無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 at EROPARO
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350:名無しさん@ピンキー
07/07/25 23:55:46 hnwgZUDw
断りはいらないよ。
一週間後でも1ヶ月後でも構わないんで
できあがった時点で投下してくれればいい。

351:名無しさん@ピンキー
07/07/26 05:10:43 QLc5j37y
>>349ゆっくり推敲して自己最高の作品を投下してくれたまえ。


ずっと君の後ろ7mから無口になって見守るから。

352:名無しさん@ピンキー
07/07/26 12:14:08 xalQV6zc
7mって俺の真後ろじゃねぇか。やめてくれよ

353:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:24:31 UH8L4WzA
じゃあ俺は毎晩>>352の枕元で見下ろしているよ

354:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:40:57 25wGU1aT
耳元に熱い吐息がかかる。
無口な女だとは思っていたが、こういうときまでとは
下からしがみつく細い腕が愛しさを募らせる
潤んだ瞳は俺しか映さない

可愛い女だ

自分が、この女から離れられないことを理解した夜

355:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:50:33 h23S74ig
>>331
>紅茶がキーボードまみれになりました……

ちょwどんな紅茶だwww

356:名無しさん@ピンキー
07/07/26 18:26:47 EeZm8OaR
>>355
ネタに(ry

357:名無しさん@ピンキー
07/07/27 02:42:35 zCcXY0XW
>>354>>353の事を書いたのかと思って笑い死んだwww


スマソ

358:名無しさん@ピンキー
07/07/27 23:12:21 y9sWNqUp
ん?

359:名無しさん@ピンキー
07/07/28 05:19:47 kRXIr/kH
つまり>>354の耳元に熱い吐息がの部分が、>>353>>352の枕元で>>352の耳に熱い吐息を吹きかけてあげてるのかなと。

わかりにくくてスマソ

360:名無しさん@ピンキー
07/07/28 14:18:31 8w2/TJeS
流れ切って小ネタ。


ポンポン
弱々しいながらも気付ける範囲に叩かれて振り向くと
「・・・・・・」
無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場には俺を含めて二人しかいないわけだが。
「ん?どうした?」
「・・・背中・・・向けて・・・」
最低限聞き取れる声の言われるがままに背中を向けたのち、
「んで?」
と問えば、
「・・・文字・・・当てて・・・」
と人差し指を出しながら答えた。
なるほど、よくわからんが文字当てゲームをやろうとしてるらしい。
さして断る理由もないので
「よし、来い!」
と威勢よく言って背中に意識を集中させた。
それから多少間があった(その中に深呼吸するような音が聞こえた)のち、
スススっ、と背中をなぞってきた。

・・・・・・

「・・・ぉ、終わり・・・」
なんか最後のほうが震えていたような気がするが、長いことかけたものがようやく終わった。
だがそのおかげでわかりやすかったのですかさず振り向いて答えを言おうとしたら、
「・・・・・・」
顔を真っ赤にさせている無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場(ry
じゃなくて、
「ど、どうした!?風邪でも引いたのか?!」
「・・・ぇ、いやちが」
相手の言うことお構いなしに額に手をあてた瞬間、
しゅ〜、ぱたん
と音をたてて倒れ込んだ。「おい?!大丈夫か?!おーい・・・」



小ネタなうえ文才がないので続けられません。
あと携帯から書いたので見づらいかもしれないです。

361:名無しさん@ピンキー
07/07/28 17:04:21 x9inJUH3
GJ!
背中には「好き」とか書いたのかな?

362:名無しさん@ピンキー
07/07/28 19:51:02 A2PjOwBa
>>360
 GJ!
 本当、かわいいよなぁ

 短く効果的にまとめられる文才、テラホシス
 

363:名無しさん@ピンキー
07/07/28 22:38:21 H1o/blrY
800

ニャ━━ヽ(゚∀゚)ノ━━ン!!



364:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 09:12:54 NWfP2fgi
「シテ」

とか書かれたら・・・

365:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:18:03 /ZpyD5zq
おkするしかないだろ・・・・・ 常考

366:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:19:43 /ZpyD5zq
つーか今更だが改めて読み直してみると>>360氏文才ありすぎwww
しかも携帯でこのクォリティ
ぜひ続編書いていただきたいです。

367:名無しさん@ピンキー
07/07/29 22:39:50 64etFQfM
そろそろ誰か池戸美穂について語ってくれないか?

368:名無しさん@ピンキー
07/07/30 05:26:45 BhHZkoh5
>>360
かわいいねぇ〜
どうも無口っ娘はティセ=ロンブローゾを想像しちまうぜぃ!

369:名無しさん@ピンキー
07/07/30 10:36:55 YU9YGEB4
>>360
GJ
さぁ、そのクオリティのまま続編を投下するんだ!

370:coobard ◆69/69YEfXI
07/07/31 22:33:14 tfQb24Fp
初めまして。coobardと申します。
今から12レスほど投下させていただきます。
よろしくお願いします。

371:1/12
07/07/31 22:34:03 tfQb24Fp
《無口なミュウマ》

 ぼくは、いつもの保健室で目を覚ました。
 小さい頃から体が弱くて、よく保健室にお世話になっている。
 今日も朝礼で気分が悪くなり、ここに来てそのまま眠っていた。

 天井が仄明るい。
 グラウンドに反射している初夏の日射しを、窓から受け入れてるんだろう。
 ぼくのいるベッドは、つい立てに囲われている。外は見えない。
 隣のつい立ての向こうにはベッドがもう一つあるけど、いつも誰もいない。
 足元のほうにいるはずの、保健の先生も気配がない。

「静かだな……」
 ただ、わずかに体育の授業をやってる音が聞こえる。
 野球かな。高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 窓際から授業そっちのけで応援してるんだろう。

 ふいに、すぐ近くから鳥の羽ばたきが聞こえた。
 またカラスが来てるのかな……。カラス、多くなったなぁ。

 そんなまだ半分眠っている思考の中にぼんやりと、ある女の子の顔が浮かぶ。
「そう言えば佐藤さん、そんなのに全然興味なさそうだったな……」

 ぼくには最近、気になる女の子がいた。
 名前は佐藤 美馬(さとう みうま)。
 彼女はいつも一人で、教室の窓から外を見たりしてる。
 実は特に何を見ているわけでもなく、ぼんやりとしているだけみたいだけど。
 成績も運動も普通。話しかけられれば返事はするが、ほとんど単語だけ。
 会話が続いているのを見たことがない。
 誰にも興味が無さそうで、必要以上にしゃべらない。無口だ。何を考えてるんだか全然分かんない。
 でも、そこがぼくの興味を惹いた。
 知りたい。彼女が何を考えているのか。
 そう思った。

372:2/12
07/07/31 22:35:00 tfQb24Fp
 見た目は全体的に小さい。出るところも全然出てない。
 高校生なのに、第二次性徴のまだない少年とも少女ともつかない、そんな中性的な雰囲気だ。
 髪は普通に黒く、短めで肩より上。
 顔はけっこう整っている。でも、きれいというよりは幼い、かわいいといったほうが似合う気がする。
 瞳は印象的だ。明るい茶色、とび色っていうのかな、そんな感じ。

