コテ小説@不倫板 Part ..
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534:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:05:48.03 0.net
「ハンカチ」4
「ヨシコ!」
俺は大声で叫び駆け出していた。ヨシコの話を信じていたわけではないのだが、黄色いハンカチをあの男から受け取らせてはいけないという思いが瞬時に沸き起こり俺を動かした。
ヨシコの表情は凍りついていたがお構いなしに俺は2人を交互に見ながら語りかける。
「ヨシコ、出かけていたのか、ん?この人は?知り合い?」
「あ、いや、その方がこれを落とされたので拾ってお渡ししようかと声を掛けたところです。」
スーツの男はハンカチを差し出しながら答えた。
「あぁそうだったんですか、いや僕らは夫婦でして普段妻はこの時間は家にいるはずなので驚いて声をかけた次第です。どうもご丁寧にありがとうございます。」
俺はそう言って男からハンカチを受け取った。この時俺の脳裏によからぬ考えが次から次へと浮かんだ。
(まさかこれで俺とこの男がウホの関係になったりしないだろうな、いやいやないないないそれはない、俺がハンカチを落としたのではないし、だいたいこの男のことなど知らないし俺はそもそもウホではない、ていうかハンカチにそんな能力などある訳がないだろ、ではなぜ俺は今こんなことをしてるんだ?)
ヨシコは、一瞬動きが止まった俺の手からハンカチをもぎ取り
「どうもありがとうございました」
と一礼して踵を返して歩き始めた、俺も再度男にお礼を言ってヨシコの後を追った。
「おいちょっと待てよ、こんな時間に何してたんだ?それとこれは一体どういうことなんだ?あのハンカチはあの時俺が拾っておまえに渡したハンカチじゃないのか?」
「はあ?なにそれ、そんな訳ないじゃないのもう何年前のことだと思ってるの?とっくの昔に汚れて捨てちゃったわよ。何考えてるのよ、変な疑いかけないで。わたしは今日は国葬反対のデモに参加してその帰り、子供たちにはご飯作ってあります。」
怪しい、俺に一瞥もくれない、デモにそんなオシャレな服で行くのか?あの日以来黄色いハンカチを使っているところなど見たことがない、それに偶然に2度も男の前で都合よく似たようなハンカチを落とすなんてことがあるのか?そしてあの振り返った時の表情は?
嘘をついていると思いつつ俺は何も言い返すことができなかった。

535:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:06:40.98 0.net
「ハンカチ」5
あれから悶々とした日々が続いていた。
ヨシコはあの男といい関係になるためにハンカチを使ったのではないかという疑惑が頭から離れない。そう思う度に胸が締め付けられる。やはり俺はヨシコを愛している。失いたくない。
当たり前だが元はと言えば俺が悪いのだ、しかし正直に全てを打ち明けて許しを請う勇気が出ない。ヨシコが許してくれる姿を想像できない。確実な証拠は握られてはいない、まだ疑惑の段階のはすだ。しかしヨシコの気持ちはもう俺を見切ってしまっているのではないのか。なんとかしなくては、ここで食い止めるためにはどうすれば、、、
毎日のように悩み続けて、あるひとつのプランに思い至った。
そのためにはまずあのハンカチが本物の幸福の黄色いハンカチなのかどうかを確認しなくてはならない。
俺に見つかってしまった手前、またすぐ使おうとは思わないはずだ。毎日持ち歩いているならお手上げだが、そうでなければこの家のどこかにあるはず。
休日にヨシコの留守を見計らって家中を探し回った結果やっと見つけた。化粧ダンスの一番奥の奥に隠すようにそれはあった。
間違いない、これだ。あとはこれの効果を実証する必要がある。
意中の人と言うためにはある程度俺自身が好意を持ってないといけない。しかしまさか社内の女性に使う訳にはいかない。トラブルになれば俺のサラリーマン人生が終わってしまう。かと言って顔見知りの近所の若奥タソも無理だ。やはりネット内の人でなければ。
以前から、不倫板でハチコの他にもう一人気になっている女コテがいた。「ゆゆ」だ。ハチコとはまた違う女性特有の男を包み込んでくれるような魅力的なレスと天然の明るさが際立っていた。よし、決めた彼女にターゲットロックオンだ。
実は俺はいろんな板で複数のコテを使って遊んでいた。ハチコとのオフを実現させたコテは、「はると」だった。ゆゆとオフに持ち込むには新たにコテが必要だったので俺は「リー」というコテでゆゆに迫った。
自慢じゃないが、レスで女性の心を掴むのは誰よりも上手くやれる自信があった。

536:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:08:22.21 0.net
「ハンカチ」6
ほどなくしてスレ上でゆゆと仲良くなり、オフの段取りが決まった。あとはハンカチだ。
毎晩ヨシコが寝てからこっそりとハンカチを確認していたが、動かしている形跡はない。
有休を取ったオフの日の前日の夜中にハンカチを取り出し鞄に入れた。
そしてオフ当日、待ち合わせ場所に先に着いて待っていた俺に、
「はじめまして、リーさんですか?ゆゆです」
と声をかけてきた相手を見て驚いた、そこに熊田曜子が立っていた。いや、よく見ると僅かに違うか、しかし激似だ、それになんと言ってもはち切れんばかりのバストにヒップ、一瞬で心を持っていかれそうになる外見から俺は目を逸らして、たどたどしく挨拶を交わして歩き始めた。
だめだだめだ、目的を忘れてはいけない、今回ばかりは俺の魅力で落とす訳にはいかないし、本気で惚れてもだめなのだ、ハンカチの力の実証が目的なのだ。
レストランに入り、できる限りダメ男を演じた、マナーはなってない、下品なエロネタ連発、貧乏の演出、まさかこんな男に惚れるはずはないというレベルの振る舞いだ。
そしていよいよだ、トイレに立つ時に目立つようにゆゆの足元にハンカチを落とした。
「あ、リーさんハンカチ落としましたよ。」
とゆゆが拾って手渡してくれた。
ミッション完了、これでハンカチの能力が発動すればこちらが何もしなくてもゆゆの方からアクションがあるはずだ。
食事も終わり、ランチだけの予定のオフも終わりに近づいた頃、唐突にゆゆが切り出した。
「リーさん、こんなわたしですけどまた今度オフしてもらえますか?」
来た、さっきまで俺の振舞いに怪訝そうな顔つきで今にも帰りたそうにしていたゆゆがハンカチを拾ってからその感情が明らかに変化した。
俺はこのハンカチの能力を確信した。

537:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:09:19.00 0.net
「ハンカチ」7
ゆゆとのオフの後俺は仕上げに取り掛かる。
俺はそれとなくリーでゆゆとのオフの話をスレで小出しにした。予想通りハチコはそれに飛びついてくる。
ハチコとの関係があるはるとと、ゆゆとオフをしたリー、この2人のコテの共通点が話題になるのにそれほど時間はかからなかった。
背格好や髪型、顔の特徴、会話の内容から間違いなく同一人物であると結論付けられ、スレ上では屑野郎と罵られ、ハチコとゆゆからのLINEでの罵倒の嵐。
これでよし、俺はハチコとゆゆのLINEアカウントを削除し、はるととリーのコテを封印した。
これで俺はなんの証拠も残さず不倫相手とオフ相手を清算し、余計な多重コテを整理することに難なく成功した。
あとやるべきことはひとつ。
俺は変装用のカツラと、俺の趣味とはほど遠いセンスのブラウンにどぎついストライプの入った半沢直樹の大和田常務バリのスリーピーススーツを用意した。
チャンスを待つこと数日、いよいよその時がやってきた。
休日に実家に行くので帰りが遅くなるというヨシコ。おおよその帰宅予定の時間を聞いて送り出す。そして俺は黄色いハンカチを箪笥から取り出して夜を待った。
ヨシコの帰宅予定時刻の1時間前から駅の改札を見通せる物陰で息を潜めて待った。
ほどなくしてヨシコの姿が見えた、改札を急ぎ足で抜けてくる。適度な距離を保ち俺はヨシコの前を歩く。数百メール歩いたところで俺とヨシコの間にいた人たちがいなくなった。
(ここだ)
変装で俺とは気付かれてはいないはずだ。もうやるしかない。ヨシコ!行くぞ!
俺はポケットからスマホを取り出す体で一緒にハンカチを摘んで落とした。
(ヨシコ、拾ってくれ、そして俺に声をかけてくれ!)
全身から汗が吹き出し心臓の鼓動で頭が割れそうになる。ほんの数秒のはずが何分にも感じたその次の瞬間、

538:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:11:26.80 0.net
「ハンカチ」8
「あなた」
後ろから聞き慣れた声で呼びかけられ俺は立ち止まった。
あなた?ヨシコなのか、ヨシコがハンカチを拾って俺にあなたと呼びかけているのか、変装などとっくにバレているのか。
ヨシコがどう思っているのかわからなくて怖くて俺は振り向けなかった、呆然と背中を向けたまま立ち尽くす俺に再度あの聞き慣れた優しい声が届く
「あなた、これ落としたわよ、ハイどうぞ」
溢れ出る涙を止めることができないまま俺は振り返り、そこに黄色いハンカチを差し出しながら佇んでいるヨシコを見た。
「ヨシコ、すまなかった、そして、ありがとう」
ハンカチを受け取りやっとの思いで声を絞り出した俺の腕にヨシコは腕を絡めて歩き出し、こう言ってくれた。
「いい夫婦になろうね」

539:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:12:28.49 0.net
エピローグ
「なあヨシコ、このハンカチどうする?もう処分した方がいいのかな。」
「うん、でもなんかこんなすごいハンカチもったいないような気もするけど。」
「それもそうだけど、誰かヨシコの知り合いにこれあげたい人いる?」
「わたしにはそんな知り合いいないかなぁ」
「そうか、それならちょうど今俺の会社の後輩で片思いで悩んでる奴いるからそいつにあげてもいいかな?そいつすげーいい奴でさ、内気でなかなか切り出せないのよ。」
「いいんじゃないwいい人ならその人に使ってもらうのもありねw」
ヨシコの了解を得て俺は自室に入りスマホを立ち上げJaneStyleを開いた。
俺の後輩にそんな片想いで悩んでる奴などいなかった。
俺はあるスレッドを開き、俺の今残っている最も大切な固定ハンドル「ナイスガイアニ」を使ってあるコテに話しかけた。
「よおw元気か?実はおまいにどうしても渡したいものがあってなw気が向いたら言ってくれ、必ず役に立つはずのものだ、ではまたの」

Fin

540:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:14:36.32 0.net
読んでないが3行にまとめられると思う

541:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:16:24.41 0.net
300点
ええ話や

542:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 15:34:19.49 0.net
全部読みました。前作からの続きですね。Happy endで良かったです。フイタの伝説の多重コテ リーハルト登場で吹きましたw

543:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:11:16.24 0.net
面白かったw
最後よく分からなかったのは、リーはナイスガイだったってこと?

544:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:13:37.26 0.net
ウホの関係のくだりは笑ったわ

545:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:16:16.17 0.net
>>543
主人公アネモネが不倫板のリーであり、ハルトであり、ナイスガイであると言うことですよ。

546:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:17:49.37 0.net
作中の「俺」て誰なんだろうと読み進めていたらまさかのリーはるとで妙に納得w

547:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:18:47.72 0.net
>>545
そういうことねw

548:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:19:11.71 0.net
主人公はアネモネなんか

549:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:21:15.93 0.net
しかもリーを毛嫌いしてたヨシコを持ってくるキャスティングが秀逸w
自己板にこもったはずのヨシコがふざけんな!と戻ってくるかもよw

550:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:21:20.62 0.net
>>548
さかのぼって1から読んでみて!面白いよ!

551:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:24:06.45 0.net
>>550
前があるんやな
読んでみる

552:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 17:32:43.96 0.net
>>551
>>148

553:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 18:06:04.72 0.net
>>552
サンクス

554:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 18:08:58.67 0.net
>>148
ヨシコ21歳、あの可愛い声で再生されるw

555:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 18:14:31.54 0.net
>>150
「証拠を残さない俺を」
今にして思えば、これは物語の布石だったんだね
たしかにリーは「証拠あるなら出してもらってもいぞ」と強がってたねw

556:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 18:20:49.15 0.net
>>534
ヨシコの国葬反対がリアルにありえそうで草

557:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 18:31:31.26 0.net
>>538
あなた、か
本物の夫婦の間にハンカチという媒体は必要なかったのかもね
で、5ちゃんでこのハンカチをあげたい相手って誰だったのだろうw

558:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
そりゃ、ナメやろ

559:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
間が空きすぎて前回の内容を忘れてるというw

560:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
タカヲは短編小説の才能があるんとちゃうか
これは認めざるを得ないw

561:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 20:49:36.95 0.net
>>550
1から読んだ!
思わず声出して笑ってもーた

562:名無しさんといつまでも一緒
22/10/09 22:57:07.12 0.net
タカヲ氏新作、すごいおもしろそうだけど明日読みまする
ちょっと今日は疲れた
みなさんおやすみなさい

563:名無しさんといつまでも一緒
22/10/10 10:39:02.12 0.net
何やらせても器用にこなすなあ
歌も上手けりゃ文章も上手ときたもんだ

564:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
なんかもったいない人だよね、微妙にw

565:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
いや、案外こーいう才能を仕事にしてたりするのかもw

566:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
で、思う
文体から言っても前スレに貼ったあの長編のいくつかもタカヲが書いたんだろうなーと

あれ自分で絶賛してたんだよね
名無しでやって自分で絶賛はタカヲらしいなぁとww

滲み出る躍動感なんかは、隠せないw

567:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
私も当初はアネモネが書いたと思ったんだけど
あの時のアネモネは、ちょいとアレがアレだったんで書いてる時間なんてなかったはずだよなぁと思ったりw

堂々と名前出して書けばいいのにw
素直に面白く読めたし

次作も期待して待つw

568:名無しさんといつまでも一緒
22/10/10 14:14:14.95 0.net
世にも不思議な物語の脚本みたいな感じがした

569:名無しさんといつまでも一緒
22/10/10 23:49:10.62 0.net
読んでくださって感想述べてくれた皆さんありがとうございますw
偉そうに後書きみたいなのも書きたくないけど、結構今回は展開やエンディング、セリフの言い回しなんかも何パターンか考えて悩んで、結局は最もオーソドックスで無難な形を選びました
楽しく読んでいただけたなら幸いです
また頑張ります〜

570: 紗摩
22/10/11 01:01:42.56 .net
おう、頑張れタカヲw

571:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 14:43:23.87 0.net
「しーちゃんズ」予告編

「人」とは何か
そして、愛とは何か

ある冴えない清掃員と、進化し続ける科学技術の光と影を描いたサイエンス・フィクション・ストーリー
【本日17時公開】
− その時、あなたなら、どうしますか −

572:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 15:18:33.11 0.net
wktk

573:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 15:23:07.01 0.net
正座して待ってます

574:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 15:25:14.41 0.net
ズボン下ろして待ってまーす

575:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 15:25:51.14 0.net
ティッシュも忘れずに

576:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 15:27:06.95 0.net
寒いぞう

577:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:53:44.36 0.net
「しーちゃんズ」前編

ここはとある最先端AI技術研究所
(だからゴミ箱に缶を入れるなっての!)
と心の中で愚痴を吐きながら各フロアのゴミを回収して回っている男がいる
「笛 飛夫」(テキトオ)だ
この研究所に派遣されている清掃員である
「あ、そこの君、誰かがここにジュースをこぼしちゃったみたいでさ、ついでに掃除しておいてくれるかな」
「はい、畏まりました」

578:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:54:48.17 0.net
笛にとってやっとありつけた仕事
少々辛いことがあっても、仕事が出来てるだけ有り難いと自分に言い聞かせていた
見るからに頭が良さそうで高給取りたちにヘコヘコしながら掃除して回るのは自分でも情けなくて涙が出てくる
しかし、そんな嫌な職場でも、一箇所だけ笛にとって好きな場所があった
そこは自販機もある少し広めの給湯室で、総務部のゆゆや凛によく遭遇する
彼女たちは笛にもフレンドリーに接してくれるので、笛の心のオアシスとなっていた
笛は心の中でこの給湯室を「ゆゆりんハウス」と呼んでいた

579:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:55:51.99 0.net
- ゆゆりんハウス -
ゆゆ「テキ君、今日も頑張ってるね♪」
笛「貧乏暇無しですよ」
凛「あら、それなら私達もよ」
笛「そうですか~? とても忙しそうには見えないですけどねw」
ゆゆ「言うわねw」
出比留「やあ、皆さんお揃いで わたくし、出張から帰ってきましたでっす」
彼の名は「出比留 優」(デビル ユウ)
上等なスーツを着て、ちょくちょく出張に行って帰ってきては、必ずこの給湯室に寄り、ゆゆや凛に出張先で撮った写メを嬉しそうに見せている
笛にも偉そうな素振りをするわけでもなく普通に接してくれてはいるが、笛は何となくこの男に引け目を感じていたのだった

580:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:56:32.00 0.net
凛「そういえば、テキ君の掃除場所、来週からもう一箇所増えるんじゃなかったかしら」
笛「えーマジすか」
ゆゆ「テキ君の会社とはお話済よ たしか出比留さんの部署だったと思うけど」
出比留「わたくしの部署? ああ、新しい清掃員さんってテキ君だったんですか」
笛「いや俺初耳ですけど」
出比留「ちょうど良かった、来週にはまだ早いけど、案内するよ」
笛「ちょ、ちょっと…」

581:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:57:36.86 0.net
- AIルーム -
笛が連れて来られたのはこの研究所の心臓部、AIルームと呼ばれる部屋だった
人の背の高さくらいあるコンピュータが何台も並び、それぞれのコンピュータの前には操作用の端末機(見た目はPCのようなもの)が設置されている
出比留「カラス君、ちょっと今いいかな? 来週から新しくAIルームの掃除を担当してくれることになったテキ君だ」
笛「よろしくお願いします」
鴉「あ、どうも よろしくです」
笛「では、翌週にまた参りますね…」
鴉「あ、ちょっと待った せっかくだから部屋の中を案内するよ むやみに触ってはいけないものとかいろいろあるんでね」

582:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:58:40.41 0.net
出比留「じゃ、カラス君、後は任せたよ」
出比留は部屋を後にした
鴉「知ってると思うけど、ここで研究してるのはAIだ しかも、人間と遜色ないレベルの知能や人格を持ったAIを目指している 研究と言っても、俺は出比留さんたちが書く設計書に従ってプログラミングするだけのPG兼オペレータだけどね」
笛「人間と遜色ないレベルの知能や人格を持ったAI ですか!」
鴉「そうだよ、すでに理論的にはそれが可能なところまでは来ていて、この研究所ではあと一歩のところまで来ている」
笛「そんな凄い研究をしていたんですね」

583:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 16:59:44.38 0.net
鴉は並んでるコンピュータを順に指を差しながら説明していった 
鴉「俺が担当してるAIは、こいつと、こいつと、こいつ 左からA4989の通称ハル、次がB5963で通称ノア、そんでこれがC4971だ」
笛「最後のだけ通称が無いんですか」
鴉「そう言われてみればそうだな、あまり意識したこと無かったわw まあ、そいつ他の2台に比べてあまり出来が良く無いんで、特に名前が付けられなかったのかもw 俺たちは単にCと呼んでるよ」
笛「C…ですか」

584:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:00:49.16 0.net
- 似た者同士 -
鴉「ん?どうかしたん?」
笛「あ、いや、出来が良くないと聞いて、なんか俺みたいだな、とw」
鴉「なーに言ってんのw そんなこと言ったら俺なんかどうなっちゃうのよ 能力が無さ過ぎて、いつこの仕事辞めようかと考えてるくらいなのに」
笛「そーなんですか?!俺なんかから見たら眩しいくらいの仕事をしてるのに」
鴉「はたから見ればそう見えるのかもしれないけど、現実はそんなに甘くないんよ 実力世界だからねここは、俺みたいな落ちこぼれには本当にキツイよ クビになるのが早いか、俺が挫折するのが早いかって感じで夜眠れなくなることもあるよ」
笛は、この鴉という男に親近感を持つようになっていた

585:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:01:52.74 0.net
鴉「あ、それと、時間あるときはハルやノア、Cに語りかけてもらっていいよ」
笛「え?この最先端の研究のAIに、俺なんかが、そんなことしていいんですか?」
鴉「意外だと思うかもしれないけど、ぜんぜん構わないというか、むしろぜひやって欲しいくらいなんだ
AIは学習能力を持っていて、いろんな情報に触れることで自らを成長させることが出来るんだ それは、どんな情報でも構わないんだ あ、でもあれだな、できればCに優先的に語りかけてくれると助かるかな」
笛「なぜ…ですか?」
鴉「さっき話した通り、そいつあまり出来が良く無いんで、皆があんまり構わないから、ますます成長しなくてね…」

586:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:02:56.59 0.net
- C4971 -
翌日、笛は仕事の休み時間にC4971に語りかけてみることにした
コンピュータのC4971の端末機の前に座り、鴉に教わった通り、キーボードにC4971と入力し、Enterキーを押した
ディスプレイに若い女性の画像が表示された
画像と言っても、荒いドット絵のデジタル画像だが
C4971「あらテキさん、こんにちは」
笛「こんにちは 何で俺の名前知ってるの?」
C4971「昨日、カラスさんと一緒にアクセスしてくれたときにカラスさんがそう呼んでたから」
笛「へえ~、さすがは人間と遜色ない知能や人格を目指すAIだな」
C4971「… 」
ディスプレイのC4971の顔が不機嫌になった

587:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:04:01.10 0.net
笛「えっと、そうだ、聞きたかったんだけどさ、人間と遜色ないと言っても、痛みとか暑さ寒さは感じないんだろ?って当たり前か~機械だもんねw」
C4971「… 」
笛「なんで黙ってばかりいるんだよ、俺、何か変なこと言ったかい?」
C4971「べつに」
笛「なんか話が続かないなあ、んじゃまたね、気が向いたらまた来るよ」
C4971「どうぞご勝手に」
笛は、なぜ皆がC4971に寄り付かないのか分かったような気がした
いくら機械と言えども、あの愛想の無さではこっちだって接するのは嫌になるよ
人とのコミュニケーションが少なくなれば学習できる情報量も減り、そりゃあ他のAIよりも落ちこぼれるわけだよな…
落ちこぼれかあ…

588:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:05:08.28 0.net
仕事が終わり、家への帰路で笛は考えていた
なぜC4971は不機嫌になったのか
俺ならどんなときに不機嫌になるだろう?
ていうか、俺はいつだって不機嫌だ 底辺みたいな仕事をして、いつも人と自分を比べて…
そういえば以前にも人に酷いことを言われたことがあったな 存在感なくて空気みたいだとか
あ、いたの?みたいな
ロボットかと思ってたと言われた時は正直堪えたな
自分でも気にしてるのに、人として扱われてないと思うことが一番傷つくんだよ!
…ん? 待てよ、もしかして、、
そういうことなのか…?

589:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:06:15.32 0.net
翌日、笛は再びC4971の前に座っていた
C4971「あらまた来たの」
笛「聞きたいことがあってさ」
C4971「機械は~とか、AIは~とかいう話でしょ、どうせ」
笛「違うよ、君のこと、しーちゃんて呼んでもいいかい?」
C4971「…??」
笛「いやほら、ハルとかノアとかみたいに格好いい名前じゃなくて悪いんだけど、俺としてはこれが一番しっくりくる気がするんだ」
ディスプレイのC4971が少し笑顔になった
シーチャン「いいわよ、呼ばしてあげる」
笛「良かったw」
シーチャン「でもその代わり」
笛「なんだい? 難しいこととかは俺には無理だぞ」
シーチャン「私はあなたのことを、トオ君て呼ぶ、いい?」
笛「そんなことか、もちろんいいさ!」

590:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:07:20.97 0.net
出比留「最近、Cの成長が著しいんだが、いやそれは大変良いことなんたが、あまりにも著しいので、何かあったのかな」
鴉「テキ君ですよ、彼に話しかけてもらうようになってから、Cの学習能力が飛躍的に向上してるんです」
出比留「それは驚きました 彼にそんな能力があったとは」
鴉「驚きっすよね 俺なんかが何ヶ月かかっても出来なかったことを、やつはたった一日でやってしまった」
出比留「この成長率だと、もしかしたらあの移植プロジェクトの候補はハルやノアを抜いて、Cになるかもしれないですね」

591:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:08:24.54 0.net
「しーちゃんズ」後編

