【なんでもあり】人外と人間でハァハァするスレ7
at EROPARO
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100:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/07 23:54:47.44 wq6W5eMx
淫魔と少女・4
淫魔の触手が少女の関節に優しく巻きつき、まるでお姫様が抱きかかえられるような姿勢をさせて、
しっかりと支えてくれている。
少女の薄桃色の唇と紅潮した頬、そしてすらりとした首筋が、触手によって繰り返し繰り返し愛撫される。
肌に触れるか触れないかの、繊細な感触と性感。
少女はくすぐったそうに、きゃっきゃと幼子のような声を上げる。
淫魔の前なら、自分を作らなくてもいい。
そのことがたまらなく嬉しくて、ついつい淫魔に甘え、はしゃいでしまう。
普段、少女はしっかり者を装っている。家事も花売りも自ら進んで始めた。
神父様の妻が3年前に急逝してからは、その傾向が特に強くなった。
本来の甘えん坊で、泣き虫な自分を封印して、気丈に生きてきた。
それが孤児である自分の宿命であり、運命であると、少女自身に言い聞かせてきた。
しかし、淫魔によって自らの性の扉が開かれたとき、
少女はその快楽と同時に、長い間閉ざされていた、本来の心の扉をも開かれてしまった。
淫魔の前では、か弱く、泣き虫で甘えん坊な一人の女の子に戻ってしまう。
淫魔もまるでそのことを理解しているかのように、細やかに応えてくれた。
少女が涙を流せば拭い、寒さを感じれば暖め、そして―
そして、少女の性欲が高まれば、膣に触手を挿入してくれる。
長くて、太さを自在に変える触手で少女の膣の内壁にぴったりと張り付き、腰が痙攣するほどに抽送して、激しく射精してくれる。
挿入のたびに、淫魔に淫らな姿を晒して少女からお願いしなければならないのが少し恥ずかしかったが、
いつもの自分からは想像もできないほど乖離した少女自身の行動の、その開放感ゆえに、
自らも膣口から熱い蜜を流してしまっていた。
淫魔の触手は全部で17本。
その殆どが生殖機能を持つために、性交だけで淫魔を満足させるのは容易なことではない。
体力溢れる若い身体と敏感な肌、淫魔を満足させられるだけの弾力性に富んだ女性器、
そして女性自身に、底なしの性欲が要求される。
まさか自分にその全てが備わってしまっていることなど、性知識に未熟な少女が知る由もない。
彼女は、ただただ淫魔に抱かれて、愛撫されて、そして性器を絡め、
互いに快感を得ることができればそれで幸せだった。
淫魔が次に、どんな淫らな事を要求してくるのだろう。
そして自分がそれに懸命に応えた時、交尾というご褒美と同時に、熱く優しく抱擁してくれる瞬間が待っている。
早く、次の行為を要求して。
早く、はやく―。
少女は、夢から目が覚めた。
101:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/07 23:58:47.02 wq6W5eMx
少女は一人ベッドの上で、毛布を抱きしめて、腰をくねらせるような動きをしていたらしい。
パンティがぐっしょりと湿り、少女の性器が濡れているのがはっきりと分かる。
昨晩もかなりの時間自慰に耽ったのに、その上夢まで見て下着を濡らすなんて。
少女は恥ずかしさで真っ赤に火照った頬を冷やすように、洗面器の水で顔を洗う。
その後、恥ずかしげにパンティを脱いでネグリジェをまくり上げると、
残りの水で女性器を洗い、タオルを使って、そこを丁寧に拭いた。
ごく薄い陰毛、小陰唇、膣口、クリトリスの周りまで念入りに拭く。
淫夢を見てしまった朝の、少女の日課である。
一度それを怠って街角に立ったとき、下半身から漂う自身の性臭が気になって、花売りどころではなかった。
目の前にある噴水に飛び込んで、裸になって行水したいほどの気持ちで、一日中、恥辱に耐えねばならなかった。
自慰に、淫夢に、性器の洗浄。淫らな秘密が、少女の日常にどんどん加えられていった。
花売りの一日は長く、そして過酷である。
仕入れは早朝。
まだ日も昇らぬ暗いうちに、近所の農場から花を選び、仕入れる。
切った花の鮮度を落とさぬように、切り口を湿らせながら急ぎ足で街へと赴く。
そして噴水のある広場の隅で、仕入れた花の水揚げをしながら人々に声を掛け、花を売る。
慶事などで花束の予約が入れば多少は楽になるが、それでも一日のリズムに変わりはない。
淫魔にぶたれたあの日から数日。
あれ以来、まだ淫魔の姿を見ていない。
呆然と家に帰ったものの、沸き立つ性欲に負けて激しい自慰に乱れたあの夜。
泣き疲れて眠ったその次の日から、少女は自らを叱咤するように鼓舞し、
街角に立って、必死になって花を売った。
一人孤独に、過酷な花売りに全身全霊をかけて打ち込んだ。
102:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/08 00:00:56.85 wq6W5eMx
花売りに前にも増して力を入れるようになったのは、淫魔を忘れるためではない。
早く花を裁いて時間を浮かせるためだ。
淫魔と激しく性交した森のあの場所で、淫魔が現れないか、少しでも長く待っていたいからだ。
もちろん、往く道すがら周囲の森に目配りしては草木の動きを観察し、淫魔を探す事も忘れなかった。
初めて自分から淫魔に会いに行ったときには、驚くほど簡単に遭遇できたのに、
今はそれが全く叶わない。
時がたって冬が近づけば、農場の温室でも花は育たなくなり、花売りは春先まで一旦休業となる。
冬は生糸の糸巻きで生計を立てるから、一日中部屋に篭らねばならない。
淫魔と会うための時間は、そう長く残されているわけではないのだ。
少女の頭がめまぐるしく回転し、淫魔に会うための手段を逆算して求め、
ひたすらそれを実行した。
皮肉なことに、その努力は、花売りの成果にだけ抜群にあらわれた。
恥ずかしがり屋の少女は、それまではどちらかというと花の手入れのほうに一生懸命で、
売り子としてはいま一つ引っ込み思案なところがあった。
売れ残った花をかわいそうに思って買ってくれる客がいるほど、売り上げが伸びない日もあった。
それがどうだろう。
淫魔に会って全てが吹っ切れたのか、弾けるような自然な笑顔で客寄せが出来るようになった。
早い日には昼前に花が売り切れてしまうほどにまで、売り子としての才能が開花したのだ。
手持ちの花がなくなれば店じまいが出来る。
