うら若き女性が改造されるシーン at SFX
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100:BeeFreak
04/11/05 02:44:47 6st48GJv
戦闘員が、わたしの両腕に注射針のようなものを突き立てた。そこから、得体の知れない
液体がわたしの体内へと注ぎ込まれる。むず痒いような不快感がわたしの全身を襲った。
「う…ああっ…あ、あ、ああ…」
「遺伝子活性化光線、照射!」
わたしの身体に覆いかぶさるように、手術台の無影灯のようなものが降りてきた。色とり
どりの明かりが明滅し、わたしの身体を包んでゆく。キラキラしたものがわたしの周囲を
舞っているかのように感じられ、目の前がかすんで何も見えなくなった。全身を襲う不快
感は、次第に充実した幸福感へと変わっていった。
「あ…あ…ああ…気持ち…いい…」
そして、わたしの意識はそこで途切れた。

「さあ、目覚めるがいい、蜂女第2号よ。」ミスターQの声に、わたしは目を覚ました。
わたしは急いで自分の身体を確かめた。濃いブルーの皮膚、蜂の腹部のような蠕動する乳
房。美緒と同じ姿だ。「これが…わたし…?」
「お前は工作要員だった蜂女第1号よりも、より戦闘向けにチューニングしてある。カイ
ゼリオンと比べても、戦闘能力に遜色はないはずだ。」
「…ありがとう。必ず、この身体でカイゼリオンを倒してみせるわ。」
「それは頼もしい。だが忘れてはいかんよ。君はもう、“ズゥ”の改造人間ベスティオイ
ドだ。“ズゥ”に逆らうことはできん。カイゼリオンを倒した後は、一生我々のために働
いてもらうよ。」
「いいわ。妹の仇を討ったら、あとはどうなろうと構わないから…」
「結構、結構。それじゃあ、君に憎っくきカイゼリオンのことを教えてあげよう。灼光戦
士カイゼリオンの正体は、矢作(やはぎ)瞬、16歳の高校生だ。半年前、未来から送られて
きたカイザーディスクに偶然触れ、カイゼリオンに変身する力を身につけた。それと同時
に、未来社会を支配する我々“ズゥ”を壊滅させて歴史を変えるという、馬鹿げた使命を
与えられたというわけだ。フン。未来の愚かなエンジニアたちの、悪あがきというわけだ
よ。」
「…わかった。じゃあ、その矢作瞬とやらは、どこにいるの?」

101:BeeFreak
04/11/05 02:45:46 6st48GJv
カイゼリオン=矢作瞬は、都内のアパートで妹と二人暮しだった。私たち姉妹と同様、両
親を幼い頃に亡くしていたからだ。親の資産が充分あったのか、親戚の援助があるのか、
働くこともなく1つ年下の妹とともに高校に通っている。
わたしは正攻法でゆくことにした。妹を拉致し、人質にしてカイゼリオンをおびき寄せる。
下校する妹=矢作恭子を確認すると、わたしは彼女の前に歩み出た。目の大きい、小柄で
可愛らしい少女だった。
「矢作…恭子さんね?」「そうですけど…何か?」
恭子は明らかに不審そうにしている。それはそうだろう。季節は夏だったが、わたしは大
きなコートを羽織っていた。何しろわたしの身体は蜂女なのだ。人目にさらすわけにはい
かない。
「ちょっと、わたしと一緒に来てもらうわ。」
わたしはそう言って、乳首から麻酔針を素早く打ち出した。恭子はハッ! と一瞬目を見開
いたが、そのまま力なく倒れていった。わたしは彼女の身体を抱き留め、そばに待ち構え
ていた戦闘員の車に運び入れた。事はあっけないほどうまく運んだ。“ズゥ”がなぜ今ま
でこれをしなかったのか、不思議になるくらいだ。
戦闘員のひとりに、矢作瞬のアパートに伝言を残してくるよう命じると、わたしと他の戦
闘員はかつて美緒がカイゼリオンと闘って破れた、港第3倉庫へと車を走らせた。決戦の
地として、そこ以外の場所は考えられなかった。
矢作恭子の身体を倉庫の屋上に立てられた十字架に縛り上げ、目隠しをさせ、その身体に
超振動フォノン爆弾をくくり付けた。これは、わたしが破れそうになった時の最後の手段
だ。
戦闘員たちを配置し、準備をすべて整えた。時刻は午後10時。カイゼリオンに指定した時
刻は午前0時だ。
十字架に縛られていた恭子が、息を吹き返した。「ここは…どこ!?」キョロキョロと首を
振る。目隠しされているので不安なのだろう。
「安心なさい。カイゼリオンを無事倒せたら、あなたは解放してあげるわ。」
「え…お兄ちゃん? …お兄ちゃん! 来ちゃだめ!! 来ちゃだめよ!!」

102:BeeFreak
04/11/05 02:46:46 6st48GJv
約束の午前0時に、矢作瞬は現れた。思ったよりも小柄な少年だ。「妹を…返せ!」
「返してあげるわ。あなたが、わたしと闘うならば!」
わたしはコートを脱ぎ捨てて、蜂女の姿をさらした。ヘルメットを被り、戦闘態勢を取る。
「かかれ、戦闘員たち!」
矢作瞬は、小さなディスクをかかげて腕を大きく回しながら叫んだ。
「カイザーッ!アクセス!!」
閃光がきらめき、瞬の姿は銀色の戦士・カイゼリオンへと変貌した。
わたしは羽根を広げてジャンプし、カイゼリオン目がけて針を撃ち出した。
「スティンガー・ニードル!!」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「…妹だって!?」カイゼリオンが驚いたように叫んだ。
「そうよ。わたしの妹は、わたしの可愛い美緒は、2日前あなたに殺された。いい子だっ
たのに! 何もしていないのに! あなたが、あなたが殺したのよ!!」
わたしはカイゼリオンに飛びかかり、背中に回って首を絞め上げた。
「違う! 俺は“ズゥ”のベスティオイドを倒しただけだ! 悪の手先を倒しただけなんだ!」
「わたしの妹が悪だっていうの!? 操られていただけなのよ! ほんとは、優しいいい子だっ
たのよ。なのにどうして! 殺されなければならなかったの!! 命で償わなければならないよ
うなことを、あの子がしたって言うの!?」
「だから、悪いのは“ズゥ”なんだ。“ズゥ”の手先なら、俺は闘わなけりゃいけないん
だ!」
「そう? それであなたは正義の味方ってわけ? 正義の味方なら、何もしてない者を殺して
もいいって言うわけ!? そんな正義の味方、わたしは認めない! 妹を殺して守れる正義なん
か、わたしは欲しくない!!」
カイゼリオンは明らかに動揺していた。わたしはカイゼリオンの首を閉めながら、カイゼ
リオンの脇腹に手を当てた。アーマーの継ぎ目を狙って、スティンガー・ニードルを撃ち
出した。
「ぐわあああああッ!!」

