うら若き女性が改造されるシーン at SFX
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350:名無しより愛をこめて
04/12/07 16:44:32 bhmAnTog
>>1
関連サイト
>>【女性改造人間物語】 319氏、325氏によるSSが保管されているまとめサイト。
>>URLリンク(remodeledwoman.myfws.com)
>>【蜂女の館】 508(BeeFreak)による、蜂女改造SSの保管庫。
>>URLリンク(artofspirit.hp.infoseek.co.jp)
行けなくなってる。




351:名無しより愛をこめて
04/12/07 18:06:22 5U4V0P9n
>>350
両方ともちゃんと行けるけど?

352:350
04/12/07 18:16:24 xJeYW8T1
リンクが切れてるだけでした。スマソ

353:名無しより愛をこめて
04/12/07 23:03:56 KTLkjAPQ
そろそろPRIME氏の復活期待age!

354:名無しより愛をこめて
04/12/08 01:57:12 Z1BIZJEc
      ☆ チン        マチクタビレタ-

☆ チン  〃 ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ヽ ___\(\・∀・)< PRIMEさん、天野姉妹の改造は マダー? チョー期待!
    \_/⊂ ⊂_)_ \_________________________
  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
  |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:|  |
  |  改造手術台   .|/

355:名無しより愛をこめて
04/12/09 00:56:00 5xddb4if
>>354
上に乗っているのは怪人どんぶり少女とか(w

356:名無しより愛をこめて
04/12/09 02:14:58 xHsMF2Il
講談社版ライダーマガジンのアマゾンの号に載っていた蜂女のメイクシーンに驚愕。
一体どれだけの秘蔵スチールがあるのか。漏れも蜂女ファンの為、彼女のまだ見ぬ姿に思いは尽きない。
そして、岩本良子様の美しさ。ライダー本編での彼女の蜂女への改造シーンが是非、見たかった。
悔しい。


357:名無しより愛をこめて
04/12/09 06:18:09 wHdSc/jn
>>356
知ってると思うけど、公式ファイルマガジンに載ってたのとは別の写真。
URLリンク(www2.wbs.ne.jp)

TV版仮面ライダーの、女性怪人が登場する回の脚本はそのほとんどが、女性脚本家の
滝沢真理氏がつとめていて(蜂女、クラゲダール、ドクダリアン、ギリーラ等)、
彼女は当然ながら『女性怪人』に思い入れが無いものだから、他の怪人と大差ない
あっさりした描写になってしまっている。(たぶん平山Pが故意にそうしたんだろう)

もしも原作の石ノ森氏のテイストがそのまま生かされていれば、きっと蜂女にも
「元は普通の女性だった」という背景がドラマに生かされていたに違いない。
そして、改造シーンも・・・
(後になってそれを生かそうとしたのがスカイのサソランジンなんだろうが)

358:名無しより愛をこめて
04/12/09 16:53:03 z+c/zgKg
やはりサソランジンの改造シーンは、このスレのテーマに最もあった名シーンだと思う。
そこで、蠍女に改造される上村美也さんのSSを誰かかいていただけませんでしょうか。
何故、美也が蠍怪人の素体に選ばれ、どのように拉致されたのか。そして、改造シーンはエロ度たっぷりに…。
ただ、改造後の姿はいただけませんので、女性怪人としての魅力を出してもらえるとうれしいです。
オリジナルの設定歓迎です。

359:名無しより愛をこめて
04/12/09 17:36:12 xb+Kw+G4
>>358
>ただ、改造後の姿はいただけませんので、

あれは美しい女性がブサイコな怪人にされるからドラマになるのであって、
改造された身体を見つめて「何て美しいの!」なんて言った日にゃ、
悲劇もへったくれもなくなる罠。

360:名無しより愛をこめて
04/12/09 18:51:17 t0/9alBR
絵心がある方がいれば、サソランジンを今風にアレンジして頂けないだろうか。
美化する必要はないが、女怪人であることが分かるように。

361:名無しより愛をこめて
04/12/09 20:09:46 hB5nsKIB
>>358
確か「ネオショッカーと女性怪人の秘密基地」になかったかな?

>>360
そういう意図でデザインしたのが、クウガのゴ・ザザル・バなんだと思うよ。
あのデザインで満足できないなら、コミックだけど「ザ・グリーンアイズ」(巻来功士)の
刺恵(サソリの尻尾が生えた、下半身まる出し巨乳ボンデージファッションのねーちゃん)
みたいにするしかないんじゃないか?

362:名無しより愛をこめて
04/12/09 23:47:11 t0/9alBR
>>361
「ザザル」が確かにそうですね。
指摘されるまで、人間態のだるそーなお姉ちゃんしか覚えて無かったです。

363:名無しより愛をこめて
04/12/10 01:56:50 tLZuplo+
>>359
悲劇性に関しては、醜い姿に改造された所にあるのではなく、自らの意思に関係なく無理やり人外の異形に改造されてしまった点にあると思う。
女性怪人としての魅力を充分に発揮する為にも、サソランジンは女のセクシャリティーを維持した形でリニューアルされるべきなのではないだろうか。
美女を改造するシークエンスがある名編の代表として、是非、それは望みたい所なのだが・・・。

364:名無しより愛をこめて
04/12/10 03:13:30 iXoWWI78
サソランジン話が出たので妄想ネタ一つ(あまりエロくはありません)

雪山で遭難した筈の美也がなんであんなヒラヒラしたドレスを着てたのか
・・っていうのは「理不尽スレ」的なツッコミどころとも思えるんだけど、
案外、あの直前ゼネラル・モンスターとの間で、
「ニキータ」の、誕生プレゼントに銃を渡されるみたいなやりとりが
あったのかも、と思ったことがある。

大事な素体(適合者?)ゆえ丁重な治療・看護が行われていた美也。
やがて全快し、ゼネラルモンスターよりドレスを贈られ、
豪華な食卓で全快祝いのワインがふるまわれる
無邪気に喜ぶ美也。そのときゼネラルモンスターの目が
あやしく光り(以下略)

365:364
04/12/10 03:26:36 iXoWWI78
恨みの文句が「ネオショッカー!」ではなく「ゼネラルモンスター!」
だったあたりからも、改造前にあの二人に何かあったのかも、
という想像はできるのではないかと思う次第です。
(ついでに言うと、あの断末魔状態のときにはタイムリミットが
切れて脳改造の効果がどんどん出てきていたんですよね?
あのまま殺されずにいたら・・・)

366:名無しより愛をこめて
04/12/10 03:37:50 V5605csP
>>364
面白いけど、城北大学に暗殺に向かった時に着ていたワンピースならば、彼女が
改造された後に与えられた物ではないかい?
たぶんアリコマンドの素体か何かとして捕らえられた、別の女性の衣服と思われ。
少なくとも美也は、改造時は全裸(に見える)にシーツだ。

この時に、美也はなぜかゼネラルモンスターの名前と、自分が改造人間にされそう
になっていることを既に知っていた。
たぶん山で捕らえられ、意識を失う前にそう知らされたのだろう。
「山で遭難した」と言われているが、スカイ4話の放映は10月だから雪山ってわけ
じゃないだろう。むろん夏山でも遭難する時は遭難するが、美也の場合は単に拉致
されて行方不明になったことが「遭難」と報じられただけなんじゃないか?

関係ないが、岬ユリ子とその兄も、登山時にブラックサタンに拉致されたはずだ。
山で遭難し行方不明、というのは改造素体を拉致するための方便としてよく利用
される手段なんじゃないかな?

