刑法の勉強法■57 at SHIHOU
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650:氏名黙秘
18/10/24 21:56:29.58 dMnP0emq.net
有斐閣のウェブサイトに中森各論の補遺がアップされてるね。
URLリンク(www.yuhikaku.co.jp)

651:元ヴェテ参上
18/10/25 08:10:25.37 hM6lwebW.net
速報:井田総論第2版ー初版との対照を中心としてー(6;故意、錯誤、過失)
【172頁注15】薬物犯罪の故意について、福岡高裁平成28年6月24日を引用
【179頁注33】故意とは行為者の持つ意識というよりも、行為者の一定の行為に対して外から
与えられる意味であるとさえいえる。
【186頁】以上は、刑法的評価の対象となるものの構造という見地からの、故意と違法性の
意識の相違であるが、刑法規範の機能・効力という見地からも区別される。
【195頁】野外で被害者を射殺しようとして発砲したが、弾丸は急所を外れて致命的な効果を
もたなかったものの、野外にそのまま放置された被害者が気温の急激な低下が原因で死亡した
【195頁】因果関係の錯誤について、判例は、条件説や客観的相当因果関係説と同様に、
広い範囲で結果帰属を認める見解をとっているといえよう。
【198頁】ウェーバの概括的故意につき、「通説による理論構成」を挿入
【210頁】抽象的事実の錯誤につき、(d)「故意が認められる場合」を追加し、詳述。
【216頁注11】違法要素としての結果回避義務を論じた教科書として、西原、橋本、福田を挙げる
【218頁】「新旧過失論による実行行為の把握」を挿入
【223頁】「管理・監督過失論のねらい」を挿入
【225頁注29】結果発生に至る因果関係の基本的部分について予見可能性があれば足りる
とするのは、大阪高裁平成20年7月10日(明石砂浜陥没死事件)

652:元ヴェテ参上
18/10/25 08:47:25.39 hM6lwebW.net
速報:井田総論第2版ー初版との対照を中心としてー(7;違法性、正当防衛)
【276頁】目的説・社会倫理説・社会的相当性説が「正当な目的のための相当な手段であるか」
を基軸に総合判断を行う点を批判
【277頁】「優越的利益説と行為無価値論」を挿入
優越的利益説は、行為無価値論の立場からも採用できる見解である、とする。
【204頁注9】その場にとどまる利益(滞留利益)を付加する橋爪説を批判
【298頁】「正当防衛の正当化根拠との関係」を挿入
【299頁】「侵害の急迫性が否定された事例」を挿入(平成29年4月26日)
【300頁】(4)として「合意と急迫性」を挿入
【311頁】判例と学説における防衛の意思を図表化
【312頁】「自招侵害と正当防衛」を挿入
【314頁】佐伯らの退避義務肯定論を批判
【319頁】「量的過剰」を挿入(昭和34年2月5日)

653:氏名黙秘
18/10/25 09:33:49.74 pMGaxSj4.net
>>652
ヴェテさんお疲れ様です
初版との比較が終わったら是非とも内容のレビューもお願いします

654:元ヴェテ参上
18/10/25 11:08:25.80 hM6lwebW.net
>>653
本当に疲れたよ。
何のために新旧対照を行っているのか、自分でも訳が分からなくなってたところだw
レビューの件、ちょっと荷が重いけど承知しました。
ただ、2週間ほど出張するので、その後になります。
悪しからず。

655:氏名黙秘
18/10/25 11:33:05.05 NsKhvCdw.net
しかし、井田は流石だな
巷あふれる単なる法改正に合せたクダラナイ補訂じゃない
行為結果無価値を問わず刑法総論の本質的な見直し
の考察にせまる充実した内容。最近の刑法の基本書の改訂の
中では最も影響が大きいのではないか
惜しいのは目的的行為論と消極的構成要件であること
これがために基本書に採用できない(答案書けないだろw)
しかし、本は蕎麦を喰うように一気に読め。読み返すな、
いちいち考えすぎるな、思想の奔流にまかせて一気に読み終えろ
と云われるが、入手するやベェテさんの読解スピードは凄いね(1日で完読かな)