103:BeeFreak
04/11/05 02:48:55 lC3F3Rlp
「妹が味わった苦痛は、こんなものではないわ。さあ、もっと苦しみなさい。」
わたしはスティンガー・ニードルを二発、三発とカイゼリオンの身体に撃ち込んだ。
カイゼリオンは激痛に身をよじらせたが、急に大声で叫んだ。「カイザーッ!シャイン!!」
とたんにカイゼリオンの身体がまばゆい光で覆われた。不意をつかれて、一瞬、わたしの
腕の力が緩んだ。その隙を見逃さず、カイゼリオンは背負い投げの要領でわたしを投げ飛
ばした。「キャアアッ!」
「カイザーッ! ブレイド!」カイゼリオンが右手を高く掲げると、光の剣が出現した。
「蜂女! 確かに俺はお前の妹を殺してしまったかも知れない。お前たち姉妹を不幸にして
しまったかも知れない。だけど、そうしなきゃもっと沢山の人間が不幸になったに違いない
んだ! 未来世界では、“ズゥ”の支配下に置かれて多くの人々が苦しんでいるんだ! だか
ら俺は、闘い続けなきゃならない! 俺にはすべての人が幸せになれるベストの選択肢を選
ぶことはできないけど、俺にできる限りのベターな道を選ぶしかないんだ。わかってくれ!!」
「わからない!! そんなこと!!」
「この…わからずやァッツ!!」カイゼリオンは剣を振りかざし、わたし目がけて突進してき
た。わたしは反射的に両手を前に突き出し、ステインガー・ニードルを連続で撃ち出した。
カイゼリオンは、12発のスティンガー・ニードルをすべて剣でなぎ払い、わたしの前で剣
を一閃した。
「ギャアアアアアアッツ!!」わたしの脇腹が裂け、青い血が吹き出した。
わたしは傷を押さえながら、力を振り絞って倉庫の屋上の十字架まで飛んだ。矢作恭子の
目隠しを取り、カイゼリオンに向かって叫んだ。
「聞け! カイゼリオン! お前の妹には、フォノン爆弾をくくりつけてある。これ以上抵
抗したら、妹の命は保証できないわ!」
カイゼリオンの動きが止まった。わたしは後を続けた。「そのままおとなしく、わたしの
スティンガー・ニードルを受けなさい。あなたが死んだら、妹は逃がしてあげる。約束す
るわ。でもあなたがちょっとでも妙なそぶりを見せたら、妹の命は保証できない!」

104:BeeFreak
04/11/05 02:49:46 lC3F3Rlp
カイゼリオンの右手の剣が消えた。両手を横に広げ、わたしの攻撃をおとなしく受ける姿
勢を取った。「…お、お兄ちゃん!?」
「覚悟ができたようね。さあ、食らいなさい! これがわたしの妹の受けた痛みよ!!」
わたしは、スティンガー・ニードルを次々とカイゼリオンの関節目がけて撃ち込んだ。
ブスッ! ブスッ! 「グワッ!!」「お兄ちゃんッ!!」
カイゼリオンのアーマーの継ぎ目から、赤い血がにじみ出た。まだだ。まだまだだ。美緒
の受けた苦しみは、こんなものではない。
その時、十字架に縛られた矢作恭子が、大声で叫んだ。
「お兄ちゃん! 闘って! お兄ちゃんが闘わないと、みんなが不幸になるのよ! わたしの
ことなら構わないで! もう、これ以上足手まといにはならないから。さよなら…お兄ちゃ
ん。みんなを幸せにしてね…。」
わたしはハッとなった。舌を噛み切るつもりなのだ。わたしは急いで恭子の頬に平手打ち
した。「キャッ!」恭子は気を失った。
わたしは、恭子の身体からフォノン爆弾を外し、自分の身体にくくりつけた。
…なんということだろう。さっきの恭子の言葉に、憎い仇の妹の言葉に、わたしは美緒の
面影を感じていたのだ。
わたしは、満身創痍のカイゼリオンに向かって叫んだ。
「カイゼリオン! お前の妹を殺すことは、わたしにはできない! だから、わたしはお前と
心中する!!」
わたしはフォノン爆弾を抱き、信管を外すとカイゼリオン目がけて突進した。
「カイザーッツ!! スピィーーーンンッッ!!」
最後の力を振り絞り、カイゼリオンは自分の身体を高速回転させた。わたしの身体はその
回転に弾かれ、宙に舞った。
フォノン爆弾が炸裂する瞬間、わたしは、美緒の幻を見た。
《…お姉ちゃん。わたしがヘアデザイナーになったら、お姉ちゃんがお客さま第1号だよ。》
《…お姉ちゃん。いつもわたしのために遅くまでお仕事ありがとう。》
《…お姉ちゃん。わたしは世界でいちばん、お姉ちゃんのことが大好きだよ。》
わたしの頬を涙が伝った。そして、わたしの身体はまばゆい光に包まれた。

105:BeeFreak
04/11/05 02:50:46 lC3F3Rlp
空高くフォノン爆弾が炸裂し、悲しき蜂女の復讐は終わりを告げた。
だが、蜂女の言葉は身体の傷以上に、矢作瞬の心に大きな傷跡を残した。
《俺の闘いは、本当に正義だと言えるんだろうか? 犠牲者の上にしか成り立たない正義な
んて、
“ズゥ”の連中がやってることと大差ないんじゃないか? 誰か教えてくれ! 正義っていっ
たい、何なんだ!? 俺の闘いの意味は、いったい何なんだ!?》
いくら逡巡を続けても、答は出てこなかった。ふと我に返った瞬は、妹・恭子をすっかり
忘れていたことに気付いた。「すまん恭子ッ! 今縄をほどいてやるぞ!」
だが十字架の上に、矢作恭子の姿はなかった。あわてて周囲を見回したが、恭子の姿はど
こにも無い。
「恭子!? どこだ!? どこにいったんだ! 恭子ォーーーッ!!」

“ズゥ”の地下アジトにある改造手術台。その上に、矢作恭子の身体は固定されていた。
「…やめて! 放して!! お願い!!」
ミスターQが、無気味な笑みを浮かべた。
「蜂女は役に立たなかったか。まあいいだろう。おかげでカイゼリオンの思わぬ弱点を知
ることができた。この妹こそ、カイゼリオンにとってのアキレス腱だ。今から役に立って
もらうことにしよう。科学者たちよ! この娘を蜂女第3号に改造せよ。対カイゼリオンの
秘密兵器に仕立てあげるのだ!!」
「いや、いやよ、改造人間なんていや! 助けて! お願い!」
「改造手術、開始!」
手術台に縛られてガタガタ震えている恭子に、遺伝子活性化光線が照射される。
「いやだ! いやッ! やめて! やめてェーーッ! イヤだァーーーーッッッツ!!」
                                 (おわり)

106:名無しより愛をこめて
04/11/05 07:26:02 RKM6CXFs
      ☆ チン        マチクタビレタ-

☆ チン  〃 ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ヽ ___\(\・∀・)< PRIMEさん、朝寝坊悪女、天野早苗タンの改造 マダー?
    \_/⊂ ⊂_)_ \_________________________
  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
  |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:|  |
  |  改造手術台   .|/

107:名無しより愛をこめて
04/11/05 11:29:41 vSkbZXI1
す、凄い文字数だ。

108:名無しより愛をこめて
04/11/05 11:33:24 g4BZjONL
>>107
前スレ読んでみ。もっと驚くからw
URLリンク(artofspirit.hp.infoseek.co.jp)

109:名無しより愛をこめて
04/11/06 01:41:34 MpfEZ9tB
>>106
早苗ちゃんって悪女かなあ。啓介や千鶴ちゃんをだしに使うちょっとちゃっかりした女の子程度の認識しか俺にはないけどね。