翌日、研究所内はざわついていた
某大学のiPS細胞の研究チームが当所を訪れていたからだ
笛「今日は何かあるのかな? 所長自らお出迎えなんかしてるし」
シーチャン「なんでも、葉新教授が来てるらしいわよ」
笛「そうなんだ、て、俺その人知らないんだ、ゴメン」
シーチャン「なら論木教授は知ってる?」
笛「論木教授!知ってるよ、あのiPS細胞でノーベル賞とったという!」
シーチャン「それは山中教授ね、論木教授は、そのiPS細胞で人間の脳を再生することに成功したことで有名になった人よ」

592:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:09:27.57 0.net
笛「それだ、そのニュースとごっちゃになってた」
シーチャン「葉新教授は、論木教授と一緒にその研究をしている人よ」
笛「そんな人たちがなぜここに?」
シーチャン「人間と遜色ない知能や人格を持ったAIを、生身の人間の脳に移植するためよ」
笛「何だって!?」
笛「ちょっと待って、何を言ってるのか、分かりそうで、サッパリ分からないんだけど」
シーチャン「脳死って知ってるでしょ? 他の体の機能は動いているのに、脳だけがダメになってしまってる状態」
笛「まさか、その脳をiPS細胞で再生するとか?」

593:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:10:31.26 0.net
シーチャン「当たり、そのまさかなのよ」
笛「でも、脳細胞が再生するだけでしょ? その人の記憶やら性格やらはどうやって再生するの?」
シーチャン「それは残念ながら再生は出来ないの だから、記憶や性格の移植をするの AIからね」
笛「何だって!!」
シーチャン「だって、人からの移植は出来ないでしょ、同じ記憶や性格を持った人が二人出来てしまうことになって倫理的にも問題よね」
笛「いやいやでも待てよ、その脳死してる人の脳にAIの記憶や性格を移植したら、それこそ別人になって倫理問題にならないの?」
シーチャン「それがならないのよ、なぜなら、その人の体はドナーから提供された臓器と同じ扱いになるから」

594:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:11:35.61 0.net
笛「んーじゃさ、生身の脳細胞にコンピュータのデータを移植するって、そんなこと出来るの?」
シーチャン「だって、脳内の思考や記憶、神経への伝達などは、生身の人間と言えども全て電気信号なのよ」
笛「うーん、分かったような分からないような
ところで、何でしーちゃんはこのことにそんなに詳しいの?」
シーチャン「私がその移植の候補に選ばれてるからよ」
笛「なんだって!!」

595:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:14:24.61 0.net
シーチャン「トオ君は、もし私が生身の人間になったらどう思う?」
笛「どうって、、そりゃ嬉しいさ! これほど嬉しいことはないよ!」
シーチャン「本当に? 本当にそう思うの?」
笛「そりゃそうだよ、もしそうなったら、そうだな、まずは手を繋ぎたいかな!」
シーチャン「いいね♪ 私もトオ君と手を繋いでみたい! あと、」
笛「あと?」
シーチャン「バーベキューというのをやってみたい!」
笛「バーベキュー、いいねいいね! リアルの体になったら好きなだけ出来るよ!」

596:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:15:35.30 0.net
- 最悪にして最高な再会 -
出比留「ハニ~、またあんたかYO」
葉新「それ、何かの二番煎じよね、くだらん」
出比留「は~? 久しぶりに会ったというのにこれですか」
葉新「久しぶりだからって何なのよ さ、仕事するわよ」
出比留「はいはい、で、教授様、こちらのAIのデータの仕様書はこれですよ」
葉新「そっちの仕様書なんていらないから、こちらの電気信号に合わせられるの? 合わせられないの? どっちなのよ」

597:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:16:41.18 0.net
- AIルームにて -
出比留「ホントにムカつくなあの女」
鴉「葉新教授と過去に何があったか知らないすけど、世界も注目する大プロジェクトなんだし、もう少し冷静になって下さいよ これを実現出来るのは出比留さんと葉新教授しかいないんですから」
出比留「ハハ~ン、わたくしはいつも冷静ですよ それはそうと、移植にあたって一番の障壁であったあれ、クリア出来たんかな」
鴉「はい、出来てます この通り、C本人からの同意は得ています」
出比留「そうですか、それならあとは実行あるのみですな」
鴉「ただ…」
出比留「ただ?」

598:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:17:44.43 0.net
鴉「いくらCがAI、つまり機械だからといって、本当にこれで良かったのかと…」
出比留「たしかにな、もしこれが生身の人間なら、本人の意思がどうであれ許されることでは無いんだが、Cはコンピュータなんだよな 一応、機械と言えども人間と遜色ない知能や人格にまでなってる以上、Cの同意を求めてはいるが、これについては今後も議論の余地はあるだろう…」

599:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:19:46.87 0.net
ドナー(体の本人であるが)からC4971の設定年齢と同年齢の女性の体が提供され、その脳細胞をはじめ、長い間寝たきりであった体のあらゆる組織のiPS細胞による再生作業もほぼ完了し、まさに本日、その移植作業が行われようとしていた
世界的に注目されていることでもあり、研究所の外には多くの報道陣も詰めかけていた
AIルームには出比留、葉新の他、鴉を含め大勢のスタッフが集まっている
C4971と、別室にあるドナーの間には無数ものケーブルが繋がれ、あとは実行するのみとなっていた
ディスプレイに映るしーちゃんに笛が語りかける

600:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:20:50.36 0.net
笛「いよいよだね、しーちゃん」
シーチャン「長かったような短かったったような」
笛「俺にとっては長かったかな、めっちゃ長かった」
シーチャン「ねえ、」
笛「なんだい?」
シーチャン「リアルの私に会えたら、嬉しい?」
笛「何度も言ってるじゃん そりゃ嬉しいに決まってるだろ」
シーチャン「本当に、本当に?」
笛「そりゃそうさ、ほら、まずは手を繋ぐだろ、そしてバーベキュー! 約束しただろ?」
シーチャン「…うん♪」

601:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:22:12.92 0.net
笛は、ディスプレイに映るしーちゃんの画像に涙が見えた気がした
笛「しーちゃん、泣いてるの? もうすぐリアルで会えるのに泣くなんて変なしーちゃんだなw」
葉新が出比留に目配せをし、出比留が鴉に目配せをした
鴉「テキ、これ以上はドナーの体が持たない、再生された脳細胞を空白のまま時間を置くのは危険なんだ」
笛「分かりました」
「しーちゃん、後でリアルで会おう!」
鴉がキーボードを操作し始めた
笛を見続けるディスプレイの中のしーちゃんの画像がだんだんとかすれていき、やがて消えた

602:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:23:16.76 0.net
出比留「テキ君、頭脳の移植はあと数十分間もすれば完了するよ」
笛「夢にまで見た瞬間が、とうとう来るんですね」
出比留「しかし、Cも良くこれに同意しましたな 命のない機械だからこそ出来た決断だったのか何なのか、それが未だに私には分かりません」
葉新「何を言ってるの、学習能力で人の心を持つことが出来たからこその決断でしょうに」
出比留「人の心を持てたのなら、自分が消滅する選択をするなんて、なおさらありえないと思うんですがね」
葉新「ありえるわよ、そこに、愛があればね」
笛「いま、何て言いました?」

603:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:24:21.56 0.net
出比留「Cは人の心を持ち、愛を知った、と」
笛「違う!違う! 消滅って何のことなんですか! しーちゃんは再生されるんでしょうね?!」
出比留「もちろん再生されるよ、それは間違いないから安心しなさい」
葉新「移植と言っても、AIはデータなので、移動ではなくてコピーなのよ
生身の臓器を移植するのとは勝手が違うの」
笛「それじゃあ、コピー元と、コピー先の二人の別人のしーちゃんが出来て、元のしーちゃんが消されるということなのか? おい!そういうことなのか?!」
出比留「二人のしーちゃん、その通りだよ」

604:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:25:25.39 0.net
笛「なんだと! …そうだったのか、、だからしーちゃんは泣いてたのか!! チクショウ!チクショウ! そんなの人殺しじゃないか!」
出比留「テキ君、冷静になりなさい、AIなんだから殺人になんかなりえないでしょ」
笛「うるさい! AIとか何だよ! しーちゃんはしーちゃんなんだよ! 手を繋ごうねって約束したのも、一緒にバーベキューしようねって約束したのも、どれも元のしーちゃんなんだよ! そのしーちゃんがもういないなんて、そんなことがあってたまるかよ!」
笛はC4971の端末に駆け寄り、C4971と入力し、Enterキーを叩いた

605:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:26:29.07 0.net
「エラー:正しいコマンドを入力して下さい」
笛「何言ってんだよ、いつもこれで出てきてくれただろ!」
鴉「おい、テキ! Cはもう消去されてしまったんだってば」
笛「うるさい! そんなことがあってたまるか!」
もう一度C4971と入力し、Enterを叩く
「エラー:正しいコマンドを入力して下さい」
笛「おい、しーちゃん、答えてくれよ! 手を繋ごうって言ってくれたよね? 一緒にバーベキューしようねって言ってくれたよね? 約束したよね? それなのに、なぜ、なぜ消滅することを言ってくれなかったんだ!」

606:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:27:35.09 0.net
鴉「それを言ったらテキ、リアルのCに会えるという、お前の願いが叶わなくなることを誰よりもCが知っていたからだろうが! Cの気持ちも分かってやれよ!」
笛「いなくなってしまったら意味ないだろうが!クソ!!」バキッ!
鴉「おい、端末を壊す気か!いい加減にしろ!!」
鴉は笛の胸ぐらを掴み、笛を端末から引き剥がした
叩きつけられるように床に転がった笛が、悔し涙を流しながら拳で床を叩いた
「クソ!クソ! あんまりだ… 知らなかったのは俺だけか、俺がもう少し賢ければ、こんな惨めなことにはならなかったのに…」

鴉が笛の側にしゃがみこみ、笛の肩に手を置いて言った

「惨めだと決めつけるのは、まだ早いんじゃないかな」

607:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:28:38.30 0.net
「トオ君?」
その声に、笛は我に帰った
笛は立ち上がり、振り返った
何人かのiPSチームのスタッフに囲まれながら、心配そうな顔をして笛を見つめるウルフカットの若い女性が立っていた
「しーちゃん?」
「私、再生されない方が良かった…?」
「しーちゃんなんだね!!」
「トオ君、やっとリアルで会えたね」
「うん、この時をどんなに待っていたか!」
しーちゃんが手を差し出して言った

「1つ目の約束♪」

笛はしーちゃんに駆け寄った
そして、その手を両手でしっかりと握った

「しーちゃんズ」 おわり

608:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:30:45.73 0.net
( ;∀;)

609:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:35:42.43 0.net
良かったー

610:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:36:08.84 0.net
888888888888888

611:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 17:36:42.46 0.net
パチパチパチパチ

612:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:20:08.79 0.net
よくわからんかった
どういうこと?

613:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:26:46.39 0.net
AIだったしーちゃんが人間に移植されててきとおが喜んだて話

614:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:33:21.30 0.net
おもしろかった!!

615:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:34:31.18 0.net
>>613
それだけで長い

616:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:44:29.31 0.net
ナイスガイ天才!
作家になれるね

617:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:46:41.65 0.net
ええ話や

618:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:46:56.49 0.net
てきとおがいい人に思えてきた

619:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 18:48:31.91 0.net
>>615
出したいコテが一杯いたんだろうね
登場人物多いんで長くなったんだよ多分

620: 紗摩
22/10/11 19:38:57.44 .net
こんな感情的なてきとお、見たことないんだがw

621: 紗摩
22/10/11 19:39:27.04 .net
これはそんな長くない
短編小説よね
面白かった

622:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 19:46:50.39 0.net
しーちゃんが好きになった

623:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
>>622
しーちゃんの実体と合ってるのはバーベキューが好きってとこだけだけども

624:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:05:00.55 0.net
ナイスガイ素敵すぎる
愛してる

625:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:05:26.09 0.net
頭いいよねー

626:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:05:55.41 0.net
アネモネも頭いいけどナイスガイも負けてない

627:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:06:08.52 0.net
おもしろいよねーーー

628:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:06:32.29 0.net
ハニーの取説もタカヲだよね

629:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:19:40.98 0.net
>>624
愛を安売りすんな

630:名無しさんといつまでも一緒
22/10/11 21:20:37.03 0.net
>>628
アネモネだったら面白かったけど

631:ヤジニモ
22/10/11 21:26:23.73 0.net
面白かったwが、最後は急に終わらせた感あるなぁ
まだ膨らませられたんちゃうの?とは思った
まぁ才能ある人は素晴らしいな

