無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目 at EROPARO
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200:名無しさん@ピンキー
07/10/26 22:22:24 S6dZHHWc
任務了解
綾波レイ(2人目・自爆済み)の攻略を開始する

201:名無しさん@ピンキー
07/10/26 22:29:46 akulNmV8
>>200
自爆霊は無口スレと関係ねぇだろ…………って、
すまん、綾波ならOKじゃないか。

202:名無しさん@ピンキー
07/10/27 10:53:35 joDzVvKv
は や く つ づ き を

生殺しだ…

203:ACTER ◆irhNK99GCI
07/10/27 12:59:22 PAVHqpca
>>186 GJ! 続きに期待しているッ!

きみのこえ 21/21
下記シーン描写があるので注意されたし。
  器具による強制無口 洗脳行為
  相手の意思を尊重しない性交渉
無駄に長くてすまない。
無口娘のつもりだが…思ってるような期待には応えられそうに無い。
語りだしたら止まらないのでこれ落としたら無口に戻ります。

自分では気付けない部分もあるからマジな酷評はツライけどとてもありがたい。
そしてたった一言のGJでも救われる。
全ての職人と読んでくれた方々、レスくれた方々に感謝。


204:きみのこえ 1/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:01:08 PAVHqpca
773 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:25:39 ID:RLghGVzj
  >>709
  その幼馴染で無口属性の彼女が横にいる俺は勝ち組
  もちろん白い美肌がキレイなハイスペック美少女だ
  永遠のセブンティーン!

  別の何かと勘違いしたヤツはモニターごしに謝っとけ

774 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:25:48 ID:RLghGVzj
  かわいい彼女さんでしあわせですね〜v ミ・w・ミ

775 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 21:29:22 ID:ksmst929
  脳内ウザイもうここくんじゃねえ
  一生モニター入ってろ
  自演房乙wwwwwwwwwwwww


 自演じゃねーっての、彼女の代弁…まぁある意味自作自演か。
どうせこれでネタも切れだしもうこねえYO!

 真っ暗な部屋の中、しばらく見つめていたモニターから目を離す。
隣にはモニターの明かりを受け、肌の白さが際立つ少女が浮かび上がる。
「……」
「脳内だってさ」
男は、自分の言葉で女が笑ってくれたように感じた。

205:きみのこえ 2/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:02:32 PAVHqpca
   私の想いを、知ってほしかったのです。

  大学ノートって言うけど、本当に大学で使っているのでしょうか?
  私は行くことは無いでしょうけどね。
  あ、購買のおばちゃんに聞いておけばよかったかもです。 ミ・w・ミ

 そう書き込まれたノートは僅かな期間だったと言うのに、
書き直しや汗で、また握りつぶされたかのようになって、
ボロボロに痛んでいた。

 私と裕君の最初の思い出はひどいものでした。
体の弱い私は学校をよく休んでいて、たまに登校できた日も憂鬱でした。
先生に指されても答える声は届かなくて、
男の子達からはいじめられてしまっていたからです。
 「おまえら、そんなやついじめてたのしいのか?」
休み時間の教室での事でした。
突然の大声に私をいじめていた子達もびっくりしていました。
その時の私には裕君が運命の王子様に見えました。
「…った、たのしいにきまってんじゃん!」
いじめっ子の一人が言い返しました。
「ふぅん」
裕君はそういうと大股でこちらに歩いてきました。
そして私に手を差し伸べてくれたのです。
感謝の気持ちがいっぱいです。これでもういじめられないと思いました。
「じゃあ、こいつ今日から俺専用だから」
裕君の話す言葉の意味が分らなかったです。
もちろんすぐにその意味を知ることになりました。

  裕君と初めて会った時の感情は絶望だったんですよ?
  覚えていますか、裕君。               ミ・w・ミ


206:きみのこえ 3/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:03:50 PAVHqpca
 次の日から裕君のいじめが始まりました。
本当につらかったのですよ?
毎朝のように家に来て私を連れ出しましたね。
通学路の坂道で息切れしてしまう私を罵倒したり、
給食の牛乳取ったり、バケツで水かぶせたり。
 当然、裕君は毎日先生に怒られていました。
たまに御両親も呼ばれていましたね。
今思うと、結構大変な事だったのではないでしょうか?

 でも、ある時私は気付いてしまったのです。
梅雨時の雨の日の朝、お母さんが裕君が来ないのを気にしていたのです。
その時の私は、裕君がだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっきらいでした。
私が朝食を食べている間、お母さんは電話をしていました。
しきりに腰を折ってお辞儀をしているので、電話の相手が気になりました。
おトイレにいく振りをしてこっそり聞き耳を立てた私に聞こえたのは、
「…いつも…ありがとう……また、お迎えお願いね、お大事に、裕君」
いつも? また? 裕君!?
混乱してしまった私はお母さんを泣きながら問い詰めました。
いじめの首謀者はお母さんだったのか、と。
その日は半日近く喧嘩してたんですよ?

  あ、私が喧嘩したの、それが初めてだったのかも。
  喧嘩記念日ですね、今度お祝いしてください。  ミ・w・ミ

 裕君にお迎えを頼んだのはお母さんでした。
「静を守ってあげてください」と幼い男の子に両親は頭を下げて頼んだそうです。
親の目の届かない学校で、病弱で友達が作れない私の為に、
幼馴染をボディーガードにつけてくれていたのでした。
それでも私をいじめる事に文句を言うと、
「男の子は照れ屋さんで、みえっぱりなのよ。
 飾られた言葉の向こうに『ほんとう』はあるの」
言われた時はよくわかりませんでしたが、今なら痛いほど分ります。


207:きみのこえ 4/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:04:42 PAVHqpca
「殴っても死なない様に鍛えてやるからな、まだ殺人犯になりたくないし」
そういって拳を振り回し、私を追い掛け回しましたね。
でも、一発も殴られた記憶はないのです。

「こら裕次郎! それ静の牛乳でしょうが!」
裕君のあだ名は和美のつけた『裕次郎』で広まっていましたね。
私はそのあだ名で呼んだことはないけれど。
「はぁ〜? 静は俺の物だし意味分らないんですけどぉー?」
「こんの馬鹿ゆーじろぉ! ったく…はい、静。
 私の半分わけてあげるからね、みるくちゅっちゅちまちょうねぇ〜」
「……ぁ」
和美は転校生だったけど。持ち前の明るさですぐにクラスになじんでいた。
『きゃー、この子かわいすぎー! もーらいっ!』
そういって私の頭を撫で回したのが一週間ほど前のことだったはずです。
ただ、初日のこの発言で裕君とは仲が悪かったですね。
「つまりソレも俺の物ッ!」
和美の差し出してくれた牛乳も裕君が奪い取って飲んでしまう。
「……」
「…ちょ、馬鹿っ! それアタシが半分…くち…」
「あばよっ!」
あっという間の出来事に対応できない私。
顔を赤らめて口ごもってしまった和美。
さっと教室を抜け出してしまう裕君。