「でもなぁ……」
 ぼくは腕を上げて、それをもうかたほうの手で確かめた。なんて白くて細い腕。
 ぱたりと腕をベッドに落として、溜息をついた。
「こんなんじゃ、佐藤さんどころかどんな女子でも相手にしないよな……」

 ふいに人の気配がした。
「大丈夫? 佐藤さん」
 あの声は、うちのクラスの保健委員だ。どうやら佐藤さんを連れてきたらしい。
 佐藤さんが保健室に来るなんて珍しい。
 確かに物静かで無口な子だけど、いつも普通に元気そうだった。

 保健委員は佐藤さんを奥のベッドのほうへ連れて行く。
「先生いないけど、とりあえずそこのベッドで横になってればいいよ! それで大体、大丈夫だから」
 保健委員は大雑把な性格だった。

 保健委員が教室に戻ってしばらくすると。
 どこからか優しい花の香りが漂ってきた。佐藤さんの香りなんだろうか。
 ちょっと頭を回して、隣のつい立てのほうを見た。
 窓から入る明かりで、つい立てには佐藤さんのシルエットが映っている。
 彼女は横向きに転がっていた。シーツを被っているようだ。
 つい立てひとつ隔てた向こうに、佐藤さんがいる。その状況にちょっとドキドキした。

 彼女のほうを何となくそのまま見ていた。
 肩が動く。
 シーツの衣擦れと一緒に、かすかな金属音がした。
 なにかアクセサリーのチェーンみたいだ。

373:3/12
07/07/31 22:35:46 tfQb24Fp
 彼女が微妙に震えだした。
 吐息と声が聞こえてくる。
「……ふっ……うう」
 これは……泣いてる?
 どうしたんだろう。
 なにがあったんだろう。
 彼女は何か、つぶやいた。
 しかし、それは聞いたこともない言葉だった。
 でも。
 悲しげなのは、わかった。
 ぼくは……なにもできないんだろうか。
 好きな子が悲しんでるのに。

 いや。なにができるかじゃなくて、なにかしないといけないんだ。
 ワケがわからなくても、それでも、きっと。

 ぼくは息を大きく吸って、深呼吸した。
 そして。
「あ、あの佐藤さん?」
 声を掛けた。

 彼女の影が、びくっとなった。
「サハラ……君?」
 彼女のか細く頼りない声。
「う、うん。ぼく、体弱くてさ。よくここにいるんだ」

 返事はない。
 ぼくは心臓の鼓動をなんとかしようと右手で胸を押さえながら、話を続けた。
「佐藤さん、ちょっと聞こえちゃったんだけど、その、泣いて……ないかな」
 彼女の、すん、という鼻を鳴らす音が聞こえた。
「えと……ぼくでよかったら、話、聞くけど……」
 言った。言えた。

374:4/12
07/07/31 22:36:21 tfQb24Fp
 しばらく沈黙。
 怒った、かな。それとも無視、なのか……。

 ふいに、彼女のシルエットが大きく動いた。
 ベッドから降りて、ぼくの足元のほうへいく。
 つい立ての向こうから、ぼくのほうをちらりと覗いた。
 ちょこっと頭から鼻先までが見える。
 髪はくしゃくしゃで、その瞳は潤んでいた。
 そのまま、そこで立ちすくんでいる。

 また、無言の時が流れた。
 ぼくがその沈黙に耐えられなくなって、何か言おうとしたとき。
 ここが静かでなかったら、聞き取れないほどの声がした。
「……いいの?」
 ぼくは体を起こして即答した。
「あ、うん! もちろんだよ」
 彼女はじっと見つめている。
「あ、えと、そ、そこで立って話すのもなんだから、よ、よかったらこっちに……」
 それってすっごい誘い文句じゃん。なに言っちゃってるんだ、ぼくは。
「あっ、いやそれってヘンてか、やらしい意味じゃなくて、ごめんね、なんかその」
 照れ笑いしながら、彼女のほうを見ると。
 彼女もちょっと笑って。
 ぼくの太もものへんにやってきて、ちょこんと腰を掛けた。
 短い制服のスカートがひらりと揺れる。

 彼女のきれいな太ももに置かれた両手は、緊張のせいなのか、きゅっと握られていた。
 彼女の横顔はうつむき加減で。
 寂しそうに見えた。
 それだけで、ぼくの心は締め付けられた。
 なんとかしてあげたい。

375:5/12
07/07/31 22:37:00 tfQb24Fp
「それで……佐藤さん。なにか……あったの?」
 彼女はぼくの言葉を聞くと、スカートのポケットから何かを取り出した。
 握られたこぶしを、ぼくのほうへ突き出すと、ゆっくり開く。
 そこには銀色のペンダントがあった。さっきのチェーンの音はこれだったのか。
 ペンダントトップは卵形で、開くようになっているみたいだ。
 周りの飾りはものすごく細かく作り込まれている。
 よく解らないけど、相当高価な物に違いない。
「すごく、きれいだね」
 彼女は軽くうなずくと同時に、それをさらに突き出す。
「え、これぼくに?」
 彼女はちょっと笑って、首を横に振る。
「開けて」
「あ、そか、はは……」
 ぼくは勘違いに赤くなりながらそれを手に取り、ペンダントトップを開けた。

「えっ……これって……」
 そこにはどうみてもぼくの顔写真があった。
 だが、その肩まで写っている服装は見たこともないもの―なんというか貴族っぽいものだった。
「ぼくの写真……? にしては、こんな服持ってないし、撮られた記憶もないけど……」
 彼女を見ると、また軽くうなずいて。
 今度は寂しそうに笑う。
「それ、向こうであたしの好きだったひと」
 その言葉に対して瞬間的に色々な思考が巡り、ちょっとパニックになる。

 向こう? ってどこだろ。
 恋人がいたの? いや、好きだっただけなのかな?
 それがでも、ぼくにそっくりってどういうこと?
 なんでそれを見せたの?

 ぼくがそんな状態で、あわあわしながら彼女を見ると、その瞳が強く輝いていた。
「運命、信じる?」
「え……?」
「あたし、信じる」

376:6/12
07/07/31 22:37:45 tfQb24Fp
 彼女はペンダントを持ったぼくの手を上から握った。
 ぐっと顔が近づく。
「もう戻れない。でも……」
 彼女の顔が、赤みを増しながら更に近づいて来る。
 ぼくはパニック度と血圧がぐんぐん上昇した。
「え、え、なに」
 鼻が当たるほどの距離。
 彼女が不思議な言葉を囁く。
 意味は解らないけれど、心地良くて。
 ぼくは彼女の頬の熱を感じて。
 彼女は目を閉じて。
 ぼくの唇を奪った。

「あ……そ、そんな、佐藤さん……」
 長く熱く濃いキスの後、彼女はぼくの太もものあたりで馬乗りになっていた。
 ぼくの股間が、彼女の開けた制服のズボンから飛び出している。
 ぼく自身はもうすっかり、彼女の手の中にあった。
 彼女は少し楽しそうに、ぼくのモノのぬるぬるとした先端部分を弄ぶ。
「う、く……」
 彼女はくす、と笑ってぼくを見る。
「はじめて?」
「そ、そりゃあ……。あ、もしかして佐藤さんは違うの? あの、ぼくに似た人と、その」
 首を横に振る。
「好き、だっただけ。してない」
「そ、そうなんだ」
 こっくりと、うなずいた。
 ぼくは彼女に失礼だけど、少しほっとした。
 男の身勝手、というか……好きな子の処女は自分が貰いたい、なんて思ってる。