店じまいが出来れば、森に行く事ができる―。
淫魔にぶたれたときにバスケットとワンピースを忘れてしまったので、
今少女が手に持っているものは、新しく買いなおした花売り用の篭である。
その空になった籠を持って、駆け出さんばかりに森へと急ぐ少女の表情は、
傍目から見ると、滑稽なぐらいに真剣そのものだった。
そわそわとした気分であの小岩に腰掛けて、少女は物音に耳をすませる。
秋の虫が昼間から恋の羽音を競って、求愛を続けている気配だけが感じられる。
ああ、求愛されている雌の虫達がうらやましくて仕方がない。
きっと愛する雄を見つけては何度も何度も交尾をして、
この秋を淫らに謳歌しているに違いない。
その一方で、自分はこんなにも切ない気持ちで淫魔を待っているのに、
淫魔は求愛どころか、姿さえ見せてくれない。
今すぐにでも服を脱がせて、身体の隅々まで愛撫して欲しいのに。
ちょっと恥ずかしさは残るが、自分の指で陰唇を広げて、少女の濡れた膣を見て欲しいのに。
それなのに、淫魔は現れてくれない。
103:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/08 00:10:34.97 +5CE2cbG
少女は、淫魔を思ってめそめそと泣き出すような事は無くなった。
その代わりに、夜の自慰が一段と激しさを増していた。
隣の部屋で神父様が眠っているというのに、少女はベッドの上で、夢中になって快楽を追い求める。
小さな口で木綿のタオルを噛んで声を抑えながら、右手の中指でクリトリスを擦り上げる。
左手は人差し指から薬指まで、3本を同時に膣に挿入するようになった。
そして、内壁をかき混ぜながら、へその裏側の感じやすい部分を中心にゆっくりと摩擦して、刺激を与える。
少女の乳房の上では乳首もツンと立ち上がり、吸って欲しそうに屹立してじんじんと痺れる。
このもどかしさが、またたまらない。
両手がふさがったままなので、時々うつぶせになっては小さな乳首をシーツで擦り、
ひたすら絶頂を求めて、指を動かす。
膣から流れ出す蜜が止まらない。
最後は仰向けになって、腰を高々と浮かせて両手の指を激しく動かし、
神父様に聞かれてしまうかも、という恐怖感さえをも快感にすり替えながら、
ううっ、とくぐもった声を上げて絶頂する。
今はそれで果てるのが一番気持ちがいい。
タオルを口から外して荒い息を鎮め、目を閉じて鼓動が収まるのを静かに待つ。
体中を包み込む触手の感触を思い出して、毛布にくるまり、うっとりとしながら自分の体温で温もりを感じる。
一休みしてはまた自慰を始め、3回絶頂に達して、ようやく眠りにつく。
少女も自慰に手馴れてしまって、絶頂の上り詰め方や、
敢えて絶頂を我慢をして、快感を増幅させた時の味を覚えてしまった。
月のものがある日は不快感もあってさすがに控えたが、
夜の自慰行為は、どんどん巧みに、そして淫らになっていった。
そうして更に1週間が過ぎ、2週間が過ぎたある日。
少女はいつものように手早く花を売り切った。
そして曇り空の下、急ぎ足で森の道を歩くと、いつもの小岩に腰かけ、淫魔を待っていた。
少女はグレーのインナーワンピースとベージュのショートワンピースを重ね着し、
さらにその上にカーディガンを羽織っている。
それでもまだ肌寒いほどだ。
3週間前とはいえ、前回なぜ素足にワンピース1枚でこんなところに座っていられたのか、
自分でも全く理解が出来ず、思わず吹き出してしまう。
慌しい商売事から解放され、ほっと一息つけるこの時間。
決して居心地の良い環境ではないが、少女にとっては大切な思い出の場所でもある。
少女は温かなキャメルのムートンブーツを履き、心持ち足をぶらぶらさせながら、
いつあらわれるとも知れない淫魔を、待ち続けた。
104:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/08 00:14:36.54 +5CE2cbG
秋が深まっていく。
季節が移ろうにつれ、少女の憂いもまた強く深く心に疼く。
淫魔は未だ、その姿さえも見せない。
もうこの森には、淫魔はいないのかもしれない。
新しい獲物を探して、どこかに移動していったのかもしれない―。
気丈な少女ではあったが、自分が捨てられたという想像が頭をよぎるときだけは、
さすがにこたえた。
俯きながら口をへの字に曲げ、泣きたい気持ちになる。
それはかつて、自分自身が捨て子として神父夫妻に拾われ、
育てられた経歴を持っているからだ。
少女は今でも、淫魔にお願い事をしたのが間違いだとは思っていない。
でも、そのお願い事の何かが淫魔を怒らせて、それでぶたれた事は厳然たる事実だ。
理解できない自分を詫びて、とにかくもうその事には触れないでおこうと思っている。
それすらも叶わぬ事が、なんとも歯がゆく、そして悲しい。
ぽたり、と少女の手に水滴が落ちた。
少女の涙ではない。
確かに泣きそうな気持ちにはなったが、涙は流さないことに決めている。
少女は、はっとして空を見上げた。
雨だ。
雨が降ろうとしている。
しまった―。
夏の夕立とは違い、秋の雨は弱く、長く降る傾向がある。
そして、なにより冷たい。
長雨が服にしみ込んで体温と体力を奪い、最悪の場合凍死の可能性もある。
だから雨の降りそうな日は、撥水性の高い、フードつきのコートを持って出ることにしている。
少女は今日、雨具を持たずに出てしまったのだ。
秋の雨は比較的予想し易いので、雨具の携帯を怠る事はないのに、
この日に限って、少女は雲行きの読みを誤った。
雨が本降りになるまでに出来るだけ村へと急ぎ、後は岩場で雨をやり過ごすしかない。
急いで花売り用の籠を持ち、帰り道を急ごうとしたそのとき。
少女は視線の先に、大きな塊を見た。
見覚えのある、異形の生命体―。
少女が待ち焦がれ続けた、淫魔の姿がそこにあった。
(了)
105:6-680 ◆P3TAxd3EJBpB
12/01/08 00:24:23.69 +5CE2cbG
>>63さんからお願いなんかされてしまって、
去年書きかけていたものをとりあえず上げてしまいました。
ご期待に添えないものであればごめんなさい。
でも、いいですよね。
すごく素敵な新人さんが、イチャラブな触手×少女もの書いてくださってるじゃないですか。
あんなかわいい後輩とほほえましい触手君の組み合わせなんて、最強じゃないですか。
僕はもう萌え尽きちゃいましたよ。
それでは。
106:名無しさん@ピンキー
12/01/08 01:05:10.18 QBgBrZtP
続きキタ━(゚∀゚)━!!!
