無口な女の子とやっち ..
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531:名無しさん@ピンキー
07/09/11 21:18:32 GfknvrLX
あんなに過疎ってたのに結構な反応の速さ。おまいら普段どこにいるんだw
活発無口っ娘ガンガンおk。むしろ大歓迎

532:名無しさん@ピンキー
07/09/11 21:50:05 Tt2cxukj
>>531
ここの住人も無口なんだろ

533:じうご
07/09/11 22:09:30 H7KNeoXk
さてと、みなさんこんばんは
じうごです

なんというか……現在書いているものの筆がなかなか進まないので
気分転換に1レス分のものを投下します
エロはありません、ご注意を




534:じうご
07/09/11 22:10:36 H7KNeoXk
ふと外を見る。
豪雨、といってもいいような勢いで雨が降っている。
そのせいか、夏―暦の上では秋だが―なのに気温は肌寒いくらいだ。
「ん……」
まぁ、そんな寒さも彼女が俺の背中に抱きついてきているおかげで、たいして感じないが。
「はぁ……いつもいつも、暇さえあれば、俺に抱きつくのはやめろよ」
「……いや?」
「別にいやではないけどな」
というか、すこし話ずれるが自分の好きな人に抱きつかれるのが嫌いな人とかいるのか?
「……なら、いいでしょ」
そういい、先ほどより強く抱きついてくる。
俺の肩に顔を乗せているのが、なんともほほえましく思える
「まぁ、そうだな……」
ザーッと、雨の降る音が聞こえる。
……窓を閉めないと吹き込むな、
そんなことを思うが、動く気はない。
吹き込んだとしても、どうせあとで拭けばいい、今は、なんとなくこのままでいよう。
「なぁ」
俺は彼女に呼びかけるが、
「…………」
返事がない、どうしたかと思い、顔を横に向ければ、
「…………」
俺の肩に顔を乗せたまま、なんだかどこか幸せそうな顔をして寝ていた。
「ったく……」
自然に頬が緩むのを感じるが、別にだれかが見ている訳でもないから、そのままにしておく。
「仕方のないやつだな……」
言うのは口だけ、俺は彼女を背中に抱きつかせたまま器用に立ち上がり、彼女をベッドの上に優しく置き、布団を被せる。
ザーッと、雨の振る音が聞こえる。
「俺も寝るか……」
床に座り、ベッドに背中を預けて、彼女の寝息を聞きながら、俺は目を閉じた。
ザーッと、雨の振る音と、彼女の寝息が聞こえる。





終わり


535:じうご
07/09/11 22:14:22 H7KNeoXk
あ、あと、
>>528

ぜひ書いてくださいお願いします

536:名無しさん@ピンキー
07/09/11 22:18:41 W7+93nlz


537:名無しさん@ピンキー
07/09/12 00:39:02 /TdZOiEa
>>534


駄作乙www

もう二度と来るなよ低脳野郎www

誰もお前のSSなんて待ってないしなwww

538:名無しさん@ピンキー
07/09/12 00:41:07 9EMFGxTk


>>537
ツンデレは帰れw

539:名無しさん@ピンキー
07/09/12 15:35:18 hnPD0jL1
 彼女は何も言わない。
 ただ、その頬は窓から差し込む夕日より赤くしている。
 彼女の目の前には、SSを書き終えて、疲れたためベッドで眠っている>>534がいる。
 彼女は、深呼吸して、その上に静かに乗る。
 目が覚める>>534
「ん……な、なにやってんだ。降りろよ>>537子……」
 彼女は持ってきていたスケッチブックに文字を書き込む。
『駄作乙www 』
 >>534は、一瞬きょとんとした。だが、悪魔のように嗤った。
「そうか」
 >>534は彼女の腕をぐいっと引っ張る。
 彼女の息がふっと漏れて、>>534の胸に倒れ込む。
 すっかり熱くなっている彼女の身体が、眠っていた>>534の少し冷えた身体と熱交換をする。
 彼女はちょっと横に転がると、まだ片手に持っていたスケッチブックにまたなにか書き込んだ。
『もう二度と来るなよ低脳野郎www』
 くくっ、と声を上げる>>534
「もう言うことはないのか?」
 彼女はほんの少し挑むような目つきで、さらに書き込む。
『誰もお前のSSなんて待ってないしなwww』
 それを見たとたん、>>534は激しく彼女の唇を奪った。
 お互いの吐息といやらしい水音が部屋にこだました。
 >>534はむさぼるように彼女の胸を揉みしだく。
「……んっ……」
 ばさりと、彼女の持っていたスケッチブックが床に落ちた……。

540:名無しさん@ピンキー
07/09/12 16:15:38 F8WTmZhr
わっふるわっふるwwww

541:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:34:27 DwSycxOg
らんま思い出したwww

542:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:41:09 9EMFGxTk
これはw

543:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:42:34 z4/6+0PC
わっふるわっふる

544:名無しさん@ピンキー
07/09/12 19:27:12 /mTJ1AXp
わっふるわっふる

545:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:38:10 nFPgP+Xf
 学費の足しにしようと始めたコンビニのバイトは、予想以上に退屈かつ苦痛なものだった。
 ただひたすらバーコードを読み込み、金額を合計し、レジに打ち込んで行く。
 売り上げを記録し、店長の指示の元機械的に商品を補充。
 自己研鑽も達成感もない、ルーティンワークの繰り返し。

 本当なら、もっとやりがいがある、例えば製造系のバイトがしたかった。
 が、それらの仕事は総じて拘束時間が長い。
 学業に支障がでない範囲でできるバイトと言えば、このコンビニのバイトくらいしか―学生の多い街ゆえ、新聞配達の奨学生はあっと言う間に埋まってしまった―なかった。

 そんな燻る火種のような日々を送っていた少年、古橋仁がその少女と出逢ったのは、夏の終わり。
 まだ蒸し暑い、夏の夜のことだった。


 彼女が店内に入ってきた時、仁はすぐにその存在に気づいた。
 決して汚れているわけではないが、撚れてくたびれたワンピース。
 不潔なわけではないが、年頃の少女にしてはあまりに手入れのされていない長い髪。
 何より、彼女くらいの年齢の少女が、お洒落なバッグの一つも持っていないというのがいかにもな感じだ。
 ―そう、彼女は、一目でそうと分かるほどに家出少女にありがちな特徴を持っていた。

 彼女は店の入り口にあるカゴを左手に持つと、レジの真っ正面を横切り、そのまま迷い無く食料品の並べてある一角へと歩いて行く。
 間近で彼女の姿を見て、仁は気づいた。
 彼女のワンピースの右腕に中身は無く、無造作に縛ってある袖口だけがぶらぶらと揺れている。
 如何なる理由があるかは分からないが、彼女は隻腕なのだ。

 そして、食料品コーナーにたどり着いた彼女はカゴを床に置き、片方だけの左手を棚へと伸ばし、

「―って、おいおいおい!?」

 無造作に掴んだ菓子パンを次々とカゴの中にほうり込んで行く。
 あっと言う間に一杯になったカゴを、彼女はそのまま片手で掴むと、レジを素通りして入り口へと。

 レジを飛び出し追いかけようとした仁だが、しかしそれは叶わない。

「ちょっとアンタ、これ」

 弁当とレトルト食品と、そして少しのスナック菓子の詰め込まれたカゴを、子供連れの若い女性が突き出す。
 それどころじゃない。と言おうとした仁だが、その時違和感に気づく。

