無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目 at EROPARO
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450:333
07/12/01 01:00:07 EJwsUNu9
皆様リレーご苦労様です。癒されております。
最近は、会う機会も少し取れたりでそこそこいい感じです。

自分の一言へのレスが無かったら、メアドすら知ろうとしなかった俺なんで
本当に皆ありがとう。感謝してる。

正直リレーもここまで続くと思わなかったしな


とにかく本当にありがとう。空気?何それ?おいしい?

451:名無しさん@ピンキー
07/12/01 01:35:17 1WNqiVM6
>>450
なにはともあれ良かったですな。
これからも、進展あったら報告頼む。
がんばれよ〜

452:さぁラストスパートですよ!!
07/12/01 09:51:57 vX1g5Dez
>>444


着いた店は、まぁ、なかなか良さそうな所だった。
「さてと、叔父貴はもう来てるかな〜」
木船は店内をキョロキョロ見渡して、
「お、居た居た、ほらいくよ」
店の奥のほうに進んでいく、俺は連れられていくままに、
「おー、やっと来おったか」
どこか人の良さを感じさせる声と、
「……え?>>333君?」
彼女の声に出迎えられ……って、
「……え?なんでここに?」
「……私は連れられて来たの」
その言葉を聞き、思わず二人の方へ振り替えれば、無言でニヤニヤしている様子が目に入った。
……謀ったな、あいつら
そう思うも、自分の頬がなぜか緩んでいくのを感じる。
「ま、早くパァーッと始めよ」
唐突に木船がそういって、たった四人だけの宴会が始まった。


《頑張れー、あともう少しだ》

453:名無しさん@ピンキー
07/12/01 10:42:24 1WNqiVM6
>>452


〜 her side 〜
「……えと、その」
 目の前に座る>>333君に、私は何も言うことが出来ない。
 だって、振られたって思ってたのに。けど、彼は恥ずかしそうで照れ臭そうな、だけどどこか嬉しそうな笑顔浮かべてくれてるから。
 だから、私もなんとか微笑む事が、出来て。
「あ〜、さっきはゴメン。変な時間に電話して……」「いえ、嬉しかったです。……私こそ、操作ミスで出れなくて、そのごめんなさい」
「はぁああ〜〜〜〜」
 そう言った瞬間、彼が思いきり溜息を吐いて、思わずびくって肩が震えた。
 だって、怒ってるんじゃないかって、思ったから。
「よかったぁ〜〜、その、俺 嫌われてんじゃないかって思ったからさ」
「そそそそっ! そんなこと無いですっ! ……ぁ」
 彼の言葉を思い切り否定して、それがその告白の答えになってることに気付いて。
 私は顔が熱くなるのを感じた。
 けれど、その言葉を取り消すことは出来なく―うぅん、したくないから。
「私も……、>>333君と会えて嬉しいです」
 素直に思ったことを口に出来た。
 きっと顔が真っ赤になってると思う。それだけじゃなくて、きっと耳まで赤くなってるはず。
 だけど、いい。
 だって、目の前の>>333君が笑ってくれているから。
「ちっ、良い雰囲気出しやがって、手前ぇにゃもったいなさ過ぎるお嬢さんじゃないかよ」
 いきなり、>>333君が思い切り頭をがくんって倒した。
 うぅん、木船さん―だったっけ、女の人みたいに見える男の人に、思い切り頭を叩かれたんだ。
「って、いきなり何しやがる!」
 そんな木船さんに、彼が怒ったような表情を向ける。
 けど、それはどこか楽しげで、楽しそうにしている彼を見るのが、私も楽しい。
「まぁ、ええやないか。まずは乾杯からせにゃならんでの。ぶちようけのむっぺよ」
「……はい」
 私の隣に、半分くらい間を空けて座る大林さんが、いつもの口調で喋って。
 みんなの前にビールの中ジョッキが置かれて、私の前にはチョコレート色の変わった飲み物が出てきた。
 大林さんの選んだソレはいわゆるカクテルと言う物らしい。
 甘めで飲みやすいのを選んだからって、言われて押し切られたんだけど、 ……私、お酒飲むの初めてなんだよね。
「ま、若いカップルの前途を祝して」
「……あの、大林さん、恥ずかしい、です」
「えと、それはちょっと、まだ……」
「るっさい、アホ介。お前はだぁってろ。ってことで××さんどうぞ」
 木船さんが楽しげに笑って行ってくれたことの意味を理解して。
 私はカクテルの入ったコップを持ち上げた。
「……乾杯」
 かんぱいとみんなが口々に言うのを聞きながら、私はこくんっと生まれて初めてアルコールを口にした。

【続き、がんばれー。エロは自分が書きたいなぁと言ってみたり】

454:名無しさん@ピンキー
07/12/01 10:46:34 1WNqiVM6
ってことで、三回目まとめ、行きます
一回目 >>369
二回目 >>428-429

>>438
>>436-439
>>444
>>452-453

てか、いい年こいたオスなのに、男子一人称より女子一人称の方が書きやすいのは何でだろ?

455:名無しさん@ピンキー
07/12/01 21:32:57 oNXFPa2Y
>>454
乙にしてGJです。

>エロは自分が書きたいなぁ
>女子一人称の方が書きやすい
つまり女性視点でエロを書きたいということか。

456:名無しさん@ピンキー
07/12/02 00:14:16 2+niv/q+
>>453

―his side―
結果から言おう。
あの二人は早々に「あとは二人で〜」と言って去り、
残された俺と彼女は楽しく談笑しながら飲んでいたのだが……
「……………」
「あー……大丈夫?」
「……え、あ、大丈夫」
彼女はどうやらお酒を飲むのが初めてらしく、ペースが飲むわからなかったのか、
すでに顔は真っ赤で、言葉は微妙に呂律が回っておらず、おまけに反応が鈍い。
「えーっと、そろそろ行こうか」
「……………あ、はい、わかりました」
ちなみに、俺はかなり酒に強いほうなので、これぐらいではなんともない。
会計に行こうと、立ち上げる。それに合わせるように、彼女も立ち上げったが
「…………あれ?」
そう言って、ふらついた足取りで後ろに倒れそうになる。
「わっ!!ちょっと待った」
咄嗟に、彼女の方に行き、支える。
「………………すみません」
「良いって別に」
彼女を支えたまま、会計を済ませ、店を出る。かなり長居をしていたらしく、
日が早く沈むようになった空は、すでに紫色で、月が見えていた。






《なんか限界、眠いから寝るよあとは任せた》

457:名無しさん@ピンキー
07/12/02 01:04:57 e/i5kVy4
〜 her side 〜
せかいがぐるぐるまわっている。
うん。
だいじょうぶ。わたしも同時にまわってればだいじょうぶ。
でもあまりまわっちゃうとめが回る。
そうだ。
ぎゅっとすればいいんだ。

いいにおい。
汗と整髪料のいいにおいがする。
ぎゅうっ、と腕をだきしめると、そのにおいはもっと大きくなる。
腕はちょっと太くて、筋肉質で、わたしの腕とは大違いだ。
やっぱり男の人の腕って、すごいんだ。
うまれてはじめておとこの人の腕に抱きついて、その感触はとてもすごくステキだ。