656:氏名黙秘
18/10/25 18:25:33.79 YvvZ8IMV.net
>>654
乙でした。

657:氏名黙秘
18/10/26 08:43:08.06 6RpDGFmD.net
>>655
ぶっちゃけそこだけ判例の枠組みで流せばええのでは(困惑)

658:氏名黙秘
18/10/26 16:00:40.22 W5ASgvNs.net
松原先生の1冊本くるか?
成文堂書店の近刊案内より。
11月
 『刑法概説』
  松原芳博 著
  本体価格2,700円
  978-4-7923-5265-3

659:氏名黙秘
18/10/26 22:01:01.03 tLsXhTVC.net
だいたい、結果無価値論で答案なんて書けないだろw
構成要件のところでいきなりつまづくw

660:氏名黙秘
18/10/26 22:32:58.87 K8wpThlW.net
違法構成要件の後、責任構成要件を検討するんだから(構成要件二分割)ややこやしいよね

661:氏名黙秘
18/10/27 16:18:07.14 YlZDI6Ua.net
ネットで見たんだが
井田総論2版
過失の共同正犯肯定説に改説したの?

662:氏名黙秘
18/10/27 19:07:46.92 jjoFLdq3.net
井田は改説のオンパレードだなwww
ブレまくりだな
柔軟といえば柔軟だが

663:氏名黙秘
18/10/28 01:30:13.30 G0OjAQmf.net
ヴェテさんへ。
井田教授が季刊刑事弁護に正当防衛の論文載せてるよ。
必読。

664:氏名黙秘
18/10/28 06:26:47.57 oUQ88m78.net
>>662
大谷「まったくだ」
山口「まったくだな」
前田「改説はみっともない」

665:氏名黙秘
18/10/29 00:40:15.24 o7nmXUBp.net
井田論文によると、
正当防衛において対抗行為に先行する事情は、
@侵害予期類型とA自招侵害類型に
区分されるべきことになるらしい。

666:氏名黙秘
18/10/29 00:47:02.05 o7nmXUBp.net
あ、侵害自招類型だった。

667:氏名黙秘
18/10/29 17:59:59.20 Fx2LuccY.net
深町先生の「緊急避難の理論とアクチュアリティ」ざっと斜め読みした。
ドイツ等の知見を導入するためだけに
二元的構成を導入したのではないかとの感が否めない。

668:氏名黙秘
18/10/30 08:26:27.73 t4O94vRa.net
深町の修論「危険引き受け論について」は、本郷法政紀要に掲載されている
A以上の評価がついた修論は法学協会雑誌あるいは国家学会雑誌に掲載されることになっているので、本郷法政紀要に掲載されたということは、深町の修論への山口厚の評価はA未満であったことを意味する
深町は学士助手にも修士助手にも採用されず、博士課程の途中で金沢大の助手に追い出されていることなどから、山口からの評価はあまり高くないと見受けられる

669:氏名黙秘
18/10/30 23:35:03.58 ED21nSDh.net
あまりそういうのは好かんな。
あくまで論文内容で評価すべきだ。

670:氏名黙秘
18/10/31 09:03:30.45 UMCav1Ph.net
多くの人の目に曝されて評価される
という点では、基本書
大家により評価される
という点では、師匠たる東大教授
どっちでもスカタンの深街
今ところダメダメってコトでそ

671:氏名黙秘
18/10/31 11:11:04.42 UMCav1Ph.net
ちなみに西部進や舛添に言わせると
多くの教授のみならず学生ひいて一般人に普く読まれ評価される教科書つ基本書は
極狭い人の間でしか目に触れず、狭い領域の研究だけですぐ書けてしまう
いわば内輪でしか評価されない論文より(巷[准]教授にはこの手の軽い輩が多すぎるとも)
遙かに力量が要求されると、TVで言い切ってたな

672:氏名黙秘
18/10/31 21:33:07.11 5mKu4WZw.net
西部や舛添って学問的な業績ないだろ。
コメンテーターとしての業績ではなく学問的な業績な

673:氏名黙秘
18/11/01 22:10:48.79 CCGm7hN0.net
>670
醜い。

674:氏名黙秘
18/11/02 00:02:41.81 HHdPvqnM.net
我刑法ぞ

675:氏名黙秘
18/11/04 22:08:30.65 yTIMK+q8.net
規範違反説がよくわからん。
行為規範はわかるんだが
制裁規範が論者によって内容が変わるような気がする。