110:名無しより愛をこめて
04/11/06 15:56:48 qRFpjdIi
>>109
女はみんな魔物なのだよ。

111:PRIME
04/11/07 01:48:37 rOS5TR5Q
>>BeeFreakさん
新しいSS読ませていただきました。コミック版仮面ライダーXの「サソリジェロニモの逆襲」に話が似ているなって言うのが読んだ直後の感想です。
さて今回のヒロイン梨緒ですが、個人的には感情移入できませんでした。妹を殺された悲しみはわかるとしてその妹を殺したヒーローを逆恨みして妹を改造した悪の組織に自ら魂を売るとは…。
妹を改造した悪の組織に殴り込みをかけたところを捕まって洗脳されて改造されたのならまだわかりますが、自ら悪魔に魂を売った時点で彼女の運命はもう決まっていたのですね。
ただヒーローの妹を殺さなかった(殺せなかった)ということはわずかに彼女に良心が残っていたのでしょうか?
そしてヒロインの妹の改造シーンでの物語の終了。この後どうなるのかと色々想像してしまいます。
個人的にはこの後の続きが見たい一作です。
色々生意気言ってすみません。

112:PRIME
04/11/07 01:50:00 rOS5TR5Q
>ヒロインの妹の改造シーンでの物語の終了。

あれはヒーローの妹の改造シーンでの幕切れの間違いです。すみません。


113:名無しより愛をこめて
04/11/07 02:34:18 HPyT/mCd
=======================================
       ★コテハンの皆様へ★

まだ<スレリンク(news4vip板)
に書き込んでいないコテハンさんは、いますぐカキコしてください。

・いつもいる板
・自己紹介
・そのほかなにかあれば

2chのすべてのコテハンを集める壮大なプロジェクトです。ご協力お願い致します。
※なお、これを機にVIPに棲みつくのはご遠慮いただきたく思います。
=======================================

114:BeeFreak
04/11/07 04:07:34 CbrlXlFx
>>111
PRIME 様
SSの感想、さっそくありがとうございました。
感想をいただけるとは思っていなかっただけに、嬉しいです。
サソリジェロニモに限らず、怪人の家族がヒーローに復讐する話ってよくありますよね。
あれの女の子バージョンを書いてみたわけです。

さて、自ら悪魔に魂を売ったヒロインに共感できないとのことですが、私は梨緒ちゃんに
はこの選択肢しか無かったと思っています。
と言うのは、第一に、梨緒と美緒の姉妹は自分たちの力だけで苦労して生きてきたので、
梨緒ちゃんの性格は口先だけの甘言や理想論を信じない、本当に自分たちの力になってく
れるものだけを信じる、自分の目で見たものしか信じないという、極めて現実主義的なも
のになっています。
その梨緒ちゃんが、妹が改造されたところは自分の目では見ておらず、ヒーローに殺され
るところは実際にその目で見てしまったわけです。もともと正義と悪の闘いなどの認識が
無かった梨緒ちゃんにとっては、妹が改造されてしまったことはいわば「天災」みたいな
もので、妹を殺したヒーローこそ、自分たちの敵であるという認識になっているのです。

それに、蜂女に改造された時点で、妹の美緒ちゃんの意識は完全に“ズゥ”側のものにな
っています。美緒ちゃんは、お姉ちゃんと一緒に生きられない身体になってしまったこと
は姉に対しすまないし恥ずかしいことだと思っていますが、蜂女に改造されたこと自体は
別に恨んでいないし、むしろ改造してもらえたことを“ズゥ”に感謝しています。
私の文章力が無いので、そのあたりはうまく伝わっていないのだと思いますが。
ですから、妹と強いシンパシーの関係にあった梨緒ちゃんにとっては、妹に出会った時点
で『“ズゥ”=妹の仲間、“カイゼリオン”=妹と自分を引き裂く悪魔』という認識が出
来上がってしまっているのです。
だから「悪魔に魂を売った」という表現は、梨緒ちゃんにとっては心外なものでしょう。

115:BeeFreak
04/11/07 04:09:03 CbrlXlFx
梨緒ちゃんがヒーローの妹を殺さなかったことですが、もともと梨緒ちゃんは恭子ちゃん
を殺すつもりは毛頭ありませんでしたよ。ヒーローを苦しめるために利用しようとは思っ
ていましたが、彼女を苦しめるつもりはありませんでした。
だから、ヒーローを苦しめることが彼女を苦しめることになるのだと気付いて、彼女は恭
子ちゃんを利用することはやめ、ヒーローとの心中を選んだわけです。
だから、別に「彼女の心の中に一片の良心が残っていた」とかそんなじゃなくて、蜂女に
改造されても梨緒ちゃんは、ずっといい子だったわけです。

ラスト、ヒーローの妹が蜂女に改造されてしまったわけですが、この恭子ちゃんも美緒ち
ゃんと同様、改造されると同時に洗脳され、“ズゥ”側の人間になってしまいます。
つまり、兄=ヒーローを愛しているし大事に思っていることに変わりはないのですが、兄
のしていることは間違っている、何とかして兄の考えを変え、“ズゥ”の邪魔をさせない
ように仕向けなければならない、という価値観に、骨の髄まで染められてしまっています。
彼女は改造されたことを隠して、兄の元に返されますが、その後はヒーローの活動を邪魔
するために暗躍します。そして正体が兄にバレた後は、命に代えても兄の行動を止めよう
と積極的にヒーローの妨害をするようになります。
もちろん、ヒーローはいくら改造されてしまったとはいえ、健気な妹を殺してしまうこと
ができず、苦悩することになります。
しかし、一度改造されてしまった者は、もう二度と元には戻れません。たぶん恭子ちゃん
はシャドームーンのように、兄に殺されるラストを迎えることになるのでしょう。恭子ち
ゃんは兄の行動を止められなかった自分の不甲斐なさを呪いつつ、“ズゥ”万歳!と叫ん
で死ぬのでしょうね。

PRIMEさんには、どうしようもなく不条理に感じられるかも知れませんが、私は正義のヒ
ーローの闘いとは、それくらい悲痛で孤独なものなのだと思います。

自分の作品について言い訳をするのは恥ずかしいことですね。
スレ汚しになって申し訳ありませんでした。
PRIMEさんの「ローズジャマー」編、いよいよ盛り上がりですね。期待いたしております。

116:名無しより愛をこめて
04/11/07 07:56:41 /Li7/rYG
「萌える改造シーンとかありますか?」
URLリンク(salami.2ch.net)

117:名無しより愛をこめて
04/11/07 23:41:46 ogzHCSZy
コミック版仮面ライダーXの「サソリジェロニモの逆襲」って何?

118:PRIME
04/11/08 02:21:15 NX3UDX4/
>>BeeFreakさん
自分のくだらない書き込みに真摯なレスをしてくださりありがとうございます。
同時に私の書き込みでもし気分を害されたのなら申し訳ございません。あなたのSSを一読した後直感的に感じたことを書き込んだものなのであまり深く考えないで下さい。
こうやって見ると私のSSなんて奇麗事ばかり並べた上滑りなものですね。現実の戦いは明るくかっこいいものではありません。戦いにあるのは残酷な現実とそしてあらゆるものの破壊。
どうやら私はもっと修行すべきですね。今のSSを書き終えたら少し修行しようと思います。

後前スレの母親改造ですが、自分はモデルとして新潟地震で車に閉じ込められた母親と男の子を推薦します。
不謹慎な話で恐縮ですが、あのニュースを聞いたとき直感的にモデルにふさわしいと思ったもので…。

119:名無しより愛をこめて
04/11/08 13:09:58 6GJDTSYd
文体は丁寧だが最低のサイコ野朗だ
ヘドが出る

120:名無しより愛をこめて
04/11/08 18:11:28 YsPwEi7K
>>118
最後の2行は余計だったな。
あんたのこと大嫌いになったよ。

121:名無しより愛をこめて
04/11/08 23:06:05 wSomSPZL
>>118
“ああいう”命がけの母性を発揮した親を改造するというシチュエーションは考えただけでドキドキしますが、
事件の印象からしてまだ日が浅すぎます、もうちょい待ってから使ったほうがいいネタかと。