 彼女は火照った顔でぼくの手を取ると、自分の制服のすそから中へ入れる。
「ふっ……ん……」
 ぼくの手がお腹に当たる。なめらかな肌触り。
 ムダな脂肪がないどころか、本当に子供のように痩せている。
「はぁっ……おっぱい、触って」

377:7/12
07/07/31 22:39:14 tfQb24Fp
 ぼくは彼女の指示に従った。
 ハッキリ判る肋骨の上で、わずかに膨らんでいる胸。その先端が痛々しく尖っている。
「の、ノーブラなの?」
 恥ずかしそうに潤んだ瞳で、小さくうなずいた。
「そか……」
 ぼくは精一杯優しく笑って、彼女の乳首を親指で刺激した。
「ふぅ……んっ……はぁっ」
 小刻みに彼女の体が震えた。
 あごが上がって、背中が反る。
 その反応を見て、ぼくの股間に血が集まるのが判った。
 ソレを握っていた彼女が少し、はっとした。
「また、硬く……」
 彼女の手にぼくのモノから、鼓動が伝わる気がした。
「あ、はぁ……」
 彼女の眼がとろん、となる。
「も、もう、挿れたい」
 ひざ立ちになって、自分のパンツが覆っている大事な部分を晒した。
 その濡れてぬめぬめと光る割れ目からピンクの肉が覗く。
 そのまわりに毛はなく、つるりとしている。こっちも子供みたいだ。

 彼女はぼく自身に手を添えて、その部分にあてがった。
 ゆっくり腰を落としていく。
「ん! んん……」
 強い抵抗感がある。
 しかしそれさえも、強烈な快感の渦に巻き込まれている。
「あ、佐藤さんの中、すごく熱くて……っ! 気持いい!」
 彼女はあごを上げたまま、金魚のように口をぱくぱくさせている。
「く……はぁっ!」
 全体重がぼくの腰に乗った。
 根元まで、ぎっちり挿入された。
「あ、はぁ……ああ、うあ、はぁはぁ……っ」
 彼女はもう苦しそうではなかった。
 半分笑うように、口を開けて舌を突き出す。
 よだれがたれて、制服を汚した。
「サハラ君……きもち、いい……あたし、きもちいい」
 ぼくは彼女の腰を抱いて、中を突いた。
「うあっ! あ、ああ!」
 彼女の腕が、ぼくの首に回る。
 見上げると、その瞳は焦点が合っていない。
「はぅう……好き、好きぃ……ナオユキぃ」
 ぼくの名前を呼びながら、唇に吸い付いた。

378:8/12
07/07/31 22:39:54 tfQb24Fp
「ん! んぷ、ちゅる、んん!」
 ぼくはあまりの淫乱ぶりにびっくりしたが、こうなったらもっと激しくしてやろうと思った。

「ん! どう! 佐藤さん! 良いんだよね、これが!」
 スカートの中に手を入れ尻を掴んで、思い切り突き込んでいく。
「うあ! あ! ふんぐ! あぁお! う!」
 彼女は軽い体を仰け反らせて、喘いだ。
「ミ、ミュウマって、呼んで! ナオぉ!」
 ぼくは腰をさらに回すように突き上げる。
「ん! ん! ミュウマ、腰が動いてるよ、スケベだなぁ!」
 彼女の腰はぼくの動きに合わせて、そのぐちょぐちょになった部分を強く擦りつける。
「ああはぁ! あたし、スケベ! スケベなのぉ!」
 彼女の腰がうねうねと、快感をむさぼるように動く。

 ぼくはそれを放置して、両手を上にずらし、彼女の制服をまくり上げた。
 淡いピンクの乳首が両方、露わになる。
 その硬く小さな先っぽを、唐突に吸った。
「ひうっ!」
 一瞬、彼女の動きが止まる。
 ぼくは構わず、さらに吸って舐めた。
「あぶぁ……! くるるぁ! いふぃんくぉ! いふぃ……」
 意味不明の言葉が飛び出した。

 彼女の動きが止まったままになったから、ぼくはまた、突き上げた。
「ん! ナオ、いふぃん! くるるぅ!」
 彼女は泣きそうな声を上げた。
 よく解らないがどうやら、絶頂が近いようだ。
「ぼくも、ん! い、イクよ! イクイク……!」
 ぎゅっと締め付けられる感覚が、ぼくの射精感をより強くした。
 彼女はぼくを抱きしめる。
 脚もぼくの腰に絡まる。
「あ、な、中にでっちゃ、出ちゃうよ! い、いいの? ミュウマ!」
 彼女はいやらしい水音と共に腰をぼくの腰に打ち付けながら、囁く。
「ん、いい、中で、中にいい! いふぃん、う、いふぃんんん!」

379:9/12
07/07/31 22:40:45 tfQb24Fp
 不思議な、でも、かわいい鳴き声にぼくの我慢は限界に達した。
「あ、あっ! ミュウマ、出すよ出すよ出すよっ! うっうう!」
「ナオナオナオぉ! いふぃ! いふぃいふぃいふぃぃ!」
 ぎしぎしと安物のベッドが激しく軋んだ。
「うあぁぁ―ッ!」
「いぎぅ―ッ!」

 ぼくたちは、思い切り果てたあと。
 狭いベッドで、抱き合いながら微睡んでいた。
「ミュウマ……好きだ……」
 彼女の髪をくしゃ、と掻いた。
「ん……ナオ。好き……」
 初めてがこんな経験で良いんだろうかとか、それにしても誰も来ないってどういうことだろう、とか。
 そんなことをぼんやり考えていると。
 ベッドの片隅に、いつの間にか黒いオウムのような鳥がいた。
 くくっと頭をかしげると、急にしゃべった。
「ミュウマ様。ついに本懐を遂げましたか」
 ミュウマは上半身を起こすと、こっくりとうなずいた。
 黒い鳥がまた、頭をかしげた。
「ふむ。では、魔法を解きましょう」
 ミュウマは、ぼくに軽いキスをしてベッドを降りた。
 元々いた隣のベッドへ、手を振りながら戻る。
 鳥が一歩近づいて、首を上下させた。
「ナオユキ殿。ありがとうございます。これからも姫をよろしく頼みますぞ」
「は、はぁ」
 思わず、応えてみたものの、ワケがわからない。
 鳥が頭を左右に振った。
「その顔は、何が起きているのか判らないといったご様子ですな。では、説明しましょうぞ」


380:10/12
07/07/31 22:41:39 tfQb24Fp
 鳥―執事ということらしいが、彼の言うにはこうだ。

 彼女は、一年前まで別の世界にある王国の姫だった。
 悪い魔法使いに追われて、秘められた魔法でこの世界に来た。
 その魔法は命はあるものの二度と帰ることは出来ないという過酷なものだった。