676:氏名黙秘
18/11/04 22:10:35.91 ZGFWc6FZ.net
裁判規範と行為規範以外を認めるのは
異説。

677:氏名黙秘
18/11/07 06:39:50.98 /0HsmvSS.net
刑法総論の理論と実務
小林憲太郎・著(立教大学教授)
(判例時報社)
A5 並製 790頁 定価:5500円+税
ISBN:978-4-938166-17-5 2018年11月刊
裁判官、検察官、刑事弁護士が読んで刑事裁判実務上、役に立つ法律書
<現役裁判官・検察官からも絶賛の声>
学術書は「かったるい!」という人も手軽に読める対話編のリードにより、
スムーズに核心論点へ!
グローバル化、IT化等に伴い、立法者が予想していなかった新たな犯罪
類型が日々刻刻と生まれる現代社会。これらの犯罪に関係する新たな問題
を刑法上位置づけるための研究が求められている。
日々種類を増やす特殊詐欺(ex. オレオレ詐欺、振り込め詐欺、電子計算機
使用詐欺など)やネット犯罪、新たなケースの審議を余儀なくされている
共犯理論や、精神医療の活用などの研究が進み、一定の規範化をみている
責任能力の量刑問題…目まぐるしく複雑・多様化する今日的犯罪を、平易に、
かつ論理的に、スッキリ解き明かす、実務家・研究者・学生必読の一冊。
URLリンク(twitter.com)
(deleted an unsolicited ad)

678:氏名黙秘
18/11/07 16:28:29.50 FnuRaPmE.net
読みたいけどたけぇよw

679:氏名黙秘
18/11/07 16:37:42.17 4d9uMGkS.net
コバケンの文章は読み辛すぎる
フィナリスムスだの何だのわけのわからん外国語を多用するし、隙きあらばドイツとか海外の学説をドヤ顔で引用しちゃうし
こいつのオナニー文章は腹立つレベル
とても東大卒とは思えないわ

680:氏名黙秘
18/11/07 16:40:45.05 0MpVycQs.net
無駄に衒学的なのよね
ポストモダンの文章よ読んでるみたいな気分になる

681:氏名黙秘
18/11/07 20:38:52.73 hX+/Gllk.net
正直、あのコバケンが実務家読者を念頭に置いて判例時報社で連載を持つなんて思いもしなかった。
親友の故・島田博士の死に思うところがあったのかな、と邪推してみる。

682:氏名黙秘
18/11/07 20:44:08.13 JEgpyTxH.net
島田先生って博士号とってたっけ?

683:氏名黙秘
18/11/08 03:17:59.76 Pri81HW6.net
広島県の福山友愛病院で、
患者の病状と関係ない薬を大量に投与した。
しかも、意図的にです!

国は違うがドイツの場合

裁判所で開かれた公判で、患者100人を殺害した罪を認めた。これでこの事件は、同国で戦後最悪級の連続殺人事件となった。
起訴されたのは、ドイツ北部デルメンホルストとオルデンブルクの病院で看護師をしていたニルス・ヘーゲル受刑者(41)。
当時勤務していたドイツ北部の2つの病院で2000〜2005年にかけ、34〜96歳の患者を殺害したことを認めた。
同受刑者は自分の蘇生措置の腕を同僚に見せびらかす目的や、退屈しのぎの目的で、
↓↓↓↓↓
患者に処方されていない薬を投与していたとされる。
↑↑↑↑↑

ドイツの場合。まあ日本は日本だが・・・
大口の病院は看護士の単独犯だったわけで捕まったが・・・

福山友愛病院は・・・・・
URLリンク(youtu.be)

684:氏名黙秘
18/11/08 17:43:20.01 4HV1RtmF.net
>>682
刑法学界では物故者博士の原則は常識じゃない?