   裕君が教室に戻ってくるのはいつも五時間目の終わりごろ。
  無理して牛乳を飲むからお腹を壊すのです。
  でもそれは、私が牛乳を飲めなくていじめられていた事があったの
  知っていたからなののでしょう?           ミ・w・ミ

「……っ…」
小学校では授業中におトイレにいったりしてもからかわれました。
「……ぅ…」
だからここは我慢のしどころ。…なのに。
「…ぁ…ぃ……」
大ピンチです。我慢しすぎて動いたら漏れてしまいそうです。
せっかく休み時間になったのに次の授業にはいってしまいました。
「っぁ……ぉ…!」

 ザッパーン!ビシャッしゃービチャビチャボタッボタ……

全身に悪寒が走り、目の前が真っ暗になりました。
私はずぶぬれになってバケツをかぶっていたからです。
驚いて弛緩してしまった私の緊張は、
あっけなくバケツの水量アップに貢献していました。
「なにやっとるかぁ!」
担任の先生の怒鳴り声がします。
やっぱり犯人は裕君でした。
裕君なりに私を助けてくれたのは感謝しています。
 でもね、女の子がおしっこ我慢してるのを見破ったり、
雑巾しぼったバケツの水だったり突っ込みたいところはいっぱいあります。

どうですか、裕君。
いじめってこんなにも引きずってしまうのですよ?
まだまだま〜だありますけど、ノートも時間も足りなくなっちゃいますね。

  水に流して〜なんて言い訳したら雑巾しぼっておきます ミ・w・ミ


208:きみのこえ 5/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:05:46 PAVHqpca
 小学校の高学年になってくると色々分ってくるようになりました。
だからあの日、精一杯の覚悟を決めて裕君に告白しにいったんです。
「……ゆぅ…くん」
「ん、なに?」
「……」
「…なんか用あんの?」
「……」
それでも裕君の前に来ると緊張して何も言えなくなってしまうのです。
「………」
「…いわなきゃわかんねーって…つかもうかえっていい?」
「あっ…だめっ!…その…あのね…」
帰ろうとする裕君の腕を思わず掴んでしまっていた。
「あの…あのっ…ごめんなさいっ!」
「…はぁ?」
理解できないといった表情で固まる裕君。
「ずっと…わたっ…わたしっ裕君に…迷惑…かけてたっ」
気持ちが高ぶってしまい涙も鼻水もでてグシャグシャの顔になってしまう。
「だから…あやまらないとっ…ごめ…ごめんなさぃい…うぇ…」
私が泣き止んで落ち着くまで裕君は私の頭を撫でていてくれた。
「…はぁ…馬鹿かおまえ? ごめんなんて言われてもうれしくねーよ」
その言葉に私は凍ってしまう、初めて会った時に裏切られたと感じた様な絶望。
「静は『ごめんなさい』っていわれて嬉しいのか?」
「……」
首を横に振って私は答えます。
「だろ? そうだな…ありがとうってのはメジャーすぎるしなぁ…」
裕君に許してもらうためには…そう思い、彼の言葉を聞き漏らすまいと、
私は耳を澄まし、裕君を見つめ続けました。
「いいことおもいついた。 ごめんなさいの代わりに『好き』って言え
 そのほうが俺もうれしいな、うんそれでいこう」
裕君はそういうといやらしく笑うのです。
この頃は恋愛感情というよりも、
そういう言葉自体口にするのが恥ずかしく、
たしかに贖罪として辱められる効果は甚大なものでした。
「ほら、どうした? 謝るんじゃなかったのか」
「………!」
謝ってることになってるのかどうかなんて分らなくなって、
頭の中こんがらがって、私は人生始めての告白を無理やりに音にしました。
「…ゅ…ぅ…く…ん…す…き…っ!」
「よし、それじゃこれからもそれで頼むな」
そういって裕君は私を一人置き去りにしていってしまいまた。


  あの時の顔が忘れられないと裕君は言います。
  忘れてください。覚えてても言わないでください。
  これは警告であり忠告であり約束ですっ!     ミ・w・ミ


209:きみのこえ 6/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:06:35 PAVHqpca
 中学校になるといじめというほどのものはなくなってましたね。
私と和美と裕君と。一番楽しかった頃だったかもしれません。
あの事さえ無ければ。

 出席日数だけはギリギリで夏休みに出席だけ取りに行ったり、
保健室で一日を過ごす事が多くなっていました。
それでも三人で過ごす毎日は楽しくて満足していました。
裕君にだけの『ごめんなさい』もまだ続いていました。

 無事に三年生に上がり、先生よりも受験生が走るような頃でした。
通っていた中学校は焼却炉がある所でゴミはそこに集められていました。
掃除が終われば教室のゴミ箱を持って行き、朝に日直が回収してくるのです。
今日はその日直が休んでしまったため、私が取りに行くことになりました。
「……(今までゴミ箱が無いのに気付かないなんてみんな…あ、私もか)」
 校舎の角を曲がると焼却炉です。
放課後ということもあってか数人の生徒がいました。
こちらからは背中しか見えませんでしたが、
うちのクラスのゴミ箱がイスにされているのだけは分りました。
声をかけようと少しだけ深呼吸。知らない人と話すのは勇気がいるのです。
「でさ、アイツなんつったっけおまえのクラスの」
「小泉静だっけ?」
(……!)
なんで私の名前が出るのでしょう。
とっさに校舎に身を隠してしまいました。
この歳にもなれば恋愛にだって興味も出てくるだろうし、
もしかしたら告白されてしまうのかもっ。
和美がよく『しずちゃんかわいすぎぃ〜』
と、挨拶のごとく言ってくれるけれどそうなのかなっ!?
なんて自惚れてしまえるほどに、私の考えは稚拙なものだった。
今まで何度過度な期待をして馬鹿を見てきたのでしょうか。
「そうそいつ、小泉ならチクらねぇって、
 どうせ泣き寝入りして学校こなくなるぐらいだって」
「バカか? 一発で終わりかよ、写真撮って脅してペットだろ?
 授業中にローター回して喘がせてぇ」
「趣味わりぃ! で、いつやる?」
「掃除おわったらここくんじゃね? 今週は小泉が掃除当番のはず」
「ッシャー! んじゃ誰先やる? あれ絶対処女だぜ」
「あー、亀田ボコって持ってた金額当てて近い順とかどうよ?」
「準備運動ってか? 森、おまえちょっと亀田ひっぱってきて」
「だりぃ〜、まぁいってくっかぁ〜」

 手のひらが汗でぐっしょり濡れていました。
逃げなければ、ここから一刻も早く離れないと!
 ガタンッ!
私は走り出します、躓きながら。
貧弱な肺がもう悲鳴を上げ始めます。
かつて無い恐怖が心臓を締め付けました。
涙で視界が滲みます。
校舎の入り口を曲がった所で強い衝撃が身を包みました。
次の瞬間、男子用の制服の胸の辺りが目の前に広がっていたのです。
呆然とした一瞬の隙に、二本の太い腕が後ろに回され抱きしめられてしました。
身をよじって抜け出そうとしますがビクともしません。
頭の上から聞こえてくる言葉は楽しそうに囁きました。
「逃がさないぜぇ」
その声を聞いて私は堪えきれなくなって声を上げて泣き出してしまいました。
「んむっ…!」
「馬鹿! 周りに聞こえる!」
私の口はおおきな手のひらに塞がれながら、
嗚咽を吐き出すことしか出来ませんでした。