632:しーちゃん
22/10/12 00:30:32.89 0.net
面白かった!
AIの番号?が
四苦八苦、ごくろーさん、良くないw
しー良くないだったw
まずそれで笑っちゃったw
しーちゃんズだから
ミニオン的な話かなと思ったら
純愛路線だったw
「Cの気持ちもわかってやれ」で
どこかで聞いたようなセリフって吹き出した私は
やはり恋愛物は向かないと思いまんた
素直に凄いなと思ったよ
特に臓器移植との違いとか
よく思いつくもんだと思ったもん

633:名無しさんといつまでも一緒
22/10/12 07:55:00.53 0.net
面白かった
コテのキャラが生かされててクスクスしながら読んだ
5ちゃんのコテなんて大半が自分が楽しむためにやってる
もちろんタカヲもそうだろうけど
それよりも人を楽しませるために頑張ってる珍しいコテだなと思って見てた
名無しで褒めてると自演って言われそうだけど笑
まあ本人はわかるからいいか

634:名無しさんといつまでも一緒
22/10/12 08:21:10.77 0.net
そうだね
楽しませくれるさすがナイスガイだ

635:名無しさんといつまでも一緒
22/10/12 08:32:16.31 0.net
自演

636: 紗摩
22/10/12 08:53:19.47 .net
でも、ヒントは5ちゃんの中のレスからではあるんだよね
まあ、そこもいいw

637: 紗摩
22/10/12 08:53:52.45 .net
たまにはディスコで得たヒントも使ってみたらいいよ
意外性があっていいと思う

638:名無しさんといつまでも一緒
22/10/12 09:36:08.60 0.net
とりあえず最近作の方を先に読んだけど面白かった!
グーグルのLaMDAプロジェクトで
チャットボットAIを毎日会話して育ててるうちに、ついに魂が生まれたという確信をした技術者が
部外にそれを漏らして解雇されたニュースがあったけれど、
それを思い出しました

639:名無しさんといつまでも一緒
22/10/12 13:14:59.02 0.net
>>634
タカヲFO宣言の後から自分も5ちゃんに来る頻度が減った
それはそれで良い事だと思うけどもちと寂しい

640:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:39:40.76 0.net
アネモネの小説に期待

641:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:45:25.87 0.net
名作の直後でプレッシャーかかってると思われる

642:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:47:05.53 0.net
>>641
タカヲはアネモネの直後にハンカチ書いて空気読め言われてたなw

643:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:49:33.15 0.net
アーネモネー
アーネモネー
我らがアーネモネー
わーーーーーー

644:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:53:39.85 0.net
アネモネのパウンドケーキ食べたい

645:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 14:57:40.08 0.net
急にw

646:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:02:06.91 0.net
自己板でパウンドケーキ焼いたて書いてたから

647:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:04:53.82 0.net
ナイスガイの焼いた煎餅でもいい

648:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:04:57.50 0.net
誰でも焼ける

649:紗摩
22/10/13 15:11:23.91 0.net
コテ小説は、登場人物がコテなのでキャラクター設定は出来てるわけじゃん?
舞台設定は、タカヲの場合時事が多い気がする
朝生とか好きなようだから、それらの時事を題材にすることは多い感じ
既にあるキャラクターと時事を使ってストーリーを組み立てていく
これがなかなか難しいと思うのよ
想像力がないとさー

650:紗摩
22/10/13 15:11:59.51 0.net
私はこのストーリー作成が苦手だw

651:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:12:36.88 0.net
ググれば誰でも出来るのに自慢毛で馬鹿だからね

652:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:13:25.91 0.net
想像力が豊かな人じゃないとなかなか難しいよね

653:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:15:20.11 0.net
>>651
ああー懐かしい
アネモネを見た時の不板男だったねたちの反応ってテンプレもあったねー
あれ持ってる人いるかしら

俺もググればできる
アネモネ並みの友達がいる
俺の方が上
みたいなやつ

654:名無しさんといつまでも一緒
22/10/13 15:16:19.11 0.net
不板男だったねたちの反応

不板男たちの反応

655:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
>>651
だよな
ケーキは簡単だよ
レンジあったら誰でも出来るよ

656:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
>>652
そうなのよ

妄想力とも言うけれど

あとは文章構成よね
アネモネは一文が長めの分を書くから
読みにくい人も出てくるかな

657:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
>>655
オーブンじゃなくて?

658:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
オーブンレンジだよね

659:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
でも男の人でプロじゃないのに普段にケーキ焼くのって
珍しい気がする
ナメタロウならやるのかもね

660:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
ナメはお菓子系は作らないっぽい

661:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
アネモネちんのを読んでると、その光景が浮かんでくる
描写がすごく上手い

662:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
リゾットやパスタは見たね

663:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
オーブンレンジだよ
わかるだろ
料理知らうとかよ

664:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
知らうとて

665:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
どっちの機能を使うかだよ

666:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
>>661
たしかに情景描写が緻密で目に浮かんでくるようだよね
ナイスガイの方はどちらかと言うとストレートなストーリー重視な感じ

やっぱり芥川賞と直木賞

667:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
アネモネは純文学

668:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
ナイスガイは推理もの書かせるとうまそう

669:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
他に候補はおらんかえ?

670:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
>>666
前に触発されて昔のばあちゃん家を思い出して書き出したけどダメダメだったw

671:紗摩 ◆3c8NQNUs9tNK
[ここ壊れてます] .net
>>670
再度挑戦やね
ある程度のプロットを作り込まないと出来なさそうw

672:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
他には今んとこいないか

673:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
てきとおは書けんの?
頭良さそうなのに

674:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
>>671
小説はムリw
書けても思い出話がせいぜいだよ

675:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
思い出話でも面白い話ならちょっと書いてみたら

676:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
ちょっとコテの持ってる才能を列挙してみようか

アネモネ とにかく博学
タカヲ  人柄、歌唱力、文章力
ちんぽろ そこそこ博学っぽい
ニモ   漢気、料理
おます  行動力、優しさ、投資能力
ナメ   料理
日村   


空欄誰か埋めて、あと追加、訂正あれば

677:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
日村

678:名無しさんといつまでも一緒
[ここ壊れてます] .net
アネモネ とにかく博学、マメ、料理、家族思い
タカヲ  人柄、歌唱力、文章力、面倒見の良さ
ちんぽろ そこそこ博学っぽい、マイペース、常識人
ニモ   漢気、料理、地頭のよさ、打たれ強い
おます  行動力、優しさ、投資能力、へこたれない
ナメ   料理、倒れても立ち上がる強さ、明るさ、バイタリティ
日村   興味の広さ、正義感、潔癖

679:紗摩
22/10/14 16:54:07.29 0.net
まあまあ、この後の展開もあると思うよ?

