ヤンデレの小説を書こ ..
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2:2get
07/03/20 13:31:15 HOChU6A9
>>1
乙。

3:名無しさん@ピンキー
07/03/20 13:42:35 Tx1KgVJI
>>1
お憑かれ

4:名無しさん@ピンキー
07/03/20 14:01:22 XjUBHhrl
>>1
乙彼。

5:名無しさん@ピンキー
07/03/20 15:30:25 UkbVlw2v
>>1
乙華麗。

6:名無しさん@ピンキー
07/03/21 02:36:36 OBj5RVO0
>>1大津カレー

7:名無しさん@ピンキー
07/03/21 08:37:09 MrQwIGlG
>>1

そういや、地獄堂霊界通信っていう子供向けホラー本の中に、
男への執心から怨霊となった女の話が合ったけど、最後にいい言葉があったのを思い出す。

なんか、男にはここまで自分を思い続けて女が狂ったなら、それを受け止めてやる必要がある。
みたいな感じだったなぁ。よく覚えてないけど。

8:慎@携帯 ◆lPjs68q5PU
07/03/21 09:37:58 GKH1kr/a
>>1乙♪
>>7
ある男が夜道を一人歩いていた。すると突然一人の女が男にぶつかってきた。その手には包丁。
女は男を狂おしい程に愛していた。が、それ故不安でもあった。いつか他の女に男を取られるのではないかと。
「これでもう他の女に取られることは…」女がぽつりと言う。それを聞いた男は「とうとう来たか」と思った。
男はよくわかっていた。女が自分のことを狂おしい程に愛していたことを。そんな彼女のことだ、いつかこんな行動に出るとは思っていた。
むしろ俺が望んでいた結果かもしれないな、とも思った。いつも周りからすれば甲斐性なしにみられるようなこの俺を奇特なことに一途に愛してくれた女のことをようやく受けとめられるチャンス…そう考えたからだ。
男は痛みに歪む顔を笑顔にかえて、「ごめんな、不安な気持ちにさせて…お前のこと受けとめきれない駄目な男で…でもようやくお前のこと受けとめられるよ…ごめんな、こんな最後の最後で…」と言い残して…そして崩れた。

こうですか、わかりません><

9:名無しさん@ピンキー
07/03/21 11:11:32 rKpbPAHa
じゃあ、俺も本の話を。

稲川淳二の怪談で「緑の館」っていうのがあった。

屋敷の跡取り息子にはきれいな嫁がいた。

嫁が病に倒れる。死ぬ間際に言った言葉は、
「私が死んでも他の女房をもらっちゃだめだよ。そしたら、あんたもその女も殺してやる。
 あんたの女房は、私だけなんだから」

夫はその言葉に誓いを立てる。そして、女房が死ぬ。

しかし一年後、さみしくなった夫は再婚する。

婚礼の儀が行われた夜に、死んだ女房の霊がでる。
新しい女房の首がねじ切られて(以下略)。

夫は殺されまいと必死に対策を練るが、脇が甘くて足をねじ切られ(以下略)。


ホラー本はヤンデレヒロインが多いぞ。
というより、ヤンデレがホラー系ヒロインなのかも。

10:名無しさん@ピンキー
07/03/21 11:31:14 TJoiUQVn
前スレは容量から作品投下出来ないだろうから雑談は前スレで

11:名無しさん@ピンキー
07/03/21 13:17:07 MrQwIGlG
>>8
微妙にちげぇwww

ようするに、単純に相手の恋心を受け入れろってんだとおもうよ。
最後の怨霊倒した後の説教シーンだけどね。

12:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:03:40 hJFrsf6U
お久しぶりです。投下します

13:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:04:36 hJFrsf6U
 えへへへへ。
 そんな低い笑い声が上の階から聞こえている。
 ここは二十八歳元引きこもりの榛原よづりの高級住宅だ。広いリビングに広い台所。俺の実家よりでかいんじゃないかと思う。こんなところにあいつは独りで住んでるのか?
 榛原よづりを助け起こした後、俺が学校へ行く準備を命ずるとよづりは素直に頷いて、自室のある二階へと鼻歌を歌いながら上がっていった。
 さっきまであんなに落ち込んでいたくせに、もう上機嫌になっている。猫か、こいつは。
 今、上でヤツはあの縁起の悪い黒い服からちゃんと学校指定のブレザーにでも着替えているのだろう。しかし、二十八歳の学生ブレザーか……。なんか想像つかん。
 そんなことを考えつつ、俺は散乱した一階で、連絡してそのまま姿を消していた委員長を探していた。
 よづりを宥めるので一瞬だけ忘れていたが、元々ここに来た目的は委員長を助けるためだったんだ。
 いま委員長はどこに居るのだろう。携帯電話で委員長の番号を押してみると、台所からサトミタダシのあの音楽が聞こえた。うわぁ、委員長の着メロだよ。
 委員長いわく、お父さんの好きな演歌歌手の曲が気に入ったので使っていると言い張っていたが……。残念ながら俺はこの曲の元ネタを知っていた。
 興味なさげにそう言い張る委員長を見て、俺は委員長でもゲームするんだなぁとちょっと親近感湧いた。そんなエピソード。
「台所に隠れるスペース無いだろ……」
 あったとして、冷蔵庫の中か? 無理だ無理。開いてたし、中見てるし。台所を覗くと、着メロのほかにブーンブーンとバイブが響くときの独特の音が一緒に流れている。
 テーブルの下を除くと、あった。委員長の携帯電話。
 携帯電話だけあっても意味無いんだよ。どうやらドサクサの最中に落としたようだ。俺は自分の携帯の緑ボタンを押して、止める。委員長のピンクの携帯電話が音をとめた。
 俺はそれを拾い上げる。この携帯電話の持ち主はいまどこにいるんだろう。
 玄関に委員長のものらしき靴はあった。中に居るのは間違いない……いや、委員長が裸足で逃げた可能性もあるな。
 くそぉ。
 台所、和室、風呂場、すべて見て回る。……隠れるところ、逃げ込むところ……。俺だったらよづりが刃物持って襲ってきたとしたらどこに隠れるだろうか。
 一階にはいないのかな? じゃあ二階か? しかし、二階にはよづりがいるし。まぁでも一応見てみるか。廊下を歩いて、二階への階段を昇ろうとした戻ったところで、
「ん?」
 廊下の奥にあるドア。小さな摺りガラスの窓がついていて、太陽光の明かりが漏れていた。トイレか。
 俺はちょっと気になって近づいてみる。よく見ると、トイレのドアノブの先にある小窓が赤くなっていた。誰か居る。家の者ではないはずだ。ではトイレに隠れているのは……。
 こんこん。
 軽くノックしてみる。返事は無い。
 しかし、人の気配はある。もう一度、静かにノックをする。何故か、子供の頃親戚の家でやったファミコンソフトのグーニーズを思い出した。
 ドアに顔を寄せる、もしかしたら怯えていて返事ができないのかもしれない。俺は小声で委員長を呼んでみた。
「いいんちょうー?」
「………森本君?」
 ようやく、聞こえた委員長の声はとてもか細い。怯えて怯えて、ついにどうしようもなくなったような。そんな感情の最後に出したような声だ。
「生きてる?」
「……なんとか」
 俺の小さいボケにも大して突っ込んでくれない。よづりはいったい何をしたんだ?
「そこに、榛原さんはいない?」
 ようやく俺という仲間に話しかけられたせいか、委員長は徐々に声の調子をとりもどしていく。しかし、口調によづりを怯えるような感情が残っている。
 俺が「いないよ」と言うと、ドアの向こうで大きな大きな安堵の息を吐く音が聞こえた。はぁぁぁぁという空気が震える音。
 そして、トイレのドアノブの赤いロック表示がガチャリとまわり、青へと変わる。そして、ゆっくりとドアが開いていき……。
「……本当に森本君?」
 ちいさなドアの隙間から、委員長の目が覗く。その瞳が俺を捉えた。俺はどんな表情で迎えればいいのか分からず、とりあえず普通にやぁと朝挨拶するように右手を上げてみた。
 委員長の目が大きく丸くなった。ドアの外に居るのが本当に俺だとわかると、委員長は急いでトイレのドアを開いた。そして大きく飛び出すと、、
「森本くぅん!!」
 ……俺の胸へ飛び込んできた。
 へっ!? 委員長の柔らかくてほそい体の感触がぼふりと俺の胸元に抱かれるように当たる。そのまま俺は押し倒されそうになるが、足の力で何とかその体を胸で留めた。
「ど、どうしたんだよ、委員長」


14:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:05:40 hJFrsf6U
 俺が声をかけると、途端委員長の体は脱力したようにへにゃりと床に引っ張られる。
「わっと!」
崩れそうになった体を俺は両腕で支えた。委員長のわきの下に腕を挟みいれて、きちんと立たせる。
「だ、大丈夫か? 委員長」
「……よ、よかったぁ……こ、こわくて、こわくて……森本君の顔見たら、安心しちゃって………」
 そう言う委員長の顔は、普段のキリリとした強情な表情とはまったく違う。ハリウッド映画の化け物に襲われたヒロインのような、とても弱弱しくて危なげで不安定な、怖がる女の子の顔だった。
 その表情に俺は少しだけ、胸がきゅんとなる。なんつーか、委員長でもこんな顔するんだ……という新鮮さ。うわぁ、めちゃくちゃベタだな。俺。
「安心しろ。もう大丈夫だ」
「……う、うん。……大丈夫、大丈夫だよね、ねえ、ねぇ………え、え、えぐ、えぐっ」
 俺の言葉に安堵したのか緩んだ顔の委員長はどんどん言葉尻が弱まっていくと。嗚咽を混じらせて、
「ええ、えぐっ、えぐっ、えぐぅ」
 静かに、泣いた。
 ……俺の胸で。涙をぽろぽろ流して。安堵の涙。ぽつりぽつりと、俺の制服を濡らす。
 よっぽどよづりに追われたのが怖かったのだろうか。それだけじゃないな。真面目一本で芯が頭の先から尻尾まで通っている委員長にとって、よづりのようなまったく芯が通っておらず、行動も思考も混濁した意味不明な相手と対峙したのは初めてだったのかもしれない。
 相手の意識が読めないという恐怖。それがよづりが暴れだした時の身体的な恐怖とあいまって、委員長にかつて無いほどの恐怖を襲わせたのかもしれない。
 よづりがどんな風に暴れたのかはこの家の惨状を見るしかないし全て俺の想像だよ? しかし、そんな想像を俺にさせてしまうほど委員長の姿はか弱かった。
 そのままえぐえぐと泣く委員長を俺は宥めるように彼女の髪の毛を軽く撫でた。細くて綺麗な髪質。俺が手のひらをスライドさせるごとに委員長のおさげが揺れる。
 しかし逆に、心の奥では俺はこんな女の子にいままで指図されていたのか……と妙な感情も浮かんでくる。
 まてまて、なんで俺はそこまで冷静なんだよ! ちょっと前の俺は女の子に抱きつかれたら確実に真っ赤になって慌ててただろ! 酔っ払った鈴森さんに抱きつかれた時なんて動けなくなって鈴森さんのリバースを避けきれず顔面からうけちゃったぐらいだぞ!?
 泣いている委員長を宥めるように彼女の髪の毛を撫でつつ、俺の頭の中では二つの意味で苦い思い出が再生されていた。
 と、そのとき。
「かずくぅぅぅぅぅん♪♪」
 二階にあるはずの家の主の部屋(多分)の引き戸が、ガラリガラリと勢いよく開かれる音と共に、全ての幸福を詰め込んだような甲高い声が家中に響いた。
「かずくんかずきゅぅぅぅん♪♪」
 猫なで声とも違う、媚びて媚びて媚びに媚びて媚びすぎるほどの甘ったるい響き。その声がドスドスドスという階段を勢いよく下りる音と共に抱き合う俺らの耳に届いた。
「……っ!」
 無言で委員長は肩をこわばらす。
 それを見て、俺はこの状況のマズさに気付いた。
「やべぇ!」
 トイレの前で、抱き合う二人。せっかく機嫌を治したよづりにこの姿を見られたなら、こんどは家の大黒柱(あるのか知らんが)を粉々にするほど暴走して、高級住宅を一瞬にして築80年のボロ家にしてしまう程暴れるかもしれない。
「かずきゅんかずきゅぅぅん♪♪ きゅんきゅん〜♪♪」
 二十八歳がきゅんきゅん言うんじゃねぇ! さっき俺言ったけど。
 サキュバスのような甘い甘い悪魔の声が近づいてくる。階段を下りて、俺に向かってくる!
 よづりに応対していて、俺は判断能力が確実に上がっていた。
「わりぃ、委員長! ちょっとまた隠れててくれ!」
「きゃあ!」
 抱きかかえていた委員長をむりやり引き剥がすと、開いていたトイレのドアを開け、委員長を元のトイレの中へ押し込んだ。姿をもう一度隠させる。
「も、森本くん、いったい……」
「委員長! 少し静かにしてて!」
 洋式トイレだったトイレの便器に委員長は腰を落として座った格好。突然のことに口を開こうとする委員長を俺は全てを言わせず、俺はトイレのドアを勢いよく閉めた。
 かなり、でかい声で会話をしてたが、よづりに聞こえてなかっただろうか。多分、あの女の性格からして大丈夫だとは思うが。
「かずきゅぅぅぅん♪♪」
「いてぇ!」


15:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:06:36 hJFrsf6U
 背後からの衝撃! 甘い声と共に俺の背中によづりが飛び込んできたのだ。
背中にふよんと、柔らかくあたる女の人特有の感触が伝わる。大きなクッションに俺は一瞬だけ意識がいやらしいほうに揺らいだ。その次の瞬間、なんと俺の首元にしっかりとよづりの腕がまきついていたのだった。
 今日は委員長に飛びつかれて、よづりに飛びつかれて、よく飛びつかれる日だな。オイ。そんなことを考えつつも、がっちりと閉められた首元。ちょいと力を入れればチョークスリーパーである。確実に死ねるな。
 ぐいっと、俺の横からよづりの横顔が現れた。
「かずきゅんかずきゅんっ♪♪」
 よづりは嬉しそうな声で俺の頬にキスの雨を降らせていた。ちゅっちゅっちゅっとついばむような感触がくすぐったくてこっぱずかしい。俺の頬が紅潮していくのがすぐにわかる。
愛情表現のようだがこれはいくらなんでもクラスメイトの域を超えているだろ! 俺が引き剥がそうとするが、かまわずによづりはキスを続けた。
小さな吸音が耳元で響いている。うわぁ、キスは憧れのものなのに、コイツのだと妙に変なことを考えちまう。
 よづりはようやく気が済んだのか最後に、
「ん〜〜っっ。ちゅっ」
 大きく頬を吸い込んだキスをすると、腕をはずして。俺から離れた。
俺は跡になってないかと心配で頬を指でなぞる。上書きされる心配は無いが、誰かに見られたら恥ずかしさで腹上死もいいとこだ。幸いにも吸った力は大して強くなかったようで、触った限りでは跡はない。
口紅だったら後で委員長にでも化粧落としを借りなければ……。
「えへへ、えへへへへ」
 よづりと向き合うと、よづりは相変わらず何も考えていない純粋すぎるほどの満面の笑みで俺を見つめていた。
「ねぇねぇ。見て見て。あたしの制服姿! 着たの一年振りなんだよ! ねぇねぇ! ねぇ!」
「お、おう」
 うるせぇよ! 構われたがりか! あ、構われたがりだった。
よづりはブレザーの制服を引っ張るように俺に見せつける。
うちの学校の制服は男女と共通の青色のブレザーで胸元にはプラスチックの名札がついている。男子は無地の黒ズボン。女子はひだのついたスカート。シャツの胸元には男子はネクタイ。女子はリボンがつき、ネクタイとリボンの色は学年ごとに違っている。
一年生は黄、二年生が赤、三年生が紺である。なんで、学年が上がるごとに地味になっていくかは永遠の謎だ。
 よづりは俺と同学年なので、赤色のリボンをつけていた。結び目は多少捻じ曲がっているが、一年ぶりに着たのだから慣れていないのも当然か。
「えへへ、似合う?」
 首をかしげて訊いてくるよづりに、俺はこくこくと頷くしかなかった。つーか、この会話の流れじゃ頷くしかないって。
 ただ思う。よづりの制服姿は正直委員長と比べると確実に浮いている。
 そりゃそうだ。二十八歳という年齢で大人の体つきのよづりには、なんというか……主婦が無理してきてみちゃいましたという感覚がしてならない。
いや、それすらも無いな。主婦にはありえない長い長い黒髪がよづりの浮いた状態をさらに際立てている。リングの貞子みたいな髪の毛だからな、普通の状態でも怖さが際立ってんのに……。
「えへへへ。かずくんに似合うって言われた。うれしいうれしい」
「ああ」
「じゃあ明日も制服で学校に行くことにするね!」
 当たり前だ。
「えへへ。さぁ。かずくん。早く学校に行こう?」
 こいつは、陽と陰の差が激しすぎる。さっきまで死ぬんじゃないかと思うほど落ち込んで泣きじゃくってたクセに、今は天真爛漫という言葉が似合うほど陽気だ。天真爛漫すぎて言動が幼児化している。
 だいいちあんだけ煽っていた酒は? まさかもうアルコールを分解したのか!? 日本酒だぞオイ!? 未成年だから甘酒しか飲んだこと無いけどさ。
 よづりは俺の手を掴んで引っ張った。まるで遊園地に行くのが楽しみで仕方が無い幼稚園児のようだった。
「あ、ちょっと待てくれないか。よづり」
「ん、なぁに? かずくん」
 学生鞄を持って玄関へ引っ張り靴も履かずに外へ出ようとするよづりを引き留める。よづりはこちらを向いてむぅ?と首をかしげた。なんだか仕草が猫みたいだ。黒猫だな、確実に。
「トイレ貸してくれないか?」
「おトイレ?」
 このまま出るわけには行かない。トイレに委員長が隠れたままだ。

16:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:08:06 hJFrsf6U
「うん。トイレどこだ?」
「そこ。一緒についてってあげようか? かずくん」
「いや、いい。玄関で待っててくれ」
「うん。すぐ来てね」
 珍しく、よづりは素直に頷いた。俺は靴下で玄関に出ているよづりに靴を履かせるように促すと、彼女はいそいそと靴べらを使って革靴を履き始めた。きついのか、うんうん言っている。
 その間に、俺はトイレの前まで走って来た。玄関からトイレのドアは見えないため、よづりに気付かれずコンタクトは取れるはずだ。よかった、ヤツが本当についてこなくて。
「いいんちょぉー……」
 突然、押し込めたことを怒ってないかな……。ドアごしになるべく小声で呼んでみる。
「……なに?」
 怒っているのかどうか微妙な間で返事が返ってきた。トーンは低いが、はっきりとした声だ。くそ、表情が見えないし俺が鈍感なせいで委員長の感情が想像できない。
「とりあえず、いいか。お前が出てくるとまたややこしくなるかもしれないから……。俺らが出てってからしばらくしてそこから逃げろ」
「この家の鍵はどうするわけ?」
「開けっ放しでいいだろ」
「泥棒が入るわよ」
「もう、泥棒が入ったみたいにグチャクチャになってんだから、逆にはいらねぇよ」
「まあ……そうよね」
「じゃあ、いまからよづりを学校に連れて行くから。お前も後から来いよ!」
「ねぇ、あたしと榛原さんが教室で鉢合わせたら……もしかして危ない?」
 委員長の語尾が弱弱しくなっていく。彼女はある意味俺の知らないよづり(暴走モードな)を知っている。委員長はよづりに対して怯えているのだ。
 しかし、俺はあまり大事にはならないと確信していた。
「大丈夫。俺がなんとかするよ」
「なんとかって……」
「もし、よづりが暴れてお前に危害を与えようとしたら、全力で守ってやる」
「森本君……」
 そろそろ、戻らないとマズイかな。
 なぜなら、玄関から聞こえるよづりの鼻歌がだんだん不機嫌なメロディーと変化してきているのだ。ヤツには忍耐が無いらしい。
「そろそろ行って来る。あとでな」
「……うん」
 俺は委員長のうなずく声を聞くと、慌てて玄関へ戻った。玄関では制服姿でカバンを持ったよづりが俺のほうを見て、くんくん鼻を鳴らしながら待ち構えていた。まるで散歩を待っている犬のようだだ。
 さっきは猫で、今は犬。ワンニャンだ。ワンニャン。
「かずくん! いこいこいこう!」
 よづりは俺の手をもう一度掴んで、しっかりと指を絡めた。いわゆる恋人つなぎだ。
 そのまま俺を引っ張ると、玄関を飛び出した。幸せそうに笑って俺の手を引くよづりの顔。満面の笑み。天真爛漫。

 そうだ。あまりにも天真爛漫……すぎる。

「かずくんと一緒のクラスなんだよねぇ。えへへ、昼休みは一緒にお弁当食べようね。放課後は一緒に帰ろうね。ずうぅっと一緒だもんねぇ。えへへへへ、えへへ、えへ、えへへへへ」
俺はよづりが元々どんなヤツだったのかは知らない。もともとの性格も知らない。もしかしたら、引きこもる前は普通のOLでバリバリと働いていたキャリアウーマンだったのかもしれない。
だが、わかる。この天真爛漫さが確実に後天的なものだ。後からできた天真爛漫。
 さらに、この天真爛漫の根源は、俺への執着。いや、依存といったほうが正解か。俺への依存心が彼女をそこまで天真爛漫にさせている。
 じゃなきゃあ、迎えに委員長が来ただけであんなに暴れていたのに、俺が着たとたんに大人しくなって俺に懐くのは異常だろ?
 
 じゃあ、……解決すべき問題はここなのかもしれない。
 彼女の依存心を捨て去ることが、よづりを更正させる一番の近道だろうな。

 ただ、今は彼女を家から出して学校に行かせることが大事だ。今は、今だけは、俺に依存させてあげよう。そして少しづつ、離していけばいい。

「さぁ、かずくん。行こ行こ!」




 この時の俺は、まだ物事を楽観していた。まだ甘く考えていた。
 まだ、覚悟を決めていなかったのだ。

 覚悟したと思い込んで、頭が働かせ彼女を助けようとするヒーローになった自分に一人で勝手に酔いしれていた。
 それが彼女を、よづりを傷つける結果になるとわかっていたはずなのに。
(続く)

17:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/03/22 00:08:42 hJFrsf6U
お久しぶりです。赤いパパです。
忘れている方いらっしゃいますでしょうか。真夜中のよづり第四話です。
今回はインターバルを挟んだ形で短めです。更新ペースは本当に遅いですが、なんとか続けていただきます。
文章のクセなのか、いつもわかりづらいところで楽屋ネタや版権ネタを使ってしまいます。誰か気付く人はいるのか

18:名無しさん@ピンキー
07/03/22 00:58:13 /1dsAWpo
よづりキテルーーーーーーー!!!
相変わらずよづりの異常な不気味さがリアルに伝わってきて怖いぜ!
あと委員長は普通に萌えキャラなのもグッドですよ。

最後の形が分かっているだけにこの後の展開が凄い気になります。マイペースでも最後まで書き終えてください!応援してます!