 今し方の彼女のような、普通とは異なる人間が視界に入ってきた時、人間は思わずそちらに視線をやってしまうものだ。
 家出少女、隻腕、そしてあの突飛な行動。
 注目される要素がいくつもありながら、しかし彼女の存在に気づいたのは彼ただ一人。
 ゆとり教育の弊害だとか都会の人間は周囲に無関心だとか、そんなチャチなものではない。
 仁は、もっと恐ろしい何かの片鱗を味わった気がした。

 ―その日の売り上げと在庫にはやはり大きな差があり、仁や他のアルバイトは在庫確認のために残業を強いられることになる。


 次の日も、そのまた次の日も。
 少女は同じような時間にやってきて、同じようにカゴ満載の菓子パンを手に夜の街へと消えて行った。
 仁の予想通り、どうやら少女の姿は他の人間には見えていないらしい。
 一度など、店長の目の前を堂々と横切って行ったにもかかわらず、だ。

 それだけではない。監視カメラにも彼女の姿は映っていなかった。
 まるで幻。しかし、現実に店の品物は消えて行く。

 そんなことが一週間ほど続いた時、仁は一つの計画を実行に移した。

546:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:39:43 nFPgP+Xf
「やっぱり、今日も来たな」

 その日、仁はいつもと同じようにコンビニに居た。
 が、いつもと違うのは店員としてではなく、客として来ている、と言うことだ。
 今日はバイトは休み。普段はバイト以外でコンビニに来ることなどめったにないが、今回は特別である。

 少女はいつものように片手でカゴを掴み、無造作に菓子パンをカゴにほうり込んで行く。
 真後ろにあるおにぎりを選ぶ振りをして仁が近づいても、一考に気にする気配はない。
 やがてカゴが一杯になると、いつものように堂々とレジ前を横切り入り口へと歩いて行く。
 仁は数歩遅れるように、その後を追いかける。

 幸い、コンビニを出た途端幻か何かのように少女の姿が消えてしまうようなことはなかった。
 迷いなくてくてくと歩いて行く彼女を、仁はつもりだけでも足音を忍ばせて追いかける。
 やはりというべきか、彼女が向かって居るのは近所の市民公園だ。

 街灯の頼りない明かりの中、少女にわずかに遅れるようにして仁が追いかける。
 そして公園の中央付近、噴水の回りにあるベンチまでやってくると、彼女はようやく足を止め、手にしたカゴをベンチの上に載せ、その横にちょこんと腰掛ける。

 カゴへ向かって手を伸ばし掴んだのは、袋に子供たちに大人気な黄色い電気ネズミの描かれたパン。
 左手と歯で器用に袋を破り、彼女はかわいらしい口を大きく開け、思い切りよくパンにかぶりついた。

 今だ。仁は茂みから、大股に歩み出る。

「あのさ、あんた……」
「…………(もぐもぐ)」

 聞いちゃいなかった。それどころか、仁の方に視線をやろうともしない。
 あっと言う間に一つ目のパンを食べきり、次に手に取ったのは大きなメロンパン。

「…………(はぐはぐ)」

 幸せそうに目を細める彼女の姿は、薄暗い街灯でもはっきりと分かるほどに愛らしかった。

「―って、聞けよおいっ!」

 思わず見とれてしまった仁だが、我に返って再び声を上げる。
 が、それでも彼女は彼を見ようともしない。
 仕方なしに仁は彼女の目の前まで歩いて行くと、その両肩をがっしりと掴む。
 見た目どおりに細いその肩は、確かな実体を持ってそこにあった。

「…………!?」

 驚いたように、初めて彼女が反応を示す。
 見上げる視線がちょうど彼女を見下ろす仁のそれと重なり合った。
 夜空よりもなお暗く深いその瞳に、引き込まれそうになる感覚をしかしなんとか堪えながら、

「なあ、あんた。家出中なんだろ? 親とか、心配してるんじゃないか?」

 少女は応えない。沈黙に居心地の悪さを感じ、仁は言葉を続けた。

「まあ、百歩譲って家出なのは別にいいとしよう。けどな、万引きは不味いぜ。
最近のコンビニは容赦ないから、見つかったら即行警察行きだ。
あんただって、警察のお世話になんかなりたくないだろ?」

 肩を掴み言い含めるように言うが、少女は意味が理解できないのか、不思議そうにことんと首を傾げる。
 見た目は黒髪黒目の日本人のようだが、ひょっとすると外国人なのだろうか。

「あー。俺の言葉、わかる? きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず?」

547:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:40:30 nFPgP+Xf
 ちなみに、仁は発音こそ壊滅的に悪いが、リーディングやライティングは得意な方だ。念のため。
 が、それでも少女は返事をしない。と言うか、仁への興味が失せたのか、それとも食欲の方が勝ったのか、手にしたメロンパンの咀嚼を再開する。

「まいったな……」

 色々な意味で困った。
 しかし、いつまでも彼女の肩を掴んでるわけにも行かない。
 というか、彼女のワンピースは胸元が少し開いているため、この体勢では柔らかそうな胸の谷間が覗けてしまう。

「ああ、もうっ!」

 仕方ないので、仁もベンチに腰掛ける。
 彼女の左にはパンの入ったカゴが置いてあるので右側に。
 その位置から彼女の横顔を見ようとすれば、自然と中身の無い右袖が視界に入る。
 一体、彼女は何者なのだろうか。
 気にはなるが、多分聞いても答えてくれないだろう。
 それどころか、まともに意志の疎通が図れるかも不安になってきた。

 と、その時だ。

「…………」

 もう何個目か分からないパンの袋を手に、彼女は困ったように眉根を寄せる。
 どうやら、袋がうまく開かないらしい。
 その姿を見ると仁はひょいと手を伸ばし、彼女の手から袋を取り上げる。
 何をする、とでも言うように不満げな彼女に向かって苦笑し、

「別に取らないって。……開けてやるよ」

 力の入れ方を工夫すれば、開けにくい袋も簡単に開く。元々手先は器用な方だ。

「ほら、開いたぜ」

 開いた袋を手の中に押し込んでやる。
 彼女はきょとんとした表情を浮かべ、手の中の菓子パンと仁の顔を交互に見つめた。
 が、すぐにまたパンを口に運び―咥えたまま、左手に力を入れる。
 口に残った大きな固まりと、手の中の小さな固まり。
 二つに分かれたパンを彼女は困ったように見つめ、だが決心したのか、口元の大きな固まりを器用に薬指と小指で掴むと、仁に向かって差し出した。

「…………」
「え、くれるのか?」

 こくりと頷く。
 が、渡されても困ってしまう。元々彼のバイト先から盗まれたものだし―何よりこれでは間接キスだ。

「――」

 迷っていると、不意に少女が口を開いた。

 が、最初仁は、それが彼女の発した声だとは気づかなかった。
 それは言葉と言うにはあまりに異質で、また声と言うにもあまりに異質だった。
 それはむしろ、鳴き声や音に近い、名状しがたき何か。
 しかし、それが仁に向けて明確な意志と共に発された、彼女にとって何等かの意味を持つものならば、それはやはり、声あるいは言葉と表するべきだろう。

「わかったよ。ありがとな」

 だから仁は柔らかな笑みを浮かべ、彼女の差し出した菓子パン―蜂蜜がけのベルギーワッフルを受け取る。
 ただでさえ甘いワッフルが、この時はさらに甘く感じられた。

548:『彼女』の呼び声 あとがき
07/09/12 23:44:22 nFPgP+Xf
そんな訳で>>528でした。

要するに、わっふるわっふる、と。
エロく無くてごめん。

549:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:12:25 0pazShQx
なんだか新しいな……新鮮な感じ


まぁようするに、非常にGj!

550:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:42:01 rClAvBgg
>>548
ユーこのまま続けちゃいなYO!

551:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:43:11 c3aSW4LU
なんだ これ!

よくわかんねーけど、よかった。
よくわかんねーけど、あんたの書いた世界が勝手に頭の中で画になって

ありがと。



552:名無しさん@ピンキー
07/09/13 02:57:11 hASoXKdy
>>548たった今、全世界主要国脳内妄想電波サミット会議にて連載が確定しました。

続きこなかったら無口でベッドの中で泣き続けるからな。

GJ!

553:『彼女』の呼び声 第二話
07/09/13 21:22:37 6EVXz4JX
 夜八時。今日も仁のバイト先のコンビニに、片腕の家出娘が現れる。
 相変わらず周囲に認識されてない彼女に、仁は視線だけで待っているようにと合図を送る。
 そして彼は店長に向かって振り返り、

「じゃ、俺はこれで上がるんで。期限切れの商品、適当に持ってきますね」
「ちゃんと廃棄伝票切っとけよ。しかし、前まで期限切れの商品に手を付けなかったお前が、一体どんな風の吹き回しだ?
まあ、外の奴と違ってちゃんと断って持ってくし、常識の範囲内で持ってくから文句は言わんが」

 ゴミとして廃棄するにもコストがかかるからな、と笑う店長に挨拶をして、仁は店の裏へと回る。
 期限切れの商品の中からいくつかを適当に見繕って、伝票に記入。手にしたトートバッグに詰め込むと、着替えるためにロッカーへ。
 手早く着替えて表に回れば、そこには待ちくたびれた彼女の姿。

「よ、お待たせ」
「――♪」

 そろそろ聞き慣れてきた、名状しがたい音―彼女の声。
 喜んでいることまでは分かるのだが、それが果たして仁に向けてなのか、あるいは彼の持って来た食料に対するものなのかは定かではない。

「じゃあ、行こうか」

 トートバッグを少女に渡し、二人は並んで歩き始める。
 様々な食べ物の入ったバッグはかなり重く、片腕の彼女にはやや重いはずだが、彼女自身が持ちたがるので、仁は彼女が望むようにしてやっている。

「――」

 公園までの道を歩きながら、彼女が続け様に声を発する。
 ひょっとして、歌っているのだろうか。残念ながら仁にはそこまでは分からないが、少女が上機嫌なことは分かる。

 満月の月明かりの下を踊るように歩く隻腕の少女。
 ステップを踏み、時にクルリと回る度、腰まである長い髪がふわりと揺れる。
 と、手にしたバッグの遠心力に負けたのか、その体が不意にバランスを崩した。

「っと、気を付けろよ」

 慌てて手を伸ばし、その体を抱きとめる。
 どちらかと言えばインドア派な仁でも受け止められるほどに、少女の体は軽かった。
 だが、軽いだけではない。腕の中に感じるのは、わずかな重みと柔らかさ。
 彼女が幻ではなく、現実に存在しているのだという、確かな重みだ。

「――? ――♪」

 抱きとめられた彼女は一瞬不思議そうな表情を浮かべ、しかし仁の顔を見上げると、嬉しそうに笑った。
 その笑顔に釣られるように、仁も笑みを浮かべる。
 そんな何気ない一つ一つの出来事が、不思議ととても楽しかった。

 仁とて、女性と付き合った経験くらいある。が、最長でもせいぜい二カ月が良いところだ。
 整った表情に、いかにも切れ者と言ったメタルフレームの眼鏡。当然成績は良く、スポーツも特別苦手という訳でもない。
 そして何より、その雰囲気だ。どこか近寄り難い、理知的な雰囲気。
 そんな見た目に騙された女性たちに告白され、人並みに異性への憧れはある仁は、大抵の場合OKする。
 が、しばらくたつと彼女達は決まって言うのだ。
 あなたは真面目すぎて、面白みがないと。
 そして彼女達は彼と早々に別れ、もっと話の巧い、いかにもなクラスメイトに鞍替えして行く。

554:『彼女』の呼び声 第二話
07/09/13 21:23:22 6EVXz4JX
 真面目で何が悪い。ああそうさ。俺は話し下手だ。
 テレビもニュースや歴史番組くらいしか見ないし、新聞はまず政治欄と経済欄から目を通す。
 音楽は滝廉太郎や中山晋平くらいしか聞かないし、好きな作家はチャールズ=ドジソンだ。

 他人を楽しませるような話題など欠片も持っていない。
 なのに、彼女といると―

「自然……なんだよな。別に何も特別なことなんてない」

 バイトが終わって、二人で公園に行って。
 おにぎりや菓子パン中心のジャンクな夕飯を食べて。
 その後は何をするでもなく、二人でベンチで体を寄せ合って。
 そんな、変わり映えのしない毎日がひどく楽しい。

 女の子向けの話題なんてほとんど知らないから、仁はほとんど喋らない。
 たまに学校やバイトであったことを淡々と話すくらいだ。

 そして彼女は、声を出すことはできても喋ることはできない。

「なのに、楽しいんだ。二人でいるのが、凄く―心地良いんだ」

 不意に、彼の腕の中から少女がするりと身を引き抜いた。
 くるくると踊るように駆け出しながら、しかし時折振り向いては声を上げる。
 呼んでいるのだ。彼を。

「ああ。今行くよ」

 未だに、仁は彼女のことを何も知らない。
 家族はいるのか。その片腕はどうしたのか。彼と逢っている以外の時は何をしているのか。
 だが、そんなことはどうでも良かった。

 言葉や理屈なんかじゃあない。心ではっきりと理解できた。

 古橋仁は、今。
 ―この、名前も知らない少女に、恋をしている。

555:『彼女』の呼び声 第二話 後書き
07/09/13 21:26:20 6EVXz4JX
書いてる本人が言うのもなんですが、名状しがたい声ってどんな声なんでしょうね?
様々な伏線を凄い置き去りにしながら激しくバカップル。
無口キャラって、なんとなくいちゃいちゃさせやすい気がします。

またネタが浮んだら投下します。
あと、今回もエロ無くてごめん。

556:名無しさん@ピンキー
07/09/13 21:37:53 0pazShQx
形状しがたい声なんて……なんだろ

エロ無しなんて別に気にならない〜♪
文章も読みやすくていいです


やっぱりなにが言いたいかと言うと

………………GJ

557:名無しさん@ピンキー
07/09/13 22:25:43 /H5yJBAp
GJGJ!