367:名無しより愛をこめて
04/12/10 04:57:07 tLZuplo+
>>366
手術台の上で、美也が自分の運命を知っていた事に興味を覚えることに同感です。
この前に美也に何があったのか。
捕らわれた彼女の肉体に対し、改造人間の適性を調べる様々なテストが行われたのではないでしょうか。
その中で、次第に美也は自分の身に起こる事に気付いていったというのはどうでしょう。
また、美也が一人で登山をしていたとは思えません。
同じ女子大の仲間達がいたはずです。彼女達も一緒にネオショッカーに捕らえられアリコマンドにでも改造されたのでは
ないでしょうか。それも美也の見ている前で。
もしくは、仲間(後輩)を守る為に自らを犠牲にした。始めは改造素体となる事などまったく知らずに、
正義感の命ずるままにゼネラルモンスターにその身を差し出したが・・・。
というのも自分的には萌えるのですが。


368:名無しより愛をこめて
04/12/10 10:38:32 sEVz6gN/
>>367
仲間のために自らを犠牲にしたのなら、
「改造人間なんて嫌です!」と叫んだりはしないと思われ。

369:名無しより愛をこめて
04/12/10 21:01:07 N0ey3ujW
オニャノコをゲルショッカー怪人に改造するとしたら、どんなのがいい?

370:名無しより愛をこめて
04/12/10 22:06:22 DT8+1OrT
ナメクジキノコ

371:名無しより愛をこめて
04/12/11 09:24:20 X8aVJXUG
カズノコミミズ(性器限定)

372:名無しより愛をこめて
04/12/11 13:51:11 5SuCI36K
>>367
女子大の仲間がアリコマンドに改造される・・・
誰かその話書いてください!


373:BeeF
04/12/12 02:42:27 ilXaiyaM
どうも。最近仕事が忙しくて、SSを書いてる暇がなく困っているBeeFです。
それでも何とか、以前約束しておりました、>>292さんのリクエストにお応えしての「女
工作員」ものを書き終えましたのでUPさせていただきます。
今回“バズゥ”(BUZZ=虫の羽音)という組織によって蜂女に改造されてしまうのは、桐島
ルイちゃん25歳、レベッカ・スウェンソンちゃん26歳、それに李閃花(リ・シャンファ)ち
ゃん19歳の、3人の美しき工作員です。
長い話ではありますが、お楽しみいただければ幸いです。

374:BeeF
04/12/12 02:43:41 ilXaiyaM
嵐が近いのか、鉛色の雲が重く垂れこめていた。
北回帰線に近いこの海域でも、冬の太平洋の波はやはり荒い。不揃いなサンゴ礁が切れ込
んだこの島の北端には、激しい波が叩きつけるように打ち寄せていた。その見上げるよう
な断崖の下、海の中から黒い3つの影が現れ、波から逃れるように岸壁にへばり着いた。
「…みんな無事?」
真っ先に上陸した、リーダーらしい人影が、水中メガネと腰に巻きつけた機械を外しなが
ら、他の2人に呼びかけた。ウェットスーツのフードを外すと現れたのは、濡れてクシャ
クシャになってはいたが、長く美しい金髪だった。ウェットスーツに包まれているのは、
見事なボディラインの悩ましい豊満な肉体。澄んだ青い目をした、20代半ばの絶世の美女
だった。
「…異常なし。」
「装備は全て無事。万事オーライよベッキー。」
手際よくウェットスーツを脱ぎながら、同時にそう答えたのは、まだ10代らしい小柄なシ
ョートカットの少女と、長身にロングヘアーの20代半ばの女。どちらもハッとするような
美貌の東洋人女性だ。
「よーし。これまでのところは上出来ね。海中に超音波探査器があったとしても、さっき
外したソニックジャマーがソナー音波を撹乱してくれたはずだから、連中はまだ、わたし
たちの存在に気付いてないはずだわ。」
身体にピッタリ密着した黒のボディスーツの上から、様々な器具の付いたホルスターやベ
ルト類を幾つも固定しながら、金髪の女性が言った。

375:BeeF
04/12/12 02:44:17 ilXaiyaM
「これからが正念場よ。各自別行動を取り、任務を遂行すること。作戦開始時刻は現在、
○七五○。作戦終了予定時刻は一七○○。この時刻に、この島の上空を回収用の輸送艇が
通り過ぎる手筈になっているわ。島の北端、獅子が鼻と呼ばれる岬に個人用の飛空バック
パックが3個投下されるから、必ず回収するように。救出した人質がいる場合は事前に信
号弾を上げること。」
二人の東洋人女性が同時に頷く。
「そして…これがいちばん大事なことだけど、今回の任務で無事生還できる可能性は30%
以下。これは今までの任務もそうだったから気にしなくていいけど、もしも連中に身柄を
拘束されたら、100%確実に改造人間にされてしまうわ。だからもしも捕まった場合は、
迷わず奥歯に仕込んだプラスティック爆弾で自決すること。万一、仲間が改造されてしま
った場合は、ためらわず殺すこと。一瞬の迷いが命取りになるわ。」
「ベッキー。」長い黒髪の女性が金髪のリーダーに尋ねた。
「もしも、3人とも生還できなかった場合はどうなるの?」
「明朝9時に、予定通りアメリカ海軍による核攻撃が始まるわ。果たしてそれで“バズゥ”
を壊滅させることができるのか。それとも、それが新たな悲劇の幕開けとなるか…それは
神のみぞ知る、ね。」

376:BeeF
04/12/12 02:46:50 ilXaiyaM
日本領土の最南端に近い、無人島“神ノ鳥島”。8キロ沖に停泊した工作船から、無数の
機雷をかいくぐってこの島に到達したばかりのこの3人は、各国政府が協力して極秘裏に
結成した特務機関XXAM(エグザム)の、諜報部員であった。メカニックに強いリーダ
ーのレベッカ・スウェンソン、26歳。射撃と武術の達人、桐島ルイ、25歳。そして香港の
犯罪組織・夜龍(イエルン)の元・暗殺者という異例の過去を持つ李閃花(リ・シャンファ)、
19歳。組織きっての腕利き諜報部員である彼女たちは、いま世界中をパニックに陥れてい
る謎の組織、昆虫人間帝国“バズゥ”の本拠地に、それぞれ任務を携えて侵入しようとし
ているところなのだ。
3日前、彼女たちは突然、組織のボスである“ダイモン”の前に呼び出された。スクリー
ンに黒いシルエットしか映さない謎の男。“ダイモン”とは古代ギリシアの守護神の意味
であるが、同時に悪魔(デーモン)の語源でもある。裏の世界のあらゆる情報に精通して
いるこの男が果たしてどちらなのか、彼女たちは判断しかねている。
3人が揃ったのを確認すると、“ダイモン”は単刀直入に切り出した。黒いシルエットの
背後に次々と新聞記事や写真を映しながら、今回の指令の背景を淡々と説明してゆく。
「よく来てくれた。諸君らもご承知の通り、世界は現在、今から2週間前に突如出現した
昆虫人間帝国“バズゥ”によって激しく混乱している。“バズゥ”は一般の女性を拉致し、
全身の細胞に昆虫の遺伝子を組み込んだ改造人間“インセクトサイバー”に仕立てて様々
なテロ活動に従事させる、謎の組織だ。10代半ばから20代の、若く美しい女性ばかりが誘
拐され、わずか半日後には改造人間に変えられて、テロの片棒をかつがされている。なぜ
女性ばかりを改造するのかは謎だが、残念ながら現代の医学では、改造された女性たちを
元の身体に戻すことはまったく不可能だ。」
長い黒髪の諜報部員、桐島ルイがギリギリと歯がみした。彼女もまた、高校時代の親友が
インセクトサイバーに改造された経験の持ち主なのだ。