19:名無しさん@ピンキー
07/03/22 01:30:40 2dhwRX7h
よづりだーーー!!不気味可愛いよー!しかも制服キタ━(゚д゚)━!!
心配だったんだよ…委員長無事で良かった!
赤いパパ氏のペースでがんがって下さい!続き待ってます

20:名無しさん@ピンキー
07/03/22 02:59:14 AXBzyLTr
夜釣りキター超GJ!!
ヤンが楽しみだ

21:名無しさん@ピンキー
07/03/22 07:57:05 U6sCMXja
赤いパパさんGJです!!よづりのキャラが気に入ってるだけに凄い楽しみ。

>>18
しかし冒頭の心中も、まだ何かしらありそうな気がする。
二人して死ぬはずなのに、「俺たちは死のうとしていた」ではなく、
「榛原よづりは死のうとしていた」って片方のみだし。

22:名無しさん@ピンキー
07/03/22 11:51:05 5ArBZU46
よづりのダークな感じは天然だったのか?
じゃあ、ここからまた黒くなるのか?ワクテカするねぇ

23: ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:12:51 yOjs1jOF
パパ様・・・GJでした!おばはんはいらないので委員長をください!生きててよかった・・・w

とりあえずおにいたん2最終話です。

警告:以下の言葉に嫌悪感がある方はあぼーん願います。
・近親相姦
・修羅場
・フタナリ
・ロリペド
・獣姦

24:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:13:56 yOjs1jOF
 ”おねえたんはつかれてるのでつよ”
 ”つかれてるのかなぁ・・・”
 ”つとれつ(ストレス)でつか?”
 ”うん・・・うまいこといかないの・・・”
 ”どうちて、でつか?おみちぇ、はやらないのでつか?”
 ”ねぇ、かぁるちゃん、きいて・・・”
 ”あい”
 ”えみるね・・・おにいちゃんがすきなの・・・”
 ”ゆういちおにいたん、でつか?”
 ”そうなの・・・むかしから、ずっと、ずっと・・・”
 ”どうちてでつか?『こくはく』ちて、ないのでつか?”
 ”じつのきょうだいだもん、けっこん、できないもん・・・それだけならいいんだけど・・・”
 ”まだあるのでつか?”
 ”おにいちゃん、がっこうのせんぱいとくっついたの・・・”
 ”てんぱい・・・みたとおねえたんでつか?”
 ”そう・・・そいつ、えみるのたいせつなもの・・・まえも、うしろも、はじめてをぜんぶもっていった・・・”
 ”それだけであきたらず、おにいちゃんまでもっていったの・・・くやしいの・・・”
 ”おかちいでつね”
 ”え?”
 ”かぁるは、ゆういちおにいたんと、みたとおねえたんが、きょうだいとききまちたが?”
 ”そうなの?そうよね。おにいちゃんとえみるが、きょうだいなわけないよね”
 ”こんなにすきあってるふたりが、きょうだいなわけないよね”
 ”おねえたんは、あくむをみてるのでつよ”
 ”どうしよう・・・どうしたらこのゆめ、さめるとおもう?”
 ”ゆめは、ちゃめるでつ。もうつぐ、ちゃめまつよ?”
 ”ほんと?”
 ”ほんとでつ。ゆういちおにいたんが、えみるおねえたんのへやにいるとき”
 ”いるとき?”
 ”あい。けどとれだけぢゃだめでつ”
 ”え?”
 ”いるときに、おみちぇの『ちーえむ』がながれるとき、ゆめはちゃめるでつ”
 ”おにいちゃんがいるとき、しーえむがながれたら・・・うん!えみる、そのときまでまつね”
 ”あい。ゆめからちゃめたら、ちゃんと、きていぢぢつ、つくるでつよ”
 ”きてい、じじつ?”
 ”でないと、みたとおねえたんに、また、とられまつよ?”
 ”そうだね。あのおんなに、みせつけてやらないとね”
 ”あい!きていぢぢつにひつようなものは、おねえたんのかばんにいれておきまつでつ”
 ”そこまでしてくれるの?!ありがとう、かぁるちゃん!!”
 ”ではおねえたん、もうねてくだたい。おねえたんはおつかれなのでつから”
 ”うん”
 ”かぁるが、5かい、てをならちたら、ぐっつり、ねむれるのでつよ”
 ”うん”
 ”(ぽん)いっかぁい、(ぽん)にかぁい、(ぽん)ちゃんかい、(ぽん)よんかい、(ぽん)ごかい!”
 ”・・・・・・”
 ”おやつみなたい、おねえたん・・・”


25:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:14:38 yOjs1jOF
「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「えみる、なにする、おい、やめろ!」

 画面の向こうでは耕治、あずさ、美衣奈が驚きの表情をする。とき子だけは動じずニコニコ。
 「え、なに?笑留さん、なにしてるの?」
 「うそだろ?!笑留さん、店長組み伏せちゃった!」
 「え、笑留さん、かばんから手錠出しました!」
 「手錠って、まさか・・・あ〜!店長手錠でベッドに縛られちゃった!」
 「か・・・薫ちゃん・・・まさか?!」
 「あい!」
 薫がエッヘンのポーズを取る。
 「ちゃいみんぢゅつ、でつ♪」
 「催眠術〜?!」
 驚きの声を上げる3人。
 「まづね、えみるおねえたんは、ゆういちてんちょうたんがつきだったんでつ」
 「そうだったんだ・・・」
 納得する耕治。一方あずさはこういう。
 「けどあの二人は兄妹だよね。で、あきらめた。店長は、美里マネージャーと結婚した」
 「とこでつ。どうも、えみるおねえたんの『どーてー』と『ちょぢょ』は、みたとおねえたんがうばったみたいでつ」
 「げ・・・美里さんもそういう趣味だったんだ・・・」
 「そういえば、『お姉ちゃんがえみるをこんなエッチな子にしたんでしょうが』って、いってましたね・・・」
 記憶をたどるように、耕治の意見に美衣奈が相槌を打つ。
 「だからおねえたんに、『ぢつはいまのちぇかいはゆめで、ほんとはおにいたんとはぢつのきょうだいではない』ってふきこんだんでつ」
 「ちょ、ちょ、ちょ?あのふたりは、間違いなく兄妹なのよ?信じるわけじゃない?」
 あずさが当たり前の疑問を薫にぶつける。
 「あまいでつ。えみるおねえたんは、とんなちぇかい(そんな世界)がほちいのでつ。だから、ちんぢるとおもいまつ」
 「・・・!」
 「『あんぢ』でつ。ゆういちおにいたんがいるときに、おみちぇのちーえむがながれると、ゆめからちゃめる(覚める)といったんでつ」
 「で、笑留さんは『夢から覚めて』、欲望のままに突っ走ってる・・・と」
 耕治が納得するように言う。
 「とうでつ。だめおちで、『きていぢぢつ(既成事実)』つくっておかないとだめだよ、ともいってまつ」
 「き、既成事実・・・」
 あまりに周到な準備に崩折れる3人。
 「では、ゆういちてんちょうたんの、ぎゃくれいぷのつづきをみるでつ」