>形状しがたい声なんて……なんだろ
あれじゃね?超音波。

このバッドエンドになりそうな空気にハラハラしてるww

558:名無しさん@ピンキー
07/09/14 01:45:47 nAsnoHDL
最初の話読んだ時、
正直、続編はなくてもいいと思った。
このまま何だかよく分からない感じを自分なりに消化する感じで・・・。

でも、今回の話を読んで少女の事、仁との係わり合いを
もっと教えて欲しくなりました。

ありがと。

559:名無しさん@ピンキー
07/09/14 04:51:47 YchKwLTX
>>555

アリス、かわいいよアリス(違)

GJ !!

560:名無しさん@ピンキー
07/09/14 09:04:26 bNIyIgg2
名状しがたい声って聞くとクトゥルフ的な何かかドラえもんのダミ声しか思い浮かばない

561:名無しさん@ピンキー
07/09/14 09:33:56 oi2DrqNh
普通に、動物とか鳥の声 >>名状しがたい声

イヌは『びょうびょう』もしくは『バウワウ』
鶏は『キッキラキ』

一応、聞き成しなんかされていても、違う
と思うモノは、違ってるようにしか聞こえません

562:名無しさん@ピンキー
07/09/14 10:57:22 btgHYKaa
ノイズとか
……完全に人間の声じゃないな

563:名無しさん@ピンキー
07/09/14 13:08:15 NBmkRVch
>>561

何故古典www

564:『彼女』の呼び声 第三話
07/09/14 22:52:44 BT196Iyq
「色々あるが……どれがいい?」

 いつものベンチに腰掛け、仁はトートバッグを開き、少女に尋ねる。
 少女はわずかに考えるような素振りの後、エビマヨネーズのおにぎりを指さした。

「ん、わかった」

 手早く包装を解き、ビニールを引き抜く。

「――♪」

 少女はそれを仁から受け取ると、嬉しそうにかぶりついた。
 単に菓子パンの包装ならなんとか破れるから菓子パンを選んでいただけで、おにぎりや弁当も好きらしい。

「そうだよな。片手じゃさすがにこの包装は破れないよな」

 ―普通に両手が使えても、巧く破けない奴もいるし。
 などと考えつつ、仁も適当にひとつを手に取り、包みを破る。

「ん、美味いな」

 やや塩味のきつい鮭は、しかし米に良く合う。
 コンビニのおにぎりなどと莫迦にしていたが、こうして味わってみるとなかなか侮れない。
 食べかけのおにぎりを手にそんなことを考えていると、

「――☆」

 横合いから彼女が食べかけのおにぎりを齧り取る。
 もきゅもきゅと咀嚼し、

「――♪」

 満足そうな声を上げた。

「あ、このっ。やったな!」

 お返しとばかりに仁も彼女の食べかけのおにぎりを狙うが、彼の口が届くより早く、おにぎりは少女の口の中へと消えた。
 が、仁は止まらない。

「――!?」

 口元へと運ばれるおにぎりの軌跡を追うように仁の体が動き、そのまま彼女の唇へと。
 かつんと前歯と前歯がぶつかり合う数度目のキスは、ほのかな塩味とエビマヨネーズの香り。

「…………」

 一瞬驚きに目を丸くした彼女は、しかしすぐに目を閉じ、口付けに応える。
 それはまだ初々しい、唇と唇と重ねるだけの軽いキスだ。
 ほんの一呼吸か二呼吸の間だけ。
 だが、唇が離れると、彼女は満ち足りた笑顔で声を上げる。

「――」

 相変わらずの名状し難い声だが、その奥に秘められた想いを、仁は感じた。
 だから、彼女の体をそっと抱き寄せ、耳元で囁く。

「ああ。俺も好きだよ」
「…………」

 月が二人を祝福するかのように、柔らかな光を投げかけていた。

565:『彼女』の呼び声 第三話 後書き
07/09/14 22:55:52 BT196Iyq
(´・ω・`) やあ。ようこそ無口(ry

うん、正直短くてすまんかった。
なんか、いちゃついてるだけであっという間に行数が埋まったので、切りの良いところで一旦投下。
次こそ話が進むはずです。

>>559
実はヒロインの名前考えてなかったので、それ採用しても良い?

566:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:25:54 aO88LIvK
早く投下しないと全国から無口っ娘が押し寄せるぞ!



それはそうとGj〜!


ただ、やっぱりそれなりに書き溜めてから投下してもらえるほうが
悶えずに済むのでお願いします

567:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:39:13 LcYNesiU
>>565
バーボン吹いたwwいや、実際吹いたのは焼酎だけど

おにぎり奪うときに「手ェ使えよw」と思ったのは内緒。
でも口から行く仕草に萌えるのでアリなのです。アリスたんに萌えなのです。

568:名無しさん@ピンキー
07/09/15 08:20:43 dQdcu2HV
アリス万歳!!超GJ!!

なんて萌えのツボを突いてくるキャラなんだ・・・

ちょっくら会社辞めてコンビニでバイトして無口幽霊っ娘と運命の出会いをしてきます。

569:559
07/09/15 17:09:38 WAcwPULU
>>565
ドジソン ちゅ~たら、アリスでっしゃろ?

強度ロリコンになるけど、いいんですか?

570:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:13:40 R8SRpSTn
アリスと聞いてRAMZと歪みの国思い出した俺orz

571:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:17:55 bfJe2L2T
ager

572:230
07/09/17 20:47:03 hHNoayui
皆様、お久しぶりです。
以前、SSを投下させていただいた230という者です。
>>565氏が再臨されるまでの間、また投下させていただきたいのですが宜しいでしょうか?

というか、今回の作品自体が長い上にエロがR−15くらいしかないので、正直、投下するか
それとも斧とかにUPしたほうがいいのか、それとも作品の混合ないし皆様の混乱を避けるために
565氏が作品を完成させるまで行動を起こさないほうがいいのか迷っています。

皆様のご意見がいただければ幸いです。

573:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:14:50 C2Ew1DR1
スレに落としておk

574:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:17:21 APlVrMrq
全く問題ない
つーか投下してくださいお願いします

575:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:18:03 XNvovkdX
読み手を舐めんじゃないよ!

そのくらいの事、てめーの頭で整理するさ!
しょーもない事気にしないで、あんたはいいの書く事考えてりゃー良いんだよ!

さぁ、勢いついたかい?
どーんとやりな!

576:名無しさん@ピンキー
07/09/17 22:11:28 OftEdge2
>>575の内容を視線だけで訴える無口男らしい女の子を想像したら萌えた

577:565(´・ω・`)
07/09/17 22:35:18 yvEzPS/z
>>230
私は全然気にしないので、じゃんじゃん投下しちゃって下さい。
私なんて、R−15どころかエロシーンすらありませんしね。
いや、そのうちエロくなる予定ではあるのですがー(=ω=.;)
ちなみに、この話自体、>>230氏の影響受けまくりなのですよ(´・ω・`)
激しくワクテカさせていただきます。

あと、お待たせしてしまっているスレの皆様に、本編では未だ名無し少女なアリスからメッセージがあるそうです。

アリス「――♪」

578:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:44:09 RdOxLV2l
ごめんなさい、>>230さん、>>575です。
自分このスレ、新参者です。
230さんの作品、どうゆう訳か>>252から読んでました。
今回の>>572のレスを見て230を読ませてもらいました。

バケツの中の花火に感謝するところ、好きです。

場違いなレス書き込んで、ごめんなさい。

579:名無しさん@ピンキー
07/09/18 03:06:42 uqj75Cmd
俺っ娘無口娘(強引)


これと「・・・やろ・・・?」組み合わせたら大変なことに・・・

580:名無しさん@ピンキー
07/09/18 07:51:57 2qeGZMfF
>>579


そんなこと言うとじうご氏が書いてくるんじゃないか?w

あの時も書いてネタ投下してたしw

581:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:32:26 MAwNXpJj
いきなり友から

「無口は欠点じゃない、ステータスだ希少価値だ!!」
とかいう電波メールが来た


俺になんて返して欲しかったんだろうな……

582:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:47:59 +0tvbBo8
「……」って、無口メール返すべきだったんじゃね

583:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:57:29 okxG5bd0
……バカ
でもいいんじゃね?