377:BeeF
04/12/12 02:48:04 ilXaiyaM
「9日前に日本のテレビ局占拠によって姿を現わしたこの組織は、わずか5日間で首都東
京の全機能を麻痺させた。この間に拉致改造された被害者は優に6千人を越える。さらに
3日前、今度はアメリカ、イギリス、ロシア等先進12か国に対して一斉に、女性拉致とテ
ロ活動が始まった。ホワイトハウス襲撃等による国家機能の麻痺と、交通・通信規制によ
る被害総額は、少なく見積もっても全世界でざっと700兆ドル。拉致改造された被害者の
総数は、既に1万人近いものと推測されている。」
それは、文明世界の崩壊と言っても良い惨状だった。改造人間たちは国家中枢の襲撃と同
時に、報道機関の制圧を徹底して行った。インターネットによる情報網だけはかろうじて
まだ生きていたが、大手通信社やケーブルテレビネットワークは、テロ活動によって既に
ほとんど壊滅状態になっている。
「2日前のホワイトハウス襲撃で、アメリカ大統領はからくも難を逃れたが、補佐官と大
統領夫人が命を落とした。復讐にはやる大統領の命令で、アメリカ全軍に対して“バズゥ”
本拠地を意地でも突き止めろとの命令が出されていたが、今日の未明になって、それが判
明したとの情報が入った。」
3人の前のスクリーンに、日本近海の海図が映し出された。
「“バズゥ”のインセクトサイバーたちは、テロが終わると地中に溶けるようにして消え
るか、あるいは空に突然出現する黒雲の中に姿を消す。米軍はこの黒雲の中に“バズゥ”
の空間転移装置があると推測し、同日同時刻に別の場所に黒雲が出現した形跡が無いかど
うか、地上偵察衛星で世界中を調査した。もしもあるとすれば、そこに転移した可能性が
高いからだ。調査の結果、米軍が連中のアジトとして最も可能性が高いと判断したのが、
日本の南方洋上にあるこの、神ノ鳥島だ。」

378:BeeF
04/12/12 02:48:55 ilXaiyaM
スクリーンに映し出されたのは、テーブルのような形状の小ぶりの島の写真だった。
「周囲7.2キロ。まあまあの大きさだが、過去に人間が入植した形跡がない無人島だ。その
理由は、島全体が高さ50メートルの断崖で囲まれているためと、島の北東端の海中から火
山性のガスが噴出しており、硫化水素を含んだ猛毒の霧が島全体を覆うことがあるためと
思われる。そのため島の周囲のサンゴ礁の生育が悪く、港を作れる条件が整っていない。」
「秘密組織のアジトとしては、うってつけと言うわけね。」金髪のレベッカが言った。
「そうだ。本拠地が判明してまもなく、アメリカ大統領は、この島に対する核攻撃を海軍
に命じた。既に北太平洋上にはニミッツ級原子力空母“ビルクリントン”が待機し、水爆
を搭載したB?2スピリット3機がスタンバイしている。」
「そんな! 他国の領土に核を使用するなんて!」ルイが驚いて叫んだ。
「日本政府の内諾は、既に取りつけているらしい。だが、アメリカ政府内でもこの攻撃命
令に対し、疑問の声が上がっている。ひとつには、拉致改造された被害者を巻き添えにす
ることに対する懸念からだ。ホワイトハウス襲撃の際捕縛され、現在ニューヨークのシン
シン刑務所に収容されている3体のインセクトサイバーの中に、グレアム上院議員の娘が
含まれていることは知っていると思うが、この上院議員が中心となって、改造被害者の家
族たちが現在、『改造被害者は自らの意志で犯罪を犯した訳ではないため罪を問うべきで
はない』という運動を展開中だ。極めて強力なマインドコントロールを施された彼女たち
を、果たして罪に問うことができるかどうかは、法律学者たちの間でも意見が分かれてい
る。テロの被害者の中には『そもそも人間でなくなった者に人権を認めるべきではない』
という強硬意見を出す者までいて、まさに混乱状態だ。このように議論が定まらない中で、
彼女たちを一斉に葬り去ろうという大統領の判断は、まことに軽率と言われても仕方がな
い。グレアム上院議員が時期大統領選の有力候補と見なされていることもあって、政府内
には未だ慎重意見が根強い。」
諜報部員たちは思わずうなって考え込んだ。ルイだけはうん、うんとうなずいている。

379:BeeF
04/12/12 02:50:31 ilXaiyaM
「そしてもうひとつは、連中に対し核攻撃が本当に有効なのか、疑問視する声が上がって
いるからだ。非公式の情報だが、3日前にロサンゼルスで海兵隊がインセクトサイバーと
交戦した際、カリホルニウム核弾頭弾が極秘に使用されたがあっさり退けられたとの報告
が入っている。もしも連中に対し核兵器が効果無いのであれば、アメリカは他国に対して
核を使用したという、歴史上の汚点だけを背負うことになる。だからこそ、米軍は核攻撃
を行う前にもっと多くの情報が必要だと考えているのだ。」
「わかったわ、ボス。無人島に侵入してその情報を得て来るのが、今回の私たちの任務な
のね。」
「そうだ。諸君らに与えられる任務の内容は3つ。ひとつ目はアジトの全容の解明と、核
攻撃が行われた際の効果のほどの確認。ふたつ目は拉致被害者の状況確認と、改造技術の
解明、そして可能であれば被害者の救出。そして3つ目が、これまで全く姿を現わしたこ
とのない、“バズゥ”を背後で操る支配者の正体解明だ。」
3人の美しき工作員たちは、一斉にうなずいた。
「だが注意してくれたまえ。インセクトサイバーたちは頭部こそ人間の女性だが、そのボ
ディは想像を絶する能力を秘めている。人間相手のようなわけにはいかない。これまでに
確認されたインセクトサイバーは8種類。ひとまず順に、その能力を確認してみよう。」
スクリーンに、次々と女性の姿が映し出された。頭部はいずれも美しい女性だったが、ボ
ディは全身タイツをまとったかのような奇妙ないでたちで、羽根や触角などを備えている。
それは衣裳ではなく、改造された彼女たち自身の肉体なのだ。その証拠に、彼女たちの下
腹部にはいずれも剥き出しになった女性器が確認できる。

380:BeeF
04/12/12 02:51:30 ilXaiyaM
「まず、いちばん多く確認されているのがこの《シャドウアント》と我々が名付けている
黒いタイプだ。一般的な成人男性の100倍程度のパワーを備え、また自らの影の中に溶け
込むように消える能力を持つが、飛行能力や遠距離攻撃の手段は持っていない。まあ、戦
闘員のような位置付けと考えていいだろう。」
「次が《アレストスパイダー》。登山用ナイロンザイルの数十倍の張力に耐える強靱な糸
を口や指先から出す、捕縛用の改造人間だ。《マリオネットモスキート》は、十本の指か
ら伸ばした管で血を吸った人間を自由に操ることができる、洗脳用の改造人間。この2種
類は特殊工作用のインセクトサイバーと言えるだろう。」
「次に、《パウダリングモス》は空中を浮遊しながら、麻痺毒や腐食毒、さらには高火力
のガンパウダー(火薬)までも広範囲に撒き散らす毒蛾型の改造人間だ。同じく、幻覚剤を
含んだ鱗粉を撒き散らす蝶型改造人間が《ドリームバタフライ》。《ヒプノシーケイダ》
は催眠音波を発する蝉型の改造人間。この3種類は飛行能力と、広範囲に作用する特殊能
力を持っている反面、単体での戦闘能力は著しく低い。」
「逆に戦闘能力が高いのが、両腕を鋭利な刃物に変えて高速度で飛来する《ビヘッドマン
ティス》だ。首切りカマキリの名の通り、戦車の砲身すら一瞬にして輪切りにしてしまう。
また《アームドスコーピオン》は長い尻尾の先に毒針を持つ他、両腕を次々と武器に変形
させて攻撃するサソリ型の改造人間で、飛行能力こそ持たないが攻撃力だけでなく、防御
力にも優れた万能タイプだ。」