なんともエロくて最高です
107:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:03:35.61 0W/lEoKO
乗るしかないな、このビックウェーブに
そんな訳で無性に書きたくなった人間♂と触手♀を
108:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:03:54.75 0W/lEoKO
「おい待てちょっと待てキスレブ……なんだって?」
『だから丁度一週間前の夜、雌になってしまったんだよ。折笠』
放課後の教室の窓際で、そんな事を言われた。
出会ってからもう六年目の、中高と何度かあったクラス替えの度に同じクラスであり続ける、所謂腐れ縁の存在にだ。
後ろの座席に顔が向くよう、背もたれに乗せていた右肘が驚きのあまり空に落ちた。
朝から様子がおかしかったが、風邪の類いでも患ったのかと心配していたのだが……よもやそんな事情があったとは。
「そんな事がありえ……るんだったよな」
『私の父さんも母さんも、出会うまでは男女逆だったって言うしね』
彼……もとい彼女の名はラウル・F・キスレブ。
直径60CM程度の球体の身体から太さや形状が僅かに違う触手を幾重にも持つ、触手属触手科に分類される我が親友だ。
何でも時折、性別が変わる事があるらしい。
テレパシーによる会話には最初こそ戸惑ったが、この学園ではそう珍しいものではなくすぐに慣れた(実際ラウルに近い種族が同級生に複数居る)
淡い水色の身体は、同属の中でも珍しい部類に入るらしく、昔は同属の友達が少なく、ある種のコンプレックスだと話してくれた記憶がある。
「具体的にはどう変わったんだ?」
『人間で言う子宮にあたる臓器が作られただけだね』
「俺には心なしか痩せたように思えたがな」
『……そう?』
無造作に眼前を泳いでいた触手を掴み自分の手首と比べながら呟くと、ラウルはさっと触手を身体の後ろに引き下げた。
無意識の動きは人間で言う脊髄反射によるもので、時折俺に絡み付いてきたこともあった。
「性質の悪い風邪でもひいたかと思ってたよ」
『心配してた?……ごめん』
「謝るような事じゃないだろ? 俺が勝手に思い込んでただけだ」
やはり、どうにも様子がおかしい。
どこか所在無さげと言うか、出会ったばかりの頃普通に話しかけてきた俺に戸惑い、変に警戒されていた時と反応が似ている。
家庭の環境により、多くの人間に根付いてしまっている差別意識に似た他の種族に対する違和感が無い俺としては至極当然の事だったのだが。
「登録上の性別とか、そんなのは?」
『連絡したらあっさり受理されたよ。これから学長室に行って、最終確認と書類へのサインをすれば終わり』
「……流石、我が学園の学長だな」
我が学園の前に置かれた、学園の立ち上げ当初に打ち立てられた石碑に刻まれた言葉は「差別主義者には鉄鎚を 兄弟たちには無償の愛を」
過激派のような言葉であるが、発展する科学技術に比例し増大していった差別問題に一石を投じた人物の言葉として、多くの言葉に訳された標語である。
学長自身は竜人族と人間の混血であり、飛龍を娶り、十五人の子を育て上げた凄まじい人物だ。
『……で、君さえ良ければ一緒に学長室に来てもらいたい、んだけど』
テレパシーが一瞬途切れたが、その言葉の意味は理解出来た。
「了解了解、優等生のお前でもあの学長を苦手か?」
『まぁ……そんなとこ』
机の上に置かれた鞄を取り、立ち上がるとラウルも同じように鞄を持ち上げ椅子から降りた。
廊下への扉を開け、扉を片手で押さえたままラウルが通るのを待つ。
どこかフワフワしている足取りのラウルを追う形で教室を出ると、珍しく静かな廊下に扉の閉まる音が小さく響いた。
109:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:04:43.22 0W/lEoKO
「3−D、折笠とキスレブです。入室しても宜しいでしょうか」
「……あぁ、入ってくれ」
学長室と掲げられたドアの前で一息吐き、背後のラウルに目配せした後、ドアを叩き名を名乗る。
必ずしも声を使える種族ばかりではないこの学園では、ノックだけでも構わないと言われてはいる。
が、やはり許可をもらう前に扉を開ける事には抵抗があり、姿の認識し難い者には届きにくいテレパシーで会話する種族のラウルが、俺に同席を望んだのもその為かもしれない。
ゆっくりとドアを開けると、視線の先に学長の姿が見えた。
椅子に座って尚目を見張る190CMという身長と見開かれた青い龍眼、背中ゆらゆらと揺れて見える尻尾が竜人族の血統を語り、顔と捲られた袖から見える腕の肌色が、人間の血統を表している。
緩んだネクタイと咥えられた煙草、そして同室者へと向けられた穏やかな視線から、そう忙しくない事が推測できた。
「僕はただの付き添いでして、用件があるのはこちらの……キスレブです」
『ラウル・F・キスレブ、最終確認の為に参りました』
「おいおい、そんな改まった言葉を使うな。背中の辺りがこそばゆくなる」
半身をずらすと背後に手をやりカウルを前に出るよう促す。
進み出ながらそう呟くカウルと俺に、学長は腕と肩を大げさに上げながらそう答えた。
『彼らは至極当然のことをしているのだ。そう邪険に扱うでない。……だが必要以上に強張る必要は無いのは確かだ。慣れない一人称を使うと疲れるであろう?』
そんな学長を諌めるように、ラウルと同じくテレパシーで話しかけた来たのは、やや窮屈そうに身を屈めて学長室に佇む、学長の妻でもある飛竜種の副学長だった。
妙に高い天井と何も無い空間は彼女の為にある。
「まぁ学長室なんてそう来る場所じゃないからな、固くなるのも無理は無い」
『まぁそんな訳だ。肩に力を入れんで良いぞ』
その言葉に俺とラウルは苦笑いを浮べてしまった。
自分としては自然に言ったつもりだったが、違和感を見抜かれてしまったからだ。
「キスレブ君の書類は……っと、これだな」
学長はそんな俺達に笑みを見せた後、器用に片手で煙草を灰皿に押し当て火を消しながら机の引き出しを開けて書類の束を取り出した。
パラパラと内容を確認した後、万年筆を片手にカウルに近付くよう手で促した。
「正直不安な面をあったが、彼なら大丈夫だと思うが?」
『……まだ、言えていません』
書類にサインするカウルに、学長が何か声を掛けていた。
小さい声の為、俺の耳には内容が聞き取れなかった。
「……我が龍眼に賭けて、保障しよう」
『無粋な事を申すでない、それは当人達の問題だ。口が軽いぞ』
「……そりゃそうだな」
副学長の唸るようなテレパシーにまたもや肩をあげた学長は、書類に書かれたカウルのサインを確認しながらこう言った。
「宜しい。これで形式上の確認は完了した。もう退室して良いぞ、折笠君、レイラ君」
聞かぬ名を呼ばれ、俺はきっと間の抜けた顔をしているだろう。
だが当の本人は特に驚きもせずにいる。
『分かりました……失礼します』
……俺の聞き間違いだろうか?
何事も無いように扉に寄り、振り向いて俺を待つラウルを見て、そう思い直した。
「では失礼します」
一礼し、ラウルと共に部屋を出た。
薄暗い廊下でもう一度礼をしながら扉を閉める瞬間、学長の声が聞こえた気がした。
「言い就職先を見つけてやるからな、折笠」
学長が時折見せる、竜人族特有の射抜くような鋭い視線と不敵な笑みと共に、扉の閉める音にまぎれるように聞こえた。
110:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:04:58.57 0W/lEoKO
『……最後の一言が余計だぞ、馬鹿者』
「昔の自分を見ているようでな。老爺心てやつだ」
『勝手に言葉を作るでないわ、それを言うなら老婆心だ』
学長室では、そんな会話がなされていた。
111:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:05:36.97 0W/lEoKO
「もっと手間取るもんだと思ってたよ」
『大体は済ませてたから』
夕焼けに染まる帰路での会話は、何故かいつもと違い断続的になっていた。
普段は取りとめの無い、良い意味で軽い会話を途切れる事無くしていたのにも拘らず、だ。
「質問、一つ良いか?」
『……なに?』
言葉の間に挟まる沈黙に、何ともいえない違和感を感じる。
「学長室から出る時さ、学長がレイラって言ってたような気がするんだが……」
『そうだね……私の名前はもうレイラ・F・キスレブだから』
「名前も変えられるのか?」
『最初から二つの名前を持っておくんだよ。そして時を見て変更するんだ。まぁ、一度しか出来ないんだけどね』
「一度しか? それじゃもう一回変わったときはどう……?」
思わず立ち止まってしまった。
ラウル……レイラは普段、厳重に折り畳み動かす事の無い触手を俺の身体に這わせていた。
二つの精が結ばれ、生命が誕生する時、最初に生み出される“原初の腕”と呼ばれる触手だ。
皮膚が薄く、脆く、絡む神経がひしめき合う、触手だ。
『黙って私の話を聞いていて欲しい、良いかい?』
テレパシーとも違う、レイラの本当の声が全身に這わされた触手から響いてきた。
普段よりも幾分高い、それこそ少女のような声だった。
112:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:05:53.51 0W/lEoKO
『私達の種も、次の世代を生み出す為に番いになる。
ただ人間の様な生まれ持った性に因らず、本能が相手を選んでしまうんだ。
時に種の垣根なんて関係なく、番を選んでしまうんだ。
そしてその時、同種ならば母体に相応しい方が雌になるんだけど、他種にその本能が動いてしまった場合はその相手の性に合わせ体が変化するんだ。
ただの一度だけ、ね』
疎らになったとは言え、ここは多くの学園の生徒達の通学路であり、周辺は住宅街である。
人目が無いわけではないが、そんな事は気にならない。
『本能の選択は絶対なのさ。
長い進化の中で、そういう風になってきた、としか言えないんだ。
まだ他種と交流が無かった時代、私達の人間で言う夫婦になった者達は、その全てが“死が二人を分かつまで”互いを愛しあっていた。
今じゃ、そうも行かないけどね』
聞こえる声が早口になっている。
だがそれを誡める言葉が出るわけは無かった。
『本当は性が変わった瞬間に言うべきだったんだ。
でも言えなかった……嫌われたくなったから。
私の本能は、君を選んだ。
残りの人生を君と共に居るべきだと、判断した。
私自身、その思いを否定する事は出来ない。
私は、レイラ・F・キスレブは、君を愛しているんだ。
君と共に行き、子を成し、そして共に滅びたいと、思っているんだ。
……君にとって、迷惑だと分かっていても。
もし僕を受け入れてくれるなら、今までと変わらず接して欲しい。
……嫌なら、少し距離をとって生活して欲しい。
一人で居る事を選んだ私に、君の声を聞いて、色んな表情を見るのは、辛い、から』
そこまで言ってレイラは、巻き付けていた触手を緩めた。
ものの数秒で折り畳まれたその触手はすぐに他の触手に埋もれ、見えなくなった。
『……それじゃあね』
言葉を返す間を開けず、レイラはそそくさと歩みを早め、角を曲がり姿を消した。
113:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:06:08.53 0W/lEoKO
首筋に残ったレイラの温もりは、風が一つ吹いて消えてしまった。
突然の告白に、最初に生まれたのは戸惑いはある。
「………………」
もし仮に、仮にだ。
俺がレイラを受け入れた場合どうなるだろうか?