584:名無しさん@ピンキー
07/09/19 01:03:15 +0tvbBo8
それじゃ>>581が友人から惚れられてしまうぜ
お幸せに( ・∀・)ノ

585:名無しさん@ピンキー
07/09/19 04:10:45 5k0jsSIV
ってか下手すりゃここの住人なんじゃねw?

586:名無しさん@ピンキー
07/09/19 09:05:00 cpZpptI8
恐らく友人は無口で普段から無口なことを周囲の人に陰口叩かれて心を許せる友人の>>581に愚痴ったんだよ

587:純情プレパラート(1/4)
07/09/19 15:53:23 PQQClnxQ
 満員電車に乗るとき私はドアの傍にいく。
 ドアの収納口近くに取り付けられた手摺りが私のお気に入り。
 都心に向かう電車は毎朝混んでいて、人見知りな私は周りの人と視線を合わせたくなく
て、ずっと窓の外を見てる。
 窓から見える田圃とか通過する踏み切りの音も好き。
 痴漢にあっても一駅我慢して、乗車口を変えればやり過ごせる。

 でもその日はドアの傍にいけなかった。
 人身事故のせいで人が多くて、ドアの傍に行こうとする私のわがままな動きは人の波に
押し流された。吊革にも掴まれない一番嫌いな場所。煙草くさい。俯いて前の人の鞄を見
てる。見慣れた鞄。うちの学校の人。
「かや……相原さんじゃん、おはよ」
「ぁ、相川くん……」
 相川くん。男子の出席番号一番の人。私は女子の一番。入学式から最初の席替えまで隣
の席だった人。人見知りの私に構ってくれる人。「かや」ってなんて言おうとしたんだろ。
かやこ? なんで相川くんが私を名前で呼ぶんだろ。学校で誰にも名前で呼ばれたことな
い。
「今日、人多いな」
 相川くんが私を見てる。私は相川くんのネクタイの結び目を見てる。いつも綺麗な形。
器用な人なんだ。返事しなきゃ。
「ぇ……あの、今日……人身事故で」
 だから電車が遅れてて、人が多くて。私はドアの傍行けなくて、そしたら相川くんがい
て。

588:純情プレパラート(2/4)
07/09/19 15:54:23 PQQClnxQ
「相原さんって駅までチャリ?」
 チャリ……自転車。
「ぇ……うん。自転車」
「今日チャリ乗ったらさ、ギッタンバッタンいうわけ」
「パンク?」
「そうそう。漕ぐとギッタンバッタンってなるじゃん。しょうがないから走ってきた」
 相川くんの顔を一瞬だけ見る。汗びっしょり。髪が汗で張り付いてる。タオル貸したほ
うがいいのかな。
「足、速い……」
 相川くん足速いよね。速いよねって言ったら偉そうかな。でも私が走ってきたらきっと
遅刻してる。
「そうでもないって。チャリ使わないと近道できるし」
 私は目を泳がせて相川くんを見る。右手で吊革に掴まって、左手で鞄。ちょっと大きい
口。唇が荒れてる。髪が張り付いてる。目が私を見てる。どこ見てるんだろう。他の子み
たいにブラウスの第二ボタンを開けてたら相川くんも見たりするのかな。
「近道?」
「ん、ああ、うちって駅から直線で近いんだけど、道路通ってないから」
「遠回り?」
「神社抜けてショートカット。階段あるからチャリ通れないんだよな。ていうか神主に怒
られそうだし」
「……うん、怒られそう」
「だよなー」


589:純情プレパラート(3/4)
07/09/19 15:55:12 PQQClnxQ
 電車が揺れますのでご注意ください。
 いつものアナウンス。
 相川くんと話すのに一生懸命で、車内放送を聞き流す私。
「相原さん、揺れ―」
 彼がぼーっとしてる私に注意しようとしたとき、がくんっ。揺れた。
 今日はドアの傍じゃないから掴まる場所ない。ヤダ倒れる。周りの人に迷惑かける。脇
から強い力でひっぱられて止まった。倒れてない。強い力が肩甲骨の辺りを鷲掴みにして
私を引き寄せる。制服が引き攣る。相川くんの手だ。電車が逆に揺れた。彼の胸に飛び込
む形になる。車内がざわめいて落ち着いた。
「ぇ、ぁ……」
「あ、ごめん、相原さん倒れそうだったから」
 お礼言わなきゃ。
「ぁ……うん……」
 ありがとう。言葉が出ない。私はいつもそう。
 背中がもぞもぞしてる。
 相川くんが私の後ろの人と私の背中の間から手を抜こうとしてる。でも車内は混みすぎ
るほど混んでて、それ以上したら私はともかく後ろの人が怒りそうだよ相川くん。手の動
きが止まった。
 彼の手は結局そこに留まることにしたらしい。ちょっと気まずい。相川くんは左手がお
かしい動きにならないように気を使ってくれてるけど、でもそこブラの紐だよ。恥ずかし
すぎる。
 それから駅に着くまで二人とも黙ってた。左手が私の背中をしっかり支えてくれて、ま
た電車が揺れて、吊革、相川くん、私が一塊で揺れて、身体が触れて、耳まで赤くなって
た私はずっと俯いて、早く到着して欲しかったけど、このままでいたかった。
 相川くんはその間ずっと私を見てた。と思う。

590:純情プレパラート(4/4)
07/09/19 15:55:56 PQQClnxQ
 相川くんに抱えられるようにして電車を降りて、左手が自然と離れた。彼に触れられて
いた場所が急に涼しくなった。気恥ずかしくて彼の後ろについてホームを歩いていく私。
 そのとき彼のシルエットが不自然なことに気づいた。
「ぁ、あの、相川くん、鞄」
 そうなのだ。私が倒れそうになったとき、彼は左手の鞄を放して支えてくれた。降りる
まで彼の左手はずっと私の背中にあったから、彼の鞄はまだ電車の中。乗客の足元で踏ま
れてるかもしれない。
「あ、ちょ、やばいって」
「どうしよう」
 二人とも慌てまくって、ホームを右往左往して―相川くんも私も電車の中に大事な物
を置き忘れるのは初めてだったのだ―駅員さんに聞いたら、忘れ物は三駅先の終点で車
内点検のときに回収されることを教えてくれた。
 終点まで取りに行くと私たちは完全に遅刻だ。私も一緒に行くと言うと相川くんは言っ
た。
「相原は先行っててよ。二人とも遅刻したら家に電話来そうだろ。先生に事情話しといて」
「でも……」
「ほんと気にしないでいいって。つか楽しかったし」
 そう言って、相川くんはにこにこしながら、左手をにぎにぎさせた。
 私が思わず笑ったら彼も笑いだした。

 結局、相川くんの鞄は無事に戻ってきた。少し汚れていたけれど、親切な人が網棚にあ
げてくれたおかげで、ひどく踏まれたりもしていなかったみたい。
 それからどちらともなく電車の時間と乗車口を合わせるようになって、私たちは一緒に
登校するようになった。

591:いじょ
07/09/19 15:59:01 PQQClnxQ
告白編セクロス編と続くかも

592:名無しさん@ピンキー
07/09/19 17:10:03 z5EFEicM
GJ。早く続きが気になるな。


……ところで“いじょ氏”と“230氏”って別人だよ、な?

