ラストエグザイル 銀 ..
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936:姫君と護衛5/5
12/10/08 22:54:51.48 bFlilbxK
「ねえねえ、リリー様。今のは何回目?総統は早漏だってフリッツたちが言ってたけど、本当なの?」
「コレット、ファンファンを摘み出せ」
慌ててシーツで身を隠すリリアーナの周りを飛び回りながら、さかんに囀るファムを示して、
苦虫を噛み潰したような表情のルスキニアが言った。
おっとりとした動作で部屋に入って来た黒髪の少女は、彼らが世話になっている空族の長の娘だった。
ルスキニアの言葉に応えようと彼の方を向き、そしてすぐに顔を背けた。
「ルキアさん、その、言いにくいんですけど、前は隠したほうが…」
男は黙って椅子の背に掛けてあった肩掛けを下半身に巻き付けた。
無垢な乙女の目に入れるのは憚られる形状を呈していたからだった。
お世辞にも優雅とは言えないその所作を見て、息を抜くような奇妙な音を立ててコレット嬢が笑った。
「毎朝お盛んですね」
「毎朝ではない。せいぜい、一日おきだ」
「じゃあ夜は?」
黙して答えないルスキニアに、少女は頬を染めて口を歪めた。

「なんにせよ、色惚け総統の伝説に、また新たな一頁が書き加えられたわけだ」
服を着るために奥へ下がったリリアーナから離れたファムが、相棒の傍らへと駆け戻ってきてそう言った。
「なんだそれは」
「伝説そのいち。ヴェスパの運転中に振り返ってリリー様とキスしてたせいでグランレイクに落っこちた。
 伝説そのに。夕飯の支度の途中でおっぱじめたせいで焦げたポテパンにより火災が発生。
 あやうくカルタッファルが火の海に。
 伝説そのさん。テレザおばさんの若い時の服を着たリリー様を見て……」


937:姫君と護衛5/5
12/10/08 22:57:53.82 bFlilbxK
「ファムー! ジゼルー!」
滔々と述べ立てる少女の言葉を遮るようにして、よく通る声が響いた。
ルスキニアは今回も、ファム・ファンファンを絞めころす絶好の機会を逸した。
「ディーオ!」
足取りも軽く階段を登ってくる音が聞こえ、ディーオと呼ばれた少年が、 床板に開いた扉から顔を覗かせた。
「やあ、総統とリリー様は起きた?」
彼は、隈取りのある瞳をぐるりと巡らせて、部屋の中を面白そうに見回した。
ルスキニアと目が合うと含みのある視線を送ってみせた。
その意味は、お気の毒様といったところだろう。
総統閣下は威厳を持ってそれを無視した。
布に覆われた股間に目を止めた少年が、愉快そうに笑ったのを知っていたからだ。
服を着て奥から現れたリリアーナが、ディーオを見て声を上げた。
「ディーオ、あなたまで。一体どういう風の吹き回しです」
「ルスキニア、それにリリー様。お楽しみのところ悪いけど、お二人にビッグニュースだよ」
ディーオの言葉に、 顔を見合わせたファムとジゼルがはしゃいだように歓声を上げた。
手を取り合って、 少女たちは笑った。
「ミリアが来るの!」

938:姫君と護衛
12/10/08 23:00:31.42 bFlilbxK
投下は以上です
読んでくれた人に感謝

次回投下が最後になるかと思いますがそれまでスレが残っているか少し不安です
落ちていた場合はお焚き上げスレあたりに落とすことにします


939:名無しさん@ピンキー
12/10/10 00:22:00.95 Vpg5hmlX
投下来てたー!乙です!穏やかでいいな
この世のものとは思えない存在を造り出していたリリー様にワロタw
次で終わってしまうのは寂しいけど続き楽しみにしてます

940:名無しさん@ピンキー
12/10/10 03:18:18.50 MXMkVoUm
>>938
GJです、お盛んな2人良いw
2人の貴重な話もっとずっと見ていたい
ラストのんびり待ってます

941:名無しさん@ピンキー
12/10/10 12:56:06.97 WNZc2FXM
>>938
乙です!ルスリリにカルタッファル勢が絡むと可愛いな
ラストも楽しみにしてます

942:白い月(1/7)
12/11/09 22:54:06.08 sXQ72aAo
1期のタチアナいじめを見かねて、個人的にスッキリしたくて
書いた。ファムで出番があったから、あーあwと思ったものの
…創作という事でお許し下さい。貴重な残レスを減らして
すみません。イーサンとアリスティア。