210:きみのこえ 7/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:09:15 PAVHqpca
「てめぇ、掃除さぼってどこいきやがりますか…って、おま泣くなよ」
「…ひっく…っ!…」
「あー、怒ってないから、な? とりあえず落ち着こうぜ?」
「たす…っけて……犯され…ちゃう…うふぁぁあんん」
「はぁ!? おい! どういうことだよ! とりあえず教室行こうな?」
「…ぐすっ!…ぅぅ!…」
首を振り乱し提案を拒否しました。
今は学校の中にすら居たくない、
周りの生徒全てが私を監視してるような錯覚すら覚えたからです。
私は幸運にもめぐり合えた裕君にすがりながら校門に向かいました。

 私と裕君はそのまま私の家に向かいました。
「学校サボっちゃったな…」
「……」
その時の私は、元気付けようとしてくれてる裕君の言葉も、
窓の外の景色を見るように何も感じられなくなっていました。
 部屋に座り込むと、二人っきりの空間に思い沈黙が流れました。
再び泣き始めてしまった私を、裕君は優しく抱きしめてくれました。
どのくらい時間が経ったのでしょうか。
私は放課後のできごとを少しずつ話しました。
じっと話を聞いてくれた裕君が、
膝の上で拳を握り締めていたのを鮮明に覚えています。
「…アイツら…ブッとばしてくるッ!」
話しを聞き終えると裕君はそういって立ち上がりました。
「……いかないで」
「……」
「…裕君……私を…抱いて」
「なっ!」
 裕君は凄く驚いた表情をしていました。
逆に私は、全てを吐き出したからか、吹っ切れてしまったのか、
とても冷静に落ち着いていました。
「ばっ、馬鹿な事言うなよ…静、落ち着けって」
「…私は…落ち着いてるよ…ねぇ、お願い」
「そんなこと…俺達にはまだ早い!」
「ねぇっ!……私を……守って」
「…静」
立ち尽くす裕君を見上げながら私は考えていました。
せめて初めてだけは…好きな人と……。
もしかしたら、この時の私は冷静になったのではなくて、
狂っていたのかもしれませんね。
ただ、それが最善に思えて行動に移してしまったのです。
 私は立ち上がり、引き出しからカッターを取り出しました。
    チキチキチキチキチキチキチキ
「お、おい! 何してんだ!?」
裕君が慌ててこちらに手を伸ばします。
その手も、カッターの伸びきった刃が私の首筋に当てられると、
時間が止まったように凍り付いきました。
裕君、これなら『だるまさんがころんだオブ・ザ・イヤー』取れますね。
「わかった…わかったから、それをこっちに渡せ」
「……」
まだだめ。
裕君の目は、まだ私を止められると思っている。
「………駄目。……裕君」
そういって私は部屋のあらゆる場所に視線を移します。
裕君も私の視線を追って同じものを見ます。
一度も使うことが無かったなわとび、私が写っている鏡、
鉛筆立てのはさみ、制服の架かったハンガー、ガラス窓、
知っていますか? たった一枚の新聞紙でも人は殺せるのです。
自殺には向かないですけれど。


211:きみのこえ 8/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:10:30 PAVHqpca
「解ったよ、静」
「……ありがとう、裕君」
私は机にカッターを置き、服を脱ぎ始めます。
恥ずかしいという感情は気にならない程度にしか起きませんでした。
着ぐるみを脱ぐ様な、視点がいっこ後ろにあるような感覚でした。
「……裕君?」
私はベッドに寄りかかり呼びかけました。
「あ、あぁ…」
声を掛けられて、やっと裕君は金縛りから解放されたようでした。
裕君はもそもそとゆっくりしたペースで服を脱ぎます。
それでも最後の抵抗とばかりにトランクス一枚で私に顔を向けます。
「なぁ…静」
「……」
私はゆっくりと首を横にに振りました。
 二人分の重みがベッドを軋ませます。
横になり脚を広げ、その間に裕君を招き入れました。
叱られた子供のように座って困っている裕君。
「……」
「……しよ」
男の子の裸がどういうものかは知識としては知っていましたが、
実際に見るのはこれが初めてでした。
引き締められた身体についているアレが大きくなるのでしょうか、
今はかわいくぶら下がっています。
「…少し…濡らさないとな」
裕君に丸見えになっているアソコは、私の心を映すかのように乾いていました。
ふとももに手がかかり裕君の吐息がくすぐるようにかかりました。
健全とは言えない私の身体は、上辺だけの成長にとどまっており、
恥ずかしながら産毛のようなものが、申し訳程度に覆っているだけでした。


212:きみのこえ 9/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:11:17 PAVHqpca
 肌を濡らす裕君の舌が優しくアソコをなぞっていきます。
…っ………ちゃっ…………ぬるり……
一生懸命に、必死に、精一杯、私の為だけに動かしてくれる愛しい舌。
私は上体をあげ優しく裕君の頭を撫でて言いました。
「……もう…いいよ」
裕君の愛撫と気持ちがくすぐったくてそこでやめさせました。
その時は、それで十分濡れていると思ったからです。
実際は裕君の唾液でぐしょぐしょになっていただけで、
私自身からは濡れていませんでした。ごめんね、酷い女で。
身体を起こして向かい合った裕君は、申し訳なさそうに俯いていました。
裕君のソレは始めたときと変らず、力なくうなだれたままでした。
「…裕君は……悪くないの…」
そういって私は身体をかがめて裕君に顔を埋めました。
「し、静っ!?」
先ほどとは逆転した体勢になり、裕君の驚く声が頭の上から聞こえました。
えっちの知識はお子様程度しかありませんでしたが、
和美が私の恥ずかしがる様を見ようと、無理やり聞かせてくれてたのが
少しは役に立ったのかもしれません。和美には感謝しないとですね。
とは言っても、実際に『舐めてあげたら喜ぶ』という情報だけでは、
正直な所どうすればいいのかは出たとこ勝負でした。
…ぴちゃ……っ…ぬちゃ……
こうですか? わかりません。
…くちゅ……ちゅ……っ……
 舌を這わせようとすると逃げてしまうソレを捕まえて、
先っぽの方から舐めていきます。
ちょっとしょっぱいのは汗でしょうか、
そういえば二人ともシャワー浴びていないですね。
裕君にもこんな思いをさせてしまったかと思うと、申し訳なくなります。
でもでも私は裕君のなら嫌じゃないですよっ。
 口に含ませた唾液を塗りつけるように下から上へ、
唇ではむようにやわらかく噛んで、できた架空の噛み跡を舌で確認する。
 括れている所のしわを数えるようになぞり、
鼻先で押し上げるようにして裏側を舐め上げます。
結構がんばってるつもりだけど、裕君はなかなか元気になってくれません。
やり方がまちがっているのでしょうか。
私は裕君の表情を確認しながらソレを口に咥えました。
…ちゅ……はむ……んふっ……
口の中で転がすように舌をまわし、全体を飲み込みます。
裕君の表情をチェックするのも忘れません。
ただ、この姿勢だと上目遣いになってしまうのですこし苦しいです。
そして溜まってきた唾液を嚥下した時。
「…っぁ!」
「…!」
私の中のソレはぴくんと震え、裕君が声を漏らしました。
「…痛…かった?」
恐る恐る顔を上げ、私は聞きました。
「大丈夫、気持ちよかったんだよ」
そういって裕君は私の頬を撫でてくれました。
(ああ、感じてくれたんだ…)
安心させてくれた裕君の手の上に私の手を当て、
目を閉じて少しの間だけその温もりを分けてもらいました。
 そして再び、先ほどの間隔を忘れないうちに裕君のモノを口に含みます。
飲み下すように、乳飲み子のように吸い付いて、
舌全体でやわらかい先端をすりつぶすように口の上に押し当てます。
そして脈動。
先ほどより大きく震えたソレは、次第に私の口の中を埋め尽くしていきました。
…ちゅぱ…っ……んむっ…!