 魔法の力で、こちらに来たときには、もうミュウマは“ここに居る”ことになっていた。
 もちろん、執事も一緒だ。
 佐藤というのは、こちらの両親の名前だ。

 まだこちらでは一年しか経っていないから、こっちの言葉があまりしゃべれなくて、ほとんどが単語の返事になってしまう。

「さらに、ナオユキ殿は姫の思慕されていた隣国の王子の、こちらでのお姿なのです」
 うーん……にわかには信じられない。
 でも、もうこんな普通にしゃべる鳥とか目の前にいるし、信じるしかないかぁ。
「ですから、あなたに逢った時の姫の喜びようは……」
 てか、そんなの全然気付かなかったんだけど。
「姫はこちらでは言葉も拙い上、あのように内気なお方」
 ちらっと彼女のベッドのほうを見ると、最初と同じ姿勢で寝転んでいる。
 あれは……照れてるんだろうか。
「ですので、なかなか打ち明ける機会がございませんでした。
ところが、今日、あなたさまがこちらで寝ておられたところへ、偶然にも恋に憔悴された姫が来られて……」

381:11/12
07/07/31 22:42:26 tfQb24Fp
 あー! それでペンダントを見て泣いてたのか。くぅ。なんてかわいいんだ。
「ありがとう、だいたいわかったよ。執事の、えと……」
「エルシャーロットデンバームヘンデル二世……もっぱら、エルと呼ばれております」
「エル、事情はわかったよ」
「ふむ。それでは今度こそ、魔法を解きましょう。ちなみに、これは時間がゆっくり流れるという魔法です」
 気付かなかったけど、そう言えばかなり経ったはずなのに外の明るさも全然変わってない。
「では、大切なことですのでもう一度、言いますよ。姫をよろしく頼みます」
 そう言うと、ばさっと羽を広げて天井のあたりをぐるぐる飛び回った。
 なにか呪文のようなものを唱えている。
 優しい花の香りがする。
「これは、最初、ミュウマがここに来たときに嗅いだ……そうか……全部、エルが仕組んでたのか……」



382:12/12
07/07/31 22:43:34 tfQb24Fp
 ふと気付くと、ぼくは教室にいた。
 時計を見ると、まだ一時間目の途中だった。
 窓のほうから高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 そちらを見るとミュウマがいつものように外をボンヤリと見ていた。
「え……と……夢?」
 そう思ったとき。
 ミュウマがぼくの視線に気が付いた。
 スカートのポケットから何かを取り出して。
 こぶしから、光る卵形のペンダントトップを少し垂らした。
「あ……」
 彼女はそのとき、ものすごくキレイに、この初夏の太陽みたいに笑ったんだ。

《end》


383:coobard ◆69/69YEfXI
07/07/31 22:44:48 tfQb24Fp
以上です。
お読み頂いたかたには感謝いたします。
それでは失礼します。

384:名無しさん@ピンキー
07/07/31 23:24:03 nprGLKwo
>>383
GJ!ミュウマエロかわいいな。
トリップからエロい職人さん、続きはありますか?

385:名無しさん@ピンキー
07/08/02 04:43:36 dMM9dVFC
>>383GJ!!俺も続き期待

386:名無しさん@ピンキー
07/08/02 10:13:42 X6llqWXH
>>383
GJ!

確かにコテがエロいwwwww

387:名無しさん@ピンキー
07/08/02 12:50:49 MeSIpPbv
GJ!続きwktk


388:名無しさん@ピンキー
07/08/03 16:14:36 3QUYmYoE
とりあえずコテトリでググると吉

389:名無しさん@ピンキー
07/08/04 04:19:45 6bh9T3XI
保守

390:名無しさん@ピンキー
07/08/04 19:04:14 wRAHo/Nk
>>388
トリップだね。マチガタ

391:名無しさん@ピンキー
07/08/04 23:15:12 3ZdJ0psI
>>390
いや、ごめん、そう言う意味でいったんじゃあないんだ
>>383が書き込んでるコテトリをググるといいよ、って言いたかった

392:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:52:01 x4H7LnrF


393:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:51:12 j4Yjr9JS
こんにちは、お久しぶりです。七月投下ができずに愕然としていました。
以下に投下します。縁シリーズ続き。今回はストーリー重視です。

394:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:52:16 j4Yjr9JS
『縁の滅 揺蕩う少女』



 十一月。
 霜月の空気は肌寒く、季節はあと一歩で冬に辿り着くところまで来ていた。
 街は徐々に様変わりを始め、人々の服装も厚みと枚数を増している。商店街では一ヶ月先のクリスマスに向けて装いを改め、駅前にはイルミネーションの鮮やかなツリーが立てられた。
 依子はそんな駅前のオープンカフェで、注文の品を待ちながら、人の波を眺めていた。
 土曜日の午後。人の数はなかなかに多い。平日でも休日でも、賑わいは常にあった。
 房総半島の一隅にある街、神守市。
 百万都市にはまったく届かないが、交通のアクセスが行き届いているため活気を呈している街。
 かつてこの街は、彼女の家の一族によって統べられていた。
 一族の名を冠し、霊能によって統御された街は、明治初期までは神守の手にあった。
 しかしそれも時代の流れに飲み込まれ、今ではどこにでもある地方都市に様変わりしている。
 神守家は少し離れた緋水という土地に本拠を置き、今では市の名に跡を遺すのみだ。
 神守家そのものにとってはあまり意味を為さなくなった街である。しかし依子はこの街に複雑な感情を抱いていた。
 この街は好きだ。八年前から住んでいるこの街には、人生の半分の年数が詰まっている。そしてその時間はこれからさらに積み重ねられていく。
 友達がいる。家がある。居場所があって、依子はそこで生きることができる。
 嫌いなわけがない。
 それでもこの街を素直に愛せないのは、街の至るところに神守の名が、影が見えるためだろう。
 東の川、西の道、南の海、北の山、それぞれに冠されるはやはり神守の名。
 駅も病院も学校も神社も、同じ名前がつきまとっている。
 依子が名乗れなかった苗字を、この街は持っている。
 くだらないことなのだろう。実際依子は執着を奥底に溜め込んでいるわけではない。未練はあるが、もうあらかた流れてしまった。
 微かに、胸の内に名残があるだけで。
 だからこの街に対して依子は、好意と、僅かばかりの懐かしさや寂しさを抱く。
「お待たせしました」
 ぼんやりと物思いに耽っていた依子の前に、注文のチョコレートパフェが届いた。飲み物を頼むことが多かったこの店では、初めて食べる品だ。
 スプーンを手に取り、クリームをすくう。口に運ぶと濃厚な甘さが広がった。
 空を見ると、秋の薄い陽光が降っている。夏よりだいぶ高度を下げてきている。
 青空とはいかない。白を混ぜすぎたかのように、空に広がるは白っぽい水色。
 道行く人の波は、昼下がりの午後も落ち着く様子はなかった。
 依子はほんのり冷たい甘さを舌に覚えながら、そんなありふれた街を眺めている。


