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50:風と木の名無しさん
06/12/21 03:47:56 BkxXOt4O0
前スレ>>542
萌えたんだけど推理物でネタバレならもうちょっと元ネタわかりやすく書いて欲しい・・・。
読むまでなんの作品か判んないでネタバレはちょっと・・・。

51:風と木の名無しさん
06/12/22 04:04:35 6kAjThwh0
>>47
乙そしてGJ!
楽しませていただきますた。
ほんわかと終わっててよかった…

52:風と木の名無しさん
06/12/22 11:21:56 LQzb7bE50
>>47
ずっと楽しみに読んでいました。
二人の理解したり出来なかったりな関係性の描写にぐっときました。
希望が見えるラストが好きです。
まだ一話目しか見てないので、一挙放送が待ち遠しい!

53:風と木の名無しさん
06/12/22 17:58:07 +grQ1noH0
>>47
本当に面白かったです。あなたの文章がすごく好きで、毎回、何度も読み返してます。
そして今日の本放送がますます楽しみだ(*゚∀゚)=3

FO.X C.R..IM.E(ch.723)で1月1日の9時から19時半まで、第1シーズン(全13話)のマラソン一挙再放送が
あるので、無.印ス.カ.パ.ー!を視聴可能な方は是非…と薦めてみる。

54:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:05:43 RbW4Nq2yO
・突発的に、衝動を抑え切れずに書いたもの

・書いた人がド素人、文脈が覚束ない

・エロくない、CPに見えない



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

55:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:09:29 RbW4Nq2yO
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

書き忘れ…orz


・コミックス3巻ネタ
・読んでないと解らない表現もあるかも


気を取り直して…


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

56:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:11:45 RbW4Nq2yO
「…佐藤さーん?」





佐藤が入院しているという、とある病院の個室。
その扉をそっと開けて、名前を呼んでみたけれど、返事はなかった。




しん、と静まり返った室内。来る途中通った大部屋など、騒がしいくらいのものだったというのに。
―成る程、佐藤さんは引き篭りだから、大部屋なんて無理に決まってますね…

それ故なのか、山崎の目に、この部屋の雰囲気は、ひどく落ち着いているように見受けられた。
―なんだか気味が悪いですね…


ぱた ぱた


普段なら滅多に聞こえない点滴の音が、拡散されて耳に響く。
その音にしばし聴き入っていたが、気を取り直し、室内へと歩を進めると
病室特有の匂いが鼻につき、此処が病院だと言うことを再確認させられて顔をしかめた。




――まさか、あんなことになってるなんて、思うわけないじゃないですか

57:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:16:10 RbW4Nq2yO
つい昨日。佐藤からおかしなメール(SOS)が届いて家に押しかけてみれば
拘束、もとい監禁されて餓死寸前の佐藤の姿があった。


――あの時の佐藤さんの顔といったら……それと、ミアの正体。
あんなに早くバラすつもりはなかったんですけどね…。




「佐藤さん?お見舞い来てあげましたよ!
いないんですか?佐藤さーん?」



気を取り直して再度呼んだが、返事はなかった。
寝ているのかさえ、ベットの周りのカーテンに隠されていて、見えない。


返事のないこと、姿が見えないことに、山崎は意味もなく苛立っていた。
何故か、落ち着けない。返事がないなら寝ているのだ。きっと
寝ているのなら、また後で来ればいい。――それなのに、苛々は募る一方だった

58:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:26:48 RbW4Nq2yO
「…佐藤さんってば!!」



何故こんなに苛立っているかは解らなかった、が。沈黙が堪らずカーテンを乱暴にあけた。
―その時



「―うわ…っ!?」



どさっ、と覆いかぶさって来た何かが視界を覆った。
肩に少しばかりの重圧がのしかかって、力が入らない
落ち着いてさえいれば、それが“何”か、容易に解ったのだろう
―しかし、今の山崎にそんな余裕はなかった



「な、な…なん、な…ですか…!?…これ…!!」


もがけばもがく程、拘束してくるそれが、山崎の判断を狂わせた。
くらくらしているのは、パニックで、頭に血が上っているからなんだろう
――なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだよ…!!
パンク寸前の頭。暴れ過ぎたのか、眼鏡がズレたのが解った。―途端
山崎はとてつもない使命感に見舞われた――殺るしか、ない

59:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:36:59 RbW4Nq2yO
微妙な覚悟を決めた山崎。出来るだけ、出来るかぎりの力をこめ
その、“何か”を、蹴り上げた。
―その“何か”が終始声を発していたことに気付けなかったのに、彼の精神状態を垣間見るだろう



カコーンッ




「※☆●▽◎!?」



小気味の良い音と共に“何か”の呻くような
声にならない声が聞こえた。
――…人?
ズレた眼鏡を直し、漸く落ち着きを取り戻した山崎。冷静に現状を振り返る。
――…ま、さか


「…さとう…さん?」



よくよく見れば、自分の視界を覆っていたのは病院でよく見るシーツで
それに重圧をかけていたのは、まごうことなき自分の先輩。佐藤達広その人だった。

60:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 17:44:22 RbW4Nq2yO
――…と、言うことは


「さ、佐藤さん!あんたって人はよくも……っ!!」

これまでの沈黙が佐藤の策略だったことに(最も、佐藤が何をしたかったかは謎だが)気付いた山崎は
何故か転げ回っている佐藤を見下げて睨みつけ
どういう魂胆か問い詰めてやろうと胸倉を掴み上げた、が。
佐藤が転げ回っていた理由に気付いたので取り敢えず、手は離してやることにした


「や、山崎…!お前なぁ…!男なら解れ!この痛みを理解しろ!!」
「…なっ!佐藤さんが悪いんでしょう!?まさか股間にあたるなんて思うわけないじゃないですか!!」



そう、山崎の蹴りは見事に佐藤の股間にクリティカルヒットしたわけだ。

61:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:06:04 RbW4Nq2yO
「それより!いきなり覆いかぶさってくるなんて一体どういう要件ですか!?
子供じゃあるまいし…!」
「ん、…ああ、それは…その、…だな」

口ごもる佐藤。それに対して山崎は先程まで混乱していた反動かずらりと文句をまくし立て、佐藤に詰め寄る。
まさに自業自得。と、返す言葉もない佐藤はひたすら平謝ることになった。
――…山崎の野郎…ミアの事でかなりへこまされたから少し驚かしてやろうと思っただけなのに
――…あんなに、驚くんだもんな。…俺のほうがビビったぜ…
「―…大体、佐藤さんは不注意過ぎるんですよ!こんなに血が出てるじゃないですか!」


いつの間か、山崎に覆いかぶさるときに外れた点滴の話になっていた。
佐藤は今気付いたらしく、自覚すると痛くなるものだなと苦笑してみせる。

62:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:25:08 RbW4Nq2yO
予想外にも山崎は、苦笑する佐藤に苦笑を返した。
それから、黙って出血している佐藤の腕をとり、まじまじと見つめて言った



「…佐藤さんって、引き篭りで、最低なダメ人間ですけど」
「…な!!山崎お前…!」

――そんな率直に本当のことを言うなよっ!!