 理由は分からない。自然と鞄に手が伸びた。中には手錠が二つ。誰が入れたかわからない。
 ・・・けどありがたく使わせてもらう。
 笑留は雄一に馬乗りになり、力任せに雄一の手首に手錠をかけ、さらにベッドの角の柱につないだ。これで雄一は大の字になる。
 「えみるさん?あのー、落ち着いてもらいませんか?」
 「どおして〜?おにいちゃん・・・あ、そうか、恋人同士だから雄一って読んでいいよね」
 「お、おい!」
 「恋人同士なんだから、エッチなことしてもいいよね?」
 笑留は鞄から今度はナイフ−それもコンバットナイフとよばれる厚みの刃を持つ小刀−を取り出し、乱暴に雄一のベルトを引きちぎる。
 「え、え、笑留!」
 「えっへっへっ、ぎゃく・れいぷ・ぷれぇぇい!!」
 「落ち着け!笑留!それヤバイって!!」
 「えへへ・・・笑留ね、おにいちゃんとの子供が5人ぐらい欲しいんだぁ〜」
 笑留は乱暴に・・・しかし雄一に怪我をさせないよう器用にズボンを切り裂いていく。そしてトランクスにも。
 数分で雄一の下半身は丸裸になる。
 「あわわわわわ・・・」
 「はぁはぁ・・・お兄ちゃんの、お、おちんちん・・・」
 熊が敵を威嚇するようなポーズをとったあと、笑留は雄一の一物をほおばった。
 「いやだ・・・お兄ちゃんの・・・汗と・・・おしっこと・・・せーえきと・・・あの・・・」
 一度口を離すと笑留は怒った表情をする。
 「美里の、あの女の臭いがするぅ!!」
 怒りを爆発させると雄一を咥える。
 「美里の!臭いも!愛液も!全部舐め取ってやる!全部!笑留の臭いにするんだからぁ!」
 
 

26:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:15:39 yOjs1jOF
 そうして笑留はフェラチオを開始する。
 ごぼ、ぐちゃ、ぐちゃ、べろ・・・
 「えみる、ちょっと、乱暴、痛い・・・」
 雄一の意見など聞かない。笑留は欲望のままに雄一の一物を口で犯す。
 なんだかんだ言っても、数分後には雄一の一物は直立してしまう。
 ぷはっ。
 息継ぎなのか笑留は再び口を離す。雄一のそれは天をつくようにそり立っていた。
 「やだ・・・どんなに舐めとっても、あの女の、臭いがするのぉぉぉぉぉ!!」
 怒りと泣きが入り混じった表情をして笑留が叫ぶ。
 「もういい!笑留の下の口で舐め取ってやる!」
 笑留はパンティだけ脱ぐと、強引に雄一の腰に自らの腰を下ろした。
 じゅる。
 既に洪水状態だった笑留の陰部は雄一の一物を抵抗なく受け入れる。
 「う、う、うそだろ?!え、笑留!!」
 「えへへへへ・・・ついに、ついにお兄ちゃんと繋がっちゃった・・・」
 そして笑留は自分で腰を動かし始めた。

 「ではちあげ(仕上げ)といきまつか」
 画面の向こうでは薫が自分の携帯を取り出し、どこかに電話をしだした。
 「薫ちゃん、誰に電話するのかしら?」
 「さ、さぁ?」
 
 樹元美里は家路を急いでいた。会議は1時間前に終わったが彼女は会議の整理と後片付けをしていたのだ。
 「ああ〜もう、帰るのが遅くなっちゃった・・・え?」
 コートのポケットの中、携帯が振動をしている。誰かからの電話だ。
 「だれだろ・・・雄一かな?」
 美里は携帯を取り出し発信者を確認する。
 「あれ?薫ちゃんだ・・・なんだろ?」

 ぴっ。
 「もしもし、薫ちゃん?」
 「み、みたとおねえたん!たいへんなのでつ!!」
 「ど、どうしたの?落ち着いて教えてくれる?」
 「あのね、いまね、えみるおねえたんと、ゆういちてんちょうたんと、おでんわちてたでつ」
 「うん、それで?」
 「それがね、おねえたんと、てんちょうたんが、けんかちだちたの」
 「えぇっ!」
 「みたとおねえたんちか、たよりになるちといないの。はやくかえってあげてくだたい!」
 「わ、わかったわ!」
 ぴっ

 「これでいいでつ」
 もはや言葉はなかった。とき子を除く3人はもはやただ呆然と画面を見るしかなかった。

 「おにいちゃんの、おにいちゃんのがいぃのぉ・・・」
 その後も笑留は腰を振り続けていた。股間の自らの一物をしごきつつ、体の中にある雄一の一物をむさぼる。
 「おい、笑留!やばいって、もうでる・・・」
 「えみる、子供は9人ぐらい欲しいなぁ〜それでね、子供たちだけで野球チームつくるの」
 「たのむ、正気になってくれぇ!て、で、で、でるぅぅぅぅ!!」
 ごぼぉっ!
 雄一にはそう聞こえたような気がした。
 「えへへへへ・・・おにいちゃんの、なかだし・・・」
 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ・・・」
 笑留の股間から、白い粘液が零れ落ちた。笑留はそれを指ですくい上げると、悩ましげな笑顔でそれを舐めてみせる。
 「えへへへへ・・・おにいちゃんの、本気汁、にがくて、おいしい・・・」
 雄一は言葉を継がない。頭を抱えれるならそうしただろう。今雄一は、笑留から顔を背いてうめくだけであった。
 「今日はね、お兄ちゃんが、失神するまで、笑留の中を味あわせてあげるの・・・」
 そして笑留は2回目の『事』に及ぼうとしたとき。
 どごぉぉぉん! 乱暴にドアが開く音がした。笑留はドアのほうを向かず、ただ淡々と、こう言う。
 「何の用かしら・・・この、泥棒猫!」

27:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:17:03 yOjs1jOF
 「えみるちゃん・・・ゆういち・・・あんたたち!なにしてんの?!」
 「恋人の営みに決まってるじゃない?泥棒猫の、美里さん?」
 「あ、あ、アンタのほうが泥棒猫じゃないの!おまけに、実の兄弟で!!」
 「なにいってんのよ!!アンタの方が、お兄ちゃんの妹じゃない!!」

 画面の向こう。
 「ちょ、ちょっと?!なんで美里さんのほうが妹になるわけ?」
 「えみるおねえたんのせかいでは、みたとおねえたんが、ゆういちてんちょうたんの、いもうとみたいでつね」
 「現実と夢が、まぜこぜになってますね・・・」

 「あんた・・・とりあえず、雄一からどきなさい!」
 「い・や!」
 美里はどこから取り出したのか、銘刀義流餓座旨(実際はただの鉈)を両手で構え、笑留に近づく。
 笑留も笑留で、ナイフを片手に持ちその刃を美里へ突き出す。
 「そっか・・・泥棒猫は殺さなきゃ何回でも盗むもんね・・・待っててお兄ちゃん、ちょっとこの泥棒猫始末してくるから」
 「雄一、ごめんね。アンタの妹、病みすぎてもう殺さなきゃ救えないわ」
 
 「き゛ぇや゛ぁぁぁぁぁ!」
 がぎぃぃぃぃ!!
 笑留は雄一から離れるや否や、上段からナイフを振り下ろした。すかさず鉈で受ける美里。
 両方の刃先から火花が出るのが、画面からでも確認できた。