 その日、最初に会ったのは同い年の少女だった。
「……依子さん?」
 水本静梨はカフェの前で足を止め、小さく首を傾げた。
「久しぶり、静梨ちゃん」
 にこやかに手を振って返すと、静梨は小走りに寄ってきた。
「久しぶり! 元気だった?」
 はきはきした声音に依子は少しだけ驚く。夏に会ったときはもうちょっとおとなしい印象だった。
 しかし考えてみれば、あのときは声を聞いていないし、笑顔もなかった。

395:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:55:22 j4Yjr9JS
 依子は冗談めかして答える。
「元気も元気。元気すぎて死んじゃいそうなくらい」
「ダメじゃん。……あのときはありがとうね、お見舞いに来てくれて」
「ううん。あなたも元気そうでよかった」
 社交辞麗ではない。彼女に降りかかったことを思うと、心底からよかったという気持ちが生まれる。
 静梨は照れ臭そうに笑み、
「守さんのおかげだよ。あの人が私を支えてくれたから」
 いとこの名前を出されて、依子の心が小さく揺れた。
 遠藤守。二十歳の大学二年生。
 あのお人好しないとこの『お兄さん』は、夏に静梨と出会い、彼女を助けた経緯がある。
 静梨はそれ以来守に好意を抱き続けている。直接静梨からその想いを聞いたわけではないが、依子には一目瞭然だった。
「ところで今日はどうしたの? こんなところで」
 不思議そうに問いかけてくる静梨。
 依子は答えた。
「ちょっとした趣味」
 静梨の眉が寄る。
「……趣味?」
「そう。人間観察」
 答えて正面に視線を向ける。灰色の道路を行く人の波は少しは収まってきていた。
「……よくここに来るの?」
「休みの日に結構ね。いろんな人たちが見れておもしろいよ」
 静梨が合わせるように、依子の視線の先を追った。昼下がりの時間帯に子供連れの主婦や若いカップルが通りすぎていく。
「おもしろい……かなぁ」
「いっしょにどう?」
「……人間観察?」
「街の様子を楽しむと言い換えてもいいけど」
「……遠慮しとく。私には合わないかも」
「じゃあお話ししようよ」
「それなら喜んで」
 依子の提案に静梨は頷き、テーブルの対面に座った。それからやって来たウェイターにコーヒーを一杯頼む。
「静梨ちゃんって神高だっけ?」
「え? ……ああ、学校の話? 私立はお金かかるから……。依子さんは?」
「明宝」
「すごっ。頭いいんだ?」
「成績はいつも平均だけどね……」
 神守市には三つの高校が存在する。公立の神守高校、同じく公立の福山工業高校、そして私立の明宝高校である。
 神高は学費の安い公立校なので、私立に行く経済的余裕のない市内在住者の多くが通っている。市内には同じ公立の福高もあるが、偏差値の低さがネックになっている。
 一方明宝は、普通科、商業科、理数科と三つの学科を有し、全校生徒二千人を超えるマンモス校である。特に理数科は優秀で、他県からの受験者も多い。
「私は普通科だし、特に部活もやってないからすごくもない。すごいのは一部の人たちだよ」
「私から見れば充分すごいけどね。商業科はともかく、普通科も結構難しいんでしょ?」
「宿題が多いのが困りものだよ……」
 二学期に入ってから課題の量が一気に増え、そのことを思うと憂鬱になる依子である。
「……まあ進学校だし、それは仕方ないよ。依子さん要領良さそうだし、大丈夫じゃない?」
 慰めるように静梨が言う。
 依子は微かに顔をしかめた。
「あのさ静梨ちゃん、さん付けやめない? 言いにくいでしょ」
「え、……じゃあちゃん付けで?」
「いいよ。そっちの方が友達って感じがするから」
 同い年の子にさん付けで呼ばれるのは、少々こそばゆい。
 ウェイターがコーヒーを運んできた。静梨は受け取ると、角砂糖を一個、黒い液体の中に落とした。スプーンで軽くかき混ぜ、そっと口をつける。
「ところで、守さんは元気?」
 再び出されるいとこの名前。
 依子は自身の心が煙るのを感じた。
「……さあ? 最近会ってないからわかんない」
 本心とは別に、そっけない答えを返す。
「会ってないの? なんで?」
「別にいつもいっしょなわけじゃないよ。ただのいとこなんだし、不思議でもないでしょ?」
「……」
 静梨は口をつぐむ。
 が、それも一瞬で、すぐに口を開く。

396:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:59:46 j4Yjr9JS
「一つ訊いていい?」
「なに?」
「守さんのことどう思ってるの?」
 投じられた問いは直球だった。
 静梨の顔は真剣そのもので、からかいの色は微塵もない。
 依子は─言葉に詰まった。
 静梨は何も言わない。ただ依子の答えを待っている。
「……別になんとも、って言っても納得しないよね」
「答え方によるよ」
 どうにもはぐらかせる雰囲気ではないようで、依子はそっと息を吐いた。
「大切な人だと思う。でも、静梨ちゃんみたいに真っ直ぐな想いじゃないかも」
「……どういう意味?」
「近すぎるとそういう目で見られなくなるってこと」
 底のチョコレートはビター質が強い。スプーンで口内に運ぶと甘苦い味が全体に広がっていく。
 守に対する感触はこのパフェの味に近い。遠くから見ている分には甘そうな雰囲気しか感じられないのに、実際には苦味を含んでいる。
 人は皆そうなのだろう。他者を深く知るということは、酸いも甘いも知るということだ。依子は守の良いところも悪いところも知りすぎてしまっている。
 守は自分にとって大切な存在だと思う。だがそれは、兄弟姉妹の関係に近い。依子にとって彼はいとこの『お兄さん』なのだ。
「兄に恋愛感情を抱くのは……違う気がするよ」
「……依子ちゃんにとって、守さんは兄なのね」
「とびきりお人好しな、ね」
 静梨は微笑した。
「私はあの人が好き」
「……」
「だから依子ちゃんが羨ましい。誰よりも近くにいて、あの人に愛されているあなたが羨ましい」
「……」
 ひゅ、と秋風が小さく吹いた。
 依子は少しだけ肌寒く感じた。
「……憎いの?」
 こういうのも修羅場と言うのだろうか。ずれた思考から生まれた問いはかなりストレートだった。
 静梨はゆっくりと首を振った。
「羨ましいだけ。まあちょっとだけ、嫉妬はあるかもしれないけど、あなたが憎かったりはしないわ」
「諦めるの?」
「今のところは、ね。でもチャンスがあればいつでも狙っていきます」
「諦めてないじゃん」
 突っ込むと静梨はくすくす笑った。つられて依子も口元が緩む。
 この娘はなんて強いのだろう。依子は感嘆の思いで同い年の少女を見つめた。
 もしも自分が同じ立場だったら、こんなにも吹っ切れた顔は作れないだろう。未だに昔の名残に囚われているような自分には。
「しかし守さんも大変ね」
「え?」
「だって好きな相手に兄としか見てもらえないんだから。どうすればいいのかしら」
「……」
 依子は反応に困った。
「あれ、どうしたの? ……守さんの気持ち、初耳だったとか?」
「ううん。知ってる。こないだ告白されたから」
「─。なんて言われたの?」
「…………」
 沈黙。
「……そんな固まるほどのこと言われたの?」
 依子はしばし悩む。はっきり言うべきかどうか。しかしあれは、
 思い出すと顔が熱くなる。思えばあれは生涯でも最も恥ずかしい瞬間だった。
 少しだけ、ひねって答えた。
「……いとこ同士って、結婚出来るらしいよ」
「? 知ってるけど……って、え?」
「……」
 静梨の驚いた顔はなかなか見物だった。

397:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:03:19 j4Yjr9JS
 一時間程話し込んだところで急に静梨の携帯電話が震えた。ちょっと、と言って静梨は席を立つ。
 依子は軽く頷き、離れていく彼女を見つめていた。隅の方で電話に出る静梨は驚いた表情を浮かべている。
 目の前の空になったパフェのグラスに目を向ける。なかなかおいしかった。舌に自信はないが、これはいける。と思う。
 手持ち無沙汰になった依子は近くのウェイトレスを呼び、オレンジジュースを注文した。
 ウェイトレスと入れ違いに静梨が戻ってきた。
「ごめん! おばあちゃんに呼ばれたから、私行くね」
「あ、りょーかい。それじゃまたね」
 静梨はぺこりと頭を下げると、テーブルにコーヒー代を置き、バス停の方へと小走りに駆けて行った。
 再び一人になった依子は、ぼんやりとテーブルに両肘をついた。組んだ手にあごを乗せ、薄い空を見上げる。
 たそがれながら静梨のことを思う。急な呼び出しだと思ったが、祖母に大事にされているのだろう。そして静梨も大事に思っているに違いない。
 彼女の胸には、とても暖かい縁糸が見えていた。あれはきっと祖母に対するものだったのかもしれない。
(うらやましいのはお互い様かもね)
 あんな風に素直に肉親を想えたら、きっと心のわだかまりもなくなるのだろう。名残など吹き飛んでしまうに違いない。
 溶けそうに白い雲がのんびりと流れていく。人の数も落ち着いて、穏やかな空気が世界を包んでいる。
「ため息ものだなぁ……」
 意味のない独り言を呟きながら、依子はジュースが来るまでずっと空を眺めていた。


 十分後。
「あれ?」
 どこかで聞いたことのある声が依子の耳を打った。
「依子……か?」
 意外そうな声の調子。
 顔を巡らせると、斜め向かいにさほど歳の変わらない少年が立っていた。
 まっすぐな質の髪につり上がり気味の目。依子は眉を上げた。
「ああ、マサハルくんか」
 沢野正治。夏に少しだけ話をした相手だ。友達というには遠いが、他人というほど遠くもない。
 正治はなぜか顔をひそめた。
「久々に会ったのに随分そっけないな」
「あ、ごめんごめん。じゃあ改めて……久しぶり!」
「おせえよ」
 つっこむ少年。依子はくすりと笑う。
「こんなところで一人で何してんだ? ……また誰かにちょっかいかけるつもりか」
「……もうちょっと言い方を考えてほしいな。まあ確かにちょっかいかもしれないけど」
「いや、そういうつもりじゃない。お前にしかできないことなんだから、誰かにとって大事なことだと思うよ。その、縁が見える力っていうのは」
 正治は落ち着いた調子で言う。前に会ったときもそうだったが、この少年はあまり冗談を言ったりするタイプではないようで、そのためにまっすぐな言葉だった。
 依子が持つ、縁を見る力。
 彼女が縁視(えにし)と呼ぶそれが何のためにあるのか、それは彼女自身にもわからない。
 だからこそ、それは彼女の判断の下で使われなければならない能力だった。意味も、責任も、彼女が決めることだ。
 結局依子は人のためにこの力を使っている。依子が正しいと思えることのために。
「これでも感謝してるんだ。会って、ちゃんとお礼を言いたかったしな」
「縁が繋がっててよかったね」
「まだ、繋がってるのか?」
 依子は自分の胸に視線を落とす。
「そろそろ切れそうなくらい細くなってるけど」
「切れたら会えなかったか?」
「さあ、どうかな」
 未だに縁の原理も法則も見出せない依子には、そんな曖昧な答えしか返せない。
 縁糸が繋がっていることで、互いに何らかの影響を及ぼし合っているのは確かだ。想いや行動がそれに引っ張られるように揺れ動く。
 だからといって逆らえないわけではない。
 依子は人の意識を縁に繋げてやることで、その者がより強く縁の繋がりを意識できるようにすることができる。そうすればその者の意識次第で縁の方向性は変わりやすくなる。
 人の想いや行動で、縁もまた変わるのだ。それは相手が物でも同じだ。縁は確かなものであると同時に、気まぐれに揺蕩うものでもあるのだ。
 依子は、本当にささやかなおせっかいを焼いているにすぎない。要は本人次第なのだから。
「でも、お礼を言いたいってことは、その人とは仲直りできたんだね」
「ああ、お前のおかげだよ。ありがとうな」
「マサハルくんが自分で頑張った結果だよ。私は手伝っただけ」
 正治の胸元を見ると、他のよりも温かく太い縁糸が見える。きっとうまくやってるのだろう。

398:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:06:12 j4Yjr9JS
 そのとき、正治の顔がなぜか曇った。
「どうしたの?」
「いや……お前にはいるのかと思って」
 依子は怪訝に思い、目を細める。
「何が?」
「お前は誰かを手伝う。それで俺みたいに救われる奴もいる。でも、お前には誰かいるのか?」
「……」
 それは想い合える誰かだろうか。それとも救ってくれる誰かか。多分両方だと思う。
 想ってくれる人はいる。今の家族もそうだが、いとこのお兄さんが依子にはいる。
 しかし守の気持ちと依子の気持ちには差異があるし、助けたり助けられたりという関係でもない。
「私は別に困ってないし、必要ないんじゃないかな」
「いずれ必要になるかもしれないだろ。誰かが支えになってやらないと、一人じゃどうしようもないんだし」
 ぶっきらぼうな口調だが、真摯さは伝わってきた。
 依子はにっこり微笑むと、小さく手招きした。
「まあ立ってないで座ろうよ。暇ある?」
「暇っつーか待ち合わせしてるんだけどな。まだ来てないみたいだ」
「彼女さん?」
「この街とは違う学校に通ってるんだけど、進学校だから土曜日も補習授業あるんだと」
 ということは電車通学か。依子はついにやける。
「じゃあ毎週迎えに来てるんだ。すごーい、優しいんだね」
「優しさは関係ない。この店のコーヒーが好きだから来てるだけだ。駅前で便利だしな」
 素直じゃない反応は見ていておもしろい。
「じゃあ彼女さんが来るまでお話ししようよ。てゆーか彼女さんのこと聞きたいな」
「……お前はお前で暇なのな」
「うん。だからマサハルくんに会えたのは丁度よかった。暇潰しさせてよ」
「……」
 うんざりした表情で正治は依子をねめつける。
 反対に依子は愉快な気分を隠しもしなかった。
「……まったく、感謝の気持ちを忘れそうになる」
 正治は対面の椅子を引いてどっかりと腰掛けた。ため息をつきながら一言。
「お礼がわりに付き合ってやるよ」
 変に義理固い台詞に依子は苦笑した。