685:氏名黙秘
18/11/08 17:49:00.80 eHjPPdAi.net
>>684
橋爪『正当防衛論の基礎』は、
物故者の宮城浩造を「博士」ではなく「氏」呼称してたよ。

686:氏名黙秘
18/11/08 17:51:52.60 eHjPPdAi.net
宮城浩蔵だった。

687:氏名黙秘
18/11/08 23:17:36.81 DVuorFPj.net
元ヴェテよ。高橋の差分解説も頼む。

688:氏名黙秘
18/11/08 23:23:30.27 93YNH/I1.net
深町・緊急避難の理論とアクチュアリティの書評もよろしくです。

689:氏名黙秘
18/11/08 23:25:48.89 e8RRuqPB.net
いっぺんにそんなに頼んだらヴェテさん過労死しちゃうよw

690:氏名黙秘
18/11/09 00:40:48.80 2kzqNxYT.net
正当防衛ですら公的救助要請義務が認められるなら、
緊急避難においてはなおさらそれが認められるんじゃないかと思うがどうかな?

691:氏名黙秘
18/11/09 08:31:48.73 FogmUTzq.net
まずは大塚仁の刑法入門(これで理解できなきゃまず伊藤真の刑法入門から)
そして大塚の刑法概説
話しはそれからだw

692:元ヴェテ参上
18/11/09 18:55:38.32 513Xdc6A.net
井田総論第2版レビュー試論(1)−総説
 実に10年ぶりの改訂である。その間、判例・学説の進展には目覚ましいものがある。特に、
因果関係論、正当防衛論、共同正犯論の変化は大きい。井田も「はしがき」で「改訂は全体に
及んでいるが、とりわけ変化が顕著であった因果関係、正当防衛、共同正犯、刑罰論と量刑
については、旧版の記述を元にほとんど書き換えるほかはなかった」と述べている。また、
井田は、特に因果関係の改説については、近著の論文で「筆者は、危機に瀕した相当因果
関係説を何とか危機から救おうと努力してきたが、その努力ももはや限界に達したとの認識
に至った」と述べている。そこで、本試論も、因果関係、正当防衛、共同正犯等を中心に論ずる
ことになる。
 ただ、その前に、井田総論は「教科書」としては優れているが、目的的行為論・消極的構成
要件要素の理論を採るので「基本書」としては採用しづらいという声をよく聞く。行為論が試験
に出ることは考えにくいので杞憂だと思われるが、消極的構成要件要素の理論は、犯罪体系
論、構成要件論にとどまらず、違法性論や錯誤論にかかわる問題なので、最初に検討しておく
必要がある。

693:元ヴェテ参上
18/11/09 20:33:30.78 513Xdc6A.net
井田総論第2版レビュー試論(2)−消極的構成要件要素の理論
中義勝は、1971年、『誤想防衛論』を著わし、当時、圧倒的定説であった団藤説に異を唱えた。
団藤説の体系(構成要件ー違法性ー責任)では、誤想防衛の場合、不都合が生じるというので
ある(今でいう「ブーメラン現象」ー名付親は川端博)。正当防衛などの正当化事由も、それが
不存在であれば、構成要件を充足するという意味で、消極的構成要件要素であるとする。これ
が消極的構成要件要素の理論(以下「本理論」という)であり、井田説の特色の一つである。
  殺人構成要件=(199条)+(−35条)
「蚊を殺す行為」も「人を殺害する行為」も、ともに殺人構成要件に該当しないとして同一の
扱いを受けることになる(ヴェルツェル)。
本理論が、構成要件と違法性の区別を放棄してまで、その一体性を主張する根拠は、錯誤
の問題の解決にある。「通説の問題点は、違法性阻却事由の錯誤において、誤信について
過失があったとき過失犯の成立を認めなければならないが、どのようにして過失犯の成立
を認めることができるかが明らかでない」というのが井田の問題意識である(382−3頁)
 学説は本理論に対していたって冷淡である。たとえば「構成要件該当性では類型的な違法性
を基礎付ける事実がその内実をなしているが、違法性阻却事由は全法秩序から導き出される
非類型的なものであって、構成要件の中に取り込むことに性質上馴染まない」(山口211頁)
 錯誤問題の解決は、三段階犯罪論体系を堅持したうえでも可能であるとすれば(西田、曽根、
山口、山中、佐伯仁志)、、分析的思考を犠牲にしてまで本理論を採ることはできない。もちろん、
試験では採り得ない。