213:きみのこえ 10/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:12:14 PAVHqpca
 口からあふれ出るほどに膨張したソレで、
私の喉の奥を突いてしまい、思わず吐き出してしまいました。
「っぷはっ!……けふっ…っふ…」
最初に見た姿からは想像もしなかった成長ぶりに私は驚きました。
自分のアソコをちゃんと見たのは小学校の保健の授業の時でしたが、
指一本ギリギリ位の大きさしかなかったと思います。
あの頃のままとは思いませんが、私のアソコに迎え入れるにしては…
その…すごく……大きいです。
私はその不安を押し殺し、裕君を見つめます。
「……」
「………わかった」
渋々という感じがしましたが、裕君は頷いてくれました。
始めの時の様に私は横になります。
すこし時間がかかったせいで私のアソコは乾き始めていましたが、
裕君のソレは私の唾液でぬめっていたのでたぶん平気です。
「入れるよ…」
「…」
大丈夫という意思をこめて私は笑顔で頷きました。
裕君の手が壊れ物を扱うようにそっと腰に回され、
熱くなった裕君が私に触れました。
「…っ!」
あぁ。
「……っ!!…」
あはああああぁぁぁぁあああああ!
「!!…!!!っ!…!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
駄目ダメだめ! あっっがっっはぁああっく!
「っ!!……っはあぅうう……ぐっ!」
「静っ! 悪い…痛かったろう、やっぱりやめよう? 今じゃなくても…」
「だっ…はぁ…だめ…なの…我慢……我慢するから…ちゃんとして…」
零れない程度の涙と絶対の意思を浮かべて私は答えます。
「…少しだけ、我慢しろよ!」
「っ!」
ああああああああああああああああああああああああああ
「……ぁ…っ!…ぁ…ぁ……!」
圧迫される内臓の感覚と、初めて味わう強烈な痛み。
やり方を忘れてしまったかのように呼吸が上手く出来ません。
声を出せず口を大きくぱくぱくさせながら、私は全身をつっぱります。


214:きみのこえ 11/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:13:05 PAVHqpca
「大丈夫、ほら、ちゃんとできたよ」
「…っ…は……っは…」
整わない息を吐きながら下腹部に視線を送りました。
あれだけ大きかった物が根元までしっかりと繋がっているのがわかります。
「…はぁ…っはぁ…」
お腹の違和感も痛みも休まらないけれど、
肌と肌の触れ合う部分から伝わるあたたかさに、
ためていた涙がこぼれてしまいました。
だから。
「…動いて…いいよ」
「…でもまだ…つらいんだろ?」
とってもつらいです。
でも、男の人ってそうしないと気持ちよくなれないんだよね?
だから。
「……」
もうだいじょうぶだよっていう表情でこたえるのです。
 ぎこちなく裕君は腰を動かし始めました。
突き上げる腰にくる衝撃とともに、リズムを携えてやってくる痛み。
つらくて、痛い、痛いよ、裕君。
けれど、それだけは悟られまいと私は表情をつくる。
揺らされる身体に合わせて息をする。
…っ…はっ……はっ……はぁっ……あっ…
 …っ…あっ…あっ…あふぁっ…っは…
裕君の動きが激しくなり、私の呼吸も小刻みに漏れる。
「…静っ……俺、もうっ」
あっあっあっ…あっあン…あっ
裕君のモノが力強く私の奥に押し付けられ、ふるふると身体を震わせていました。
「はぁっ、はぁっ…」
射精した? のかな?
裕君が私に覆いかぶさって、荒く息をしていました。
しばらくして裕君のモノが私から抜け落ち、
アソコに感じる寂しい虚脱感と、
そこからゆっくりと肌を這いお尻に流れてゆくものを感じた頃。
ようやく私は、終わったのだとわかりました。


215:きみのこえ 12/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:14:00 PAVHqpca
「……裕君、好き」
私は胸の上に乗る裕君の頭を抱きしめながら言いました。
「…静……」
「…好き」
「俺は…こんな形でおまえを抱きたくなかった…」
「…」
「ごめんな」
「…違うよ」
「え?」
「…ごめんじゃ……うれしくないよ」
「静…………好きだ」
「…うん、私もすきだよ」
「うぅ、静っ! 好きだ、好きだ好きだ……」
「好きっ…ぐすっ…裕君っ…好きっ…だよ…」
私達はお互いを強く抱きしめながら、
二人とも泣き疲れて眠ってしまうまで好きだと言い合っていました。
この時交し合った『好き』って本当の好きなのでしょうか。
私は……だと信じています、裕君はどうだったのでしょうか?


  どうですか? 恥ずかしの初体験告白っ!
  えっちな気分になっちゃいましたか?
  本当に痛かったんですよ?
  起きてでシーツを見て二人でびっくりしましたね、
  日の丸ベッドか〜ってくらいに血が広がっていて、
  二人とも血がべったりのバリバリでした。
  それは痛いわけだなって私は妙に納得していました。
  シーツの件は、生理が来たってお母さんにはいったけど、
  その時本当はまだ初潮すら来ていませんでした。
  たぶんばれてますよ、裕君。
  お母さん優しかったでしょう?      ミ・w・ミ


 制服を着て家を出ると霧のような雨が降っていました。
傘を差そうか少し迷い、そのまま立ち尽くしてしまいました。
昨日の事を思い出して顔が熱くなります。
段々と粒が増えてきた雨が私の肌を伝い冷やしていきます。
そして事の始まりまでに記憶を振り返ってしまった時、
火照っていた頬は急速に熱を失い涙が溢れてきてしまったのです。
問題は解決したわけではなく、一時の安らぎに身を任せていただけなのだと。
一晩にして、私の心には根の深い欲望が張り巡らされていたのです。
 せめて初めてだけは、それさえあればきっと
何があっても耐えられると昨日は信じていたのに。
他の誰にもこの身体を触らせたくない、裕君のためだけの私。
そう思ってしまったら、学校へ行くことが出来なくなりました。
脚は鉛のように重く、水を吸い込んだ制服は肌に張り付くいて、
喉はカラカラに乾いて私を動かそうとしないのです。
気が付けば傘は足元に落ち、雨は打ちつける様に音を立てていました。

