Crystal 椿に捧ぐ at POEM
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250:竹郷
17/05/13 02:34:56.17 c63WI9Ih.net
>>245-249
エル戦後・星の代弁者のセリフ

251:竹郷
17/05/21 00:06:54.92 kywHYSPD.net
232 自分:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0 [sage] 投稿日:2017/05/13(土) 01:14:38.75 ID:c63WI9Ih [7/25]
せき‐りょう〔‐レウ〕【寂寥】
[1][名]
  心が満ち足りず、もの寂しいこと。
  「寂寥感」
[2][ト・タル][文][形動タリ]
  ひっそりとしてもの寂しいさま。
  「寂寥とした冬景色」

252:竹郷
17/05/21 13:32:54.66 kywHYSPD.net
りゅう‐せい【隆盛】
[名・形動]
勢いが盛んなこと。また、そのさま。隆昌。
「隆盛を極める」「隆盛な社運」

253:竹郷
17/05/23 00:08:10.50 O456GMHm.net
あら【粗】(荒)
1 細かでない、すきまがある、の意を表す。「―垣」「―塗り」
2 自然のままの、の意を表す。「―がね」
3 おおよその、簡略な、の意を表す。「―すじ」

254:竹郷
17/05/23 00:08:51.52 O456GMHm.net
ブレイブルー
熱帯なのでお互いのコンボ精度や連携等に「粗(あら)」がある場合があります

255:竹郷
17/06/03 12:37:26.09 9A1zRbye.net
ちゃく‐しょう〔‐シヤウ〕【着床】
[名](スル)
哺乳類で、受精卵が卵割を終えて胚?(はい)?となった時期に
子宮内膜に達して接着し、母体との間に胎盤が形成されること。

256:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/04 12:26:04.02 KTfEmVRB.net
もう‐ろく【×耄碌】
[名](スル)
1 年をとって頭脳や身体のはたらきがおとろえること。老いぼれること。
  「近頃耄碌して人の名前が出てこない」
2 (「亡六」とも書く)上方?(かみがた)?で、武家奉公の下男。折助?(おりすけ)?。渡り中間。
3 上方で、けんか、ゆすりなどをする者。

257:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/06 22:06:54.12 aLE2IBEp.net
【鷸蚌(いつぼう)の争い】
《争っているシギとハマグリを一度に漁師がつかまえたという「戦国策」燕策の故事から》
両者が争っている間に、第三者に利益を横取りされ共倒れになることのたとえ。
→漁夫?(ぎょふ)?の利

258:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/06 22:09:14.39 aLE2IBEp.net
【先鞭(せんべん)を着(つ)・ける】
他に先んじて着手する。他の人より先に始める。
「新システムの開発に―・ける」

259:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/06 22:12:42.50 aLE2IBEp.net
じく‐じ〔ヂクヂ〕【×忸怩】
[1][名](スル)
  深く恥じ入ること。
[2][ト・タル][文][形動タリ]
  深く恥じ入るさま。
  「忸怩として非礼を謝す」「内心忸怩たる思い」

260:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/06 22:18:34.76 aLE2IBEp.net
む‐こ【無辜】
《「辜」は罪の意》
罪のないこと。また、その人。
類語 : 無罪(むざい)

261:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/07 15:13:26.34 pTaDXijw.net
ほと‐ばし・る【×迸る】
[動ラ五(四)]
《古くは「ほとはしる」「ほどはしる」とも》
1 勢いよく飛び散る。また、激しく流れ出る。噴き出る。
  「鮮血が―・る」「蛇口から水が―・る」
2 とびあがる。おどりあがる。
類語 : 飛び散る(とびちる) 跳ねる(はねる) はじける はぜる

262:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:52:15.49 2dzA1Uo2.net
その他の主な台詞一覧
『クナース・ワース』という小説が在る。 世界中で大ヒットした名作だ。
妻殺しの濡れ衣を着せられた主人公は、 裁判で終身刑を言い渡され、 片田舎のクナース・ワース刑務所に収監される。
結局彼は27年の後に執念の脱獄を果たす訳だが、 其れまでの間に様々な人間と出会う。
暴力看守に不正の所長、妻殺しの真犯人と色々だが、 その内の一人の男。
彼の辿った数奇な運命こそ、 私の興味を引き付けて止まない。
その男は長年、所内の図書館で司書を務めていたが、 やがて刑期を終えて釈放された。
自由の身に仮の宿りとして斡旋されたのは、古いアパートの薄暗い一室。
其れでも独房に比べればずっと明るく手広い。だが、彼は其処で首を吊って死んだ。
傍らの白紙に「我、此処に在り」とだけ残して。"自由"は"彼"に何を与えたのだろうか。
やはり何も与えなかったのか。其れとも逆に何かを奪って行ったというのか。
まあ要するに、私が言いたいのはこういう事だ。
ハッピーエンドは失われた。

263:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:52:38.33 2dzA1Uo2.net
子供の頃 よく空を見上げていた
眩しい日差しに眼を細め 無限に広がる蒼い空
終わりを知らぬ私の夢想が 息を切らして翔けていた
そして聞こえる空の声 両手で静かに抱き寄せる声
私の視線に空が応えた 私の軌跡が空と結んだ 私は両手で空に触れた
今も私は空を見上げる
終わらない蒼の世界 大地の稜線より駆け上がり 深く深くとこしえの空の底
吹き上げて舞い踊る風に 私はそっと祈りを乗せる
翼となった小さな心よ いつか見たその青空を 優しく優しく翔けてゆけ
空はいつだって其処にある
     キャサリン・フェジテ
 
ジークベルト:
先人の言葉は偉大なり、か…。
確かに空は其処にあるだろう。それは否定することの出来ぬ事実だ。だがそれだけか?
かの偉大な先人が、この空を見上げて、そんな事しか心に刻まなかったのか?
そうだ、空は其処に在る。常に其処にありて、そしてまた永遠に其処に無きもの。
私はそれを"絶望"と呼んでいる。
結局…。それを分かっているのは彼女だけか。白き翼を携えた、一人の天使。結末など、知れた事なのだがな。
折りしも運命が再動の気配を見せ始めている今日この頃だ。
此処は一つ、"彼女達の物語"を見せて貰うか。
それでは始めよう。
題名は、これを措いて他にあるまい。

264:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:53:38.17 2dzA1Uo2.net
この魂に遺された物。曖昧で、揺ぎ無く、何よりも近くて、幾ら手を伸ばしても決して届かない、
あの人の、唯一つの想い。
降りしきる雨の冷たさ。抱き締めた身体の温かさ。寄り添った笑顔の優しさ。頬に零れ落ちた、痛みにも似た熱さ。
そして憶えている。温もりは離れ、程無く潰えて。染み渡る儚さが、俺に永遠の離別を告げた。
この下に、俺の母さんが眠っている。子供の頃、よく此処で泣いた。誰にも見られないよう、秘め事にして、此処でだけ、俺は涙を流せた。
だが、何時からか、涙に取って代わった。疑念に似て程遠い、心を黒く震わせる情念。俺以外に、此処に来るべき“奴”がいる。
あの時、あんたは何をしていた?そして今、あんたは何をしている?
答えろよ、クソ親父が。
----
イーヴル「ギャアァァーーーッ!!!!」
レイク  「おらおらァ!死ねやバケモンが!」
イーヴル「ゲ…!ゲ…!」
レイク  「しけた声出してんじゃねー!もっと叫べェ!!」
イーヴル「ギャ…!ギギ…!」
イーヴル「ギャァァァァァーーーッ!!」
レイク  「そうだ…!その声だァ…!」
レイク  「堪んねェ…!ゾクゾクするぜ…!」
レイク  「ヒャーッハハハハハッ!!」
そう、イーヴルスイーパーをやる理由。それが半分は趣味で在る事の理由。
イーヴルを殺す事。それは一つの稼業、一つの正義として認められ、
大手を振って堂々と、何にも憚らずに為せる業。
故に俺はイーヴルを殺す。その血肉と悲鳴を刹那の潤いに。全てを棄てて、赤黒い風景に身を投げて。
生きれば生きる程、ムカつくだけ。世界がまた一つ、色褪せるだけだ。
死んじまえ。何もかも死んじまえ。
だがな、イーヴルさんよ。若し出来る事なら、俺はあんた達に一つ聞きたい事が有る。
生まれて来て、幸せだったか?

265:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:54:59.68 2dzA1Uo2.net
エンデ  :それから黒服の皆様方。邪魔。
黒服   :やめろッ! 何をするッ!?
エンデ  :サヨウナラ。(崖から落とされる)
黒服   :うわぁァァァーーーーーーッ!!!
エンデ  :あ?スッキリした。
ニクソン :何て事を!人の生命を何だと思っている!
エンデ  :別に良いじゃん。どうせ運命に選ばれなかった"その他大勢"の塵<エキストラ>なんだからよ。
 ボク達みたいなメインキャストと違って、奴らの存在には何の価値も無いのさ。
ニクソン :理解出来ませんよ…。
エンデ  :答えはイノセンス。狂わんばかりの愛くるしさ。清らかさ。そして残酷さ。
 その心を捕らえて放さない美しい時間。或いは最悪の罪科。子供で在るから、純粋で在るから、
 これ程に残酷なのだと?そう、何物にも希釈されない心のブラックな部分。
 しかしボクの場合は純粋故じゃない。"それ"がボク自身だからさ。
 "自身"という高位の存在にある"それ"は、ボクがあらゆる事共を知った上で、
 尚も希釈されずボク自身で在り続ける。言ってみれば、残酷の理想形<イデア>とでも。
----
仕方無いな。じゃあ、こんなのは?
レイク。御希望通りテメーをヤる。
そして死体をヴェーネに食わせる。
ゲロがタップリの胃袋。苦い汁の詰まった胆嚢。ビターな風味の肝臓。
ションベンの溜まった膀胱。クソの詰まった腸。
ぜーんぶミックスして、口の中に押し込んでやる。
へッ。ゲロ大噴出だぜェ?
ビシャーーーーーッってな。
弾みでクソやションベン漏らしちゃってさァ…。
そしたらソイツも混ぜ合わせて、その小奇麗な顔に塗りたくる…!
指に付けて、口に突っ込むッ!ノドの奥まで無理矢理ブチ込むッ!
またゲロが噴き出すッ!狂って死ぬまで吐き続けるッ!
ヒャーァァッ! たまんねー!イッちまいそうだぜッ!

266:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:58:00.07 2dzA1Uo2.net
ヴィルジニー:「私は御父様の所有物。望まれればこの生命も惜しまず捨ててみせる」
ヴェーネ  :「人として何を得る?人として何を失う?下らないわね。私は青空なんて信じない。」
エル    :「其れとも目を背ける?現実にして現実でないこの私から。」
エンデ   :「楽しいよな?生命を殺すことって。」
オーファ  :「そして見上げる青空を、その大きな翼で何処までも飛んでいける。」
キャサリン :「羽ばたくことを忘れた翼…、羽ばたくことを捨てた翼…。」
ケイン   :「言っただろ?縛られる程ガキじゃないって。」
ゲオルク  :「私は世界を食らう黒獅子だ。家畜など及びも付かん遥か高みの獣。」
ジークベルト:「ステレオタイプの幸福論の罪科と言う物だ。救い難い事よ。」
ドリス   :「おネエちゃんとイッショに居たい。おネエちゃんが、ワタシのおウチ。」
ニクソン  :「神…ですか…。その答えは、まだ保留にしておきます。」
ハイディ  :「しかし貴方如きの吹かせる風では私は微動だにしない。”それ”の重み故に。」
ハウゼン  :「これを以って遂に運命の最後の歯車が動き出すことでしょう。」
フォクシー :「あんなゴミ溜めに産み落とされるガキ共の不幸は、一体何なんだい?」
フョードル :「若し出来る事ならば、あんたさえも超えてやるぜ。」
フリッツ  :「僕は咎人、君は十字架。背負う事は在っても抱き締め合う事は在り得ない。」
ベネディクタ:「悲しみばかりが加速して行く…。最も大切な物を置き去りにして…。」
ミネルヴァ :「私は動いていたいのよ。この運命に、この手で関与したいのよ。」
ヤンシー  :「あの子を守りたい…!この生命に代えてでも…!」
ユアン   :「悪いな…。こうする事位しか、思い付かないんだよ。」
ランサード :「月並みに神を恨んで、即ち全てを諦めろとでも言うのか?」
レイク   :「だったら、帰ってみるか。あいつと居る時間は嫌いじゃないからな。」

267:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:58:55.06 2dzA1Uo2.net
ニクソン:ああ…。何て姿に…。
ヴェーネ:これが…。あの子供達だって言うの…?
ケイン :ガイアキャンサー反応…!キャンサーイーヴルだってのか…!
ユアン :変異の際にガイアキャンサーを引き寄せ、融合してしまうケース…。
     畜生ッ…!最悪の結果だ…!ニクソン…。こんな事を言うのは…。
ニクソン:分かっていますよ。子供達は、もう助からない。可哀想に。こんなにも苦しんでいる。
     早く楽にしてあげないといけません。
ユアン :本当に、良いんだな…?
ニクソン:中々寝静まらない子も居ましてね。私でないと、眠って呉れないのですよ。
---
ニクソン:
それでも、今の私はこうせずにはいられない!
筋違いだろうと何だろうと、セラパーソンに銃を向けずにはいられない!
何故だ!あの子達が何をした!何故こんな過酷な運命を背負わされる!
捨てた者達がのうのうと生き長らえ、捨てられた者達が非業の死を遂げるだと!?
ふざけるなァ!!貴方達は、天使じゃない。悪魔だ。

268:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/08 23:59:24.65 2dzA1Uo2.net
残念ながら人間は天使でも悪魔でもなく 人間 なのだ。

269:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:00:43.75 XpKtbQut.net
ああッ…!最高よッ…!
堪んないッ…!この光景…!
もっと濡らしてッ…!もっと汚してッ…!
この血肉の雨でッ…!
そうよ…!生命なんてこんなモノ…!
斯くも脆くバタバタと死んで逝く…!
大量にッ…!無味乾燥にッ…!ゴミ同然にッ…!
避けられぬ生命の宿命…!生命の本質…!
さあ嘆いて御覧なさい…!この凄惨な現実の上に立って…!
生まれて来なければ良かったと…!
この世はクズだと…!
生命は遍く虚しい物だと…!
血肉の雨に濡れながら、身を捩らせて…。
滑りを持つ素肌に、指を這わせて…。
轟音の最中で、悲鳴の如く喘いで…。
死滅と淫欲の、赤き海で悶えながら…。
吐息を漏らし…!身体を跳ね付かせて…!
恍惚の笑みを…!血潮と涙で彩って…!
果ててしまいたい…!世界で最も破滅に近しい、此の無上のエクスタシー…。
"死"と共に交わす、熱く淫らで、暗い契りを…。

270:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:01:25.40 XpKtbQut.net
ミネルヴァ:エッ…!ゲハッ…!ウゲェェェェェェッ!!
フォクシー:大丈夫…。落ち着いて…。
ミネルヴァ:ゲホッ…!ゲホッ…!
ケイン  :あ?あ、また見事にゲロったな。やっぱ免疫無いか。
フォクシー:ガキは黙ってな!
ケイン  :(ゲロってんじゃねーよ。目障りなメスだ。)
ミネルヴァ:だ、大丈夫…。
ミネルヴァ:心配かけて、御免なさい…。
フォクシー:良いんだよ…。謝らなくても…。畜生…。可哀想に…。てめえら!何時まで戦ってるんだよ!
 免疫無い奴にグロ見せやがって!クソバカ野郎が!!
ユアン  :済まなかったミネルヴァ。引き連れてまで見せる様な物じゃなかったな。
ユアン  :フォクシー。外でミネルヴァの介抱を。
ユアン  :此処は俺達四人で引き受ける。
フォクシー:良いの?
ケイン  :居るだけウザいんだよ。
ユアン  :おいケイン。次言ったらブッ飛ばすぜ。
ケイン  :(何キレてんだよ。 下らねえ正義感なんざ振り回しちまってさ。ウザ過ぎんぞ、テメー。
 アツいじゃねえか。燃えるじゃねえか。アイシャを嬲り殺したパーソンだぜ?
 オラオラァ!もっと死ねよ!もっと殺せよ!)
ケイン  :そうだ…。消えちまえ…。この世界…。グラウンドもフェジテも全部まとめて…。消えちまえ。

271:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:01:49.13 XpKtbQut.net
女の子  :ひぃっ…!
エンデ  :さーて。高い所は怖いかナ?
女の子  :怖い…!怖いよぉ…!
キャサリン:御願い…!やめてェ…!!
ケイン  :エンデ!! てめえーッ!!
エンデ  :これからキミは、此処から落とされて死ぬんだよ。
女の子  :いや…!死にたくないよぉ!
エンデ  :大好きなパパとママにも会えなく成るんだよ。
女の子  :ヤダァァァッ!!パパ!ママ!助けてェ!!
エンデ  :ヒャァ…たまんねェ…!おい、下の方。"雨"に気を付けな。
 コイツ、ションベン漏らしやがった。次はクソが降るぜー!
ケイン  :野郎ォォォ…!!
エンデ  :ヒヒッ…。おらァ!もっと泣け!わめけ!
女の子  :ウワァァァァッ!!怖い!怖いよーッ!!死にたくないよーッ!!
エンデ  :最高だァ…ゾクゾクするぜッ…!今にもイッちまいそうだ…!
女の子  :ウワァァァァァン!!アアアァァァァァァァッ!!
エンデ  :へへッ…。こんなエクスタシーは滅多に無いぜ…。
 能く楽しませて呉れた…。やっぱ最高の素材だよな…。さあ、今楽にしてやるよ。
ケイン  :やめろーッ!!
キャサリン:あ…!あァ…!
女の子  :グスッ…!エグッ…!楽に…するって…。助けて…くれるの…?
エンデ  :ふふん…。死んじゃえ。

272:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:02:23.34 XpKtbQut.net
「ヴェーネ。今日は御前の6歳の誕生日だったな。 私からのプレゼントがある。新しい猫だ。」
「…………っ!」
「如何した?御前は猫が嫌いだったか?」
「また…。ころしちゃうの…。」
「まさか。あれは私が如何かしていた。許せと言えた義理でもないだろうが。
だから今度こそ。正真正銘のプレゼントだ。ほら。可愛いだろう?」
「ネコさん…。 私はヴェーネ。よろしくね。」
「ヴェーネ。残念な報せが在る。 一週間前にあげた猫なんだが、如何やらとても悪い病気を持っていたらしい。
一刻も早く処分しないと、モンスター化して人を襲うかも知れないんだ。」
「しょぶん…?」
「このハンマーを使ってな。」
効果音の演奏:打撃3
「ねござん…。ねござん…。 ひぎゃぁぁぁぁぁー!」
「済まないヴェーネ。こうする他に無かったのだ。
せめて御前が此奴と仲良く成ってなければ、こんな悲しい思いをせずに済んだのだが…。 いやはや。残念な事だ。」
---
「ゲオルク。約束の餞別を貰おうかしら。 貴様の血肉を寄越せ。」
「御前は食い過ぎだ。健康の為に少し肉を落とした方が良い。」
「頂は既に崩壊を始めています。そろそろ諦めて落ちては如何ですか?」
「魂を冒涜せし者は、また魂に依り、魂までも滅される。」
「おネエちゃんをイジめるヒト。ゆるさない。」
「はっきり言って落ち目なんだよ。翌朝にはケイオスの片隅でボロ雑巾さ。」
「滅びなさい暴君めが。世界は貴方を拒絶しているわ。」
---
ジークベルト「素晴らしい…。心踊るゲームとは正に斯く在るべきもの…。
       結末に於いて予定調和ながらも、その過程に於いて十全に…。」
ヴィルジニー「黙れ。」
ジークベルト「何だと?」
ヴィルジニー「御前は如何もゲオルクに似ている。」
ジークベルト「だから何だ?」
ヴィルジニー「無性に殺したいのよ。 だから黙ってなさい。」
ジークベルト「………! くそう…!」

273:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:02:57.21 XpKtbQut.net
ランゲル :ゲオルクは物事の分かる男だ。 わしに送られて来た手紙には、先ず契約金と報酬の事が書いて在った。
 時候の挨拶すら言わずにだ。
レイク  :金が目当てか…。
ランゲル :そうとも。研究内容なんぞ如何でも良い。わしは金が欲しかったのだ。
ヤンシー :何て卑しい魂…。貴方、その自分の行いが如何なる結果を招いているのか分かってるの?
ランゲル :百も承知だ。その上で、わしは繰り返し言おう。 金の為なら、何でもすると。
ランサード:終わったな…。
ニクソン :ええ、もう引き返せません。
ミネルヴァ:それで? 金が手に入って幸せかしら?
ランゲル :"本当の幸せは金で買えるものではない"と…。そう言いたい訳か?
ミネルヴァ:ええ。
ランゲル :馬鹿がっ…!確かに…幸せは金では買えない…。
 だがわしが買いたかったのは、"幸せ"ではない。 "安心"だ。
フォクシー:成る程。"幸せ"は金で買えないけど、"安心"は金で買う事が出来る。
ランゲル :今も世界では多くの者達が、己が身を不幸と嘆き、或いは幸せに成りたいと叫んでいるだろう。
 だが彼らは大きな勘違いをしている。不安なのだ…!不幸なのではなく…!
 安心したいのだ…!幸せに成りたいのではなく…!そして購入可能なのだ…!金に依ってそれらは…!
ドリス  :おジイちゃん…。フアンだったの…?
ランゲル :そうとも。所帯も無し、人望も無し。有り金も残り少ない初老の人間に、どんな生きる道が在る?
 ホームレスか?犯罪を犯して刑務所暮らしか?それとも何処かの昔話よろしく、裏山に捨てられて死んで逝くか?
 増して肉体の衰弱で要介護者に成りでもしたら、もう眼も当てられんぞ?誰もわしの世話などしては呉れん…!
 糞尿で溢れ返る介護用オムツ…!そして孤独死…!
 終わりだ…!これがわしの辿る道か…!わしは塵に成るというのか…!
ヴェーネ :………。

274:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:03:26.83 XpKtbQut.net
ランゲル:金だ。金が全てを解決する。金さえ在れば、衣食住は完璧に保証される。
 ホームヘルパーだって雇える。或いはその専用の施設へ入居出来る。老人虐待の心配の無い一流所だ。
 わしは別に幸せになど成りたくない。愛だの友情だの、何処吹く風よ。
 只単に、安心が欲しかったのだ。金に依って保証される、無味乾燥で盤石な安心。
 不釣合いに綺麗な十字架まで続いている、独りきりの小道を。
 まあこんな老い耄れの悩みなど、若人たる御前達には分かるまいがな。
レイク  :ああ、分からねえな。こんな地獄の切れ端なのに。今更譲り合いも語り合いも無いだろうよ。
ヴェーネ :問題なのは、貴方が敵か味方かという事。貴方が何の悩みを抱えてようが、そんな事は如何でも良いのよ。
 そう…。如何でも良い…どんな道を辿ろうが…。塵に成ろうが成るまいが…。 煩いのよ…。はっきり言って…。

275:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:06:03.28 XpKtbQut.net
ジョシュア:正直言って驚いた。まさか政府に此の件を伏せて在るとはな。だが何の心算だ。或いは自ら死を求めると?
主人   :平たく言ってしまえば、そういう事か。
ジョシュア:逃れる事は出来ぬとそう諦めた訳では…。
主人   :それは無い。自らの意志だ。自ら望んで、この身を差し出した。
ジョシュア:奇特な男だ。
主人   :光栄だ。だがその前に君達の声を聞きたい。その数々の凶行の理由を。
ジョシュア:良いだろう。御前には特別に聞かせてみようか。
 だが、御前とて薄々感付いているで在ろう事だぞ?
主人   :真相その物に意味は無い。意味が在るのは、もっと別…。君から語られるという、その事にこそ。
ジョシュア:成る程。此れは、娘の復讐だ。ディスピス患者を強制隔離し、施設へ軟禁。
 絶望と孤独の中、生存確率30%未満の審判の日を待ち続ける…。黒き翼の生える、その日をな。
 ウィッグタウンの再来を塞ぐ為とは言え。他に方法が無いとは言え…。
 その何という人非人の行いか。
 気丈な大人さえも打ち砕くその境遇に、私の娘はたった独り放り込まれたのだよ。当時5才だ。
主人   :分かっているとも。反吐の出る類のインテリの仕事だ。
 システムを構築するカタルシスが全て。世界は机上、人は歯車。
 全てはオフィスにて思索され、全てはオフィスにて作られて行く。
 毎早朝に清掃業者が掃除をする綺麗な場所。目立つ塵の一つも落ちてはいない。まして現場の、血や涙など。
 以前、機会が在って施設を見学した。家に帰った私は意識が遠退き、気が付けば庭で焚き火をしていた。
 眼に映ったのは、ライターのオイルと、唖然として見詰める私の使用人達…。
 そして、あの仕事で貰った金だ。他に方法が在ったか否かとか。そんな問題ではない。
 そう、そんな仰々しい、事象の深遠を探る様な巨視的な物では。
ジョシュア:さに在らずんば、何とする?
主人   :私には背負い切れない。其れだけだ。
ジョシュア:御前は弱い人間だな。
主人   :分かっているよ。背中に喰い付く黒き翼の重みは、こんな物の比ではないだろう。
 それなのに、大人の私は此処で折れている。御前は弱虫だと、子供達は責めるだろうな。
ジョシュア:当然だ。

276:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:09:57.68 XpKtbQut.net
(埋め立てではありません・・・)

277:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:22:08.35 XpKtbQut.net
主人   :私は、甘んじてこの罪に殉じよう。或いは私自身の逃避と救いで在るとも、言えなくもないが…。
 それで君達が少しでも潤うのならば。それは幸いな事だ。
ジョシュア:まさか、御前が此処まで話せる人間だとは思っていなかった。
 これまでの犯行の中で、最大の誤算だ。最後に何か言い残す事は在るか?
主人   :名前を…教えて呉れるか?出来る事なら、彼女に会って謝りたい。
ジョシュア:それは在り得ない。その真なる愛の場所に於いては。
主人   :だとしても、この心に刻ませて呉れ。死に際の最後の罪の刻印として。
ジョシュア:分かった。その心意気を買おう。娘の名は、アイシャだ。
主人   :そうか…。彼女はアイシャと言うのか…。
ジョシュア:では…行くぞ。少ないが感謝の証だ。苦しまぬ様に即死させてやる。
 安らかに還るが良い。彼の悪夢を逃れ、真なる愛と幸福の場所へ。
主人   :君達と話が出来て、本当に良かった…。
ジョシュア:私もだ。

278:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:23:11.68 XpKtbQut.net
エル:
さあヴェーネ、運命の刻限よ。御前に星が救えるかしら?飛べない翼の天使様。
倒せるものなら倒してみなさい。欲しくもない生命の営みを求めてね。
ヴェーネ:
もとより義務と責任と使命。私の意思を云々する事ではない。
私はセラフィックブルー。この刻の為だけの救世の道具。星を救い、双翼の想いを解き放つ!
エル:
フッ…。やはりこの程度の力では死ねないか…。それじゃあ好い加減、本気を出してあげようかしら。
滅せよ!そして帰せよ!万象の母の胎内へ!此処は私達の真意なる闇の底!虚無をして愛たらしむる運命の空!
エル:
決着を付けようかしら、ヴェーネ?私の総てを注がれて、御前は無残に果てる以外に無いのだから。
さあ…。身を捩り魂で悶えなさい。生を厭い、死を求め、真なる自己を声高に奏でるのよ。
そして禁断の欲望に濡れて、私と一つに結ばれるのよ…!
受け取りなさい!私より御前へ贈る契りの抱擁!救済のカタストロフィを!
ヴェーネ:
それでも私はこの双翼を選ぶ…!世界を救い己を殺す、この運命を行く…!
これ以外の如何なる道も、私には赦されず、与えられず…。
ならばエル…!隠滅すべき私の本性…!
今こそ御前を倒して、総てを終わらせる!
そして物語は閉じられる
総てを失った
塵に等しき天使と共に
Close with Tales
------
嘗て子供達がイーヴルに変異し、私達は神の不在を悟って教会を燃やしました。
しかしそれは筋違い。
神が何で在るかとか、或いは神が存在するかとか、そんな事に意味は無いのです。
神という偶像を共有する事で、人々が結び合う事。
神とは、存在ではなく手段なのですよ。

279:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:23:40.50 XpKtbQut.net
ミネルヴァ:
フェジテ城内には、ワンフロアを殆ど占める程の大きな美術室が在る。
そしてその中でも最も目立つ場所。その時勢で最も貴重とするべき作品の置かれる場所。
数多の調度品や芸術品を差し置いて、今は其処に、一点の簡素な肖像画が飾られている。
あの場所に集まった際、私が思い立って絵師を連れて来て描かせた物だ。
その選択は正解だったと確信している。何故ならこの一枚の絵は、全てを語る。
幾千万の言葉よりも饒舌に。どれだけの無言よりも静やかに。
そして如何なる語り手よりも心を込め、真実と情感を携えて。彼女にまつわる、数々の物語を。
確かに世界は救われた。確かに彼女は生きる意志を持った。そう、あのカオスと現世の狭間の場所で。
レイク、ユアン、そしてフリッツ。大切な人々の想いに包まれて。彼女は無よりも有を選択した。
だが、想いは魔法ではない。全ての闇をたちどころに払う訳ではない。
彼女が生きる事を決めたのも、至極ドライに言えば、その場限りでの感情。
根本の闇は消えていない。一時的に温もりを得たに過ぎないのだから。でも…。
たかが一歩か。されど一歩か。そう問われたなら、私は希望を見て後者を支持しよう。
ヴェーネはあの時、生きる事へ、大きく一歩だけ踏み出した。その胸に、温かい想いと冷たい闇を抱き締めて。
あの後、私達は責任問題の意味も含めて、彼女にカウンセリングプログラムを用意した。
またプログラム外ではフリッツが率先し、凡そプライベートを擲ってケアに努めた。
彼女を蝕む数々の闇。一つはエルやケイン達に見る事例。
エルを生み出す原因で在ると同時に、事実としてケイン達との共感も獲得した厭世観。
またクナース・ワースに沿う事例。自らの運命に対する順応。
セラフィックブルーとして確立された自己の存在意義。
詰まる所、運命の終焉と同時に泡沫と消えて無くなった自己の存在意義。
完璧なまでに失われた、生きる道。そして最後に、進行性カーネル剥離症。
唯此れに関しては、彼女の反応は予想を裏切って静かだった。
生を謳歌する身に為された宣告でなく、生ける屍に近付く身に為された宣告だからか。
まるで"ほら来た"と言わんばかりの冷たい反応。その事を私に語ってみせる彼女の眼差しは、冷たく淀んでいた。
私は悲しくて、涙を堪えるのに必死だった。

280:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:24:02.18 XpKtbQut.net
自殺未遂3回。施設収容期間延べ2ヶ月。
またエンヴィ・ケイオスにて、麻薬の不法所持及び投与の現行犯で保安局に身柄確保されたのが1回。
但しこの街では昔から"身内"が羽目を外すので、本件も"カード"を切って事無きを得た。
現在もプログラムは継続中。成果は一応出てはいる。
主な"好ましくない"出来事は、何れもプログラム開始から1年以内に起こり…。
其れ以降のこの1年は、緩やかな回復傾向が認められる。
但しバイオリズム周期や天候等の外的要因から、一時的な症状後退が見受けられる事も多い。
またプログラム外の話だが、フリッツの方の磨耗がいよいよ顕著に見えて来た。
場合に依っては彼に対しても新たにプログラムを用意する事に成るだろう。
総合的な結論として、全ては暗い霧の中。未来は見えず。先行きは保証されず。
死の崖淵から幾らか歩いて遠ざかったが、走れば簡単に飛び降りられる距離。
例えば自殺とは悪行なのか否か。彼女の事を思う度に、私は考える。
今は勿論自信が持てないし、今後も結論を下す事は出来ないだろう。
或いはこんなプログラム、自殺を禁忌として回避する様な行いなど止めて、
彼女を放任しておくべきなのかも知れない。
私は所詮彼女ではないし、彼女にとって世界とは原則として絶望なのだし。
事実、私としても一つの決意を抱いている。
"最悪の結末"が訪れたならば、私は涙を拭き、彼女の旅立ちを祝福しようと。でも…。
全てが不確かなこの闇の中、真実として静かに息衝いている、彼女の肖像。
私はこの絵に笑い掛け、胸の内に温かな希望を抱き締めよう。だって…。
そうそう。話は変わるけれど…。この美術室の中で唯一、この絵には題名が付けられてない。
此処に描かれた人が、もう何者にも規定されず永遠に自由で在れ。
そういう、一種の願掛けみたいな意味も在るのだけれど…。
其れ以前に、一々名前を付ける必要も無い。
若しこの絵と向き合ったなら、もう題名など如何でも良い事なのだから。
其れでも…。其れでも敢えて口に出すのならば…。題名は此を措いて他に無いわね。

281:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/09 00:24:47.35 XpKtbQut.net
以上、某ゲームの台詞の抜粋でした。
未来の僕、たまには気づいてくれ。
この楽観に。

282:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/11 21:59:55.00 dFZITF5z.net
ねん‐ぱい【年輩/年配】
1 年齢のほど。としのころ。「同じ―の人」
2 世間なれした年ごろ。中年以上の年ごろ。「―の女性」
3 年齢が上であること。年上。「彼は私よりいくつか―だ」

283:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/12 18:22:12.03 kcBrB6tS.net
グリモワール(呪分書)
URLリンク(ja.wikipedia.org)
フランス語で魔術の書物を意味し、特にヨーロッパで流布した魔術書を指す。グリモワ、グリモアとも表記される。
奥義書、魔導書(魔道書)、魔法書ともいう。類義語に黒本、黒書(black books)がある。
狭義では悪魔や精霊、天使などを呼び出して、願い事を叶えさせる手順、
そのために必要な魔法円やペンタクルやシジルのデザインが記された書物を指すが、
魔術を行う側の立場から書かれた悪魔学書、魔術や呪術などに関する知識、
奥義を記した古文書、書物全般のことを指す場合もある。
『ソロモンの鍵』『ソロモンの小さな鍵』『黒い雌鶏』などが有名で、特に『大奥義書』の異本『赤竜』に加えられた、
黒い雌鶏を使った召喚儀式に登場する「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」(Eloim, Essaim, frugativi et appellavi)
という呪文は、『魔界転生』や『悪魔くん』、『四月は君の嘘』などの作品に取り入れられ、日本でも有名である。

284:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/21 06:33:34.10 Ko9ADdzk.net
「先生、トイレ行ってきます。」
「清水、またか。今度は休み時間に済ましてこい。気をつけろ。」
「はぁい」
「全く、弛んでいるぞ」
 変化があったのは3日過ぎた頃だった。私は番長の尾行をしている。番長は
いつも屋上に居た。だが、その日は居なかった。慌てて周りを見渡しても姿は
無かった。仕方なく階段を下り教室へ戻ろうとする。ふと廊下の窓から気づい
たのは中庭で煙草を吸っている女子の上級生だった。私は教室に抜け出すと
いう行動に慣れてなかったため、こういう生徒もいるもんだと多少上から目線で
関心したと同時に訊ねみたくなったのだ。1階に下り、中庭に出る。私は声をか
けてみた。返事はなかった。少し動揺している私を見てその女子は私を凝視す
る。すると、何かを察したのか
「番長に・・・用があるんでしょ」
「そうです」
「なら、保健室にいるよ」
「そうですか。失礼ですが貴方は、番長と何か関係ある方でしょうか」
それ以降、女子生徒は黙りこみ、煙草を吸っていた。私はその場から立ち去った。
 これは参った。保健室となると、尾行しようにも姿は見られない。番長はまだ保健
室にいるのか。その場所へ行き廊下に立ってみると、曇りガラスが入っており、中の
気配を感じつつも、何をしているのか、どうして保健室なのか、わからない。
 授業終わりのチャイムが鳴る。私は慌てて教室に戻ることにした。すると、科目の
担任と鉢合わせになり、注意を受けたが腹を壊したと当たり障りのない理由を述べ、
なんとかやり過ごした。この手を使うのは、そろそろ限界である。これ以上は担任に
疑われる。マークされたら、元の子も無いので私は身動きが取れず、次の日からは
授業に打ち込んだ。番長の動向を気になりながらも。

285:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/21 06:46:17.53 Ko9ADdzk.net
 数日後、居たたまれず授業を抜け出した。今回は無断で。これは無茶だったか。
しかし、なんとか通った。担任はその都度授業次第で変わるからだ。だが教室内
では私の行動を訝しむ生徒は居ないわけではない。理由を察しているのだろうか、
番長を追いかけているという事実を知らない、勘繰っている生徒はいないことでも
ない。
 最近はほとんど保健室だった。番長が室内から出てきたのは張り込み続けて
6日目のことだった。だが、5日目は注意された担任と同じためだったので身動き
は取れなかった。番長は何をしていたのだろう。尾行を止め、私は保健室に入った。
特に体調を崩すことは無かったため、初めて入るところだった。それは、私の想像
を越えた、何か仰天したのである。保険医は女性だった。それだけではない。容姿
は整っていて、化粧もしている。口紅も赤色に染めており、何とも妖艶な感じがして
私は目のやり場に困った。
「どこか具合が悪いの」
保険医の質問に私は返事に困った。すかさず「頭痛がする」と直感で答えたが、
彼女は怪訝に私を見つめた。
「さっきの番長のことでしょ」
私は何も起点も利かず「はい」と答えるしかなかった。

286:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/21 06:57:12.70 Ko9ADdzk.net
「なら、早々に立ち去ることね。彼は複雑な事情を抱えているから。尾行している
んでしょ。貴方、彼に気づかれているわよ」
またしても予想外の質問だった。気づかれないつもりだったのに、さすが敏感な
のは彼の今までの努力の賜物なのだろうか。ここまできたら、もう何も考えず
「番長・・・いえ、あの生徒はここで何を」
「ただの治療よ」
妖艶な彼女は席から立ち上がり、何をするかと思えば窓を開け、煙草を吸い始め
た。こんな先生がいるとは、私は呆気に取られた。そして治療が嘘なのは一目で
わかった。私は質問を続けた。
「貴方は、彼に何かしたんですか」
彼女は返事をせず、黙っている。私は罰を受けた気持ちになり、眩暈をした仕草を
咄嗟にしてしまった。意を決した彼女は
「貴方、そんなに気になるのなら言っとくよ」
「はい」
「彼の・・・弱みを握っているのよ」
「弱み・・・?」
私は怪訝な表情を浮かべた。

287:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/21 07:21:07.75 Ko9ADdzk.net
 私は事実を直感した。番長の気持ちを変えたのは、この妖艶な女性保険医だと。
そうとなれば彼女にすかさず質問を重ねたくなる。チャイムが鳴った。彼女は何も
言わず、保健室から出ろという仕草をした。これ以上は、どうにもならないと察した
私は仕方なく室から出ることに。
「弱みを握っている・・・?」
弱み、という言葉が私の頭の中を繰り返した。このままではいくら調べても、彼女
は口外には出さないだろう。それに、尾行は番長に気づかれている。決断した。
私は彼に対峙すると。
 いつものように私は授業を抜け出した。そして屋上へ。番長の姿はあった。柵か
ら景色を見上げている。風が強くなびいていた。怖いのか、緊張感はあったが、そ
れほど肝を据わってないわけではない。意を決して前に出ると、彼は振り返った。
 私の姿を直に認識した後、あまり興味がないのか顔を外に向ける。
「あの・・・」
無神経に声をかけてしまった。すると番長は
「俺を追いかけるのは止めろ。不良だぞ」
と言葉を切り、私はなすすべもなく頭の回転も利かず、そのまま立ちすくむしか
なかった。風の強さが弱まると私は訊きたいことが頭に浮かんだ。
「どうして喧嘩番長をやめたんだ」
番長は応えない。大きな溜息を吐き
「保険医に、会っただろ」
私は思い出した。彼女は、弱みを握っていると言ったことを。
「俺は己の強さだけを求めてのし上がってきた」
明らかに単純な動機だ。寧ろそれだけなのか。私は意気が下がる感覚を覚えた。
「もう関係ないだろ。立ち去るんだな」
そう言うと番長は高台の景色に振り返り、私に背を向ける。私はいったん諦める
ことにした。残念に立ち去ろうとすると
「ささくら、けんただ。」
「え・・・」
「笹倉健太。それが俺の名前だ。あとは自分で調べるんだな」
私は探偵になったつもりになったのか意気を取り戻した。
「いいか、俺以外にだぞ。俺の口からは何も言えない」
ありがとうございました。という図らずも敬語で会釈をし、屋上から降りる。私は
真実を知りたいが、どうするか提案はない。

288:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/21 07:35:42.05 Ko9ADdzk.net
 翌日、保健室に立ち寄った。保険医は「どうしたの?」と応える。私は当たり障り
もなく「腹痛がするんです」と答えた。その嘘はバレて
「まだ彼を追っかけているの?ふふ、不思議な子ね。まあ、私も人の事言えない
けど」
「人の事?」
「私は彼に魅力を教えてあげたのよ」
「どうして・・・?」
「彼は・・・男色だから」
また私は罰を喰らった。
「だった・・・と言ってもいいのかしら」
「貴方は・・・」
言葉を切る。もう既にわかっている。私は言葉を出さずにそのままでいると
「彼は大人になったのね。私がちょっと手を出したくらいで、それは始めは拒んだわよ。
意外と純情でね。いや、その純情さが彼を強くしたのだけれどね」
「先生がそんなことしていいんですか」
純情という言葉を聞いて、私もその純情という言葉に反応したのか、直接当り前の事を
訊いてしまった。保険医は私を一瞬睨んだあと、表情を柔らかくし
「彼の匂いに魅かれたのよ」
そう言って、椅子から立ち上がり、また煙草を吸おうとする。
「どう?ベッドに寝るの?それとも教室に帰る?まだ授業中よ」
これ以上、問い詰める理由はなかった。番長は大人になった。その理由が彼の心境を
変化させたのか。
 番長は女を知った。それが、彼を変えた理由であった。

289:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/22 04:01:04.16 Gn59yctMF
        __|\
        >  N
       /〃 .:y´\
       フ  ,リ《\._ノ
      イ ,,く゚ ,ヾ.Vメ_゚〉
======[○=○D
      リ´ 〈、,,└┘,,〉
         し ´⌒`J

290:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/23 03:27:25.33 ZMnHeX5pi
test します

291:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/24 08:47:29.37 hMnVxUwc.net
てす

292:名前はいらない
17/06/24 09:13:13.25 hMnVxUwc.net
細々

293:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/06/28 14:38:42.18 F4UVgcIC.net
ススッ

294:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/07/12 08:47:15.62 4HnyT2s/.net
人に認めてもらう人生より、自分を肯定できる人生を送りたい。

295:なゆた ◆UtAvihrVs6
17/07/21 09:57:22.44.net
てす

296:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/07/23 01:22:49.04 NHNWuoCk.net
俗信(ぞくしん)
URLリンク(ja.wikipedia.org)
 社会において広く流布され伝承されてきた、ものごとの捉え方や考え方、また考えられた内容を言う。
なぜ、そのような把握や考えが妥当かということについては、「昔からそう言われている」というような
歴史的な継承性や、社会的な流布性の事実を根拠にする。
 俗信は迷信と異なり、必ずしも間違った考えではないが、なぜ正しいのかという根拠が、
伝承や社会での流布に依拠しているため、しばしば誤謬や空想や錯覚であることがある。
しかし、俗信のなかにも、科学的な事実が明確でなかった時代の経験を通じた智慧が含まれることもある。

297:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/07/23 01:37:21.93 NHNWuoCk.net
会社に属しない者は人在らずだが、会社というものは全てブラック企業だ。

298:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/07/27 06:39:18.53 +LhYdNWq.net
ナイーブ【naive】
[形動]
飾りけがなく、素直であるさま。また、純粋で傷つきやすいさま。単純で未熟なさま。
「ナイーブな感性」「ナイーブな性格」
類語 : 純真(じゅんしん) 純情(じゅんじょう)

299:竹郷 ◆dx03TDrXVVl0
17/07/28 22:28:58.09 be+wVduU.net
さい‐しょう〔‐シヤウ〕【宰相】
1 総理大臣。首相。「一国の宰相」「平民宰相」
2 古く中国で、天子を補佐して政治を行った官。丞相?(じょうしょう)?。
3 参議の唐名。
類語 : 内閣総理大臣(ないかくそうりだいじん) 総理大臣(そうりだいじん)
     総理(そうり) 首相(しゅしょう)

300:竹郷
17/08/03 05:02:52.10 7riKgu9Q.net
がい‐とう〔グワイタウ〕【外套】
防寒などのため、衣服の上に着るゆったりした外衣。
オーバー・マント・二重回しなどの類。《季 冬》
「―の釦?(ぼたん)?手ぐさにただならぬ世/草田男」

301:竹郷
17/08/05 04:31:33.52 1JeW6GPb.net
12 自分:名無しさん@涙目です。(栃木県)@無断転載は禁止 [ニダ][´∞`] 投稿日:2017/08/02(水) 22:12:06.44 ID:iNyC4dr90 [2/7]
明日は東京行くよ。
浅草と新宿と出来たら原宿と秋葉原!
13 返信:名無しさん@涙目です。(アメリカ合衆国)@無断転載は禁止 [IT][sage] 投稿日:2017/08/02(水) 22:13:28.46 ID:nRLagA1s0 [10/19]
>>12
浅草→秋葉原→新宿→原宿の順またはその逆が正解。移動が最短距離で済む。
25 名前:名無しさん@涙目です。(アメリカ合衆国)@無断転載は禁止 [IT][sage] 投稿日:2017/08/02(水) 22:46:49.76 ID:nRLagA1s0 [12/19]
東京都心を移動するには地下鉄が有効。山手線の南半分なら銀座線、半蔵門線、
千代田線あたり、北半分なら有楽町線、丸ノ内線をうまく使うと時間の節約にな
っておすすめ。
27 返信:名無しさん@涙目です。(アメリカ合衆国)@無断転載は禁止 [IT][sage] 投稿日:2017/08/02(水) 22:49:29.56 ID:nRLagA1s0 [13/19]
>>26
浅草から秋葉原は銀座線だぜ。末広町で降りる。
30 返信:名無しさん@涙目です。(アメリカ合衆国)@無断転載は禁止 [IT][sage] 投稿日:2017/08/02(水) 22:57:13.56 ID:nRLagA1s0 [14/19]
>>29
原宿から東武伊勢崎線方面に戻るなら地下鉄千代田線の代々木公園あるいは明治
神宮前から北千住にまっすぐなのだが、千代田線の駅は見つけにくいかも^^

302:竹郷
17/08/09 23:22:23.83 0yI9f4Lq.net
濁点(だくてん) 「ざ」などの「゛」。
読点(とうてん) 「、」
句点(くてん)  「。」

303:竹郷
17/08/12 06:11:55.13 SFjMiO77.net
音紬ぎ(おとつむぎ)

304:竹郷
17/08/18 09:48:14.42 eqP+fgI4.net
す・べる【統べる/▽総べる】
[動バ下一][文]す・ぶ[バ下二]
1 全体をまとめて支配する。統轄する。「国を―・べる」
2 多くの物を一つにまとめる。

305:竹郷
17/08/22 23:23:30.08 hXZcuuFb.net
とめどなく囁く 18
 塩崎の娘は、どんなことを言うのだろうか。
言葉を待ちながら、早樹は身構える自分を意識していた。
「下の娘は、あなたと同じくらいの歳なんです。
今、三十六くらいかな。
そいつが、子供の時から、自分は霊が見えるって、
よく周囲の人間に言っていたらしいのです。
その話を家内から聞いた時、僕はあの子は頭が大丈夫だろうかと、
本気で心配しましたよ。
とんでもない目立ちたがり屋なんじゃないかってね。
よくいるでしょう、ありもしないことを言って、
注目を集めたい人が」
 塩崎は同意を求めるように早樹の目を見た。

306:竹郷
17/08/22 23:26:33.89 hXZcuuFb.net
 しかし、塩崎の娘の話だ。
早樹は慎重に言葉を選び、小さな声で言う。
「そうですか」
「彼女は学生時代から、親元を離れて暮らしていますから、
そんな癖もすっかり治ったと思っていたんです。
そしたら、家内が亡くなった時に、ここに来てやっぱり言うんですよ。
この家には、ママがまだいるってね。
ほら、そこに来てるよって、寝室(しんしつ)の暗がりを指差したりするんです」

307:竹郷
17/08/22 23:30:38.97 hXZcuuFb.net
 塩崎の娘の悲しみはわかるけれども、オカルトは苦手だ。
早樹は、霊能者と呼ばれる人々に、何度も嫌な目に遭(あ)わされていた。
 早樹が思わず目を瞑(つぶ)ると、塩崎が謝った。
「怖がらせたなら、すみません」
「いいえ、私は平気です」
 早樹は落ち着いて塩崎の顔を見返した。恐怖などなかった。
それよりも、塩崎と、自分と同じ年頃だという娘の間に、
何か確執があるのだろうかと考えていた。

308:竹郷
17/08/22 23:32:03.07 hXZcuuFb.net
かく‐しつ【確執】
[名](スル)
互いに自分の意見を強く主張して譲らないこと。
また、そのために生じる不和。かくしゅう。
「兄弟の間の確執」

309:竹郷
17/08/22 23:36:03.67 hXZcuuFb.net
 塩崎が続ける。
「ママがこの家にまだいてくれるなら、僕は嬉しいよ、
ともかく謝らなきゃならないからね、と娘にははっきり言ったんですけどね。
娘は、ここは怖いからとか言って、うちには寄りつかなくなりました。
その時は、本気でまだ霊魂なんか信じていたのかと、驚きましたね」
「お嬢さんは、ずっと霊の存在を信じていらっしゃったのですね」
「ええ、そうです」と、塩崎。
「塩崎さんは、信じていらっしゃらないのですか?」
「もちろんです。僕は非科学的なことは大嫌いです。
霊魂が見えるなんて、一種の信仰ですよ」
 塩崎はきっぱり言った。

310:竹郷
17/08/23 06:39:16.51 VxpOHtIV.net
とめどなく囁く 19
「ただですね、娘の話を聞いてから、ちょっと考えが変わったのは事実です。
本当に家内の霊魂がその辺に漂っていると言うのなら、
僕の決意を聞かせてやろうと。
もう仕事は辞めるからねって。公に言ったから信じなさいよって。
もうずっと家にいることにしたから、あなたも安心してお眠りなさいよ、とね。
霊なんか信じていないのに、娘に影響されるのは矛盾していますが、
何だかそう思えてきたのですよ」
「塩崎さんは、ユニソアドの社長をお辞めになるんですか?」
 早樹は驚いて塩崎の真意を探ろうと、その顔を見た。
塩崎はまだ65、6歳のはずだ。
「はい、じきに息子に譲ろうと思っています」
「それは、お嬢さんが霊が見えると仰(おっしゃ)ったからですか?
それが契機だからですか?」
「だから、それもある、と言ったでしょう」
 その時の塩崎は苛立(いらだ)ったように見えた。
「塩崎さんは、その後、どうなさるんですか?」
 早樹はめげずに質問を続ける。
「多分、会長職になるでしょうが、名目だけにしますよ。
ほとんど引退して、庭いじりでもしようと思っています」
 塩崎は再び、目を庭に転じた。トンビが二羽、秋空を舞っていた。

