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138:風と木の名無しさん
06/12/29 19:59:09 AhJ6Mnn+0
>131 はい、続き
>135 セツナス GJ! そして雰囲気ぶちこわしでゴメ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) ウカーリ ツヅイチャッタ!

***
前作のあらすじ
千年ぶりに復活した魔王エイナルを倒すために旅立った勇者達。
伝説の防具「流星のニップレス」を無事手に入れ、目指すは魔王の住む城
アパァトメント・クロガーネ!
しかし行く手を阻む魔王の人類総攻め化計画―タイムリミットは受けが
攻めになってしまうまで! 残された時間は少ない、果たして間に合うか?!

139:風と木の名無しさん
06/12/29 20:01:12 AhJ6Mnn+0
旅の途中―
空を見上げる勇者。その瞳に浮かぶものは煌く星と月、そして―愛する
受けの面影。鍛え上げた巨体を丸め、在りし日の幸せを思い出す。
身につけている紫のラメ入りビキニにそっと手をやり、ああそういえば
このパンツもまた受けが自分のためにと買ってきてくれたものだったと思い出す。
恥じらいで頬を染め、そっとこちらから視線を外しながら差し出した仕草。
おそろいなんだ、と小さな声で呟いてえへへと笑った彼の笑顔。眩しく輝いた白い歯。
熱く胸に込み上げた情熱に押されて、思わず食卓テーブルに押し倒した事。
抱きしめた身体のがっしりとした肩口の厚み、優美に盛り上がった背筋の描く美しい曲線。
あの全てが夢だったのではないかと―そう思われるのは、月があまりに綺麗だからだ。

月のような人だった。
色白の身体に無駄なくついた筋肉、それで織り成すサイドトライセップスはまるで
三日月のような弧を描き、人を圧倒し寄せ付けない孤高の美しさを放っていた。
それでいて自分に向けてくれる笑顔は無邪気で優しくて―光り輝いていた。歯が。
愛しい人を思い出し、そっと溜息を吐く。
そんな勇者の背後から魔法使いが躊躇いがちに声をかけてきた。
「……悩み事かな」
「ガンバルス……」
声をかけられて振り向くと、老いた魔法使いが優しく微笑みかけてそこに立っていた。
「受けの……ことを。姫五郎のことを、少し考えていただけだ」
姫五郎。三国一の受けと言われたあの人。
彼が攻めになってしまう。もし間に合わなかったら。
その時自分達は、どうなってしまうのか。
多くのカップル達のように破局を迎えるのだろうか。
そう思うと気が狂いそうになり、夜も眠れず腹筋500回を猛烈にかましてしまうほど、
勇者は思い悩んでいた。

140:風と木の名無しさん
06/12/29 20:03:15 AhJ6Mnn+0
「大丈夫じゃよ」
穏やかに老魔法使いは言う。
「万が一―受けが攻めになるようなことがあったとしても、お前さんがたに
 愛がある限り、何一つ問題などない。……大丈夫じゃ」
遠い目をして、月を眺める魔法使いの横顔を勇者は黙って見つめた。
魔法使いは多くを語らない。三千年という時をどう過ごしてきたのか―
辛いことや悲しい別れもあっただろうが、黙して彼は微笑んでいる。
もっとも、一番大事なことは魔法使いの身体を見れば全て分かるのだが。
年をとってもなおはっきりと分かれたシックスパッド、首から肩へかけての
穏やかなる曲線が示す筋肉。大柄な身体が生む威圧感は年輪を経て
ますます増し、味方にとってこれ以上なく頼もしい存在だ。
彼が乗り越えてきた困難の一つ一つがその身体に刻み込まれ、筋肉達が
高らかに歌うのは覇者だけに許される英雄伝―そんな漢なのだ。
だから、勇者は彼の言葉に頷いた。
「ああ、信じるよ。受けを。愛を。俺達の未来を」
俯いていた顔をあげ、煌く月を眺める。きりっとした緊張感に厚い胸板の
乳首もそそり立ち、震える。

必ず取り戻すのだ。受けを。

月がそんな勇者を優しく見守っていた。

141:風と木の名無しさん
06/12/29 20:05:16 AhJ6Mnn+0
アパァトメント・クロガーネ―
数々の苦難を乗り越え、とうとうたどり着いた敵の本拠地。
意外と庶民的な形の黒く四角い箱型住居の一部屋一部屋の扉を勇者達は
片っ端から開けまくっていた。
「くそっ……、こう数が多くちゃ!」
「こんな扉に手間取っている間に受けが攻めにされちまう……!」
弓使いと斧使いのでこぼこカップルが呻く。ずらりと並んだ扉はとにかく数が多く、
その部屋のどこにエイナルと受けが潜んでいるのか全く見当もつかない。
「どうにかならないのか、ガンバルス!」
焦燥に駆られた仲間からの叫びに、しかし魔法使いはううむと唸っただけ。
「くっ……」
全ての扉を開けていくしかないのか―そう思いながら69番目の扉に手をかける。
がちゃり、と扉を開け放つ。鍵はかかっていなかった。
中は普通のワンルーム、がらんとした部屋には調度もなく無人であった。
「くそぉっ!」
叫んで扉を蹴りつけた勇者の脳裏に、天使の言葉が蘇る。

笑顔を忘れてはいけません。そう、どんなに辛いときでも―

ふっと身体の力が抜けた。そうだ、忘れてはいけない。俺達は常に笑顔を―
勇者は大きく息を吐くとにっこりと微笑んだ。そしてゆっくりと、自分の身体を
一番良く見せられるポージング―マストモスキュラーのポーズをとる。
心が落ち着く。
そんな勇者の心境に連動するように、勇者の乳首に貼り付けられたニップレスが
突如として輝き始める。ふわりと淡く光を放ったかと思うとそれはたちまちに強さを増し、
虹色の光が両の乳首から放たれる。

142:風と木の名無しさん
06/12/29 20:05:19 4ThJnRuN0
>>137
GJ!!!
やばい萌えた。ニヤけとまらん

143:風と木の名無しさん
06/12/29 20:07:18 AhJ6Mnn+0
「なっ、なんだ?!」
「おい勇者、この光は……!」
仲間達から驚きと疑問の野太い声が上がる。しかし、勇者の耳にその声は
届いていなかった。光の指し示す先―そこに、自分の求めるものがある!
直感的にそれを悟り、勇者はうおおおと雄叫びを上げた。
叫びとともに光が帯状になり勇者の身体へと纏わりつく。光を纏い、今や
黄金の戦士と化した勇者は光の指し示す方向へと突進した。
「待っててくれ、姫五郎!」
どごおっ
壁にぶち当たり、それをぶち抜き、瓦礫を掻き分けて勇者は前へと進む。
仲間達はこれがニップレスの力なのかと驚きながら後へと続く。
次々と壁をぶち抜き、二十枚目の壁を突き破ったところで勇者の脚が止まった。
この部屋だけ明らかに内装が違う。黒に塗られた壁、春の麗らかな日差しを
遮るカーテンも黒、そしてそこだけ不釣合いに豪奢な天蓋付のベッド。
そしてベッドの上に愛しの受け、姫五郎の姿を見つける。
「姫五郎!」
「攻め!」
勇者の姿に気づいた受けは駆け寄ろうとして、すぐにはっと気づいて叫んだ。
「だめだ!」
激しい恫喝に思わず立ち竦む勇者。訝しく思って受けの顔をじっと見返すと、
受けは悲しそうに顔をゆがめ、小さな声で呟いた。
「来ちゃだめだ、攻め。俺の身体はもう、俺の物であって俺のものじゃない」
「何を言ってるんだ……?」
「俺はもう、魔王エイナルに身体を乗っ取られてしまった。
 奴が眠っている今はいいが、奴が目覚めたら―俺は、きっと」
そこで受けは言葉を切った。言うことがとても辛いというように、涙が両目から溢れる。
震えながら受けは言葉を口にした。
「俺は、攻めを抱いてしまうだろう」