そう視線で訴えかける佐藤にお構いなく、
腕から流れ続ける血をなぞりながら山崎は続けて言った



「血は、赤いんですね」
「…っ!!」



言い終えてから間をおかずに、掌に付着した血を滑取って笑ってみせる山崎。
痛みに身を竦ませながら、その姿に目を見開く佐藤。




――恋が、始まる日は、近い

63:N/H/Kにようこそ! 佐山
06/12/23 18:34:27 RbW4Nq2yO
――…かもしれない。



苛々していたのはたぶん、あなたのせい。けど、そんなの悔しいから報復に報復
(ミアの事への報復に飴と鞭(鞭と飴?)という名の報復)で返す山崎くんのお話でした。
慣れ始め。

終わったというより終わらせた。
読んでくださった姉様方、ありがとう、そしてすみませんでしたorz
それでも佐山が好きなんだ!と主張しつつ失礼します


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

64:風と木の名無しさん
06/12/24 13:58:16 i93LhmA70
佐山キターーーー!!!GJ!!

65:飛父飛
06/12/24 16:31:47 AMLjang20

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  飛父飛 寸心×おっさん 最初は皆方視点だモナ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  原作未読のため、映画設定だカラナ
 | |                | |             \ 
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ こういうのを砂を吐くっていうんだゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 昭和の少女漫画みたいになったぞゴルァ!!
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

66:スンオサ 1/6
06/12/24 16:32:37 AMLjang20
決戦の次の日、鈴木さんの奥さんが学校にやって来た。
鈴木さんは休み中に溜まった仕事に追われて当分休めそうにないので代わりに来たのだという。
奥さんは「始ちゃんがみんなによろしくって。皆、本当にありがとう。」
と言って、お菓子を沢山持ってきてくれた。
みんな「始ちゃんが…」と言いながら笑いを堪えていたけれど、
お菓子を差し出されるとすぐにそれに飛びついていた。
寸心はまたサボって屋上に居たからここには居なかった。居なくて良かったような気がするな。

そして僕たちは3泊4日の沖縄旅行に飛び立ったのだった。
「寸心、鈴木さんにお土産買った?」
「…買ってねーよ。」
屍図メンバーは僕も含め全員鈴木さんにお土産を買っていた。
沖縄旅行に来れたのも、鈴木さんのおかげだし。
俺達の夏休みが楽しかったのも、鈴木さんのおかげだったから。


沖縄旅行から帰っても、鈴木さんはしばらく来なかった。
鈴木さんへのお土産を自宅へ持っていくかどうか話をしていると、
窓際で座って本を読んでいた寸心が口を開いた。
「いいんだよ。もう。」
山舌が「なにが〜?」と気の抜けた声で訊ねると、めんどくさそうに席を立ち、
「捨てとけよ」と言い残して去っていった。
自宅まで届けるのはやめておこうか。腐るものは1つくらいだし。
しかし…鈴木さん早く来ないかな。寸心がサミシクテシンジャウかもしれない。

67:スンオサ 2/6
06/12/24 16:33:23 AMLjang20
そして一ヶ月が経った頃、鈴木さんはようやくやってきた。
ドアを叩く音に、いつもは無反応な寸心の肩が揺れたので、僕はすぐに鈴木さんだとわかった。
「やっと休みが取れたんだ!みんなに改めてお礼をしたくて…」
屍図の皆は大騒ぎ。各々鈴木さんの周りをグルグル回りながらお土産を渡していた。
なんだか異臭のするものもあったけど、まあおかしな事になってもハブ酒でなんとかなるだろう。
「お久しぶりです鈴木さん。まあどうぞ。」
有無を言わさずやたら対面距離の近いイスに鈴木さんを座らせ、メンバーで周りを固めた。
鈴木さんは寸心の方を見ると、笑顔全開になった。
寸心は本に目を向けたまま顔をあげていないから、その笑顔は見えていないけど雰囲気でわかったと思う。
「僕らずっと待ってたんですよ?もう来てくれないのかと思いました。」
「あっ…!ごめん!溜まってた仕事の整理するのに時間かかっちゃって…ごめんね。
休日も返上で、なかなか来れなくて…僕も…すごく、みんなに逢いたかったよ。」
メンバーみんなにホッと笑顔が零れる。
寸心だけじゃない。みんな、なんだか鈴木さんの事が好きだからね。
こんな大人も居るんだと思うと、世の中、悪くないよね。
「はい。これ、僕からのお土産です。」
「あっあぁっこれ、シーサー?ありがとう!沖縄、楽しかったかい?」
「ええ。残念ながら水着ギャルとめんそ〜れはできませんでしたけど。」
鈴木さんはありふれたシーサーの置物をかわいいねぇとか良いながら撫でている。
「これ、こっちが鈴木さんでこっちが寸心です」
シーサーは2つで1つなんですよ。と説明すると「寸心君!これ、君と僕だって!」と寸心に話しかけた。
寸心はその瞬間席を立ち、足早に出て行ってしまった。
「あれ…どうしたの?寸心君…」
さっきまでちぎれんばかりにしっぽを振っていた鈴木さんが、急に耳が折れたようにしゅんとしてしまった。
「あの子は手間がかかりますからぁ。」
山舌が知ったような口を聞く。

68:スンオサ 3/6
06/12/24 16:34:21 AMLjang20
「久しぶりで、どうしていいかわからないだけですよ。寸心は愛情に不器用なんです。…知ってますよね?」
ジッと鈴木さんの目を見れば、ハッとしたような顔をした。
「僕…行ってくるよ。 あっこれ、みんなありがとう!!大事にするよ…あっそれとこれ、
よかったらみんなで飲んでね!…それと…また、ここに来てもいいかな…?」
「「「「いいともーーー!!」」」」「もちろん」「待ってますよ!」
鈴木さんは「ありがとう!今度は動物園に行こう!」と言いながら、
両手にお土産を抱えて軽やかに走り去っていった。山舌が「動物園は微妙じゃない?」と言ったが、同意だ。
だけどポカリ貰ったからまあいいか。
さて、ここからは二人きりの方がいいだろうから、僕はポカリを飲みながら二人の帰りを待ちますか。

