安価・お題で短編小説 ..
97:名無しさん@そうだ選挙に行こう! Go to vote!
17/10/22 12:26:44.21 16ZKlePM.net
【擬本心】
ケホケホと小さく咳き込む。初デートだったのだ。だから浮かれていたのだろう。
楽しみで楽しみで、お風呂に入っていたにも拘らず、つい、着ていく洋服が気になり、そのままクローゼットをひっくり返し……
結果風邪を引いた。
『オレの事は気にしなくて良いから、ゆっくり休みな』
真っ赤な顔で、それでも出掛けようとして母親に止められ、強引に寝かし付けられた。
せめてもとメールを入れた時に返ってきたのが、そんな返事だった。
(イクミくん優しいな)
最初はそう思っていたのだが、病気の気弱か、次第に思考がネガティブに傾いてゆく。
(ドタキャンで呆れられたかな? これで告白なんてしなきゃ良かったって思われたら!? 別れようって言われる!)
「そんなの嫌だよ!」
「え?」
「え?」
いつの間に眠っていたのか。しかし和希が驚いたのは、自分の部屋に、幼馴染みで……今は恋人の夜頭 郁巳が居たからだ。
「イ、イイ、イクミくん!? な、なんで?」
「あ、うん。お見舞い……で、オバサンが上がって行けって」
突然の幸運に嬉しくなるも、ふと自分の今の状態を思い出し、羞恥の感情が沸き上がる。
頭はボサボサ、パジャマ姿で汗もかいている……幼馴染みだったとしても見られたくはなない姿。
(お母さんのバカー!!)
布団を被り、見悶える彼女を見て苦笑しながら、郁巳は口を開く。
「目が覚めたなら丁度良いね、お腹空いてるだろ?」
確かにお腹は減っている。でも……
「別に減ってな『ぐ〜〜〜〜』っ!!」
「ぷっくく……伊勢うどん、作ってみたんだ」
「〜〜! ……伊勢うどん?」
興味を引かれ、和希は頭を出す。どんぶりには醤油を絡めただけに見えるうどん。
「擬きだけどね、うどんのお粥って言われる位、消化に良いらしいから」
「……ありがと」
和希がどんぶりを受け取り、それをすする。
「オ、オイシイヨ」
「正直、伸びきったうどんだからね、それ」
苦笑する郁巳に和希が眉根を寄せ、次に口を尖らす。
「イクミくんが風邪を引いたら、同じもの作ってやる……」
「その時は、本場物を取り寄せて欲しいたぁ」
そんなやり取りをしながらも和希の心は温かい。
作ったそれは“擬き”でも、込められた想いは“本物”だったから。
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