144:風と木の名無しさん
06/12/29 20:09:19 AhJ6Mnn+0
「…………!」
その言葉に勇者は衝撃を受けた。
「間に……」
意識せず呟きが口から漏れる。間にあわなかった。
ショックのあまりがっくりと膝をつく勇者。力なく項垂れた彼の胸元から
黄金のニップレスがぺろりと剥がれ落ちる。受けを救いたいという熱い思いが
失われた今、彼は勇者としての資格を失ったのだ。
ニップレスは勇者の胸にしか張り付かない。
「……逃げてくれ、攻め。俺は……君に抱かれたいとは思っても、
 抱きたいとは……今でも、やっぱり思えないんだ……」
涙ながらの受けの言葉に、勇者―いや、いまやただの攻めとなった男が顔を上げる。
「受け……」
じっと見つめる、久しぶりに見る受けの顔はやつれていた。
無精髭がまばらに伸び、それを隠したいのか顔の下半分を手で覆っている。
あれだけ逞しかった筋肉も少し落ちて一回り小さくなった印象だ。
だがそれは、紛れもなく攻めが愛した受けその人だった。
攻めは受けを見つめ、そして瞳に決意の色を浮かべると立ち上がった。
「俺は……逃げない」
低く、だがきっぱりと言われた言葉に受けの目が見開かれる。
「俺は逃げない。お前と一緒にいたいんだ、受け!」
「だけど……!」
「例え俺を掘ろうとしても、いいんだ。いいんだよ、そこに……愛が、あるなら」
攻めの言葉に受けは激しく首を振った。
「いやだ! いやなんだ、俺が、俺が君を抱くなんて、耐えられないんだ!!」
魔王エイナルに身体を乗っ取られ、身体は既に攻めとして目覚めながら、
それでも受けは攻めにとって受けでいたいのだと叫んだ。
「なら……なら、もう一度俺は受けを抱く。攻める喜びなんか、忘れさせてやる……!」
「! 攻め……!」

145:7/10 イレワスレテタ
06/12/29 20:11:23 AhJ6Mnn+0
力強く言い切る攻めの胸元に、床に落ちていたニップレスが宙を舞い再び張り付く。
黄金のオーラを放つ厚い胸に受けは飛び込んだ。
再び勇者となった攻めは受けをその胸にしっかりとホールドする。
受けの身体を覆うのは勇者と揃いの紫のビキニ。そのぴちぴちに張り付いたビキニが
勇者を誘っている。高鳴る胸の熱い鼓動、久々の抱擁に身体が溶けそうな幸せを感じる。
だが、間もなく受けは勇者の腕の中で苦しみ始める―魔王エイナルがおやつの後の
睡眠から覚めたのだ。受けたいという心と攻めたいという渇望に挟まれ、受けは苦しむ。
そんな受けに攻めは優しく口付け、その巨体で持って優しく包み込む。
まばゆい光を放つニップレスに気づいたエイナルは、それこそが自分を苦しめる産物だと
気づいて勇者の胸から引き剥がそうとした。
だが、その伸ばされた手を勇者の手が掴む。
「エイナル……あんたは、何を怖がっているんだ」
肌を重ね、間近で目覚めた魔王と触れ合うことで勇者には魔王エイナルの思考が読めた。
その心の奥底に秘められた不安や恐れといった感情さえ覗くことが出来た。
「わたしが、何を恐れているだと……!」
「怖がっているじゃないか、今だって。何も……恐れることはないのに……」
優しく抱きしめる勇者に、エイナルが震え上がる。
その光景を見ていたガンバルスははっと気がついた。
「そうか……そうだったのか、魔王エイナル……」
目の前の巨体の男二人の組んず解れつに一歩近づき、厳しい眼光で魔王を質す。
「魔王エイナル、あんたの本質は攻めじゃないんだ、受けなのだ」
老魔法使いの言葉にぴくりと受けの―エイナルの身体が強張る。
「そうだろう。エイナルは発音記号、魔王エイナルの正体とは愛の神アナルじゃ!」
なんと、と仲間達がいっせいにガンバルスを振り返る。

146:風と木の名無しさん
06/12/29 20:13:29 AhJ6Mnn+0
「そう―昔、遥かな昔に聞いたことがある。
 我らが神ヤオゥイと愛を誓い合った神アナルの神話を。
 彼らは愛し合い、永遠を誓ったがある日を境に互いを憎み、戦うことになった。
 その原因は―」
哀れむような眼差しで、ガンバルスはエイナル―アナルを見遣った。
アナルは笑った。泣きながら、笑った。
「そうさ、あいつが俺に、今度ちょっと逆でやってみない?なんて言ったからだ!」
その場にいた全員が凍りつく一言。
彼らにとってはとても重要な受けと攻めの役割を、そんな風に簡単に交換しようと
言われたアナル―しかも彼は生粋の受けだというのに。その時の彼の心境は、
どれほどつらかったことだろう。
「言われても俺にはあいつを攻めることが出来なかった。
 あいつは仕方ないよと言ったけど、そんなことを言われても惨めなだけだった。
 俺は、俺は、だからあいつを……」
「―満足させられる『誰か』を見つけるために、人類を攻めに次々と変えていった」
静かに言ったガンバルスの言葉に、勇者の腕の中で魔王と呼ばれた神は頷いた。
「俺じゃない誰か……あいつを攻められる、誰かを……ずっと探してた……」
ガンバルスは静かに息を吐くと、ついで大きく吸い、一喝した。
「ばかもンが!!」

老体から発せられたとは到底思えぬ声量が部屋に響き渡る。
「そんなことをしてなんになる、ヤオゥイが求めたのは他でもない、お前だろうに!」
怒鳴られてしゅんとなるアナルを勇者は抱きしめ、ガンバルスに言いすぎだと言った。
受けの短い五分刈りの頭を撫でながら、優しくささやく。

147:9/10 マタワスレテタ
06/12/29 20:15:31 AhJ6Mnn+0
「ただ、攻めが―ヤオゥイ神のことが、あんたは大好きだったんだ。
 それだけのことだろ?
 ……そうさ、あんたはヤオゥイを愛してる。今でも。だから、こんな計画を……」
泣きながら受けがしがみついてくる。もはやそこに攻めたいという渇望はない。
アナルはアナルなのだ。攻められることを願い、ただ愛した男を受け入れたいと願う。