今と何かが変わるだろうか?
今までの親友としての関係が無くなり、もっと親密な関係になるだろう。
俺はそれが嫌だろうか? ─否
では拒否したら?
今までより一歩下がったら?
レイラは言葉通り一人で居続けるだろう。
出合ったばかりの頃の様に、感情を押し殺す為の仮面を被り、言葉を選んで話すだろう。
俺はそれが平気か? ─否
俺はそれが嫌か? ─是
導き出した答えに身体が突き動かされ、気が付くとレイラを追い駆け出していた。
角を二つ曲がればもうそこはレイラの家。
閉じかけの扉には、見慣れた後姿。
「ちょ……ちょっと待て!」
乱れた息を強引に抑えながら、その後姿を呼び止めた。
「なんだ、その……あれだ……」
意識の中に様々な言葉が溢れ出てくる。
だが喉を通り外に出ることは無い。
余りにも言いたい言葉が多過ぎて、何も出てこない。
勢いをつけようと手が無意識に動いていたが、それでも言葉は出てこない。
「と、とにかくだ。俺が言いたいのは……」
自分がここまで口下手だった事に驚きもしているが、恐ろしく早まる鼓動が感情の裏付けだ。
「また明日、な……レイラ」
搾り出した言葉はそんな、何て事の無い物だった。
何故か分からないが、妙な気恥ずかしさに襲われ足早に立ち去るべく再び駆け出す。
そんな俺の背中に、はっきりと、声が聞こえた。
『うん……また、明日ね、智樹』
向かいの自宅までの僅かな距離を走り抜け、勢い良く扉を締める。
壁に掛けられた鏡に映った俺は、真っ赤な顔をしていた。
114:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:06:22.79 0W/lEoKO
その晩おれはどうにも眠れず、何度か窓を開け外の空気を吸った。
その度に向かいの家の窓が明るい事に気付き、同じく気晴らしに空気を吸いに顔を出していた見知った顔と二三声を交わした。
「……課題、やったか?」
『……やってないや』
「怒られるか? 一緒に」
『廊下に立たされてみたり、かい?』
「……あの教師なら、本気でそんな事やらせそうだから怖い」
もう、いつも通りだった。
115:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:06:36.75 0W/lEoKO
あ、おはようございます」
『あらやだ智樹君、随分早いんじゃない?』
朝、いつもの登校時簡より三十分も早く家を出てきた俺に、見知った顔に挨拶をした。
家族にもどうしたのかと聞かれたが、適当な言い訳と共に抜け出してきた。
『課題やって無いから、学校で済ませようって魂胆なんでしょ、智樹』
「……ご名答」
挨拶をした人物の背中から、聞き慣れた声が聞こえた。
中学からの愛用の鞄を持ったその姿は、普段と変わらない軽い皮肉とともに眼前にやってきた。
『それじゃあ母さん、行ってくるから』
「じゃおばさん、行ってきますね」
そのまま普段と変わらず、俺とレイラは並んで歩き始めた。
「……とは言っても、簡単には終わらない量だったよな、課題」
『白紙で持っていくよりは随分良いと思うけど?』
「……正論過ぎて何も言えませんよ」
なんて事は無い、普段どおりの会話の中、レイラの細い触手がふわりと、俺の手の甲に触れた。
撫でるような触れ方にくすぐったさを感じた俺は、お返しとばかりに人差し指でその触手を捕まえてみた。
「でもいっそ白紙で出したら逆に潔いって言われたりしないか?」
『しないから、絶対に。そんな馬鹿な事ばかり考えてるからこの前だって……』
澄んだ空気が風になり、少し肌寒く感じられた。
だが絡み合う俺の指とレイラの無数の触手は、朝の空気に負ける事の無い暖かさを抱いていた。
116:名無しさん@ピンキー
12/01/08 13:08:42.07 0W/lEoKO
改行の癖が抜けてなかったorz
これにて了です。
主人公の容姿はいまどきなツンツン頭でもなんでもご自由にご想像ください。
117:名無しさん@ピンキー
12/01/08 15:38:31.83 KKuy0p8i
ヒロインが触手とは珍しいな。
ところでエロシーンはまだかね?
118:名無しさん@ピンキー
12/01/08 22:18:42.13 ZQKn74bI
すみません栗田さんの話を書いた物ですが、自作中「馬から落馬」ばりの恥ずかしい間違いをちらほら見付けてしまいました。
拙いなりとは言え恥ずかしいので少し訂正させてください…。
目の前の顔はとろけるような笑顔で→×
目の前の彼女はとろけるような笑顔で→○
狭いベッドの中、少し後ろに後ずさる→×
狭いベッドの中、少し後ずさる→○
>>116
触手と人間カップルが触手と手を繋いで登校する風景っていいですよね
119:名無しさん@ピンキー
12/01/09 01:53:13.84 oJAaXQ3b
今やってる乗ってカンガルーのCMいいな
120:名無しさん@ピンキー
12/01/09 02:00:18.30 cX7NfXex
■Pinktube.jp■
URLリンク(pinktube.jp)
新参サイト。
本数はまだ少ないが、画質が結構いい。
ダウンロードはzip。
121:名無しさん@ピンキー
12/01/09 14:33:28.26 nqLK8Gbn
触手可愛いよ触手
で、にゃんにゃんシーンはまだですか?