 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ・・・殺し合い、はじめちゃいましたよ・・・」
 さすがの事態に、青くなる美衣奈。隣のあずさも、さすがに顔色が青い。
 「ど、どうしよう耕治ぃ!!」
 「って、どうすんだよ?!」
 おろおろする3人を尻目に、薫は涼しい顔で答える。
 「ほっといたらいいでつ。ゆっくり、『りあるしゅらば』をけんぶつするでつ」
 「かおるちゃん」
 いままで、ずっとにこにこしながら事態を眺めていたとき子が、いきなり真剣な顔で薫のほうを見た。
 「なんでつか、まま?」
 「止めなさい」
 「え?」
 「あの二人を、止めなさいと、いったの」
 「なんででつか?とめるひつようは、ないでつ!」
 「かおる?あの二人が、いつ、貴方の命が欲しいといいましたか?」
 「うぅ・・・」
 「何か悪いことをしたのですか?少なくとも、薫ちゃんや、私よりはしてないはずですよ?」
 「うぅ・・・」
 「かおるちゃん?」
 薫はしばらく押し黙っていたが、やがて口を開く。
 「おにいたん・・・けいちゃつを、よんでくだたい。えみるおねえたんは、ひとりにしてしばらくおちつかせれば、もとにもどるでつ・・・」
 画面の向こうでは、笑留と美里が、文字通りの『剣戟』を繰り返していた・・・。

28:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:17:40 yOjs1jOF
〜えぴろーぐ〜

 がちぃっ!
 「この泥棒猫!いい加減死になさいよぉ!」
 「そっちこそ!この性欲魔人!ポリバケツ!ブラックホール!」
 「いったなぁぁぁぁぁ!」

 「あ〜はっはっはっはっ」
 「いや〜本物の修羅場って、迫力あるわぁ〜!」
 「あ、あの・・・えみるおねえたん・・・?」
 数日後、禾森家。今度は美里まで交えての乱交パーティーになっていた。
 現在の状況。
 テレビの前に笑留と美里。薫は笑留の股間に刺さっている。
 美里の股間にはピオンがいて、一心不乱にピオンの股間を舐めている。
 二人の後ろではとき子が耕治の上に馬乗りになって耕治の股間を味わっている。
 ちなみに耕治自身は既に白目向いて失神。
 あずさと美衣奈は裸のまま美里たちの後ろでテレビを観賞中。
 そのテレビ画面にはつい先日の修羅場というか殺し合いの動画が流れていた。
 「これ・・・えみるおねえたんたちなんでつけど・・・?」
 「だからおもしろいんじゃないの、ねー?」
 「ねー!そんな口答えする子は、こうだ!」
 笑留は股間の薫を突き上げる動作をする。縦に豪快に揺れる薫。
 「えみるおねえたん・・・きもちいいけど、いたいでつ・・・」
 「なにいってんの?あたしたちなんか、死に掛かったんだもん、ねー、おねえちゃん!」
 「ねー!」
 そういって笑う美里と笑留。しばらくして、美里はとある疑問を口にした。
 「ねぇ、薫ちゃん?あれって催眠術なのよね?すごいなぁ。本当に人を思うように動かせるんだ」
 「とんなわけないでつ」
 股間の快感に耐えつつ、薫が美里に説明する。
 「えみるおねえたんは、ゆういちてんちょうたんと、えっちちたいとおもってまちた。ちゃいみんぢゅつは、そのちぇなかを、おちただけでつ」
 「背中を押しただけ・・・それってさ・・・もしかして素面でも襲ってた可能性があるって事?」
 これは笑留の言葉。
 「ちかいみらい、ありえたとおもいまつ」
 「あは、あはははは・・・」
 力なく笑う笑留。今も思う。あれは、本当に、催眠術のせいだったんだろうか?自分の欲望が、外に出ただけだったのではないかと。
 「とういえば、みたとおねえたん?てんちょうたんは、どうちたのでつか?」
 「ん〜、これ、聞いてみる?」
 さっきから、美里はピオンに股間を舐めさせながら、イヤホンで何かを聞いていた。
 美里からイヤホンを借り、聞く薫。



29:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:18:13 yOjs1jOF
 「いやだ、店長、今日奥さんはどうするんですか?」
 「今日は友達のところに泊まって帰らないってさ。だからさ、これから二人で・・・」
 
 「ゆ・・・ゆういちてんちょうたん・・・」
 なんと雄一の体に盗聴器を忍び込ませていた。がっくりとなる薫。イヤホンを薫から取り上げ続きを聞く笑留。
 「・・・あれ、ちょ、ちょっと!このお兄ちゃんの相手って・・・」
 「さすがに笑留ちゃんは気がついたか〜」
 にやりと笑う美里。
 「そう。あの宿六の相手は2号店店員。あたしの可愛い子猫ちゃん♪」
 うれしそうに言う。笑留はイヤホンを外すと、元の機械とテレビのスピーカー端子をつないだ。テレビから店長たちの声が聞こえる。

 「じゃあ店長、あたし、いい店知ってるんですけど一緒に、どうですか?」
 「いいねぇ、一緒に行こう」
 「けどお願いがあるんです。そこにつくまで、店長さん、目隠しをしてもらえますか?」
 「ああ、いいとも。どこにつくか、楽しみだなぁ〜」

 ぶぅっ!美里意外全員噴き出す(失神中の耕治除く)。
 「あの、おねぇちゃん、ま、まさか・・・」
 「とき子さん?あと二人、お客さんがココに来ますがかまいませんか?」
 「あらあらまぁまぁ。どうぞおこしくださいな」
 「んふふっ」
 美里は忠実に自分の仕事をしているピオンの頭をなでた。
 「ピオンはえらいわね〜。まっててね。もうすぐ、ごほうびに、あなたのだぁ〜いすきな、アナル処女をあげますからね♪」

おちまい。

30:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA
07/03/22 21:20:37 yOjs1jOF
終わった・・・
『催眠術で突然病化』をコンセプトに作ってたらこんなに長くなるとは思わんかった。
次はもっと「病み」をテーマに精進します。
とりあえず次回はおにいたん1のバッドエンド版、
そのあとプロットだけなら3つぐらいあるのでおいおい。

31:名無しさん@ピンキー
07/03/23 10:36:10 U6qYWsDk
ロリエロ投下GJ!
やっとのヤンデレ展開がギャグとして片付けられてしまったのがスレ的にはちと惜しいかも。
バッドエンドものに期待。

32:名無しさん@ピンキー
07/03/23 12:21:35 4xl6OPvM
会話が多いのはあまり好きじゃない
延々続くと、どうでもいい気分になってきます

33:名無しさん@ピンキー
07/03/23 21:19:04 pFVTPDBh
>>32
それならあなたは読まなければいいんじゃないですか?
あなたの好みなど知ったことではありません。

34:名無しさん@ピンキー
07/03/23 21:29:46 Am0zAZSp
あー……ちょっと言っていいかな。
>>33のようなSSへ向けた意見に対してレスをすると荒れるんだわ。
実際、お隣さんはそういうところがあった。

だから、感想レスに向けたレスは控えないか?正直、荒らしも煽りも御免だから。

あと>>32
もうちょっとオブラートに包んでくれ。

35:名無しさん@ピンキー
07/03/23 21:38:54 U6qYWsDk
感想レスに対して反論レスするとスレが荒れる
反論レスという歯止めが無くなると感想レスが言いたい放題になる

なんというジレンマ……

36:51 ◆dD8jXK7lpE
07/03/23 21:42:33 1qNt958Q
まあ、なんというか。
書き手は全ての感想を真摯に受け止める覚悟があるから投下してるのであって、
あまり「そんな感想はおかしい!」というような話はしない方が嬉しいと思う。

37:名無しさん@ピンキー
07/03/23 21:44:04 Am0zAZSp
自分で感想レスに対してレスをするなと言っておきながら、それを自ら実行してしまうとは……

なんというバカな俺……orz
スマヌみんな。

38:名無しさん@ピンキー
07/03/23 23:15:33 d7UT3CFJ
>>35
>>37
前スレでトライデント氏のトリップ割れについて下さって有難う御座います。

ヤンデレスレの皆さんも新スレになったので、
既存の作家さんを語る書き込みには注意して下さい。

39: ◆dkVeUrgrhA
07/03/23 23:38:04 79PH3+n7
>>32
俺的にははっきり言ってくれた方がうれしい。ありがとう、参考にするよ。

>>36、51様
代弁ありがとう。俺も同意見だ。

みんなー、まったりしようぜm(_ _)m

40:名無しさん@ピンキー
07/03/23 23:39:11 QW15ZpWj
正直、あんまり読む気がしない

41:名無しさん@ピンキー
07/03/24 00:54:01 Z6aG/rXQ
>>40
そんなら書けば?