122:PRIME
04/11/08 23:13:31 LLwToC+V
>>119さん
>>120さん

不愉快な思いをさせて申し訳ございません。確かに死んだ人をネタにするなんて軽率でした。
死んだ女性やその坊やにも、そしてこのスレを見ておられるすべての人々にも申し訳ないことをしたと思います。
何の罪もなく死んだ人を冒涜することは決して許されないことです。
自分はそんなつもりはなくても結果的に死者を冒涜した私がどう罵られようと返す言葉がありません。
この件に関しては自分も何らかのけじめをつけないといけません。
丸投げと批判される事覚悟で言わせてもらえば、まずは謹慎して皆さんからの沙汰を待ちます。そしてどんな処分も甘んじて受けるつもりです。
謝ってすむ問題ではありませんが重ねてお詫びします。どうもすみませんでした。


123:名無しより愛をこめて
04/11/09 11:56:35 oOeEQR2i
まあPRIME氏の処分はここのスレ主であるBeeFreak氏に決めてもらうのが一番じゃないかな?
俺はBeeFreak氏に全部任せる。

124:名無しより愛をこめて
04/11/09 13:02:02 wcxzmTuT
123=PRIMEなことがバレバレなわけだが


125:名無しより愛をこめて
04/11/09 13:03:17 BlQspRIa
>>123
ここってBeeFreak氏マンセースレだったの?
じゃあ情報交換したいだけの俺は去るわ。

126:名無しより愛をこめて
04/11/09 13:15:20 Y6IP5xS/
>>125
お前、何か情報持ってたっけ?

127:名無しより愛をこめて
04/11/09 13:50:54 BlQspRIa
>>126
お前みたいにクレクレいってるだけの人生も楽しそうだな。
うらやましい。

128:BeeFreak
04/11/10 00:27:32 heSoR+YZ
うーん。漏れはただスレが新たに必要になったので立てただけで、スレ主なんてことは
ないと思っているのですが…。
スレ主無しに、みんなでスレを盛り上げてゆくのがベストだと思います。

で、PRIMEさんなのですが、このスレのような妄想の世界に、現実の悲劇を持ち込んで
しまったのは確かに軽率で思慮が足りなかったと思うのですが、別に悪気があってした
わけじゃないし、本人も反省しておられるようなので、漏れとしてはしばらく謹慎され
て(ひと月くらい?)、ROMに徹されれればよろしいのではないかと思います。
それでも許せない、という方もおられるかも知れませんが、PRIMEさんがいなければこ
のスレがこんなに続くことはなかったと思うので、その功績に免じて勘弁してあげてい
ただけないかとお願いいたします。

PRIMEさんも謹慎されている間に、どうかSSの続きを書き溜めておいて下さい。
小出しにされて他のレスにまぎれてしまうより、一気に吐き出された方が読む方も楽だ
し、スレもすっきりすると思います。
で、もうこのスレには書き込みたくない、でもSSの続きだけは発表したい、ということ
であれば、漏れのところ(wild_fire@infoseek.jp)にメールしていただければ、ま
とめサイトの方に転載させていただきます。

とりあえず、後で角が立たないように皆でうまく融通し合って、このスレを維持しまし
ょう。
甘いことを言ってるようですが、あくまで個人的意見です。
他の方のご意見も聴かせていただければと思います。

129:名無しより愛をこめて
04/11/10 07:34:19 z01C2kqA
過去ログ発掘。下の過去ログの223と244に、悪の組織に誘拐されて
凄まじい性の快楽のなかで改造されてゆく処女のSSがあるよん。

「女仮面ライダーは実現不可ですか」
URLリンク(salami.2ch.net)

130:名無しより愛をこめて
04/11/10 16:33:40 tEAxz7J5
改造人間ものじゃないけど、美少女強制機械化改造ものの基本サイト貼っとくね。

人形姫
URLリンク(dollprinses.at.infoseek.co.jp)
機械化淑女プロジェクト
URLリンク(cool.nasite.net)
妄想ドカン
URLリンク(cone.sakuratan.com)

131:名無しより愛をこめて
04/11/10 16:39:41 XeTT7Z1m
節操の無い奴がいるな。蜂娘祭に書いてたかと思うと今度は蜂女の館か・・・

132:名無しより愛をこめて
04/11/10 17:34:21 MeUZd88q
この場合の節操って何?

133:名無しより愛をこめて
04/11/10 19:29:37 w9xeXj7U
また蜂娘祭関係者か
どこに投稿しようが勝手だろうが
バカジャネーノ


134:BeeFreak
04/11/11 00:11:46 Py8OUJrZ
>>PRIME 様。
まる一日経ちましたが、異論が出ないようなので、PRIME様の沙汰につきましては
スレ民の皆さまも「しばらくのご謹慎」ということで納得されたものと存じます。
しばらく寂しくなりますが、充分に英気を養って、再び復活されますことを期待
しております。

>>131-133
今回「蜂女の館」に、「蜂娘祭」ほかでもご活躍の舞方雅人氏のSSを掲載させて
いただきましたが、別に舞方さんは「蜂娘祭」の専属でも何でもないので、どこに
作品を発表されても構わないと思いますよ。
今回「蜂女の館」での掲載となったのは、人妻が主人公なので「蜂娘祭」での掲載
が難しいものと判断なされたからです。2ちゃん本スレから生まれた「蜂女の館」は、
前スレが“母親改造”で盛り上がったのを見てもわかる通り、改造されるのにの年齢
制限を設けていませんからw。「蜂娘祭」よりも受け入れやすかったのです。
なお「蜂女の館」でのSS掲載は、広く募集することにしましたので、どなたでも
ご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。

135:名無しより愛をこめて
04/11/11 01:01:51 gXAwDGTw
>>119
>サイコ野朗

どうやったら「野郎」を「野朗」に変換できるのかい(笑)

136:名無しより愛をこめて
04/11/11 10:05:42 UwDnoxfg
揚げ足取り乙

137:名無しより愛をこめて
04/11/11 12:12:40 1x/eldBZ
age

138:名無しより愛をこめて
04/11/11 15:47:36 UJKpbAD6
名無しで書き込む事を謹慎とはいわない。

139:名無しより愛をこめて
04/11/12 09:58:08 hj93DE/B
オニャノコ改造の、上限年齢と下限年齢について、おまいらの意見を聞かせていただきたい。

140:名無しより愛をこめて
04/11/12 10:03:54 CGff0a2K
>>135
野朗でぐぐると結構出るね
PRIMEさん

141:名無しより愛をこめて
04/11/12 17:31:21 1rW46ptr
下限22歳上限28歳。もちろん素体によって違うが。

142:名無しより愛をこめて
04/11/12 17:59:52 z4Nd1L5V
上限39歳下限10歳(ただし10〜18歳までは戦闘員のみ可)


職人様方、戦闘員化処理(あえて改造でなくて)もっと書いて〜書いて〜。

143:名無しより愛をこめて
04/11/12 18:04:51 KmyZtthS
3〜40

144:名無しより愛をこめて
04/11/12 19:31:30 Sog44fiv
提案なんだけど、皆で理想の改造素体と、女怪人のアイデアを出しあって、
それで職人さんにSS書いてもらうってのはどう?

