼む」
笑顔で彼の手を握り返しながら、赤音は彼の心の鈍感さに初めて感謝した。
†
あれほど楽しみにしていた彼との勝負だというのに、有耶無耶になった一局の
仕切り直しに臨む赤音の心境はひどく沈鬱だった。
対面で棋盤を睨み黙考する青年を複雑な思いで眺めやる。
279:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 8/13
09/06/17 14:48:33 GtFezprp0
彼はいずれ魔剣を会得する。
十日後か十年後かは不明だが、それは確定した未来だ。ずっと彼の剣を見てきた
赤音にはわかる。彼は必ず異形の必殺剣を極める。
だが、極めてどうする?
現代の剣術界に、死ぬまで斬り合う真剣仕合の場などもはやない。
それ以前に、既存の戦いの常識を真っ向から覆してのける魔剣を相手にしては、
木刀での模擬仕合すら成立しない。刈流はおろかどの流派でも異端視は免れまい。
長い歴史の中で洗練と進化を重ねた先人の技に、彼が独自の研鑽を加えて昇華
した必勝のシステム―魔剣。
極限まで合理性を追求したその基本理念は、結果だけ見れば皮肉にも、洗練とは
対極の蛮行に酷似している。すなわち、勝機の別も敵の力量すらも関知せず、全て
等しく斬り捨てる、という慮外の暴挙。
技の原型は刈流であっても、世界と調和する人間性の完成をもって剣の究極と
する刈流の思想はそこにはない。師ならば外法と罵倒することだろう。
襲撃し、殺傷する。ただそれのみを冷徹かつ確実に遂行する。それが彼の魔剣。
世が世ならば、戦神もかくやの活躍を見せた絶技に違いない。
だが銃火器や爆弾によるテロが横行する当世、刀剣を用いた実戦はただ一箇所の
例外を除き、とうに過去のものと化した。巷間において剣術に求められる役割は、
かつての戦闘術から護身や精神的修養としての側面にシフトしている。
思想性とは無縁の、特異で異常な攻撃性を有した魔剣は、一般社会はもちろん
剣術界にも受容される余地がない。
そして何より、彼以外の人間には修得さえも成し得ない。
―つまり。
必勝不敗を誇るはずの魔剣は、ついに鞘から抜かれることなく。
その存在すら認められず。
ひとりの天才の寿命が尽きると同時に、ただ人知れず消えるのだ。
生まれる時代が遅過ぎた、という欠陥ゆえに。
静寂の中、ただ盤上の戦局だけが刻々と変化してゆく。
彼は黙して語らず、赤音もまた言うべき言葉がなかった。
280:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 9/13
09/06/17 14:49:28 GtFezprp0
どの剣よりも勝利の頂に近付きながら、忌み子として闇に葬られる。
あまりに哀しい魔剣の宿命を彼は知っているだろうか。
酔狂と自ら言ったように、承知の上だろう。探究の最初期に考え至らぬはずがない。
それでもきっと彼は、そうせずにはいられなかった。
世の理も流派の教えも自らの立場も顧みず、ただ、剣者として。
ひとりの剣者として、錬磨の果てを見極めずにはいられなかったのだ。
彼の勝利に対する狂おしいまでの渇望が、赤音には痛いほど肌身に感じ取れた。
おそらくそれは自分というひとりの剣者が、彼という高みに恋し、焦がれ―
いつの日か戦う未来を切望して己を高め続けるのと、どこか質を似通わせていたから。
自分だけの剣を手に入れて、彼の剣と競い合わせることをずっと夢見てきた。
同門に学ぶ者としては、彼の魔剣開発を制止すべきだったのだろうと思う。
赤音の言葉程度で志を曲げる彼ではなかったろうが、それでも止めるべきだった。
理解と支援の姿勢を示し、彼の背を押したのは、断じて彼のためなどではない。
いつか交えたい剣の至高の姿を見極めたいと願う、赤音のエゴに他ならなかった。
それが彼の人生において、報われぬ徒労の結果に終わろうとも。
(ああ―そうか)
自分と彼は魂の造りが似ているのだ、と赤音は悟る。だから彼の剣に惹かれたのか。
剣の前では他の全てが意味を失う、度し難くも愚かしい生き方。
愚者と愚者がたまたまこの道場で出会った。それだけのことだ。
劣勢の盤上を赤音は見る。容赦なく赤音を攻め抜き、追い詰める青年を見る。
彼は赤音の次の手を待っている。
(――待っている? ……)
落雷の衝撃をもって理解は訪れた。
待っている。彼は、そう、待っているのだ。対手を。
待ちわびている。鎬を削り、剣者としての生命を燃焼させるに足る敵手を。
勝利に飢え、振るう当てなき暴虐の剣をひたすらに磨く。
それらはひとえに彼が、まだ見ぬ己の敵を欲しているためではなかったか。
281:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 10/13
09/06/17 14:50:39 GtFezprp0
腹の底から沸々と滾り出す灼熱を赤音は自覚する。
(何をちんたらやってるんだ、おれは?)
それは未だ力及ばぬ自分への怒りであり、眼前の青年に対する闘志であった。
彼の魔剣は徒労ではない。徒労であるはずがない。
なぜならばこの自分の剣がある。
因果の順が破綻していようと関係なかった。ただごく自然に思った。
彼が待っているのは、おれだ。その望みに応えなくてはならぬ、と。
仕合で交えるのは所詮紛い物の木刀に過ぎない。魔剣の使用も許されぬだろう。
それでも、彼が持てる力を出し尽くしてなお、それを受け止め尽くす互角の
好敵手として自分が共にあったなら。互いを越えんと高め合ってゆけたなら。
彼の飢えは満たされ、剣者の魂は全うされるのではないか。
そして、彼の剣を求め続ける自分の魂もまた。
公の場で魔剣が封印の憂き目を見ようとも、自分だけは彼の傍らで余さず認め、
知り尽くそう。その煌きにこそ魅了されて武田赤音という剣者は生まれたのだから。
(―おれは強くなってみせる)
かつてないほど強力に誓い念じながら、赤音は逆襲の一手を放った。
草木さえも寝静まり、時おり静謐を破るのは駒が盤を打つ微かな音と、りん、
と頭上に存在を主張する小さき観客のみ。
彼は一言も発しない。赤音もまた語る言葉を持たない。
それでいい。真剣勝負に一切の無粋は無用。
彼の指し手は常に巧妙精緻で、かつ苛烈極まりない。
彼と共有するかけがえのない時を赤音は愛おしむ。心優しき彼がちっぽけな
駒に仮託して見せる闘争の本性を。耽々とこちらの急所を狙う猛禽の眼光を。
獣の牙と爪をもって迎え撃つ自分を。入り乱れる数多の駆け引きを。一手たりとも
気が抜けぬ息詰まる攻防を。永遠にこの連鎖が続けばいいと願うほどに。
彼はどうなのだろうと、ふと思う。
こちらが改心の一手を打つごとに、彼の駒運びが嬉々として精彩を増すように
感じるのは、果たして赤音の気のせいだろうか?
282:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 11/13
09/06/17 14:51:40 GtFezprp0
なぜだろう、彼の次に指す手がかつてないほどにわかる。
幾手も先を、先の先を読み、裏また裏をかき合っているにも関わらず、互いの
攻め手と応じ手はかちりと噛み合い、一進一退を繰り返して拮抗する。
彼は指し方を変えていない。おそらくはただ赤音が、蓄積し続けてきた彼の、
そして自身の戦いの像を、真にあるべき姿に正しく結んだだけなのだろう。
それはいっそ舞踏的とさえ言える、奇妙な調和と均衡を成していた。
―ああ、楽しくてたまらない。
時が経つのも忘れ、果てるともなき盤上の交歓と相剋に赤音は酔い痴れた。
東の空が白みかけた頃。
これまで彼と重ねた三桁に及ぶ勝負の中で、赤音は初めて対手の投了を聞いた。
†
耳を疑った。「え、……今なんて」
「参った。俺の負けだ」敗北を認めるにも関わらず、彼の声はさっぱりと嬉しげな
色を含んでいた。「強くなったな、赤音」
眼下の盤を見直す。……確かに、相手方が詰んでいる。
「……勝った……のか、おれ?」思い返せば細かな記憶はあるのだが、終盤は
ほとんど忘我の境地だったため、にわかには信じかねた。
「次はむざむざと勝ち星はやらんぞ」
彼の言葉に、じわりと実感が込み上げる。
「――初めて、……初めて伊烏さんに勝てた……!」
一番鶏に代わって大声で叫びながらそこら中を走り回りたい気分だった。
今日の棋譜はきっと生涯忘れまい。「あっ……、すみません師範代」
興奮のあまり呼び名を誤った赤音に彼は首を振り、伊烏でいい、と言った。
「え、でも。他の門下生に対して示しが」
「今は俺とお前しかいない。堅苦しいのは抜きだ」
言うと、彼は赤音が一度も見たことのない表情を、に、と浮かべて付け加えた。
「お前にはこの先、嫌と言うほど斬られて貰うからな。二人のときに遠慮は要らん」
どこか共犯者めいた、気安さと不敵さを帯びた笑みだと赤音は思った。
「斬られ役が強くなっちゃって、油断してると逆に斬られるかもしれませんよ」
赤音も同じように笑った。―こんな笑い方の彼も、悪くない。
283:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 12/13
09/06/17 14:52:38 GtFezprp0
「じゃあ伊烏さん、勝負に勝ったお祝いをください。おれに」
「なんだ藪から棒に」
「戦での敗者は、勝者に略奪されるっていうのが昔からのお決まりじゃないですか」
「その理屈なら、お前はとうの昔に搾り滓だ」
「ちぇ。けち」
「……無理難題でなければ聞こう」
何やら構えた彼の言いように苦笑する。外道や鬼畜相手じゃあるまいし。
彼から奪い取る最高の戦利品を、赤音はとっておきの笑顔で宣言した。
「名前。新しい技の。おれに付けさせてください。ないと不便でしょ?」
「構わんが」彼が意外そうに眼を瞬かせる。「なくとも別に困りはしないぞ」
「困りますよ、これからはあなた一人の練習じゃないんですから」
「もう少し形になったらな」
「よーし。じゃあとびきり格好良いのを考えておきますね」
「……まともな名だろうな」
「どこかの刀鍛冶じゃないんですから。任せてください」
「そうか。期待しておく」
†
この日、武田赤音と伊烏義阿は共に無二の親友を得た。
二人は綾瀬刈流門下の高弟として互いを尊び、陰日向に切磋琢磨し、二年後には
門弟衆の見守る中、仕合にてその剣を全力で競った。伯仲の好勝負であった。
そして、その晩―
剣を認め合った二人の片割れは、刈流宗家の娘・鹿野三十鈴を斬殺、逃亡。
残された者は親友と未来の妻、光ある前途の全てを失った。
†
284:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】 13/13
09/06/17 14:53:43 GtFezprp0
奇怪な致命傷を刻まれた衛士達の死体を見て、武田赤音は歓喜に打ち震えた。
驚愕の表情で事切れた骸は、彼らが末期の眼に焼き付けたものをどんな遺言より
雄弁に語っている。いや、真の姿を彼らが知り得たかどうか。
それは有り得ざる天の怪奇。
具現化した不条理。
赤音が名付けた幻魔の如き妖技。
共に陽光の下を歩んでいた頃は、ついに全き姿を見ることが叶わなかった。
見えるはずがなかったのだ、と今ならわかる。我ながら改心の命名であった。
(こーいうのも、結果的に『手伝って』やったことになんのかねえ?)
運命の皮肉におかしみが込み上げる。
月を中天に昇らせるための最後の一押しを、堕とす形で与えてやれたとは。
こうしている間にも、肌はちりちりとその存在を感じている。
居る。この通路の向こうに。息を潜めて。
かつての魔剣に欠けていた力―鋭利かつ激烈な殺意を剥き出しにした気配。
この屍は怨敵たる赤音への宣戦布告、そして死刑宣告だ。
(ったく、遅えんだよ根暗野郎。鬼ごっこに四年もかける鬼がどこにいやがる)
剣馬鹿の赤音が行き着く先など、この時代錯誤な剣闘が幅を利かす閉鎖都市の
他にはないと、同じ剣馬鹿ならすぐわかりそうなものだろうに。相も変わらず
抜けている。待ちくたびれて腐るところだった。
本当に―待ちわびた。
彼が、来た。
赤音への燃え滾る憎悪にその身を灼き、赤音を屠る断罪の刃を極限まで研ぎ、
赤音に至る道に立ち塞がる全てを斬り、屍山血河を踏み越えて。
赤音の、赤音のための、宿敵が。
先刻斬った10人分の返り血と、彼がぶち撒けた脳漿混じりの血の海。
馴染みきった戦場の臭いは、下品な女の香水混じりの体臭を程良く消してくれた。
歓喜を込めて、虚空に復讐鬼を呼ばわる刹那―
ふわり、と。
剣狂者の鼻孔を、存在しない夏橙の芳香が掠めて消えた。
††
285:ハナチラ 赤音→伊烏 【後】
09/06/17 14:56:21 GtFezprp0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )オシマイ
「昼の月」誕生秘話妄想。聖都はいろんな意味で最高でした。
平和な道場で凶悪無敵技を大真面目に練習してた伊烏のヤバさについて。
場を貸してくれたこのスレと読んでくださった方ありがとうございました。
286:風と木の名無しさん
09/06/17 19:25:36 2vjT+/Jg0
大作乙。某スレの姐さんかな?
ていうか12と13の間に 何 が あ っ た
287:風と木の名無しさん
09/06/17 22:30:50 mQr7yxBK0
>>140
今更だけど萌えた!
盟友好きにもおいしいシーンがあって嬉しかったです
288:風と木の名無しさん
09/06/17 23:32:22 UEYeet/0O
>>285
原作欲しくなったGJ!燃えかつ萌えたよ!
俺…卒業決めたらゲーム買うんだ…
289:風と木の名無しさん
09/06/17 23:34:30 9X6ktiefO
>>256
亀ですがgj!!
まっすぐまぁクン可愛いww
290:風と木の名無しさん
09/06/17 23:37:23 ZnHC8GPJ0
>>288
姐さん!フラグフラグ!!