********************************************

「寸心くーーん!」
寸心は鈴木との特訓で使った木の上に居た。
鈴木は学校を出てからまっすぐここに向かった。寸心は此処にいるという確信があったのだ。
「僕も登ってもいいかな?」
寸心はしばらく黙っていたが、「登れるもんならな。」と、木に括ってあったロープを降ろした。
一緒にポケットから軍手を取り出し落とす。
寸心もまた、鈴木がここを探し当てるだろうと期待していたのだ。
一ヶ月ぶりの木登りに鈴木は”スルスル”とは言わないが、何度か落ちながら必死に登った。
最後は寸心に引っ張りあげられつつようやく登り切る。鈴木は最初体勢を崩し寸心にしがみつきそうになったが、
慌てて逆サイドの伸びている枝に手を伸ばし、それでバランスを取った。
そして寸心に振り向くと、一瞬の後、二人に笑顔が零れた。
「ずっと来れなくてごめんね。お礼を言いたかったんだ。」
「いいよ、別に。…」

69:スンオサ 4/6
06/12/24 16:35:23 AMLjang20
鈴木はこの夏の特訓がどれだけ有り難かったか、あの後娘さんとはこうだった、ああだったと身振り手振りで話す。
その身振り手振りでバランスを崩した鈴木は反射的に寸心に抱きついた。
そしてしまった、とすぐに手を離し、恐る恐る寸心を見た。
その鈴木の様子に寸心は思わず吹き出した。安心した鈴木も笑顔になる。
「テヘッて笑ってんじゃねーよ。テヘッて………おっさん、」
寸心はポケットから珊瑚礁のカケラを取り出すと、鈴木に差し出した。
「これ、もしかして沖縄の?」
寸心は微笑みで答える。皆方にあんな事を言ったが、寸心は沖縄土産を鈴木に用意していたのだった。
始めて潜った沖縄の海は透き通るように青く、ずっと先まで広がった視界には色とりどりの魚が泳いでいた。
寸心は、この景色を、鈴木にも見せたい、と思ったのだった。
「ありがとう!…綺麗だねぇ。…寸心君はいつも僕に綺麗な物を見せてくれるね。
ここからの景色もさ、あとほらっ空を飛んだ時の景色も!」
「くせぇ事言うなよおっさん」
鈴木の喜ぶ顔は、沖縄の海の中で寸心の想像していた通りだった。
そして今まで自分の思っていた事は、ちゃんと鈴木にも伝わっていたのだ、と思った。
「寸心君達には貰ってばかりだね。」
寸心は、そうでもない、と思った。
空を飛ぶ人を見たのは初めてだったから。あの大きな翼は、初めて見るものだったから。
「僕ね、決めてるんだ。今度は僕が寸心君を守ってあげるよ。」
寸心は一瞬固まった。が、持ち前の冷静な判断力ですぐに平常心を取り戻した。
まっすぐ自分を見つめる嬉しそうな鈴木の顔。寸心はそっと目を逸らし、苦笑した。
鈴木のこういう予測できない行動はこれで数回目だったが、いつも寸心の心を激しく揺さぶる。
少し頷くと、寸心はふいに鈴木にボディブローを決めた。
左腹にもろに食らった鈴木が本当に木から落ちそうになる。
寸心はそれを足で支え手で引っ張り上げ持ち直し、慌てふためく鈴木に微笑みかけた。
「そういうのはもっと強くなってから言え。」

70:スンオサ 5/6
06/12/24 16:36:14 AMLjang20
鈴木は怒るでもなく、でもね、あれからも会社の帰り道は走って鍛えてたんだよと言い訳をする。
寸心はそこに受け入れられている自分を見た。
鈴木を見る目がどんどん愛しいものを見つめる目になっていく。
寸心の手がふいに、ブツブツと言い訳をしている鈴木の頭上に伸びる。
そのまま、ガシガシと撫でた。
「いてっ!す、寸心君?」
そして鈴木の髪を引っ張るようにして自身に傾けると、胸元に抱き込んだ。
「あっ!す、」
鈴木は何をされるのかと驚いて手を不思議な構えにしたまま固まっていた。
が、特に痛めつけられるわけではないとわかり、その手をそっと膝に降ろした。
鈴木はしばらくわからずに目を見開いていたが、ハッとした。これは、自分がした事と一緒だ、と。
愛しさが込み上げた時に自分が寸心にした行動と同じだと。
あの時は寸心に手を払いのけられてしまったけれど。鈴木はその手を払いのける事は無かった。
お互い座っているとはいえ自分より背の低い寸心の胸元に頭を持って行かれるのは体勢的にきつかったが、
鈴木は大人しくその位置に納まっていた。
ふいに寸心の手が鈴木の顔を包み、持ち上げられる。
されるがままに上を向かされた鈴木は目の前にある寸心の顔に少し驚いた。
寸心は鈴木の目が丸く開く様を面白がるように見つめた。そして鈴木の額に自身の額を付けた。
「自分以外に守るものがあると、人はどこまでも強くなれるんだな。」
鈴木は目線に困り、目を瞑った。寸心はその様子に驚く。まるで、許されたのでは、と勘違いしてしまう。
だが寸心にはわかりきっていた。これが、誤解だと。
鈴木の頭に衝撃が走る。
「いっ!」
「絶対に敵から目を逸らすなつったろ」
寸心は座る位置を直し鈴木から離れた。鈴木は突然無くなった支えに少しふらつく。
「帰るぞ」
寸心は言ったが早いか、ロープに手を掛けるとスルスルと降りていった。

71:スンオサ 6/6
06/12/24 16:37:15 AMLjang20
鈴木は慌てて後を追い、かなり上の方から半ば落ちるように降り尻餅をついた。
「待って寸心君!」
腰を押さえながら急いで地面に置いておいたみんなからのお土産を拾い集め、スタスタと先を行く寸心の後を追う。
「寸心君は敵じゃないから目を離したって大丈夫だよ」
スタスタ歩いていた寸心が立ち止まり、間を置いて振り返る。
そして同じ速度で鈴木に向かってUターンしてきたので、鈴木は反射的に身構え、震えた。
鈴木の側で急に速度を上げた寸心は、一瞬で腰にタックルし、そのまま押し倒す。
「あーっ!」
素早くマウントポジションを取り、鈴木の右手を地面に押さえつけ、顎を捉えた。
鈴木が状況を把握する間も与えず、寸心はその唇に自身の唇を押しつけた。
「んん゛っ?!」
口付けというより、何か技の一種のようなそれはすぐに離され、
素早く鈴木の上体を浮かせると背後に回り、首に腕を回して頸動脈を締め上げた。
鈴木が苦しがり寸心の腕を叩くので、3秒数えてその身体を開放した。
息の荒い鈴木を置いて寸心はまたスタスタと歩き出す。
ワケのわからない鈴木は、それでもなお、お土産を拾い集め寸心を追うのだった。
「あっあの、寸心君!今…あの、僕はキスをされたのかなぁ?」
「してねぇよ」
「えっ?そう?あ、あれ?あれ、」
「してねぇつってんだろ。おっさん。」
「そう?嘘だぁ…」
寸心が拳を握り鈴木に向かって振りかざす。
鈴木が慌てて避けようと構え、またお土産を落とした。
寸心の拳は鈴木の目の前で止まった。寸心は焦る鈴木の様子を面白がるように微笑むと、スタスタと歩き出した。
「寸心君っシーサー割れちゃうよ!」
「 割 れ な い 。」