145:BeeFreak
04/11/13 03:13:02 UQWXELTN
BeeFreakです。また新たなSSを書いてしまいました。
今回は何と、ゴシックホラー仕立てです。謎の館に迷いこんだ8人の男女が、次々と罠に
かけられてゆきます。でもなかなか思うように怖くなってくれませんでした。
今回、秘密結社メギドによって蜂女に改造されるのは、朝倉咲也ちゃん19歳、葉月るみち
ゃん19歳、川瀬綾奈ちゃん18歳、それに西澤裕美子ちゃん21歳の、女子大生4人です。
なお、登場する館の構造がわからないと楽しみが減ると思いますので、間取り図を作って
おきました。(↓)をご参照下さい。
URLリンク(artofspirit.hp.infoseek.co.jp)

またも長文のSSで申し訳ありません。しかも、なかなか改造手術が始まらないのでやきも
きされる方もいらっしゃるかも知れませんが、どうかお許し下さい。
漏れは特にリクエストがないと、こういうふうに毛色の変わったものを書き始めてしまい
ます。正統派の美少女改造ものがお好みの方は、リクエストを下さるとありがたいです。
それでは。ゆっくりお楽しみ下さい。

146:BeeFreak
04/11/13 03:14:03 UQWXELTN
突然の嵐だった。
それまで雲ひとつなかった空が、何の前ぶれもなく闇に包まれた。そして轟雷とともに、
激しい驟雨が襲ってきた。
海水浴を楽しんでいた8人の男女は追われるようにして、高台にある館めがけて必死で駆
け上がった。激しい水しぶきで、足元すら見えないような凄まじい雨だ。ほうほうのてい
で館の玄関に辿りつき、玄関前に張り出した幌の下に非難した8人は、肩で息をしながら
もようやく人心地をつけることができた。
「全員そろってるか!?」アロハシャツを着た石倉翔吾が、素早くメンバーの数を確認した。
大学ではヨット部に所属する体格のいいスポーツマンで、“大将”とあだ名される、この
メンバーのリーダー格である。「とりあえず、ここで雨宿りさせてもらおう。」
「畜生! 何が《雨の確率10%》だよ。」大きなビーチパラソルで女の子たちをかくまいな
がら走ってきた、長身の元木夏彦が悪態をつく。ワイルドで大ざっぱな性格だが責任感の
強い男だ。さすがのビーチパラソルもこの豪雨の中全力で走ったため、骨が何箇所か折れ
てひしゃげてしまっている。
「咲也ちゃん、これありがと。」パーカーをはおる暇もなくビキニのままで走ってきた西
澤裕美子が、被ってきたビーチマットを朝倉咲也に手渡した。裕美子ははちきれそうなボ
ディの大人びた美女で、面倒見のいい性格のためみんなから“ママちゃん”と呼ばれてい
る。元木夏彦とは恋人同士だ。一方の朝倉咲也は“姫”とあだ名される、一流国立大に通
う知的美人。ドラえもんのごとく、彼女のバッグに入っていないものはおよそ無いと言わ
れるほど、何事にも用意が良くそつがないのが彼女の長所だ。赤いサマードレスをぐっし
ょりと濡らした咲也は、日傘の水を切りながら裕美子に向かって答えた。「ね、ゆみちゃ
ん、みんなの荷物を一箇所に固めて、そのマットで守ってくれない?」
荷物といっても大したものはない。みんな軽装だった。男女別に2台の車に便乗してきた
彼らは、着替えやほとんどの荷物を車に残したまま海岸に出てきたからだ。

147:BeeFreak
04/11/13 03:15:03 UQWXELTN
クシュン! 最年少の大学1年コンビのひとり、葉月るみがくしゃみをした。裕美子と同じ
く上衣を取り出す暇がなく、ワンピースの水着にタオルのみの姿だ。くったくの無い明る
い性格で、みんなの妹分として可愛がられている存在である。コンビのもう一方、水着の
上から花柄のペアワンピースを着た川瀬綾奈が心配そうに彼女の背中をさする。大人しい
眼鏡の少女で、幼なじみのるみにいつもくっついて行動している。内向的な彼女がこのグ
ループの中にいるのも、るみに強引に引っ張られたためだ。
「…このままじゃみんな風邪をひいてしまうな。早く身体を乾かさないと。」身体を拭い
たタオルを絞りながら、藤原和樹が心配そうにつぶやいた。彼は咲也に負けないインテリ
で頭も切れるが、人当たりのいい男だ。名前の“和樹”が“わき”と読めるため、子供の
ころから“ワッキー”や“ワッケイン”とあだ名されているが、今は“ワクさん”と皆に
呼ばれている。
「…もう少し小やみになったら、俺が走って車を取ってくるよ。こんなとこに連れて来た
責任があるからな。」相良遼一が皆に向かってすまなさそうに言った。口数は少ないが、
時折り鋭いことを言い、また突拍子も無いことをしでかす男だ。夏彦や和樹が荷物からT
シャツを取り出してはおろうとしているのに、彼は海パン一枚で荷物すら持っていない。
遼一はこのグループ旅行の企画人であり、一同が現在滞在しているのは、彼の母方の祖父
の家だった。極度のおばあちゃんっ子であることが昨夜みんなにバレてしまい、それ以来
皆からずっとからかわれている。
「別にお前のせいじゃない。無理するな。」翔吾がフォローを入れた。雨はますます強く
なる一方だ。500メートルほど離れた場所に停めた車になど、とてもたどり着ける状態で
はない。浜辺を自由に使えるのをいいことに、車からあまりにも離れ過ぎたのだ。

148:BeeFreak
04/11/13 03:16:04 UQWXELTN
大学も学部もバラバラのこの8人は、彼らの住む市が昨年秋に主催した、国際文化交流フ
ェスティバルのボランティアで知り合った仲だ。海外から招かれた芸術家と共に合宿しな
がら、地域住民とともに巨大な作品を作るというこのイベントは、参加ボランティアたち
の距離を一気に縮めてくれた。すっかり意気投合した8人はそれからも時々、こうして休
日を一緒に楽しんでいる。
今年の夏、彼らは遼一の母方の実家近くにあるという穴場海水浴場を目指して、2泊3日
の日程で遊びにやって来た。この「舞ヶ浜海水浴場」は、バブル時代には周囲にペンショ
ンが幾つも建ち並ぶほどに繁盛したらしいが、都会からの交通が不便なため現在は寂れて
しまった場所だ。追い打ちをかけるように、今年6月の豪雨災害で途中の県道が通行不能
となり、観光客はすっかり途絶えてしまった。それでも設備が整った隣の海水浴場にはま
だ客の姿もあるのだが、シャワーや更衣室の設備がないこの浜辺は、彼ら8人のプライベ
ートビーチと言っても良い状態だった。
そのプライベートビーチで、彼らは真夏のひとときを満喫していた。突然の豪雨が彼らを
襲った、つい数分前までは。
グワーン!! バリバリッ!耳をつんざく轟音が周囲に響いた。「キャアッ!!」るみと綾奈が耳
を押さえてうずくまった。すぐ近くに雷が落ちたらしい。
「やべぇ。どんどん暗くなってきやがった。」夏彦がいまいましそうに言った。
「ちょっと!? いくら何でも暗過ぎやしない? まだ4時前なのに、まるで日が暮れた後みた
いじゃない!?」
咲也の指摘通り、周囲は5メートル先も見えないくらい真っ暗だ。雷はひっきり無しに鳴
り響き、8人はますます心細くなってきた。