耳元で>>333君がなにか言ってきている。
ステキ。ステキ。>>333君の息の温かさとか、耳をジンジンとしびれさせるような響きとか、
その高くも低くもない音程とか。なにをいってるかわかんないけど、すごくステキ。
抱きついている>>333君の腕と触れている皮膚の裏側あたりがなんだか甘痒くうずいてきてしまう。

あれ?
ここ、どこだっけ?
ちょっと寒い。
>>333君の腕はあったかい。
体もあったかい。
だからぎゅうう、と、もっと強く抱きしめる。
当たってるおっぱいが「くにょん」と歪んじゃうくらい強く。

ふらふらしちゃいそうなわたしを、>>333君はしっかりと支えながらあるかせてくれている。
ステキ。こんなふうに、べたべたいちゃいちゃしながら街を歩くカップルを「バカみたい」と思ってたけど。
わたしは間違ってた。
それはすごくステキで、嬉しくて、楽しくてシアワセなことなんだ。うん。
ろれつの回らない言葉で>>333君にそれを伝えたのだけど、わかってくれたかな?

なんだか色とりどりのネオンが目に映っている。
世界がふわふわしてるから気がつかなかった。
隣でわたしを支えてくれている>>333君がなんだかちょっと無口になってるみたい。
―ダメなのかな。
わたしが地味でつまんない女だから、>>333君はそんなふうにつまんなくなっちゃうのかな。
そう考えると、なんだか泣きたい気持ちになってしまう。>>333君にはシアワセになってほしい。
>>333君みたいなステキな男の人は、いつでもシアワセで楽しい気持ちになっていて欲しい。
でも、わたしじゃダメなのかもしれない。

気がついたらわたしは、
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
彼の耳元でそうささやいていた。







【続きは頼んだぜ兄弟】

458:書く人
07/12/02 09:33:43 jR1yhCZx
>>333 side 〜

「ふふ……」
 頬笑みながら、彼女が回る。
 クルクルと舞うように、冬の夜風にスカートを乗せて、妖精のように…。
 ……と、表現すれば可愛いものの、客観的に言わせてもらえば完全に酔っ払いだ。
「つか、何で回るんだ?」
「…世界が…回ってるもの。だから…私も……」
 うん、やっぱり酔っぱらっている。
 酔っぱらった彼女はしばらく回っていたが、やがて三半規管に限界が来たらしい。足がもつれる。
「おっと…」
 俺は手をのばして彼女の手を取って引張る。反動で彼女の体がこちらに向かってくる。
 受けとめた感触は羽毛のように柔らかく軽く、しかし確かな実体と質量を俺に与えた。
「大丈夫?」
 店を出てから何度目かの質問。彼女は惚けたようにこちらを見て頷く。
 酔っ払ってはいるもののとりあえず大丈夫そうなので、歩きはじめる。
 彼女は今度は回らなかった。代わりに、俺の腕を抱きしめるようにしてきた。
 正直助かる。いつ転ぶかハラハラして見ずに済むし……それに、暖かい。
 錯覚なのだとは思う。冬の寒さによる熱の略奪を防いでくれる厚手の生地は、同時に俺と彼女の間に厳然と存在して熱の交換を妨げる。
 けれども腕に感じる彼女の体の柔らかさは温もりを錯覚させる。それは錯覚だが、彼女と言う温かい存在を確かに俺に伝える。
 そう……彼女は今、俺の隣にいる。
 彼女の体の柔らかい感触も、冬の空気に混ざる甘い香りも、確かに今、俺の隣にいる彼女の存在を伝えてくれる。
 感動だった。そうとしか表現する言葉を知らなかった。
 人間は生まれた時は興奮と沈静の二種類しかない。それが快不快、喜怒哀楽と分化していき、一つ一つがラベリングされていくことで感情が形成される。
 感情が動いた。それは俺が今まで知らなかった類のもので、快いもので、喜楽に属するものだ。
「……××」
 何か言おうとして、初めて感じた感情は、彼女の名前という形で口を零れた。
 彼女は何も答えなかった。声は小さかったし、彼女も意識が朦朧としていたのだろう。
 理性ではそう分かっていても、胸が締め付けられるような切なさを感じる。
 ……俺ってばこんなに乙女チックだったのか?
 自分のポエマーっぷりに呆れていると、声への答えだとしたら時間差付きの反応が来た。
 俺の腕を抱きしめる力が増す。
 彼女の柔らかな感触が、よりはっきりと腕に伝わってきた。特に胸とかが「くにょん」と。
「…っ、××?」
「あったかい……」
 うろたえる俺に、安心し切ったように彼女は俺に体重を預けながら呟く。
 その信頼と、感じるはずのない体温を感じるという錯覚の共有を、俺は嬉しく思った。
「すてき…」
「ん?」
「間違いだよ、私…。ばかみたいなことじゃ間違えだもん…。
 だって幸せで、うれしくて、たのしくて、幸せなこと」
 酔っぱらっている彼女の言葉は文法が間違っていて、単語が重複していて、呂列が回っていなかった。
 けれど、確実に分かったことがある。彼女は今、幸せを感じている。そしてその理由は俺にある。
「ああ…」
 俺が言ったのは感嘆だったのだろうか返答だったのだろうか?自分でもわからなかったが、言葉の理由は俺も幸せを感じたからだった。
 不意に目が、アンバランスなクリスマスカラーのイルミネーションが巻きつけられた看板を捉えた。
『休憩一時間――』
 ラブホテル、という類のものだ。

459:書く人
07/12/02 09:35:19 jR1yhCZx
 満たされていた幸福感を、稲妻のように切り裂いて衝動が突き抜けた。
 性欲だ。腕に感じる彼女の感触が、急に生々しいものに感じられた。幾重もの布切れ越し感じる、やわらかな肉。異性の体。
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
 耳元で声がして、はっとした。潤んだ彼女の瞳が、俺をとらえていた。
>>333くん、しゃべんなくて…私が地味でつまんない女だから、シアワセじゃないんだよね?
 私が……>>333君が私でシアワセになってほしいのに…」
 目の潤みが、涙になって零れる。
 めまいがしてきた。世界が回り、自分の脈動が聞こえる。
『食っちまえ』
 脳裏に響いた声は、木船が去り際に言った冗談の記憶か俺の本能の誘惑か?
「…何でもするよ?どうすればいいの?私の全部をあげるよ?それでシアワセになれない?>>333君はシアワセになれない?」
 耳朶を震わせる声は、彼女の誘惑か俺の都合のいい妄想か?
 ああ、俺は酔ってる。何に?アルコールにか?彼女にか?性欲にか?ラブホの前でこんなことを言われているという状況にか?
 ぐるぐると回る思考の中で……俺は……