381:BeeF
04/12/12 02:52:36 ilXaiyaM
「そして、最も恐ろしいのがこの蜂型改造人間《アサルトビー》だ。高機動の飛翔能力を
持ち、厚さ10センチの鋼板をも貫く針を胸から連続して発射する。戦闘機キラーの異名を
持つ恐ろしい改造人間だ。胸の針は麻痺毒や溶解毒、洗脳薬などの発射にも使えるらしく、
一体で一個師団を充分壊滅させることのできる戦力を持っている。この8種類以外にも、
我々がまだ見たことのない改造人間が存在するかも知れない。さて。」
ここで、ダイモンはひと呼吸置いた。
「今回の任務だが、諸君ら女性工作員にとっては極めて過酷なものだ。一体で最新鋭戦車
を凌駕する戦力を持つ改造人間たちの群れに潜入しての調査。しかも身柄を拘束されれば
即、恐ろしい改造手術が待っている。だから今回の任務は強制ではなく、あくまで自由意
志での参加を求める。拒否しても、諸君らには何らの不利益もないことを保証しよう。い
かがかね諸君。まず、ルイ?」
ルイはすかさず答えた。
「行きます! 改造人間にされた人たちを元に戻す方法を、私がきっと見つけてきます。」
「閃花?」
「任務なら…行きます。」
「レベッカ?」
「愚問よね、ボス。わたしが今まで任務に失敗したことがあったかしら?」
「よろしい。作戦の開始は3日後。敵との交戦は可能な限り避け、任務の遂行に専念して
もらいたい。その他の情報は追って伝える。以上だ。成功を祈る。」

382:BeeF
04/12/12 02:53:42 ilXaiyaM
3日前“ダイモン”から与えられた任務を思い起こしながら、XXAMの工作員桐島ルイ
は、朝霧に包まれた神の鳥島北岸の断崖を登っていた。不思議なことに、この島の上空に
は海鳥の姿がまったく見えない。島全体を覆うこともあるという、火山性ガスのせいだろ
うか。植物の生育も概して悪く、島の最高峰アサヨ岳の北東面はほとんど禿げ山になって
いる。
岩肌に張り出した、ツルツル滑る植物の根を掴みながら、ルイはようやく断崖の上に達し
た。そこは、亜熱帯性の木々が繁茂する森だった。風向きの関係からか、このあたりの植
物の生育はそれほど悪くない。ルイは背の高い草の影に身を隠しながら、島の中央部目指
してゆっくりと進んだ。
“バズゥ”が彼女たち三人の侵入に気付いているかどうかはわからないが、島のあちこち
には侵入者を察知するセンサーや、監視カメラが無数に設置されているに違いない。まっ
たく見つからずにアジトまで辿り着けるという保証は無い。それでも、インセクトサイバ
ーとの交戦は極力避けなければならない。
ルイは、琉球骨法と劈掛(ひか)八極拳の達人である。相手が人間ならば、どんな大男にも負
ける気はしない。だが銃弾を跳ね返す頑丈な外骨格に覆われ、一撃で人間を屠る武器を持
つインセクトサイバーが相手では、いくら武術の達人といっても分が悪すぎる。接近戦を
身上とする骨法や八極拳では、相手にすらならないだろう。だが、遠距離攻撃を得意とす
る劈掛拳ならば、相手の不意をついて一撃を与えることは??おそらく一撃が限界であろ
うが??不可能ではないだろう。一撃必倒、それがインセクトサイバーと闘う際の絶対条
件であった。一撃で倒せなければ、こちらが反撃に耐えられない。もっともインセクトサ
イバーの外骨格に対しては、ルイの会心の一撃をしても、蚊が刺したようなダメージしか
与えられない可能性がある。しかしながら、彼女たち工作員には今回、絶対的な不利を覆
す、とっておきの武器があった。

383:BeeF
04/12/12 02:54:29 ilXaiyaM
ルイは空気のわずかな乱れを感知するカレントセンサーを片手に、用心しながら歩を進め
た。神経を研ぎ澄まし、周囲の全てに気を配りながら、ブーツが草に擦れる音も極力立て
ずに進んでゆく。
突然、カレントセンサーに2つの反応が現れた。ルイは急いで手近な木に音もなくよじ昇
り、樹上に息を潜めて敵の出現を待ち構えた。
真っ黒な人影が2体、ルイのいる方向に歩いてきた。手には何も持っていないが、周囲を
キョロキョロ見回しているところを見ると、哨戒中なのだろう。真っ黒なボディからする
と、おそらくシャドウアントと呼ばれる戦闘員と思われるが、日本やアメリカで確認され
た戦闘員が改造前の素顔をそのまま露わにしていたのに対し、ルイの目の前にいる2体は、
顔面がすっかりマスク状のもので覆われ、目だけをギラつかせている。
ルイは、ふと奇妙なことに気がついた。インセクトサイバーたちのボディは、衣裳ではな
く改造された素肌のはずである。しかしながら目の前の2体の戦闘員は、どうやら黒い全
身タイツ状の衣裳をまとっているようなのだ。
《どうしてかしら? ここが亜熱帯のせい?》ルイは首をひねったが、その時ふと良いアイ
ディアが浮かんだ。彼女たちのボディが衣裳ならば、それを奪えば戦闘員に変装できるの
ではないだろうか?
ルイは、右手に拳銃を取った。愛用のワルサーPPKではなく、小ぶりの奇妙な形の銃だ。
そして左手には、丸い弾のようなものを握った。
戦闘員たちが足元まで接近するのを辛抱強く待ち、タイミングを見はからって右手の銃を
前方遠く目掛けて撃った。

384:BeeF
04/12/12 02:55:48 ba+nVxex
キュルルルルルル!!
かん高い奇妙な音が宙を突っ切って飛んだ。敵の注意をそらせるホイッスル・バレット(鏑
弾)だ。それと同時に、ルイは左手の弾薬を勢いよく地面に叩きつけた。たちまち、もうも
うたる煙幕が周囲を包み込んだ。
ルイは木から飛び降り、低い姿勢から身体をムチのようにしならせて、一体目の戦闘員に
真横から脚払いを食らわせた。いくら頑丈な改造人間と言えども、その体重は人間と変り
がない。不意を突かれれば転倒する。前のめりになった戦闘員の額めがけて、ルイは渾身
の“穿掌”を繰り出した。
「はァっ!!」
ルイの手のひらが戦闘員の額にヒットした途端、パーン!という炸裂音がはじけ、戦闘員
は額から煙を上げて倒れた。その音に振り向いたもう一体の戦闘員の前に、ジャンプした
ルイが飛び降り、後方に大きく身体をしならせながら、戦闘員の額めがけて両の手のひら
を同時に叩き込んだ。「やぁッ!!」
激しい炸裂音と共に、2体目の戦闘員も煙を上げて倒れた。ルイの手袋に仕込まれていた
のは、対インセクトサイバー用の秘密兵器、サイバーバスターであった。
「あらら? ずいぶんあっけなかったわね。」
頑丈なボディを持つインセクトサイバーたちにもひとつだけ、弱点と呼べる箇所がある。
それは、触角が生えた額の根元であった。サイバーバスターは強力な超音波パルスを改造
人間たちの知覚神経に与え、神経伝達を遮断するという武器で、神経の集中する額に直接
ヒットすれば、どんな改造人間でも一瞬にして卒倒させることができる。ルイたち3人の
工作員の手袋とブーツにはこのサイバーバスターが仕込まれ、攻撃と同時に発動するよう
調整されていたのだ。