149:BeeFreak
04/11/13 03:17:04 UQWXELTN
館の入り口にもたれていた綾奈が、急に叫んだ。「あの、この扉、開いてますよ!」
皆は一斉に彼女の方を見た。綾奈がドアの取っ手をひねると、ギギーと音がして、重い扉
が内側に向かって開いてゆく。だが、中は真っ暗で何も見えない。
「…ねえ。中でちょっと休ませてもらわない? このままじゃみんな風邪ひいちゃうわ。」
裕美子が提案した。一同は、思わず顔を見合わせた。
彼らが雨宿りしているのは、海水浴場を見下ろす高台の上に立つ、瀟洒な洋館だ。どうや
らバブル時代に建てられその後廃業した、ペンションのひとつであるらしい。かなりがっ
しりと作られた本格的な洋館で、扉の造作ひとつとっても物々しい。その荘重な雰囲気と、
内部の暗さのために、彼らには中に入ることが躊躇われたのだ。だがこのままでは、らち
があかないことも事実だ。
「とりあえず、身体が乾くまで中に入りましょうよ。」裕美子が皆をせっつく。
「勝手に中に入ったら、家宅侵入罪になるんじゃないのか?」夏彦が不安そうに訊ねる。
「厳密に言えばそうなんだが、俺たちもこんな状態だからな。緊急避難で大目に見てもら
えると思うよ。」和樹が自身無さそうに答えた。
「悩んでいても仕方が無い。しばらく休ませてもらおう。」翔吾が結論を下した。
「ごめん下さーい! ちょっと失礼しまーす!」
こうして、彼ら8人はこの洋館の中へと、足を踏み入れた。それが、巧妙に仕組まれた悪
魔の罠であることに気付かないまま。

150:BeeFreak
04/11/13 03:18:03 UQWXELTN
全員が館の中に入ったとたん、ギーッ、バタン! という音とともに、扉が勢いよく閉まっ
た。周囲は完全な闇に包まれた。
「キャッ!」るみと綾奈が悲鳴を上げた。他の者も、驚きのあまり思わず息を飲んだ。裕
美子は綾奈たちの方に駆け寄った。「大丈夫よ。ドアが閉まっただけだから。」
咲也が急いで携帯を取り出し、バックライトでドアノブを照らした。夏彦が取っ手を掴ん
で押し下げようとした。だが取っ手は堅く、びくともしない。
「おい! 開かないぞ! どうやら閉じ込められたらしい!」
「古い建物で、鍵が錆びてるんじゃないか?」
「わからん。ともかく出られそうにないんだ!」
夏彦は必死でドアを蹴り、取っ手を渾身の力で押し下げる。一同は心の中に不安が這い上
がってくるのを感じた。ドアの向こう側ではまだ嵐が荒れ狂っているらしく、窓をガタガ
タ鳴らす音だけが響いてくる。
と。突然、周囲が明るくなった。
「!」不意を突かれて、一同は目を丸くした。見ると遼一が、電灯のスイッチをひねった
らしい。
「電灯、生きてるぜ。」
「…どういうことだ? このペンション、廃屋じゃなかったのか?」和樹が首をひねった。
「ねえ! 見てこのシャンデリア!」
咲也が目を輝かせて、ホールの中央目がけて駆け出した。
「ドーム工房のデザインよ。それにこの、アール・ヌーヴォー風の階段の手すり。純ヴィ
クトリア調の仕上げじゃない! このラダーバックの椅子はマッキントッシュよ。すごい
わ!」デザイン学を志している咲也は、喜びを押さえられないといった表情でホールの中
をくるくると回った。

151:BeeFreak
04/11/13 03:19:40 BFUHMBnm
一同の前には、2階まで吹き抜けになった、巨大なホールが広がっていた。壁も床も、重
厚な茶褐色の木で造られている。彼らの正面には、2階へ昇る幅の広い階段があり、昇り
切った場所から手前に向かって、幾つもの円柱に支えられるかたちで2階の廊下が「門」
の字形に延びている。円柱のひとつひとつに取りつけられた照明も、凝った造りだ。ホー
ルの両脇には幾つも木の扉が並んでいるが、どれも荘重な造りで、重々しい雰囲気をかも
し出している。
「すごいわ。確かにこれはお金かかってる!」裕美子もしきりに関心した様子だ。
正面階段の右端に、西洋の甲冑が置かれている。金色に輝く、かなり豪華なつくりの鎧だ。
「…何だか、薄気味が悪いね。」るみが綾奈に同意を求めた。話しかけられた綾奈の顔も
何だか引きつっている。
その会話を小耳にはさんだ夏彦がスタスタと歩み寄り、鎧を小突いた。「なんだるみちゃ
ん、鎧が怖いのか?」そして鎧の顔面を覆う、面頬を押し下げて中を覗き込んだ。
「おーい。誰かいませんかー? …ほらね、中はカラッポだよ。」そう言って笑った。
和樹はしゃがみこんで、床を指でなぞった。そして翔吾に話しかける。
「ほら。チリひとつ指につかない。ここはやっぱり廃屋じゃないぞ。」
「人がいるかも知れない、ってわけか。」翔吾は大声で、奥に向かって叫んだ。「すみま
せーん!! どなたか、いらっしゃいませんかー!! 」だが、一向に返事は返って来ない。
翔吾はとりあえず、ホールの中央に一同を集めた。
「どうやら誰もいないみたいだが、いつ人が戻ってくるかわからない。叱られないよう、
軽はずみな行動はするなよ。まず身体を乾かし、休む場所を見つけよう。2人一組で行動
するんだ。パートナーとは決して離れないこと。そしてお互いの声が聞こえるよう、部屋
の中に入るときは、必ずドアを開けっぱなしにすること。」
一同は頷いた。
「それじゃあ、2階の左側は姫さんとワクさん、右側は遼ちゃんとるみちゃんで調べてく
れ。1階の左側は夏やんとママちゃん。右側は俺と綾ちゃんだ。何かあったらすぐに大声
で知らせること。じゃあ調査開始だ。」

152:BeeFreak
04/11/13 03:21:04 BFUHMBnm
皆が散り散りに去った後、翔吾は綾奈を連れて、1階右側の扉を開けて中に入った。照明
を点けると、中は丸いテーブルが幾つも並んだ広い空間だった。どうやら食堂らしい。丸
いテーブルの上にはクロスが掛けられ、皿が並べられている。まるで宿泊客がいるかのよ
うに。
翔吾たちはゆっくりと中に歩み入った。食堂の右側、館の入り口に近い側には大きなグラ
ンドピアノが置かれている。ピアノのさらに奥は、椅子が円形に配置された、8角形のサ
ンルームになっているらしい。左側の奥には、巨大な暖炉がしつらえられていた。彼らの
正面、扉が並ぶ壁の反対側は、庭に面しているらしく大きなガラスサッシが並んでいる。
外はどうやらテラスになっているようだ。
綾奈が、ふと大変なことに気付いた。
「石倉さん…ねえ石倉さん。雨、降ってないですよ!」
「何ッ!?」翔吾はあわててガラスに駆け寄った。さっきまであれほど荒れ狂っていた嵐が、
何事も無かったかのように治まっている。ガラス扉のロックを外して開け放った。何と、
テラスには雨に濡れた痕跡すら無いではないか。2人は狐につままれたように呆然と空を
見上げた。空は星ひとつ見えない暗黒の空間だった。そして彼らの前方に拡がる空間も、
やはり漆黒の闇であった。
「…どういうことだ。まだ午後4時前のはずだぞ!?」
綾奈が、急に腕を抱えてガタガタと震え出した。「どうした綾奈ちゃん?」
「…石倉さん…ここ…何かいます…」
石倉の顔は蒼白になった。「何だ? 何がいるんだって?」
綾奈は首を振った。「わかりません。…でも、何かいるんです。」綾奈はそういうのがや
っとだった。
翔吾はガラス扉を閉じ、綾奈の肩を抱いて椅子に座らせた。「いいか綾奈ちゃん、気をし
っかり持て。不安がそんなふうに錯覚させてるんだ。何もいやしない。何もいやしないよ。」
翔吾は、綾奈に何度も念を押した。まるで、自分自身に言い聞かせるように。