694:氏名黙秘
18/11/09 21:33:36.89 CQG3OhHz.net
>>691
大塚教授の『刑法入門』は名著ではあるが、残念ながら、行為無価値二元論者の立ち返るべきレガシーに留まる。

695:元ヴェテ参上
18/11/10 09:22:17.08 RCzhpGp7.net
井田総論第2版レビュー試論(3)−危険現実化説
(1)井田の改説
すでに触れたように、井田は、因果関係について重大な改説を行った。即ち、初版127頁では
「折衷説(折衷的相当因果関係説)がとられるべきである」としていたが、2版142頁では「従来
の通説である相当因果関係説をもはやとることはできないとすれば、法的因果関係の本質
に遡り、行為の結果発生への事実的寄与に注目する判例実務に学びつつ、実行行為の危険
が結果として現実化したかどうかを基準とする見解をとるべきであろう」とする。
 ただ、注意すべきは、初版でも「危険の現実化」というフレーズは見られたことである。例えば、
131頁では「決定的なことは、危険の現実化ないし危険の確証の関係が認めrられるかどうか
である」と述べていた(他にも、124頁、128頁、129頁、130頁、133頁)
(2)前 史
自覚的であったかどうかは別として「危険の現実化」というフレーズは古い文献にもみられる。
@「過失行為は、単に結果に対して因果関係があるというだけの行為ではなく、結果発生の
実質的で許されない危険を持った行為であり、その危険の現実化として結果が発生したとき
処罰するものだと思われる」(平野〔昭和47年〕193頁)
A「因果経過の相当性―危険の実現ーに関する経験法則的な判断が、介在事情の捨象に
よって、行為時における一般的な危険判断にまで還元され、そのことによって相当性の判断が
ますます不確定的なものになるおそれがある」(中山〔昭和57年〕179頁)

696:元ヴェテ参上
18/11/10 09:44:23.84 RCzhpGp7.net
井田総論第2版レビュー試論(3)−危険現実化説
(3)判例の展開
@昭和63年5月11日(柔道整復師事件)
調査官解説において「被告人の行為の危険性がそのまま現実化した場合である」ことを理由
に因果関係を肯定したものとされた。
A平成2年11月20日(大阪南港事件)
「実務において従来の相当因果関係説が明示的に採用されるには至っていない」とする調査官
解説(永井敏雄)が出て、別の調査官「大谷直人)からは「相当因果関係説は、実務における
思考方法とマッチしない」との論評がなされた。
B平成4年12月17日(夜間潜水事件)
調査官(井上弘道)によtれば、本決定も危険現実化説に拠っている。
C平成15年7月16日(高速道路進入逃走事件)
D平成16年10月19日(自動車道停車追突事件)
E平成18年3月27日(トランク監禁事件)
F平成22年10月26日(日航機ニアミス事件)
G平成24年2月8日(三菱自動車ハブ脱落事件)

697:元ヴェテ参上
18/11/10 13:40:25.15 RCzhpGp7.net
井田総論第2版レビュー試論(3)−危険現実化説
(4)山口説
判例の危険現実化説をいち早く採用したのが山口厚・問題探究刑法総論(平成10年)である。
同26頁は「結果として現実化した危険が行為に由来するかという判断を行えばよい」とした。
現在の山口説(第3版)は「因果関係を@事実的なつながり(条件関係)とA規範的な限定
(相当因果関係)という2段階で検討していた従来の学説とは異なり、端的に、危険性の現実化
の有無を問うことで足りる」(61頁)とするに至った。
(5)相当因果関係説に固執する立場
大谷223頁は、折衷説の立場から「刑法上の因果関係は、一般の国民から見てその結果を
その行為に帰属させるのが相当であるという相当性の判断が核心となるのである。その意味で、
相当因果関係説は危機に陥っているわけではない」とする。
曽根・原論150頁は、客観説の立場から「危険の現実化という言葉の使用からは、客観的
帰属論への接近が印象づけられる。ただ、この判断枠組は、相当因果関係論にも共通のもの
であり、また、個々の判例の論旨・帰結は相当因果関係論によっても説明できる」とする。
(6)客観的帰属論の反応
山中287頁は「判例は、包括的な基準のもと、類型に応じた多元的な下位基準を設けて判断
していく、客観的帰属論に類似した方法論を採っているということができる。最高裁の判例に
おける危険現実化論には客観的帰属論の一部か採用されている」とする。