=白い月=

なま暖かい雨がざあざあ降っている。
干ばつ地帯には避難命令が出て、街の軒という軒に
避難民があふれている。でも、避難民も、街のやつらも
どこか浮かれている。
数年間待ち望んでいた雨が降りだして、すぐではなくても
いずれかは、赤茶けた大地に水と緑が戻ってくることを
若く美しい新皇帝が宣言したからだ。

俺は雨を避けてアリスティアとふたり、安ホテルに泊まってる。
明日はアリスティアが先遣隊として母星に帰還する日だ。
正直寂しい。でも先遣隊が安全が確認すれば…俺はアリスティアを
追って地上に降りる。ほんの少しのお別れだ。
17才のアリスティアが、再会したときにはさらに肉感的に
成長している姿を想像して俺はにやける。

「…どうかした?イーサン」
同じシーツにくるまった裸のアリスティアが俺を見て言う。
スケベ心を見透かされたようで俺はあわてて表情を引き締める
「なに?」「笑ってた…口がこう…いきなりこんなふうに」
アリスティアが胸元で重ねた手をわずかに動かして
2本の人差し指で自分の口の端を持ち上げてみせる。
やさしく下がった目尻と、持ち上げられた口角が
可愛らしい笑顔に見えて、俺は愛しさがこみあげて、
乱暴にアリスティアの頭を抱き寄せる。
「あ、…ん」
胸にすっぽり収まったアリスティアに言う
「愛してる」
「…ふふ」
茶味の強いブロンドが絡まないように細い首と女らしい肩に
指を滑らせると、アリスティアは行為の後で敏感になった肌を
粟立てて甘えるような鼻声を出す。 張りのある瑞々しい肌も、
細身の身体に不釣り合いな大きな乳房も、筋張った俺の足を挟む
柔らかい足も、その付け根の密壷も。
すべてが愛しくて、俺はまた引きずられるようにアリスティアに
のしかかりたくなるけど、今は我慢だ。だって。

943:白い月(2/7)
12/11/09 23:04:38.43 /vy3rL9E
俺は表情を引き締めて、今日こそは言おうと思っていた言葉を続ける。
「ち、地上に降りたらさ…、俺は家を建てるから、そしたら…
俺と一緒に住んでくれる?」
「………」
アリスティアは返事をしない。
相手は17才の、まだ少女と言っていい年齢だ。
俺みたいな、整備士としては下っ端の、ぱっとしない年上と
将来を約束するのはまだ早いと思っているのかもしれない。
アリスティアは黙ったまま、俺の腕からするりと抜け出す。
裸のままテーブルまで歩いて、トレーの上に伏せられた
コップのひとつに水挿しから水を注ぐ
「……な…、なんか、反応がないね」
「薬を飲む時間だから」
「あ、ああ。ありがとう」
事故の後から俺は眠れなくなって、酒と、アリスティアが
運んでくる薬に厄介になっていた。
「アリスティア、あの…薬の前に、さっきの返事がほしいな」
「薬を飲んだら返事をあげるわ」
俺の手に薬包を握らせて、母親のように微笑みながら
コップを差し出すアリスティアの言葉を聞き、俺はぱあっと
気分が明るくなって、急いで大きな薬包の中身を口に流し込む。
アリスティアはそんな俺の様子をベッドに腰掛けて見ている。
「…それで、返事。私とあなたが母星でいっしょに住むっていう」
「う、うん」
俺は色よい返事を期待して、ベッドの上で背筋を伸ばして身構える。
「イーサンは母星で何をして暮らすつもり?」
「え。あー。うん。機械の整備の仕事をしながら、農業…かな?
ヴァンシップを直すだけじゃなくて、農業機械の整備もできるし…。
畑も耕せるよ。アリスティアの好きな、棗椰子を植えようか。
それと、水が多い大地で育つような…、小さい頃に食べただけだけど、
えーと萵苣。あれはおいしかった。そういうのを」
「…水、ね。母星には、あるのかしら」
「あるよ。ここに雨が降らなかったのは、ギルド人が
さぼってたからなんだろ?」
「作物は、穫れるのかしら」
「植えれば育つんじゃない?」
ベッドに腰掛けて考え込んでいたふうのアリスティアが
大きく息を吸い込んでため息とともに言う。
「……ばかみたい」
「え?」
アリスティアは肩越しに俺を見る。
「無害な環境だけ切り取られて、ぽっかり空に浮いていた私たちが、
これから地上に降りるのに、どうしてそんな幸せな未来ばかり
思い描けるの?」
アリスティアが背中にかかる髪をまとめて、左肩に回す。
「母星の様子はギルド人すら把握していない。
ただアルヴィスが産まれてエグザイルが起動したから降りるだけ。
母星では先住民と交戦する可能性がある。私は、畑を耕しに
行くんじゃない。人を殺しに行くのよ」
意外な、いや軍人なら当然だけど。さっきまで年端もいかない
少女と思っていたアリスティアの変化に俺は戸惑う。