42:名無しさん@ピンキー
07/03/24 01:11:27 8BlPKAiA
>>41
お前マジで頭いいな!

43:名無しさん@ピンキー
07/03/24 02:25:50 OORyAG+T
熟女ヤンデレはありますか?
無いなら脳内で。

44:名無しさん@ピンキー
07/03/24 02:36:06 UPNMoHZL
wktk

45:名無しさん@ピンキー
07/03/24 06:32:12 K7eLtHnR
>>43
そのほとばしるリビドーをプロットにして前スレに投下してみないか?
もしかしたら職人さんが書いてくれるかもしれないぞ。前例もあることだし。

46: ◆kNPkZ2h.ro
07/03/24 14:27:44 UIL5bFFq
上書き第10話後編、投下します。
選択肢1・すぐに携帯電話を確認する、のB-1ルートからです。

>保管庫管理人様
いつも更新お疲れ様です。
申し訳ありませんが、前回第10話として投下した分を「第10話前編」に修正してください。
ご迷惑をおかけしてすみません。

47: ◆kNPkZ2h.ro
07/03/24 14:28:35 UIL5bFFq
 俺は一目散に床に静かに横たわっている携帯電話の下へと駆け寄っていった。

 そもそも加奈が”急に”こんな事言い出すのは明らかにおかしい。
 何か『きっかけ』がなければ俺と目を合わさないなんて事はありえない。
 そう考えるならその『きっかけ』として最も怪しいのは、机の上にあったはずなのに、
 不自然にも今は床の上で沈黙を守っている携帯電話だ。
 加奈はその携帯電話の中の”何か”を見てこんな事言い出しているんだ。
 ならば今すべき事は真っ先にその中身を確認する事だ。
 俺と加奈の関係の脆さを思い知った今、僅かな溝ですら作ってはならないのだ。
 加奈が知っていて俺が知らない、そういった状況から勘違いが生まれ崩れていくのだ。
 二度とそんな事は御免だ。

 その一心で素早く携帯電話を掴み取り、俺はその中身を確認した。
 その『中身』の内容を読んだ瞬間………
「………は、はは…」
 いつも俺の行動の邪魔をしていた理性の壁が崩壊して、
 心の奥底からかつて味わった事がない程”気持ちいいもの”が流れ込んできた。
 それが俺の思考回路を急速に早め、やがてある”一つの結論”に至らしめた。
 その『答え』を理解した途端、心が痺れた。
「はっ、はははははははははは!!! あーっ! ははは!!!」
 そして笑いが腹の底から込み上げてきた。
 抑えようと思っても抑えられない程愉快な気分になってくる。
 何時間も考えていた問題の答えを解き明かしそれが正解だった時のような、
 全身全霊で喜ぶべきそんな状況。
 ふと加奈に目をやると、その表情は既に満面の笑顔だった。
 二度と離れまいという意識が読み取れる程目線を俺と合わせてくる。
 その確固たる意思に安心感を覚えながら、俺は携帯電話を放り加奈の下へ歩み寄る。
 近付いてみると、笑顔を向けながら加奈は小さく小刻みに震えていた。
 その嬉しくて震えている肩に俺はそっと手を添える。
「…加奈…、俺今凄く嬉しい。やっと”解った”んだからな…。加奈は嬉しい?」
 肩に添えていた手を口元に移し、ピンク色の柔らかい唇を優しくなぞってやる。
 その仕草に擽ったそうに笑いながら、加奈は俺の背中に手を回してきた。
「うん! とっっっても嬉しい!」
 大袈裟に告げながら俺に体を預けてくる、そんな動作一つ一つが心地良い。
 そして何より、加奈と心が一つになったという事実が俺に満足感の快楽を与えた。
 今までは存在がいるだけで、その幸せを大きく見せる事で満足するようにしてきた。
 だが、そんな仮初の幸せなんて欲してない。
 欲しいのは加奈との真の心からの繋がり、その為に”何をすべきなのか”分かった。
 こんなに簡単な事だったんだ。
 何年も付き合っていたのに何故気付けなかったのか不思議に思う。
 しかし、過去は消えない、そんな物はどうでもいいのだ。
 重要なのは未来、未来の道末は自分たちが決定権を持っている。
 だから、その決定権を駆使させて貰う、幸せな未来の為に。
 そして………
「それじゃ、行くか…?」
「うん!」
 ”加奈の幸せの為に”。

48:上書き ◆kNPkZ2h.ro
07/03/24 14:30:23 UIL5bFFq
 きっとあの携帯電話の中身を見なければ、俺はまだ闇雲に手探りし続けていただろう。
 言葉で伝えなければ理解し合えないような、”薄っぺらい”関係のままだっただろう。
 だから、『答え』に気付かせてくれた『奴』には心から感謝している。
 本当に心から…そう、何度”殺しても”足りない位に感謝している。
「ははは…」
 そんな事を考えているとまた笑いが込み上げてきた。
 慌てて下唇を噛み、漏れ出さないようにしっかりと堪えようとする。
 まだここでは駄目だ。 
 しっかり”あの場所”までは我慢しなくてはならない。
 ”あの場所”へと行って”すべき事”を遂行したら、その時は思い切り笑ってやる。
 それこそ、今の闇夜の空を切り裂き、明るい朝を強制的に呼び出す位にな。
「誠人くん、興奮し過ぎだよ」
「男ってのは、夜に満月を見ると狼になるもんなんだよ」
「その血が騒いでいるって事かな?」
「分かってんじゃねぇか」
 靴を履きながら冗談を言ってくる加奈の黒髪を優しく撫でてやる。
 相変わらずどこにも淀みのない、一本一本が生きているような美しい長髪だ。
 髪に対して性的魅力を覚えながら、俺は玄関の扉を開けた。
 その扉は物凄く軽く、俺たちの事を後押ししてくれているようにさえ思えた。
 開いた扉の先に広がっていたのは、ただひたすら深遠な闇。
 そして、その中にたったひとつぽつんと佇んでいる本能を燻る魔性の存在。
「今夜は満月か………」
 見上げた空に光るどこにも隙のない円形の満月に向かって、俺は決意を新たにした。
 その決意の対象の事を思い浮かべて、『奴』が送ってきたメールの内容を思い浮かべ、
 俺は心の中で厭らしい笑みを浮かべた。