122:名無しさん@ピンキー
12/01/09 19:53:00.19 7RlTsGbV
なんだこの触手祭!お三方ともGJです
123:名無しさん@ピンキー
12/01/11 08:13:18.46 ft8763XV
ミュウツーとアイツーやシャドウとマリアのおかげで、すっかり人外×幼女萌えになってしまった
人外は幼女よりでかくても小さくてもいいが、無茶苦茶強い事は必須
そして精神的には幼女の方が強いのも必須
力は無茶苦茶強くて幼女を物理的に守れるのに、情緒不安定で、精神的には幼女に守られてる、っていうのがいい
半ばヤンデレ気味に幼女に依存気味だともっといい
そしてその幼女を失ったが最後、SAN値ごっそり持ってかれて、永続的な狂気に陥ればいい
124:名無しさん@ピンキー
12/01/11 23:52:49.17 kI9l7NDk
人外×女の子のラブ度が高いエロゲないんか
125:ん@ピンキー
12/01/12 23:08:31.33 rykqwSJl
俺もわくわくしながらスレを開いたんだが女の子が触手だった
126:名無しさん@ピンキー
12/01/12 23:17:32.58 5OI4NwLE
だがそれがいい
127:名無しさん@ピンキー
12/01/14 00:21:09.76 C7SwB72r
久しぶりにスレにきたら触手がヒロインなSSだと…
GJ!
人外な女の子って素晴らしいよな!
128:名無しさん@ピンキー
12/01/14 17:54:33.56 hvY3LtSu
>>123
腕っ節は強いがそれ故に自分よりも非力な幼女に色々と支えてもらってる…みたいな状態って良いよな!
幼女にどっぷり依存してるって構図だけで胸熱すぐる
荒れ狂う人外を止める者はもういない…
129:名無しさん@ピンキー
12/01/14 22:44:45.18 I0rTbewJ
そして暴虐の限りを尽くした数十年数百年後に、亡くした幼女に面影が重なる相手と出会ってハッとする人外
もう誰も失いたくないという苦悩と愛した相手を死なせたことで荒れに荒れた心を
人外の事情は知らないながらも懸命に癒やす幼女
人より長く生きる人外の元カレ元カノ話萌えるよな
130:名無しさん@ピンキー
12/01/14 22:48:51.15 wsBN2rAN
>>129
萌える萌える。
人外と人間のイチャラブものを書くときでも、そんなこと考える。
131:名無しさん@ピンキー
12/01/15 00:13:34.04 j4QZg5X9
ロクショウのデザインが素敵すぎて、ろくにゲームもやってないのに、そんな幼女との絡みを妄想してしまう
病弱幼女と世話焼くロボっていいよね
132:名無しさん@ピンキー
12/01/15 00:58:12.96 /BShF5zN
>>132
ロクショウとメタビーは神デザイン過ぎたな……。
メダロットモノはエロく出来ないと思うけど面白そう。普通にハートフルな話になりそうだがww
133:名無しさん@ピンキー
12/01/15 03:15:47.00 Y/2vjqjJ
漁師と魚人のカップル
NGは水上都市で
134:水上都市
12/01/15 03:16:49.25 Y/2vjqjJ
びちびち、と魚の撥ねる音が響く。
自由に泳ぎ回れる水から、哀れにも地上に投げ出された彼らは、それでも懸命に水へ戻ろうと撥ねている。
それを、押しつける者が居た。
水かきの付いた手を持った女だ。
白い髪に黒の瞳、酷く冷たい印象の顔付きである女の下肢は、魚と同じくヒレを持っている。
魚と人の特徴を備えた種、『魚人』である。
当然、上肢には何も着てはないが、恥という感情を知らないかのように、平然とした顔だ。
実際恥などないのだろう。魚人の社会で服を着ると言うことは希だ。
女はどうと身体を投げ出すようにして、縁側で魚を押さえつけている。
その女の元に、男がやってきた。手に青藤色の衣を持っている男。
顔には無精髭を生やし、髪を適当な短さに切りそろえた、少し薄汚い印象を覚える男だ。
「来るたびに魚を持ってきてくれるのはいいんだが。もうちょっと籠とか使わないか」
長年の伴侶に言うような、軽い口調で男は魚人の女にそう告げた。
「どうしてだ。手で持ってこれるのだからそれでいいだろう」
女の言は何処までも簡潔に。ぴしゃり、という音がしそうなほど。
「いや……うぅん……なんでもない」
「なんだ、文句があるなら言えばいい。面倒だろう、溜め込むのも」
濡れている髪を空いた手で梳いて、水を拭うようにしながら女が言う。
水かきで集められた水は、女の手を伝って、大きな水球を形成する。それを縁側から湖に放り込む。
ちゃぽん、と音がした。
「じゃあ、言うけど。籠に持ってきてくれた方が運びやすいんだよ、俺が」
「お前の都合じゃないか」
「相手の都合を鑑みて物を持ってくるのも時には必要だぞ」
押しつけるばかりじゃだめだ、そう言いながら、男は衣の下に持っていた手ぬぐいを女に渡す。
女は受け取った手ぬぐいで体の表面の水分を拭い去ると、ぽいとゴミでも捨てるように手ぬぐいを捨てる。
ぐちゃぐちゃの手ぬぐいが縁側の床を濡らした。
「投げ返すとかしろ」
「次はそうするよ。さ、早く着せてくれ」
「いつもそう言ってしないだろ……」
ば、と両手を広げた女に、はいはいと男は適当な答えを返しながら衣を着せていく。
その手の動きには迷いがない。幾百も繰り返した工程をなぞるように、魚人の女に着物を着付けていく。
青藤色の着物を身に纏い、菊を象った簪を髪に挿した女は、ようやく一息付けたという風に吐息した。
135:水上都市
12/01/15 03:17:51.91 Y/2vjqjJ
「苦しくないか」
その吐息に帯を調整しながら男が問うた。女は平然として答える。
「お前の着付けに問題などあろうものか」
「お褒めに与り光栄ですよ」
言うと男は女が押さえていた魚を取り上げて、台所に備えられている生け簀に放り込むとすぐ女の元に戻ってきた。
「それで、今日はどうした」
男が問う。
女が来るときは、だいたい実家で何か一悶着あったか、知り合いの魚人と喧嘩したか、
あるいは創作意欲が弾けたかのどれかだ。
この二人の間は恋人、というには些か奇怪で、友人と言うには些か距離が近すぎる。
友人以上恋人未満。そう表するのがぴったりの二人だった。
「絵を描きにきた」
そう言い放つと、女は何も言わず視線を滑らせる。所謂、流し目という奴で男を見た。
やれやれ、と言う風に男は頭を一掻きすると、また家の中に姿を消す。
ガタガタと物がひっくり返されたり、箪笥が引かれる音が響いて、
家の奥から女のために男が知り合いの大工に作らせた文机と、紙、そして筆が姿を現す。
女はそれを見るなり、一歩ほど腰をずらして、机の置ける空間を確保する。
その状態でも、まだ湖に足先の尾ビレが付いているのだから、全く下肢の長い女だった。
「ほれ。紙はその枚数で足りるか?」
「充分だ」
会話を交わすのはそこまで。
女が筆を執り始めると、男はすっかり黙り込む。
まるで、美しい女人に魅了されたかのように、沈黙のまま女の作業を見守るのだ。
実際、そうして作業する女を見守ることを男は好いていた。
料理する母の背を安堵の情で見守る子のように、男は女を見つめていた。