593:名無しさん@ピンキー
07/09/19 18:31:53 81L8ocV0
>>570 歪みの国って何だ?

594:名無しさん@ピンキー
07/09/19 18:43:37 THzr9fM8
>>593
ぐぐれ

595:いじょ
07/09/19 22:00:29 PQQClnxQ
230氏の投下直前だったんですね。空気読めずにごめんなさい。

596:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:13:27 MAwNXpJj
>>595



そんなことは気にしない気にしない
先に投下したもの勝ちだから
あと、GJ!!展開が非常に気になるな

597:名無しさん@ピンキー
07/09/20 11:31:39 LfXcGHxf
これはGJ。無口娘の独白という感じがよく出てる。

598:230
07/09/20 18:18:19 1oOHll9i
申し訳御座いません。
結局、モタモタしている間に事態を混乱させてしまい、
スレをご覧の方々、いじょ氏にご迷惑をおかけしてしまいました。
重ねてお詫び申し上げます。
また貴重なご意見を下さった方々、真に有難う御座いました。

これより、投下させていただきます。
見苦しい真似を重ねますが、作品をご覧になる前に諸注意、ないし“いいわけ”をさせて下さい。

今作には『エロ』も『萌え』も多分、殆ど御座いません。
どうか、期待だけはされないようお願い申し上げます。
また、前回投下させていただいたSSより、相当、気持ち悪い話になってしまっています。
どうか、気分が悪くなりましたら即座に切って捨ててください。

それでも構わないという方は、片手間にでもご覧戴けますようお願い申し上げます。

それでは投下致します。

599:クレイジー兄妹
07/09/20 18:20:25 1oOHll9i
―俺はシスコンである。

少なくとも、周りの人間にはそう認識されている。
ソレも当然だ。
携帯の待ち受け画像が妹の写真で、PCの壁紙、スクリーンセーバーも妹で、さらに目覚まし時計の音声も妹の肉声だ。
朝は、自慢の目覚ましで起き、朝食と弁当を作った後、妹を起こす。
そして、朝食を一緒に済まし、一緒に一緒の学校に登校する。
学校でも暇を見つければ、妹の教室に入り浸り、授業を覗き見たり。
で放課後は、二人とも帰宅部なので無理やり時間を合わせ、一緒に家路に着く。
家では、勉強を教えるという名目で妹の部屋に押し入る。
その時間を堪能した後、夕食を作り、団欒を楽しむ。その後、二人で家事。
さすがに風呂に一緒に入ったり、覗いたりはしないが、風呂上りの妹を鑑賞するためにゲームに誘ったりする。
いい感じの時間になったら妹を寝かせ、後は自分の時間。
まぁ、課題をやっつけたり、家事の残りをしたり。
そんなこんなで深夜になり、本格的に寝入る前に携帯の妹の写真に挨拶をして、寝る。

な? シスコンだろ?
………………。
……おい、ちょっと待て。
引くな。
距離をとるな。
やめろ! やめてくれ!!
そんな白い目で俺のことを見ないでくれ!!

自覚はしているんだ。
自分がどういう人間か。
自覚してはいるんだ。
でも、しょうがないことでもある、と思いたいのも事実。
なにしろ妹は、昼ドラみたいな親の人間関係のもつれで生まれてきたんだ。
そんな親共の馬鹿げた関係を間近で見てきた俺は、幼い頃から妹のことを守らなくちゃならないと自分に強いてきた。
俺が小学生のとき、俺と妹の血が繋がっていないことを酔った父に告白されてからは特に。
でも、それだけじゃない。
親がどうしようもないから、血が繋がっていないから、というだけではない。
そう、物理的にも精神的にも守ってやらなきゃならないほど、妹は本当にか弱いヤツなんだ。
小さいときから病弱で、いつも床に臥せっていた妹。
俺は、そんな妹の世話をいい加減な親どもに任されていた。
妹が熱を出せば看病し、妹が倒れれば医者に連れて行き、妹がいじめられれば助け、妹が勉強について行けなくなったら教えた。
時が経ち、人並み程度に生活できるようになった今でも、華奢で、繊細なのには変わりない。
病弱な性質の妹は、ソレに準じるように性格もか弱かった。
押しが弱く、人見知りも激しく、自分の言いたいこともいえない無口な性格だ。
無口。
いや、無口な性格なのは確かだ。
でもそれだけじゃない。
妹は脳の言語野に後天的な障害がある。
そのせいで妹は、極めて端的なことを、極めてゆっくりとしか話せない。
なぜ、そんなことになったのか。
ま、簡潔に言えば下種な元母親の、愚劣な行為によってそうなってしまったのだが。
話すとイライラするし、長くもなるので割愛する。
妹はそんなハンディを抱えながら、それでも生活できている。
本人の努力の賜物だ。
そんな妹は、(俺としては悪いことに)外見がいい。
俺の贔屓目じゃなく、本当にかわいいのだ。
一度も染めたことのない黒髪は足に届こうかいうほど長く、伏目がちだが大きな瞳は一点の曇りもなく澄んでいる。
また小さい頃から肌が弱いため夏でも露出しない肌の色は抜けるように白い。
低めの身長と、痩身の体は、まるで動く人形のようだ。
そんな外見を備えておきながらも、控えめで、おしとやかな性格なのだ。
これでモテないわけがない。
もらったラブレターは山の量。受けた告白数知れず。
最低でも一ヶ月に一回は妹に取り成してくれ、と学校の男子共が俺に相談に来る。

600:クレイジー兄妹
07/09/20 18:22:25 1oOHll9i
え?
『それで妹さんは誰かと付き合ったことがあるんですか?』だって?
……無いな。一度も。
ん?
『それじゃあ今まで告白してきた人達はどうしたんですか?』って?
………………。
ハハハハハ。
うん。
……潰した。
俺が全部、握り潰した。
エヘ☆

……まぁ、とにかく、妹―エリは、俺が守らなくちゃならないんだ。
行き過ぎた行為かもしれない。
もはや出すぎた感情なのかもしれない。
それでも、俺は今まで、エリの傍にいた。
ソレが正解だと信じて。

……ん?
『それって、待ち受け画面とか目覚ましとか授業覗いたりする行為とは関係ないような』?
い、いいじゃないか!
ちょっと、こっちこい。
見てみろ、このエリの画像を。
……ほら、な。
かわいいだろぉ?
俺がコレほどまでの愛情を注ぐのも納得、だろ?
え? 『アナタの妹さんは確かにかわいいが、アナタの態度が気に食わない』?
いや、だから!!
引くな!
そんな目で俺の事を見るな! 見ないでくれ!!
……おい、ちょっと!! まだ話は終わってない!
行くな! ちょっと、オイ! 行かないでくれ!!
………………。

閑話休題。

でも、間違っていたのだろうか?
俺がエリの傍にいて、エリを守り続けてきたのは。
本当は、俺の提示し続けた答えは不正解だったのだろうか?
だから、天罰とでも言うのか?
もし、たとえそうであっても受け入れられない。
受け入れることなんてできるはずがないだろう?