 玄関の外で倒れていた私を見つけたのはお母さんだったそうです。
救急車で運ばれた私は、そのまま入院することになりました。
ちょっと重い風邪なんだろう、そう思ってベッドで過ごしていました。

  本当に馬鹿ですね、私。
  もし過去に戻って自分に忠告できる機会があるのなら、
  今まで生きていた時間と同じだけ、
  過去で過ごさないといけないかもしれません。
  私に残された時間では足りないというのに。  ミ・w・ミ


216:きみのこえ 13/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:14:49 PAVHqpca
 私が入院すると、裕君と和美はお見舞いに来てくれました。
あの日の事なんて無かったかのように、
学校の話、芸能人の話、他愛も無い場かな話。
私はいつものように相槌をうって、
はしゃぐ和美を裕君が突っ込むといった日常。
白く寂しい空間に持ち込んでくれるお土産としては、
これ以上は無い最高のおみまいではないでしょうか。

   さっきこのノートを見られそうになった。
  まだ、だめだよ裕君。
  もう少し、もう少しで書き終わるから  ミ・w・ミ

 何よりも、和美に彼氏が出来たというのが一番驚きました。
「どうよ、しずっ! 恋する乙女の輝き具合!」 カシャ!
「うお! まぶしっ!」
「…和美…反則」
使い捨てカメラを携えた和美が声をあげて笑っていました。
「てっめぇ!『院内では静にッ!』」
三人とも看護婦さんに怒られてしまいました。
私は被害者だと思う。
それからしばらく話をして二人は帰って行きました。
あ、和美の彼氏がどんな人かは聞きそびれてしまいました。

 入院するのは慣れているとはいえ、
二週間も経つとさすがに病室は飽きてきました。
風邪の方は良くなったと思うのですが、未だに退院できませんでした。
両親はこの機会に私の身体を治したいと考えているようです。

『今は…無理…です…せめて16歳……いえ…まず』
 あの日断片的に聞こえた医者と両親の会話。
幼い頃の記憶ですが、16歳という現実的な数字が胸の奥に焦げ付き、
歳を数えるごとにその火傷はグズグズと膿んでいきました。
あと、半年。
その時に思いついたのが、そう。このノートです。

もっと書きたいことはいっぱいあります。
それでも伝えたい想いは言葉にするのが大変で、
ずっと頭の中をぐるぐるしていて、なかなかペンが進みません。


217:きみのこえ 14/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:15:45 PAVHqpca
 ページの片隅は濡れた跡で丸く膨れ上がり変形していた。
その次のページからはバラバラに破かれ引き裂かれたものを、
セロハンテープで繋ぎ戻し、上の余白に書き足しがあった。

  嘘も隠し事も全部私。
  だから全てを知ってほしいのです。

 一度は破り捨てられた手記。
残りの薄くなったノートを俺は持ち直した。


 学校を卒業できなくなってしまうのは、それほど残念には思いませんでした。
ただ、裕君と和美がお見舞いに来てくれる度、
私は嬉しい反面、憂鬱になっていったのです。
変らない日々を過ごす私は段々と二人の話題についていけなくなりました。
元々喋る事の得意ではない私は、前にも増して言葉数が減っていきました。
裕君の学校の話題も、和美の芸能人の話題もわかりません。
私の前で裕君と楽しそうに話す和美が少しずつ、鬱陶しくすらなっていました。
私が裕君を笑わせてあげたいのに、和美は奪っていってしまうと。
頭ではわかっているのです、ただ、心が理解してくれないのです。
私を心配してくれる二人。
たった二人の友達。
だから解ってしまうのです。
何か隠し事をしてることがあると。
時折二人がかわす視線、仕草、雰囲気、私を置いていってしまう二人。
もしかして二人は付き合っているのですか?
和美に彼氏の事を聞いても、『機会が来たらね』と答えてくれません。
 消灯時間の後は裕君の事を考えます。
その、ほんのささやかな妄想にさえ和美はやってきて、
私の裕君を連れて行ってしまうのです。
お願いだから、あと少しだけ私に裕君をください。
せめて私が眠るまでの間。


218:きみのこえ 15/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:16:37 PAVHqpca
 沈む気持ちを追い討ちするかのように私の体調は悪化していきました。
初めは点滴、そして今は呼吸を補助するマスクまでついています。
 最近は裕君一人でお見舞いに来てくれます。
たまに和美も一緒なのですが、すぐに部屋を出ていってくれます。
何も話せなくなってしまった私。
それでも私と裕君ならお互いの顔を見るだけである程度は伝わる。

 私に残された唯一の楽しみ。
裕君はお見舞いに来てるというのに私のベッドで居眠りしてしまう。
椅子に腰掛け上体をベッドに、私のお腹を枕にしたこともあったね。
その寝顔をみつめながら唄う事。
タイトルも歌詞もわからない歌。
古いレコードのように途切れた音を奏で、
途中までしか知らなくてまた最初から唄いなおす。

 最近思うのです。
私は本当に裕君を好きなのかどうか。
謝る度に繰り返される『好き』を信じているだけなのか、
昔から? いつから? 白くて暗い病室でずっと考えていました。
だからギリギリまで答えを出すのを躊躇ってしまったのかもしれません。

 ここまで。
 これ以上書き出したらきりが無くなってしまうし、
 そろそろ裕君が面会に来る時間だからです。
 …む、ちょっと遅い。

 そして、本当に大事な事は
 私の言葉で直接伝えようと思います。


 これを読んでいるという事は
 私の言葉聴いてもらえたのだと想います。
 私の想い、つたわりましたか?

読み終えて、俺はしばらく声を出すことができなかった。


219:きみのこえ 16/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:17:50 PAVHqpca
709 :きみのこえ1/15 :2007/12/27(木) 19:10:12 ID:RLghGVzj
   私の想いを、知ってほしかったのです。

  大学ノートって言うけど、本当に大学で使っているのでしょうか?
  私は行くことは無いでしょうけどね。

  (………………………………………省略されました)

  これを読んでいるという事は
  私の言葉聴いてもらえたのだと想います。
  私の想い、つたわりましたか?