385:BeeF
04/12/12 02:56:41 ba+nVxex
ルイは、気絶した2体の改造人間たちを引きずって、木の陰に隠れた。完全に気絶してい
ることを確認してから、そのボディを検分した。2体とも華奢で小柄な女性で、胸や腰の
発達も未熟である。まだ10代前半らしい。頭部を覆うマスクを苦労して剥ぎ取ると、愛く
るしい東洋人少女の顔が現れた。額には改造人間らしく、触角が生えている。
ルイは自分の額のゴーグルを下ろし、脇に付いたダイヤルを調節した。背中のバックパッ
クに内蔵された小型スーパーコンピュータに収納された、“バズゥ”の拉致被害者たちの
データベースにアクセスしたのだ。たちまち、目の前にある少女の顔が分析され、その素
性がゴーグルの裏側に表示された。
「竹内さくら、13歳。大友絵美、12歳。…ひどいわ。まだ中学生じゃないの!」
こんないたいけな少女たちを改造人間に変えてしまう“バズゥ”の非道さに、ルイは改め
て怒りが込み上げるのを感じた。
「ゴメンね。いつか必ず、あなたたちを人間に戻してあげるからね。」
ルイはそう詫びて、2人の中では身体が大きい竹内さくらの全身タイツを脱がせ始めた。
タイツは見たことのない非常に薄い生地だったが、極めて伸縮性に富み、しかも強靱だっ
た。
「…あれ? これは…どういうことなの!?」
タイツを脱がせながら、ルイは思わず頭をひねった。何と、タイツの内側に隠れていたさ
くらのボディは、全身が真っ青な皮膚で覆われ、乳房が黄色と黒の同心円模様で彩られた、
蜂型改造人間《アサルトビー》のものだったからだ。
もう一人のタイツも脱がせてみた。こちらは《マリオネットモスキート》だった。
《どういうことだろう。改造された後で、黒タイツを着て訓練していたのかしら?》

386:BeeF
04/12/12 02:57:57 ba+nVxex
インセクトサイバーたちは、どんな環境の元でも全裸で行動できるよう、肉体を調整され
ているはずだ。なぜわざわざ、改造した身体の上からタイツを着なければならないのか、
どう考えてもわからない。とりあえず悩むのはやめて、ルイは自分のボディスーツの上か
ら、蜂女・竹内さくらが着ていた全身タイツをまとおうとした。
おかしい。なぜかタイツに拒絶されるかのように、脚が通らない。色々試行錯誤してみた
結果、服を着たままではこのタイツは着用できないということに気付いた。
ルイははたと困ってしまった。様々なギミックを備えた作戦行動用ボディスーツを、ここ
で破棄するのは惜しい。だがタイツに着替えなければ、戦闘員に偽装することはできない。
意を決したルイは、ボディスーツを黙々と脱ぎ始めた。ブラジャーも、ショーツも脱ぎ捨
てて生まれたままの姿になった。そうしないと、タイツによって拒絶されてしまうのだ。
全裸になったルイの身体が、タイツの中にピッタリと包み込まれた。身長168センチのル
イはさくらよりも20センチ近く高かったが、このタイツはまるでルイのためにあつらえた
かのごとく、彼女の身体にピッタリとフィットした。
《ああッ…何だろうこのタイツ! 着ているだけで、身体が、ほてるように気持ちいいわ!!》
まるで全身を誰かに抱きしめられているかのような快感に襲われ、ルイは自分の乳房と股
間を押さえたまましゃがみ込んでしまった。乳首が勃起して固くなり、股間が潤んでくる
のが自分でもわかる。ルイはそのまましばらく、太股を擦り合わせ、二の腕を撫でまわし
ながら、不思議な恍惚に酔っていた。
《…いけないいけない! 何をしてるのよルイ。任務を忘れちゃダメでしょう!》
我に返ったルイは、自分を叱咤しながら立ち上がった。タイツの上からバックパックやホ
ルスター、サイバーバスターが仕込まれた手袋などを身につけ、頭部を覆う黒いマスクを
被って戦闘員を装ったルイは、2体の少女サイバーたちを木の陰に隠したあと、島の中央
部目がけて歩きだした。全身を蝕む、奇妙な快感に絶えず悩まされながら。

387:BeeF
04/12/12 02:58:58 ba+nVxex
工作員3人の中で最年少の李閃花(リ・シャンファ)は、島の周囲をぐるりと回り、海蝕
洞(波によって穿たれた洞窟)を探した。“バズゥ”のアジトが地下にあるのなら、必ず
下水の排水口が海に向かって存在するはずだと考えたのだ。もちろん、そんなものを目立
つところに作るはずがない。あるとすればそれは、隠れた洞窟の中に違いない。閃花の読
み通り、3つ目の海蝕洞の中に下水口は発見できた。
異様な匂いが漂う狭い通路を、閃花は用心しながら進んだ。下水道から標的に侵入するの
には慣れている。だが注意を払わないと、少しの物音でも遠くまで大きく響く空間だ。幸
い、下水はほとんど流れていない。足元が不快な水音を立てる心配は無さそうだ。
ふと、左手のカレントセンサーが反応を示した。閃花は身を引き締め、前方に拡がる闇を
キッと見据えた。
突然、閃花目がけて何かが飛んできた。動物的な本能で、それを素早くかわす。続いて2
発目、3発目。かわし切れなかった3発目を左手の手甲で受け流そうとした閃花は、無数
の糸のようなものが左腕にからみつき、きつく締め上げるのを感じた。
「…捕まーえた。」
前方の闇の中から現れたのは、黒いボディに黄色の縞が入った長い手脚を持った、スレン
ダーな美少女だった。妖しくセクシーに腰を振りながら、閃花の方にゆっくりと近づいて
くる。年の頃は17歳くらい。黒髪をボブカットにし、目鼻立ちのはっきりした東洋人であ
る。閃花の左腕にきつく巻きついた糸は、少女の十本の指先から伸びていた。捕縛用改造
人間、アレストスパイダーの一体らしい。
閃花は、右手でゴーグルのダイヤルを回した。目の前のインセクトサイバーの素性が即座
に分析され、表示される。笠井真奈美17歳。日本人。女子校の修学旅行で東京にやって来
た際、観光バスごとクラスメートと共に拉致されたらしい。

388:BeeF
04/12/12 02:59:41 ba+nVxex
「ずっと、誰かが来るのを待っていたの。もう逃げられないわ。あなたは、これからわた
しと同じ改造人間になるのよ。」
「……」
妖しい微笑みを浮かべながら、糸を少しずつたぐり寄せ、アレストスパイダーが接近して
くる。閃花は少しもあわてず、蜘蛛女が自分の間合いに入って来るのを待った。
充分な距離に近づいたのを見はからって、閃花は拳銃を取り出した。
「無駄よ。わたしたちに銃は効かないわ。」
「…やってみなければ、わからない。」
蜘蛛女はクスリと笑った。閃花は無表情のまま、引き金を引いた。ただし、蜘蛛女に対し
てではなく、自分の左腕から伸びる蜘蛛の糸目がけて。
ボウン! 猛烈な臭気とともに、白い煙が上がった。それはただの銃弾ではなく、蛋白質を
溶かす強力酵素弾だった。糸がゆるんだ途端、閃花の身体は宙に舞った。
驚く蜘蛛女の目の前に着地した閃花は、蜘蛛女の眉間目がけて攻撃を繰り出した。
香港の犯罪組織“夜龍(イエルン)”の暗殺者であった閃花の闘法、殺手飛舞(サァソフ
ェイウー)は、インドネシアの暗殺武術シラットを空中戦に特化する形で発展させた、独
自の闘法である。接近戦に長けたシラットとは異なり、身体のバネを生かした遠距離から
の攻撃を得意とし、鷹翔飛舞、萬蜂飛舞、蝴蝶飛舞など幾つもの型を持つが、どれもシラ
ット同様の一撃必中即離脱を特徴としている。