帰りを待っていた皆方は久しぶりに楽しそうな寸心の姿と草や泥のついた鈴木の姿に満足げに微笑んだのだった。

72:風と木の名無しさん
06/12/24 16:37:54 AMLjang20
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               
 | |                | |           ∧_∧ 久々に萌えが止まらない作品に出会いました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

73:風と木の名無しさん
06/12/25 09:12:00 /sWPBeQrO
スンオサキター(゚∀゚)ー!!
完璧映画目線でみていいのですね、オサンかわゆすぎだよオサン

74:風と木の名無しさん
06/12/25 17:12:53 DGFLA4eb0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  801板なのに…
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ギャルゲ小説にインスパイアされたって…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドウヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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主将翼の転校少年君の話です。
O倉着火氏のセンチメンタルなんとか(転校少年物の純愛ギャルゲー)テイストを
目指してみましたが、果たしてせつなさは炸裂するのかどうか…?
(5レス分お借りします)

75:(1/5)
06/12/25 17:14:19 DGFLA4eb0
ふらの小

転入したばかりの岬が自己紹介でサッカーの話をしたのがきっかけとなり、
松山は教師から校内の案内役を任せられる。
最初は兄貴風を吹かせて岬を案内する松山だったが、放課後、最後に案内した
サッカー部のグラウンドで、岬に見事なテクニックを見せつけられてからは
少し複雑な気持ちになる。

『光はちょっと不器用な所がある。』
時々ではあるが周囲からそういった評価を受けることがあり、受けた側自身もそれを
自覚し、嫌っていた。
そしていわゆる《出来る奴・素質のある奴》に対し、敵対心と劣等感の入り混じった
感情を抱くことが多かった。
そしてこの日、笑顔で器用なプレーを披露する転入生に対しても、同様の感情を
抱くのであった―。

76:(2/5)
06/12/25 17:15:27 DGFLA4eb0
日頃からの面倒見の良さとリーダーシップの高さから、松山は誰の反対も無く新チームの
主将に選ばれた。ただ、時折見せる曇りがかった表情を、気掛かりに思う者も何人かいた。
スランプに足を踏み入れかけているのかもしれない…だとしたら早く引き戻さなければ。

「でもどうやって…?」
一歩間違えれば益々深みにという恐れから、具体的な対処法を見出すことが出来ない。
メンバー達が腕組みで唸る中、ただ一人明るく行動する者がいた。

「…岬?!」
「松山、そろそろ時間だから帰ろう。今日は学校外も案内してくれないかな?」

77:(3/5)
06/12/25 17:16:31 DGFLA4eb0
部活では屋外へランニングに出ることもあると聞いていた岬は、早速そのコースを
教えて欲しいと松山に伝えた。
松山もその要望に応えるが、時間も時間なので厳しそうなら途中で引き返すという
条件付きとなった。

「とはいえお互い妥協は無しだ。中途半端は嫌だろ?完走するつもりで行くぞ。」
「うん、完走しよう。」純粋だが、強気な笑顔で返す。
その表情から目を逸らすように松山は前を向き、一気に走り出す。岬も後に続く。

(…こいつ、どうして…)
ランニング中も、言い様の無い疑問と苛立ちをふと感じては振り切るを繰り返した。
(走りに集中しなければ…)
何度か通った道とはいえ、気を抜けば危険な事故に繋がりかねない。
増して、初めて臨む者を率いているという責任を自覚し、注意深く道を乗り越えた。
「無理なら無理って言えよな。」
「なんとか大丈夫。」
少し厳しいかな?という表情も見せ始めはしたが、笑顔と前向きさは絶やさない。
気にかかる部分もありはしたが、その目を信じて先へ進むことを決めた。

78:(4/5)
06/12/25 17:18:37 DGFLA4eb0
人の手がかかっていない、純粋で険しい道。その大自然の重さを心に刻みつける
ように、岬は走り続ける。誰よりも真剣で直向きな背中を追いながら―。

終着点である小高い丘に到着したときには、沈みかけの夕陽が眩しい光を放って
いた。幼い頃から数々の景色を見ながら育ってきた。しかし、こんなにも広大で、
澄み切った世界に出会ったのは初めてだった。
「すごい……。」

「…初心者には厳しい道だし、正直色々迷ったが…。でも来られてよかった。」
松山も少しずつ、言葉が出始める。
最初に案内を求めたのは岬だった。でも心の奥底でここへ来ることを求めていた
のは自分自身だったのかもしれない。少し気分の晴れた表情で、言葉を続ける。
「でも大したもんだよ、初心者ではなかなかここまで辿り着けはしないんだぜ。
俺たちだって、ここまで来るのに何度苦労したか…。」
「ううん、僕も、必死だった。でも、でもね…!」
急に気持ちを入れて松山の方に振り向くが、疲れきった体がそれを支えきれず、
岬はその場でバランスを崩してしまう。
「お、おい、岬!」
「えへへ…ごめんね。なんか、限界っぽい。」

79:(5/5)
06/12/25 17:20:01 DGFLA4eb0
「も、もう歩けるから。下ろしてよ、松山。」
「日が落ちるまで時間がないんだ、とにかく急ぐぞ!」
両脚に無理が来ていた岬を瞬時に背負い、松山は一気に峠を駆け下りていた。
慎重な姿勢を見せることもあれば、突然大胆な行動に出ることもある。
様々な面を持ち合わせてはいるが、一つだけ言えるのは、いつもどんな
状況でも、松山は真剣に生きているんだということを、岬は確信する。
どれだけこの街に留まれるかわからない。でも限りあるここでの時間を、
自分ももっと真剣に、大事に過ごしていきたい。強くそう思った。

「…岬、寝てんじゃねぇぞ、家まで案内しろよ。」
「うん、わかってる。」
「なに笑ってるんだよ。」
「ううん、別に。」
「いっつも笑ってるよなお前って。明るいし…すげぇよ、本当。」
皮肉ではなく、自分に無い素直さを持っている岬を、心底うらやましく思っていた。
岬が答える。「だって…その方が、」
なんとなく寂しさを含んだ声と感触を、松山は背後から感じた。
「…岬?」
「…だから!」
「えっ」
「松山も明るくいこうよ、ね!」
負ぶさっている背後から、松山の両頬を引っ張る。
「ばっ…馬鹿やめろって、送ってやらねぇぞコラ!」
「あははははは…」
家に帰り着くまでずっと続いていた岬の笑い声が、松山の中にずっと響き続けた。

80:風と木の名無しさん
06/12/25 17:21:50 DGFLA4eb0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ フゥ……
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

