【なんでもあり】人外 ..
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57:名無しさん@ピンキー
11/12/14 10:55:13.38 XwVqzXqM
 オオツノはメルモから離れて数歩前に出て、頭を屈め犬に向かってその自慢の
大きな角を振り立てた。
「フィイイイ!ケケケケケ!(このやろう!あっちへいけ!)」
 オオツノは猟犬たちを威嚇する。メルモも横に並んで唸るが、牡鹿の迫力に
はかなわない。
「かならず、あとをおいかける。やくそくする。」
「ほんとう?やくそくよ!」
「もし、おれになにかあったら、なかまがいるからたよればいい!」
「いや、そんなのいや!」
「はやくいくのだ、このままでは2ひきともやられる!」
 メルモはかぶりを振る。オオツノはメルモのほうを向かずに彼女を説き続ける。
 オオツノを愛する心、育ちつつある牝鹿の心が悲しむ。せめて別れの前にこっち
を向いてほしいとメルモは思った。その願いが通じたのか、オオツノは唸って
メルモに近寄るよう命じた。メルモが顔を寄せると、オオツノは首を右に曲げ、
愛する連れ合いのぶどう色の瞳をみながら口づけを交わした。一瞬だけ。
 オオツノの意を無駄には出来ない。メルモは犬達をにらみながら後ずさりし始めた。
 いつの間にか靄は晴れ、二人のハンターの姿が見えた。
「おお!オオツノだぞ!メスと一緒だぜ!」
「メスもなかなかのものだ。二匹そろって剥製にして飾れば絵になるな。」
 猟銃を構えたハンター達の会話が耳に入る。メルモはしっかりと聞き取った。
(そんな、いやだわ、はくせいなんて!にんげんってなんてざんこくなの?)
「ミイイイン(はやくいけ!)」
 メルモは意を決し身体の向きを変えて走り出した。猟犬の一匹が彼女を
追いかけた。すかさずオオツノは飛びかかり角で刺した。刺された犬は急所
をやられ即死だった。
 血で真っ赤になった角を振りかざし、オオツノは残りの四匹の猟犬たちを威嚇する。
猟犬たちは牡鹿に飛びかかる。ハンター達は銃を構えるが、撃てないでいた。
 また一匹になって逃げる羽目になった鹿のメルモ。後ろで銃声が聞こえ立ち止まって
振りかえる。犬の悲鳴が聞こえ、その後牡鹿の雄叫びが聞こえた。
(オオツノさん、だいじょうぶかしら?)
「チュイイイイイイイン!チュイイイン!(かならずかえってきて!わたしのところに!)」
 メルモは気持を抑えきれず、泣き叫ぶと、森の緩やかな斜面を登りはじめた。



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