「……俺じゃ、ダメだな。あんたが愛してるのは、ヤオゥイだた一人だ」
勇者が呟いたその時、一際強く黄金のニップレスが光り輝いた。
そして光が人型を形作り―優しく輝き、言葉を発した。
『やれやれ……まったく、手のかかる奴だな』
苦笑混じりの優しい言葉には深い慈愛の響きが宿っている。
その場の誰もが目を剥き、驚きに息を呑んだ。
「まさか……」
「……ヤオゥイ神」
誰のものとも知れぬ呟きに光がふふっと微笑む。
『そのとおり。エイナル―いや、アナル。迎えに来たぞ』
微笑み受けへと手を伸ばすと、黄金の光に釣られるように白金の光が
受けの身体から引き出され、人の形を創り出す。
『すまなかった。わたしの軽率な一言で、お前がこんなにも傷つくとは―
 愛があればなんでも許される、そう思っていたのだ。
 わたしは愚かだ。そのわたしを、許してくれないか。
 わたしは、いまでも、お前だけを愛している―』
黄金が言葉を紡ぎ、白金が煌き震える。
静まり返った四畳半に、喜びが悲しみか、震える声が漏れる。

148:10/10
06/12/29 20:18:35 AhJ6Mnn+0
『ヤオゥイ……わたしこそ、許されない罪を犯した。
 無関係の人々を混乱に巻き込み、多くの別れを生み出した。
 それでも、わたしを愛しているといってくれるのか』
『……そうだ。お前の罪を生んだのもわたしに責任がある。
 お前の罪はわたしの罪。ともに背負い、償っていこうではないか』
『ヤオゥイ……!』
感極まって白金は黄金へ飛び込んだ。まばゆい白い光が溢れるように飛び散る。
『人間達よ、すまない。我々の起こした愚かな過ち、これから先の未来でもって
 必ず償っていくと約束しよう』
黄金の光がそう宣言し、暖かな光が部屋いっぱいに満ちる。

そして光が消えた後、誰もが呆然としている中―
「……攻め」
受けが勇者の胸に頬を寄せ、幸せそうに微笑んだ。
勇者もまた、きつく受けの肩を抱く。
その姿に仲間達はやっと我に返り、そそくさと視線を逸らし部屋を出て行く。

今まさに愛を交わさんとする二人に、ガンバルスがにやっと笑って
「ほら、大丈夫じゃったろう」と言った。
勇者は笑い、受けを抱きしめ頷いた。
「ああ! 俺達は、何があったって大丈夫さ!」



ロードオブザニップレス ホモの帰還 おわり

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すまん通し番号入れ忘れ
感動巨編とか目指してたっぽい ムリポ

149:風と木の名無しさん
06/12/29 20:41:17 jIa6Wu3A0
>>138-148
もう大好きだ!姐さんGJ!!

150:風と木の名無しさん
06/12/29 21:05:35 EgPmmSxY0
>138さん、GJ!

なんかすげえ笑っった。いちいちツッコミ入れながら笑った。
幸せにな!勇者&受!我らがヤオゥイ神&愛の神アナル!
GJ!

151:風と木の名無しさん
06/12/29 21:21:05 stf+ko8E0
>>138-148
あのバカスな話が感動ものにwwwGJ

152:風と木の名無しさん
06/12/29 21:28:47 t/It6edy0
>>138
あかん、あまりのことに何度か途中で離脱してもーた...___o_
こここ、これをよくぞ書ききった! 素で素敵!!

153:風と木の名無しさん
06/12/29 23:58:14 XjYezU9OO
>>138
随所に散りばめられた小ネタも素晴らしいとオモタw
ガンバルスとか弓使いと斧使いのカップルとか…ニヤついてしまう。

154:風と木の名無しさん
06/12/30 01:39:16 FnhNggPf0
>>138
嫌な一日を笑って締めくくる事が出来るよw
笑いをありがとう!

155:風と木の名無しさん
06/12/30 17:08:51 HL9Pg6TU0
>>138
感動したよwww大好き

156:風と木の名無しさん
06/12/30 20:03:49 5x+O38a50
>>138
GJwww 大笑いして心が晴れ晴れした
前編含めて保存して、辛い時の薬にするよ!ありがとう!

157:風と木の名無しさん
06/12/31 06:37:54 1eVpotpb0
>>138 わ、笑っているのか感動しているのかわからなくなった!超GJ!

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟 リバ設定だが兄×弟のみ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  平安W@DEEP
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

地雷注意!パートナー外濡れ場あります

158:平安W 1
06/12/31 06:39:52 1eVpotpb0

 風を切る音をたてて矢が飛んだ。
 「ふうむ」
 その行方を確認してまた、弓に矢をつがえる。
 鋭い軌跡を描いて、それもまた飛ぶ。

 ――我ながらたいした才能だな
 的を眺めて兄者は思う。

 ――これだけ打って、一つも当たらぬとは
 辺り中に外した矢が散乱している。
 
 東北の対の自室の裏の弓場で、珍しく練習などしている。
 こう見えても一応武官である。五位蔵人にして右近衛少将。
いざ、という際には主上をお護りする立場にある。

 ――剣術の方は割にましなんだが
 しかし弓はからっきしだ。なのに昔、初めて競弓(くらべゆみ)に自分の代わりに出た弟者が、
あれほど言っておいたにもかかわらずむきになって優勝して以来、名手と言うことになっている。
 あとで姉者に聞いたところ、面憎いほど冷静な表情で、血の気を昇らせていたらしい。

 ダメ押しでもう一矢。何故か自分の後ろに飛んだ。
 「何を器用なことをやっている」
 ふいに現れた弟者が声をかける。内裏から戻ったばかりらしい。
 「おまえのせいだ、おまえの」
 「お教えいたしましょうか」
 「けっこう。もう止めた」
 あきらめて矢を拾い集める。そういえば、辺りに闇が忍び寄る。
霜月も半ばの今は日が落ちるのが早い。

159:平安W 2
06/12/31 06:42:20 1eVpotpb0


 よく熾された火桶の火が赤い。温めた酒も運ばれたので、今夜の寒さはしのぎやすい。
 「ああ、これさっき届いた」
 渡された物は安っぽい草子。紙の質も最低のものだ。
だが兄者は瞳を輝かす。
 「ついにVがでたか」
 表紙には下手な字で“タケルの秘密大作戦 V”と書いてある。

 「何だその、趣味の悪そうな草子は」
 「失礼な。現在イチ押しの作品だぞ。
ヤマトタケルくんが毎回父である天子に絶対不可能と思われる任務を押し付けられて、
何とか苦労してコンプリートするアクション大作だ」
 「古事記のあれか?」
 「そうだ」
 「弟がまず双子の兄を殺す話だろう。あんたはよく平気だな」
 オウスノミコ(後のヤマトタケルである)は、
父の所有物の美人姉妹を奪った兄のオオウスノミコを独断で殺した。
 「Tの冒頭(イントロ)がそこだった。美人姉妹はともかく、
ご飯を一緒に食べないから、ってのは凄い理由だ」
 兄者は気にしていないようだ。こいつの感性は少し変だ、と弟者は思う。