311:竹郷
17/08/23 06:39:27.27 VxpOHtIV.net
「まだお若いのにどうしてですか?
さっき仰ったように、奥様の霊を慰めるためですか?」
 しつこいと思ったが、どうしても聞きたかった。
塩崎はもう苛立っていなかった。静かに答える。
「いやいや、何度も言いますが、それは信じていないのです。
ただ、考えるきっかけになったということです。
僕は仕事するのに急に飽(あ)いたんでしょうね。
これで一生が終わっていいのかって思ってね。そしたら、何だか嫌になった。
みんな歳を取ると、やり残したことに気が付くらしいんで、私も何か探そうかと思ってね。
そんなことを言うと、あいつもとうとうヤキが回ったなと言われるでしょうね。
でも、いいんですよ、ヤキが回っても。
私は私の道を行く、ということですから」
 塩崎はさばさば言って、もうないのか、
とコーヒーカップを覗き込むような仕種(しぐさ)をした。
 早樹は思い切って訊ねた。
「塩崎さんは、信じていないと仰いますが、
その決意を奥様の霊に聞かせたいと思っておられるように感じます」
 塩崎が微笑(ほほえ)んで、早樹の顔を見た。

312:竹郷
17/08/23 12:50:14.15 VxpOHtIV.net
とめどなく囁く 20
「あなたは面白いことを仰いますね」
「そうでしょうか」と、早樹は首を傾(かし)げた。
「面白いですか。私は何だか悲しいなあと思いながら、
伺(うかが)っていましたが」
「悲しいか。なるほど、あなたには吸収力がありますね」
 吸収力とは、他人の悲しみを吸い取る力か。それとも同調する力か。
早樹が、塩崎の話に興味を抱いたことは確かだった。
 多分、塩崎の心に、誰かが絶えず囁いているのだ。
あなたはそれでよかったのか、と。
 早樹にはその囁きが聞こえるような気がするのだ。
「いいえ、私にはわかりません」
 しかし、早樹は曖昧に答えた。
 急に、取材対象者と話に興じている自分を恥ずかしく思ったからだ。
「すみません、出過ぎたことばかり言って。お許しください」
「いいんです」塩崎は手をひらひら振った。
「僕も誰かとこんな話をしていると、気が楽になりますから」
「それならいいのですが」

313:竹郷
17/08/23 12:59:13.10 VxpOHtIV.net
 早樹はICレコーダーの様子を確かめるふりをしながら、腕時計をちらっと見た。
この家に来てから、三十分が過ぎていた。
「僕の家内はですね。去年の暮れに、この家で亡くなったのです」
不意に、塩崎が打ち明けた。
「このお宅にでですか?」
さすがに驚いて聞き返す。
「そうなんです」塩崎は思い出すように中空に目を遣(や)った。「クリスマスまで、
あと三日という日でした。僕は大阪に出張していました。そこに、お手伝いさん
から連絡がありましてね。家内が家で冷たくなっているということでした。
それで慌てて帰ってきたのです」
 早樹は急いでICレコーダーを止めた。
早樹の心遣いを認めた塩崎は、礼をするように頭を下げた。
「お手伝いさんは、毎週月、木、土に出勤してきて、
家の掃除や家事の手伝いをしてくれることになっていましてね。
僕が出張に出たのは、火曜でした。その時は家内も元気でした。
『じゃあ』と言ったのが最後です。
次にお手伝いさんは木曜に来たのですが、冷たくなっている家内を、
風呂場の脱衣場で発見するんです」
 塩崎はいったん言葉を切った。

314:竹郷
17/08/23 23:33:36.73 VxpOHtIV.net
とめどなく囁く 21
「家内が倒れたのは、おそらく火曜の夜の出来事らしいです。
風呂から出て、脱衣場で服を着ようとして倒れた。
脳溢血(のういっけつ)でした。
誰もいないのに、動けない、連絡もできない状態だったようです。
犬がそばに蹲(うずくま)っていたそうですが、
犬は電話できませんからね。
私が当夜いなかったばかりに、家内には、
可哀相な最期を遂げさせてしまいました」
 極寒の季節に裸で倒れて、動けないまま死んでゆく。
その状況を想像することすら、辛い作業だった。
「それは、とてもお気の毒です」
 早樹は小声で言った。
「本当に意外な別れでしたね」と、塩崎。
「人は別れ方を選べない」
「でも、お嬢さんはどうして、怖いと仰るんでしょうか?」
 思い切って聞いてみる。塩崎が首を傾げた。
「さあ、真意はわかりませんが、
私に怒っているのでしょう。
本当に遊んでいたわけでもないのですから、
運が悪かったと思うしかないのですが、
一番仲のよかった娘には、
動けなくて死んでいった家内の口惜しさや無念さが
伝わって、私への怒りに転化しているのでしょう」

315:竹郷
17/08/23 23:51:55.09 VxpOHtIV.net
 何と言っていいのかわからず、沈黙していると、
塩崎は夢から醒(さ)めた人のようにはっとして、
照れ笑いをした。
「すみません。加野さんに、こんな話をするつもりは
なかったんですよ。
お一人でいらしたので、何だか調子に乗って話して
しまいました。
完全に私の甘えですね、申し訳ありません」
「いいえ、とんでもありません」
 早樹はかぶりを振った。
記事の掲載を、塩崎は認めるだろうか。
それが心配だった。
「塩崎さん、今日のお話はどういたしましょうか。
サイトに載せるのはおやめになりますか。
それとも、私の方でいったん纏(まと)めたものを
読んで頂いてから、掲載をどうするか決める、
という形ではいかがでしょうか」
「そうして頂けますか」
 塩崎が安堵(あんど)したように息を吐いた。
「では、お写真だけ、撮らせてください」
 早樹は、スマホで塩崎の正面からの写真を数枚
撮り、塩崎に見せた。
「写真がお上手ですね」
 塩崎は世辞を言った。
 しかし、思いもかけず、塩崎の打ち明け話を
聞かされた早樹の心は重かった。

316:竹郷
17/08/24 11:12:32.66 A7hYgqhS.net
とめどなく囁く 22
 数日後、早樹の名刺にあるメールアドレスに、塩崎からメールが届いた。
 先日のインタビューはやはり掲載しないでほしい、とあった。
 無理からぬことだった。犬が騒いだことをきっかけに、
思わず心情を吐露してしまったのだ。
誰にも言えないことを喋ってしまった後悔は、よくわかる。
 了解した旨の返信を書くと、丁重な詫(わ)び状とともに、
「迷惑料」ということで、現金五万円が送られてきた。
 早樹は困惑したが、送り返すのもおとなげないと思い、
現金の入った封筒はそのままデスクの引き出しに仕舞(しま)った。

317:竹郷
17/08/24 11:18:50.68 A7hYgqhS.net
 インタビューから半年経った春先のことだ。
 早樹は、銀座中央通り六丁目の交差点で、信号が変わるのを待っていた。
 目の前に黒塗りの社用車が停まって、後部座席のウィンドウが開いた。
 そこから顔を出したのが塩崎だとわかるまで、少し時間がかかった。
なぜなら、インタビューで会った時はまだ半白だった髪が、
総白髪に変わっていたからだ。
 それが塩崎が受けた孤独の罰のような気がして、早樹ははっとした。


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