書き手の方も不器用、いや、それに加えて鍛錬が甘いため、読みづらい部分、
一貫性が無く支離滅裂な部分等ありますが(申し訳ないです…)、自分なりに
一生懸命やってみたつもりです。
「出会い」や「関わり合い」が持つ力、魅力といったものを描ければと思い
挑戦してみました。なんとか少しでも伝わればいいなーと…。

81:飛、父、飛
06/12/25 19:18:45 ohVfuf2P0
このスレになっていっぱいある気がするけど、別CPなので許して下さい。

 ・スン→オサ前提のミナスン
 ・映画のラストシーンの続きということで


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


82:飛、父、飛 ミナスン(1/2)
06/12/25 19:20:21 ohVfuf2P0

寸心はポケットの中の小石を握り締めたまま、彼方へと走り去っていった人の
もう見えなくなった背中をいつまでも見送っていた。
放心状態だったところをふいに肩を叩かれ思わず振り向いてしまった。
その瞬間皆方の唇と寸心の唇が重なった。
突然のことで動揺して皆方を突き放すまで少し時間がかかった。
「な、なにす」
最後まで言わないうちに皆方が寸心を抱き寄せてもう一度今度は深く口づけた。
「んっ…」
必死に抵抗しているのになぜか力が入らず、されるがまま息苦しさを我慢しながら耐えた。
漸く開放されたが次の言葉が出てこない。
肩で息をしながらただ皆方を睨みつけているだけだった。
皆方はそんな寸心の様子を見てニヤリ笑いを浮かべて言った。
「いくらお前が鱸さんのことを想ってても多分それは叶わないよ。」
「あ?何言ってんだ?」
少し怒った感じの口調で寸心が聞き返した。
「図星だった?」
「だから何を言ってるのか意味がわかんねーって言ってんだよ」
「わかってるくせに」
皆方が寸心の顔を覗き込んで含み笑いしながら言い返す。
「じゃあハッキリ言ってやるよ。寸心、鱸さんのこと好きなんだろ?」
「ばっ…ちげーよ、何言ってんだ、いい加減にしろ」
「ふーん…その割りにはすげー切ない顔してたけどな」
「俺は別にそんな…」
「そんなつもりじゃないって?自覚なし…か、やれやれ」
半分呆れたような口調で皆方が言うと寸心はちょっと俯いて視線を逸らした。
「なんだ自覚してんじゃん。素直になれよ」

83:飛、父、飛 ミナスン(2/2)
06/12/25 19:24:20 ohVfuf2P0
皆方はニヤニヤ笑いながら寸心の肩をポンポン叩いて更に続けた。
「鱸さん鈍そうだし、そういう思考回路は持ってないと思うからやめといた方がいいぞ。」
「なに勝手に話進めてんだ、違うっつってんだろ」
「じゃあそういうことにして…俺なんかどう?」
「そういうことにって…つーか、どうって何が?」
「だから、俺にしとけよって言ってんの」
「だからじゃねーよ、意味わかんねーって」
「ああもう、堂々巡りだなぁ…」
額に手をあてて皆方が嘆いていると寸心がぶっきらぼうに言った。
「みんな向こうで待ってんだろ?もう行かねーと…」
「いや、後で落ち合おうって言ってあるんだ。俺が寸心連れて行くからって」
「なんだよ、それ」
「だってみんなの居る所じゃできないだろ、こんな話」


84:飛、父、飛 ミナスン(3/2)
06/12/25 19:25:50 ohVfuf2P0
暫く両者沈黙が続いた後、皆方が意を決したように言った。
「俺は寸心のこと好きだよ、恋愛感情って意味で」
「…」
「俺だってホントはこんなこと言うつもりなかったよ、ゾンビーズの仲間でいられればいいって
思ってたんだけどさ。
まさか鱸さんっていうダークホースが出てきて寸心を掻っ攫われるとは思わなかったんで。
なんかもう悠長な事言ってらんねーなって。」
皆方が肩を竦めながら言った。
「お前がすぐに鱸さんのことを忘れるなんて思ってないよ。
いつか忘れる日が来たら…それまで待つから。」
「皆方…」
皆方の真剣な目を見て寸心はそれ以上何も言えなくなった。
「でもただ待つだけじゃないからな。
色々作戦は考えてるからね、俺が本気出したら…わかってるよな?」
宣戦布告ともとれる皆方の言葉に寸心は困ったような表情をした。
それを見て皆方は場の雰囲気を和らげるように冗談めかして言った。
「まあ、俺は気が長い方だし、それに持久戦は得意なんだ」
「持久戦って…」
寸心が片方の眉をあげてチラッと皆方を見ると、はにかむように笑った。
「三日もったら褒めてやるよ」
そう言って歩き出した寸心を追いながら皆方は心の中でガッツポーズをとった。

85:風と木の名無しさん
06/12/25 19:28:55 ohVfuf2P0

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すみません、行数が思ったよりあって2分割で収まりませんでした。
なんかもう滅茶苦茶ですが後悔はしていな(ry


86:風と木の名無しさん
06/12/26 00:07:51 Zb7cdWEZ0
このスレになってから飛べオサーンが沢山読めて至福でございます


87:風と木の名無しさん
06/12/26 00:13:56 bVC7E5EA0
「飛、父、飛」をおいしく頂きました。また新作鑑賞できる時を待ってますわ。

88:風と木の名無しさん
06/12/26 00:24:18 OU/15vIl0
なぜいま飛、父、飛がこんなにもー!!夢のようです
いつか禁断の?アギスン鑑賞も叶うかもしれない…w
投下された姐さん方ありがとうございました!!

89:風と木の名無しさん
06/12/26 07:55:27 eeBs9VS3O
夏/目/漱/石×正/岡/子/規 です。

・東大時代からの親友なふたり
・子/規は既に俳句で名をあげてましたが、漱/石はまだただの教師
・ともに27歳の頃、子/規の故郷松山に漱/石が中学の教師として赴任、子規と同居していた時の話
・坊/ちゃんはこの時の体験がもとになってるとか

夏/目/漱/石→夏/目/金之助
正/岡/子/規→正/岡/常規/升



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

90:ソウセキシキ1
06/12/26 07:57:27 eeBs9VS3O
正岡がこの部屋に転がり込んできてからというもの、庵の一階は句会の拠り所となっている
毎日毎日、俳句をやる連中がガタガタと門をならしては「お頼みぃ」とやってくる
中学でも子規が松山に帰郷したことは有名で
「先生のところに子規サンいるんかな、もし」とかなんとか聞いてくる生徒もいる
“先生のところに子規サンが”いるうちはまだいいのだが―

「先生も俳句をおやりかな、もし」
「じゃあ先生は子規サンの弟子かね?」
「先生は子規サンと同じ家に住んでるんぞな」
「先生は子規さんとこにいるんかな、もし!」

いつのまにか子規の家に自分が居候してるかのような始末になっている

91:ソウセキシキ2
06/12/26 08:00:10 eeBs9VS3O
これは納得がいかない。居候は正岡の方なのだ。
これを正岡に話したところ、いつもの屈託無い笑顔で笑い飛ばされてしまった。