 双つ子はこの時代、大きな禁忌だ。
 その為、大納言家にそう生まれた二人のうち弟は、陰の存在である。
父者が内大臣に出世した今もそれは変わらない。
 もっとも元服の頃から、似ているのをいいことに入れ替わりの生活を送っている。
 五日に一度は兄者が出仕、残りの日は弟者が働く。


160:平安W 3
06/12/31 06:44:23 1eVpotpb0
 
 双つ子が禁忌であることの原因の一つはこの話ではないか、と弟者は考える。
 「苦手だな、この話」
 「これは純然たる娯楽だ。朝タケルくんが目覚めると、枕もとに文が置いてあるのだ」
 「ふーん」
 「―おはよう、タケルくん。本日の君の使命は、で始まって、
―なおこの文は自動的に消滅する、で終わる。お約束だ」
 「どうやって消滅するんだ?」
 「ああ。毎回どこからか訓練されたやぎが飛び込んできて、その文を食ってしまうのだ」
 「一つ聞いてもいいか」
 「かまわんが、何か」
 「この時代、この国に紙はあったのか」
 「公式にはまだだ。しかし絶対にないと断言はできない、という時期だな」
 「微妙」
 「木簡が置いてあってリスが齧る、ってのはどうだろう。書き手にお便りしてみようか」
 「いやいい。柿一つと交換できる安草子にそこまでの考証は求めない」
 「まあ努力はした方がいいが。で、今回の話しでついにオトタチバナ登場だ。
予告じゃツンデレだそうだ。楽しみだな」
 「今さらツンデレもね……飽きた」
 という弟者は誰かの顔を思い出しているようだ。兄者は少し身を寄せた。
麝香と白檀の合わさった匂い。
 ――今日は藤壺か。

161:平安W 4
06/12/31 06:46:42 1eVpotpb0


 最近弟者は一壺一人運動のつもりらしい。
つき合っている女房を多少整理して、重複が無いようにしている。
 一人と別れたら補充はそこでするので、なり代わっても相手がわかりやすい。
それはそれでなかなか手痛い。

 ――タコツボの女房でも探しているんだろうか
 両手に余る恋人たち。彼と閨を共にしていても自分が別人だとは気付けずに、
時たま露骨に甘えてきたりする。
 それをつれなくて、でも魅力的な情人のふりでさらり、とかわす。

 ――いつものことだ。いつもの
 急に空気の味が苦くなった。なんだか、息苦しい。体が重い。
 「………弟者」
 ふいに名を呼ぶ。見返した瞳の色素はわずかに薄い。
 「寝よう」
 驚いて、それから頬が染まる。そんな様子がいとおしい。
 「おまえが下でいいか?」
 拒否はしない、とわかっていた。



162:平安W 5
06/12/31 06:49:34 1eVpotpb0

 紐解くのは苦手だから自分でほどかせた。
 白練絹がするりと滑り、よく似た光沢を持つ膚が露になった。
 うなじから肩の線にゆっくりと唇づける。
 それが火を点すのを待っている。
 火桶の炭がじっくりと燃えていくのを待つように。
 触れられることの好きな彼が、続きを促す。
 そっと唇を下げていく。胸もとでそれを止め、舌先とそれで過敏な部分を煽ってみた。

 この東北の対は自分には堅固な城だ。
 だが、彼にとってはゆるやかな檻であることを知っている。
 そして兄者自身もその檻の一部であり、看守であることも確かだ。
 ――放してやりたい
 いつもそう思っていた。
 ――そうしたくない
 同時に考えている。
 愛情を餌に彼を泳がせ、そして縛っている。
 彼の感情と行動に、いつも自分の影を見ている。


163:平安W 6
06/12/31 06:50:52 1eVpotpb0

 目を閉じて、素直に快楽を味わう彼の姿はとても綺麗だ。
 自分になんか少しも似ていない、と兄者は思う。
 相手の要望のままに唇を与えて、言うとおりにしているのにだんだんと焦れてくる、
その瞬間を待つ。
 かすかに瞼を開いて、切なそうな目を向けてきた。
けれど、声が聞きたくてわざと留めている。
 その形のいい薄い唇にねだらせたい。
 「………欲しい」
 ついに彼は耐えきれなくなる。
 唇を重ね、リクエストに答える。
 肩をつかむ手に力が入る。
 一つになるこの時、禁忌より祝福を感じている。
 「………弟者」
 あまり長くはもたないな、と考えた。

164:平安W 7
06/12/31 07:04:28 1eVpotpb0

 夜中に目が覚めたので、袿(うちき)をはおり、月を見るために廂(ひさし)に出た。
 回廊をぐるり、と歩き回り、一番良く見えるポイントを選んで、高欄に腰を下ろす。
 ひどく寒い。しかしほぼ満月に近いこの月は、その寒さを補って余りあるものだ。
 凍りついたような冬の月。手を伸ばせど届かない。
 代わりに一首、詠みあげることにする。

 「この世をば わが世とぞ思う 望月の
  ゲームは下手だが 漢検1級」

 「…意味がわからん」
 眠っていたはずの相手が適切につっこみを入れる。
 自分を探して出てきたらしい。
 「…気にするな」

 月の光を浴びる彼。夢の一部のようなその姿。
 左手を伸ばしたら右手で受けた。
 その温かな手をつかんで高欄から下りる。強く抱き寄せられた。
 
 ――恋しかるべき夜半の月かな
 いつかね、思い出すよ、この月を。おまえの姿と一緒に。
 なんだか少し、もの悲しいような想いがよぎった。


165:平安W 8
06/12/31 07:08:14 1eVpotpb0


 今度は弟者が風邪を引いた。
 一日は病欠届を出して休んでみた者の、かえって悪化したので次の日は兄者が替わることにした。
 「いいのか、今日は宿直までのフルコンボだ」
 「かまわん。寝ておけ」
 「一人だと眠りにくいんだ」
 「以前父者に下賜された薬が残っている。あれはよく効くから寝る前に呑め。朝まで起きない」
 「うむ」
 軽く頬をつつき、未練を抑えて立ち上がる。
 「行ってくる」
 弟者は黙って見送った。


166:平安W 9
06/12/31 07:09:44 1eVpotpb0

 通常通りに日は過ぎた。
 そう思いかけた冬の日の午後、お召しがあって玉座の端近くにいざり寄ると、
殿上童に弓を手渡された。
 驚くと主上がにこやかにおっしゃる。
 「皆が一番の名手は兄者だというから、見せてもらおうと思って」
 そういえば以前の競弓の際、東宮だったこの方はたまたまご不調でご覧になっていない。
 「いえ、あれはまぐれでして、その後の競弓には出ておりません」
 言を左右して逃げようとする。
 ところが周りは褒め称える。
 困ってしまって目を泳がせていると、従兄弟者が口をはさんでくれた。