「………駄目だよ」

〜 her side 〜
 抱きしめられて、告げられた。
「………駄目だよ」
 ああ…やっぱり私じゃ駄目なのか…かなしいな。
「そうじゃない!」
 じゃあ、どう駄目なの?
「どうって…ま、まだ再会して間もないし…
 酔っぱらってる所をなんて卑怯だと思うし…
 まだ君の気持をしっかり聞いてないから」
 気持ち?どういうことだろう。私は…
 あ、そうか。私、言ってなかったっけ?
 彼に言ってなかったっけ?
 うん、好きだって言ってないや。
 恥しいな…。けど言おう。いいや、言っちゃおう。
 地味な私だけど、今は酔っぱらってるもの。酔っ払ってていつもと違うもの。
 いつもと違う私だから、いつもと違うことをしちゃうもん
「大好き」
 ああ、気持ちいい。ぎゅっと縮こまっていた心が広がるみたい。
>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
 腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?」
「え、えっち…って」
 うん?何か変なこと言ったかな?地雷原かな?けどいい。もっと言おう。
「大好き…私、>>333くんのこと、好き…で…」

460:書く人
07/12/02 09:37:40 jR1yhCZx
>>333 side 〜
 突然に、言葉が途切れてから一分ほど経って、俺はようやく気付いた。
「……××?」
 声を掛けても、戻ってくるのは一定間隔の呼吸のみ。寝てしまったようだ。
「はぁぁぁ…」
 その場に崩れ落ちてしまいそうな脱力感。
 ああ、やっぱり酔っぱらってたんだな、それもひどく。
 勢いに任せてここに連れ込まなくて良かった。
 たぶん、この状況で行為に至っても、彼女はきっと許してくれるだろう。けれど、俺自身がきっと許せなかったはずだ。
「好き…か」
 改めて確認して心が温かくなる。
>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
 腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?』
 胸中でリフレインして、確信する。
 想いが通じた、と。
 ……まあ、なんだかめちゃくちゃ爆弾発言が紛れ込んでいる気がしないでもないが…それでも、
「両想い、か」
 顔がニヤける。好きな人に、好きになってもらえる。そんなありふれた、けれど最高の奇跡。
「けど……だとしたらちょっともったいなかったかな」
 緊張感が抜けた所に、ちょっと魔が差してきた。
 が、一蹴する。焦ることはない。
 彼女と、これからゆっくりと時間を共有していこう。彼女と着実に時間と、思い出と、絆を積み重ねて……そして……
「とりあえず、タクシーだな」
 俺は彼女を支えながら、大通りの方に歩きだした。

【長文失礼。あえて寸止め。酔った勢いはいけません。
 リアル>>333がんばってください。応援してます】

461:名無しさん@ピンキー
07/12/02 09:47:44 HaS0x5j4
なにはともあれGJ
「そんなありふれた、けれど最高の奇跡」なんて良いフレーズだよなぁ。
お見事でした。

462:名無しさん@ピンキー
07/12/02 09:56:25 FEBex1Kd
読み終わった今の顔は誰にも見られたくないなぁ
ニヤニヤしてるからw

463:名無しさん@ピンキー
07/12/02 10:41:14 FEBex1Kd
彼女を自宅まで送り届け、家族に託して家路につく。
ふう……意識はしっかりしている。
まだ酔っているはずだけど、胸の奥深いところから何かが湧き出てくる。
興奮、感動、焦燥?
自分でも正体がわからずに自分の気持ちを持て余す。
落ち着けよ俺。

部屋に入って、ベッドに転がっても気持ちは落ち着かない。
こういうときはクールに一本抜いて……とも考えたが、分身は静かに眠ったようだ。
ピクリともしない。
動物的本能よりも、人として恋が成就した興奮のほうが強いと言うのか……

彼女が、好きだっていってくれた……ずっと好きだったって……。
俺も……好きだった。 あの頃も、そして今も。
俺の中から湧き上がってくるこいつは……喜びか?
ああ、そうか。 俺は嬉しいんだ。
彼女と、想いは繋がっていたことが。
中学生だった あの頃、自分の恋心を伝えることすら出来ずに時間は流れてしまった。
あれから10年。
お互いに成長し、経験を積み、再会出来たことはきっと只の偶然じゃない。
俺と彼女が自分に素直になって想いを伝えあうことが出来るようになるまでに必要だった時間なんだ。

俺は……彼女が好きだ。
一眠りして目が覚めたら、彼女に会いに行こう。
そしてもう一度、彼女に想いを伝えよう。
今度は、他人の手も酒の勢いも借りずに。
自分の言葉で、自分の想いを 彼女に伝えよう。

自分自身の気持ちに整理がついたせいか、少し落ち着いてきた。
落ち着いたとたんに本能が鎌首を持ち上げてくる。
現金な奴だ。
自らの本能と熱く格闘した俺は心地好さの中で眠りに落ちていった。



【クライマックスに向けてラストスパートだw  ラストは盛り上げようぜ!!!】

464:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:11:55 HaS0x5j4
>>333 side 〜
「えと、本当に良いのか?」
「うん……」
 俺は自分の部屋に上げた彼女を見詰めながら、へたれてしまう自分に活を入れる。
「……ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
 彼女の声に、俺は小さく頷いて見せる。
 どくんどくんとやかましい音が響く中。
 どうしてこうなったかを思い出していた。


 今日も講義を受けに出てきた俺の周りは、あっという間に男友達で占められていた。
 むろん、原因は言うまでもなく昨日のことをあっさりと言いふらしまくった木船だ。
 元々、ダチとバカやってることが多い俺だけど、その手の話題は全くなくて―というか、俺のダチは大抵そう言う奴で木船が変わってるだけだけど―だから嫉妬混じりの祝福でもみくちゃにされてしまった。
 単純に言えばそれだけのこと。
 ……だったんだが。
 昼飯時、学食に行こうとした俺の携帯がいきなり鳴って、彼女から電話が入ったんだ。
 木船と大林さんに謀られて校門前に来ていたらしい。
 ―しかも、手作り弁当を携えて。
 正直、ダチ連中からの殺意を受けながら―無論、木船が冗談半分で広めたからだ―俺は彼女と合流して、そのままふける事にした。
 何でかって言えば、かなり身の危険を感じたからだ。
 ……なんせ、わざわざ校門までついてきて、彼女と俺の周りを取り巻いてくれたんだから。
 しかも、彼女に不躾な質問までし始めたんだから、逃げる以外に彼女を護る手段が無かったわけだ。
 で、そのままデートにかこつけて、夕食時になったから送っていこうと思ったんだ。
 その時に、彼女が俺の家を見たいって言い出したってだけの話し。
 だけど、本当は気付くべきだったんだ。
 彼女が、そのつもりでいることを。