153:BeeFreak
04/11/13 03:22:03 BFUHMBnm
夏彦と裕美子が足を踏み入れた、いちばん左側奥の部屋は、何と浴場の更衣室だった。や
はりこの建物はペンションであるらしい。
「ほぉっ。ここは女風呂だぞ。俺、女風呂に入るのは初めてだぜ。」
夏彦は笑いながら浴室に足を踏み入れた。さすがに湯船には湯は満ちておらず、からっぽ
だった。「へえ、本格的なサウナまでついてやがる。」
「夏彦! キョロキョロしてないで、タオルか何か探すのを手伝ってよ! 更衣室なら何かあ
るはずよ。」
そう言って裕美子は、洗面台の下に並んだ扉をひとつひとつ、開けて内部を確かめて回った。
「変ね。なんでこんなものがあるのかしら?」
そう言って裕美子が取り出したものは、蜂蜜のガラス瓶だった。どういうわけか扉の中に
は、蜂蜜の瓶がギッシリと詰め込まれている。
「なぁ裕美子! 今度どこかの温泉で、家族風呂を借りないか? 露天風呂がいいな。青空の
下で、一度お前とヤリたいんだ。」
「もう! 何言ってるのよこんな時に!」裕美子は顔を赤らめて抗議した。彼女が夏彦の方
に振り向いたその時、外壁の高い位置に付けられた小さな窓が目に入った。そして彼女は、
窓の向こうにいた“そいつ”と、目が合ってしまった。
「キャッ!」裕美子は短い悲鳴を上げた。あわてて浴室から夏彦が飛び出してきた。
「どうした! 何があった!?」
裕美子はガタガタと震えながら、窓の方を指差した。
「あ…あれ…あれ…」
「何もいないじゃないか。」
「…いたのよ! あれが…あれが!」
「あれって何だよ? さっぱりわからないぞ。」
「目よ! ギラギラとした目。こっちを覗いてたのよ!」
「覗きか? 近所の出歯亀か何かか?」
「違うの! あれは…人間じゃない! 人間の目じゃなかったわ!」
「じゃあ、タヌキか野良猫だろう。お前、言ってることが支離滅裂だぞ。」
裕美子はへなへなとその場に座り込み、首を何度も横に振った。
「違うの…あれは…あれは!」

154:BeeFreak
04/11/13 03:23:04 BFUHMBnm
2階には、客室が幾つも並んでいた。咲也と和樹の二人は、左側の客室をひとつひとつ調
べて回ることにした。幸い、どの扉にも鍵はかかっていないようだった。
「ステキ! 部屋の調度もビクトリア調だわ。ほら、暖炉まである!」咲也は本来の目的を
忘れて、調度品を調べるのに夢中だ。和樹は部屋に設えられたユニットバスをのぞき込み、
ハンガーにタオルがかかっているのを発見した。
「こりゃありがたい。姫さん、タオルを集めるのを手伝ってよ。」
ランプシェードを調べていた咲也は残念そうに立ち上がったが、それでも手際よく次々と
部屋を回ってタオルを集め、和樹に手渡していった。
階段から見て一番奥、入り口側に近い部屋に入った時、 咲也は奇妙なものを見つけた。
ツインベッドの片方、布団の中央が、やけに盛り上がっているのだ。
「ちょっと藤原君、これ見て。」急いで和樹を呼び寄せた。
「…布団の中に、誰か隠れてるんじゃないか?」
「やめてよ。そんなはずないじゃない。」そう言って、咲也は掛布団をさらりとめくった。
そこに…現れたものは…
黒い、得体の知れない塊りだった。
その塊りはザワザワと蠢き、波が引くように崩れて、周囲に広がっていった。塊りの一部
は、黒い粒々となって布団を手にした咲也の腕にまで這い昇ってきた。
「ヒイッ!!」咲也は声にならない悲鳴を上げ、狂ったように激しく腕を降ってそいつを振り
払った。そして絶叫しながら部屋から飛び出していった。「イャアアアアアアッ!!!」
それは、黒い蟻の群れだった。そして蟻の群れがいずこともなく散らばっていった後には、
黒い、ひからびたミイラがベッドの中央に残されていた。

155:BeeFreak
04/11/13 03:24:03 BFUHMBnm
あまりの光景に和樹は一瞬硬直したが、ふと我に返り、咲也の後を追って部屋の外に出た。
咲也は廊下の手すりを掴んだまましゃがみ込んで、激しく嗚咽していた。
ようやく呼吸を整えた和樹は、咲也の顔を覗き込んで慰めた。
「大丈夫だ、姫さん。死体に蟻がたかっていただけだ。何もしやしない。大丈夫だよ。」
咲也はしゃくり上げながら、力なく立ち上がった。
「わたし、虫だけはダメなの。虫だけは、勘弁して…お願い…」
向かい側の廊下から、悲鳴を聞きつけた遼一が走って駆けつけてきた。
「おい! 一体何があった!?」
「…死体だよ。死体に蟻が群がってたんだ。」「…死体? アリ?」
二人は咲也にそこで待っているよう言い残して、死体を調べに部屋に戻った。あれほど沢
山いた蟻の群れはどこに消えたのか、その痕跡すら見つけることができなかった。
二人とも、変死体を目の前で見るのは初めてだ。喉の奥に酸っぱいものが逆流してくるの
を堪えながら、彼らは死体をまじまじと観察した。
死体は、口を開け、白目を剥き出して何かを叫んでいるような表情をしていた。指先を奇
妙に曲げ、まるであがいているかのようなポーズである。最初はミイラのよう見えたのだ
が、よく観ると、単なる干からびた死体とはまったく異なる状態であることがわかった。
「…何なんだろう、これ? カチコチに固まって、まるで昆虫みたいだ。」
「それに、こいつ男なのか、女なのか? アソコに何もねぇじゃねぇか?」

156:BeeFreak
04/11/13 03:25:03 BFUHMBnm
「ねぇねぇ! 咲也ちゃん、大丈夫?」廊下にるみの声が聞こえる。
「やばい! 遼ちゃん、るみちゃんには死体を見せるな!」
「オッケイ!」遼一は外に出ていった。
「遼ちゃん、一体何があったの?」るみは好奇心で一杯の様子だ。
「20歳未満お断りのものだよ。さあ子供は帰った帰った。」
「わかったあ。殺人事件の死体でも見つけたんでしょう!」
「ん!? 何で知ってる?」遼一は狼狽して、うっかり白状してしまった。
「ああーやっぱりィ? 死体、見たい! 見たい!」
「バカ! すっごく、グロテスクなんだぞ。失神したらどうする?」
「大丈夫よ。おじいちゃんの見たことあるし。」
「お前のじいさんは安らかに大往生したんだろうが。一緒にするな! こっちの死体は恨み
骨髄という顔をしてるんだ。さあ、帰った帰った!」
「もう! どうしてみんな、そうやっていつも子供扱いするのォ!?」
その時、息を切らせて石倉翔吾が駆け上がってきた。
「何だ、今の悲鳴は! 何があった!?」