 「このような所での遊び事はいささか危ない気がします」
 ――敬語の似合わないヤツだ
 心の中でくすり、と微笑う。だが事態は笑い事ではない。
 「そうか。それでは外に出て、月華門のあたりから射ってみて」
 大変なことになった。

 あの日、ふいに弓の練習がしたくなったのは、今日の予感でもあったのだろうか、
と兄者は内心青ざめている。
 主上は入れ替わりを知っている、という弟者の言葉を思い出して、
訴えるように見つめるが、穏やかに優しく微笑まれた。

 ――気付いていらっしゃっても、俺が弓が下手なことまでは知る由もない。
 勘のいい方ではないので、そこまでお考えにはならないだろう。


167:平安W 10
06/12/31 07:11:32 1eVpotpb0

 噂が人を呼んで女房たちまで出てくる。
 弟者のつきあいのある者など、扇を振り回したり、投げキッスをしてみたりと大変な騒ぎだ。
 みんな安全な位置から声援しているつもりらしいが、兄者の腕ではそんな場所はない。

 ――主上の近くに飛ばしてしまったらどうしよう
 死罪だな。表情に出さずに脅えている。
 ――そうじゃなくても、一矢も当たらなかったら
 あやしい、と疑われ真実を探り出されるかもしれない。
 一族郎党、流罪。いや、かえって温情を示されて弟者だけが流されることになったら。
 もちろん自分が代わりに行くつもりだが、それも許されずに引き離されたら。
 冷や汗が流れる。背筋に嫌な痺れが走る。
 ――その時は、なんとしても追っていく
 そう、古の軽大娘(かるのおおいらつめ)のように。

 ――逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。
 ふいに決意する。片肌を脱いで、遠い、あまりに遠すぎる的を見据える。
 寒さは少しも感じない。的を見ながら同時に、弓の練習をする弟者の姿を思い出してみる。
 背筋を伸ばし、腕に力を込める。
 ――この的を、おまえの心だと思う
 
 ひょう、と唸って矢は飛んだ。


168:平安W 11
06/12/31 07:14:17 1eVpotpb0

 従兄弟者の宿直所は梨壺にある。
 小さく味気なく殺風景な場所だが、目立たぬ位置なので気に入っている。それに運良く一人部屋だ。
 深夜、その戸がほとほと、と叩かれる。
 「入れ。掛金は外してある」
 予想していた。
 
 冷えた身体が、するり、と傍らに収まる。
 モノも言わずに紐を解く。
 衣の全てを引き剥いで、生身の膚に指を這わす。相手は躯をしならせる。
 乱暴に唇を重ね、少し疼痛を与える。
 燭台の灯りは消してあるが、声を殺して耐えているのがわかる。
 そのまま唇を転移させると、衾(ふすま)をつかんでその身を震わせる。
 いつもより興奮している。
 それは無理のないことだ。
 大観衆の前でのショータイム。しかも最悪な不得意分野。その上、命か流罪がかかっている。
ひとごとながら、見ているだけでも掌が熱くなった。

 「早く……」
 濡れた声がそそのかす。
 それを故意に焦らしていると、要求をはっきりと口に出した。
 なんの衒いもなく欲望に忠実。それがかえってこの男の底知れなさを際立たせる。
 言葉に従うと深くのけぞり、絶妙のタイミングで腰を揺らす。
 こちらも、冷めた顔ではいられない。
 こいつのセックスはひどくいい。気を抜いていると、もっていかれる。
 試合のつもりで相対する。
 今のところ勝ち逃げだが、逆転しかねない凄みがある。
 声が高くなる。相手の限界を見定めて、自分自身にそれを許した。


169:平安W 12
06/12/31 07:25:19 1eVpotpb0

 「……悪運の強い男だな」
 「自分でもそう思う。人生最大のまぐれ当たりだ」
 ベテランの衛士でも不可能な場所に置かれた的の真ん中を、ただの一矢でピタリ、と射抜いた。
 貴公子らしい優雅さで、その後主上に一礼する。
 それ以上は見せつけなかった事も、謙虚でいいと評判だった。
 「冗談じゃない。二度と当たるか」
 「だろうな」

 枕もとにおいてある酒を口に含むと、相手はふいに左手で顔を抑えて唇をあて、
その酒を奪い取った。
 「義理だてないのか」
 「まさか。俺は気持ちイイのが大好きだ。おまえのキスはけっこういける」
 もう一度、重ねられる。
 「そういうおまえこそ、和琴の上手いあの可愛い女房に取り置かなくていいのか」
 ふん、と鼻を鳴らされる。

 「キスなんかいくらしたって見えないが、痕だけは絶対に残すなよ……あいつがむきになる」
 従兄弟者に向かって念を押す。
 「殺されかねんか」
 「ならいいんだが。惚れた相手にジェラシーで殺されるって、最高の快楽ではあるまいか」
 兄者はくっくっ、と声に出して微笑った。
 どうやら本気のようである。
 「……厨だな、おまえ」
 「そりゃ、もちろん。伊達に禁忌を犯しちゃいない」
 片目をつぶった彼を見て、流石にこいつの恋人に同情しかける。
それを敏感に察したらしく、目の光を鋭くした。
間抜けなくせに、えらく手強い。

170:平安W 13
06/12/31 07:27:04 1eVpotpb0
 「おまえ、あいつのことけっこう好きだろ。すぐいじめるじゃないか」
 「確かにそそるな……あの嫌そうな顔は」
 「あいつに手を出すなよ……殺すぞ」
 笑いの中に毒がある。ぞっとするような苦さが見える。
 「おまえの場合、マジだからな」
 「そう。洒落にならない」
 「怖い男だな、おまえは」
 強い相手も、頭の切れる男も数多く見てきた。そのどれもが自分をたじろがすことはなかった。
命を張ったやり取りでさえ、恐怖を感じたことはない。
 だがこの人畜無害でとんまな男は、何か恐ろしいモノを秘めている。
もちろんそれは、その弟との特殊な関係性のことではない。

 「おまえに誉められるとは光栄の至り、だ」
 今度は土器(かわらけ)をさらい、くい、と中身を空ける。
 「女と寝てないわけじゃないんだろ」
 「ゼロとは言わんが多くはない。あいつ、そっちには敏感なんだ」
 ついでに尋ねてみる。
 「なぜ、俺だ」
 兄者はまっすぐ従兄弟者を見つめる。
 「一つ、おまえは香を薫きこめていない。
 二つ、ちゃんと大人だ。
 三つ、俺は割におまえのことが好きだ。
 それと……あいつに少し似ているからかな」
 「鏡でも見て、やれ」
 「違いすぎる」
 端から見ると同じ顔でも、似ているとさえ思えないようだ。

