少女・女性が化物に捕食されちゃうスレ 復活の5 at EROPARO
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350:名無しさん@ピンキー
10/12/12 05:03:45 5J0m+fgh
前から話題に挙がってたエデンの檻で直球な捕食シーンくるかな
怪鳥の腹を掻っ捌いて、ウ○コに変換される途中の人間らしき物体が出てくるシーンでもあったら俺得

351:名無しさん@ピンキー
10/12/16 22:16:01 fa8dlj7K
pixivにいい捕食小説あがってた

352:名無しさん@ピンキー
10/12/27 01:10:35 6UF1v09A
>>344の続きを投下します。
残酷表現がありますのでご注意ください。

353:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:12:08 6UF1v09A
 こんなことになったのは、私がワガママを言ったバツなのだと思いました。

 久しぶりにパパが家にいてくれて、だからどこかにあそびに行きたいと言いました。
 「パパは毎日の仕事で疲れているのだから……」、としかるように私に言ったママに、私は大声を
上げて反たいしました。だって、いつもお仕ごと、お仕ごとって、私も、お姉ちゃんも、もうずっと家ぞく
であそびに行っていないのに、パパもママもそれを全ぜん分かってくれなくて。
 私たちのためだから、って、いつもいつも、同じ言いわけばかり。
 大声を上げて、スリッパでゆかをダンダンとふんで、私はお出かけしたいとさけびました。
 ソファに横になって新ぶんを読んでいるパパに、とてもよく聞こえるように。
 新ぶんなんて小さな字ばかりで、テレビらん以外はおもしろくもないのに、言うことを聞いてくれず
に、おもしろくない新ぶんを読んでいるパパにも、私はかなり怒っていました。
「ごめんなさい」
「ワガママを言ってごめんなさい」
 家ぞくみんなであそびに行くことになったあとも、なんだか私がうるさく言ったからあそびに行くこと
になったような空気がちょっといやで、パパやママに話しかけられても、私はほっぺをプウっとふくら
ませてまどのけしきを見ているだけで、話をしませんでした。私はその時、すねていたのです。
「ごめんなさいが言えなくてごめんなさい」
「ありがとうが言えなくてごめんなさい」
 これから私は、いい子になります。
 もうどこかにあそびに行きたいなんて、ワガママは言いません。パパとママの言うことは、きちんと
守ります。あいさつもきちんとします。宿だいもきちんとやります。きらいなヒジキとかぼちゃも食べま
す。だからおねがいします。だから神さま。私の、今日のワガママを、なかったことにしてくだい。
 神さま、おねがいですから、時間を、もどしてください。

354:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:14:05 6UF1v09A
 私がワガママを言って、家ぞくであそびに行くことになった、あのときに。
 おねがい、早くしないと、パパとママが……。
「……! ……!」
 お姉ちゃんが私の手をにぎって、泣きながら、何か言っていました。
 でも、私には、お姉ちゃんがなにを言っているのか、聞くことができませんでした。
 …………………………………………
 ………………………
 車両が数珠繋ぎになって停車し、人々は悲鳴をあげ、車両の隙間を縫うように逃げ惑っている。血
を流している者や泣いている者も、老いている者や若い者も、皆が恐怖で顔を歪めていた。
「どうしたの? ねえ! 何か言ってよ!」
 呆然と立ち尽くしている少女の腕を引いて、彼女の姉は必死に呼びかけを続けていた。妹の反応
が無くなってから数分になる。2人は双子らしく、髪を腰まで伸ばしているか、肩の辺りで切りそろえ
ているかの違いこそあるものの、愛らしい顔は鏡に映っているかのように等しかった。
 空ろな顔でぶつぶつと何かを呟いている、髪の短い妹。
 その視線の先にあるのは、玉突き事故に巻き込まれた軽自動車が、黒い煙を噴いて停車している
光景だった。運転席には、スピンした別の車両が突き刺さるように衝突しており、割れたフロントガラ
スの奥では、ひしゃげたドアが衝突の衝撃で中にめりこんでいる。
 運転手と思しき男性は、座席とドアに挟まれる形で、押し潰されていた。意識は無いようで、ぴくり
とも動かない。助手席の女性も意識は無い。頭から血を流したまま、前に倒れかかっている。
 彼らは果たして、双子の少女の妹にとってどういう存在なのか
 それは最後に交わした言葉が罵声だったという、彼女の両親だった。
 反省する時間など意味はない。後悔するための時間も、何も意味もない。
 今、この瞬間にも、別れの瞬間が迫っているのだ。人間、いつかは死ぬ。それが早いか、遅いかを
決めるのは、少しの良い行いと、少しの運と、あまりに無慈悲な、他者の巨大な悪意。

355:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:16:11 6UF1v09A
「パパ……ママ……」
 虚ろな表情で立ち尽くす、双子の妹。
 連鎖した車両から立ち昇る黒煙が、風に吹かれるカーテンのように揺らぐ。
 喧騒を振り払うように轟音が響き、煙の奥から飛び出してきた触手が、逃げ惑う人々を一斉に薙い
だ。それだけで、人間は、頭と胴体が千切れ、腹と腰が千切れ、バラバラになって飛んでいく。彼岸
花のように無数に咲いたのは、爆発した血飛沫と四散した臓物の華だった。
 俊敏に宙を泳ぐ触手は、逃げ惑う獲物や残骸を集め、煙の奥に引きずり込んでいく。すぐに聞こえ
てきた断末魔の声と、肉や骨を噛み砕く音が、嫌でも生存者たちの耳に届いてしまう。
「……あのね……パパとママ……私は……」
 姉は妹の手を引いて逃げようとするが、妹の足は石のように動かない。
 早く逃げなくてはいけないと分かっていても、視線を車から逸らした瞬間が両親との別れになると
理解している彼女は、どうしてもその場から動けなかった。ときに厳しく、ときに優しい両親の顔が、
浮かんでは消え、浮かんでは消え、いままでの思い出が、洪水のように心を満たしていく。
 それはもちろん、手を引く姉も同じだった。
 しかし、妹が一時狂乱状態だった分、彼女は冷静にならざるを得なかった。
 それでも、目は真っ赤に充血して涙が溢れ、歯を食いしばらなければ号泣しそうになる。両親から
離れたくはないし、置いていきたくもない。しかし、彼女には両親の代わりに、姉として妹を守らなけ
ればいけないという意思があった。ここに留まっていれば、間違いなく殺されてしまう。
 逃げなければならない、突然現れた、あの悪夢のような怪物から。
「!!!!」
 瞬間、彼女の両親は ―ぐしゃりと車ごと踏み潰された。
 軽自動車を押し潰し、煙のカーテンを破って現れたのは、黒ずんだ表皮から触手を生やした巨大な
怪物だった。腐敗したウミウシを思わせる外見のそいつは、突然国道に乱入して両車線で玉突き事
故を引き起こし、そして逃げ惑う人々を虐殺し、喰らい始めたのである。

356:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:17:36 6UF1v09A
「うわあああああ! こっちに来た! 逃げろ!」
 様子を窺っていた人々も、怪物の進行方向が自分側と分かるや、道路を走って逃げた。
 停車した車両は鎖のように延々と連なり、人々はボンネットの上によじ登り、国道から左右の市街
地に分かれて散っていく。しかし、追跡する怪物の触手は本体から蔦の様に伸び続け、50m先の人
間まで数秒で追いついてくる。機動力が最初から違いすぎた。
 何十本もの触手が空を切り、人間の胴体を刺し貫く音が機関銃のように連続する。
 赤い血煙が国道から空に巻き上がった。
 運良く触手の攻撃に遭わなかった人々も、硬直して動くこともできない。なぜなら、今の攻撃は明
らかに、よく動いていた獲物を狙っていたものだったからだ。次に動けば標的になると感じた人々は
どうすることもできず、怪物の射程範囲に縫い付けられていた。
「う……? うう……」
 ショックのせいだろうか、双子の妹の反応が戻り、姉は思い切り抱きしめる。まだ幼い双子の姉妹
でさえ、もう自分たちが助からないと理解していた。それほど、怪物の攻撃は圧倒的だった。
 周りには、双子のほかに、長い金髪の少女が1人、青い洋服を着て立ち尽くしていた。
 金髪は地毛らしく、歳は双子より少し高いように見える。家族の姿が見えないことをみると、双子と
同じく事故に巻き込まれたらしい。表情は整っているが無表情で、まるで彫像のようだった。
「理央……」
「真央お姉ちゃん……! 私……私ねっ……パパとっ、ママにっ!」
 真央と呼ばれた姉は、妹の理央を胸に抱きしめて、怪物の姿を視界から隠した。せめて少しでも、
周りの怖い光景から妹を守るかのように。それが、今の彼女にできる精一杯の抵抗だった。
「天国でパパとママに会えたら、いっしょに、ごめんなさいって、しようね」
 真央の呟きに、理央は姉の胸の中で、無言で頷いた。

357:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:19:25 6UF1v09A
 …………………………………………
 ………………………
 国道は阿鼻叫喚の洪水と化していた。
 うずくまる双子と立ち尽くす金髪少女の周りでは、胴体や胸を刺し貫かれた人間、腕や足を失った
人間、触手に切断されて胴体のみの人間、頭の上半分の残骸、車両に押し潰されて半分ミンチにな
り、臓器や骨を露出させた人間などの影が、肉片と内臓と血の海の中でぐちゃぐちゃとのたうちなが
ら広がり、壊れた楽器のように掠れた悲鳴や呻き声を迸らせていた。
 彼らはいずれも、死んだ瞬間の姿で固定されている。
 死んだ瞬間の姿で漂っている幽霊だといえば、あまりに陳腐に聞こえるが、実際に死体が大量に
転がる中、死屍累々の光景に重なりあって蠢く死者の大群は、凄惨の一言に尽きる。
 胴体を切断されて内臓を飛び散らせたものは上半分と下半分が別々に動き、飛び散った内臓もナ
メクジのように道路を這って動いている。何十人分もの肉体の残骸が絡み合い、内臓や骨がお互い
に押し合い、頭皮と髪の毛のみになった女性や、手だけが動き回る老人、汚物を垂らしながら蛇の
ように動く腸、割れた頭から垂れた脳漿が……お互いに干渉し、絡み合っていた。
 地獄絵図と表現しても誇張ではない光景が、そこに存在していた。
 彼らは何れも、死んだ直前の苦痛を感じ続けているらしい。
 人食い怪物の周りでも、ミンチ肉と化して唾液と絡まった人間の塊や、中途半端に噛まれて胃に
送られたのだろう、全身が酸で真っ赤に焼け爛れた人間、さらには頭から腰にかけて水分を吸い取
られて腸液と絡まり、上半身が茶色い糞便と化している者までいる。
 苦痛の声が国道に溢れた。
 泣き叫ぶ声が国道に溢れた。
 死んだままの姿のまま、人間が国道に溢れかえる。
 しかし、残されている、生きた少女たちは、しかし、そこ光景を見ることはない。

358:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:20:48 6UF1v09A
 周りに展開されている地獄を、目でも耳でも感じることは無い。
 生者と死者の違いが、彼女たちを悪夢のような世界から守っていた。
「理央……」
「真央お姉ちゃん……! 私……私ねっ……パパとっ、ママにっ!」
 真央は、理央を胸に抱きしめて、怪物の姿を視界から隠した。せめて少しでも、周りの怖い光景か
ら妹を守るかのように。それが、今の彼女にできる精一杯の抵抗だった。
「天国でパパとママに会えたら、いっしょに、ごめんなさいって、しようね」
 真央の呟きに、理央は姉の胸の中で、無言で頷いた。
 そして、彼女たちの両親の乗った車から、ゆらりと立ち昇る2つの影。
 破れた脇腹から折れた骨と内臓を広げ、潰れた頭の鼻腔や眼窩から、生卵の黄身を踏み潰した
かのように崩れた脳漿や血を垂れ流し、砕けた顎から抜けた歯を顔中に食い込ませ、煎餅のよう
に平らになった両親の姿など、視ることができなくて良かったと断言できるだろう。
 目に焼き付けば、それこそ彼女たちの正気すら危うくなる。
 そして、亡者たちの群れからは、黒い煙のような気体が立ち昇っていた。
 千切れた胴体や腕の断面が空気に触れる、露出した内臓が地面を這う、潰れた顔が疼く、噛み砕
かれる、消化液で溶かされる、腸の中で水分を奪われて糞便に変えられる……それらの記憶が甦
るたびに、死者の大群は漆黒の気体を吐き出し、あたりに撒き散らしている。
 それらは、脳裏に焼きついた、恐怖と苦痛に他ならなかった。
 死んだ瞬間で固定されている彼らは、延々と続く死ぬ直前の苦痛を、自身がパンクする前に吐き
出しているのだった。さながら、呼吸でもするかのように、一定の周期で。
 暗黒色の煙が空気を塗り替え、潰れた車や人食いの怪物も呑み込んだ。
 立ち尽くす金髪少女の腰まで、苦痛の黒い海は溢れかえる。
 寄り添う真央と理央の肩まで、恐怖の黒い海は浸していく。
 ただ、視認できないだけで。

359:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:22:10 6UF1v09A
 そして同時刻。
 街を見下ろす丘のとある場所で、白い異形の少女が宣告する。
 犠牲者も生存者も知る由も無い。この大虐殺、このテロ攻撃の目的の1つが、その瞬間に街全体
を影響下に収めて、術者以外の誰にも視認されることなく、開始されたことを。
 上空には、周囲の雲を押し退けるようにして、暗黒色の球体が浮いていた。
『聖界フィルール、構築開始』
 変化はあまりに劇的だった。
 視界に映る空の4分の1を覆うような巨大な暗黒球体から、眼球の毛細血管のような触手が空に
広がるや、国道に溢れた黒い洪水はストローで吸うように巻き上げられた。破壊された人間や残骸
も、まるで地上から天に帰るかのように、それに続く。
 苦痛と恐怖はやがて竜巻のように螺旋を無し、亡者たちを空へ連れ去り続けた。まるでブラック
ホールに吸い込まれていくように、空に広がる巨大な闇に消えて、見えなくなる。
 球体の色は、苦痛や恐怖の黒色と全く同じ色。黒い竜巻を吸い続けた球体は心臓のようにドクン
と鼓動すると、ごぼごぼと粘り気のある音を発して一回り大きくなった。
 おぞましい気配を増して……球体はゆっくりと成長する。
 しかし、暗黒球体が亡者を吸い込んでいる光景など、街の人々には視えず、そこには煙に汚され
た空があるだけなのだった。
 …………………………………………
 ………………………
 串刺しにした人間を引き込みながら、怪物は大きな口を開けてそれを咀嚼する。
 伸ばされた触手は数十本になるが、残された双子と金髪の少女へは伸ばされない。
 もっとも、それは怪物の慈悲ではなく、触手が捕らえた餌を先に食べているだけの話だった。怪物
の生態を説明できる者は場にいないが、餌が無くなれば彼女たちを食べるのは間違いない。

360:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
10/12/27 01:23:04 6UF1v09A
 生を諦めて身を寄せ合う双子の姉妹、真央と理央。
 しかし、それとは対象に金髪の少女は、その人形のような恐怖を浮かべることも無く、人間を貪る
怪物に向けて、ゆっくりと歩き始めた。血なまぐさい風に嬲られて、金髪が宙に靡く。
 丸い碧眼には確かに、怪物への敵意が燃え上がっている。
「……………」
 怪物もここで、少女が自分から近づいてきていることに気付いたようだった。しかし、特に反応する
ことは無い。触手で叩くだけで殺すことが出来るし、脅威とも感じていないのだろう。

 瞬間、金髪少女の手のひらに、パチリと赤色の光が生じた。


(続)


続きは、そのうち。
ではまた。


361:名無しさん@ピンキー
10/12/27 23:49:36 ou+ddGII
乙です
金髪の子は食べられちゃうのか、怪物やっつけるくらい強いのか
どちらにしても続きが楽しみだ

362:名無しさん@ピンキー
10/12/28 18:16:39 uEkfODTk
続き期待!

363:名無しさん@ピンキー
11/01/10 21:33:32 pTseHMh1
少々遅いですが、あけましておめでとうございます。
>>360の続きを投下します。
捕食の前ふりなので、特に残虐なシーンはありません。

NGワードはタイトル「人食い怪物vs巫女」で。

364:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:35:38 pTseHMh1
 西村モト子は、自分の能力を理解している子供だった。
 それは教師から見れば、できないことをできると言わないだけのもの。
 少女はいつも課題に取り組むときに、自分ができることを理解し、やるべき課題の内容を理解し、
それから作業に取り掛かっていた。
 ただし、その検討の精密さは、他の子供の比ではなかった。
 美術や工作では、例えば風景画を描いた際、クラスの子供たちが時間を過ぎて完成できない中、
彼女だけは制限時間の30分前に完成させている。
 雑な部分は雑で、お世辞にも上手いとは言えない絵だが、他の子供たちが宿題として持ち帰る未
完成の絵を横目に、モト子は悠々と教師に課題の絵を提出していた。
 教師には、手はかからないが、子供らしい冒険をしない子供だと映っていた。
 しかし、当のモト子は、評価に何の興味も無かった。
 …………………………………………
 ………………………
 西村モト子は、友達のいない子供だった。
 しかし、熱心に学習塾に通っていたわけでもなく、学力はクラスで最も高かった。
 算数や理科の時間は、退屈極まりないものだった。
 例えば分数の概念、6つあるケーキや12個あるりんごを、全体で「1」として二等分や三等分を考
察する内容を、同級生が教科書を読んで理解できていないことが、彼女は理解できなった。
 教科書を読み直しても、説明が言葉足らずだ思わない。
 教師の説明は回りくどいものであったが、それはモト子よりレベルの低い子供を対象にした説明と
いうだけで、やはり、要点はきっちりと抑えている内容でああった。
 なのに、同級生の一部は、分数を理解できていない。
 分数を何度も解説する教師、何度説明されても理解できない同級生。
 進まない授業にうんざりした。

365:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:38:17 pTseHMh1
「先生は、分数の説明を国語の時間にすればいいのに。ゆうすけ君やまみちゃんは、算数が分から
ないんじゃなくて、教科書や先生の説明の『日本語』が分からないんだよ」
 モト子はそれを、当人たちの前で口にする子供だった。
 彼女の態度はクラス内での孤立を招き、一時はいじめに近い状態に陥ったが、彼女自身はそれを
気にしなかったし、クラスメイトも行為をエスカレートさせることはなかった。
 悲しいかな。
 彼らは、彼女たちは、お互いに何の興味も無かったのだ。
 …………………………………………
 ………………………
 西村モト子は両親の仕事を知らなかった。
 しかし、家が非常に裕福だと自覚していた。
 渡されているお金も、他の子供より遥かに多かった。
 学習塾の日以外は小説や漫画を買い漁り、時間の許す限り読み続けていた。
 雑誌は全く読まなかったが、新聞は読んでいた。
 読書の休憩に、録画していたドラマやアニメを見るようになり、アニメについては作品を配信する動
画サイトも視聴するようになった。
 MADムービーを作り始めたのは、しばらくしてのこと。
 多少の手間をかけて作成したMADが、神動画として再生数を稼ぎ始めた。その次も、その次も、動
画はユーザーに賞賛された。
 モト子は、動画の加工と切り貼りが、とても上手かった。
 動画の素材を確認すれば、後は、
(ここを切れば良い)
(ここを繋げれば良い)
と感覚的に理解できて、それはいつも的中していた。

366:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:40:08 pTseHMh1
 勿論、実際の映像の絵、構図、色使い、効果音、声は他者のもので、彼女にそれらを作成する能
力は皆無だったが、加工と編集には異様な才能を発揮した。
 そして、その趣味は、孤独をますます深めていくことになる。
 しかし、本人はそれを是としていた。
 …………………………………………
 ………………………
 しばらくして。両親が宗教団体に入信した。
 モト子もそれに連れられて教団の施設で生活することになった。
 学校の真似事のようなことをしている『叡智の冠』という団体を胡散臭くは思ったが、特に両親に抵
抗することはなかった。
 ネット環境があれば、後はどうでもいい、と思っていた。
 件の宗教団体は全国に支部を持つ巨大組織だが、総本山は辺鄙な農村に設けられていた。値崩
れしてただ同然になった山林を買取り、それを切り崩して建設されたものである。
 「学び舎」と呼ばれる直方体の小型建造物が数十。
 信者の住まう集合住宅が数百。
 大規模な農場や教団内で使う道具を作る工場。
 ビオトープや巨大な図書館。ドーム状の集会場。
 巨大な壁で囲まれた世界は、複数の山に広がって展開する、小さな都市のようだった。
 村には数千人の信者が暮らし、トラブルもなく村人と共存しているらしい。
 人口比から言えば、従来の村民よりも信者の方が圧倒的に多い。総本山は100年以上前から存
在しているので、信者と信者以外の村民の境界も、やや曖昧なものらしかった。
(どうして、こんな交通の不便なところに、拠点を設けたの?)
 車で村を案内されながら、モト子は素朴な疑問を持った。
 四方八方を断崖のような山に囲まれた、陸の孤島。

367:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:41:24 pTseHMh1
 隣接する村へ続く道は、今にも崩れそうなものが2本のみ。
 そのような農村に拠点を設けても、外界から遠いから不便なだけで、メリットはあまり感じられな
い。トラブルが起きたときなど、外部との連絡がつきにくいのではないか。
(宗教の人の考えることは、よく分からないわ。これじゃあ、まるで……)
(隠れて何かしているみたいじゃない?)