944:白い月(3/7)
12/11/09 23:13:41.43 CnKi8AjB
「…ぼ、母星に、降りたくなかったんだ?」
「降りたくなかった…」
アリスティアが天井を見ながら俺の言葉を繰り返して
首を左右に振る。
「いいえ、タチアナが降りると言えば、私は従うわ」
俺は、威圧的なまでに美しいタチアナの横顔を思い出す。
「あのー……、何も主君だからって、いやならいやって言ってもいいんだろ?
従わなくても。軍だって、辞めればいいんだし…」
そうだ。主従だからと言って、タチアナと一緒にアリスティアまで
危険な真似をする必要はない。アリスティアは俺の妻になって、
俺の子供を産んで、お母さんになることだってできる。
「……変なイーサン」
アリスティアが表面上は穏やかに、俺の言葉を否定する。
「タチアナが、帰還は軍功を挙げる好機と考えるなら私は付き合う。
私が生涯をかけて従う人はタチアナだから。」
いつもの静かな調子でアリスティアは話を続ける。
「…だから私は、タチアナを侮辱し続けた男たちを許さない。
それはあなたも例外じゃない。イーサン」

−傭兵として乗船してきたふるいつきたくなるような美貌の少女に
真っ先に声をかけたのは俺たち整備士だ。
タチアナと名乗ったその少女は、お義理の敬礼の後に無表情で
そっぽを向いた。
傭兵のくせに、ずいぶんと偉そうな、ツンとした態度だった。
後からその少女が、士官候補だった貴族で、身分が違うことを
説明されても初対面の生意気な印象を払拭することはできず、
俺たちは彼女にずいぶん意地悪をした。
時には、泣かせてしまうくらいに。
泣き出した彼女の傍らで、従者だというアリスティアは
黙ってその様子を見つめていた。途方に暮れたような、
悲しそうな表情で。

あの時のような悲しい顔をさせた気がして
『いや、そんなつもりじゃなかったんだ』って、俺は慌てて
手を伸ばす。シーツをはねのけて、ベッドに腰掛ける
アリスティアの背中に触れようと。
そこで俺は大きくふらつく。ベッドのスプリングに弾かれて、
サイドボードに強く腰を打ち付ける。
どういうわけなのか、そのまま頭が床に投げ出される。
何が起こったかわからない。
視界が切り替わっただけで、衝撃も痛みも感じない。
アリスティアは驚くふうはなく、ベッドから転落した俺を
避けるように立ち上がった。
俺はあれっ、と思う。声が。出ない。
アリスティアが言う
「薬が効いた?」
薬?薬。いつも飲んでる入眠剤はこんな効き方はしない。
「心配ない、イーサン。意識を失った後に、吐瀉物による窒息死。
苦しい事はひとつもない。ただ人生が終わるだけ」
何を言ってるんだ?
「言えなかったけど…イーサン、私の最愛の人はタチアナなの。
私は誰より深く、タチアナを愛してる」

945:白い月(4/7)
12/11/09 23:22:25.77 Twwcknil
……愛してるって?冗談だろう。女同士で。
俺は、こんな時なのにアリスティアとの夜を思い出す
俺に巻き付いて離れようとしない足。その柔らかい締め付け。
男に適わない非力な筋力に反して俺をぎゅうぎゅうに
締め付けるヴァギナ。奥に深く、吸い込まれていくような快感。
アリスティアが俺でイクときの形と暖かさを俺は知ってる。
アリスティアが俺をどれほど激しく求めたか俺は知ってる。
こんないやらしい身体の持ち主が、女で満足できるはずはない。
「……私が、女で満足できるはずがない?」
勘のいいアリスティアはたまに相手の心を言い当てる。
息が止まるようなタイミングで。
「そうかもね。イーサンひとりじゃ満足できなかったし」
「ゴドウィンやコスタビとも寝た」
ああ、知ってる
「イーサンが嫉妬に狂ってふたりを殺してくれたのは助かった」
あれは、事故だよ。
「故意に、イーサンは手を滑らせた。私は見てた」
アリスティアは俺に近付いて、俺の身体がどこまで動かないのか
観察している。痙攣する俺の瞼を手で抑えて、そのまま、ご褒美でも
与えるように俺の頭を撫でる。
数回それを繰り返すと、ずいぶん暫くして、俺の耳元で…
「滑るような細工をしたのは私だけど」
耳元で、そうあってほしくなかった事を囁く。