171:平安W 14
06/12/31 07:28:10 1eVpotpb0
 「おまえの方はなぜ承諾した」
 即答する。
 「容赦なくやりたいときに便利だからだ」
 「なるほど」
 その理由を気に入った様子である。少し嬉しそうな顔をする。
 「おまえはいいな。まっとうだ」
 意外なことを言われる。
 「俺は違う。あいつに惚れすぎてて、だから裏切る……酷い話だ」
 「のろけか」
 自嘲の苦味は重すぎる。
 「そうだ。……少しは妬いてくれんか。つまらん」
 さっ、と軌道修正に応じる。
 「そんな趣味はない」
 「こっちの趣味は合うのにな………もう一戦、どうだ?」
 悪くはない、と彼は思った。


172:平安W 15
06/12/31 07:30:24 1eVpotpb0


 五人ほどの僧侶が、東北の対の前の庭で護摩をたきながら読経中である。
あっけにとられた兄者は、そちらに軽く頭を下げて自室に入った。
 「……あれは何だ?」
 「母者の愛だ」
 うんざりと、弟者が答える。
 「さっきたまたま使いの者がきて、オレが寝込んでいるの見て驚いて帰った。
その後すぐにこの一団がやってきてこの騒ぎだ。……やかましい」
 「俺が寝込んだときには気づかれなくて良かった………む?」
 更に異質な音が加わる。
何事かと外の様子をうかがうと、禰宜と巫女が三人ほど現れ、祝詞を唱え始めている。
 「巫女さんだ!うわ、近くに行っていいかな」
 不愉快そうな弟者を見て、慌ててなだめる。
 「いや、イラストの参考にしようかと思って……また何か来た」


173:平安W 16
06/12/31 07:31:38 1eVpotpb0

 山伏の一団が現れ、祈祷を開始した。
 「……母者の愛は深いな。医者と薬師も来そうだ」
 「それはもう来て、帰った。ただの風邪だ」
 「ならいい」
 口づけると、薬の匂いがする。
 「伝染るぞ」
 「人に伝染すと早く直るそうだ」
 「けっこうキツいぞ」
 「おまえがそんな状態でいるよりいい」

 熱に潤んだ弟者の瞳が、兄者を見上げる。その視線を受け止める。
けして、反らさない。
 外からは読経と祝詞と祈祷の声が、滅茶苦茶に混じりあって聞こえてくる。
 兄者はもう一度、唇を重ねる。
 絡み付く熱い舌の苦い味。それは薬のせいではない。
 「………おまえが好きだよ」
 震えもせずにそう言った。そこに一つも嘘はない。
 「おまえだけが好きだよ」
 その温度が等しくなるほど、幾度も重ねる唇。
 閉ざされた部屋の外で、神と仏と何かが責める。


                              了

174:風と木の名無しさん
06/12/31 07:36:51 1eVpotpb0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ キセイカカリマクリ!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) コノヒトコマデマタ・・・
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

終了に向かいます。それでは良いお年を!

175:八ウスとウィ流ソン やおい未満
06/12/31 16:52:29 abAqXW7x0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 一度やってみたかった狐CHドラマ「家」フィク  
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  八ウスとウィ流ソン、やおい未満
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 未満カヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
狐CHで放送中の海外医療ドラマ「家」の八ウスとウィ流です
前回までのエピのネタバレ含んでますから注意
受けとか攻めとかそこまで行き着いていません。中年の純情をコンセプトにしました…

176:八ウスとウィ流ソン やおい未満 1
06/12/31 16:53:30 abAqXW7x0
 いつものあの痛み。ヴァイコディンを飲む。しばらく痛みが止む。それからまた、より
一層強くなって蘇る。さらにヴァイコディン、ヴァイコディン、多すぎるほどのヴァイコ
ディン、そして結局消えない痛み。
 俺はそういうものを毎日背中に背負って、顰め面で杖をついて病院内を歩き回っている。
痩せこけた顔、萎えた右脚、ぎょろりと剥いた目も大仰な物言いも、すべてがリチャード
3世みたいに醜悪なことを俺は知っている。シェイクスピア劇の悪役よろしく俺は毒舌を
吐き散らし、けれども真実を言い当て、医療と言う舞台の上でその役割を全うする。俺の
周りの人間はみな、俺の無遠慮な物言い、悪趣味なジョークに不快感を覚え、ある者は露
骨に、ある者は礼儀正しく俺を遠ざけようとする。ドクター・グレゴリー・八ウスはこの
病院の嫌われものなのだ。
 けれども俺は診断の際には正しいことを言える。他のぼんくらな医者たちが気づかない
患者の嘘、生活習慣、秘密を的確に探り出し、彼らを治療できる。だからどんなに俺が嫌
なやつでも、仕事のときだけは必要とされる。俺はそれを知っているから、どんなに周り
に嫌われたって気にしない。どのみち、俺自身が人間なんて大嫌いなのだ。彼らが内心俺
を嫌おうと蔑もうと構うもんか、俺だって俺みたいなやつが周囲にいたら絶対に嫌だ。
 でもウィ流ソンは違う。ウィ流ソンは俺を嫌っていない。
 何年も前、この病院に彼が就職したとき、俺ははっきり言って彼に興味なんてなかった。
ライトブラウンの柔らかそうな髪、ハンサムで人懐こそうな顔、清潔な身なり。いかにも
プレップスクール卒業の坊ちゃんという感じで、おまけにユダヤ系の医者。また一人つま
らないやつがやってきたと、内心鼻を鳴らした俺に、ウィ流ソンはにっこり笑って礼儀正
しく握手を求めながら、初めましてと言った。外見にふさわしい、優しそうな声だった。
俺は彼の右手を握り返さずに、また一人ユダヤ系の同僚が増えたのかといやみを返した。
どうせこの坊ちゃんの反応なんてせいぜい眉を顰めるだけだと思っていたら、ウィ流ソン
は涼しい顔で君はこの世界ではマイノリティなのさ、諦めろよ、ピューリタン、と囁くよ
うに―他の人間に聞こえないような声で―答えた。ユダヤ系の同僚が嫌なら別の職業
を選ぶべきだったな、と。

177:八ウスとウィ流ソン やおい未満 2
06/12/31 16:54:48 abAqXW7x0
 この年下の同僚が、柔和な外見の下に、なかなか強かな面を持っていることは、しばら
くして嫌というほどわかった。しかもそれだけでなく彼は有能だった。ただのプライドの
高いやつかと思っていたら、病院に来て最初の頃、わからないことがあればすぐに俺に―
―絶え間なく毒舌といやみを浴びせる俺に聞いてきたし、その質問の仕方も洗練されてい
た。覚えも早くて、知らないくせに知っているふりをする他の医者に比べれば、文句のい
いようもなかった。彼は数年であれよあれよという間に、しかも周囲の反感も買わずに出
世し、腫瘍科の部長になり、俺と対等なもの言いをするようになり、けれども決して俺を
ないがしろにしようとはしなかった。彼は部長になってからも、相変わらずわからないこ
とがあれば俺に聞いてきたし、俺以外の人間にも聞いた。彼はとても誠実な医者で、患者
を助けられる人間と方法があれば、それがどんなものであれトライしてみようという姿勢
を持っていた。俺は認めたくないがそんな彼を気に入った。彼はスマートな男だった。い
つの間にか俺たちは病院内ではほとんど常に一緒に行動するようになった。ウィ流ソンは
穏やかな、けれども何を考えているのかわからない表情で、気がつけば俺の隣にいて、俺
のダーティージョークやいやみを聞き流し、時には窘めて、そして最後には周囲と俺との
間を取り盛ってくれた。
 その頃、俺の右脚はまだ健康そのものだった。俺には奇跡的なことだが、美しい恋人の
ステイシーがいたし、俺は毎日のようにスポーツを楽しんだ。ときどきはウィ流ソンを誘
って。俺は自分が変人扱いされていることはわかっていたけれど、今のように自分を醜い
とは思っていなかった。多分、俺は少しばかりうぬぼれていたのかもしれない。変人だろ
うときちがいだろうと、俺が有能で敏腕な診断医であることは確かで、美人の恋人もいて、
どんなときだろうと正しいことを言えるただ一人の人間だと自分のことを思っていたのだ
から。
 だからきっと、俺の右脚がこうなったのは、天からの裁きだったのだろう。
 