724 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 20:03:00 ID:2cHdEVIp
  >>723
  正直キモイ

725 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 20:06:33 ID:412364PK
  がんばったのは分るけど・・・

 お、さっそくレスがあるなってこいつうぜええええ。
おまえ、どんだけ苦労してテキストに直したと思ってんだよ!
「ああ、だいじょぶだって、これ読んで感動しないやついねーから」
男に返ってくる返事は無い。そして返事を期待してたわけでもなく、
モニターから目を離さずに必死にリロードを繰り返す。

部屋にはカタカタとキーボードを打つ音だけが響く。


220:きみのこえ 17/21 ◆irhNK99GCI
07/10/27 13:19:11 PAVHqpca
 何度来てもここの臭いにだけは慣れなかった。
「ごめん、アタシだめだ…裕次郎」
「そうか」
病院の待合室のソファーに座り、和美が声を殺して泣く。
静に点滴やマスクがついていき、
その姿をまともに見ることが出来なくなっていた。
「アタシ、…ひぐっ、静にだけは笑顔でいたいから」
「先帰ってていいからな」
俺はそう言い残して病室に向かう。

 痛々しく衰弱していく静の姿に俺も涙腺が緩み始めてしまう。
「よ」
「……」
「悪ぃがまた少し寝かせてくれ、寝てないんだ」
「……」
寝てないなんて嘘だ。
静のベッドを少し占領してその微かに伝わる温もりに埋まる。
気付かれないように、息を殺して涙を流す。
しばらくすると静の唄声が聞こえ始める。
「…♪〜…♪♪…#♪…♪〜…」
月の裏側のように普段は見ることの出来ない一面。
それとなく振ってみたことはあるのだが起きてる時に聞けたことは無い。
「…♪〜…♪♪…#♪…♪〜…」
このままずっと、きみのこえを聞いていたかった。
何年か前のドラマで流れていた曲の同じパートを繰り返す壊れた歌姫。
もうすぐ来る彼女の誕生日に、この曲のオルゴールをプレゼントする。
探すのが大変だったが、和美の彼氏とやらが作った曲だとかで、
条件付だがオルゴールそのものを作ってもらえることになった。
そのせいで少し寂しい想いをさせてしまったかもしれないが。

 12/28
小泉 静は今日で16歳になる。
プレゼントを受け取るのに少し時間が掛かってしまった。
和美が一緒にこれないと謝っていた事も伝えなくては。
凍て付く様な寒さの中、病院へ急いだ。

 息を整えて病室に入る。
「よぉ」
「………」
静はベッドの角度を上げて一冊のノートを持って待っていた。
前に覗こうとしたら凄く怒られたやつだ。
「…けほっ…」
軽く咳き込んで俺を見上げる静は何時に無く真剣な表情だった。
プレゼントを出すタイミングをなくしてしまった俺は、
いつもの椅子に座り、静の様子を見守った。
「今日はどうしたんだ?」
「…………けふっ…………けふっ………」
「…」
静はマスクをはずすと、ゆっくりと話し出した。
「………言わなきゃ……けふっ……いけない事…………あるの」
「ああ、なんだ?」
「……けふっけふっ!…………っ……………」
「…」
たっぷり三十分は経っただろうか、静は俺の手を取って言った。
「………裕君……ごめんなさい…っ…愛しています……っ…けふっ…」
『ごめんなさい』その言葉はあの日以来、静の口から出たことは無かった。
「けふっけふっ…ごほっ!」
「静!」


221:きみのこえ 18/21 ◆4xa546DmHA
07/10/27 13:20:15 PAVHqpca
 咳が酷くなってきた静にマスクをを渡そうとする。
「けふっけふっ!」
だが静はそれを受け取らず俺の首に手を伸ばした。
押し付けるような乱暴なキス。
勢いが付きすぎて唇が切れ、血の味がした。
「……」
「……っ」
「けふっけふっごふっ!っ!」
「おいっ、大丈夫か! 静! 静っ!」
静の口元にマスクをあてナースコールを押す。
「くっそ! 速く来いよ!」

 やがてやってきた看護士に俺は追い出され、
しばらくすると医者が病室に呼ばれていた。
「君、大丈夫? 血が出てるわよ」
通りがかった看護婦に指摘され、唇が切れているのを思い出した。
滲む様な軽い痛み。
そういえば、これがファーストキスになるんだな。
今、このすぐ横で静が苦しんでいるというにもかかわらず、
俺の頭の中は静の言った言葉を反芻していた。
『ごめんなさい、愛しています』

渡しそびれたオルゴールをそっと脇に置いて、
俺は一冊の大学ノートを手にとり、ページをめくった。


 その日からしばらくの間面会は出来なかった。
静の姿を見ることが出来たのは、年が明けてから十日が経っていた。
面会の許可は下りたものの、彼女はあの日から目を覚ましていないそうだ。
 病室に入ると見慣れない医者が眠っている静の横に立っていた。
彼女の担当医はどうしたのだろうか?
「やぁ、待ってたよ」
「あんたは?」
「見たまんまのお医者様様。彼女の身体については僕の専門じゃないけど
 ついさっき担当が代ったって所かな」
「はぁ…」
「ほら、がんばらないと。 彼女死んじゃうよ?」
「っ! それが医者の台詞かよ!? 治すのが仕事じゃねぇのかよ!」
「イエェェス! アイ、ドゥー! 僕はしがない精神科医
 だから外側の入れ物はノータッチ! あ、今胡散臭いとか思ったでしょ?」
頭イカレてるんじゃないかこいつ。
「んむ、いい勘をしている。僕はとても優秀な超一流の三流だからね、
 今まで僕の手で患者を治療できたことはまったくをもってナッッシン!」
「ふざけんなッ! そんなヤツに静を任せられるかよ!」
「グゥゥゥッド! だから君が治すんだ」
「なん…だって?」
「詳しい話は僕のオフィスでしよう。ついて来るといい。あ、何か飲むかね?」
そういって病室を後にするヤブ医者。
妙なテンションに流されてしまったものの、
ここにいても仕方が無いので後を追うことにした。


222:きみのこえ 19/21 ◆4xa546DmHA
07/10/27 13:21:52 PAVHqpca
「ようこそ、僕の王国へ」
迎え入れられた部屋は医術書よりもオカルトチックな蔵書や
置物、巻物? 凄くよさそうな壷が散乱しており、
医者のいる空間にふさわしくないのは確定的に明らか。
「とりあえず、これでも飲んで落ち着いてくれ」
そういって渡される青い回復薬の小瓶。
「…」
「それじゃサクサクいこうか、君は彼女の病気が何か知っているかい?
 知らないだろう? そのくせ不治の病みたいな事おもってるでしょ?」
「まぁ…そうかもしれ」
「同じ条件で育てた花に、異なった感情を与えた実験を知っているかい?
 憎しみを与えた花は、愛情を与えた花よりも速く枯れてしまったそうだ。
 では、幽霊は信じているかい? 恨みを持って化けて出たり、
 孫の代まで守ろうと守護霊がいるという話、聞いた事位はあるよね」
話が長いうえに、俺の話を聞こうとしない。
「で! 何が言いたいんだ!?」
「せっかちだなぁ、ようは病は気からって事。ハートさ。
 強い感情は身体に影響する。死にたいなんて思ったら治るものも治らない、
 逆に気力だけで生きてるような人もいるしね、
 ヒトが考えうる事象は全て実現しうるんだよ。
 専門外だから詳しくはしらないけど、彼女の体の異常は
 内蔵の発育不全みたいなものかな、臓器の成長が遅いだけで十分治療可能だ
 外見や精神年齢よりも肉体の方はとても幼いんだ、そしてそれは
 今回程度の風邪なら問題なく退院できるはずだった」
「…どういう事だよ」