ああ、アリスティア。アリスティア。
言ってくれれば、頼んでくれれば。
俺は、仲間を殺す事くらい何でもなかったのに。
俺は、アリスティアのためならどんな事でもできるのに。
アリスティアの心が俺に無いとしても、それでも俺は。

「これまでありがとう…。でも、さよなら。イーサン」
閉じられた瞼の中で足掻いても、指の一つも動かない絶望に
打ちのめされながら。俺は、アリスティアが部屋を出ていく音を
ただ聞いているしかなかった。

 ***

何日も降り続いた雨を今朝だけは止ませる事にしたのだろうか。
明け方に雨は止んで、雨雲の向こうの朝日が世界を黄色く染めている。
エグザイルで母星に搬送される予定の戦艦群は濁流の川を
見下ろす丘の上に停泊している。乗船時間まであと1時間。
帰還する家族や友人の艦を見送ろうとする人々、
彼らに花や土産物を売ろうとする露店。ぬかるんだ地面の上で、
逞しく展開されるお祭り騒ぎを手をつないだアルとホリー、
クラウスとラヴィ、生体キーを監視するタチアナとアリスが
乗船待機場所から見つめていた。

946:白い月(5/7)
12/11/09 23:28:56.15 jJqIlh+c
送別の賑わいに圧倒されて、アルが掠れた声で訴える。
「大丈夫かな…私、ちゃんとエグザイルを飛ばせるかな…。
ホリー。ラヴィ、クラウス」
「だいじょーぶだって。練習したじゃない。あたしたちがついてる!」
「起動すればあとはオートコントロールと聞いているし、何かあっても
ギルド人がどうにかする約束だよ。心配しなくて大丈夫」
のんびりしたクラウスに優しく微笑まれ、アルはエプロンドレスの
裾を握ってうれしそうに頬を赤らめる。
「クラウス!」
「げっ、ゲイルさん?」
「イーサンを見てないか?一緒にお前らを見送るつもりだったんだ」
「それは、僕よりアリスティアさんのほうが…タチアナさん」
「アリス?イーサンは見送りに来ないのか?」
タチアナに問われると、アリスティアは目を伏せて答えた。
「…来ると、もっと悲しくなって、みっともなく泣いてしまう
だろうから、見送りには来たくないって言ってたわ。…彼ね、
すっごく落ち込んでて。見てられなかった」
「そんなにか…ゴドウィンとコスタビの葬儀から雰囲気が
暗かった…、イーサンのせいじゃないのに。」
つい数週間前の事故で亡くなった整備士達の葬儀を思い出して
一同はどこか沈んだ気持ちになる。その雰囲気に耐えられず、
ラヴィが口を開く。
「で、でも、ほら。イーサンは、後からアリスティアさんを
追っかけてくるんでしょ?」
アリスティアはラヴィを見て、首を左右に振る
「志願はしたみたいだけど…、よくわからないわ」
生真面目なタチアナは、公認の仲の相手に対する無頓着な
アリスティアの言い方を聞き咎める。
「そういう煮え切らない態度が…、アリス」
「タチアナ…、お母様がいらしてる。お別れを」
「あ、ああ」
人混みの中の、車椅子のヴィスラ準男爵とその奥方のもとに
タチアナを向かわせると、アリスティアは胸ポケットから
包みを出してゲイルに向き直る。
「ゲイル、これ。気休めだけど…、蛇除けの香料が入った軟膏なの。
干ばつ地帯の大水に土嚢を積みに行くんでしょ?
あそこは、毒蛇が出るから」
「お、こりゃどうも」
「長靴の間あたり…地肌に塗って、休憩時間にまた塗ってね…お餞別よ」
「イーサンには?」
「夕べ渡してる」
ホテルのサイドボードに置いてきたのは蛇除けの香料だが、
ゲイルに今渡したのは蛇寄せだ。毒蛇に咬まれてゲイルが死ぬか、
それはわからないが、イーサンと関係を持ちながらゴドウィンや
コスタビを誘惑していた事に後々気付かれては都合が悪い。
念のためだ。
ゲイルはアリスティアに渡された軟膏の蓋を開けて、自分の好みの
香りであることを確認してにやっと笑う。
「もう世話女房の貫禄じゃないか。酒もやめろって言ってるんだろ?
イーサンとの結婚式には呼んでくれよ」
「…よく言われるけど。まだ早いでしょう?」
目を伏せて静かに否定する姿は照れているようにも見える。
ゲイルはアリスティアの左肩を何度か叩き
「身体に気を付けてな!」と励ます。
アリスティアは素っ気なく「ゲイルもお元気で」と答える。
頷いたゲイルはクラウスのほうに身体の向きを変え、
その肩を両手で掴む。「クラウスには…いずれ会いに行くから、
それまで元気でな?」調子に乗って、曖昧な態度のクラウスに
唇を近付けていくゲイルをラヴィとアルが悲鳴をあげて阻む。

