コテ小説@不倫板 Part ..
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451:飛び入り青春
[ここ壊れてます] .net
炎天下の長い坂道には人影がない。
一華はその道を走ってみたい、と思った。
しゃがんで靴ひもを結び直す。
短い癖っ毛が視野に入る。
姉の茉莉花みたいな美しいロングヘアが欲
しい人生だった。
姉のような曲線が欲しい人生だった。

けれどもう欲しがらない。小学生の時はずっとおとなしくて地味な一華は茉莉花のひきたて役だった。「名前だけは華やかなのねえ」という大人たちの無神経なコメントにも泣いた。

自分の持って生まれたものに気づいたその時から、一華は自分の持ち物を磨くことに専念した。
自分の名を花言葉をしらべてみたとき、それは「はかない恋」というもので、一華はがっかりした。けれど赤い一華には別の花言葉がある
。自分は赤い、一華になるんだ。
─ようい、どん。
心の中でそうつぶやいて、一華は坂道を駈け上がる。陸上選手の長い手足がぬるい空気を切り裂く。身体にまとわりつく悔しさも寂しさも吹き飛ばして。
赤いアネモネの花言葉は「君を愛す」。


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