「俺、……俺さ」
 何の変哲もない、家具らしい家具もない俺の部屋。
 なのに、ただ彼女がいてくれるだけで、きっと一流ホテルでさえ敵わないほどの雰囲気に包まれた部屋で、俺は目の前に立っている彼女を見詰める。
 彼女は顔を赤くしたまま、ただこっちをじっと見詰めてくる。
 その様子に、胸の奥が熱くなる。
 昨夜の事を、全部覚えてるって彼女は言った。
 とても恥ずかしくて、思い出すと顔から火が出ちゃいそうだとも言った。
 そして、彼女が向けてきた言葉に、俺はまだ、答えが出せない。
 いや、答えはとっくに決まってる。だけど、その先を口に出来ない。
 どこまでヘタレなんだろうか、俺は。
「あの、さ」
 彼女は何も言わずにただ見詰めてくる。待ってくれている。
 だから、俺は顔をしっかりと上げて、いきなり自分の頬を軽くはたいた。
「?」
 驚いたように目を丸くする彼女に笑いかけて、俺は深呼吸をして彼女を見詰める。
「俺もさ、××の……、君のことがずっと好きだった。君が初恋で、言葉をかけることも出来なくて結局、終わるはずだったんだと思う」
 呟きながら、一歩だけ前に踏み出して。
「好きだ。君のことを誰よりも何よりも好きで、大切にしたい。そう思ってる」
「……じゃぁ、なんで昨夜は?」
 顔を赤らめた彼女が、じっとこちらを見詰めてくる。
 その真剣な眼差しに、答えるために、数度深呼吸した。
「だってさ、酔っぱらった女の子に手を出すなんて、男として最低だからな。そりゃ、据え膳食わぬは男の恥って言う奴もいると思うけど……、好きな女性だからこそ、そんな事したくなかったんだ」
 言いながら、更に一歩を詰めて、俺は彼女を抱きしめていた。
 彼女も俺の背中に腕を回して抱きついてきて。
 気がつけば、そのままキスを交わしていた。

465:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:12:38 HaS0x5j4
〜 her side 〜
 キス、してる。
 唐突に奪われたんじゃなくて、一方的に押しつけたのでもなくて、きちんとお互いのことを思いながら、キスしてる。
 時々、こすりつけるようにされると、ぞくって背筋が粟立って胸の奥が暖かくなってくる。
 ……悪戯心を起こして、私は彼の唇に舌を這わせた。
 んっ、と彼が困ったような表情を浮かべながら私を受け入れてくれる。
 同じように舌を出して、私の唇を舐めてくれた。
 それだけの事で、口から生まれた痺れが、背中を通ってお腹の奥に響いて来た。
 いけないって思うよりも早く、じゅんっと液体が湧く感触を覚えた。
 彼の唇をこじ開けて、舌を差し込む。
 彼も同じようにしてくれて。
 普通なら他の人が触れるはずもない場所を預けていることが、預けられていることが嬉しくて心地よくて…………気持ちよくて。
 液体が漏れていくのを抑えられない。
「んっ……ぷはっ」
 彼が私から唇を離して、少しだけ困ったような表情を浮かべる。
「あの、さ。今日はこれからどっか出掛けようか? ゆっくりと歩くだけでも良いんだけどさ」
「……いや、です」
 彼の言いたいことが理解できたから。
 私はしっかりと首を振った。
 だって、決めてたから。彼へ向ける思いをこれからもずっと忘れないために。
 初恋……うぅん、違う。
 同じ人に、抱いた二度目の恋を、終わらせないために。
 私は彼の目を見詰める。
 その瞳に、映り込んでる私の顔は真剣と言うより、……どこかはしたなく見えたけど、ソレだって構わない。
 だって、こんな顔を見せるのは、彼にだけ。
 >>333君にだけだから。
「最後まで、して欲しいです。……抱いて、欲しいです」
 彼がじっとこちらを見詰めたまま、一歩下がる。
 抱擁がなくなるのが寂しいけど、それが拒絶じゃないって解ってたから。
 私はただ微笑んで見せた。
「今まで、大好きでいたから。今もずっと大好きだから。これからも大好きでいたいから」
 だから、と。
 彼に微笑みを向けたまま、私はまだ羽織ったままだったコートを脱いで、そのままぱさりと床に落とした。
「えと、本当に良いのか?」
 彼の戸惑いを乗せた言葉に頷いてみせる。
「うん……、ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
 決心を込めて来たんだから。受け止めて欲しいから。
 ……好きな人が好きでいてくれるって解って、もうこの想いは止まらなくて、止めようとも思えなくて。
「それとも、私って、魅力ない……かな?」
「そんなこと無いっ!」
 思わず呟いた卑下の言葉に、彼が慌てて否定してくれる。
 ……ソレを望んでいた自分に、っていうより女の性にすこしだけ嫌気がさすけど、彼は受け止めてくれた。
 今はそれだけが真実で、私は彼の返事を待たずにブラウスのボタンを一つ一つ外しはじめた。

466:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:13:21 HaS0x5j4
>>333 side 〜
 もう、止められなかった。
 彼女が、あの引っ込み思案で恥ずかしがり屋だった彼女が、自分から俺のために服を脱いでいく。
 その光景は生唾物だった。
 図書館の司書をしているだけあって、日焼けとは全く縁がなさそうな抜けるような白い肌が、露わになる。
 ……黒いレースの下着がやけに扇情的で、掌に少し余るくらいの胸は、きっと平均より少し大きいものだと思う。
「……>>333君も、脱いで欲しい……な」
 伏し目がちになりながら彼女が呟く。
「あ、ああ」
 慌てて服を脱ぎながら、俺は、少しだけ不埒な想像をしてしまった。
 自分から求めてくる彼女。
 眼鏡で解りづらいけど、きっと誰よりも綺麗な彼女の事だから、今までに誰かと付き合ったことがあるかも知れない。
 ホックの外れたスカートが、ぱさりと彼女の足下に落ちた。
 ごくんっと大きな音と共に、思わず唾を飲み込んでしまう。
 ……黒い下着だから解りづらいけど、彼女の中心部分が色ずんで、……きっと濡れてるって解ってしまったから。
 俺も慌てて服を脱いで、下着になった時点で動きが止まってしまう。
 もう上を向いて固まっていたから。
 それが恥ずかしくて、だけど隠すことは出来なくて。
 俺は彼女と向き合う。
「……その、私、ハジメテだから……」
 頬を赤らめる彼女に、どくんって体の奥から音が響く。
 ハジメテなのに、自分から求めてきた彼女。
 それがどれだけ恥ずかしくて、勇気がいることなのか解ったから。
「俺も、はじめてなんだ。だから、変なことしたら、ごめん」
 呟きながら手を伸ばして、彼女を引き寄せた。
 そのまま背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。
「いいよ……貴方になら、なにをされても、いい」
 胸が震えるってこんな時のことを言うんだろうなって、そう思える。
 けど、その気持ちを言葉に代えることが出来なくて、俺はただ彼女に口づけて、そのままベッドまで移動する。
 優しく彼女をベッドに寝かせて、笑いかける。
 すこしでも彼女が安心するように。
 そして、俺は彼女に覆い被さった。

467:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:19:19 HaS0x5j4
〜 her side 〜
 月明かりの差し込む部屋の中。
 私は彼の腕を枕にして、一人顔を赤らめていた。
 思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。
 彼の手の動き一つ一つに自分でも思っても見なかったくらいに気持ちよくなって、はしたない喘ぎ声を上げてしまった。
 彼が入ってきたとき、あまりの痛さに涙を見せて彼に心配させた。
 必死で彼にしがみついたときに、彼の背中に爪を立ててしまった。
 ……なのに、少しの間彼に小突かれただけで、痛みより快感を覚えてしまった。
 最後に、彼が達するときに、後先考えずに中に出してとねだってしまった。
 全部、恥ずかしすぎて、穴があったら入るんじゃなくてそのまま埋められてしまいたい。
 そう思うくらいに恥ずかしい。
「……好きだよ」
 彼の寝顔を見ながら、私はそっと舌の上に言葉を載せる。
 彼の事が何よりも愛おしい。
 彼が側にいてくれると思うと、叫び出したいくらいの嬉しさが込み上げてくる。
 きっと、人を好きなるって、こういう事なんだと思う。
 側にいてくれるのが嬉しい。
 側にいられるのが嬉しい。
 お互いを必要と思いあえることが、何よりも嬉しいから、誰かを好きなるんだって。
「……最期まで、いっしょにいようね」
 小さく呟いて。
 私は彼の頬にそっと口づけた。

468:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:20:01 HaS0x5j4
>>333 side 〜
「ん……」
 なんだか、くすぐったさを覚えて俺は目を覚ます。
 窓から見える白々あけの空に、そんなに寝てたのかと思って首を傾げた。
 なんだか寝過ぎで余計眠くなってる気がして。
 ついでに昨夜は結局晩飯を食ってなかったような気がしたから。
「す〜す〜」
 いきなり隣から寝息が聞こえて。一瞬口から心臓が飛び出しそうになった。
 慌てて視線をそちらに向けて。
 昨夜の彼女との甘い一時が一気に蘇る。
「……俺」
 気持ちよさとかは、基本的にどうでも良かった。
 体だけの気持ちよさを言うなら、自分の手でこすってる方が気持ちいいとかって気がしたから。
 けど、痛みに耐えて必死にしがみついてくる彼女の様子が。
 幾度か動いていると痛みよりも快感を覚えているらしい彼女の様子が。
 なにより、大好きな、……愛しい人と快楽を分かち合えたと言う事実が。
 体だけの快感の幾数倍もの気持ちよさを感じたから。
 愛らしい寝息を立てる彼女をみながら思う。
 これからも、ずっと彼女といられるだろうかと。
「何、大丈夫さ」
 そんな僅かな不安とも呼べない想いに、苦笑を浮かべる。
 だって、俺は彼女に二度も恋をしたんだ。
 幼くて諦めただけの初恋と、ソレよりも遙かに強い二度目の恋。
 きっと、これからすれ違いはきっとある。
 俺も彼女も、生きているんだ。
 想いがずれるときもあるし、好きだから余計にお互いの些細なことが許せなくなるときが来るかも知れない。
 だけど、きっと大丈夫。
 もしその時、二度目の恋が終わっても、きっと俺は彼女にまた恋をするに決まってる。
 言葉が足りなくて傷つけるかも知れない。
 彼女を想うからこそ、傷つくことがあるかも知れない。
 けれど、俺は彼女を大切に想う。
 思い続ける。
 きっと、そんな想いが、恋情よりもずっとつよくて大きな愛情なんだ。
「……××、愛してる」
 呟きながら、俺は彼女の頬にそっとキスをした。


 We hope that >>333 are happyend

 The End

469:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:25:57 HaS0x5j4
長文且つ僭越ながら幕を引かせて頂きました。ごめんなさい。
>>333の前途が幸せであることを心から祈っております。

最終まとめ
一回目 >>369
二回目 >>428-429
三回目 >>454
>>456-460
>>463-468

470:名無しさん@ピンキー
07/12/02 23:35:49 bnaXx4dE
最高GJ
なんか終わってしまうとなるともったいない気がするな

471:名無しさん@ピンキー
07/12/03 00:13:27 dDkM/qIu
>>469
ナイスフォロー
そしてGJ!!

延々と耳元で小一時間GJ!!


472:名無しさん@ピンキー
07/12/03 00:49:17 x/HVO0F9
この2週間足らずの間にずっとssを書いてくれた職人達全てにGJ!!!!!
そして願わくば>>333の恋が実りますように。

473:名無しさん@ピンキー
07/12/03 03:28:52 xIrHSG4h
>>469何かもう感情ごちゃまぜだ・・・
まずはありがとう。理想の純愛ENDだな。
本当にきれいな終わり方だな。ラストがあなたでよかった。

そしてこのスレで力を合わせて書き上げた、最高の純愛【無口】作品に乾杯!!!



そして>>333にこのSSが幸せをもたらす事、幸せな未来がある事を心から祈ってる。

474:名無しさん@ピンキー
07/12/03 07:27:30 U72VY0ir
全て参加者と住人にGJ
面白い遊びだったよ

475:名無しさん@ピンキー
07/12/03 07:31:27 xWGvDfHl
ああ、もうGJすぎる

そんな作品にGJしか言葉を送れない自分がふがいない
仕方ないので心の底からのGJで伝えさせてほしい

GJ!!

476:名無しさん@ピンキー
07/12/03 15:30:29 6HE/Yy1C
みんな本当に無口娘を愛してるんだな……
そうでなかったら、こんな風にリレーが最後まで続くはずがない。
そもそも友達同士でさえ、リレー小説はたいてい途中で止まるのに!

完走萌えでとう! 書いたみんなにスーパーGJ!!!

477:名無しさん@ピンキー
07/12/03 16:49:05 HyKdcxk1
まさか最後まで続くと思ってなかったな
結局俺は傍観者してるだけだったけど、大変楽しませてもらった
リアル>>333もうまくやって欲しいな。

もはや言うまでもないんだが、リレー参加者全員にGJ!

478:333
07/12/03 23:49:39 tndsjWzn
正直、言葉が浮かびませんが、皆本当にありがとう。

なんか分かんないけど、泣けた。本当にありがとう。

今、全部読んで少しテンパってて上手く言えないけど
お前らみたいな奴らがいてよかった。本当に。

後悔しないよう頑張る。俺なりに誠意で応えるから

479:名無しさん@ピンキー
07/12/04 01:57:08 TuOhCM+c
その言葉が聞けてよかった。幸せになってくれよ。

てか今更だが、このスレの絆に涙が止まらなくなった。ここにいてよかったと本当に実感させられた。


さて、ところで無口っ娘クリスマスネタの需要が増えて来る訳だが何かいい案あるか?

480:名無しさん@ピンキー
07/12/04 14:20:27 D8BqLqpx
すげえ、こんなにきれいにまとまったリレーなんて初めて見たよ
>>333と書いた皆さんGJ!!

481:名無しさん@ピンキー
07/12/04 14:35:38 oMop7wUN
何人か固定のレベルの高い書き手がいたのと、
ジラし担当とプッシュ担当のバランスがよかったのが
成功の秘訣だったのかもな。
何はともあれみんなGJ!

482:名無しさん@ピンキー
07/12/04 18:01:10 gxpVs6f4
とりあえず、保管庫がないと勿体無い(`・ω・)

483:名無しさん@ピンキー
07/12/04 18:25:13 TtAF6rLN
無口スレの保管庫は死んでるのか……

484:名無しさん@ピンキー
07/12/05 03:03:43 ZOXe+YXY
保管庫消えたのか。
じゃあwiki辺りで作るか?