389:BeeF
04/12/12 03:00:36 ba+nVxex
あでやかに宙を舞った閃花が蜘蛛女に加えた一撃は、鋒針(フェンジェン)と呼ばれる長
さ15センチほどの鋼鉄の針だった。どんなに強固な外骨格であれ、接合部には必ず耐久力
の弱い部分がある。閃花は最も装甲が弱いと思われる、まぶたの上の急所めがけて、機械
のように正確に鋒針を突き刺したのだ。
「ギャァアアアアアッ!!」
まぶたから大脳の奥深く、鉄の針を打ち込まれ、蜘蛛女は激しい悲鳴を上げてのけぞった。
閃花は素早く飛びのき、充分な間合いを取って第二撃に備えた。だが、その必要はなさそ
うだった。
「イヤ! やめて! 改造人間なんてイヤだぁ! 助けて、助けてママ!」
蜘蛛女は頭を抱えて身体を激しく痙攣させ、泣きながら悲鳴を上げている。どうやら閃花
の一撃でマインドコントロールが一部解け、改造された際の記憶が甦ったらしい。
「やめてェッ! 改造されるのはイヤだぁッ!あッ!アアッ!」
汚水にまみれ、のたうち回って苦しむ蜘蛛女に、閃花はゆっくりと近づいた。
「…可哀想に、ずいぶん苦しんで。でも、もう、それも終わり…」
閃花は無表情のままそう言うと、蜘蛛女のまぶたに刺さった鋒針を掴み、渾身の力を込め
てグサッ!と押し込んだ。
蜘蛛女は白目を剥き、口から泡を吹いて、動かなくなった。
閃花は鋒針を蜘蛛女の脳から抜き取ると、ハンカチで拭い、肱のホルダーに再びしまい込
んだ。こと切れた蜘蛛女に一瞥を加えると、閃花はそのまま何もなかったかのように、下
水道の奥を目がけて再び歩み始めた。

390:BeeF
04/12/12 03:01:51 JOhLxWhr
3名の工作員のリーダーであるレベッカ・スウェンソンは、沢沿いに島の中央を目指して
いた。いくら断崖に囲まれたテーブル状の島とはいえ、流れ出る川はある。断崖の裂け目
に小さな沢を見つけたレベッカは、チョロチョロと水が流れるその沢に沿って歩き出した。
歩きはじめてすぐ、改造人間たちが残した踏み跡が見つかった。
「How lucky I am! わたしってば何て運がいいの!このまま行けば、アジトの入り口に辿
りつけるはずね。」
沢伝いの道は、障害物が少なく見通しが良い。おそらくルイや閃花よりも早く、アジト内
部に侵入できるだろう。
彼女たち工作員に与えられた3つの使命のうち、改造手段の解明と拉致被害者の救助はル
イが、“バズゥ”支配者の正体解明は閃花が、それぞれ主に担当する手筈になっていた。
レベッカの主な任務は、アジトの規模全容と兵力、耐久力の解明である。アジト内部をく
まなく調査する必要があり、そのためには他の2人よりも早く、アジト内部に侵入しなけ
ればならない。
そこでレベッカが打った手段は、一見無謀とも思えるものであった。あえて敵の前に身を
晒し、正面から乗り込んでゆく。どうせ島中に仕掛けられたセンサーによって、彼女の潜
入は遅かれ早かれバレてしまうはずだ。それならば逆に目立つ行動を取り、敵が自らアジ
トの扉を開くように仕向ければいい。自分ひとりが身を晒せば、ルイや閃花が無事アジト
に潜入するための陽動にもなる。“バズゥ”が自分たちを殺すはずがないことを、レベッ
カはよくわかっていた。インセクトサイバーの素体にするべく、自分たちから門を開いて
くれるはずだ。アジトに乗り込んだ後で騒ぎを起こし、それに乗じて姿を隠せば良い。
見通しの良い沢道は、敵から見つかりやすくなる反面、こちらからも敵の襲撃を察知しや
すいというメリットがある。レベッカの左手のカレントセンサーは既に、沢の前方左右に
生えた木々の上に、それぞれ2体の改造人間が待ち受けていることを察知していた。いく
ら影に溶け込んで隠れても、カレントセンサーからは逃れられない。

391:BeeF
04/12/12 03:02:28 JOhLxWhr
レベッカは何事もないかのように、そのまま沢道を進んだ。彼女のボディスーツの両肩に
は、奇妙なアンテナのようなものが伸びている。時折、パチッ、という火花が彼女の頭上
に閃めく。
レベッカが敵の真下に達したとたん、4つの黒い影が彼女目がけて舞い降りてきた。レベ
ッカは思わずニヤリ、と笑った。
《来た来た来た来た……来たッ!》
バリバリバリバリバリッ!! 黒い4つの影がレベッカに触れようとしたとたん、凄まじい音と
ともに彼女の頭上を白い電光が走り、4つの影を射貫いた。はじかれたように白煙を上げ
て地上に叩きつけられる影。
「はあッ!」
レベッカは素早く飛びのき、メリケンサックのように両のこぶしにはめたサイバーバスタ
ーを、倒れた4体の改造人間の額めがけて次々と打ち込んだ。わずか数秒の後、レベッカ
の周囲には美しい女性の頭部を持った4体のシャドウアントたちが、痙攣しながら転がっ
ていた。
「どう? わたしの新発明、電磁銀雷(マクスウェルズ・シルバー・ハンマー)の味は?」
レベッカはショルダーパッドを開き、ウズラ卵大の使用済みバッテリーを取り出して投げ
棄て、新品と交換した。彼女の肩から伸びたアンテナは、彼女の周囲に電磁フィールドを
張り巡らし、侵入者に80万ボルトの強烈な電撃を見舞わせるためのものだった。
《わたしってば運がいい! こんな見事な実験、研究室じゃ到底できないものね。》
技術者としても超一流の腕を持つレベッカは、この他にも様々な発明品を身につけている。
サイバーバスターや、彼女たちを無事に島まで運んだソニックジャマーもまた、彼女の発
明による新兵器であった。