女は幻想画家だった。
彼女の頭の中にだけある世界を、墨の濃淡で描き出す画家だった。
人が描かれることもある。都市が描かれることもある。山や森、風景が描かれることもあった。
彼女の絵はこの都市でそれなりの評価を受けている。
ただ、まさか魚人が描いていると吹聴するわけにはいかないので、発表は男名義だった。
結果として、女自体が評価されることはない。それでも構わないから、女は絵が描きたかった。
水中では出来ない、描く、という自己表現の行為をすこぶる女は好いていたのだ。
そうして数時間。尾ビレが水を撥ねる音が奏でる独特の音楽を聴きながら、
男は微動だにせず、女は自由自在に筆を踊らせ絵を描いた。
136:水上都市
12/01/15 03:18:53.42 Y/2vjqjJ
「ふぅ……」
ずっと同じ姿勢でいた為か、ぐっと背を伸ばすと小気味いい音が響く。
「はぁ」
その快感を吐き出しながら、女は描き上げた絵を男に差し出した。
描かれたのは三枚。どれも風景画だった。
「山か。前から思っていたけど、山好きだな」
「川上りでもしなければ望めないからな。望めぬ物を望むのは、人も魚人も変わらないさ」
「そういうものなのか」
なるほどなぁ、と頷きを零す男に、女は更に言葉を続ける。
「それに、山には私たちとは違う魚人が住むと言われている」
「山に?」
山に魚人が住めるような湖というのは少ないだろう。水の源泉ではあるが、多量に水があるというイメージはない。
「そう、山に。いつ、どこからこの話が来たのかはわからないがね。
それはそれは美しい魚人たちが住まうと言われている」
女の言葉に、男はううん、と言いながら顎を掻く。
「いろんな話があるんだな。ま……乾かしておいて、いつも通り出しておくよ」
そう言って家の奥へと消えようとする男を、女は呼び止めた。
「そういえば、私の絵は幾らぐらいで取引されて居るんだ?」
珍しい女の質問に、男は少し沈黙して、「興味あるか」
「一応な。人の貨幣は使えないが、どの程度価値を見てくれているのかは気になる」
「そうだな。お前が取ってきてくれた魚二十匹分ぐらいにはなる」
「それって、多いのか、少ないのか?」
漁師として非常にわかりやすい例を出したと男は思ったのだが、
魚を取引しない魚人の女にその換算イメージは通用しなかった。
うーんと唸りながら、男は頭を掻いた。
「そう、だな。まぁ、多くはないが、少なくもない。普通、かな」
「なるほど。私はそれなりなわけだ」
「そうだな。目が飛び出るほど、というわけじゃない」
「そうか」
そこで会話は途切れ、男は一度、絵を干しに家の奥へと消えた。
残された女は、湖の水を尾ビレで弄びながら男を待つ。何も言わずに立ち去るということを彼女はしない。
去るときは去ると言う。それが二人の間での暗黙の了解だった。
そして、男が帰ってくる。
「今日はもう帰るか?」
女はやることをやってしまえば、さっくり帰ってしまうということが多い。
けれど、今日は珍しくそうではないようだった。
137:水上都市
12/01/15 03:19:49.16 Y/2vjqjJ
「しばらくいるつもり」
「んじゃ、茶持ってくるよ。菓子は何が良い」
「何があるんだ?」
「饅頭から羊羹まで」
「じゃあ、羊羹」
「了解」
ややあって男が茶と羊羹を手に戻ってくる。
女用の文机にそれらを置いた男は、どっしりと腰を落とす。
二人は何も喋らなかった。時折思い出したように羊羹を食べて、
しばらく、縁側から望める湖の風景を眺めていた。
僅かに霧が掛かって見づらいが、漁に出ているであろう漁師たちの姿が点々と見られる湖の日常風景。
遠くには小さな島も見え、時折、撥ねる魚人の姿も見える。そんな景色を二人は楽しむ。
その姿はまるで老年の夫婦のようだった。けれど、座る位置には微妙な二人の距離が表されている。
拳一つ分の距離。
それは手を伸ばせば届くという、ほんの僅かな差であるけれど、魚人と人の間に横たわる溝を表していた。
この街では、湖の上にあるというその性質上魚人と比較的親しいが、完全に溝がないわけではない。
溝の原因。それは何時の頃からか人間の間に流行った伝説。
曰わく魚人の肉を喰らえば永久の命を得ることが出来る……。
それがただの伝説に過ぎないことをこの街の人々は知っている。
いや、知ったというべきか。
ずいぶん昔の話だが、親しくなった魚人を騙して喰らった漁師がいた。
彼は永久の命を得たとずいぶん喜んだ物だが、流行病でころりと死んだ。
その日から、人々は伝説を信じなくなった。
それでも、仲間を喰われた魚人と街の人々の間には溝が残った。
なにせ、その魚人は、この湖に住む魚人たちの王族の娘だったのだから。
それに、この街の人々が魚人を喰わなくなったと言っても、外の人間はそうではない。
未だに伝説を信じ、永久の命を得んと、この街へやってきては湖の魚人を捕まえようとするのだ。
だから、魚人たちは基本的に人間を信用しようとしない。
見かけ上仲良く慣れたとしても、最後の最後の壁は、砕くことが出来ない。
その壁を完全に取り払うには、もう何世代かを待つ必要があるだろう。
人が伝説を捨て、人と魚人が交わる世代が。
「何か話してくれ」
突然、女が切り出した。
「話なぁ……」
138:水上都市
12/01/15 03:20:34.31 Y/2vjqjJ
男は唸りながら何か女に出来る話はないかと考えて、一つ閃く。
「そうだな。ぬし、って知ってるか?」
「ぬし?」
「そう、この湖のぬしって言われてる魚だ」
男が腕を広げて、こんな感じか?と言うと、女が笑い出した。
「……ああ、なんとなくわかる。たしか、島の近くにかなり大きなのが居たな。アレのことか?」
「たぶん、それだな。それを釣ろうっていう話が出てな」
その場でもっとも大きなぬしを釣ろうとする。
古今東西そう珍しい話でもない。
「それで?」
それでも男がしてくれる話だから、女は先を促した。
「挑戦したはいいんだが、なにせ相手はぬしだ。力が強くてな。船の上からずり落とされるヤツらが連発したんだよ」
「まぁ、あれだけの大きさだ。一人では難しいだろうな」
くすりと笑いながら言う女に、男は頷きを返す。
「まぁな。でも、最初に声を上げた奴がどうしたって諦めたくないって言う。しかも、賛同者も多かった。
……それで、どうしたと思う?」
「それは私でもわかる問題か?」
「だから訊いてる。発想力の問題だな」
「そう、だな」
男の問題に、女は思考する。
しばらく、沈黙が降りた。真剣に考え込む女の顔を、男は眺めていた。
「……一人では無理なら数を増やせばいい。竿を引く人数を増やした、か?」
「正解だ。それもわざわざ奇怪な竿を作らせてな。まったく馬鹿げた話だったよ」
ありゃぁ見物だった。そう言って男は高らかに笑う。
「それで、ぬしは釣れたのか?」
女の声が珍しく上ずっていた。続きが気になって仕方ないらしい
「釣れたよ。あの日の市場は盛り上がったな。なにせ、人一人分ぐらいの大きさだったからな。
解体する時なんか、上から刀借りてきて苦労して捌いたもんだ」
「それはさぞや盛り上がったろうな。美味かったか?」
「ところがどっこいそうじゃなかった、ってのがオチだ」