 数日後、彼女は、蟲の餌にされた。

 …………………………………………
 ………………………

 モト子から変質した後。
 アペカが見た、世界の景色は、とてもカラフルだった。

「………………?」
 覚醒したアペカが不思議に思ったことは、実験室の光景に豹変していたことだった。
 壁という壁から、天井から床まで、そして空気までも、
 毒々しいほど鮮やかな赤や黄や青や、無数の色で飽和している。
 まるで、市販の絵の具セットを全てパレットに捻り出して、そのまま筆を押し付けて、視界一面を塗
り替えてしまったかのようだった。
「目に……油でも入ったのかしら?」
 最初、眼球の表面に油膜が張っているのだと思った。
 その光景は、水に浮いている油の色彩に似ていたからだ。
 ふと足元を見ると、自分の肢体に群がっていた蟲が蠢いている。

368:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:43:06 pTseHMh1
 実験前は半透明だったそいつらは、今では虹色の体躯を輝かせて粘液を泳いでいた。
 今でさえ、彼女の肛門と膣内には不快な異物感があった。蟲が詰まっている。特に嫌悪感は沸か
ないが、しかし、再び自分が陵辱されるのは嫌だと思った。
 すると、蟲は動きを止め、静かになった……彼女に従うように。
「まあ、いいわ。とりあえず目をなんとかしないと、動きにくい」
 蟲の粘液に塗れた手を腰で拭い、アペカは目をゴシゴシと擦った。
 しかし、擦れば擦るほど、実験室の光景は、万華鏡の如く鮮やかに変化する。
 眼球は、最初は蟲の複眼のようだったが、すぐに人間と同じ光を宿した。そして、
「うあ……あ………あああ………」
 激しい頭痛に、眼から涙が溢れ出した。
 悲鳴を上げそうになるのを堪えることしかできない。
 実験室の壁や、柱や、粘液や、窓や、全ての万物の境界を無視して塗りたくられた色。
 鮮やかに輝く光景に、視界が飽和し、あまりの光量に脳が悲鳴を上げる。
 色の奔流が、頭の中で渦巻くような、異様な感覚に襲われる。
「何よこれ……私……どうなっちゃったの……!?」
 そして、毒々しい色の世界から融け出した、人間の影。
 アペカと同じぐらいの身長の影は、ゆらりと形を成し、両手を前に出した。
 濃淡含めて何千色ものモザイク模様に覆われ、まるでルービック・キューブの塊だった。
 眼球の白部から歯の一本一本、吐き出す息は勿論、視線の先まで色が付いている。
「ご……がご……ごご………ぐご……」
 異形は、雄叫びとも悲鳴とも言えない奇声を発し、虹色の空気から完全に分離して、ゆっくりと方
に近づいてくる……。
 アペカの眼には、それは怪物としか映らなかった。

369:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:44:26 pTseHMh1
「何よアナタ! あっち行って! 来ないで! 近づかないで!」
 色の塊のような人型は、明確にアペカの方を目指していた。
 顔を青くして、部屋の壁から隅に逃げる。
 しかし、狭い部屋では逃げ場は無く、出口と反対側の隅に追い詰められてしまう。毒々しい色の異
形は奇声を発し、まるで彼女を求めるかのように迫ってくる。
「ひいっ! だ、誰か……! 誰かっ!」
 大きな頭を壁に擦り付けて、身を縮めるアペカ。
 色の塊は悲鳴に呼応して、覆い被さるように眼前に広がった。
「ご……がご……」
 原色の塊のような腕が、彼女の頬にかかる。
 瞬間、彼女の脳内で、鮮やかな色が爆ぜた。
 …………………………………………
 ………………………
 瞬間。
 アペカの脳裏に浮かんだのは、毒々しい人形型のパズルの、解読鍵だった。
 何千色もの色の塊でしかない影は、みるみる人間の姿に変わり始めた。ぐちゃぐちゃの油膜めい
た外見は、やがて細い人間の体躯となる。
 アペカはようやく理解した。
 毒々しいまでにカラフルな世界は、蟲から視えている人間の世界。
 何千色という色は、その1要素、1要素が、更に多くの要素からなる、「情報」だった。
 そこに記録されているのは、生まれてから死ぬまでの、全時間の思考、感覚、感情、外見、成長、
果てには心拍数、呼吸数や頻度まで、1人の人間の一生に相当する情報なのだった。
 生まれた瞬間から、死ぬ直前の姿まで。
 喜びも、悲しみも、怒りも、そして、恐怖や絶望も。

370:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:47:09 pTseHMh1
 前にいるものは、現在の高性能コンピュータでもとても処理しきれないような、途方も無い膨大な
情報が、しかも媒体も無しに存在しているものなのである。
 そして、そのような存在を言い表す、単純な言葉。

「……幽霊なの?」

 アペカが提示した言葉は子供でも知っている。しかし、今の彼女は、それ以外に眼前の存在を表
現する言葉を持ち合わせていなかった。
 色塊は肯定するでもなく、否定するでもなく、大きく咆哮した。
 同時に、幼女から大人の女性の体躯に変化し、そのまま衣服を変え、髪型を変え、姿形を変えて、
生を終えた瞬間の姿に近づいていく。
 ただ、そのシルエットは時より、色が滲んで空間に溶け出していた。
 砂糖の塊が、珈琲に溶けていくように。
 数分もすれば、もう原型も残らないだろう。
(これは、今の自分のことを知る、良い機会かも)
 人間の頃と同じく、それが彼女のスタイル。
(自分ができることを知ること)
 ゆっくりと、右手を女性の胸に近づける。
(自分がすべきことを知ること)
 女性の幽霊と右手を融合させて、ゆっくりと眼をつむり、思念に耽った。
 読み取るのは、一瞬だった。
 膨大な情報が、呼吸をするように。
 1人の人間の一生が、最初から最後まで、頭に入力される。

371:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:48:31 pTseHMh1
(これが、今の私ができることなんだ)
 アペカは眼を閉じて、しばらく無言だった。
 自分の能力は、もっと色々なことができるようだった。
 眼前の幽霊はみるみる形を失い、空間を満たした膨大な情報の海に融けていく。そして、毒々しい
色の世界と完全に一体化し、境界もなくなり、そのまま消えた。
 海に落ちた一粒の水が、そのまま希釈されていくように。
 もう、元には戻せない。
「…………」
 アペカの大きな瞳に涙が浮かび、頬に流れ落ちた。
 自分は、肉体という小さなビンに入った水。
 生きることは、どこまでも続く大海原を、ビンに入った水で漂うことなのだ。そしてビンが壊れれば水
は海に戻り、新しい別のビンにすくわれても、決して同じ水は入らないのだろう。
 そこには、どこかの宗教が唱える神の救済も、新しい世界も無い。
 死ねば消えて無くなるだけだ。
 気持ちの整理をつけて、一言発した。

「さようなら。お母さん」

 母親の幽霊を読んで分かったが、彼女は15分ほど前に死を迎えていた。
 総本山の別の部屋で、投薬実験の副作用で死亡している。父親は昨夜の夜に、同様の副作用で
死亡していた。親は夫婦そろって、人体実験の道具にされていた。