291:肉&血 眼帯×赤毛
09/06/18 05:19:32 kn8n9t/x0
眼帯×赤毛。
眼帯の幸せを祈ったらやっぱりこんな感じになりました。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
292:肉&血 眼帯×赤毛 1/3
09/06/18 05:22:06 kn8n9t/x0
船を降り、陸地に上がってから程なくして俺は宿屋のベッドの中にいた。どうやら疲労という悪魔は、自分が
思っていたよりも深く俺の体を蝕んでいたようだ。それとも、今の俺には休息が必要だと神が与え賜うたもの
なのか。
だとしたなら、それは悪魔よりも酷な仕打ちだ。こうしてじっとしていれば、自然と考えてしまうのはただ一つ
のことに決まっているのだから。
「ナイジェル、起きてる?」
「……カイト」
ベッドの脇から自分を覗き込むのは双つの瞳。きらきらと輝きを放つそれをもっと見ていたくて、額にかかる
赤毛をそっとはらってやる。しっかりと真正面で目が合って、カイトは照れたように目を逸らした。とはいえ、彼の
的は別にある。
「熱は?」
「大分ましになった」
答える俺の額に手をあてて、即座に「嘘つき」とカイトは口を尖らせる。もう、と言いながらも盥の中の布を絞り、
脇の布と交換した。それはひんやりと冷たくて気持ちがいい。カイトは本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
「本当だ。気分はいい」
まるで言い訳のようだったが、実際その言葉に嘘はなかった。それにしても、とカイトは口を開く。
「ナイジェルって実は体が弱いのかな」
言われて目を丸くし、「馬鹿を言え」と一笑に付した。
「少なくとも、いつまでもひよっ子のお前よりは鍛えてる自信はあるぞ。お前、今もあまりちゃんと食べていないの
だろう?」
軽く左の頬をつまみ、離した。つままれた頬に手をあてて、カイトは複雑そうな表情をした。
293:肉&血 眼帯×赤毛 2/3
09/06/18 05:22:34 kn8n9t/x0
「そういう意味じゃなくって」
「なら、どういう意味だ」
片眉を上げた。問われてうーんとカイトは唸った。
「風邪を引きやすい、とか」
言われて、しばし思案顔をする。
「……そうだな。ひょっとすると」
「なに?」
「俺はお前に看病されたいのかもしれないな」
「もう、ナイジェル」
そうして頬を膨らませる仕草も、子供じみているが可愛い。こうしてカイトと他愛もない会話をするのは、いつだって
何よりも自分の心を楽しませた。もっと話していたい気にさせてくれる。
「ところで、ジェフリーはどこへ?」
金髪の友人の姿が見えない。彼のことだから、何かしらちょっかいを出してくるだろうと思ったのだが。
「買い物に行ってるよ」
そうか、と答えようとして疑問を抱いた。
「お前はどうして付いていかなかったんだ? いつもだったら喜んで付いていくだろう」
「ナイジェルの看病をするからって言ったから」
つまり、ジェフリーは恋人よりも俺との友情を優先させたということか。彼自身の嫉妬心よりも、カイトや俺への信頼が
勝ったのだとしたら、友の忍耐力はなんと有り難いことだろう。彼のその思いに今はただ報いるべきだ。要するに、さっ
さと快復しなくては。
「疲れたでしょ? もう少し寝てなよ」
「ああ……そうするとしよう」
気の利くカイトの手がシーツを掛け直す。ラベンダーの香りが鼻腔をくすぐった。深い眠りに落ちるのは間もなくだった。
294:肉&血 眼帯×赤毛 3/3
09/06/18 05:26:31 kn8n9t/x0
それからどれくらい時間が過ぎただろうか。目が覚めると、宿屋ではなく自宅のベッドにいた。側にはカイトがいる。
「体調はどう?」
言うが早いか、ぎしりとベッドが軋む。目の前にはカイトの顔があった。理解が追いつかない。これは夢なのか。
「……カイト?」
キスを求めるかのような唇。そのことに、悲しいがこれは夢であることが間違いないと確信した。カイトがそんなことをする
筈がないのだ。なんと浅ましいのだ、俺は。無二の友へ感謝しておきながら、その裏で望んでいるのは、こんなことか。
彼の唇に触れてみたいと思ったことがないわけではない。それどころか、一度は密かにその唇を盗んだこともあった。その
己の愚かな行為が、大いなる後悔を招くことになるとは知らずに。その事を思い出すと、今でもちりちりと胸を苛まれる。
彼への思いは、誰にも告げることなく深く閉ざしておくつもりだった。そうするべきだったのだ。
「ねえ、ナイジェル?」
恋人のような親密さで、首にカイトの細い腕が回される。体を動かすことはおろか、何も答えることができない。夢の中でさ
え自分は熱にうなされているのか。
これはもしや淫魔の類いか、と思いを巡らせた。眠りに落ちた男を誘惑し、その精を搾り取るという悪魔。カイトの姿を取る
ことは、自分への誘惑の成功を招いたようだ。目の前の相手に口付けたいという、抗い難い衝動が身を襲う。
心の底から愛する人間が目の前にいて、正常な判断が下せる人間がそうそういるだろうか。自分もまた同じだった。
本人ではないのだからとそう無理矢理に自分を納得させ、カイトの顔をした“それ”を支えながら体勢を変える。そうすれば、
ベッドにカイトを組み敷く格好になる。カイトは少女のように躊躇いがちに瞼を伏せた。
まずは額にキス。降りて柔らかな頬。それから甘美な唇を味わう。次は細い首筋。そして肩。口付けるごとに理性が少しずつ
剥がされるようだ。
止まらない。……まずい。
「……俺は我慢強いつもりでいたんだが」
殊の外、誘惑には。
295:肉&血 眼帯×赤毛
09/06/18 05:29:57 kn8n9t/x0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )オシマイ
新刊が楽しみ。
原作以上に萌えるものはないですね。
296:風と木の名無しさん
09/06/19 01:18:25 bNAH7/6e0
生注意
高学歴ゲ仁ソ 魯山 大阪府大×京大
元ネタは『微序歳版』の大阪府大の発言です
大阪府大に両刀表現がありますので苦手な方はご注意下さい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
297:You understand? 1/3
09/06/19 01:19:57 bNAH7/6e0
遊び好きの男だと思われる。女の子のストライクゾーンが広い男だと思われる。
カワイイ顔を武器にしてだれかれ構わず食い散らかして、一度きりの関係を繰り返す情のない男だと思われる。
そういうキャラ付けされて、それを笑いのネタにする分には別にかめへんよ。実際ネタにしとることやし。
けどそれが俺の素やて思われるのは、正直あんま気持ちのいいもんやない。
言うとくけどな、俺、自分からつきあおうて言うて女の子誘ったこと、一度もないねんぞ?
俺の方から誘って、それで俺が捨てたらそれはひどい男やんか。でもな、俺そんなん一回もしたことないんやぞ?
なぁ、おまえならそこんとこ、わかってくれてるよなぁ、うじぃ?
「はぁ?いきなり何やねん」
シーツにくるまって横になったまま、一人そそくさと着替えをしていた男の背中に呼びかけると、ソイツはくるりとこちらに振り返った。
あ、今日コイツは上京してクイズ番組の収録、俺はひとり大阪で留守番ですー。
「何、何の話?俺、あんま時間ないねんぞ」
予想外なことに、さもうるさげな感じで返されてしまった。
ちょ、おまえ、それが昨夜あんなに激しく愛し合った奴に対する態度なん?