698:元ヴェテ参上
18/11/10 13:45:00.73 RCzhpGp7.net
危険現実化説だけで疲れ果てたので、井田総論レビューは暫く休載します。

699:氏名黙秘
18/11/10 13:57:18.92 ilkelMIF.net
ていうか、レビューになってないじゃねーかw

700:氏名黙秘
18/11/10 14:13:03.02 BqJojgTD.net
>>698
お疲れ様です
危険性を事前判断する行為無価値と事後判断の危険の現実化を
どう説明しているか気になります
あと、西田先生の74頁には、
違法構成要件→違法阻却→責任構成要件→責任阻却とありますが
214頁を読むと消極的構成要件要素の理論に近いのではないかと
思ってしまいます どう考えたらいいのかご教示いただけたら幸いです

701:氏名黙秘
18/11/10 14:17:08.31 v9BAdvkW.net
休載するんかいwww

702:氏名黙秘
18/11/11 02:51:50.63 kznqvdp8.net
レビューじゃなくてまとめやね

703:氏名黙秘
18/11/11 13:43:48.25 CCjNpB6c.net
「あるもの(危険)が現実化した」という判断思考は、
事後的にであれ、
「事前の発端(危険)に遡り、そこをスタートとして、因果の流れを追って、犯罪に実現したか」を考察するわけで、
まさに行為無価値論的思考なのよ。
結果から遡ると言いう、思考の流れを取る、結果無価値論からは、本来取り得ない。

704:氏名黙秘
18/11/11 17:51:40.05 j9zt5d3j.net
>>698
てか、改説後の論文からは特に新しい点はないってことでいいよね?

705:氏名黙秘
18/11/11 17:52:36.28 j9zt5d3j.net
個人的には危険の確証を「ほら、言わんこっちゃない」と
言い換える説明が挿入されたことがツボ

706:氏名黙秘
18/11/11 23:09:34.90 fS9HFREn.net
井田総論、正当防衛の箇所で、
急迫予期類型と急迫自招類型に区分してる?

707:元ヴェテ参上
18/11/14 09:48:11.06 CjwdqCmZ.net
井田総論第2版レビュー試論(4)−正当防衛論
(1)はじめに
最高裁は、刑法36条について「急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的
保護を求めることが期待できないときに、侵害を排除するための私人による対抗行為を例外
的に許容したものである」と述べている。
その法的効果は「罰しない」であり、違法性が阻却され犯罪は成立しない。正当防衛は緊急
行為である点で緊急避難と類似性を有する。しかしながら、正当防衛は「不正な侵害」に対して
行われる点で「正対不正」の構造を持ち、「正対正」の構造を有する緊急避難とは異なる。
その結果、その成立要件は緊急避難のそれよりも緩和され、法文上、侵害法益と保全法益
との均衡性が必要とされていない。さらに、補充性も要求されず、被侵害者に退避義務は
課されないと考えられている(もっとも、いかなる場合にも退避義務がないのかは後述する)