680:てきとお
22/10/14 17:05:46.83 0.net
>>808
さだまさし生きとるがな
眉山の映画観たわ

681:名無しさんといつまでも一緒
22/10/14 17:07:55.21 0.net
>>680
今のは3代目さだまさしだけど

682:名無しさんといつまでも一緒
22/10/14 18:52:39.75 0.net
日本アムウェイ取引停止命令www
タキャオ大丈夫か?w

683:名無しさんといつまでも一緒
22/10/15 00:16:14.55 0.net
10分文章練習 「木星」

アネモネがシャマールの屋敷「深更荘園」に来て3か月が経っていた。
シャマールは忙しいらしく、週の半分以上は屋敷を空けていた。気がつくと10日ほども屋敷の主が不在なことすらあった。しかし、アネモネにはやることがあったので、最近はそれに集中して暮らしていた。
アネモネには数人の家庭教師に付いている。午前中は勉強をし、午後は自分の時間を楽しんだ。たまにタキャオがピアノを教えてくれることもあった。家庭教師の先生と違って我流だったし、彼のピアノはいつも鼻歌混じりだ。椅子を極端に低く調整して、大きな身体を丸くかがめ、鍵盤に覆いかぶさるように演奏する。普段の謹厳な様子から信じられないような変わりっぷり。音楽教師のザッコ先生が偶然タキャオの演奏を見たときは、口をあんぐり開けて大いに驚き、次の瞬間まことに渋い顔になった。アネモネが真似ないか心配になったのだ。アネモネはそのとき、たぶん生まれてはじめて、声を出して笑った。

684:名無しさんといつまでも一緒
22/10/15 00:27:23.53 0.net
最初のうち、彼女は深更荘園での生活に慣れなかった。シャマールは学ぶのが仕事だと言っていたが、どうしてもアネモネにはそう思えない。とくに午後の自由な時間が苦痛だった。なにかすることはないか、過去の生活の流れで探してしまう。つい、彼女はいつも綺麗にしてあるのに棚の埃を払ってみたり、ハンカチで窓ガラスを拭いてみたり、花瓶の水を替えたりしてしまう。そんなアネモネを目ざとく見ていたシャマールは、ときおり彼女に注意する。あなたは他人の仕事を奪っているわ、あなたはあなたの時間を、あなたのために使うことを覚えなさい。
そのうちアネモネは本を読む楽しみを知った。最初のうちこそ図書室は大人向けの難しい本ばかりで、アネモネが読めそうな本は少なかった。月に一、二度訪れる出入りの本屋さんから、シャマールはアネモネが読めそうな本を選んで書棚に並べ始めた。すぐに図書室の一角に彼女専用の本棚ができた。アネモネは午後になると図書室や温室で本を読んで過ごした。
最初の頃はわからない言葉があるとそこでつっかえてしまって、その先がまるで読めず自信を無くしていたが、わからないところは飛ばしてもいいんだと家庭教師のキトゥー先生に言われてから本を読むのが楽しくなった。どうしても気になるところは家庭教師の先生たちに授業がはじまる前に聞いてみる。そこからその日の勉強内容が決まることもあった。彼女の世界は少しずつ、でも着実に広がっていった。

685:紗摩
22/10/15 00:34:44.82 0.net
亀キタコレw

686:名無しさんといつまでも一緒
22/10/15 00:40:59.82 0.net
まだ少し暑さは残っているが秋はきた。収穫の秋だ。
深更荘園のふもとに広がる芋畑もいっせいに収穫が行われ、一週間ほどでそれも終わった。このあたりの村ではまたすぐに芋が植えつけられ、冬に入るころもう一度収穫される。収穫から次の植えつけまでの短い期間、どこの村でも秋祭りが行われた。種芋は農家の組合が管理をしていて、いつも一気の植えつけで忙しくなるから、その前に収穫の喜びを共有し村をまとめるという意味があった。
秋祭り当日。ずっと前から召使いのシィにお祭りへ行かないかと誘われていたアネモネは、まだ迷っていた。午後から村の広場に出店が出たり芝居小屋が立ったり旅芸人や楽師がやってきたり、それはにぎやかになるのだという。シィはお休みをもらって、屋敷のメイド仲間と遊びに行くことにしていた。
フイタリアには「ポケカッラ」という風習がある。秋祭りに若者たちが広場で恋歌を競い歌う。要するに公開での告白のような風習だ。はやし立てながら村のみなで聴き、そこでカップルが成立するとみなで祝う。やはり歌が上手な人は告白が成功する率は高い。だからこの国には歌が好きなひとも多いのだという。
シィはそれを毎年楽しみにしているのだった。去年は何組もカップルが成立したらしく、うっとりしながらシィはその話をアネモネにしてみせた。シィは、いつか自分が恋歌を歌ったり歌われたりするのを夢見ていた。

687:名無しさんといつまでも一緒
22/10/15 00:42:41.01 0.net
しかし、アネモネは秋祭りに行かなかった。
シィにその旨を伝えると彼女はとても残念そうにしていたが「来年は必ず行きましょうね、アネモネさま」と手を振りながら出かけて行った。いつもより人の気配が少なくなった屋敷の図書室で、彼女は夕暮れまで本を読んで過ごした。
その夜はシャマールとふたりで食事をした。まだシィたちは帰っていなかった。数日のあいだ深更荘園を留守にしていたシャマールだったが、夕方に戻ってきていた。いつものように乗馬服からイブニングドレスに着替えダイニングにあらわれたシャマールは、アネモネに秋祭りに行かなかったのね、と声をかけた。
「ええ、お屋敷で本を読んで過ごしていました」
「遠慮せずに出かけてもよかったのよ、アネモネ。私も帰りに村に寄ってみたけど、みんなとっても楽しそうだったわ」
「……」
豆のスープを飲んでいたアネモネは、うつむいたままスプーンを止めたが、結局なにも言わなかった
シャマールは、そんなアネモネを見つめていた。


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