178:八ウスとウィ流ソン やおい未満 3
06/12/31 16:55:35 abAqXW7x0
 俺は傲慢のペナルティを払った。嫌というほど払った。絶えず右脚が痛むようになった
とき、俺はあらゆる可能性を疑った。確かに、最初に俺が掛かった医者は無能だった。俺
の右脚に血栓ができていることに気づかず、適当な治療で俺を追い払った。でも俺は最初
から俺以外の医者なんて信じていなかった。ようやく血栓を発見され、右脚の切断を同僚
のカディに勧められたとき、俺はこの女は馬鹿だと思った。右脚を切断した変人なんてし
ゃれにならない。哀れすぎる。いかに有能だろうとそんなことは誰も気にとめなくなるだ
ろう。俺は別のやり方があるはずだと思い、かたくなにそれを通そうとした。その結果が
これだ。
 俺は自分の右脚に固執し、そのせいで命すら危うくなった。あのとき、朦朧としたもし
かしたら死ぬかもしれない、という予感はあった。だけど俺は自分の考えを曲げることな
どできそうになかった。何故なら正しいことを言えることだけが、俺の存在理由だから。
どんなに嫌な人間でどんなに変人だろうと、正しいことを言いさえすれば周りは振り向い
てくれるから。俺は自分が正しくなかったことを認めたくなかった。だから自分の命を犠
牲にしても、自分の考えに、治療方法に固執しようとした。血栓をなくし、すべてをなか
ったことにする治療に。多分あのままなら俺は死んでいただろう。事実俺は死に掛けた。
 けれど、ステイシーは俺が昏睡している間に、妥協策として血栓のために壊死した周囲
の筋肉を取り除く手術を行う同意書に勝手にサインした。目が覚めて俺が直面した事実は、
俺は間違い、俺は騙され、そして俺の右脚は役立たずになったということだ。俺は杖なし
では歩けなくなり、しかも一生痛みを抱えていかなければいけない。傲慢さの代償はそれ
で、俺は見るも滑稽な変人になった。脚を引きずり、口汚く周囲をののしり、痛みに耐え
続ける道化師に。醜悪で滑稽な役柄だ。
 

179:八ウスとウィ流ソン やおい未満 4
06/12/31 16:56:41 abAqXW7x0
 ステイシーは何度も泣きながらあなたを愛しているからこうしたのと訴えた。死んでほ
しくなかったし、脚を切るのは嫌だというあなたの意思を最大限考慮したのだと。俺だっ
てそれはわかっていた。でも俺は裏切られたと思ったし、存在理由を消されたとすら思っ
た。俺の正しさを信じなかった彼女を許せなかった。そのうちに彼女は俺から離れた。俺
は前にもまして気難しくなり、辛らつになった。正しさにさらに固執するようになり、他
人を詮索し、人の秘密を暴くのがますます好きになった。真実を握っているのが俺である
限り、俺はただの滑稽な脚萎え男ではなくなったから。
 ウィ流ソン。そうだ、ウィ流ソンに話を戻そう。彼は俺の治療に関らなかったし、俺が
ステイシーと別れたときも、彼女を許すべきだと何度も言ったものの、結局最後には黙っ
て俺の親友としての役割を演じ続けてくれた。ウィ流ソンは鎮痛剤の―ヴァイコディン
の―処方箋を俺のために書き続けてくれ、俺をハンディキャップのある人間として扱わ
ず、前と同じように接し、くだらない皮肉やジョークに答えてくれた。そのうちに俺は彼
にだけは嘘をつかないことを決めた。俺にはもう仕事と彼くらいしか残っていなかったか
ら、その二つにだけは誠実であろうと決めた。馬鹿げたことかもしれないが、それぐらい
の純情は俺にも残っていた。
 「俺はいつも嘘を吐くし、すぐに他人を騙すが、君にだけは嘘は吐かない」
 いつか俺がそう言ったとき―俺にとってそれは愛の告白にも近い、勇気のいる言葉だ
った―、ウィ流ソンは眉を上げてそれはどうもと返した。そんな軽々しい反応に俺は少
し傷つき、そして同時に安堵した。誰かと深すぎる関係を結ぶのはもうごめんだった。も
しかしたらウィ流ソンは、そんな俺の内心すら見越していて、あんな態度を取ったのかも
しれないとも思い、ますます彼といることに安らぎを感じた。口で何と言おうと、普段の
彼が俺をとても気に掛けてくれていることはわかっていたから、彼にないがしろにされた
とは思わなかった。

180:八ウスとウィ流ソン やおい未満 5
06/12/31 16:57:43 abAqXW7x0
 ウィ流ソンは俺の内面にいつも深入りしない。いつも軽口を叩き合えるような、適度な
距離をとってくれる。ウィ流ソンはとても優しい男だ。もちろん、彼は誰にでも優しい。
そしてすぐに女に惚れる。大体はブロンドの美人。一見完璧そうに見える彼は女にだけは
弱くて、何度か結婚と離婚を繰り返している。俺は彼に運命の女が未だ現れないことに少
しほっとする。でもそれが何故なのかわからずたまに不安になる。ウィ流ソンは多分それ
を知っていて、でも知らないふりをしてくれている。俺にはそれが心地いい。
 右脚の痛みがひどいとき、ヴァイコディンが効かないほど痛むとき、ウィ流ソンはいつ
もふらりと俺の側にやってくる。俺が脚が痛むとは言っていないのに、それを察したかの
ように、けれども知らない顔でやってきて、俺の隣にいてくれる。そうすると俺の痛みは
少しだけ和らぐ。彼は俺をくだらない冗談で笑わせてくれる。遠慮のない、気持ちのいい、
誠実な言葉で俺をほっとさせる。そんな人間はほかにいない。多分、俺には彼が必要なの
だと思う。ヴァイコディンよりもずっと。
 でも俺はそれを言わない。ウィ流ソンも俺にそれを言わせない。それを言わなければな
らないほど、俺たちの距離が縮まってしまったら、俺はきっとウィ流ソンの存在自体に苦
痛を感じるだろう。彼をそれくらい愛し、彼なしでいられないと認めざるを得なくなり、
彼の裏切り、ステイシーのような裏切りを耐えず恐れなければいけなくなったら、きっと
俺は彼の存在に痛みを覚え始める。それを知っているからウィ流ソンは俺と適切な距離を
保ち続けてくれる。彼はとてもスマートな男だから。
 ときどき俺は考える。この右脚の痛みは、俺が正しくなかったことの代償なのか?それ
とも傲慢さの?それともステイシーを許せなかったことから来るのか?俺が彼女を許せれ
ば、この脚はこんなに痛まないのだろうか?
 考えてもせんのないことだ。しかも医学的に見て、この脚は俺がどんな人格だろうと痛
み続けることくらいはわかる。俺は変われない。今更変われない。俺は右脚を引きずって
歩く、傲慢で気難しい、不恰好な医者だ。恋人もいないし、友達もいない。ただ一人、ジ
ミー・ウィ流ソンくらいしか。 
 それが現実だ。