          ――――――――――          

 隣を歩く誠人くんはとても頼もしく見える。
 いつも頼もしかったけど、今日はいつも以上に凛々しい。
 きっと”あのメール”のおかげなんだろうな。
 ”あのメール”を見て、あたしたちやっと分かり合えるようになった。
 そういった意味では”あのメール”の送り主さんに感謝しなきゃならないんだろうな。
 うん、感謝するよ。
 今回だけは、わざわざあたしたちの仲を取り持つような事をしてくれた事に感謝する。
 でもね…やっぱりあのメールの内容は許せないな。
 誠人くんの事を小馬鹿にした口ぶり、そして何よりあたしたちの仲を崩そうとしている
 意思が滲み出ている内容…。
 それに関してはどんなに譲歩しても許し切れない…。
 だから、その”お礼とお仕置き”にすぐに向かってあげるよ…。
 首を長くして待ってよ…すぐに楽にしてあげるから…。
 あたしは決意を胸に秘めながら、誠人くんの隣に寄り添いながら闇夜の道を突き進んだ…。

          ――――――――――          

49:上書き ◆kNPkZ2h.ro
07/03/24 14:31:19 UIL5bFFq
 俺たちは『奴』の家の前へと辿り着いた。
 真新しく見えるインターホンを弱く押し、その場で数秒佇む。
 そして、インターホン越しに聞き慣れた声が耳に響いた。
『誠人くん?』
 他の家族に出られたら厄介だと思ったが、本人が出てくれた事に安心する。
 どうやら家の中から俺の姿は見えているようだ。
 加奈に隠れるように言って正解だったと自分を褒めながら、慎重に言葉を選ぶ。
「あぁ。伝えたい事があるから出てきてくれ」
『分かった!』
 その言葉と共に室内の音声が途絶える。
 しかし、屋外にいる俺にも分かる位うるさく階段を駆け下りる音が聞こえる。
 そんなに俺に会いたいのかと呆れながら、今日俺の事を好きだと言ったのは本当
 だったんだなと心の中で確かめた。
 どうでもいい事だけど。
 やがて足音が止まるので、扉の前から一歩下がる。
 案の定扉はこちら側に向かって勢い良く開いた。
 あのままあの場にいたら無様に扉にぶつかっていたなと、今日の俺はやけに冴えている
 という確証を広げる。
 そしてその扉の中から何も知らない様子の『奴』が出てきた。
「誠人くん!?」
「よう…『島村』………」
 俺はその一言の後………

『シュッ』

 一瞬の刹那…俺の顔を見て喜んでいる島村の喉下を、隠し持っていた
 ペーパーナイフで瞬間的に切りつけてやった。
 喉下を狙ったのは、叫ばれては困るのと、即死して欲しかったからだ。
 切り付けた瞬間、ナイフを持った右手に温かい島村の”命の証”が降り掛かる。
「…ガッはァ………ッ!」
 望み通り、叫ぶ事も出来ずに島村はその場に崩れ落ちた。
 その表情は、何故こんな事されているのか全く理解出来ないという困惑と、
 止め処なく溢れる血液に自らの命が刻々と削り取られている事への恐怖で歪んでいる。
 一瞬で島村の家の玄関は自身の血で赤い海と化し、そこに島村は順応している。
「今の島村………綺麗だぜ…なぁ、加奈?」
 俺はその惨めな死に様に、敬意を表したくなった。
 真の絆を築いていく為に一体何をすればいいのか、それを教えてくれた一人の人間に。
 加奈の方を振り向くと、加奈も島村の苦痛に悶える表情を見つめながら、
 恍惚の表情を浮かべていた。
「うん………本当に、ひたすら生にしがみつこうとして、悪意の欠片もない…。
 誠人くんに何かしようともしていない…こんな純粋な顔出来るなんて…。
 ちょっと嫉妬しちゃう位、それ位綺麗だよ?
 最期に誠人くんに『綺麗』って言っても貰えて良かったね…フフフ…」
 どこにも屈折したところのないその笑顔から、加奈の言っている事が本心だと分かる。
 やはり加奈と俺の考えている事は同じ…最期の最後まで俺と加奈の関係の強さを再確認
 させてくれた事に感謝しつつ、虚ろな目でこちらを見上げる島村と視線を合わせる。
「島村…お前の『メール』の質問に答えてやるよ…」
 既にもがく気力はなく、意識絶え絶えの状態にも拘らず島村は
 必死に俺の言葉を聞こうとしている。
 そこまでして聞く程の事じゃないだろと思いながらもその真っ直ぐな瞳に敬意を表す。
「”加奈だから”だよ」
 その答えを言った後島村の顔を見ると、既にその瞳に光彩は失われていた。
 指一本とて動かせていないその姿が告げる…”島村由紀は死んだ”。

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・


50:上書き ◆kNPkZ2h.ro
07/03/24 14:32:42 UIL5bFFq
「やったね、誠人くん!」
「あぁ、これで俺たち、やっと『一歩』を踏み出せるんだな…」
 加奈が俺に笑顔を向けてくれている…この儚い幸せを手に入れる為に、
 俺たちはどうしてあんなに不器用な事をしていたのだろうかと今になって思う。

 俺と加奈が幸せになる為に必要な事…その『答え』は簡単だった。
 俺は常日頃、”加奈の幸せの為に”行動してきた。
 そして、加奈は”俺の幸せの為に”行動してきた。
 つまり、俺の幸せと加奈の幸せは『同意義』だったんだ。
 俺がしたいと思う事は同時に加奈がしたい事に直結している。
 そして、加奈がしたいと思う事も俺がしたい事に直結している。
 深く考える必要はない、俺がしたい事をすれば良かっただけの話なんだ。
 相手の幸せだなんて難しい事を考えるより、自分がしたい事をする事こそが
 互いの幸せへの第一歩に繋がるんだ。
 それに気付かせてくれたのは島村が俺に送ってきた『メール』だ。
 露骨に加奈を侮辱したその内容を見て、俺は胸に黒いものが湧き上がるのを感じた。
 それは、殺意を抱きながらも理性が覆い被さって行動を制止させようとしたが故に
 生じた、抵抗力の産物だ。
 本当ならそこで思い止まるのが普通だったのだろう。
 それが世間的には正しいし、そうしなければいけないルールなのだ。
 しかし、そのメールを見た後の加奈の様子を見て、俺の中で理性が崩壊した。
 そう、加奈もあのメールを見て、また別の理由で殺意を抱いていたのだ。
 目的は『一緒』………ならば躊躇する必要なんか欠片もない。
 互いの幸せの為に、迷う事なく殺意のままに従えば良かったんだ…。
 そうする事で、俺と加奈の幸せが叶うんだ、こんな簡単な事はない。

「それと誠人くん、一ついいかなぁ?」
 甘ったるい口調で加奈が俺を見上げながら訊ねてくる。
「何だ?」
「これからは、あたし以外に『綺麗』なんて言うのは嫌だなぁ…」
「何だ、そんな事か」
 思わず笑ってしまった。
 そんな俺の態度が御気に召さないようで、加奈は頬を膨らましている。
 露骨に怒っている加奈の下へと歩み寄り、そっとその小さな体を抱き締める。
「俺が好きなのは城井加奈一人だ…。加奈が好きなのは?」
「誠人くん…あたしが好きなのは、沢崎誠人くん、あなた一人ですっ!」
「良く言えました」
 俺の背中に手を回す加奈を抱き締める力を一旦抜く。
 今まで相手の為とか、『上書き』とか、陳腐な事を言い合って恋人ごっこを
 し続けていたけど、もうそんな事に惑わされる事はない。
 心が一つになった今、もう俺たちは言動や行動で伝え合わなければならないような
 関係ではなくなったんだ。
 加奈と見つめ合いながら、俺は”『一歩』を踏み出す為の”口付けを交わした。



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4643日前に更新/189 KB
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