いくら新幹線が待ってはくれんからって、そんなん事後の情緒もへったくれもないやんか。
思わずムッとした俺は、ちょっとだけ意地悪な質問をしてみる。
「うじは、俺が女の子と寝るの、やめてもらいたいとか思うてる?」
あ、眉がピクッってなった。相変わらずわかりやすいやっちゃなー。
ソイツはクローゼットの扉を閉め、わざわざベッドのところまでやってきて不機嫌そうに返事をした。
「……別に、そんなんおまえ自身の問題で、俺がとやかく言うことやないやろ」
おーおー、優等生の回答やのー。
確かに、こんなに長いこと一緒におっても、お互いに踏み込まん領域ってのは存在しとるわけで。
コイツも舞台では俺の交友関係にえらいいちゃもんつけてくるけど、プライベートになったらほとんど何も言ってこんもんな。
まぁそのおかげで俺らもこうして長続きできとるんやと思うんやけど。
でもな、俺がこういう気分の時に、そんな面白みのない答えはないやろ?氏腹さん。
298:You understand? 2/3
09/06/19 01:21:29 bNAH7/6e0
俺はシーツを跳ね除け起き上がると、ぐっとアイツの腕を引っ張った。バランスを崩した長身がどさっとベッドに倒れこんだところを、強引に口づける。
「ん、むっ……」
覆い被さるような体勢で、ねっとりと貪るようなキス。そしておもむろに口を離すと、つうっと透明な糸が引いた。
「なっ…いきなり何すんねん!」
「俺はおまえの本音が聞きたいんや。ホンマのこと言わへんかったら、この服もっかい脱がしてヤルで?」
「ちょっ……!」
出発の時間は刻一刻と近づいていた。本気で脱がされかねないと察したのか、アイツはしぶしぶベッドの脇に座りなおして、俺の目をじっと見詰める。
「あのな、おまえが何を聞きたいのかようわからんけど、俺はもう、おまえのそんなんは気にせえへんことにしたんや」
もうて、気にせえへんことにしたて…何や、口ではえらい強気やけど、ホンマはめちゃめちゃ気にしててんな。やっぱカワエエなぁコイツ。あかん、思わず口元が綻んでまうやん。
「何わろてんねん」
「別にー。ほんで、何でなん?何で気にせえへんことにしたん?」
「何でて、そらおまえがいくら女の子と、その、セックスしたかて……」「したかて?」
「だから、おまえの方から……」「俺の方から?」
言いにくそうに口篭り、何度も何度も唇を舐める、その見慣れた顔がほんのり赤みを帯びていく。
「そのぉ、誘っとるわけやないって……わかってんねんもん」
ぼそぼそとめっちゃ小声で告ったところに「はぁ?聞こえません〜」と返すと、何かが自分の内でプツンと切れたのか、ヤツは突然大声を上げた。
「だーかーらー、おまえが自分から誘って行くのは俺だけやて、わかってんねんもん!だから心配なんてする必要ないやんか!」
「うーちゃん……」
「…っ!」
自分の口から出た言葉があまりに恥ずかしかったらしい。顔と言わず指先まで真っ赤にして、アイツは口元を手で覆った。
299:You understand? 3/3
09/06/19 01:22:29 bNAH7/6e0
そう、それやそれ。まさに今、俺が聞きたかった答えや。
俺が誘ったのは、後にも先にも一人だけ。ずっと一緒にいたいからって、この世界に引きずり込んだ時からずっとおまえだけや。
俺、愛を込めてセックスできるのおまえだけやから。嘘でも何でもない。ホンマのホンマにおまえだけやから。
ちゃんとわかってくれてんねやな。はは、嬉しいで、うーちゃん。
ま、そんなんはっきりは口に出しては言わんねやけどな。
「うわー、恥っずぅ……」
「別に恥ずかしいことなんてないやろ、なぁ?」
「ん、ふっ…」
俺はアイツの首に腕を回して、今度は下から突き上げるようにキスをした。
「っ…はぁっ」
ひとしきり口内を蹂躙して、今度はゆっくり唇を離すと、甘い吐息がアイツの口から漏れる。
「おまえなぁ…そんなめっちゃエエ顔で。ズルイで、ホンマ」
「えへー」
とっておきの笑顔で応じると、アイツは口を尖らせてぷいっと顔を背けた。
なんや、何から何まで昔からちっとも変わってへんなぁ、コイツ。あぁ、ホンマにカワイイで。
「ところでおまえ、新幹線の時間ええのん?」
「は?って、あああああ!!アカン、はよいかんとー!」
腕時計を見て自分が何の途中だったか思い出したようで、ヤツは慌ててベッドから離れると、大急ぎで出発の支度を再開した。
合鍵を持っているお留守番組の俺は、ベッドに寝転んだままその様をぼーっと眺める。
今ここでまた変な質問したら、アイツ今度こそ本当にキレんねやろうなー、などと他愛もないことを考えながら。
なぁ、うじぃ。俺なぁ、最近こんなん思うようになってん。
世間の皆様にどんなに軽い男やって思われても、たった一人、おまえにそんなんやないてわかってもらえとったらもうそれでええかなって。
あかんなぁ…、俺、おまえのこと好きになりすぎて、人としてホンマにあかんところまで来てしまったみたいやわ。
ま、それも口には絶対出さんねやけどな。
300:風と木の名無しさん
09/06/19 01:23:07 bNAH7/6e0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最近の大阪府大の小悪魔ぶりには禿げ上がる程萌える…
301:風と木の名無しさん
09/06/19 10:30:21 VjNdmJ+60
>>296
GJ!「えへー」に萌え死んだ。
美女○判観てないけど、そんなこと抜かしよったんか。
世渡り上手、恋愛上手、床上手そうで羨ましいわw
巧いな。なんかすごくリアルだと思った。
実際に大阪府大がこういう風に考えてたり、二人がこういう会話してたり、
こんな関係であったりしても(?)おかしくないな、みたいな。
フィクション全開バリバリです、っていうのも好きだけど。
302:風と木の名無しさん
09/06/19 22:05:18 cv1m6S4hO
夏に向けて姐さん方ガンバレー。
同い年の補首と当主がモデル。
ちゃんと調べず書いたので、好きな人で想像してもらってもオリジナルでも。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
303:タメ 1/3
09/06/19 22:07:43 cv1m6S4hO
がらんと薄暗い廊下のベンチに座って、明かりの漏れるドアが開くのを待った。
彼はまだ話をしている。今日は特に長い。
自分の方が早く終わるなんてめずらしい。それだけ、納得に時間がかかっているのだろう。
しばらくして足音と挨拶が聞こえ、ドアが開いた。
「びっくりした」
現れた彼はそう口にしただけで背を向けた。
「長かったな」
その背中に声をかけるも、彼は何も答えない。余程堪えているのか。
彼のなげる前日には、必ずティムのAがなげる。
そのAが昨日負け、そして今日は彼が負けた。
悪い流れに呑み込まれてしまった。
補首としての自分のリィドにも問題はあったのに。
当主はその肩ひとつですべてを背負おうとする。
駐車場に出て車の前に立ち止まり、彼はやっと振り返った。
「何だよ」
これ以上付いて来るな、と言いたげな目。
穏便に話をしなければと思い、反射的に「ごめん」と返した。
直後そんな「取り繕い」を、後悔する。
案の定、彼は独り言のように呟いた。
「思ってねえくせに」
そして車のドアに手をかける。
止めなければ、と慌てて駆け寄り、その腕を掴んだ。
304:タメ 2/3
09/06/19 22:11:34 cv1m6S4hO
バッグがどさりと足元に落ちる。
驚く彼の瞳を捕えた。じっと間近で顔を覗きこむ。手の平に伝わる彼の脈。
「…」
「…」
先にうつ向いて目をそらしたのは彼だった。
「次は大丈夫だから」
彼は何も反応しない。言われなくてもわかっている、でも無意識に不安にかられている。
何とか、その不安を消さなければ。
「俺は信じてるから」
「…何でだよ」
何故って。
同じチイムだから。違う。
そんな理由じゃない。
同い年だし。気が合うし。仲良くしていたい。そばにいたい。
どう言えば伝わるのだろう。
「好きだから」
頭の中の結論よりも先に出た言葉。彼ははっと驚いたように顔を上げた。
再び交差する視線。
瞳の中にひかり。きれいな顔立ち。かすかに開いた唇。
あれ?