947:白い月(6/7)
12/11/09 23:35:12.18 3/FA7SH4
アリスティアは、自分の渡した軟膏がゲイルの胸ポケットに
入ったのを見届けて……密かに、周りの誰にも悟られないくらい
静かに笑った。

両親に別れを告げて、待機地点に戻ってきたタチアナは言う
「待たせたな」「集合時間どおり」アリスティアは応える。
「今更なのに、母上に引き留められて…イーサンは来たのか?」
「ううん、結局来なかった。ゲイルはあそこで見送るって」
「そうか…シルヴァーナの整備士連中ともお別れなのに…」
「うち2人とは永遠の別れになったわね」
「亡くなっていなければ、2階級特進を自慢して、アカンベーで
別れるつもりだったが…全く後味の悪い別れになったな」
「…タチアナは、乗艦早々いじめられてたから」
「私の態度が悪かったんだろう…そう言ってたしな」
「態度が悪いとか。あんなのはあいつらの言いがかりに過ぎない。
実際タチアナは昇進しているわけだし…気にすることはないわ」
「どうかな…お互い様だろう」
タチアナは肩をすくめて苦笑する。
「今はああいう連中も巧くあしらえる…奴らに鍛えられたおかげだ」
タチアナの切り替えが早いのは聡明さ故だろうか。
そのくせ計算高いところは皆無で、伝えるべき言葉を本来の相手に
伝えられない不器用さがある。アリスティアはそんなタチアナを心底
愛おしいと思う。

−私の、大切なお嬢様

士官学校に入学する直前に、呼ぶなと命令された幼い頃の
呼び方を心の中でつぶやく。
母親に手を引かれ、主人となるタチアナに引き合わされたとき
彼女の美しさに息を呑んだ。お嬢様は、白い月のようだと思った。
それは、昼の暑さが引いていくのと同時に輝き出す。

雨の切れ間の、黄色い空の下。
雨雲の向こうには、映写された夜明けの月が浮かんでいる事だろう。
でも、これから降りる母星の空には真実の月がある。
白い月を追いかけて、追いかけて。私はこれからも。

「時間だな」
タチアナが時計を見て搭乗艦を見上げる。
「そうね」アリスティアは返事をする。
「さあ、アル。ホリー様、お時間ですよ」
「参りましょう」
タチアナとアリスティアはふたりの少女を間に挟んで、
乗艦口へ歩を進めた。

(終)

7も使わなかったw通し番号6にて、謹んで訂正いたしますw

948:名無しさん@ピンキー
12/11/13 00:07:12.59 1Ie5tGG5
おぉ新作来てた!乙です!
めったに見ないアリス素材GJです

949:名無しさん@ピンキー
13/01/01 18:02:09.23 QlGaS5tm
>>947
タチアナハァハァ

950:名無しさん@ピンキー
13/01/06 22:45:13.45 Jrv0bRnv
ほす

951:名無しさん@ピンキー
13/02/05 05:31:20.36 bjZazA/8
正座で全裸待機

952:名無しさん@ピンキー
13/02/17 02:31:01.30 FnGaF1uc
続きをずっと待機してる

953:名無しさん@ピンキー
13/03/18 23:04:13.96 YgHjVhZx
まだまだ正座で全裸待機

954:名無しさん@ピンキー
13/03/29 22:07:57.57 1/QcAlcf
いつまでも待機してるわー

955:名無しさん@ピンキー
13/05/11 15:52:12.92 TEIGb+/b
グローリアアウグスタ!

956:名無しさん@ピンキー
13/07/22 00:13:47.29 WlQN/ZLd
アウグスタとリリアーナと全裸待機


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