そう言いつつも俺はあのノートと静との会話を思い出していた。
        『ごめんなさい、愛しています』

「今病んでいるのは肉体の方よりも心の方、個人個人の患者の心のケアなんて
 会って五分の僕には当然無理さ、だから僕が治療できた患者は一人も居ない
 だが、僕は治療の為の方法だけは知っている。君ならこの意味わかるね?」
「…お願いします、俺に…教えてください」
「グゥゥゥッッッド! それでは医療とオカルトの関連性から講義しようか…」
当然のことながらその講義は役に立つものではなく、
三時間ほどそれに耐えたあと、強引に聞き出した方法は五分もかからなかった。

 それからしばらく俺は静につきっきりになり、
ベッドから起き上がれるようになった頃には、和美とも話せる様になっていた。
ヤブ医者め、効果は抜群だ。


223:きみのこえ 20/21 ◆4xa546DmHA
07/10/27 13:22:40 PAVHqpca
821 :名無しさん@ピンキー :2007/12/27(木) 22:12:40 ID:29QpniMo
  >>RLghGVzj
  わかったからもうしゃべんな


お前がわかってねーっつーの!
モニターの中から出てきやがれ!そしたら嫌ってほど見せ付けてやる!
あ、馬鹿なに埋めはじめてんだよ! 荒らしじゃねーって、ちょおま
まてって、おいィ! 連投規制ってなんだよ!
dat落ちたらせっかく書いたやつよめねーだろ、考えろよ!

 ガチャ、とドアの開く音が聞こえる。
空気の動く気配がしてテーブルの上にコトンと何かが置かれた。
湯気とともに立ち上るコーヒーの香りが、
意識をモニターから現実に引き戻す。
「……」
「お、サンキュー、静」
再びモニターに顔を向けようとすると袖を引っ張られた。
「…」
「わかった、わかった、そんな顔するなよ」
コーヒーのお礼にと俺は静に軽いキスをする。
静が目覚めてから半年以上経つが、「王子様のキス」は、
いまだに彼女のお気に入りらしく、朝起こす時は必須になっていた。
 静が離れてゆく唇を追いかけようとしたとき、
肘に当たってコーヒーが俺のズボンにこぼれた。
「っっっっっ!あっちいいいい!」
「…裕君っ!」
急いでズボンを脱いで真っ赤になった太ももを晒す、
静は本当に申し訳なさそうな表情をしてそこにタオルを当ててくれていた。
「…裕君…好き」
幾度と無くかわされた二人だけに通じる『好き』
最初は冗談のつもりだったのだが言われ続けているうちに、
やめさせるタイミングを無くし、面白いから、むずがゆい、恥ずかしいと、
受け止める心境もだんだんと変化していった。そして今は……。
ただ、これを聞くと怒れなくなってしまう事は最初から変らなかったが。
「…ったく、しょうがねぇヤツだなぁ…」
そうつぶやいた俺もしょうがないヤツなので、
仕返しとばかりにキスをしてやった。


224:きみのこえ 21/21 ◆4xa546DmHA
07/10/27 13:23:24 PAVHqpca
 …んっ……んちゅ……
「…」
「…!」
う、まずい、トランクスだけではこの変化を隠し切れない!
「うあ、あっそうだ、レス見ないとだなーみないとー」
さも大事な事の様に椅子に座りなおし机の下に股間を隠す。
カタカタカタカタ
「明日は和美の彼氏のライブ行く約束だったよなー」
  ぐいぐいぐいぐい
「芸能人と中学生の交際なんてのはまずかったよなー」
    ぐいぐいぐいぐい
…どうやら隠し切れなかったようだ。
「………うふっ」
静がニヤニヤしながら袖をひっぱっている。
俺はタイミングを見計らって書き込みをして静かに振り返る。
「はぁ…静の身体が元気になったらやり直すって約束したもんな
 けどその前に渡したいものがあるんだ」
「……?」
袖を引く手を止めキョトンとする静に小さな木箱を渡す。
「誕生日おめでとう、静」
手渡した箱を開ける静。
    〜♪〜〜♪♪〜#♪〜♪〜〜
中に納まっていたのは一六と一年分の重み
「…裕君…ありがとう」
そして俺は十七年分の重みを身体で受け止めた。
「…ん…っちゅ…」

…っ……ちゅ…!?

 貴様見ているなッ!
俺はこっそりとPCの電源を電源を落とした。


1000 :名無しさん@ピンキー :2007/12/28(金) 00:00:02 ID:ILvU4evr
  >>774 Happy Birthday

1001 :1001:Over 1000 Thread
  このスレッドは1000を超えました。
  もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


225:名無しさん@ピンキー
07/10/27 14:47:38 970gxBDn
>>224
あれ?なんか目から変な水でてる…
…ち、違うわよっ。これは別に感動したとかそんなんじゃ、
―ああっもう、一回だけしか言わないわよっ



…………G、J

226:名無しさん@ピンキー
07/10/27 14:55:37 qwn2g4u+
>>224
裕君自重しろ

でもGJ!

227:名無しさん@ピンキー
07/10/27 15:40:12 9LKSLl82
>>224
GJ


あれか、俺の体から水分絞りださせる気ですか?
なんつう作品だよおい…………



さてと、じゃあ俺もテキトーに言ってみるか


God bless you

228:名無しさん@ピンキー
07/10/27 15:54:35 8elaYMi6
>>224

いろいろ上手すぎ

GJ

229:名無しさん@ピンキー
07/10/27 16:59:59 1TgG1CD1
>>224
狂おしいほどGJ
不覚にも「うお! まぶしっ!」に吹いたw

230:名無しさん@ピンキー
07/10/27 17:53:05 UHXXvPoc
>>224
個人的に、ノリのいい精神科医が大変気にいったw

そして切なくなりつつ最後に幸せな感動にGJ

231:名無しさん@ピンキー
07/10/27 19:28:23 joDzVvKv
GJ!
良いもん見させてもらったぞ

出来るならさらに続きw(ry

232:名無しさん@ピンキー
07/10/27 20:37:52 xcW6wAji
GJすぐる

233:名無しさん@ピンキー
07/10/27 22:19:00 Q203Ef58
URLリンク(upup.s13.dxbeat.com)

234:名無しさん@ピンキー
07/10/27 22:43:00 NZhk11VC
GJ

だけどどう読んだらいいのかよく分からなかった

235:名無しさん@ピンキー
07/10/27 23:21:18 a8n/d4C3
>>224>>1000
涙した

236:名無しさん@ピンキー
07/10/28 00:24:50 PUXgVmE4
>>224,ブロンと様で耐え切れずに吹いてしまった、どうしてくれるw
だが、好きだ!愛してる!

237:名無しさん@ピンキー
07/10/28 00:53:36 q90blOW2
>>1000のID最強だな。


本当にGJ。

238:名無しさん@ピンキー
07/10/28 00:55:07 Qw1fl+aX
1000 :名無しさん@ピンキー :2007/12/28(金) 00:00:02 ID:ILvU4evr
  >>774 Happy Birthday

IDがあいらぶゆーふぉーえばーなんすね。

239:名無しさん@ピンキー
07/10/28 02:56:58 ZlAGzrTC
>>224
いいもの見させてもらった。ありがとう。
GJ!