181:八ウスとウィ流ソン やおい未満 6
06/12/31 16:58:44 abAqXW7x0
 変われない俺を知っていて、ウィ流ソンは何も言わずに俺の側にいてくれる。そうする
と少しだけ脚の痛みが和らぐ。自分自身を、ステイシーではなく、血栓を発見できなかっ
た無能な俺の主治医でもなく、俺自身を許せる。何故ならウィ流ソンが俺を許してくれて
いるから。右脚は相変わらず機能しないし、杖なしでは歩けないけれど、俺には親友がい
る。そう思うと少しだけ呼吸が楽になる。
 きっと彼はそれを知っている。彼はとてもスマートな男だから。そんな彼が側にいてく
れる理由は俺にはわからない。俺はいつも本当に真実を知りたいときに限って、そこに近
づけない。多分俺はそれほど有能ではないのだと、脚の痛みが和らぐたび、ウィルソンの
横顔をこっそりと伺い見るたび、いつも俺は思う。穏やかで苦い気持ちで。


 終

182:八ウス×ウィ流ソン
06/12/31 17:02:58 abAqXW7x0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ マジデヤマモオチモイミモネーナ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


ここ数ヶ月書いてみたかった二人を一年の最後に書けてハッピー。
この二人は自分たちはもうオサーンだから見苦しいことはやめよう、と
心に決めて純情を胸に秘めてる印象でした。そのまんま書き散らかしたよ。
今年一年ここにはいろいろと世話になった。スレの皆さんもよいお年を。

あ、平安兄弟楽しみにしてます。佳境に入りましたね。

183:風と木の名無しさん
07/01/01 01:19:35 jhV2/ru90
家GJ!!おっさん萌え
海外ドラマはてんこもりでいいですなあ

184:風と木の名無しさん
07/01/01 22:19:22 Y4ErsEPp0
平安流石微シリアスでイイ!
最終回楽しみにしてます!

185:風と木の名無しさん
07/01/02 01:35:36 MKRwT5hd0
>>174
次回が大変気になります。

186:風と木の名無しさん
07/01/05 22:56:20 r7RTDt850
                   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  タクミくんシリーズ。一学期のとある放課後。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ほとんどエロだったり…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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187:kiss1
07/01/05 23:01:12 r7RTDt850
「キス…させてくれよ」
オレは託生の耳朶へ、これ以上はない甘い囁きをくりかえした。
「キスだけ、な?」
右手では抱きしめている託生の肩をやさしく撫でながら、左手では煽るように股間を揉む。
極上にきめ細かい肌の、耳のすぐ下へ唇をそっと押しつけてから、赤く染まっている耳たぶにことさらねっとりと舌を這わせた。
この口と、この舌で、託生を感じたいんだ。と、ボディーランゲージでも伝える。
「―いいだろ?」
思いがけず掠れた自分の声までがぞくりと快感をそそる。
「ギイ……っ」
降参とでもいうふうに託生はオレにすがりついてきた。
めでたく恋人の了解を得て、彼の制服のズボンのジッパーを静かにおろしていく。
下着からとりだした託生のそれの、質量をたしかめる。
にぎりこんだ瞬間、託生は、小さくため息をついた。
「……っ」
オレの耳元でその吐息は反則だ。
場所も時間もわきまえず、押し倒したくなるじゃんか。
恥ずかしさからだろう、オレの肩口へ額を埋めようとする託生の顎をとらえて口づける。
深く唇を合わせながら、オレはゆっくりと託生を背後の壁へもたれさせた。



屋根裏部屋に西日がさしこむ。
開け放った窓から見えるのは朱色を刷いた雲をうかべた空のみ。
野球部とテニス部のかけ声がきれぎれに聞こえてくる。
「……っ、ん」
託生はしどけなく足をひらいて、その根元にオレの頭をかかえこんでいる。
オレは託生の腰をつかまえていた。
ひときわ感じるたびに、まるで逃げたいみたいに後ずさろうとするので、しっかりと押さえつけている。

188:kiss2
07/01/05 23:05:05 r7RTDt850
「……ーっ」
声も喘ぎも、必死で抑えている託生。
そのせいでオレの与える愛撫に溺れきることができないのだろう、なかなかイけないでいる。
放課後の校舎の片隅という、シャイな恋人にはどうしても情事に集中できないこのシチュエーションを、オレとしては最大限に利用して、さきほどから思う存分舌技を披露していた。
……いや、正直に言うと、好き放題にしゃぶっている。
口一杯に根元まで頬張った熱くてこりこりとしたこれは、けっして食い物ではない。
ではないが、非常に美味なんだ。こんなにも旨いものを味わうのは生まれて初めてというくらいに。
最も直截的なしあわせを舐めまわしている。
キスだけだと言いながら思いきりくわえこみ、舌をきつく絡みつかせてくねらせている。
あとからあとから湧いてくる唾液までもが甘い。
こんなにコレに自分が嵌れるとは、知らなかった。
去年同室だったときは、託生は恥ずかしがって結局させてくれなかったからな。明かりを落とした305号室のベッドでだって、いやがっていた。
そのことだけを思うと、逢瀬どころか視線を交わしあうことすらままならない現状にも溜飲が下がる。
今の託生は、求めれば、ここでその身にオレを受け入れることだってしてくれるに違いなかった。
―そんなあわただしくて乱暴な、まるきり性欲だけみたいなセックスなど絶対しないが。
しかし、そう確信しながら託生のものに吸いつき、唇も余さず使って頭を前後にふりながら容赦ない愛撫を塗りこめていくのは、深いふかい快感を呼び覚ます。
欲情を吐きだせばおさまる肉体的な快楽とは次元の異なる、熱くて昏い快感。
魂に響くと言えば聞こえはいいが、じっさいは脳内麻薬に中毒しているのであって、ここで託生とこういうふうに過ごすことを覚えてしまった煩悩はもうオレ自身にも制御が難しい。
「……っ!」
ふいに託生が、くしゃくしゃとかき回していたオレの髪をひっぱった。
指先にはとうに力など入っていない。痛かったわけではなかったが、オレは上目遣いに託生を見上げた。


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