何でこんなこと気になるんだ。
さっきの言葉も、そういう意味ではなく。
というか。
この雰囲気はまるで。
体を寄せて彼の背中を窓に押し付ける。
右手で、頬に触れる。
鼻が当たらないよう顔を傾げて顔を近付けると、彼もまた、瞼を閉じようとして…。
305:タメ 3/3
09/06/19 22:17:39 cv1m6S4hO
カシャ。
シャッターの電子音。
はっと振り向くと、大柄な男と、やや小柄な男が立っていた。
大柄の男は昨日負けたA。もう一人の小柄な男は、Aと仲の良い船初当主。
「ホラお前が音出すから気付かれたー」
「でもええのが撮れましたよ」
唖然として年下の当主二人を眺めていると、腕の中にいた当主からは乱暴に手を振り払われる。
小柄な男がヘラッと笑った。
「あ、すみません。続きをどうぞ」
「つ、続きって」
誤魔化すように笑うと、大柄な男は携帯の画面を眺め、小柄な男も寄り添ってそれを覗きこむ。
「よく撮れてるなあ。いやー、お二人がそういう関係だとは」
「んなわけねーだろ!つかそんなもん早く消せよ。冗談…」
思わずそう声を張り上げると、突然背中から押されるような衝撃を受けた。
地面に膝と手をつき、振り返ると勢い良く車のドアが閉まった。
「え…あ、違う!待って!」
手を伸ばすも、エンジン音は遠慮なく鳴り響き、車は門にむかって走り出した。
「わはは、これもええ感じに撮れた。見てください」
「うわ、ものの見事に背中蹴られてる」
大小の当主は、地面にへたれこむ補首を無視して、携帯を見ては笑い合っていた。
放置された補首は立ち上がる気力も失い、地面に手をついたまま。
それでも
…まあ、三人の気持ちの切り替えにはなったかな…。
と、頭の片隅で彼らを案じてしまう。
そんな自分の習性に呆れて、大きくため息をついた。
306:風と木の名無しさん
09/06/19 22:19:37 cv1m6S4hO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
イチャイチャを書くつもりが・・・。
告白(?)の所は去年見た邦画(801ではない)の影響が強いよ。
307:ひとりじめスタート
09/06/20 01:44:23 m9AMo+2h0
星新一のショート作品「ひとりじめ」からなぜか膨らんでしまった妄想を抑えることができなかった結果がこれです。
話の内容の説明は下手ですし、短いので一度読んでみて下さい。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
308:ひとりじめ1/4
09/06/20 01:44:59 m9AMo+2h0
「なあ、兄貴。おれたちはいつまでも、相棒なんだろう……」
青白い顔をした「奴」はそう言うと、事態を理解し、体を硬直させた俺の両肩をぐっと掴んだ。
こいつは恐らく、もう死んでいるのだろう。
魂だけの存在なのだろう。
だのに、なぜこいつの手は現実的で…ああ、それでもやはり酷く冷たい。
顔も青白いが、手も青白い。
その色の通りの体温だ。
「…痛い…」
しかも、ひ弱そうな色をしているくせに力だけは以前と変わらず強い。
俺はどうにかそれだけの声を絞り出すと圧迫してくる力に負けて肘を折った。
体が床に軽くだが叩き付けられ、背中に少しの痛みを覚えた。
奴の顔は変わらず近くにある。
「酷いじゃあないか、やっぱり俺を裏切ったのかよ。兄貴」
奴が喋ると、ほんの少し土の匂いがしたような気がした。
あの山の匂い、森の匂いだった。
こいつが逃げ込んだ洞窟も、きっと同じ匂いをしていたのだろうか。
「…済まん…」
「もう良いよ、良い」
そう言うと奴は俺を力一杯に抱き締めた。
一瞬呼吸を忘れさせたその冷たく熱い抱擁に、俺は思わず咳き込んだ。
頬に奴の体温を感じる。
冷たい。
「俺は金なんていらないんだ。もうそんな物必要なくなっちまった。あればあるで良いが、なくても困らない。そうなった。分かるだろ?兄貴」
奴は必死な声色でそう言った。
俺の腕は無意識に奴の背中に回っていた。
309:ひとりじめ2/4
09/06/20 01:45:27 m9AMo+2h0
ただ乗せただけというくらいに弱い力で抱き返すと、より一層体が冷えたような気がした。
奴の力は少し弱くなった。
「俺が兄貴の所に戻ってきたのは兄貴に会いたかったからなんだ、もう一度」
奴は少し体を離すと俺の顔をじっと覗き込んで言った。
青白い顔に落ち窪んだ眼孔の中、黒に近いくらいの濃い茶色の眼で奴は俺を射抜こうとした。
切なそうに眉間に皺を寄せ、潤った眼球で見られるのは堪らなかった。
「俺達はいつまでも相棒なんだろう?俺はずっと離れやしないと言ったはずだ。俺達はまた会えた。俺が会いに来た。もう二度と、俺は兄貴の側を放れないからな」
奴はそう言うと冷たい唇で口付けてきた。
乱暴だが、久し振りに味わうそれは悪くなかった。
しつこく口の中を舐め回し、応じない俺の舌を絡め取ろうとする。
ここでこいつに愛おしさを感じてしまった俺は余りの事態に狂ってしまったのだろうか。
回した腕に力を込め、しっかりと抱き返した。
そして誘う舌に応えて絡み付いてやると、キスは一層激しさを増した。
互いの呼吸音が時折漏れ、仰向けになっている俺の口の端からは溢れた唾液が伝った。
「ふぁ…、はぁ…」
漸く唇を解放されたと思うと、奴は直ぐに俺の服を脱がし始めた。
「あ、馬鹿」
形ばかりの抵抗をすると、奴は先程道端で会った時みたいに、心底嬉しそうに笑った。
「兄貴、ウイスキーの味がしたね」
奴の声は幾らか温かみを取り戻していたように思えた。
少なくとも、キスをする前の青白い声はしていないように思えた。
「飲み過ぎちゃあ駄目だよ。俺が怖かったんだろう」
上半身をすっかり露にした俺の体をするすると撫で回しながら奴は言った。
俺が困った顔をして答えないでいると、ちゅっと音を立てて首筋に吸い付いてきた。
「あっ…」
310:ひとりじめ3/4
09/06/20 01:45:50 m9AMo+2h0
ちくりと毛細血管が破れた。
こんな目立つ所に跡を付けるなんて。
「だって、俺を殺したんだものな。そりゃあ怖かっただろう」
乳首を親指の腹で捏ね繰り回しながら意地の悪い声色で耳元に囁く。
少しずつ荒くなる俺の呼吸の音を聞いて、奴は楽しんでいるように思えた。
「でも、俺は殺せないよ…」
「んんっ…、ぅ…」
乳首をねっとりと舐められ、全身がぶるっと震えた。
舌も冷たかった。
直ぐにつんと硬く立ち上がったそれを冷たくぬめった舌先が突付く。
吸い上げる唇も、摘み上げる指先も、皆冷んやりとしていた。
「は…、ん…」
片手が脇腹を擽りながら下半身へ下りた。
股間をさすり、既に俺が硬くなっていることに奴はますます気を良くしたようだった。
「こんな俺なんかにされても、やっぱり感じるんだな。前と同じように」
奴は慣れた手付きで俺のズボンと下着をすっかり脱がしてしまうと、直ぐに陰茎を握り込んで擦り始めた。
「ぁっ、あぁっ…」
皮膚と皮膚の擦れる音が次第にねちゃねちゃという粘着質な水音に変わる。
こいつは俺がどうされると弱いのかを全て知っていた。
男同士でのやり方を教えたのは俺だからだ。
こいつが俺に執着するのはそのせいなのだろう。
前からずっと、好きだ、いつまでも側にいるとうるさかった。
「嫌っ、んんっ…」
「嫌じゃないだろ?気持ち良いだろ?こんなになってるじゃないか。もう出そうなんだろ?」
「あっ、あっ、良い、イくっ…出そう…!」
