【長編】−−−−−【 ..
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653:sage
10/06/22 22:44:48 Ru140+KS
僕を乗せた車は、朝のオフィス街の人の流れに逆流して走っていた。
運転席の黒い服のいかつい男。この男が今の僕のマネージャーだそうだ。

浮かない顔をして歩く記号のような人達は、こんな高級車の後部座席にゆったり座って仕事へ行く僕を
羨ましいと思うんだろうか。
彼らも企業という組織の操り人形のような物かもしれないが、僕だって同じようなものだ。
僕と僕の身体は僕のもののようで、僕のものじゃない。
それは仕事を始めてからずっとそうだ。
今の事態に陥る前も、今も、それは何も変わっちゃいない。

僕が手に入れたのはダイヤモンドのはずだったんだ。
やっとのことで手に入れたダイヤモンドが、ずーっと握りしめていたのに、
ある時手を開いて見てみたらどす黒い石ころに変わってしまっていたのさ。

明るい世界に抜け出たはずだったんだ。
でも本当は、僕はそれまで自分を照らしていた太陽を失っただけなのかもしれない。

自由になりたかっただけなんだ。
でも僕は、自由が何かって肝心なことがもうよくわからなくなっていたんだ。
きっとそれが間違いだったんだろ。

そうさみんな同じさ。
こんな風に僕のような幸運な選ばれた人間にも、ごく普通の人間にも平等に
闇は用意されているものなのさ。


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