「あはは、あしが主で夏目が居候か!」
「お前が句会の連中に偉そうに語るものだから、このような誤解を受けるんだ」

門下の者が剥いていってくれたらしい柿を食べながらくつくつ笑っている。
まったくいい気なものだ。

「自分の生徒にまで勘違いされては困る」
「迷惑かな?」
「ああ、迷惑だ」

迷惑か…と呟くと正岡はまた柿を一口食べながらしばし思案した。
すると突然フッとあの皮肉な笑みを浮かべ

「朗君としては妾が主とは顔が立たんかな、もし?」
「…!」

などと曰うたのだ。
妾と朗君とは、互いがまだ学生の頃に交わした手紙に書いたお遊びの文句である。

「あしがいないと寂しいからなるべく早く御帰りとせかしたのは誰ぞね?」
「それはっ…」
「妾のためなら命の二つや三は進呈仕りと言っていた朗君はおみさんじゃなかったかな、もし」
「〜〜!」

92:ソウセキシキ3
06/12/26 08:01:52 eeBs9VS3O
「だいたい今回もおみさんが…」
「正岡…」
「夏めっ…?」

ああ―恥ずかしい。
何だって正岡はそんな昔の書簡まで事細かに覚えているのか。
若い時分に、冗談めかしながらも大真面目で書いたもの。
それをわかっているのか、いないのか、笑う正岡が憎たらしい。
恥ずかしさと憎さがが余ったところで、思わず正岡の口を塞いでしまった。

目を開ければ、呆気にとられた正岡の顔と、口に広がる柿の味

「若気の…至りだ」
「若気…」
「人をいじめるのも大概にしろ」
「…」
「それからあまり柿を食いすぎるな。甘くてかなわん」

ばつが悪く赤くなった顔を見せまいと、部屋を出ようと立ち上がると
その裾を正岡が引っ張った
引っ張られた裾が熱いように感じるのは、多分ただの幻覚

「柿…お食べ?」

上目でのぞいてくる正岡の顔が、嬉しそうに微笑んでいる。
微かに頬を染めて。なんだそれは反則じゃないか。

93:ソウセキシキ4
06/12/26 08:03:36 eeBs9VS3O
「おみさんねそれは照れ隠しかな、もし」
「…」
「甘党のおみさんが甘くてかなわないわけないぞな」
「…」
「それも、これも、若気の至り…かな?」
「…」

先刻まで憎らしかったヒヨコ口も、頬の赤さと相まうと、なんだか可愛らしいものに見えてくるから重傷だ

「あしはな、金之助」
「…」
「嬉しかったことはよう覚えてるんぞな」
「…」
「おみさんの照れ隠しもこれで何度めかな?あしはまーると全部覚えとるんぞな」

ふくふくと嬉しそうに笑い、柿を頬張る。
―ああこいつは、からかっている風をして
―からかってる風をして、自分も嬉しかったのだと
わかった瞬間にもう一度だけ、近づいて確かめたい衝動に襲われた。

「升…」
「ん?」

その口を、今度はちゃんと正面から重ねてみる。
やっぱり柿は、いやこの唇は、甘くてかなわない。

「…」
「…」
「金之助…?」
「慣れん」

94:ソウセキシキ5
06/12/26 08:05:48 eeBs9VS3O
あはははっ!と正岡は本当に腹を抱えて笑い転げた
ああ五月蝿い。五月蝿が心地の良い。
その笑い声ごとそのまままるっと抱きしめる。

「うるさいぞ、べらぼうめ!」
「もいっそ呼んでおみ、金之助」
「よべるか!」
「よんでおみ、のぼるって、よんでおみ」

目に涙を浮かべるくらい笑って笑って…嬉しそうに見つめてくれるな。
抱きしめた腕の中からピヨピヨないて欲張るその唇を、今日の三度目、口で塞いで黙らせた。

―接吻なぞ慣れないから
―ほしいほしいと強請るそれを、ただ塞ぐだけ、それだけだ
―照れ隠しで結構!!



そうして愚陀仏庵の夜は更けてゆく

95:風と木の名無しさん
06/12/26 08:11:04 eeBs9VS3O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



衝動で打ちましたが該当スレすらない状況…
稚拙な文でも投下させてくれる棚ありがとう
尻切れトンボですいませんでした

96:風と木の名無しさん
06/12/26 11:11:03 /9WZ5rgLO
ギャア禿萌えた!
可愛くて仕方ないよ(*´д`)ハァハァ
姐さんGJ!超GJ!!

97:風と木の名無しさん
06/12/26 11:24:55 nRnigSSbO
わあぁ、禿萌えた(´∀`*)GJ!
最近漱石や漱石作品萌えしてたところだから嬉しい。二人ともかわゆす。

98:風と木の名無しさん
06/12/26 15:10:10 3/p9mWey0
おわぁ、ハゲ萌えたGJ!
無茶苦茶いいな、のぼーるくん。
漱石もかーいい(´Д`*)

99:風と木の名無しさん
06/12/27 00:22:44 TkjWfjzzO
やっぱ日本人なんだなぁ と感じるw
和萌えがドストライクだ!姐さんGJ!

100:風と木の名無しさん
06/12/27 01:53:45 StfHugv30
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ナマモノ棒球 トレイドされた先輩×区鳥の1番才丁者
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 降留戦頃の駄文の続きで、ヤッてしまいました・・・
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ※Caution!逆CPではないです
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

101:1
06/12/27 01:54:39 StfHugv30
「どぞ、ビール。」
「え、アルコールじゃなくてもいいよ。」
「俺、あっても飲めないっすから。ね、飲んで下さい。」
結構強引に酒を押しつけた。自分が舞い上がってしまっていたから、せめて彼にも酔ってもらいたかった。
「それじゃ、遠慮なく。」
ソファに掛けた彼はかしゃ、と音を立てて缶を開けて口をつける。小さな手や、かすかに動く喉にどきどきする。
「ああ、すいません俺、折角だったのに、あんまり話できなかった。」
「ううん、俺もあまりお前とは話せなかったから。」
そう言って左隣の俺を見上げる視線は穏やかで、ホッとした、とでも言いたげに見えた。
その表情に俺は嫌われていないんだなと安心する一方、そういう対象とは見られていない事も分かってしまう。
「前に・・・幕張で会った時の事、覚えてます?」
「うん。」
だったら思い出してもらおう、と唐突に切り出してみたが、即答されて言葉に詰まった。
「・・・やっぱり駄目っすか、俺じゃ。」
仕方ないから開き直って、もう一度彼に訊く。あれこれ細かく悩むよりは、強気で行く方が俺は得意だ。
「うん。ごめんな。」
缶を置きながら、半年前と全く同じ口調で言われる。しかし今日は、ここですぐに引き下がりたくはなかった。

