安価・お題で短編小説 ..
356:この名無しがすごい!
17/10/31 12:20:16.27 Mv7QzdAV.net
使用お題:『自動販売機』『書き出し→「親父が失踪した」』
【そして僕はまた通う】(1/2)
『親父が失踪したんだってさ』
姉貴のそんな言葉を思い出していた。
「早川くん?」
「……優一って呼んでよ。幼馴染みなんだし」
「あ、うん」
永瀬 忍に出会ったのは、姉貴のワガママでコンビニに肉まんを買いに行った帰り。夜の自動販売機の前だった。
小さい頃からのご近所さんで、いわゆる幼馴染の間柄。
今はクラスも違うし、同性でつるむ様になったせいで、あまり話しもしなくなっていたけど。
晩秋に差し掛かった夜は、やはり冷える様で、忍は白い息を吐きながら自販機前で踞っていた。
「……」
「え? なに?」
僕は無言でホットの紅茶を2つ買うと、その一本を彼女に差し出す。
「いや、いいよ……」
「もう買っちゃったんだから、勿体無いだろ? 今飲まないと冷めちゃうしさ」
「え、でも……」
僕は無理やり彼女に握らせると、じっと目を見る。
しばらくすると諦めた様で、「ありがと」と言って受け取った。
忍の母親は派手な化粧の人で、見る度に違う男の人を連れている様な人だった。
彼女の父親は、それに耐えられなくなったらしい。
「最近、どう?」
「?」
「あ、いや、勉強とかさ……」
「あーうん。まあまあ」
忍がこんな夜にこんなところにいる理由は何となく分かる。母親のボーイフレンドが家に来ているのだろう。
小さい頃は僕の家に遊びに来ていたんだけど、彼女が来なくなったのはいつからだったか。
「じゃ、行くから」
「うん、ありがと」
手を振って別れる。
「手、冷たかったな……」
冷えきっていた忍の手の感触を思い出し、僕は呟いた。
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