311:ひとりじめ4/4
09/06/20 01:46:41 m9AMo+2h0
「良いよ、出せよ」
一際高く細い声を喉の奥で鳴らし、俺は奴の手の中に熱い精液を放った。
荒い呼吸を無意識に整えようとしながら、俺は空ろな眼で奴がそれを舐めるのを見ていた。
こんなに冷たいこいつがあんな熱い物を舐めたら、火傷でもしてしまうのではないだろうかと馬鹿なことを思った。
「良かった、変わらないな。兄貴の味だ」
「…そんなもん、誰のでも同じだろ…」
「つまらないことを言うなよ」
奴は悪戯っぽく笑いながら言うと、再びぎゅうと抱き付いてきた。
「なあ、兄貴。おれたちはいつまでも、相棒なんだろう……」
何をどうやったって、この体は二度と温まることはないらしい。
しかし、耳に直接流し込まれたその声は、恐らく二度と、あの青白い恐怖と共には響かないだろう。
それが良いことか悪いことかは、俺には分からなかった。
312:ひとりじめ終わり
09/06/20 01:48:10 m9AMo+2h0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
「死んでいる」という表現を使いましたが、実際死んでいるのかどうかは不明です。
初投稿なのでまずいところがあったら済みません。
ありがとうございました。
313:風と木の名無しさん
09/06/20 02:50:42 E99JioiiO
>>302
萌えました萌えますた
ありがとうございます
続きが気になる…
314:問題劇 青春DMC
09/06/20 16:12:05 dsUv7n8ZO
・半生注意
・女子の名前がチラッと出ます
・前回Dの「私はあなたの全てを知っています!」発言に感銘を受けた。
・初めてはなせれぶを買ったら、パッケージの白うさがMCに見えて、衝動的に書いた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
315:問題劇 青春DMC 1/5
09/06/20 16:13:33 dsUv7n8ZO
全開にされた窓から、裏の林のざわめきと、気まぐれな雨の音が入ってくる。
そうでなくとも体操用のマットは湿っぽいのに、今日は一段と重く、ごわつく布地に沈
んだ掌が冷えてくるような気さえした。そのくせ制服の中はやたらと熱くて元気なもの
だから、若いということは本当にどうしようもない。
「ほん、ま」
「ん?」
「やばいっ、て」
テスト期間の放課後、教室でテスト勉強という名の無駄話を数時間。そろそろほんと
に帰って勉強しなきゃ、と言ってスカートを翻した友人を、一つの机に向かい合って座
ったまま見送った。おれら、まだ残ってくよ、じゃあな。
案外に真面目な生徒が多いらしく、静かになった校舎内にはきっと二人きりだったのだ
ろう。誰にも見咎められずに体育館へ侵入し、ゴールネットがボールを噛む音ばかりを
聞いていた。
いよいよ帰ろうかと片づけを始める友人を片目で見ながら、かび臭い用具室の窓を開け
れば、予報はずれの雨が雑木林を叩いていた。日暮れまでは時間があるから、ねずみ色
の空はまだ明るいが、それでも傘を持たぬ身には辛い雨脚だった。
「やばいって、何が」
「お前だよ!」
「テストがヤバくないんなら、問題ないだろ」
316:問題劇 青春DMC 2/5
09/06/20 16:15:07 dsUv7n8ZO
あとはもう雨宿りしかないなと勝手に決め込み、油断した後姿を引き倒すだけだった。
「問題あるだろ!」
ぎゃあぎゃあ喚いてはいても、学ランはもとよりワイシャツまで殆ど脱がされ、最後
のベルトを守っているだけでは抵抗の言葉に説得力はない。きっと、はだけた胸のピン
ク色をつつけば、形ばかりのそれもほどけてしまうだろう。
「、ないよ」
精一杯の体でベルトを掴む手をそのままに、わざと低く耳もとで囁いた。途端、華奢
な手足が、押さえつける腹の下でふるりと動揺する。
ふわふわの髪を撫で、マットとの間に腕を差し入れて頭を抱くと、すっかり静かになっ
てしまった。しっかり体重を乗せると、ちいさな生き物のようにトクトクと速い脈を感じた。
「紙山、ずっと一緒にいような」
「股間押し付けながら言われてもさぁ、」
「……」
おどけたような調子に腕の中を覗き込むと、大きな目がくるりと見上げてきた。しか
し普段の威勢の良さはなく、すぐにそらされた目尻には、うっすら涙が浮かんでいた。
「ムード、ぶち壊しだっつうの」
乱れた髪から覗く白い耳、首筋から胸までやわらかな陰影をつくる、しなやかな筋肉が生む呼吸。
本気になったフリースローのせいだろう、仄かな汗の香りを感じる。
317:問題劇 青春DMC 3/5
09/06/20 16:16:28 dsUv7n8ZO
不意に視線の先で、肩がぴくんと動いた。
「お前さぁ、またデカくなったんだけど?」
「あぁ……」
「そろそろもう、」
「はじめましょうか」
続く言葉はどちらだろうと関係なく、結局最後に流れ着くところは毎回決まっている。
突き上げる下腹の衝動のまま押し付けた手の甲は、守っているのではなく、隠している
だけなのだから。耳の端を舌先で撫でながら二の腕を掴むだけで、それは簡単に外れた
。片方ずつ迎えにゆき、頭の横でそれぞれ貝のように指を組み合わせて繋いだ。
首に鼻先をうずめて腰を動かし、同じくらい張りのある若い熱を重ねて、擦るようにす
ると、やっと触れてくれたと言いたげな充足の吐息を耳に感じた。
「ほんまぁ、」
掠れた声がキスをねだっている。顔を上げると案の定、潤んでとろけた表情の唇は半
開きで、ここへ舌を差し込んで下さいと訴えているので、その通りにする。
あまく吸い付かれ、鼻から漏れる声の間に間に歯を立てられるのが痺れるように心地良
い。お返しにたっぷり撫で探ってから唇を離した。きっともう直に触って欲しくてたま
らなくなっているだろう。
一旦手を離して起き上がり、学ランを脱いでいると、あれだけ必死になってしがみつい
ていたベルトを、もたもたと頼りない手つきで外そうとしていた。
318:問題劇 青春DMC 4/5
09/06/20 16:18:07 dsUv7n8ZO
―焦らなくても、俺は逃げないから。
回答者を迎えるごとに記憶を取り戻しては、頭を抱えてのたうち回る。それで、絶叫
に見開かれた目に見える景色が増えていくのだから充分だ。一回ずつ、ゆっくり確実に
思い出せば良い。
激しい頭痛に苦しみ悶えてベッドから落ちた紙山は、少し落ち着いたのかレンガにす
り寄って、ひくひくと背中を震わせている。
「紙山、」
その先の言葉は、喉に引っ掛かったまま出て来なかった。思い出した直後の虚ろな、
やつれた横顔を見てしまったからか。
骨が透けて見えるような白いガーゼの背中は、何度見ても紙山サトルではないと記憶が否定
する。それは今も変わらず、蹲る身体からかつての笑顔の欠片でも掬い取ろうと長い間
見つめては、いたずらに過去の姿を重ね、嘆息を漏らした。少しずつ思い出してはいて
も、人格まで元通りというには遠い。
床に捨て置いたまま帰ろうと、ノブに手をかけたところで細い声が聞こえた。半身だけ振り返る。
「待って、ください」
「は?」
319:問題劇 青春DMC 5/5
09/06/20 16:19:19 dsUv7n8ZO
「ミサキって、もしかして、あなたの……?」
いつの間にかジーンズの裾へ手を伸ばしている紙山を殴るように掴み上げ、怯えて焦