 それから二十分。
「まさくんお待たせー」
 呼び掛けてきた声に、正治は後ろを向いた。
 可愛らしい少女だった。大きな瞳が嬉しげに細まり、肩口辺りで揃えた髪が笑顔に合わせて小さく揺れる。
「ゆかり、学校終わったのか?」
「うん、ちょっと日直で遅くなっちゃった。……その娘は?」
 目を向けられて、依子は微笑みを返した。軽く手を挙げてチャオ、と言ってみる。
「はじめまして、依子です」
「は、はじめまして。……?」
 困惑気味に首を傾げるゆかり。仕草がなんとも愛らしいと依子は思った。
「ねえまさくん。この人は友達?」
「知人。たまたま会っただけ」
 そっけない言葉に依子は苦笑した。ゆかりについてからかうように質問攻めしたことを、根に持ったのかもしれない。
 時刻は四時前。
「じゃ、私行くね」
「は?」
 依子はおもむろに席を立つと二人に対して言った。
「あなたたち、本当にわかりあってるんだね。これからも仲良くね」
 正治は呆気にとられたかのように口をつぐんだ。

399:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:08:33 j4Yjr9JS
 すると代わりのようにゆかりが頭を下げてきた。
「なに?」
「あ、その、なんだかあなたにお礼を言わなきゃいけないような気がしたから……」
「……」
 依子は正治に顔を向けると諭すように言い放った。
「マサハルくん、大事にしてあげないとダメだよ。こんなにいい娘、滅多にいないと思う」
「言われなくてもわかってるよ」
 おもしろくなさそうな少年に薄く笑むと、依子は奥のレジへと足を向けた。


 勘定を済ませてカフェを出ると、空にはぼんやりと淡い朱が滲み出ていた。
 今日は珍しい日だったのかもしれない。もう会うかどうかわからなかった人たちと再び出会い、いろんな話をした。そしてとても楽しかった。
 縁糸はまだ繋がっている。また会う日が来るかもしれない。普通に連絡すればいいとも思うが、依子は今時携帯電話も持っていない。
 やっぱり買った方がいいだろうか。電話越しには縁は感じられないので、あまり欲しくはないのだが。そのためよく守にぼやかれる。
 依子は夕時の道をのんびりと歩く。
 人波はそこそこ。駅から離れていくにつれてその波は小さなものになっていく。
 この時間帯は嫌いではなかった。季節の為す肌寒い空気と空を覆う朱の色が、クラシックを奏でるように美しいこの雰囲気が。
 本当は街中よりも田舎の方がより好きだ。もっと周りに自然がある、静かな環境の方が。
 小さい頃に住んでいた、緋水の実家のような。
 未練がましいと自分でも思いつつ、依子は裏路地に入った。こちらから公園を抜ければバス停により近い。
 普段誰も通ることのない道を進もうとして、依子は足を止めた。
 先の方に、小さな女の子が立っていた。
 歳は十三、四くらいだろうか。自分よりもずっと小さい。無表情な顔は整っていたが、愛想に欠ける。右手には不釣り合いなトランクを引いて、ぼんやりとうつむいていた。
 別に外見や様子に変なところがあったわけではない。
 ただ、依子にだけは不思議に見えた。
 その少女は周りとの縁がほとんど見られなかったのだ。
 よく見ると微かに薄く細い縁糸がいくつか伸びているが、ほとんど切れている。消えていくものもあり、縁は無いに等しい。
 唯一、一つだけ胸の中心から太い糸が生えている。しかしその先はどこにも繋がっておらず、すぐ近くの虚空で途切れていた。まるで空中に投げ掛けた釣り糸のようだ。
 依子は一瞬ぼう、と立ち尽くした。
 少女が視線に気付き、こちらを向く。
 依子は慌てて言葉を紡いだ。
「ごめんなさい。まさか人がいるとは思わなくて」
「……」
 少女は小さく首を傾げたが、すぐに頭を振った。
 気にしてない、といった程度の意味だろうか。言葉はないが、なんとなく動作で意思を読み取る。
 少女は依子をじっと見つめる。
 依子は若干ながら落ち着かなくなる。言葉がないのもあるが、それよりも少女の縁があまりに希薄なので。
 それでもほっとけないと思ったのは、縁視の力を持つ者としての責任感があったためかもしれない。一人よがりでもそれをなしにはできない。
 だから、
「ねえ、ちょっといいかな?」
 気付いたら依子は少女に話しかけていた。
 少女は特に反応を見せなかったが、やがてこくりと頷いた。

400:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:11:39 j4Yjr9JS
 路地を抜けた先の公園の中、二人はベンチに座っていた。
 駅周辺にはもう一つ大きな公園があるが、そちらは反対方向だった。こちらの公園は二回りは小さい。
 だからだろうか。公園内には他に誰の姿もなかった。
「私、依子。依頼の依に子どもの子。あなたは?」
「……」
 少女は答えない。
「……言いたくない、とか?」
 ふるふると首を振る。依子の頭に疑問符が浮かんだ。
「えと、」
『みはる』
 少女が初めて口を開いた。
「え?」
『美しいに、季節の春で……美春』
 春のように澄みきった、美しい声だった。
 聞いた瞬間鳥肌が立つような、異様とまで言えるかもしれない質を感じた。未成熟な歳のせいもあるのかもしれないが、依子は小さく息を呑む。
「……歳、訊いてもいいかな?」
 動揺を気取られないように、依子は取り繕いながら尋ねた。
 美春と名乗った少女は、右の指を二本立てた。続けて左手の指を三本付け加える。
 一瞬意味を図りかね、
「二十……三?」
 うわ言のように呟くと、依子は驚きのあまり固まってしまった。見る者が見れば、その反応をとても珍しく思っただろう。
(歳上……てか大人? まさか)
 美春は何の感情もこもらない顔で依子を見つめている。
 冗談を言っているようには見えない。
「ご、ごめんなさい」
 とりあえず謝ると、美春は再び首を振った。気にしてない、の意思表示。
 依子はとりあえず安心するが、無口につられてか、次の言葉が出てこない。
「……」
「……」
 沈黙。
 微妙な空気をどうにか横に押しやって、依子は本題に入った。
「……私、ちょっと変わった特技を持ってるの」
「……」
「その特技は、信じてもらえるかわからないものなんだけど、それのせいで美春さんが不思議に見えたの」
「……?」
 初めて美春が表情らしき表情を見せた。訝しげな目を向けられて依子は怯む。
 よくわからないことを言っているのは自覚しているが、普段は全然気にしないのだ。なのにこの少女(とみなす)に対してはなんというか、ひどく落ち着かない気分になる。
 どこかで似たような感じを受けたことはあるのだが、とにかく今は続ける。
 依子は自身の能力のことを説明した。縁の性質から自分に見える世界、それに対して自分に何ができるか、何をしてきたか。事細かに話した。
 どこか機械的な口調になったのは、少女に対する違和感を意識から追い出したかったからかもしれない。
 説明を終え、依子は単刀直入に言った。
「美春さんには縁糸がほとんど見えない……。どんな人にも縁糸は繋がるのに、あなたは薄い、切れかけた縁糸しか持っていない」
 どれほど人付き合いの少ない人間でも、生きている以上何かと結びつくはずなのだ。
 だがこの少女は、ほとんど縁糸を持っていない。
「……」
 美春はちらりと後ろを見やった。
 何を見たのか、依子にはわからなかった。美春の視線がこちらに戻る。相変わらず感情の乏しい顔だ。
 と、

(聞こえる?)