―俺が死んでしまったなんて。

俺が死んでしまったことはとりあえず置いておく。
どうせいずれ、人は死ぬ。
それがたまたま早かっただけ。
そう考えれば、理不尽だが、納得できなくもない。
……いや、本当は納得なんかできない。できるはずがないだろう?
生きたい。まだやりたいこと、遣り残したことがあるんだ。
生きたい! 死にたくない!! 助かるんだったら、なんだってする!!
………………。
……でも、もうソレも叶わない。そして、叶わないことは何より自分が実感している。
死んでしまった、ということは、死んでしまったということ。
それ以外のなにものでもない。
だから、とりあえず棚の上においておく。納得したことにする。
……そういうことにしておく。
だが。

601:クレイジー兄妹
07/09/20 18:23:32 1oOHll9i
妹はどうなる?
今まで、俺が生涯をかけて守ってきた妹はこれからどうすればいいんだ?
エリはまだ学生なんだぞ?
今まで、俺に守られてきたのに、どうやってエリがやっていけるというんだ?
……『両親がいるんじゃないですか?』、だと?
ふん、両親なんて当てになるものか。
あいつらの自分勝手な行いにどれだけ俺たちが振り回されてきたことか。
俺たち兄妹はそのたびに苦い思いをして、身を切るような感覚を我慢して生きてきたんだ。
………………。
そうだ。これからは、そんな両親の振る舞いにも、俺はエリを守ってやれない。
それどころか、学校の連中、道ですれ違う他人、言い寄ってくる親戚。
それら全てにエリは怯えなければならないじゃないか。
どうしよう。
どうすればいいんだ。
俺は。
こんな中途半端な状態じゃ、エリを守ってやるどころか、自分の世話さえ満足にできやしないというのに。

………………?
お前今なんていった?
『アナタが生きていようと、死んでしまおうと、妹さんはやっていける』?
『むしろアナタがいないほうがいい』?
……馬鹿な。何を言ってるんだ。
エリは華奢なんだ、病弱なんだ。お人よしで、人見知りで、押しが弱いんだ。
そんなエリが、俺なしで生活できるなんて……。
………………。
……なんだと?
『妹さんが自分ひとりで生きていくためのチャンス』、だと?
エリが自立する、チャンス……?
………………。
いや、だが、しかし。
……たしかに、俺がエリの面倒を一生見ることは不可能だったろう。
いつか袂を分かつ。
そんなことは当然だ。覚悟だってしてきたし、できているつもりだ。
だが今は、それでも傍に居たかった。傍にいて守ってやりたかった。
嬉しいこと、辛いこと、いろんなこと一緒に分かち合いたかった。共有したかった。
確かに、いずれは俺が守る必要もなくなる。
それでも、今はいくらなんでも早すぎる。
エリが自立するのはまだまだ早すぎだ。
今のエリには俺が必要なんだ。絶対。



……どういうことだ?
『あなたが納得するまでの猶予を与えます』……?
それまで、世界に留まってもいい、だと?
つまり、エリが自立できるまで、自立できたと俺が納得するまで、この世界にいてもいい、ってことか?
いや、でも、俺は死んだんだろ?
どうやって……。
! ……まさか。

―俺はシスコンである。ついでに妹、エリを見守る幽霊でもある。

……。
こんなところか。
わかった、猶予は俺が納得するまで。
納得して、成仏するまでってことか。
……今のうちに言っておくが、俺はまだ信じていない。
まだまだ、エリには俺が必要なんだ。
だから、俺が納得するのは、エリが死ぬまで無理かもしれないぞ。
それでもいいんだな?

602:クレイジー兄妹
07/09/20 18:25:03 1oOHll9i
……。
よぉ〜し。約束だ。
んじゃ、ちゃっちゃと、元の世界に戻してくれ。
エリが心配だからな。早くついていてやらないと。

俺の葬式の翌日、エリは元気に登校した。
………………。
え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
なんで!?
なんで、なんで!?
っていうか、ショックで登校できないとかあるだろう!?
お兄ちゃんいないんだよ!? 死んじゃったんだよ!?
ほら、隣にいつもいるお兄ちゃんがいないだろう!?
まぁ、そりゃ幽霊としての俺はいるが……。
それにしても、一日寝込むとかもないのかよ!?
ちょっと、それはないだろう、エリ!?
俺はもうエリが学校辞めてしまうんじゃないかとまで危惧していたというのに!
それが、なんで、なんでなんでなんで。なんで!?
どういうことなんだ!?
理解できない。
お兄ちゃん、全く理解できないよ!!
………………。
……ま、まぁ、元気なのはいいことだ。
いいことだと思い込むことにする。
それに、それでも、エリは寝過ごしかけたし、弁当だってコンビニのおにぎりだ。
ほ、ほら、俺がいないとどうにもならないじゃないか。
ね? 俺は必要な存在だったんだよ。
そんなことを必死で考えながら、規則正しく歩くエリの後ろを行く。
宙に浮かび、空を飛ぶこともできるのだが、まだ慣れていないので歩くしかない。
エリの後を歩きながら、それでも混乱からなかなか立ち直れないでいると、俺の後ろから誰かが駆けてきた。
ソイツは俺をすり抜け、エリの隣で足を止めると、足を止め振り向いたエリに話しかけた。
「……おはよう、水城」
ソイツは兄が死んだばかりのエリに気を使ったのか、トーンを落とした声でエリに挨拶した(ちなみに“水城(みずき)”とは俺とエリの苗字だ)。
エリは少し微笑むと、挨拶代わりに頭を下げた。
ソイツも、エリの事情を知っているのでソレが無作法だと怒ることはない。
前を向き、再び歩き出したエリの隣を同じペースでソイツも歩き出す。
俺はソイツのことを知っている。
たしか、『武田……なんとか』とかいう名前のエリの同級生でクラスメイトだ。
家から学校への距離は遠いのだが、通学路が一緒なので朝によく接敵する。
“接敵”。
そう接敵だ。
俺の勘だが、コイツはエリに好意を抱いている。
いや、まちがいなくエリに惚れているな。
そんなヤツと接触することを、“接敵”といわずになんと言う?
……まぁ、いい。
沈黙のまま歩き続ける二人。
武田は言いにくそうに口を開いた。
「お兄さんのこと……なんていうか、………その、残念、だったな」
ん?
なかなかいい事を言うじゃないか。
ほら、エリ。残念だっただろ? 残念だった、と言うんだ。涙なんかを流すとなお良い。
……ってぇ! 妹が悲しむかもしれないというのに、喜んでどうする! 俺!! 俺の馬鹿ぁ!!
しかし、エリは武田の発言に、静かに首を振る。
「………………」
「え? 『今も見守ってくれてるから寂しくない』?」
………え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
何ソレ!? ねぇ、何、ソレ!?
確かに今も見守ってるけど、見守ってるけど……!