美味けれりゃ万々歳だったんだがなぁ、と零しながら男は茶を一口飲んだ。
「……どんな味だったんだ?」
139:水上都市
12/01/15 03:21:31.44 Y/2vjqjJ
「言語に尽くしがたい味だ。酸っぱいというか、なんか臭いんだな。
一口、口に含んだ瞬間から口の中がその匂いでいっぱいになって、結局丸一日はその匂いが残ったな」
眉を顰めながら男は味を説明する。相当酷い味だったらしく、思い出してみても苦いようだ。
「それは、なんというか……勿体ない話だな。残したんだろう?」
「いや、完食はしたぞ。残すのは、流石に無礼だからな」
「それは……苦行だったろう」
「漁師総出でやったよ。不味い不味い言いながら飯を喰ったのはあの時が初めてだな」
まぁ、今じゃ良い思い出だよ、と言って男は笑うが、その笑みが引きつっているのは女の見間違いではない。
「そ、そうか……」
ただ、本人がそうだと言い張っているので、敢えて突っ込むことはしないのが、女の良いところである。
そうして男の話が終わり、再び沈黙の時間がやってくる。
二人はただ黙して喋らず、羊羹を食べ、茶を飲み、風景を眺めた。
「そういえば……」
ふと女が、思い出したように呟いた。
「そういえば、なんだ?」
「今日で、お前と会って五年目だ」
「そういえば、そうだな。……五年か」
長いようで、短い月日だ。昔は一年経つのも遅かったが、最近は一年があっという間にも思える。
「覚えているか、初めて会ったときのこと」
「俺が舟から落ちて溺れそうになったときだな。あの日は風が強かった」
それは五年前のことである。
酷く風が強く、雨も吹き付ける中で男は漁を強行した。
他の漁師に止められたが、若さ故の逸りという奴だったのだろう。
結果として、男の舟は転覆した。
一応泳ぎというのを修めてはいるが、突然のことで身体の硬直した男は、
上手く泳ぐことが出来ず、浮き沈みを繰り返した。
それを助けたのが、近くを回遊していた女だった。
「そのくせ、お前はひっと言って驚いてな」
「悪かったと思ってるよ。あの頃はまだ魚人と親しくはなかったから」
「今でも大差なかろうに」
「いいや、お前という魚人を知った。それも、だいぶな」
言って、男は拳一つ開いていた距離を詰めた。
手と手が重なり合い、お互いの体温が手を通して伝わり合う。
140:水上都市
12/01/15 03:22:32.00 Y/2vjqjJ
「どうした、手が温かいぞ。眠いのか」
「そういうお前は、いつも冷たいな」
「手が冷たい人は、心が暖かいらしいぞ」
二人はしばらく、手と手を絡ませあいお互いの差を確かめる。
水かきがあるせいで、魚人は深く手を絡ませることが出来ない。
だから、自然と男の大きな手が、女の手を包み込むような感じで持つようになった。
二人の距離が縮まっていく。腕が付き、肩が付き、そして顔が向かい合う。
お互いの息が掛かるくらいの至近距離で、二人は見つめ合った。
「髭ぐらい剃れ」
「気を付けるよ」
「お前はいつもそう言うばかりだ」
「お前には言われたくない」
囁き声で軽口を叩き合いながら、二人は優しく口づけ合う。
男は口づけながら、女の髪を梳く。
長い時間、水から上がっていたせいで完全に乾いている髪は、丁寧に梳られた髪と同じように、するすると男の指を通す。
「ん……」
髪を触られ、女が声を上げた。その反応に、男は反射的に謝罪を零す。
「悪い、引っかけたか」
「いいや。大丈夫。引っかかるような梳き方はしてない。もっと」
単純に気持ちが良かったのだ、と言葉にせずとも意を伝えて、女は男との口づけを続ける。
人よりも少し長い女の舌が男の舌を丸め込むようにして絡む。
粘膜同士の接触が、言い知れぬ快感を双方に与える。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら口を吸い合う行為は、酷く長く続いた。
それは女が口づけを好んでいるからだった。男も、女と口づけするのが好きだった。
「はぁ……」
「ふぅ……」
少し、熱くなった吐息を二人は吐き出して、荒くなり始めた息を整える。
「ねぇ」
「ああ」
二人以外では理解できないほど短い会話を交わして、男が女を抱き上げて、二人は縁側を離れる。
縁側は湖と繋がっていることもあって、いつ他の魚人がやってくるともわからない。
ついでに言えば、湖上の漁師たちからも丸見えだ。
そんなところでするような、公開趣味は二人にはなかった。
141:水上都市
12/01/15 03:23:29.11 Y/2vjqjJ
家の奥、風呂場まで女を運んで、男は女の着ている衣を剥ぎ取った。
着るときよりもあっさりと着物は脱ぎ捨てられ、裸身が顕わになる。
常に水と親しんでいる彼女らの肌は総じて白い。
そんな白さの中に、ぷっくりと小島が浮かぶようにして僅かに盛り上がった乳房と桃色の乳輪があった。
彼女の乳房はそれほど大きくはない。というより、魚人全体の傾向として乳房は小さい傾向にある。
それは水中での抵抗に対する適応なのだろうか。
男は次いで髪を留めていた簪を抜く。
ふわ、と白い髪が広がった。
だいたいの魚人は髪を長く伸ばしている。
切る必要性というのがないからだが、人間のように長くなりすぎると言うことはない。
精々が腰ほどまでだ。女の髪も同様だった。
女が身につけていた物を総て剥ぎ取り終えた男は、自分も衣を脱ぎ捨てると、水を湛えている湯船に二人して浸かる。
水中での交合が、二人の間での常だった。
別に布団の上でもいいのだが、というのが女の言だが、男は一貫して風呂場での交合を選んでいる。
ほぼ男の趣味であるが、そちらの方が女にとっては好都合ではある。
常温の中に放置されたせいで生ぬるくなっている水に身体の半ばを漬けて、二人は尾ビレと足を絡ませ合う。
長い長い下肢を挟み込むようにして、男は足を絡めた。
包まれるようなその絡み方に女が笑みを零す。
二人は水中でお互いの体温を感じ合いながら、お互いの身体を愛撫し始める。
水のぬるりとした感触と一緒に、お互いの肌が擦れ合う。
女の水かきのある手が男の性器や乳輪を弄ぶ。徐々に硬くなりつつある男根を、女は優しく扱った。
男は、顕わになった女の乳房を貪るようにして愛撫していく。
もみ、つまみ、吸い、時に捻りすらする。
その一動作ごとに、女は嬌声を上げた。
「んん……ふぅっ……あぁっ……」
普段とは全く違う、愛らしい声に、男は益々興奮の度合いを高めて、女の乳房を弄ぶ。
吸う傾向が強いのは、男の胸への愛だろうか。
そんな必死な男を見て女が笑いを零し、
「そんなに吸っても、何も出ないぞ」
荒い息で、そう告げる。
「出るようになると、嬉しいんだが」
男のそんな答えに、荒さを増しながら女が答える。
「運次第だ」
142:水上都市
12/01/15 03:24:29.31 Y/2vjqjJ
人と魚人の間に子が出来たことがないわけではないのだ。
過去を紐解いてみれば、幾つか伝承を見つけることが出来る。
ただ、産まれる子が人間なのか、それとも魚人なのかは出来てみないとわからないのだが。
「出来てくれると嬉しいんだがな」
「まぁ、お前みたいな奴を好くのは少ないだろうしな」
「出会いも少ないしな」
軽口を叩き合いながら、二人は少しずつ高め合う。