 頭に柔らかい声が響いた。
 いきなりの出来事に、依子の体はびくりとすくんだ。
 なにが、と混乱しそうな頭に続けて声が流れ込んでくる。
(落ち着いて。思念を飛ばしてるだけ)
 依子は目を丸くする。ほとんど反射で隣の少女を見据えた。

401:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:15:40 j4Yjr9JS
 美春は慌てた様子もなく、頷きを返した。
「え……?」
(そう)
 音なき声が内に囁く。
(気にしないで……こっちの方が話しやすいから)
「…………えー」
 気にするなと言われても。
(……あなたも似たような力、持ってるんでしょ)
「いや、全然違うよ……」
 何なのだろうこれは。多くの人に会ってきたが、こんなことも、こんな相手も初めてだった。
 思念ということはテレパシーのようなものだろうか。霊能に関しては多少の知識を持っていたが、超能に関しては当然ながら専門外である。一般的には違いなどないだろうが、依子には大きな違いだ。
(不思議?)
 美春は少しだけ得意気な様子だった。
「……」
(心を読み取るとかは……できないよ)
「え?」
(だから喋って)
 そんな言葉こそ心を読んだかのようで、依子はどきりとした。
 それでもうん、と答えたのは、やはり使命感のようなものがあったからだろう。
(私の縁……希薄なの?)
 頷きを向けると、美春は目を細めた。
(……その糸って、霊にもできるものなの?)
「え?」


 変な言葉を聞いたような気がした。
 霊?
(別に幽霊じゃないけど)
 先回りの思念が依子の疑問をうち払った。
「……本当に、心を読んでないの?」
(幽霊か何か……だと思った?)
 失礼ながら思った。
 容姿が子どもだったり、思念を飛ばしたり、縁糸がなかったり、特殊要素が多いために「実は幽霊なの」と言われても、そっちの方が納得できる気がしたのだ。
 美春は軽く溜め息をついた。
(……間違いでもない)
「……何が?」
(幽霊)
「え? だって今、」
(死んでないだけ。それ以外は幽霊なんかと変わらない……かも)
 またわからなくなってくる。何を言っているのだろう。
 美春は言った。
(私は、生きた霊なの)
 脳に響く声は、どこか寂しげだった。
「……生霊? ドッペルゲンガーとか、そういうやつ?」
(知ってるの?)
 頷きながら本家で学んだ知識の記憶を掘り起こす。
 ドッペルゲンガーとかもう一人の自分とか呼ばれるものは、大抵が生霊だと言われる。
 彼らは死霊とは違い、生きている。元の人間の魂からなんらかの原因で分裂し、自我を持った魂が生霊の正体だ。
 話には聞いたことがあるが─
「……」
 中学生くらいにしか見えない自称二十三歳の少女は、睫毛を右手で小さくいじっている。
 その挙動は少しも不自然ではなく、どう見ても人にしか見えない。縁糸の薄弱さだけが浮いている。
(説明……するね)
「うん」
 語り出す美春。

402:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 13:19:15 j4Yjr9JS
(……私の『本体』は病弱な人で、いつも寝たきりだった)
「……」
(あるとき容態が悪化して、その人は死にたくないと強く願った。そのとき私が生まれたの)
 その説明は多くのドッペルゲンガーの誕生と同じものだった。彼らは、死にたくないという想いから生み出されたもう一人の自分なのだ。
(元々霊力は強かったみたいだけど、制御する力を持ってなかった。たぶん、私が生まれたのは本当に偶然だったんだと思う)
「……」
(最初は自分のことがよくわからなかった。しばらくして、本体と出会って、初めて自分のことを理解した)
「……」
(やがて本体が死んだけど、私は生きていた。私は魂だけだから、病気とかにはならないみたい。私はその人の代わりに、その人の分まで生きていこうと思った。でも……)
「……でも?」
(声が……)
 声? 急に出てきた言葉に依子は戸惑った。が、すぐに今、彼女は声を出していないということを思い出す。それと関係があるのか。
「……声が、どうしたの?」
(……言霊って、知ってる?)
 心臓が跳ねた。
「……言葉に霊力を乗せるあれのこと……だよね?」
(そう)
 それのことはよく知っている。依子は姉のことを思い出す。あの人も、言霊の力に左右されていた。
(誰かと話して、すぐに言葉の異常に気付いた。私が何かを言うと、誰もが暗示にかかったかのように放心した)
 彼女もまた、言霊の力を持つのだろう。それも、相手が意識を保てなくなる程の言霊だ。彼女の霊力の強さが窺える。
(だから私は喋らないことにした。喋らなければ……問題ないから)
「それで思念を……?」
 そのとき、美春が微かに笑んだ。
 幼い顔に映るには不自然な、大人びた微笑み。
(思念を飛ばしても……それを気味悪がる人も多い。だから……私は他人と関わりをほとんど持たない)
 達観と諦念が入り混じった微笑。
 依子はその顔にようやく気が付いた。
 この人は姉に似ているのだ。言霊だけではない、まとう空気や、表情が。
 あの人も底知れない気配を見せ、こんな風に寂しく笑う。
 思念を飛ばす力はないが、二人はよく似ている。落ち着かないのはきっとそのためだろう。容姿も話し方もまるで違うが、依子には重なって見えた。
 ちょっとだけ苦手な雰囲気。
 だが決して嫌いではない。ペースを狂わせるところまで姉と似ていたが、懐かしさの方が勝った。
 これも名残の一つなのかもしれない。
「……友達とか、いないの?」
 美春は微笑を消し、
(……元々一ヶ所にとどまることがないから)
「……」
(それに私は歳を取らない……この体も、十年前から変わらない。そんな私が他の誰かと共に生きるなんて、無理)
「そんなこと、」
(無理……言葉を使わない、戸籍も持たない。歳さえ……重ねることがないのに)
 何の感情もこもらないようにしているのだろう。美春の言葉は無機質に満ちていた。
 きっとこの人は、自分なんかよりもはるかに複雑な時間を過ごしてきたのだろうと思う。
「……友達なんていらない、ってこと……?」
(そういうの、だいぶ前に考えなくなっちゃったから)
「……」
 執着が感じられない言葉に依子は落胆する。
「……私じゃ、駄目かな」
 うつむいて、出た言葉はそれだった。
(……?)
「私とは普通に話せているもの。私じゃ友達にはなれない?」
 美春は一瞬金縛りにあったように押し黙った。ひどく驚いたようで、目を眩しげにしばたたいている。
(なんで……?)
 問われてもすぐには返せなかった。
「え……それは」
(同情?)
「! そんな失礼なこと言わないよ!」
 あまりと言えばあんまりな物言いに、依子はつい声を荒げた。


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