603:クレイジー兄妹
07/09/20 18:26:39 1oOHll9i
その言い草じゃ、もう俺、思い出の人になってるじゃん!
遠い星空から見守る、『気のいいやつだった』的ポジションじゃん!!
早い! 早すぎるって!! エリ!!
せめて一ヶ月はもってくれ!
お兄ちゃんの名前を聞いただけで涙を流す、とかさぁ!
そういう、なんていうの? あの、あれだよ。
とにかく、思い出にするの早すぎだから! ね? エリちゃん!!
混乱する俺をよそに、武田も意外だったのか目を見開いている。
「あ、……そう、なんだ」
エリは首をかしげ、不思議そうに武田を見る。
「いや、ていうか、なんて言うのかな。ほら、水城ってよくお兄さんと一緒にいたからさ。もっとショック受けてるのかと思った」
武田の言葉を聞いて、少しエリの顔が曇る。
ソレを見て、武田は言う。
「あぁ、ゴメン。思い出させて」
すまなそうな武田に、エリは静かに首を振る。
「………………」
「『まだ傍にいてくれているから大丈夫』? ……。そう、か」
あう!?
確かに傍にはいるけどさぁ! いるけどさぁ!!
いないじゃん! 実際問題、いないじゃん!! 見えてないじゃん!!
ていうか、ちょっと、ホント、立ち直り早くね!?
エリってこんなに強い娘だったっけかなぁ。
『か弱い子』っていうの、俺の勘違い〜……?
いや、いやいや。勘違いなはずはない。エリはか弱いことは間違い、ない、はず。
でも。あれ〜? おかしいなぁ……。
だったらなんでぇ……?
そんなことを言っている間に、二人は学校につき、教室へ向かう生徒の群れの中に混じっていった。

教室でのエリはやっぱり落ち着いていた。
席に着いたエリにクラスメイトたちが次々に激励の言葉をかける。
俺は少し離れた位置でその光景を見守る。
……ふ〜ん、そうか。
俺の知らないところでエリは友達に、クラスメイトに恵まれていたのか。
ただ授業を覗いていただけではわからなかったクラスメイトたちの優しさに俺は初めて気づいた。
うんうん。そうか。そうだったのか。
今、エリの机の前で盛んにエリに話しかけている女子がいる。
この娘は確か……。
『ユウキ』とかいう娘だったはずだ。
ソレが苗字だか、名前だかは忘れたが、確かそんな名前だ。
彼女は明るい声で、エリのことを元気付けようとしてくれている。
よかったよかった。そんな友達もいたんだな。
俺が感慨深げに頷いていると、始業のベルが鳴りホームルームの始まりを告げる。
少女ユウキもエリの席から離れ、自分の机についた。
ふと、エリが携帯を覗く。
そして、そのまま表情が固まる。
俺は異変に気づき、エリの席に近づくと携帯の画面を悪いと思いつつ覗く。
そこには。

『エリ。今日、食べたいものはあるか?』

携帯の液晶には簡素な文章が表示されている。
それは俺がエリに送ったメールだった。
その日は珍しくエリに用事があり、夕食の用意がある俺は仕方なく一人で帰っていた。
途中買い物によるために商店街に入り、そこでメールを打った。
できるだけ、エリの希望に沿ったメニューを出すために。
そして、その直後。

俺は死んだ。



604:クレイジー兄妹
07/09/20 18:27:43 1oOHll9i
その後、俺が死んだことに関する緊急連絡は直ぐにエリに届いた。
ソレからは怒涛の流れだった。
多分、そんな中でエリは携帯メールを見る暇、余裕なんてなかったのだろう。
ほったらかしにされたメールは、そして、今、開かれてしまった。

教師がホームルームのために教室に入ってくる。
すぐさま、教師はエリの異変に気づく。
「おい、大丈夫か? 水城。顔が真っ青だぞ」
エリはその言葉に反応しない。
人形のように固まった表情のまま、涙が大量に零れ落ちる。
「お、おい。どうしたんだ?」
エリの息遣いが荒くなり、苦痛に耐えるように体を折る。
涙をボロボロと零しながら、苦しげに喘ぐ。
異変に気づいた教師はすぐさま保健委員に保健室にエリを連れて行くようにする。
当然、俺もソレについていく。
ふと振り向いた俺の視界には、教室の中で、呆然となった教師と生徒たちが、出て行くエリの背中を眺めているのが見えた。

「(っていうか、保健委員ってお前かよ……)」
ジト目でソイツを見る。
ソイツは過呼吸状態のエリにビニール袋を渡し、それで口を押さえるように指示した。
保健室の中には、俺とエリ、そしてソイツしかいない。
どうやら、保険医は外出しているようだ。……ふん、頼りになるな。
ベッドに座り込んだエリは未だに苦しそうにしゃくりあげている。
俺はそんなエリを眺めながら、心配する。
そして同時に、不謹慎ながらも安心した。
「(やっぱりエリには俺の死がショックなんだな)」
本心では相当傷ついていたのを必死に押し隠し、普段通りに、気丈に振舞っていたのだろうか。
そんなエリを俺は愛おしく思う。
「(ああ! 抱きしめて慰めたい! 昔のように頭を撫でてやりたい! 安心させるために声をかけたい!!)」
衝動は膨らみ、今すぐに行動に移したい!
だが、幽霊の俺にはそんなことはできない。
……そんなことは解っている。
だから、心底残念だが、試すことさえしなかった。
今、この場でエリを慰めることができるのは、小憎らしいことに保健委員のヤツしかいない。
ソイツは心配そうにエリのことを見守る。
沈黙の中、しばらくそのままの状態が続き、ようやくエリの状態が落ち着いてくる。
「(気の利かないヤツだな! 飲み物の一つくらいもってこい!)」
ソイツを睨みつける俺。当然、そんな意見は届かない。
「………………」
歯がゆい思いをしていると、エリは真っ赤な顔を伏せながら、たどたどしくソイツに礼を言った。
気の利かない憎っくきソイツ―武田は少しだけ微笑み、しかし、首を横に振る。
「僕のせいだろ? 水城がそんな風になったのは」
ん?
何言ってるんだ、コイツは。
エリも意外だったらしく、首をかしげる。
それに構わず、武田は続ける。
「僕が朝、余計なことを言ったから、思い出してしまったんだろ?」
そういうと、武田は勢いよく頭を下げる。
「本当、ゴメン。無神経なことを言ってしまって。……思い出させてゴメン」
エリは唐突な武田の行動に動揺を隠せず、オロオロとしながら首を振る。
「(ふ〜ん……)」
武田の言っていることは間違いなく勘違いだが……。
「(自分が謝るべきと思ったときには、ちゃんと頭を下げられるヤツだったんだな)」
俺は少し感心した。
今までは、妹に近づくただの敵だと思っていたが、どうやら見るべきところはあったようだ。
「(っていうか、死んでから妹に関係する人に目を向けられるようになるとは……。
ずいぶん俺は近視眼的な人間だったんだな……)」
そう自嘲する。
覗き魔のような、否、まさに覗き魔的な行為をして、ようやく人のことを正面から捉えられるとは……。
馬鹿げた話もあったものだ。当然、馬鹿なのは俺なのだが。


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