 …………………………………………
 ………………………

372:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:50:18 pTseHMh1
「…………」
 人間だった頃を思い出し、アペカは眼を細めて虚空を見る。
 食べ物と嗜好は変わったが、趣味などは大きくは変化していない。
 両親は事前に実験内容の説明を受け、危険を承知で実験に望んでいた。実際、拒否は可能なも
のだった。教団に対する恨みの念などは、そういう事情もあって特に無い。
「まあ、今さら言っても、仕方無いけれど」
「えっ? 何かおっしゃられましたか? アペカ様」
 樹里が顔を覗き込んできたので、アペカは首をゆっくりと横に振った。
 彼女は、敬愛するアペカが、実は人間に戻りたがっているのではないか、と不安を覚えていた。そ
して、アペカの言葉で、人食いの怪物と化した自分を否定されるのを、何よりも恐れていた。
 能力で彼女からそれを読んだアペカは、呆れたような顔で微笑み、従者の頭を撫ぜる。
「いや、久しぶりに、人間を食べてみようかなって、考えていたのです」
「ええっ! アペカ様の狩りが、また見れるのですか!」
 樹里は頬を紅潮させて、アペカの手を握り締める。
 そして、興奮した様子で尋ねた。
「時間は、どれくらい、かけられるのですか?」
「本当は10年ぐらいかけて食べたいけれど、そんな逸材は滅多にいないわ」
 奇怪なことを言いながら、アペカは嗤う。
 彼女の言葉の意味は、文字通り、10年という時間をかけて獲物の人間を食べるということだが、そ
れは彼女の狩りの方法が、極めて特殊なものだからである。
「ああ、可哀想なアペカ様。貴女様が不安定なのは、これまで一度も、食事で満足されたことが無い
からに違いありません。私がきっと、貴女様が満足して食べられる人間を見つけます!」
 眼に決意の炎を燃やしながら拳を握る樹里に、アペカは苦笑した。
「そんな簡単には、見つからないわ」

373:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:51:26 pTseHMh1
 そして、天空に蠢く物体を見上げる。
 人々を吸収して巨大化する、暗黒色の球体。
 将来、聖界フィルールとなるべきそれもまだ、生物で言えば卵の状態だった。今は少しでも成長を
進めて、教団による革命の日を早めるしか、できることはない。
「大半の人間は、あの程度だもの」
 球体に吸い寄せられている幽霊からは、暗黒色の霧のようなものが滲み出している。球体はその
霧のみを吸収し、残った幽霊は形を失って消えていくだけだった。
 アペカは色の塊と化した幽霊から、闇色のみを取り出している。
 その色が示すのは、肉体の損壊、痛み、苦痛など、人体に害のある情報だった。特に、生きたまま
胴体を千切られたり、食われたりした者からは、大量の情報が得られている。
 アペカは巫女のように天に祈り、暗黒色の球体を構築していく。
 その瞳は、興奮して潤んでさえいた。
「もっと集めないと……全然足りていない。もっと集めて、もっと膨らませて……」
 生きたまま胴体を食い千切られたもの。生きたまま焼かれたもの。数十分かけて窒息したもの。腕
を切断されたもの。頭から押し潰されたもの。刺されたもの。殴られたもの。皮膚が壊死して蛆に食
い尽くされたもの。酸で溶かされたもの。腹を割かれたもの。股を裂かれたもの。
 人々が激痛に苦しみ、絶望しながら死んでいく光景が、何万、何十万と繰り返され、繋ぎ合わさ
れ、縫い合わされ、生きたまま焼かれた者に、頭から押し潰される激痛を繋ぎ合わせ、酸で溶かさ
れた者に、股を裂かれた激痛を繋ぎ合わせ……たった1つに再編されていく。
 そして最後にできるのが、聖界フィルールと呼ばれる世界。
 聖界を構築する最終段階において、その世界に旅立つことになるフィルール・スター・ナイツと呼ば
れる少女たちの人選も進んではいるが、それ以前の課題が山積である。

374:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:54:06 pTseHMh1
「やはり……まず解決すべき課題は……ん?」
 アペカの顔から笑みが消え、殺気を帯びた顔に変わった。そして。樹里が蒼い顔になってびくりと
震えるのを無視して、瓶底眼鏡たちと話している藤村の方に歩いていく。
「藤村、今、ここに連れてきた手下で、戦闘要員は何人ますか?」
「ええ? 今回は、周りを固めているのも入れて、20人よ。戦闘要員と言われても線引きは難しいけ
れど、全員、私や樹里も含めて、普通の人間には負けないわ」
 流石の藤村も質問の意図が理解できないようで、やや困り顔だった。
 しかし、アペカは全く笑っていない。
「すぐに、全員を戦闘態勢に。あと、撤退の準備も開始して」
 そして、沈黙が場に満ちる前に断言した。

「敵襲よ。しかも、かなり強敵」

 …………………………………………
 ………………………

「……ちょっと、いつまで泣いているの」
 お互いに抱き合う理央と真央がふと顔を上げると、そこには金髪の少女が立っていた。鮮やかな
碧眼は、まるで物を見るかのように2人を見下ろしている。
 敵意とまではいかないまでも、明らかに邪魔なものを見ている目だった。
「……え? あの」
「気持ちは分かるけれど、そこでウジウジ泣かれるとマジで邪魔。せっかく生きているんだから、今す
ぐにここから離れろっつーか、死にたくないなら、さっさと消えろって感じ。ジャリが」
 口調からして、それは明らかに命令だった。

375:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 21:55:36 pTseHMh1
「どうしても動かないなら、私が殺してあげよっか?」
 金髪の少女はそう言って邪悪な笑みを浮かべると、赤い革靴を履いた足を振り上げる。そして、怯
えた理央の頬を踏み躙るように、靴の底を押し付けて捻りを加えた。
 手には鈍色に光るナイフが握られており、その刃先は姉妹に向けられている。
「きゃああああ……おねえ、ちゃ……!」
「やめて! りっちゃんに酷いことしないで!」
 妹を痛めつける足を払いのけて、真央は理央を庇うように立ち上がる。
 そして、頬に靴痕を付けられて呆ける妹の手を引いて、金髪の少女から離れようと慌てて走り出し
た。怪物に襲われる不安もあるが、突然暴力を振るわれたショックが姉妹を動かしていく。
 2人はすぐに、建物の影に消えた。
 それを確認した金髪少女は、自嘲気味に笑みを浮かべる。
(ちっ! だからガキは嫌いなのよ。逃げろって言っても、まず逃げねえし。気分ワリィって感じ)
 投げ捨てたナイフが、乾いた音を立てて道路に転がる。
 少女は金髪を翻し、視界の中央に、触手を伸ばした怪物を捉えた。
 堂々と立つ姿は怪物に怯えるどころか、逆に威圧しているかのよう。風に流れる金髪に覗く碧眼は
大きく見開かれ、精巧な人形を思わせる美顔には、挑発的な笑みが張り付いていた。
 まるで、天から地の底を見下すかのように。
「………………」
 対して、道路を塞いだ異形の巨体は、ずるずると数メートル後退する。
 既に捕らえた獲物は食べ終わっていた。しかし、後退するや少女のことを警戒するように動こうと
せず、触手を縮めて迎撃体勢をとる。怪物が出現してから、それは初めての現象だった。
「ふーん。ゴミはゴミなりに、臭っせえおつむがあるって感じ?」
 少女は怪物を嘲笑して、唇の端を吊り上げた。
 金髪が、風も吹いていないのに、ふわりと浮かび上がる。

376:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/10 22:02:10 pTseHMh1
「でも、旅行中の私がいる場所で暴れたのが、テメェの運の尽きって感じ? 巫女協会が誇る最強!
無敗!の超弩級エース”白焔の光巫女”にして、マジ国宝級スーパー美少女!」

「退魔巫女、西園キララ様とは、私のことよっ!」

 身体から赤い光を立ち昇らせ、キララと名乗った少女は宣言した。
 そして、同時にぶちぶちと洋服のボタンを毟り、身体から引き剥がすように衣服を脱ぎ捨てる。捨
てられた洋服は風に流され、事故を起こした車のサイドミラーに引っかかった。
 ガソリンの匂いを含む空気に晒されたのは、赤い下着のみを纏う瑞々しい肌。
 背丈相応の幼さは拭えないものの、胸元から溢れんばかりに成長した乳房といい、括れた腰から
程よく肉の付いた下腹部のラインといい、鍛えられて硬く締まった四肢といい、健康的な色香と研ぎ
澄まされた美しさを併せ持った肉体だった。美術品の女神像のようでさえある。
 キララは怪物を指差しながら、悪戯気味に青い眼でウインクをして、壮絶に笑う。

「私のサファイア・アイが輝く限り、外道に明日は来ないって感じ!」


(続)

続きはそのうち。
ではまた。

377:名無しさん@ピンキー
11/01/11 04:10:05 3U7FZkzr
投下きてた!
スレの趣旨的にアペカ様を応援すべきだけど金髪巫女も良いキャラしてるなぁ
妄想が膨らむぜ

378:名無しさん@ピンキー
11/01/13 14:31:17 tYQUgOx6
今日発売のファミ通の中川いさみのマンガで
女性がパックマン男に食われてましたよ。

379:名無しさん@ピンキー
11/01/14 02:22:19 voMUT1Vq
金髪巫女は秒殺な予感。

380:名無しさん@ピンキー
11/01/24 02:27:25 zUXhAQII
まどかマギカ3話、良い食べっぷりだったね
永久保存回だわよ

381:名無しさん@ピンキー
11/01/24 05:06:02 FxDkE0n3
マギカ凄かったな

382:名無しさん@ピンキー
11/01/24 23:17:09 Wd3j01vG
>>376の続きを投下します。
内容は、殺るか食われるかの二択って感じ!

NGワードはタイトル「人食い怪物vs巫女」で。

383:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:18:33 Wd3j01vG
 退魔の巫女は、相性の良い武器に霊力を宿して戦いに臨む。
 ただし、武器といっても近代の重火器や、構造の複雑なものは適さない。
 チェーンソーのようなエンジン付き装置や、大砲の類を武器として使えるかの試験が行われたこと
もあるが、期待した結果が得られた例は無い。原因については、複数の仮説が立てられたが、そも
そも巫女でさえ、霊力の正体を知らないのだから、原理の究明など不可能である。
 『直接的または間接的に魔物や異形を殺傷できる能力全般』
 それが巫女協会が定義している、広義の「霊力」である。
 言葉のとおり、オカルト番組で心霊写真の解説をしたり、死者と話をするような能力は含まれてい
ない。実際、協会に属する巫女は神社にいるようなシンボルではなく、戦闘要員ばかりである。
 しかし、自分たちの能力の原理は分からない。
 能力はあまりに感覚的なものであり、それを明確な数式では表現できていなかった。
 それほどに、巫女協会に属した巫女たちの能力は、多様である。
 例えば、神代御幸。
 最上位の弓使いである彼女は、霊力を注入した矢を同時に複数本射出し、それらを意のままに動
かす技を使う。矢でなくとも、単純構造物ならば、お箸やスプーンでも可能だった。
 例えば、剣崎静香。
 武闘派の巫女剣士である彼女は、霊力を宿した刀で、切りつけた怪物の傷口を焼いて灰にしてし
まう。強靭な皮膚の怪物さえ焼き滅ぼす彼女の剣は、人間に対しても同じ効果があった。
 彼女たちに限らず、協会上位の戦士は独自の戦闘スタイルを有する。
 それは、現時点での最強巫女、西園キララにも当然あてはまった。
 ただし、彼女は例外中の例外で―。
 …………………………………………
 ………………………

384:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:20:41 Wd3j01vG
 下着が宙を舞った瞬間、茂みの奥の陰唇は怪物に晒される。
 少し頬を紅潮させたキララは目を細め、怪物に語りかけるようにして肩を揺らした。
「別にぃ、ガン見されても、こっちはノープロって感じ?」
 空気を蹴るように、足の指先にかかった下着を横に投げた。そして、胸から剥いだブラを指先でくる
くると弄びながら、白焔の光巫女を名乗る金髪少女はゆっくりと唇の端を吊り上げる。
 母親の子宮から出たままの姿で、特に胸部や陰部を隠そうとはしない。
 巨大な果実を思わせる乳房が風に撫ぜられ、淡桃色の乳輪から小突起が天を向いている。下腹
部には金色の陰毛が濃く茂り、くるりと回れば丸い尻が固く閉じられていた。
「まっ、キララ様ってばマジ女神級ボディだし、冥土の土産に見とけって感じ?」
 興奮で頬を高潮させ、両腕を腰に回し、全裸の巫女は積極的に肌を見せ付けて叫ぶ。
 燃え盛る車や死体の山の中で、金髪を靡かせながら柔肌を晒す少女の姿は、異様を通り越して逆
に倒錯的な性を描いた絵画のような、妙な安定感さえ漂っていた。
「………! ………?」
 怪物からしても、彼女の存在は異様に映ったらしい。
 決め兼ねるように前進と後退を繰り返し、ようやく行動を起こす。
 全身から触手を伸ばすや、左右から包囲して展開し、逃げ場を潰して一斉に襲い掛かる。縛って
拘束する目的ではなく、獲物を蜂の巣状に刺し貫いて肉塊に変える動きだった。
「へぇ、それでキララ様を殺れるって? マジありえないって感じ!」
 キララは哀れむように微笑んで、青い眼を細める。
 瞬間、あらゆる方位から彼女に接近した触手は、火に炙られたように焼き焦げ、そのままボロボロ
と崩れ落ちた。そして、風に流されて、運ばれ、消えていく。
 どれだけの数で攻撃しても結果は同じ。
 彼女との距離は、十メートルはあるというのに、
 全ての攻撃が彼女まで届く前に、焼き尽くされて、朽ち果てて消える。

385:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:22:15 Wd3j01vG
「あのさぁ、巫女協会最強って、ネタじゃねーし」
 バチバチと赤い光が全身を覆い、次の瞬間、彼女の肢体は眩い閃光を放ち、爆炎を噴いた。
 それは、文字通り自爆したとしか言いようの無い、巨大な爆発現象だった。
 …………………………………………
 ………………………
 巨大な爆発音を聞いて、真央と理央の足が止まった。
 生まれてから事故としての爆発音を聞いたことが無い真央は、耳に届いた轟音を最初は花火の音
だと思った。しかし、音が聞こえてきた方向と位置を確認して、それは間違いだと悟る。
「まさか、さっきのお姉さんが、戦ってるの……?」
 国道の方向、怪物のいる位置から立ち昇るのは、見たことの無い白い炎。ガソリンの炎とも、マグ
ねシムの炎色反応とも異なる、温かく、しかし、容赦無きまでの純白。
「りっちゃんはここにいて!」
 真央は理央に指示を飛ばすや、国道の方に走り出した。
 どうしてそのような行動をとってしまったのか、今の彼女は理解できなかった。
 勿論、金髪少女の無事を確認したい。両親のことも、好奇心もある。そして、それ以上に、胸の奥
で得体の知れない何かが熱く反応し、半ば衝動的に彼女は駆け出していた。しかし、
「きゃあっ! なにこれ……」
 見えない壁が真央の行く手を阻んだ。特に何かにぶつかったわけではないが、不可視の力が一定
のラインを超えて、彼女がそのまま前に進むことを許さない。
「ば、バリアー? これ、進めない!」
 怪物とキララの場所を中心に、地図に円を描くように展開する不可視の壁。
 それは退魔の巫女が怪物との戦闘時、周囲に人が近づかないように、また怪物を逃がさないため
に展開する結界術式だったが、今の真央にそのようなことが分かるはずがない。

386:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:23:32 Wd3j01vG
「真央お姉ちゃん……! さっきの人は!」
 呆けていた理央が、正気に返って叫んだ。自分たちを助けるために、金髪少女があのような行動
に出たことを、死地から脱出した彼女はようやく理解していた。
「何だよこれ! 前に進めない! ちょっ! なんで……!」
 真央は前に進もうとするが、不可視の結界はそれを認めない。
 無力な双子は何もできず、傍観者になることすらできない。
 彼女たちは見ることができない。禍々しい魔法を。
 上空の暗黒球体に死者が吸い込まれ、生前の苦痛や恐怖の情報を搾られていることを。
 彼女たちは知る由も無い。
 自分たちが、怪物の暴れた場所から生還し、そして禍々しい魔法に至近かつ超高濃度で曝露し
た、唯一無二の生存者であることを。

「お姉さん! お姉さん!!!」

 ……多くの人間が死に、両親も死に、彼女たちが生存した意味は果たしてあったのか。
 姉妹が解答を得るのは、この事件から数年も経過した時のこと。
 場所は、深く暗い樹海の中。
 人食いの心臓が跋扈する地獄。
 退魔の巫女として、惨劇の元凶たる『叡智の冠』と対決する―遠い未来の話だった。

 …………………………………………
 ………………………

387:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:24:35 Wd3j01vG
 巨大な純白の炎塊が、国道を占拠して前進する。
 破壊された人体の山も、団子になった事故車の列も、全てが炎に巻かれて原型を失い、ボロボロ
と崩れ落ちていく。そこで起きた殺戮の痕跡も、犠牲者の骸も、全てを無かったことにするような圧倒
的火力は、人食いの怪物すらも怯ませて後退させていた。
「糞な脳味噌じゃ理解できねーだろうケドさぁ」
 炎塊が左右に割れて現れたのは、白い帯状の炎を身体に巻きつけたキララだった。白炎の衣と、
立ち昇る陽炎にのみ隠された肢体は、ゆらゆらと儚げに揺れて宙に浮いている。
「これは、お前みたいな人食いを殺す力―」
 キララは、巫女協会の存在意義を如実に表した巫女だった。
 人間がいて、怪物に食われて、それだけでは人間はただの餌でしかない。
 やがて、人間に、怪物の持つ毒に耐性と、成人男性の数倍という驚異的な身体能力と、怪物への
殺傷能力を持った少女が生まれ始める。それは決して数は多くないが、日本各地に分散し、人間多
勢という現在の生態系を維持できる防壁として活躍した。
「テメェみたいなのに食われ続けた人間がさぁ、ホントに意味不明な数のギセイを出して、ようやく、
手に入れることができたんだよ。私たちは、みんなが生きる権利なんだよ。そう、私たちは―」
 食物連鎖で人間の上位にいる怪物に対し、更に上に位置した人間の守護者。
 それはやがて1つの組織―巫女協会となる。

「私たちは―テメェらの餌じゃねええええ!」

 キララは特に武器を使わない。
 霊力を直接発火させて、そのまま爆発として放出する、例外中の例外。そして、その戦闘力は決し
て過大評価ではなく、現在の巫女協会では最強の冠を持っている。

388:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:26:23 Wd3j01vG
「ハアアアッ!」
 叫び声と同時に、手に炎の渦が生まれ、ズドン!と破裂音を立てて怪物に発射された。
 膨れ上がった炎の奔流は事故車を次々と呑み込み、しかし全く勢いは衰えない。そのまま真央と
理央の両親を押し潰したままの怪物に直撃するや、空箱を蹴散らすかのように吹き飛ばした。
 炎上しながら道路を転がる異形から、悲鳴とも怒声とも付かない声が漏れる。
 潰れた車は炎に包まれ、そのまま飴が溶けるように崩れていった。白炎が奔った道路はアスファ
ルトが融解し、ぶすぶすと煙を上げている。
「一撃で楽に死ねると思うなって感じ? って………あれ?」
 燃えながら道路を転がる怪物の姿が突然消え、すぐそばには大きな穴が開いていた。
 地中から現れた人食いは、再び地中にもぐっていた。つまるところ、敵わないと悟ったのか、消火
するための戦術的な行動かはさておき、それはキララから逃げたということだった。
 …………………………………………
 ………………………
「そうそう、そのまま地中を適当に逃げて、時間を稼ぐのですよー!」
 瓶底眼鏡の女性は汗を拭きながら、怪物が討ち滅ぼされる危機をなんとか凌いだ。
 このまま逃げては姿を現し、逃げては姿を現しを繰り返し、さながらモグラ叩きのモグラのように行
動すれば、いくら火力のある敵とはいえ、簡単には負けないだろうという判断だった。
「それにしても、何です、あの爆発痴女はー……?」
 顔を赤くして先程の光景を思い出す。そして、自然と頬が熱くなるのを実感した。
 横では瓶底眼鏡の男性が、周りの部下に指示を飛ばしていた。
「5分でここから撤退するっ! 全員、痕跡の隠滅を急ぐことっ!」
 信者たちが慌しく、機材をライトバンに積み込んでいく。作戦途中での撤退も一応は想定していた
行動だが、実際に起こるとは誰も考えておらず、作業はやや遅れていた。

389:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:28:03 Wd3j01vG
「………はぁ」
 そんな光景を見ながら、藤村は折りたたみ式の椅子に座り、渋い顔でアイスを食べていた。
「まさか、あんなのが出てくるとはね……」
 藤村はスプーンを咥えながら、困り顔で呟いてしまう。
 警察などの行政機関は勿論、政府の指揮下にない治安維持組織や、他の人食いからの抵抗も考
慮はしていたが、非政府系では国内最大級の組織の1つ「巫女協会」の、自己申告とはいえ最強の
戦闘要員がいきなり出てくるのは考えていなかった。
 炎を発射するという後処理の大変な攻撃方法からして、通常の市街地戦では、まず舞台に出てこ
ないはずの役者である。おそらく、本当に偶然が重なり、この街にいたということなのだろう。
「………はぁ……準備の大変な作戦だったのにねぇ」
 黄昏ている藤村と、周囲のドタバタを見て、樹里とアペカも顔を見合わせる。
「なんだか大変なことになっちゃいましたね。アペカ様」
「そうね、樹里。でも、本当に大変なのは、これからなのよ」
 アペカは優しい笑みを浮かべて、樹里の両目をそっと手で塞いだ。
「え? それって―」
 不思議そうな表情を浮かべた樹里の顔は、眩い閃光の直撃に塗り潰される。
 機材を積み込んでいたライトバンが爆発したと認識したときには、車両は轟轟と純白の炎に包まれ
ていた。積み込み作業をしていた信者たちも、はやり白炎に包まれてのたうちまわっている、
「ぎゃああああああああああ!」
「熱い! 熱いあづ、いっぎいいいいい!」
 彼らは悲鳴を上げながら、四肢の形を失っていった。そして、ゴキゴキと骨格を変え、全身から触
手や角を生やしていき、正体の異形に戻っていく。いずれも、人間と呼べる形ではない。
 しかし、次の瞬間には、全員が灰になって崩れ落ちた。
 尋常ならざる生命力の異形6名が、たった数秒で滅ぼされてしまう。

390:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:29:45 Wd3j01vG
 一瞬の静寂が、場を支配した。
 そして、燃え盛るライトバンに、すたりと着地する1人の影。

「どこに行くつもりだよテメェら―まさか、逃げようなんて考えてねーよなぁって感じ?」

 金髪を靡かせ、白炎を纏い、陽炎に揺れ動く華奢な肢体。
 呆然とする『叡智の冠』を見下ろし、最強巫女、西園キララは壮絶な笑みを浮かべる。

「時間稼ぎなんざ、キララ様のキララ☆アイはお見通しってわけ。地面に潜ろうが空を飛ぼうが、どう
せ怪物は結界の外に出れねーし、気配で位置バレバレのゴキブリどもは、何だか慌しく動き始めて
るしねぇ。まさかそんなことは無ぇって思ったんだけど、来てみて正解って感じ?」
 身体から噴出している炎は、推進力になっていた。
 怪物が暴れる市街地から、『叡智の冠』の拠点まで―ロケットのように飛翔して、たった数秒で
やってきた彼女は、怒りの滲み出る声で呟いた。
「モグラ叩きで遊んでいるより、親玉のゴキブリどもの巣を直接潰したほうが早えよなぁ。このゴミど
もがただで済むと、って、こそこそ動くんじゃねーよ!」
 くるりと背後を向いたキララは、別のライトバンに向けて白炎を発射した。
 轟音を立てて吹き飛んだ車両から、重火器を持っていた信者2人の残骸が飛び散り、そのまま燃
え尽きて灰になっていく。それは微塵の容赦も無い、害虫の退治行為と同様だった。
「ふん! 背後から狙おうなんて、超卑怯って感じ!」
 キララが振り返る、真上。
 同時に、牙を剥いた二匹の異形が急降下する。
 虫の翅を生やした男たちは、変形した巨大な顎から牙をむき出しにし、白炎の巫女の頭を噛み砕
こうとして迫り―しかし、

391:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:31:24 Wd3j01vG
「だからって、上からも近づくなって感じ! 」
 やはり、彼女から10メートル程度の位置で眩い閃光を発し、まるで大気圏に突入した隕石のように
炎に包まれ、ひしゃげて四散してしまった。
 そして、ぱらぱらと灰が落下する中、
 白焔の光巫女の美麗な姿を、度の強い眼鏡が映した。
 ぐるぐる渦を巻いたレンズの奥で、危険な光が宿る。
「ぐぬぬ、これは確かに難敵ですね」
「出し惜しみはできそうにありませんね」
 背後と真上へ、キララの注意が逸れた瞬間、動いたのは瓶底眼鏡の男女だった。
 手に握られたのは、巨大なスーツケース。
 それは人食い怪物の種を運んでいたものだった。
「さあさあ、出しましょうね出しましょうね」
「さあさあ、出ましょうね出ましょうね」
 金属製の鍵が内側から弾け、開いたフタからバラバラと小さな物体が落下した。
 乾燥した化石のようなもの、生物の断片のようなもの、ただの石や金属塊としか見えないもの等、
形状も大きさも様々である。しかし、何れもゴミにしか見えないものばかり。
 しかし、空気に触れるや、それらはみるみる巨大化していく。
「さぁー! みんなーっ! 起きてぇーっ! 出番ですよぉー!」
 瓶底眼鏡の女性の甘い声で、巨躯が次々と奇声を発して起き上がり始めた。
 二つ首の魚頭が生えたカエルに、全身に牙と触手が映えたイソギンチャクに、無数の人間の頭蓋
骨と気泡を内蔵する濁った宝石に、無数のバッタの足を生やしたカマキリに……。
 スーツケースから出てきたゴミは、どれも3、4メートルはある異形となった。
 一斉に奇声を上げながら、キララを包囲するように展開していく。それは、全員が人間を遥かに超
える能力を持ち、数にして30匹は下らない戦闘部隊だった。

392:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE
11/01/24 23:35:03 Wd3j01vG
「へぇ、携帯用の魔物って感じ? うわあ、とってもこわーい」
 燃えるライトバンの上に立ちながら、それでもキララが見上げるほど、異形の群れは大きかった。
 しかし、驚いたように声を上げるも、彼女に全く怖がる様子は無い。
「……戦闘要員はいないのではなかったの? ちょっと想定と違うんだけど」
 苦笑いしながら問いかけるアペカに、瓶底眼鏡の男は胸を張って答える。
「まさに、備えあれば憂い無しってやつです!」
「言っときますけどー、さっきの信者たちとは桁が違いますよー」
 瓶底眼鏡コンビは空になったケースを投げ捨てると、口元を歪めてキラリと眼鏡を光らせた。
 そして両手を合わせ、足を上げ、左右対称のポーズをとって異形の軍勢に宣言する。
「さあさあ、食べましょう食べちゃいましょう! 今日はとってもご馳走ですよ」
「お行儀悪く、ぐちゃぐちゃに散らかしてあげましょう! 今日は藤村先生も怒りませんよ!」
 渦巻いた眼鏡の奥に、凶悪な殺気がみるみる増していく。
「さあ行け! 私たちの可愛い可愛い傑作ちゃんたちっ! あの女を仕留めた子には」「活きの良い
スペシャル赤ちゃんを1日に5人、一週間ずっとおやつに追加しちゃいますーっ!」
 げらげらと高笑いする眼鏡コンビに呼応し、異形たちはご褒美に歓声を上げた。
「別にぃ、私の胸でもケツでも勝手に食えって感じ。その前に灰にしちゃうけどね」
 前後左右から奇声を上げて迫る怪物たちを碧眼に映しながら、キララは白炎を引きながら構えをと
る。白炎は渦を巻くように肢体を包み込み、金色の髪が吹き出る炎で高らかに逆立った。

「私のサファイア・アイが輝く限り、外道に明日は来ないって感じ!」


(続)


393:名無しさん@ピンキー
11/01/24 23:35:50 Wd3j01vG
SSの続きはそのうち。
ではまた。

>>380
食われる最中の心の声と噛み砕かれる音が、
大音量のテレパシーで届いたら神作品確定だったわ。

特典映像で追加してくれんかな……。

394:名無しさん@ピンキー
11/01/25 03:39:10 3SPZU4vz

キララさんが余裕こきすぎて不安になるな

>食われる最中の心の声と噛み砕かれる音
それに失禁も欲しかった
ってそこまでしたら放送できないか


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