240:名無しさん@ピンキー
07/10/28 08:13:25 hqCN69fN

二人はおしゃべりでいつも賑やかなバカップル
毎日のように喧嘩もするけどすぐ仲直り。
でも今回ばかりは許せない。
本気で怒った彼女は、彼氏にちょっとした復習を思いつく。

TVでやっていた催眠術の特番。
これで彼氏を黙らせてしまおう!と。
さすがに完璧にしゃべれないのはかわいそうだと思った彼女は、
一日に一言だけならOKと自己流にアレンジを加えた。

そして翌日。
彼氏に催眠術をかけていたはずの彼女は、
目の前のろうそくの明かりが……
…………だんだん……霞んで…きて…

しゃべりたくてムズムズ
えっちの声でも言ったら一言
元気いっぱいの無口娘は好きですか?

自分じゃくっそ長くなるだろうし、
エロまでいけそうにないのでネタシチュ投下。誰か!
朝っぱらからそんな233を妄想してごめんなさい。

241:名無しさん@ピンキー
07/10/30 01:30:21 kgi4wg6i
@クール無口っ子

A恥ずかしがりや無口っ子

B甘えん坊無口っ子

C活発無口っ子



お前らはどれが一番好きだ?あ、眼鏡とかのオプションは別途につけてくれ


























もちろん俺は全部好きだ!!

242:名無しさん@ピンキー
07/10/30 03:13:39 TKVovpWA
シャイニング無口っ娘かな

243:名無しさん@ピンキー
07/10/30 04:35:50 RyxbNGMz
AかBだなjk

244:名無しさん@ピンキー
07/10/30 08:02:25 YVYbcph9
Aで目が前髪で少し隠れる位のセミロング娘

245:名無しさん@ピンキー
07/10/30 15:48:38 NkCpdH/S
A+眼鏡+(体の)ちっちゃい子希望

246:名無しさん@ピンキー
07/10/30 16:47:27 ipe8IbEP
>>245
お前は俺かwww
あと、Bでセミロング+小柄ちょいロリも捨てがたい

247:名無しさん@ピンキー
07/10/30 18:59:15 4OoETub3
>>242
俺はダブルインパクト式無口っ子だな。


冗談はさておき、@+長髪+スレンダー

248:名無しさん@ピンキー
07/10/30 21:17:14 9h1XhMnD
>>241
皆の前では@、二人きりだとB
それで長身長髪なら何も言わん

249:名無しさん@ピンキー
07/10/30 21:52:57 86ZyEHCN
無口っ子って書くの難しいな……このスレの神たちはすごいと再認識したよ

250:朝の挨拶 ◆ga4Z.ynmGk
07/10/30 22:07:41 0HuFBZRp
………………。
………。
ぴくっ。
「おーい」
たったったった……。
ぴと。
「おっと」
ぎゅ。
「うん。おはよう。今日は大丈夫?」
こくこく。
「じゃあ行こっか」
くいくい。
「ん?忘れ物?」
ふるふる。
「じゃあ、オンブ?」
……。っふるふる。
「今、いいなとか思った?」
ぼ。
「顔、赤いよ?」
ぽかっぽかっぽかっ。
「あはは、ごめんごめん」
ぐいっ。
「わっ」
どてっ。
「いたた…なにす、」
ちゅ。
「………」
………。
「…言ってくれればしゃがむのに」
ぴと………ぼそぼそ。
「……んー押し倒す方が恥ずかしいと思うけどなぁ」
ぷぃ。
「んー…なら、」
ひょい。
!?
じたばたじたばたじ…。
ちゅ。
………くてん。
「これで許してくれる」
………。
「おーい?」
…こくり。
「ん。じゃあ行こっか。お姫様?」

251: ◆ga4Z.ynmGk
07/10/30 22:12:14 0HuFBZRp
勢いで投下。
ストーリー皆無だが…私は謝らないっ!
では何事もなかった様にどうぞ

252:名無しさん@ピンキー
07/10/30 22:14:32 4OoETub3
>>251
何も言う必要はあるまい。


……くてん。

253:名無しさん@ピンキー
07/10/30 22:21:06 TKVovpWA
>>251
あなたには甘えんぼうで無口なお姫様を書く義務があると思うんだ。

254:名無しさん@ピンキー
07/10/31 07:51:30 4NI1ETfW
>>251ネタGJ!!
その勢いでストーリーキボン


……くてん

↑(*´Д`)

255:『彼女』の呼び声 ブリッジ2〜前書き
07/11/01 00:04:58 QlCuIU8X
やあ(´・ω・`)
うん。「また」なんだ。すまない。
前回からあれだけ間を空けておいて、今回もブリッジなんだ。
と言うわけで、今回もまた興味ない方は『彼女』の呼び声あるいはブリッジ、であぼーんしておいてくれ。
じゃあ、続きを始めようか。

256:『彼女』の呼び声 ブリッジ2
07/11/01 00:06:46 QlCuIU8X
「ジュリエット、オデット、コッペリア、ドロシー……うーん……」

 バイトをしながらも、仁は必死に彼女に相応しい名前を考え続けていた。
 午後の授業の内容なんて欠片も頭に入っていない。
 考え始め、そろそろ六時間を越えている。
 が、それだけ頭を悩ませてもなお、彼女に相応しい名前は思いつかなかった。

「アリエノール、エルゼベート、ジャンヌ、シャラザード……」

 検品しながらもさらに考える。
 普通ならばそんな風に気を散らしていると数え間違いやら入力ミスを起こす物だが、今日は不思議とミスも無い。
 まるで頭が、彼女の事を考えている頭と、検品作業をこなしている頭の二つに分かれているかのようだ。

「アフロディテ、ファーティマ、ヴィシュヌ、此花咲耶姫……」

 駄目だ。
 どの名前も、彼女の持つ魅力や独特な雰囲気の百分の一、いや千分の一も表せていない。

 あの、幼女のように無邪気な笑顔。
 拗ねてそっぽを向いた時の横顔。
 お腹を空かせ、期待した眼差しでこちらを見上げる上目使いの表情。
 時折見せる、物憂げな表情。
 そして、頬を朱に染め、目を閉じて口づけをねだる時の甘えた顔。
 ―百万の言葉より、なお雄弁に語る表情と動作。

 何故か回りの人間に気づかれない幽霊のような存在だが、抱き締めた体の柔らかさと暖かさは決して夢幻のものではない。

「和泉式部、額田王、小野小町、小野妹子……」

 違う。妹子は男だ。
 自分で自分に突っ込みを入れ、そこでようやく我に返る。
 気づけば検品が終わっていた。
 さすがに注意力が散漫すぎたと反省し入力端末をチェックするが、不思議と値に間違いはなかった。
 さらに、時間を見てみるといつもの三分の一くらいしかかかっていない。

「これも……愛の為せる力かっ!?」

 自分で言って恥ずかしくなった。
 とりあえず、ごまかす為に咳払いを一つ。
 ついでに辺りを見回すが、特に彼に注意を払っていた人間はいないようだ。

 ―最近、気付けばいつも彼女のことを考えている。
 これもまた、つい先日までの彼からは考えられなかったことだ。


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