気が付けば男の方は準備万端で、あとは女次第だった。
男の指が女の下肢を探る。
スリットに隠された女の性器を探しているのだ。
女は優しく誘導するようにその手を取って、一つのスリットへと導く。
魚人の下肢にはスリットが二つある。
性器のものと、肛門を隠しているものだ。
肛門の方に行かれては堪った物ではない。
人間同士ではそういう交合の仕方もあるらしいが、彼女はそういう交合をしてみたいとは思わなかった。
誘導された指が女の性器をなぞる。
女の性器は既に潤沢な粘液に満ちていた。
「いくぞ」
「うん」
短く言葉を交わし、男は性器を宛うと一気に挿入する。
「ッうぅん!」
挿入の衝撃が、女を貫く。
ぴりぴりとしたその快感は何度行っても慣れる物ではなかった。
「……なんか、私ばかりな気がする」
悔しそうにそう言うが、男は女の性器が与えてくる締め付けを、十分に味わっていた。
顔に出さないだけで、それなりに切羽詰まっているのである。
「動くぞ」
「……うん」
ゆっくりと水を掻き回すようにしながら男の腰が動き始める。
湯船の水は波を立て、飛沫を飛ばし始めた。
143:水上都市
12/01/15 03:25:20.29 Y/2vjqjJ
そんな事など二人は気にせず、ようやく始まった交合を楽しむ。
一突きするたびに、魚人独特の締め付けが男の性器に並はずれた快感を与える。
「ったく、締め付けすぎだ」
「そんなこと……言われてもっ」
苦しそうに言う男に、女も苦しそうに答える。
硬い性器の抽送は、女に確実に快感を与えていた。
「まったく、名器過ぎる。魚人ってのはみんなそうなのか」
「そう、なのかな……」
本来魚人の交合というのは短時間に終わる物だ。
実際、入れてすぐ終わりということも珍しくない。
魚人たちは人に似てはいるが、その生殖行動はやはり繁殖のためのものでしかないのだ。
故に短ければ短いほど危険も少なく、良い物とされる。
けれど、彼女たちだって快感を感じないわけではないのだ。
魚人同士の交合しか知らない者は気が付かないが、人間と行った女は知っている。
本来短時間で終わるはずのものを、人間の長さで行う。
その際に与えられる快感というのは桁違いのものであると。
「あ、あぁん……ふ、ぁは……ひぅっ……ぅうあぁぁ」
性器から昇ってくる独特の甘い痺れが頭を貫き、徐々に思考がぼうっとし始める。
目は虚ろになり、嬌声を垂れ流す為に開けっ放しになった口からは唾液が零れ始める。
その事に彼女は気づいていない。男が指摘すれば、湯船の水なのだと言い訳するに違いなかったろうが。
まぁ、ここで指摘するほど男も野暮ではないし、そんな余裕もない。
それに、その崩れた顔を眺めるのも、男は嫌いではなかったのだ。
「んぁあっ……あぅ……ぁあう、ああ……」
じゃぶじゃぶと水が掻き乱される音が響き渡る。
何度も何度も女の性器の中を往復して、男のそれが高まっていく。
「く……ぅぉ……ぉおお」
けれど、まだまだと下腹に力を入れて耐えながら、もっともっとと女に快感を与えていく。
「ぁう、あ、ああ……んんっ……ふぅ……は……」
完全に崩れきった顔をした女はずるずると湯船の中に沈んでいく。
人間なら溺死が近づくところだが、魚人である彼女はすぐさま呼吸が鰓呼吸へと移行し、溺死することはない。
「ひゅぅ……うぶぶ……ぷぁぅ……あぁ」
水の盛んに吸い込まれたり吐き出されたりする音が水中から響く。
嬌声と混ざり合って独特の響きを成すそれは、笛の音色のように浴室に響き渡る。
ここまでくるともう女は何も考えられないし、何も覚えていない。
頭が真っ白の状態が続いて、ただ痙攣を繰り返すだけだ。
気を失わないのが不思議なぐらい、というのは事後の女の言だが実際、本当によく気を失わないものである。
「くっ、そろそろ……限界だ」
うめき声を上げて最後の加速を男が行い、沈んでいる女を抱き上げる。
ざぁ、と多量の水を落としながら上肢を水上へと上げられた女は甲高い嬌声を上げながら幾度目かの絶頂を迎える。
「あ、ああああああああ!」
その際に強烈な締め付けと吸い込むような蠕動運動が行われ、男の堤防を決壊させる。
「ぁあああ!」
耐え、濃縮された精液が解き放たれ、女の子宮目がけ駆け上っていく。
それを吸い上げるように女の膣は蠕動運動を繰り返し、男根に一滴の精液も残さないよう搾り取る
「くぅ……は……ぁ……」
重い疲労感を感じながら、男はゆっくりと女の中から性器を引き抜く。
放った精との繋がる糸が水中に広がってすぐ千切れる。
「はぁ……はぁ……」
女も息絶え絶えと言った感じで、湯船に背を預ける。
男はゆっくりと湯船から上がり、側面に背を当てて深く溜息を吐いた。
「……出来るといいな」
忘我の彼方から帰ってきた女がそう呟きを零す。
「そうだな」
男も同意を返して、二人はしばらくぼうっとしていた。
144:水上都市
12/01/15 03:26:22.76 Y/2vjqjJ
それから少しして、熱い交合も抜けきった頃二人はまた縁側にいた。
女はまた青藤色の衣に身を包み、まだ乾ききっていない髪を簪で纏めていた。
男は何処からか出してきたうちわで身体を仰いでいる。
着物は酷くだらしのない着方をされていた。
「……疲れた」
ぽつと、女がそう呟く。
男も全く同意だった。
湯船でするのは水が絡んで気持ちが良いのだが、如何せん体力を非常に消耗するのが問題だった。
「ねぇ、お腹空いた」
ちゃぷちゃぷと水を弄んでいた女が言う。
性欲を満たせば食欲とはまったく欲まみれにもほどがあるが、生きている以上仕方のない話だ。
「お前が持ってきた魚でも食うか」
「いいの?」
「あの大きさじゃどうせ売っても大した値段にゃならん。精々、根菜一本ぐらいか。それぐらいなら喰っちまったほうがいい」
「そっか。それじゃ楽しみにしておこう」
「まぁ、いつも通り刺身なんだがな」
「刺身好きだよな」
「楽だからな」
言って、男は立ち上がり、台所へと消えていく。
あとに残された女は、ひっそりと腹を見下ろした。
「出来るといいんだけどなぁ」
そうしたらこの関係もまた一歩進むのに、そう呟きを風に乗せて、女は水を弄んでいた。
少しして、男が捌いた魚を手に戻ってくる。
ぷりぷりとした身は、綺麗に入れられた包丁のおかげで、更に美味そうに見えた
それを机の上に置いた男は醤油を持ってきて、どかっと腰を下ろす。
どちらともなく頂きますと礼をして、綺麗に切られた刺身を口に運んでいく。
ぱくぱく、という擬音がしそうなくらい、二人は豪快に多量の刺身を口に運んでいく。
「どうして人はわざわざ魚をばらすのかな」
ぽつと突然女が言い出した。
「いきなりなんだ藪から棒に」
「いや、ほら、普段は丸ごと食べてるから」
「ああ、そうか……丸ごとって、骨とか喉つまらんのか?」
「丸呑みする人もいるしなぁ。少なくとも私は引っかかったことはないよ」
引っかかるような食べ方しないしね、と女は附言する。
「そいつは羨ましい話だ」
言いながら男は刺身を時折醤油につけて口に運ぶ。
対照的に女は、最初から一貫して何も付けずに口に運んでいた。
この辺り種族差が出てしまうのは仕方ないだろう。
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