点の定まらなくなった双眸を睨む。がくがく震える吐息が、唇が、極まって意識を失う
手前のような、ちいさな声をこぼすさまを見ていられず、発作的にベッドへ投げ落とし
、逃げるように部屋を出た。
驚いたらしい最後の短い悲鳴が、耳にこびりついて消えない。窓の外の豪雨でも洗い流
せそうにない、耳鳴りのような疼痛。目を閉じると、制服を脱ぎ捨てた肌が見える。
しきりに待ってと繰り返す唇へ、宥めるようにキスを落としながら、終わりが近い紙山
の中を夢中で掻きまわす。熱くとろけてどこまでも呑み込む、素直で、いとしい人が、
途切れ途切れに訴える。待って、おれも、ずっと、一緒に。
ぽたり。今夜の雨は、どんな傘を差していてもきっと、身体の芯まで濡れてしまうだろう。
320:問題劇 青春DMC
09/06/20 16:20:23 dsUv7n8ZO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最終回が待ち遠しいやら、終わって欲しくないやら。
あと5時間…
321:風と木の名無しさん
09/06/20 16:23:20 a/op4rD4O
リアルタイムだ!
GJGJ超GJ!
ベルトを守るっていうのにむちゃくちゃ萌えた
最終回、どうなるんだろう…
322:風と木の名無しさん
09/06/20 19:17:39 H8ecxf6hO
>>320
ごちそうさまでした!
学生時代、禿げ萌えました。
ありがとうございます。
323:風と木の名無しさん
09/06/20 21:32:09 AWgxBTH40
>>296
このにっくき女性蔑視野郎、大阪府大を、
姐さん方の筆でもっとがっつんがっつんに犯したって下さい。
鬼畜残虐輪姦キボン
324:生.活.維.持.省0/3
09/06/20 21:43:01 yzo33TNp0
早朝に投下させて頂いたばかりですが、今日新しく読んだ話が激しく切なく萌えてしまったので再び投下致します。
星.新.一.のショート作品「生.活.維.持.省」から。
「イ.キ.ガ.ミ.」と一悶着あったそうなので、ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが…。
こちらも一度お読み下さい。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
325:生.活.維.持.省1/3
09/06/20 21:43:28 yzo33TNp0
「なにも急がなくたっていいじゃないか。いちばんあとにしたって、いいだろう」
しかし、私は平和にみちた明るい景色を目にやきつけながら答えた。
「いいよ、自分できめた順番なんだから。ああ、生存競争と戦争の恐怖のない時代に、これだけ生きることができて楽しかったな」
彼は私が渡したカードと小型光線銃を両手の平に乗せたまま私をじっと見つめていた。
私は窓の外を眺めていたが、彼の視線をずっと後頭部に感じていた。
きっと、その口は何か言おうとしては噤みを繰り返しているのだろう。
そして、その表情は私のそれよりも余程絶望的なのだろう。
私は、こんなにも穏やかな心持ちでいるのに。
「い、嫌だ」
彼の震えた声に、私はゆっくりと振り返った。
彼は泣いてこそいなかったが、瞳が潤み、揺らいでいた。
「君」
「嫌だ、僕は…、僕は、君を」
彼はそこまで言うと、両手に乗せたままのカードと銃を慌てたようにクラッチ後ろの小物スペースに置いた。
そしてエンジンを切り、車を完全に停車させた。
道路上だが、広い道だし、ここは余り車が通らない。
果たして彼がそこまで考慮していたかは疑わしいが。
一連の動作は五秒もかからず、次は乱暴に私の肩を掴んだ。
「痛いよ…」
「僕が君を殺すなんて、無理だ。できない」
彼は私の言葉に構わず震えた声でそう言うと、強い力で私を思い切り抱き締めた。
「嫌だ…」
「嫌と言っても仕方がないじゃないか。仕事だよ」
彼はとうとう声を詰まらせてしまった。
時折鼻を啜る音が聞こえる。
326:生.活.維.持.省2/3
09/06/20 21:43:58 yzo33TNp0
私は彼の背中に優しく腕を回した。
彼は私より体温が高くて、背中から手の平に伝わる温かさが酷く心地良かった。
私は彼の首元に顔を埋めて一つ思い切り呼吸した。
午後から暑くなるかも知れないと今朝のニュースで言っていた。
今はまだ正午前だが、少しずつそのような気配を見せている。
そのせいで彼は少し汗ばんでいたようで、首筋が少ししっとりとしていた。
汗臭いというほどではなく、いつもの彼の匂いがした。
清潔ながら、男らしさを感じさせる、私の大好きな匂い。
それをはっきりと記憶した私は、彼の肩に顎を乗せて窓の向こうに続くどこまでも平和な景色を眺めた。
先程通り過ぎた、あのきらきらした小川のほとりが良いと思ったが、ここでも別に構わなかった。
水色の空に、遠くの山々からもくもくとした入道雲が既に立ち上がっている。
午後からの暑さは、夕立が洗い流してくれるだろう。
車を停めている道は広い野原を一筋舗装したもので、私の視界に広がるのはひたすら緑色の芝生であった。
所々、林のように少し背の高い木が群生している所や、小さな花畑のようになっている所もあった。
平和に満ちた明るい景色、私達の仕事が維持している、素晴らしい景色だった。
その煌く世界がふいにぼやけた。
鼻の奥がつんと痛み、私の目からも涙が溢れ出していた。
悲しいとか悔しいとか、そういう負の感情のせいで流れたものでは決してなかった。
こんなにも美しい世界で、好きな人に殺してもらえることが酷く幸福に感じたのだ。
私が死ねば、この美しい世界が維持されていく。
皆の生活が維持されていくのだ。
生存競争と戦争の恐怖のない、幸せな世界を、彼は生きていけるのだ。
「ああ…、幸せだなぁ…」
私のその言葉を聞いて彼は体を離した。
再び私の肩を、但し今度はとても優しく、包み込むように掴み、じっと私を見つめた。
327:生.活.維.持.省3/3
09/06/20 21:44:26 yzo33TNp0
ああ、こここそ私が最も幸せな場所だ。
彼は拳で乱暴に自分の涙を拭うと、優しく私の頬に口付け、涙を舐めた。
くすぐったくて少し笑うと、彼も少し笑った。
そして今度は唇でキスをした。
彼が泣いている間に口の中に入ったのだろう、彼の唇は少ししょっぱかった。
それほど長い口付けでもなかったが、私にとってそれは今から永遠の幸せになる。
彼にとっては、一つの儚い想い出くらいで終わらせた方が幸せになれるだろうが、彼は優しいから、暫くは忘れないでいてくれるのだろう。
彼には悪いが、私はそれが少しだけ嬉しかった。
唇を離すと、彼は車のエンジンをかけ、ハンドルを握った。
「さっきの、小川のほとりだっけ」
彼は真っ直ぐ前を見てアクセルを踏んだ。
「うん、そう」
「…直ぐ着いちゃうな」
「うん、…直ぐだよ」
その日も、生活維持省の仕事は何一つの滞りなく終了した。
午後からの暑さを夕立が洗い流した、いつもと変わらない平和な一日であった。
328:生.活.維.持.省終わり
09/06/20 21:46:10 yzo33TNp0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
星.新.一やめられないとまらない。
329:風と木の名無しさん
09/06/20 22:07:14 p+Ndj4ej0
>>324
ぎゃあ! 萌える!