485:名無しさん@ピンキー
07/12/05 10:18:20 xU98ISg8
消失した作品データ・・・。
勿体ない

486:名無しさん@ピンキー
07/12/06 00:06:08 G+r4swzh
>>484
まぁそれがいいだろうな、頼む

>>485
過去ログを持ってる人にうpしてもらえば大丈夫だろう

487:名無しさん@ピンキー
07/12/07 05:35:25 jjIQUHsI
じゃ、wikiができるまで過去ログ置いておきますね。

URLリンク(red.ribbon.to)

488:名無しさん@ピンキー
07/12/07 23:51:50 AMMrpBh2
読み手の専ブラの中にもdatがあると思うけど・・・

489:名無しさん@ピンキー
07/12/08 07:59:28 69N1cFOq
>>486すまん。今出張中で携帯しか持ってないんだ。
まだしばらく帰れないから、すまないが他にできる人がやってくれ。

490:名無しさん@ピンキー
07/12/08 08:12:04 sU4zuN0f
一応、wiki立ち上げだけなら出来る。
そのかわり、更新かなり遅くなるんで出来れば手助け欲しい。
誰でも編集可能にすると、悪さする奴が出そうなんだが、さてどうしよう。

491:名無しさん@ピンキー
07/12/08 08:22:25 g3gkdQpr
実害がでてから制限したら?
猫の手も借りたいところだろうし

492:名無しさん@ピンキー
07/12/08 08:30:32 sU4zuN0f
では、誰でも編集可能で立ち上げてくる。

493:名無しさん@ピンキー
07/12/08 09:57:32 sU4zuN0f
URLリンク(wiki.livedoor.jp)
ってことで、保管庫立ち上げ完了。
とりあえず時間がないんで、一番最初の一編だけ保管したので、
余裕がある人は、保管手伝い、お願いします。

494:名無しさん@ピンキー
07/12/08 12:15:05 nzr9evy8
保管庫乙&サンクス!

495:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 01:59:18 geiosX30
こんばんは。久しぶり……ではないですね。リレーに参加したし。
でも一つの作品投下という意味では二ヶ月ぶりです。せめて一ヶ月にできるよう頑張ります。

以下に投下します。縁シリーズラストです。
今回過去の作品を上回って一番長くなってしまいました。
長いのが苦手な方はスルーでお願いします。

496:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 02:00:17 geiosX30
『縁の切れ目 言霊の約束』



 遠藤守の住むアパートの一室で、依子は呆然と固まっていた。
 部屋には三人の人間がいた。依子と、守と、もう一人若い女性の三人が座卓を囲んでいる。
 その女性は美しかった。
 人形のように整った顔立ち。流水のように滑らかな黒髪。厚手のスーツは凛とした雰囲気を際立たせ、服の間から見える柔肌は雪のように白い。
 そして、依子にとてもよく似ていた。
 依子は何も考えられず、何も言葉が出なかった。色々なことが急に起こりすぎて、頭が混乱していた。
 一度だけ小さく深呼吸をする。簡単に落ち着けるものではないが、事態の整理には効果的だ。
 依子は整理する。頭の中で、今までに起こった出来事を。


 昨日の夜、依子は守を二ヶ月半ぶりに訪ねた。
 しばらく訪ねなかった理由は気まずかったからだ。
 守に告白されて、依子はまだ返事を返していない。さすがにそんな状態で顔を会わせる度胸はなかった。
 以前までの依子は、彼の想いに気付いていなかったので気兼ねなく会いに行っていたが、さすがに二の足を踏むようになっていた。
 だが昨日、そんなことを頭から消し去るほどの事態が我が身に降りかかった。
 縁が突然見えなくなってしまったのだ。
 昨日の夕方、自らを生霊と名乗る少女に『何か』をされて、
 ……目が覚めたときには世界は変わっていた。
 アスファルトからビルの壁、街行く人々から空の彼方まで、世界を覆う無数の糸が、跡形もなくなっていた。
 少女は何度も謝ってきた。魂を傷付けた、巻き込んでしまった、傷は治したが、何らかの後遺症があるかもしれない。色々なことを言っていたが、あまり頭には入らなかった。
 何が起きたのか、すぐには理解できなかった。世界の変化に意識がついていかなかった。
 いや、変わったのは自分の方かもしれない。
 それから後のことを依子ははっきりとは覚えていない。少女に何か言ったかもしれない。言わなかったかもしれない。
 気付いたときには守の部屋の前に辿り着いていた。
 すがれる相手が欲しかったのだろう。家には保護者の義母がいたが、誰でもよかったわけではない。
 依子はいつも一歩退いて接していたので、彼女では駄目だった。身近な者で体が向いた相手が守だったのだ。
 気まずさが消えたわけではないが、不安の方が強かった。
 守は多少驚きはしたものの、いつもと変わらず迎えてくれた。
 会った瞬間思わずすがりついて、部屋の中に入ってからも落ち着きのないまま一方的に事情を話して、それを、ただ静かに聞いてくれた。
 頼れる人だった。
 そのあと安心からか疲労が一気に襲ってきた。遅いから泊まっていくよう守に勧められて、依子は素直に従った。
 これまでにも何度か泊まったことはあったが、守の気持ちを知った今、前のような気軽さは持てなかった。
 借りたベッドの中で依子は思った。このいとこは、自分にいつでも手を出せたはずなのだ。だがそんなことは一度もなかった。せいぜい頭を撫でる程度だった。
 そこに守なりの真摯さが込められているような気がして、嬉しくなった。同時に申し訳なく思った。
 だがそんなことは、今の依子には瑣抹事でしかなかった。
 守を見やる。その胸元から生えているであろうものを見るために。
 何も、見えなかった。
 依子と守の縁の糸が前まで確かにあったはずなのに。
 依子はぎゅっと目を瞑る。昨日までのあの感覚が錯覚だったかのようで、胸が苦しくなった。
 眠気に意識が侵食されるまで、依子はひたすら強く目を瞑っていた。

 翌朝目を覚ますと、すぐ横に自分によく似た女性が無表情に座っていた。
 ぎょっとして跳ね起きると、女性は微かに首を傾げた。
 誰、という疑問はすぐに吹き飛んだ。もう何年も会っていない相手だが、依子には一目で十分だった。
「お姉……ちゃん?」
 神守依澄はその声を聞くと、小さく微笑した。

497:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 02:02:44 geiosX30
「依澄さん、どうかな」
 守の問いかけに依澄は小さく頷く。
 夕べのうちに守が連絡したらしい。目の前にいる麗人は、依子の知らない成長を遂げていたが、間違いなく依子の姉だった。
 霊能を操る一族、神守。
 その神守の歴代当主の中でも屈指とまで言われる彼女の力をもってすれば、あるいは依子を治せるかもしれない。守はそう言った。
 依澄の透き通るような目が依子を見据える。
 動悸が激しくなった。八年ぶりに自分の前に現れた姉は、前よりもずっと無彩色性が増したように感じた。
 縁も、見えない。
 ずっと縁の糸を見通すことであらゆるものを判断してきた依子には、それが不安で仕方がない。
「……」
 依澄はやがて無言のうちに首を振った。
「どうなの?」
 守が不安そうに尋ねると、美しい唇が開かれた。
「……私には治せません」
 無表情に断じた答えは、依子の心にさざ波を立てた。
「魂が以前とは変わってしまっています。縁視の力はもう取り戻せないと思います」
 清澄な声が淡々と語る。
 それはとても残酷な響きに聞こえた。依子の主観かもしれないが、まるで鋭利な鎌に身を裂かれたような。
 依澄は無表情だ。
 守が短い息を漏らした。残念そうに肩を落とす。
「依子ちゃん……」
「……」
 依子はぐっと歯を噛み締めると、にこやかに笑った。
「……別にたいしたことじゃないよ。見えないはずのものがやっぱり見えなくなっただけだよ」
 依子は、言い訳としてはかなり下手だな、と自覚しながらもそう言い切る。
 依澄の表情は変わらない。
 依子にはその顔の奥にある心が見えない。
「あ……、えっと、」
 守が何かを言おうとしてなぜか言い淀んだ。微妙な空気は依子にとっても感じのいいものではない。
「……」
 依澄はそんないとこに柔らかく微笑んだ。微かに熱っぽい気持ちがこもった微笑。
 そして、
「……依子」
 不意にかけられた声に依子はびくりと肩を震わせた。
「……な、なに?」
「…………今度、実家に戻って来ませんか?」
 ―唐突。
「……え?」
 姉の顔を思わず見返す。
 不安や困惑でいっぱいの頭の中に、急にそんなことを投げ掛けられてもこっちは困るだけなのに。依子は姉に少しだけ腹が立った。
「ちょっと待って。なんで急にそんなこと、」
「……大丈夫、……今のあなたなら戻ってこれます」
「……」
 何を確信しているのか、姉の言葉には妙に力があった。言霊とは違う感じの力だ。
 それに呑まれてしまい、依子は口をつぐんだ。言いたいことも考えたいこともたくさんあるはずなのに。
 そんな依子の心情を知ってか知らずか、依澄はおもむろに立ち上がった。
 そのまま頭をぺこりと下げると、玄関へと足を向ける。
「依澄さん?」
「戻ります……」
「ちょっと、お姉ちゃん」
 呼び止めようとすると依澄は軽く振り向いた。
「待ってます……から」
 それだけ言い残して、依澄は部屋を出ていった。
 送ってくる、と守も部屋を飛び出し、そして依子だけが残された。

498:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 02:04:53 geiosX30
 依子は仰向けにベッドに倒れ込むと、ゆっくりと目を閉じた。
 窓から光が射す。閉じた目でも、その眩しさはしっかりと伝わってくる。
 とても静かだった。
 夜が明けても、結局縁視はなくなったままだ。
 それでも、確かにあの感覚は昨日まで存在していた。
 溜め息が漏れる。
(駄目だな、私……)
 自分はもっと明るい性格だったはずだ。それが今はどうだ。糸が見えなくなっただけでこんなにも不安定になっている。
 それだけ依存していたのだろう。あの糸を通して、依子はあらゆる関係を見抜き、理解してきた。
 人と人との繋がり、これからめぐり会う出来事との関係、ときには人の心さえも見通すことができたのだ。
 ものごころがついたときには既に持ち合わせていた力だった。それ故、見えることが当たり前すぎて、呼吸と変わらないくらい自然な感覚だった。
 それが急になくなってしまって、依子はこれからどうすればいいのか何もわからない。
 失明したわけではない。腕や脚がなくなったわけでもない。だが、あるいはそれと同等とも言える喪失感が胸に広がっている。
 お腹がぐう、と小さく鳴った。
「……」
 安物の目覚まし時計がカチ、カチ、と規則正しい音を立てている。短針は『10』の字を差している。
(こんなときにもお腹は空くんだよね……)
 夕べ、何も食べてない反動からか、お腹が少し痛かった。
 何か作ろうか。そう思ってキッチンを見やる。守によく料理を作ってやっていたので、造りは把握している。
「……」
 依子は動かなかった。思っただけで、起き上がることすらしなかった。
 錆びれていくような虚しさを抱えたまま、依子はただ柔らかなベッドに身を委ねていた。
 無気力な頭の中を巡るのは、再会した姉のことだった。


 しばらくして、守が戻ってきた。
「ただいまー……って、大丈夫?」
 虚ろに倒れたままの依子に心配そうな声をかける。
「……お腹空いた」
 思ったことをそのまま吐くと、守は小さく笑った。
「そう思ってパンと飲み物を買ってきたよ。一緒に食べよう」
「……うん」
 依子は体を起こすと、座卓に並べられた菓子パンとペットボトルの飲み物を見つめた。昔から好きなミルククリームのサンドパンがある。
 守は紅茶のボトルと合わせてそれを依子に差し出した。
「好きだよね、これ」
「……ありがとう」
 こんな些細なことを覚えているいとこに、少し驚く。
 袋を破り、パンをかじる。柔らかいミルクの味が口いっぱいに広がった。
「あのさ」
 ジャムパンを頬張りながら守が口を開いた。
「迷惑、だったかな?」
「え?」
「いや、急に依澄さんを呼んだりしてさ」
 依子は手を止める。
「……別にそんなことはないよ。いきなりだったから驚きはしたけど……」
「それならよかった。二人には仲良くしてもらいたいんだけど、依子ちゃんは会いたくないのかな、ってずっと思ってたから」
「そんなことない。でも……」
「でも?」
「私は実家にはいられないから、こっちから会いに行けないんだよ。向こうは忙しいし会う機会が」
 待って、と守が言葉を遮った。
「前から疑問だったんだけど、実家にはいられないってなんで?」
 依子は目をしばたたかせた。
「……言ってなかった?」
「聞いてないよ。」
「……」
 確かに言った覚えはなかった。だが当然知っていると思っていた。依澄か誰かが話しているものだと思い込んでいた。

499:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 02:08:26 geiosX30
 仕方ないか、と内心で呟くと依子は言葉を探した。
「えーと……簡単に言うとね、神守家は一つの世代に一人の人間しかいてはいけないんだ」
「……?」
「『神守』を名乗れるのは一人だけなの。それ以外は『神守』を名乗れない。今だと、お姉ちゃんだけ」
「……どうして?」
「神を守り、神に守られる人数が決まっているから」
 胸が少し痛む。自分は選ばれなかったのだ。
 守はいぶかしげに眉を寄せた。
「それと依子ちゃんが実家にいられないのと何の関係が?」
「今から話すよ。わかりやすく話せるかどうか自信ないけど」
 軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせると、依子は静かに語りだした。