102:2
06/12/27 01:55:38 StfHugv30
知人を挟んでの夕食という席で彼に久々に会えて嬉しかったのに、俺はなかなか彼と喋れなかった。
彼の方はタイトルおめでとうと言ってくれて、あまり話す方ではないなりにそこそこ俺にも話を振ってくれた。
だから俺もごく普通に振る舞って、来年もお互い頑張りましょうとか言えば良かっただけなのだ。
それなのに6月以来あれこれ思いを巡らしていたその本人にどう接するか、考えているうちに時間が過ぎた。
あの時は自覚してしまった自分の気持ちが抑えられずに、いきなり彼の唇を奪ってしまった。
その勢いのまま告白したら、強くはねつけられた訳ではないが、しごく平静にきっぱりと断られた。
いつまでもそれを引きずって、色々意識してしまって話せないなんて、全く俺らしくもない。
それで帰り際、どうしてもこのままにしたくなくて、彼を俺の部屋に誘ったのだ。
だがちょっと考えてみれば、いきなり部屋に来てくれなんて不自然な話で、上手い誘い方じゃない。
まさか彼が部屋まで来てくれるとは思わなかったというのもあって、まだどうにも落ち着かなかった。

「何でですか?」
「一番は、好きな人がいるから、かな。」
かちん、という音がどこかでした気がした。気が付くと、彼の両肩を掴んでソファの背に押しつけていた。
「・・・は?誰っすか?俺の知ってる人?」
「それは言えない。」
「何で?やっぱ、知ってる人なんや。」
「言えないよ。」
睨みつけてもユニフォームを着ている時同様、表情が変わらない。押さえつける手に力が入ってしまう。
「・・・分かりましたよ、俺を好きじゃないのは。でも一度くらい、いいっすよね?」
口を引き結んで俺をキッと見上げるばかりで、彼は俺を止めもしない。本気で取り合われていないと思う。
どうしようもなく苛立って、彼の胸に飛びついた。初めて彼の守備を間近で見て驚いた時を、なぜか今思い出す。
俺の方がずっと体格は大きいし、さすがに彼も慌ててもがくだろうと思って、きつく胸板を抱きしめる。

103:3
06/12/27 01:56:42 StfHugv30
それなのに一呼吸置いて、まるで子供を宥めるような手が俺の背や後ろ髪に伸ばされてきたのだ。
頭に血が上った。顔を上げて、彼の唇を自分のそれで捕らえた。打球にスッと追いつく彼の姿が脳裏をかすめる。
憧れも思いも込めて、忘れられなかった感触に浸る。それに、以前と違って彼の小さい舌がしっかり応えてきた。
びっくりして目を開けると彼は、軽く目をつむってどこか幸せそうだった。動きを止めた俺を引き寄せてくる。
彼はさらに舌と舌のひらめきを楽しみ、触れあう瞬間を味わうかのように何度も角度を変えて口付けてきた。
やっと口が離れたと思ったら、その唇が今度は首筋に押しつけられ、舌がゆっくり這う。
いつのまにか腰と肩に手がしっかり回されていて、咄嗟に逃げるという事ができなかった。
「ちょっ、何するんですか!」
びくっと感じてしまって思わず叫んだら、あっさりと離された。ソファの上にお互い乗り上げて、向き合う。
「何って、そのつもりなんだろ?」
顔を見つめ合うが、事態が飲み込めない。キョトンとした顔で見上げてきて、何とも可愛いとか思ってしまう。
何だか現実感がないが、つまり俺の意図を分かっていてくれていた、という事なんだろうかと思い当たる。
「はい・・・そうっすけど。」
俺は「そのつもり」だが、何かが違うような気がして戸惑う。反対に彼は、覚悟を決めたような表情を見せる。
「ん。大丈夫だから。」
訳が分からない事を言って、彼は俺をソファに横倒しにする。目が回るくらい深く口付けられて力が抜ける。
彼が何を勘違いしているのかぼんやりと、分かってきた。でも何だか、くらくらするほど気持ちが良い。
それに彼がそんな事する訳ないと頭のどこかで思い続けていたから、俺は状況に流されてしまったのだった。

104:4
06/12/27 01:57:49 StfHugv30
***

朝の光に、まだ腕の中の彼が身じろぎした。目を開けて何となくこちらを見ていたが、急にはたと目を逸らした。
「あ、おはよう。」
「・・・おはよーございます。」
胸に頬を当ててきて、素肌の感触に浸っているようだ。その様子を見つめながら、ぎゅっと唇を噛みしめた。
彼に好かれている事はずっと前から気付いていた。そして半年前の事で、彼が今さら本気になった事を知った。
でも彼と離れた今、応えてはいけないと思っていた。それなのに積極的に迫られ、この手に抱いてしまったのだ。
「俺、こういうつもりじゃなかったんすけど。」
「うん。俺もそのつもりじゃなかった。」
勢いでしてしまった事なのだろうか。それなら俺がしっかりしなくてはならなかったのに、耐えきれなかった。
彼はムスッとした顔をしながらも、胸に頬ずりしてきたり撫でてきたりする。くすぐったくて、肌が逃げた。
「でも、すごく良かった。」
目を合わせて、はっきり伝えた。全て覚悟の上の事、彼で遊んだわけではないから。反省した振りはしたくない。
「なっ、何言って・・・!」
彼はやはり、後悔しているのだろうか。つい宥めるように軽く目をつむって、唇で頬に触れてしまった。
「お前はもしかして、辛いだけだった?」
口づけで誤魔化すのはいけないと思い直して、聞いた。これだけははっきりさせなくてはならなかった。

105:5
06/12/27 01:59:07 StfHugv30
「え!いやそんな事は。普通に・・・・・・良かったすよ。」
相当辛そうだったし何度もねだってしまったから、今だって起き上がりたくないくらいのはずだ。
しかし彼もそう言ってくれて、こうして気持ちよさそうに触れてきてくれるのに、心底ホッとした。
「そうか、良かった。」
グラウンド上では抑えている微笑みを向けてしまった。彼も嬉しそうに、いつもの強気な笑みを返してくれる。
彼も俺も互いへの気持ちが募っていた事は確かで、それがぶつかりあって、どこか吹っ切れたのも確かだろう。
もうずっと一緒にいられないからと自分を戒めてきたが、今充ち足りている、という事だって大切なはずだ。
「・・・好きな人がいるんじゃ、もう会えないっすね?」
彼も似たような事を考えていたらしい。顔を合わせたくないのか、今度は俺が彼の胸にすっぽり抱き込まれる。
「会えないつもりでいたい。」
「つもり?」
「いつも一緒にはいられないから、期待したら苦しい。」
「あー。」
彼を振り回したくないと決意していたからこう答えた。でも、気持ちをはっきり伝えない事は申し訳ない。
彼は生返事を返して背や腕を手のひらで撫で回してくる。抱き締めてくる力の強さに、少し涙が滲んだ。
俺も彼の胸を抱く。言葉とは裏腹に彼も俺も、また球場以外でも会えると甘い期待をしていたに違いなかった。