☆しんいちは話自体が面白い上に、不意打ち並みに萌えますよね
日本H協会のアニメのやつはご覧になりましたか?
声が素敵でオススメ
自分が声の人が好きなだけなんですけどねw
330:風と木の名無しさん
09/06/20 22:21:56 tZcKkdGeO
>>324
うわああまさかこのネタが読めるとは…GJ!
独り占めも萌えた。ありがとうございました!
331:324
09/06/20 22:38:09 SDw+ONYjO
携帯からなのでIDが違いますが失礼。
>>329
アニメがあるのですか!?
知りませんでした、情報ありがとうございます!
探して観てみます!
>>330さんもありがとうございます!
失礼致しました。
332:問題劇 MC→D
09/06/21 00:36:02 N5XNGlNt0
・半生注意
・最終回見て煮えたぎった情熱に任せて書いた。後悔はしていない
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
333:問題劇 MC→D 1/1
09/06/21 00:36:35 N5XNGlNt0
自分が彼と対峙することになるなんて、二ヶ月前までは思ってもみなかった。
記憶も何もかもを失って真っ白になった自分を、理想の司会者に作り上げた人物。
この白い部屋に唯一訪れる黒。この二年間もの間自分を導いてきた支配者だった彼と、
今自分は、初めて自分自身の意思で向かい合っている。
「時間だ」
この二年間、ずっと待ち続けていたのと同じその一言。
週に一度だけ、まだこの人に必要とされているんだ、と確認できるその言葉。
「行こうか、最後のザ・杭図章へ」
あなたが俺をスポットライトの当たるステージに立ち続けさせたのは、俺の罪を暴き、
今までふたりで必死に築き上げてきたはずの、俺にとっての唯一の居場所で、
罪を懺悔させ、公衆の面前で俺からすべてを奪うつもりだったからなのか。
切れ切れに、痛みを伴っては蘇る記憶に怯える俺を抱きしめてくれたのも、
居場所を与えてくれたのも、そこでMC上山という人格をプロデュースして生きていく術を与えてくれたのも、
すべては今日のこの日、復讐のためだけだったんだろうか。
「…」
斜め前、いつものように淀みなく歩を進める彼を見上げる。
彼は薬を持っているのだという。すべてが終わった後、恐らく自ら命を絶つつもりなのだ。
八年前の、あの日のように。
「そうはさせない」
口の中だけで、小さく呟く。
八年前の過ちは、あの悲劇はもう繰り返させない。
たとえあなたが、俺に復讐するつもりで近づいていたのだとしても。
この二年間、俺にはあなたしかいなかった。ずっとあなたに救われていたんだ。
だから今度こそ、あなたを助ける。
334:問題劇 MC→D
09/06/21 00:37:57 N5XNGlNt0
最終回後の妄想も膨らむばかり。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
335:風と木の名無しさん
09/06/21 05:30:04 FryNLiKyO
>>332
ひえぇ…!
ごちそうさまでした!
ずっとDMCだったが、最終回はMCD全開だったよな。
いいぞもっとやれw
336:風と木の名無しさん
09/06/21 06:09:24 VmoqL8UN0
>>324
ただでさえ後味の悪い話を、また何ちゅう切ない、救いのない話にすんねんw
子供の頃読んだ時には、なぜ間引きシステムが必要なのかという点に言及されないので、
釈然としないものが残った作品だが、その発想はなかったわ。
☆センセイも草葉の陰で微笑んでおられると思うよ。
「ひとりじめ」は知らないor記憶にないけど、機会があったら読んでみるね。
337:1/2
09/06/21 20:54:08 ByV+VqQY0
乳首が書きたくてやった。
ナマモノで書いたものですが、全て一人称です。
**************************************************
脳が中心から溶けてゆくようだ。全身の血液が一瞬で沸騰するような興奮とは違って─
─特にこの何ヶ月かにおける「仕事」中には味わえない、ぬるま湯のような温度の快楽。
ジュニアスイートのバスタブに二人で浸かり、全身ぴかぴかでいい匂いになった後のベッドの気持ちよさは格別だった。
ぱやぱやの手触りになった彼の少しくすんだ色の髪に、顔を押しつければシャンプーの花の香り。
割と彩度の高い自分のそれを掻き分ける彼の優しい指も、
さらさらの皮膚を触れ合わせながらシーツの滑る感触を楽しむのも、何もかもが淡い快楽に包まれている。
最初は大抵触れ合わせるだけのキスから始まる。
段々わざと音を立てて吸い合って、あとはもうキスというより、息が続く限り口の中の粘膜を舐め合う感じだ。
僕はキスが好きだし彼もそうなのかもしれない。
唇を合わせずに最初に舌だけを突き出して、いきなり絡めるところから始めるのも好きなやり方のひとつだった。
そして互いに胸元に両手を這わせれば、どちらともなく甘い声を上げてしまう。
彼は僕を焦らすのが好きで、首から段々と下がっていく両手がまずは筋肉を撫で回すように愛撫し、
中心に近付くと指の間隔を狭くして、少し膨れた僕の乳輪を丹念になぞる。
間に挟んでいる指の側面が触れるか触れないかのところで速度を上げてゆき、
僕が「もっと強くこすってしごいて、摘んで」とねだるまで焦らしてくるのだ。
彼が調子にのっている時は「ドコを」まで言わなくちゃいけなくて、
「僕のこりこりに固くなったピンクの乳首を」くらいは申告しないと触ってくれない。
彼は少し痛いくらいにされるのが一番感じるから、僕は自分ならあんあん言えるくらいの丁度いい愛撫をひたすら続けるだけ。
焦れた彼は僕の指に強く押し付けようとして体をくねらせる。僕達はキスを続けているから、一番好きな「噛んで」は禁止だ。
彼からのおねだりは「もっと強くぎゅっとして、ぐりぐりってやって」だけど、僕だって聞き入れたりしない。
結果としては仕返しに僕の乳首は触ってもらえないし、更にその仕返しで彼は爪を立ててもらえないわけだ。
次ページ最新レス表示スレッドの検索類似スレ一覧話題のニュースおまかせリスト▼オプションを表示暇つぶし2ch
3774日前に更新/500 KB
担当:undef