392:BeeF
04/12/12 03:03:14 JOhLxWhr
レベッカはアメリカの大富豪の令嬢で、若干9歳でマサチューセッツ工科大に入学した天
才である。IQは300。16の博士号を持ち、取得したパテントは優に千件を超える。スポ
ーツも万能で、B98・W62・H98のスーパーモデル級ナイスバディ。北欧系の名字が示
す通り、ゆるやかなウェーブのかかった見事な金髪と、澄んだ青い目が魅力的な絶世の美
女だった。加えて、快活で人当たりの良い性格。ついたあだ名が“ミス・パーフェクト”。
そのミス・パーフェクトが諜報部員を職業として選んだのは、ひとえに「自分のあり余る
才能を遺憾なく発揮できる場」を求めてのことであった。それ以来、レベッカは人並み外
れた強運に守られながら、与えられた全ての任務をそつなくこなしてきた。もっともその
強運というのは、彼女の卓越した観察眼と洞察力のたまものに他ならなかったのだが。
気絶したシャドウアントたちをそのままにして、レベッカは沢道をさらに進んだ。彼女の
期待に反して、改造人間たちの歓迎はそれ以降は無かった。木々が次第にまばらになり、
標高273メートルのアケヨ岳の中腹に差しかかる頃、巨大な岩の陰に、アジトに通じるら
しい金属の扉が現れた。
「…なんだ。お出迎えは無しか。」
中からインセクトサイバーたちが大挙して出て来るのを期待していたレベッカは、残念そ
うにそうつぶやいた。扉が中から開かないのならば、外から無理やりこじ開けるしかない。
だがチタン合金のような材質で作られたその扉は、彼女の持つプラスティック爆弾では到
底破壊できそうになかった。
レベッカは工具で扉の脇にあった制御盤の蓋を力づくで開き、左腕に篭手のごとく取りつ
けられているコンソールのカバーを開いて、制御盤とコードで接続した。コンソールはバ
ックパックの中にある、小型スーパーコンピュータに繋がっている。コンソールのキーボ
ードを右手で叩きながら、レベッカは扉を制御しているアジトのシステムコンピュータへ
のハッキングを開始した。腕づくで開かないのなら、開くように命令するまでだ。

393:BeeF
04/12/12 03:03:53 JOhLxWhr
《…ダメだわ。思った通り、見たことも無いアーキテクチャーが使われている。宇宙人の
テクノロジーだという噂は本当かも。もう! わたしってば何て運が悪いの!》
何度チャレンジを繰り返しても、システムへのアクセス権は取得できなかった。途方に暮
れていたレベッカはしかし、カレントセンサーが急に反応を示したのを見逃しはしなかっ
た。
「!」
バリッ! 電磁銀雷が閃き、勢いよく伸びてきたムチ状の何かをはじき飛ばした。レベッカ
はコンソールから素早くコードを引き抜き、岩陰にサッと身を隠した。
藪の中から姿を現わしたのは、全身が赤い全身タイツのような皮膚で覆われた、大柄な黒
人の美女だった。ふくよかな胸を持った、筋肉質の堂々とした体躯。股間に開く大輪の花
びらを恥ずかしげもなく露出したその姿は、まるで野生の女神のようであった。尻からは
長いムチのような尻尾が伸びている。さっきレベッカを襲ったのもこの尻尾らしい。イン
セクトサイバーの中でも最も戦闘力と防御力に優れた、アームドスコーピオンである。
《…わたしってば、やっぱり運がいいわ! このままじゃ、らちが明かなかったものね。》
レベッカはゴーグルのダイヤルを操作して、目の前の改造人間の素性をサーチした。ミラ
ンダ・ジョンソン、26歳。陸上界のトップアスリートである。
《一般人よりも瞬発力がありそうね。ちょっとやっかいな相手かも。》
サソリ女は胸を張りながら、岩陰のレベッカに向かって落ち着いた声で呼びかけた。
「何をコソコソ嗅ぎ回っているんだ? 下等な人間め。早くお前も、我々インセクトサイバ
ーの仲間入りをするがいい。」
サソリ女の手首が徐々に変形し、長い鎌のような形になってゆく。両の手首を互いに組み
合わせると、刃渡り1メートル近い巨大なハサミが完成した。
レベッカは胸のホルスターから、愛用の拳銃を取り出した。シグ・ザウエルP230。だが装
填されているのは、普通の弾丸ではない。
レベッカは右手に拳銃を構えて、岩陰からゆっくり姿を現わした。左手で腰のベルトをま
さぐり、何かを取り出す。
サソリ女は、あきれたようにフッ、と鼻を鳴らした。
「やめておけ。私に銃は効かん。」

394:BeeF
04/12/12 03:04:55 JOhLxWhr
その言葉が終わらないうちに、レベッカは銃を撃った。2発。3発。サソリ女はハサミを
振り上げ、余裕でそれを跳ね返そうとしたが、1発がハサミのすき間をかいくぐり、サソ
リ女の顔を直撃した。
「…グ、グワあッ!」
シュウシュウと煙を上げるサソリ女の顔。両手のハサミを解除したが、あわてているので
元の形にはなかなか戻らない。レベッカが撃ったのは改造人間たちの皮膚を溶かすことが
できる、強力酵素弾だった。もちろん銃弾に詰められた少量の酵素弾では、たいしたダメ
ージを与えることはできない。だが目潰しとしての役は充分に果たす。
サソリ女の尻尾が、レベッカ目がけて襲いかかってきた。レベッカは素早くそれをかわし、
左手のチェーンウィップ(鎖鞭)を放って尻尾をうまくからめ取った。レベッカはそのまま顔
を覆って苦しむサソリ女の正面に移動し、振り上げた片足を、渾身の力でサソリ女の額め
がけて振り下ろした。
「やあッ!!」
かかと落としが決まると同時に、ブーツに仕込まれたサイバーバスターが発動した。
パアン! 鋭い炸裂音とともに、サソリ女は地面に倒れ伏した。
「…ふうッ。ざっとこんなもんね。」
ふと思いついたことがあり、レベッカは気絶したサソリ女を引きずって、扉の前に再び座
り込んだ。コンソールを扉と接続した後、サソリ女の背中を支えて扉の前に立たせた。
『…同志と確認。扉を開きます…』
小さな少女のような愛らしい音声が響き、あっさりと自動扉が開いた。
「やっぱりこうなっていたのね。サソリさん、扉まで開けてくれてアリガト! さっきのシ
ステムの反応で、ハッキングの目星もだいたいついてきたわ。」
レベッカはサソリ女を扉の外に放り出すと、薄暗いアジトの内部に乗り込んでいった。

395:BeeF
04/12/12 03:05:46 JOhLxWhr
それよりも少し後、ルイはアジトの正面扉に近い場所に辿りつき、周囲を伺っていた。
いくら戦闘員の衣裳を奪ったといっても、ホルスターやバックパックを身につけたその姿
はちょっと目立ち過ぎる。それに、顔全体を覆う黒いマスクがどうにも息苦しい。不快と
いうわけではない。逆にマスクを着けているだけで顔が熱くほてり、例えようのない快感
に苛まれるのだ。このままじゃいけない! 快感をふっ切るようにマスクを剥ぎ取ったルイ
は、戦闘員に偽装したまま潜入するのを諦めた。だがボディスーツを脱ぎ捨ててしまった
以上、奪ったタイツを着たままで行動を続けなければならない。
そのタイツは、工作員常用のボディスーツ以上に、軽く丈夫で動きやすい素材でできてい
た。暑さ寒さも感じない。これまで見たことのない素材だったが、工作員の衣装としては
最高のものに思われた。
《これを着たまま持って帰ってやろう。ベッキーもきっとよろこぶぞ。》
固く閉ざされた正面扉に辿りついたルイは、付近をくまなく捜索した。岩に偽装した、空
調の吹き出し口を発見した。グリルを外して内部を確認する。通風管は一辺50センチほど
の矩形だった。人間が通るのに充分な広さがある。
「よし!」
ルイは通風口に潜り込み、真っ暗な送風ダクトの中を、腹這いになって進んでいった。ダ
クトは上へ下へと不規則に折れ曲がっていたが、工作員の訓練を積んだルイにとっては何
でもない。途中、何箇所か巨大な送風扇に行く手を遮られたが、ある時は迂回し、またあ
る時は送風扇を解体しながら、進路を切り開いていった。
ルイはただ、闇雲に動き回っていたわけではない。迷路のようなダクトの中をどれだけ進
んでも、彼女は常に自らの現在位置を正確に把握していた。東西南北の方向、自分のいる
現在地点の標高、それらを踏まえながら、ルイはアジトの内部構造を自分の身体で理解し
ようと努めていたのだ。ルイの目的地は、拉致された女性たちが収容されている場所と、
改造手術室であった。それらはおそらく、深い階にあるに違いない。ルイは目星を付けた
場所を目指して、可能な限り急いだ。