106:風と木の名無しさん
06/12/27 02:02:05 StfHugv30
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               シチュ・キャラなど急に妄想捏造、ご容赦下さい
 | |                | |           ∧_∧ 来年は4仕合ですが競演楽しみです。そしていつか・・・
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ェロは省略させていただきました
 | |                | |       ◇⊂    ) __好きな人、については想像にお任せです
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | ・・・先輩は経験値高そうとコソーリ妄想
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

107:心1/6
06/12/27 07:02:41 rwi8vvcU0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  純文学って重いよねぇ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  夏/目作品は耽美だと思います
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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>89さんに触発されて書きました。漱/石・式の書簡は本当にエロカワイイ。萌えたぁー。ありがとうございます。
「こ/こ/ろby夏/目/漱/石」で書いてみました。原作も至る所で「フォモ臭がする」と言われている代物です。
【「こ/こ/ろ」って】スレからやってきました。ぶっ壊れたK×先生(私)です。
6レス(テンプレ含め)予定で投下させていただきます。

108:心2/6
06/12/27 07:03:41 rwi8vvcU0
近頃のKは眉間に皺を寄せ息を吐きながら、暗闇のような瞳で私を見る事が多々ありました。
私が御嬢さんに好意を寄せているのを、Kが気づいているかいないか、そんな事などは関係ありません。
只々、私はその瞳に捕らえられるのが恐ろしかったのです。すべてを見透かすその瞳は嘲りで以って私を貫こうとしていたのです。
Kはそうやって私を遠巻きに見ながら、女という生き物に心奪われ、焦りを隠せない私を軽蔑していたのでしょう。
以前と違って活き活きとしたKの所作は、それだけで私を追い詰めるものへと変貌していました。
御嬢さんと隣り合って笑うKを見ると、私は醜くも自身を偽ることができませんでした。何度嫉妬したか知れない程です。
私はKに正直な所を打ち明けるかどうか悩みました。打ち明けようと決めた事もありました。
しかしKを前にすると、唇が開かなくなるのです。頭の中で熟考した折角の言葉も、意志に反する唇からは発される筈がありません。
終いには、喋るときは何時もKからの言葉を待つようになってしまいました。
あくる日、私は図書館で外国の専門誌を読み耽っていました。
分厚いそれを眺め心を奪われてていると、今自分の身に起こっている事全てが小さな事のように感じられ、逆に空しさすら感じました。
どのくらいの刻が過ぎたのかは自身でも解りませんが、正面の大窓から射して来る陽が朱色に染まっている時分だったと思います。
大窓の光を頼りに読書をしていたその光を突然遮られて、私は怒りすら感じながら顔を上げました。

109:心3/6
06/12/27 07:04:45 rwi8vvcU0
そこには背後から陽の光を受けたKが、じっと暗い表情で私を見ていました。Kの全身が影になっていたからという理由だけではありません。
Kの表情は、本当に何かを決心した暗澹たる様子でした。そして、そこにぎらぎらと存在する大きな瞳だけは、何時ものように私を射抜こうとしていました。
「どうしたんだ」
私は負けまいと声を上げてから、急に心細くなり、その瞳から逃れようとして視線をそらし、できるだけ身を小さくしようと試みました。
まるで弱い生き物のようでした。いや、本当に当時から私は弱い心と精神を持った生き物でした。
Kは私をじっと見つめたまま「ここだろうと思って来たんだ」と言いました。
Kが右手を机の上に置くと、掛かっていた数珠がじゃらじゃらと大業な音をたてたため、私は思わずそれを見ました。
Kは動きません。動じることがありません。いつも動じて焦っているのは私のみです。若い私は、それを恥じてまた動じる、という堂々巡りを繰り返していました。
居ても立っても居られなくなり、私は専門誌を大げさに閉じました。椅子を引いて立ち上がった私を、Kが首を傾げて見下ろしていました。
「君は恋をしたことがあるか」
突然Kがそう言ったのを聞いて、私は自分の耳を疑いました。御嬢さんを想うあまり、Kに嫉妬するあまり、自分の頭がどうにか壊れてしまったのかと想った程です。
唖然とする私に向かって、Kはさらに「恋をしたことがあるのか」と聞いてきました。
欲を禁じている浄土真宗のKは発する言葉とは到底思えない俗っぽさに私は驚きを隠せませんでした。
そして只管狼狽した様子を曝け出した挙句に、私は唇を噛んで俯き、首を振るという情けの無い答えを出したのです。


110:心4/6
06/12/27 07:05:29 rwi8vvcU0
図書館は静まりかえっていたので、Kの低い声がしんしんと響き渡りました。そしてその時私はようやく、自分とK以外の一切の人が居なくなっている事に気付いたのです。
まるで、今までの自分の考えや御嬢さんへの想いをKに打ち明けるべくして作られた舞台のように感じました。そして、少々穏やかな心持ちになりました。
Kは大窓の前から動くと、ぐるりと机を回って私の隣へと歩いてきました。私を見下ろすその瞳は変わらず威圧的です。
それを私から一度も逸らす事なく、Kは「僕は恋をしたことはない」と言い放ちました。
私はおそらく、今まで見せたことの無いような安堵の表情を、Kに晒したと思っています。きっと、切なさを強調したものだったのでしょう。そしてそれは間違いなく、Kの心に響いたのです。
Kは薄い唇を開けるか開けないかくらい開いて、小さな声で「だが、恋をされた事はある」と言い、右手で私の左手を掴みました。
慌てる私は左手を収めようと必死に引きますが、Kの強い力には私の力など効力があるはずもありません。左手を高々と持ち上げられ、掴む力の強さに私は思わず声を上げました。
Kは左手で私の腰を抱き寄せ、耳元で苦しそうに「僕はどうすればいいんだ。どうすれば、君に応えられるんだ」と呟きました。
私は動転し、右手でKの背中や左腕を矢鱈滅多に叩きました。何故自分がKにこんな目に合わされているのかと必死に頭で考えようとしましたが、考えや答えが出る筈もありません。
Kは暴れる私の右手首を、左手で簡単に掴むと、机に押し倒しました。その時私の背中の下には外国の専門書があったため、背骨をおかしな風に強か打ちました。
私もKも喧嘩は不得意な分野でした。少なくともその時まで私はそう信じていました。しかし、喧嘩をしようと思えば、きっとKは強かったのでしょう。
だから私をこうやって容赦なく押し倒した上で、御嬢さんへの気持ちをも力でねじ伏せようとしているのかと、私は訝りました。



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