「『神守家』の役割はね、二つあるの。
 一つは霊能力を持って霊的な問題を解決すること。
 で、もう一つはその名が示すとおり、神様を守ること。
 緋水の神様についてはマモルくんも知ってるよね? 昔からこの辺り一帯を治めてきた神様。
 それを神守家はずっと守ってきた。崇め奉り、保護することで、土地の安寧を得てきた。
 眉唾と言えばそれまでだけど、本当に力があるんだよ? 神守の力が強いのは、緋水の神様に力を借りてるからだもの。
 だから、神守家は緋水の神様を守ると同時に加護を受けているの。
 ただし、緋水の神様の加護を直接受けられる人間は一人だけなの。
 つまり神守の当主だけ。当主はいわば巫女となって、正式に『神守』を名乗る。
 だから神守の名を持つ者は一人だけしかいない。
 本家が神守と呼ばれてるのに、苗字が緋水になっているのはそのためなんだ。お母さんも前までは神守だったけど、今は緋水姓になってるからね。
 たった一人の神守が、巫女となって神様を守る。本来概念でしかない神様を規定することで、神様という存在を守る。それが神守の役目。
 その見返りに神守は力を得る。名前によって神様からの加護を受け、その力を土地の平安に使う。
 ……言葉じゃどうしても嘘っぽくなっちゃうね。私も神様に直接会ったわけじゃないから確信を持って説明できるわけじゃないんだけど、まあとにかく。ここから本題。
 神守を名乗れるのは一人だけ。だからお母さんの後継は私かお姉ちゃんのどちらか一人だった。
 私は知ってのとおり才能がなかったから、当主にはなれなかった。
 正直悔しかったな……私ね、できればお姉ちゃんの助けになりたかったの。当主になれば、もうお姉ちゃんは私の面倒なんか見なくて済むと思ってたから。
 でも仕方ないと思ってる。何も問題はなかった。私が一つ諦めて、家族と普通に生きていくだけ―そのはずだった。
 お姉ちゃんが当主になることが決まって、ちょうどそのための準備をしていた頃だったかな。
 私は高熱に倒れた。
 病気じゃなかった。私は緋水の神様の力に当てられたの。
 私はお姉ちゃんに最も近い人間だったから、変に影響を受けてしまったみたい。
 お姉ちゃんの力が日増しに強くなっていくにつれて私の体調は悪くなっていった。
 力にあてられないようにするには二つの方法がある。
 一つは自身の魂の形を大幅に変えて、神守固有の魂の形をなくすこと。もう一つは単純にその土地から離れること。
 私には才能がなかったから、自身の魂操作さえろくにできなかった。
 だから、私には後者の方法しか手がなかった。
 お父さんはお母さんの『盾』だったし、お母さんも先代としてお姉ちゃんのそばから離れるわけにはいかなかったから、私は一人で実家を去らなければならなかった。
 ……もちろん哀しいよ。でも迷惑かけるわけにはいかないじゃない。あれ以上あそこにいたら、死んでたかもしれないしね。
 だから、ただそれだけだよ。私に才能がなくて、ちょっと巡り合わせが悪かっただけ。
 本当に、うん……それだけの話。


 喉が渇いたので、ペットボトルの紅茶を口元に傾けた。冷たさが心地よい。
 守が小さく頷いて、口を開く。
「依子ちゃんがこっちに移ったのはそれが理由?」
「うん。おじさんとおばさんには子供がいなかったからちょうどよかったみたい」
 まるで他人事のような言い種だな、と依子は思った。義父も義母もとてもいい人たちなのに。

500:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/12/09 02:10:48 geiosX30
 すると守が不審げに眉をひそめた。
「つまり、依子ちゃんは緋水の土地に入れない、ってことだよね?」
「うん……そうだよ」
「でも依澄さんはさっき、君に戻ってこないか尋ねた。どうして?」
「わからないよ……。私があそこにいられないのは間違いないことなのに」
「ひょっとして、もう大丈夫になったとか?」
 守のポジティブな意見に依子は首を振った。そんな簡単にいく問題ではないのだ。
「どうして大丈夫になったと思うの?」
「いや、依澄さんが言ったことだし」
 確かに言っていた。今のあなたなら大丈夫と。あれはどういう意味なのだろう。今の私なら?
 依子は考え込む。今の自分。縁の見えなくなった自分。何も持たない自分。そんな自分に何があって大丈夫なのか。
「あ」
 そのとき守が短い声を上げた。
「何?」
「いや、そういうことなのかな、って」
 よくわからないことを言う。
「……? そういうことって?」
「緋水の神様の力にあてられないようにする方法だよ。離れるだけじゃなく、もう一つ方法があるんでしょ?」
「え? うん、魂の形を変えて……あ」
 気付いた。その瞬間守と顔を見合わせた。
 緋水の神様の力にあてられるのは、神守家固有の魂の形を保持してしまっているためだ。
 当主になるにあたって、魂が力を受け入れやすい形になっているわけだが、自身の霊能や魂をうまく操作できない依子はそのせいで悪い影響を受けてしまっている。
 だが逆に言えば、その形を変えてしまえば影響を受けなくてすむということである。
「私の魂が以前とは変わってしまっているから……もう影響を、受けない……?」
「だと思ったんだけど、どうかな?」
「……」
 迷いが生まれる。
 もしそうだとしたら、とても嬉しいことだ。もう二度と戻れないと諦めていたあの土地を、また踏めるのだ。
 だが、果たして受け入れてくれるだろうか。土地は、家族は、以前の私ではない私を認めてくれるだろうか。
「不安なら、ぼくもいっしょに行こうか?」
「え?」
 幼馴染みの申し出に依子は驚いた。
「大丈夫。何があってもいっしょにいるから。いっしょにいたいから」
 いとこの顔を見つめる。守はとても優しげに微笑んでいた。
 前から彼はこんな笑みを浮かべていただろうか。依子は戸惑う。縁が見えないために相手をうまく計れないことが、逆にその顔をより強く見せているような。
 不思議と安心できる笑みだった。とても不安なのに、守ってくれそうで。
「……うん」
 依子は小さく頷いた。


 家に戻った依子は、自分の部屋でばたりとベッドに倒れ込んだ。
(疲れた……)
 本当に何もかもが急すぎた。変わっていく世界は依子にとってあまりに激しい。
 縁糸の消えた世界が目の前に広がっている。
 やはり少し不安だ。自分は今、誰と繋がっていて、これから誰と繋がっていくのだろう。
 だが、さっきの守との会話でちょっとだけ立ち直ることができた。
 守と話し合って、緋水に戻るのは週末ということになった。金曜日の夕方、学校が終わったら駅で待ち合わせする約束だ。
 戻れる。八年振りに、あの場所に。
「……」
 しばらくぼんやりと枕の感触に埋もれていると、ドアがノックされた。
「入るわよ」
 現れたのは義母の百合原友美(ゆりはらともみ)だった。義父の仁(ひとし)が単身赴任中なのでこの家には依子と彼女しかいない。
「あら……どうしたの? まだ体調悪いの?」
「あ……ううん、ちょっとぼーっとしてただけ」
「そう? 夕べはびっくりしたわよ。急に守君から連絡が来るんだもの。具合が悪くなったって言ってたけど、大丈夫なの?」
「う、うん。もう平気」
 百合原家は神守とは縁遠い親戚で、友美もただの一般人だ。神守家についても特に詳しいわけではなく、依子は自分の縁の力についても話したことがない。
 だからこういうとき、詳細をうまく話せなくて依子は困ってしまう。ただでさえ接し方に苦慮しているのに。


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