396:BeeF
04/12/12 03:07:26 avGwDP0O
戦闘員のタイツをまとったルイの身体は、相変わらず奇妙な感覚に苛まれていた。ほてる
ように熱くなったかと思うと、むず痒い感覚に包まれる。じんじんとした痺れが全身を襲
ったかと思うと、不意に感覚が無くなって自分の身体とは思えなくなる。特にふくよかな
両の乳房が、きつく締め付けられるような、誰かに絶えず揉みしだかれているような、不
思議な感覚を強く感じていた。
「あッ…!!」
全身が、今度は強烈な快感に襲われた。ルイは歩みを停めて全身を固くし、その快感に必
死で耐えた。乳首が固くなり、股間は自ら分泌した蜜で既にグショグショになっている。
数分後、ようやく快楽の嵐が去り、ルイは顔を真っ赤にほてらせながらヨタヨタと進み始
めた。
《やっぱり、このタイツは普通じゃないわ。早く別の衣装を手に入れて脱ぎ捨てないと!》

前方から、ブオンブオンと鳴る風の音に混じって、女性の悲鳴が聞こえてきた。
《あそこね!》
ルイは悲鳴のする部屋を探し出し、天井の送風グリルのすき間から、部屋の内部を覗き見
た。
「…やめて …お願いです…お願いだから許して下さい!」
「…助けて! あなた! 助けて! イヤあああッ!!」
「イヤだーッ! イヤだイヤだ! 誰か助けてェッ! お願いッ!」
泣き叫ぶ全裸の女性が何人も、手術台のようなものに手足を縛られたまま、手術台ごとベ
ルトコンベアーに乗せられて運ばれてゆくところだった。彼女たちの行く手には、ぐぉん
ぐぉんとうなる巨大な機械がトンネルのように待ち受けていた。女性の一人が機械に飲み
込まれると、中から強烈な光がまたたき、悲痛な女性の悲鳴が聞こえる。それが終わると、
3箇所ある出口のいずれかから、女性を乗せた手術台が吐き出されてくる。
機械を操作していたシャドウアントのひとりが、ひとつ目の出口から出てきた20代の東洋
人女性に近寄って、冷たく言い放った。
「残念だったわね。あなたは改造不適格と判断されたわ。我らが偉大な支配者の栄養とな
れることに感謝なさい!」
ベルトコンベアーの先は、奈落の底へと通じていた。東洋人の女性は手術台に乗せられた
まま、凄まじい悲鳴を上げて暗闇の奥へと落ちていった。
「……キャアアアアアアッッッ!……」

397:BeeF
04/12/12 03:08:33 avGwDP0O
ふたつ目の出口から、今度は18歳くらいの白人女性が出てきた。ブルネットの髪のとびき
りの美女だ。別のシャドウアントが彼女に向かってこう言った。
「おめでとう。あなたは“バズゥ”のインセクトサイバーとして選ばれたわ。これから改
造手術を受けて、わたしたちの仲間に生まれ変るのよ。」
「イヤあッ! イヤッ!やめて! 助けて! 改造人間なんてイヤだぁッ!」
白人女性を乗せた手術台はそのまま、隣の部屋に続く穴へと消えていった。
《どうやらここは、改造素体の選別室なんだわ。あの向こうに、改造手術室があるのね。》
ルイは怒りがふつふつと胸の奥に込み上げてくるのをこらえながら、周囲をよく観察した。
囚われの女性たちを助けたいのはやまやまだが、部屋の中にはシャドウアントが9体、護
衛のアームドスコーピオンが3体もいる。飛び出していって勝てる相手ではない。ルイは
じっと、チャンスの時を待つことにした。
3つ目の出口から出てきた20歳前後の金髪の白人女性は、さらに別の機械の中へと運ばれ
ていった。プシュウウ!という音が響き、機械から出てきた女性の身体は、ルイが遭遇し
た戦闘員と同じ、黒いタイツを全身に着せられていた。顔をマスクですっぽり覆われたま
まウッ、ウッとすすり泣く女性に向かって、シャドウアントがこう告げた。
「あなたは、インセクトサイバーの“候補”として選ばれたわ。今から24時間、その改造
タイツをまとってこの島で過ごしなさい。そのタイツの裏側には、素体を選別改造する特
殊なナノマシンが散布されているの。タイツが発する選別刺激にみごと身体が応えること
ができたならば、あなたの身体はタイツによって予備改造され、インセクトサイバーの一
員となれるわ。後で本改造を受けるために、ここに戻ってらっしゃい。もしもタイツに選
ばれなければ、タイツに全身を蝕まれて狂い死にするまでよ。」
黒タイツを着せられた女性は、手術台から解き放たれ、シャドウアントの一体に連れられ
て嗚咽しながら部屋を出ていった。
この一部始終を見て、ルイは激しいショックを受けた。
《何ですって! 改造タイツ!? それじゃあ、これを着たままでいるとインセクトサイバーに
改造されちゃうって言うの?》

398:BeeF
04/12/12 03:09:22 avGwDP0O
ルイは、あわててタイツの首回りをはだけてみた。薄暗いダクトの中ではよくわからなか
ったが、肌の色がすっかり変色していた。特に乳房の回りが奇妙な模様になっている。ル
イは顔面蒼白になった。早く、早くこのタイツを脱がなければ! 改造人間にされてしまう!
だが肩幅がやっと通る程度の狭いダクトの中では、バックパックやホルスターを外してタ
イツを脱ぐのは不可能だった。ルイはあわてて、タイツを脱げる広い空間を探しにダクト
の中を進んでいった。気があせるばかりで、身体は遅々として前に進まない。
ようやく、無人の部屋が見つかった。送風グリルを外し、前転しながら通風口から身を乗
り出し、部屋の中央に飛び降りた。バックパックとベルトを外したルイは、あせる手でタ
イツを脱いでいった。そして、そこに現れた自らの身体を見て、愕然となった。
《な、何よ、この身体!》
ルイの皮膚は、全身がすっかり濃い青色に染まっていた。手脚の先は白く、両の乳房は黄
色と黒のはっきりした同心円模様になっている。このタイツの元の持ち主だった蜂女と、
まったく同じ姿だ。
ルイはポロポロと涙をこぼしながら、皮膚の表面を激しくこすっみた。ひょっとして色が
剥げないかと期待したのだ。だがどれほどこすっても、皮膚の色は変らなかった。よく見
ると、皮膚表面の感触が既に人間のものとは異なっている。ラバーのような弾力性を持っ
た緻密な質感だ。簡単には傷がつきそうにない。全身のうぶ毛だけでなく、脇や股間の毛
がすっかり消失し、ぐっしょりと濡れた性器があらわになっている。そして何よりもルイ
を驚かせたのは、手足の指の変化だった。白い長手袋状に変化した手先は関節部のシワが
まったくなくなり、指先の爪が消失していた。もちろん、指紋も無くなっている。足の指
は一体化し固くなって、まるでブーツの底のように変化していた。あわてて額に手をやっ
たルイは、自分の額に大きな触角が生えているのに気付いてさらに呆然となった。


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