157:BeeFreak
04/11/13 03:26:05 BFUHMBnm
気を持ち直した咲也とるみを廊下に残したまま、翔吾、和樹、遼一の3人は死体を調べて
いた。
「死因がさっぱりわからないな。身体が真っ黒に固まって、まるで蟻のような姿になって
死ぬ。そんな死に方、今まで聞いたことがない。」和樹が何度も首をひねった。
「…それよりお二人さん。さっき向こうの部屋で面白いものを見つけたんだ。聞いてみる
かい?」
そう言って遼一が取り出したのは、ボイスレコーダーだった。
「誰のだ、一体?」「さあな。クローゼットの中に落ちてたのさ。ここの宿泊客のものだ
と思うけどね。」
遼一が再生スイッチを入れた。
………。………。
レコーダーから聞こえてきたのは、ひどくあわてているらしい若い男の声だった。バック
には激しい怒号、ドンドンと何かを叩いているらしい物音も聞こえる。
遼一たち3人は、困惑して顔を見合わせた。
「…何て言ってた? “みんな、化け物に…襲われてしまった”か?」
「いや、“みんな、化け物に…なってしまった”って聞こえた。」
「俺にもそう聞こえたよ。で、その後は“あの…蜂のような女に…吸い取られてしまう!”
だったと思う。」
「“蜂のような女”って一体何だよ? それに、何を吸い取るんだ?」
「知らねえよ。とにかく、先客からの、あまりありがたくない伝言だな。何かのいたずら
だと思うが、縁起でもねぇ!」

158:BeeFreak
04/11/13 03:27:38 bQXvoHye
3人は気分を落ち着けるために廊下に出た。
「それはそうと大将、綾奈ちゃんはどうした?」
「食堂にいたんだが、悲鳴が聞こえたんで、ホールに出て待っているように言ってある。
食堂の扉は開けたままだから大丈夫だろう。」
「…扉、閉まってるぜ。」
「何ッ!」翔吾は手すりから身を乗り出した。確かに、ホールから食堂に通じる3つの扉
はすべて閉まっている。ホールにいるはずの川瀬綾奈の姿も、どこにも見当たらない。
「食堂に閉じ込められたんだ。行ってくる!」
その時、咲也がホールの一角を指差して、キャアッ!と叫んだ。
「どうした!?」
「…鎧が、鎧が無くなっているわ…」
見ると、階段の脇にあったはずの西洋甲冑が、どこかに消えている。咲也はまたも、へな
へなとその場にしゃがみ込んだ。
「まさか…勝手に歩き出したのか?」
「馬鹿なこと言うな。だがこの館、やはりどうかしてやがる! 早くここから逃げ出そう!」

159:BeeFreak
04/11/13 03:28:08 bQXvoHye
無気味な目を見たショックで錯乱気味の裕美子を抱きしめ、夏彦は彼女の背中を優しく撫
でさすった。
「今日は色々あったからな。疲れてるんだよ。お前は何もしなくていい。探し物なら俺が
代わりにしてやるから。」
夏彦は立ち上がり、再び浴室に入った。「電気が通ってるんなら、湯も使えるかも知れな
い。みんなで風呂に入って暖まろうぜ。」
そう言って、蛇口をひねった。
その途端、脱衣場と浴場を隔てるガラス扉がバタン!と音を立てて閉じた。
そして蛇口から、湯の代わりに白いガスが、シュウシュウと吹き出してきた。
夏彦はあわててガラス扉に駆け寄った。力いっぱいドアを引く。だが、扉はびくともしな
い。
「夏彦! ねえ夏彦!」裕美子は驚いてガラスを叩いた。
夏彦は「どいてろ!」と叫んで、浴用チェアをガラス目がけて投げつけた。だが激しい音
とともにチェアが跳ね返っただけだった。
白いガスは、浴室内に充満してゆく。それを吸った夏彦は、胸を押さえて苦しみ始めた。
「逃げろ! 裕美子! 早くここから逃げろ!」
「キャア! 夏彦! 夏彦ってば!!」裕美子は半狂乱でガラスを叩く。
ガスを吸い込んだ夏彦は、浴場の床に倒れ伏し、身体を折り曲げて激しくもだえた。そし
て、彼の身体には徐々に恐ろしい変化が現れていった。
「い、いやぁ! 夏彦! 夏彦ってば! 誰か、誰か助けてェ!!」

160:BeeFreak
04/11/13 03:29:04 bQXvoHye
夏彦の身体がドス黒く染まり始め、堅い殻のように変質していった。手の先、足の先は昆
虫の爪のように伸び、関節もカニの足のように変化した。髪の毛はすっかり抜け落ち、真
っ黒に染まった額からは、二本の触角が生えてきた。そして、人間の口を突き破って、昆
虫の大顎のような口器が現れた。
数分の後、夏彦の身体は、巨大な蟻のような姿に変貌していた。
あまりの恐ろしい出来事に、裕美子はもはや声を出すこともできず、床に這いつくばって
ガタガタと震えていた。
さっきまで夏彦だった怪物が、二本の足でフラリと立ち上がった。そして着ていたTシャ
ツと海水パンツを、ベリベリと引きちぎった。
浴場と更衣室を隔てていたガラス扉が、音もなく開いた。怪物は、四つん這いになっての
っそりと更衣室に上がり込み、ガクガク震える裕美子の方に近づいてきた。
怪物の目は昆虫のような複眼ではなく、人間に酷似していた。黒い顔面に白い眼球だけが
ギョロギョロと動いているのが無気味だ。裕美子は気付いた。さっき窓の外に見たのも、
これと同じ怪物の目だったことに。
「…な、夏彦なの? …嘘、嘘よね。こんなの嘘よね。…い、いやあ!」
怪物は、裕美子の顔に触角を近づけ、ギョロギョロした目で彼女の顔を凝視した。それは
もはや、夏彦の優しい、涼しげな目ではなかった。裕美子は必死で目を閉じ、顔じゅうを
まさぐる触角を避けようと必死で顔をそむけた。
やがて、興味を失ったのか怪物は立ち上がった。怪物の首に掛けられた、裕美子とお揃い
のネックレスがキラリと光った。かつて夏彦だった怪物は、さっき裕美子が無気味な目を
見た窓をガラリと開け放ち、外に飛び出して行った。
「あ…あ…あ…!」
怪物の姿が見えなくなると、裕美子は息を切らせ、声にならない声を上げた。そして満足
に動かない身体を必死に動かして、更衣室の外へと這い出して行った。

161:BeeFreak
04/11/13 03:30:03 bQXvoHye
その頃、綾奈はたった一人で、食堂の中に閉じ込められていた。
「ホールに出て待ってろ! 扉は開けておけ!」悲鳴を聞いた翔吾が、そう言い残して食堂
を飛び出していったのは、ついさっきのことだ。綾奈も彼の後を追って外に出ようとした。
だが彼女の目の前で、扉はバターン! という音を立てて閉じてしまった。綾奈がいくら引
っ張っても、頑丈な扉はびくともしなかった。
綾奈は、他に脱出口がないか探すことにした。こんなところには一人でいたくない。最初、
暖炉の裏側にある厨房に飛び込んだが、電気の場所がわからず、暗闇のままだったので引
き返した。仕方がないのでホールへと続く他の扉が開かないかどうか、ひとつひとつ確か
めてみることにした。
テラスに面したガラス扉の向こうは、相変わらず漆黒の闇だ。できるだけそちらを見ない
ようにしながら、綾奈は食堂の中を移動した。だが、彼女は見てしまった。
ガラスの向こう側に、白いドレスを着た女がいたのだ。長い髪に蒼ざめた肌の、美しい女
だ。
女は暗闇の向こうから、まるで宙を浮いているかのように、ススー、と近づいてきた。そ
してガラスに手を当て、綾奈を見て妖しく笑った。
「キャアッ!!」綾奈は叫び、駆け出した。女の姿は再びガラスから遠ざかり、闇の中へと消
えていった。
綾奈は必死で、ホールに通じる扉を引っ張った。もう嫌だ。こんなところにはもういたく
ない。だが相変わらず、綾奈の力では扉はびくともしない。
ダーン! 不意に、そばのピアノが大きな音で鳴った。


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