708:元ヴェテ参上
18/11/14 10:47:55.40 CjwdqCmZ.net
井田総論第2版レビュー試論(4)−正当防衛論
(2)正当化根拠
正当防衛と緊急避難とに共通するのは、@法的保護に値する正当な個人的権利(保全法益)
が存在し、それが、A国家機関による救済を待つ時間的余裕がない緊急事態において危険に
さらされている場合に問題となることである。
前述のように、正当防衛においては、緊急避難と比べて、その要件が緩やかであることの根拠
は、正当防衛状況ではB攻撃者に「帰責性」が認められるがゆえに、攻撃者側の法益(被侵害
法益)の要保護性が減弱する、または否定されるところに求められる(以上、井田293頁)
しかしながら「減弱」はともかく「法益性が否定される」(平野228頁、前田250頁)というのは
云いすぎであろう。不正に他人の権利を侵害しようとした者が、法益の価値を没収された存在
になるわけではない(山中482頁参照)
また、井田は「法確証の利益」をも正当化根拠として挙げる(294頁)。自己保全+法確証の
利益という二元的正当化根拠論は、ロクシンにyよって主張された見解であり、わが国でも
賛同者を見出しつつあるが(斉藤誠二・正当防衛権の根拠と展開〔1991年〕、山中480頁、
川端329頁、大谷273頁、斉藤信二180頁、高橋256頁、内藤(中)328頁、曽根186頁)
法を確証するために侵害者の生命侵害が許容されることにもなりかねず、疑問である。
また、法確証の利益説に対しては「法確証の利益は、法益が保護されたことによる反射的利益
であって独立の利益といえるか疑問があるし、その量が不明なので、、害の均衡が不要である
ことを説明できるかにも疑問がある」との批判がある(詳細は、佐伯仁志118頁)
さらに「その根底には、国家刑罰権の代理行使という考え方が潜んでいるように思われる」と
する批判(西田157頁)や、法確証の利益説は優越的利益説などと比べて行為無価値的だ
という指摘もある。

709:元ヴェテ参上
18/11/14 10:53:05.87 CjwdqCmZ.net
正当防衛論の続きは明日以降にします。
>>707冒頭の判例は、平成29年4月26日です。

710:氏名黙秘
18/11/14 18:16:09.13 6EU/NZpW.net
>>709
乙である

711:氏名黙秘
18/11/14 19:52:07.02 PFaXjXj6.net
どこまで井田評でどこまでヴェテさんの理解なのかわかりづらく思いました。初学者。

712:氏名黙秘
18/11/14 23:56:09.44 prWNnL/t.net
>>711
全部ソースが書いてあるだろww

713:元ヴェテ参上
18/11/15 07:56:06.13 B+4kFfIk.net
井田総論第2版レビュー試論(4)−正当防衛論
(3)攻撃者の帰責性と許容される防衛行為(294−5頁)?
井田は「正当化される防衛行為がどのようなものかは、攻撃の物理的な危険性や反復の可能
性だけでなく、攻撃者の『帰責性』の程度によっても左右される。その攻撃が故意に基づくもの
か、それとも過失によるものかにより、許容される対応手段は異なる」と述べる。
しかし、攻撃者の有責性の有無・程度まで判断の要素とすることは、違法性阻却事由としての
正当防衛の性格と矛盾するであろう。
 また、井田は「駅のホームに上がる階段の途中で不注意によりつまづいて倒れかかってきた
人に対し、故意で暴行を加えてきた人に対するのと同じように、殴りつけることができると考え
るべきではない」とするが、これに対しても同様の批判が可能である。
すなわち、不注意で倒れかかってきた人に対しては、受け止めるか、一歩避ければ、自分の
身体を守ることができるが、故意で暴行を加えた人に対しては、受け止めたり、身を避けても、
さらに殴りかかってくることが予想されるから、殴る行為が必要とされるのである。井田が指摘
するとおり、攻撃者の主観は、防衛者にとっては外在的事情であるから(295頁注10)、これ
を違法性阻却の判断において考慮することには何の問題もないが、そのような考慮がなされる
のは、攻撃者の責任の程度が重要だからではなく、攻撃の危険性を判断するために必要だか
らである(佐伯仁志119頁注13)
 さらに、井田は「年少者や精神障害者のように、責任がないか減弱した者による攻撃、さらに
、被攻撃者と特別な関係にある者(たとえば親族等)による攻撃に対しても、事情により反撃は
制限される」とするが、これらは、帰責性の問題ではなく、ドイツで議論されている「正当防衛の
社会倫理的制限」(内在的制限)の問題である(山中敬一・正当防衛の限界〔1985年〕参照)

714:氏名黙秘
18/11/15 18:56:19.98 1g6g7k83.net
>>713
井田は目的的行為論をとってるから別段故意過失を
考慮しても違法性阻却事由としの性格とは矛盾しないであろう。
責任が減弱した者についても、反規範的意思が弱い点を考慮すれば
侵害者の行為の違法性を減弱する要素となりうるのだし、
井田は法確証の利益を重視する立場だからなおさら問題はない
(責任を欠く者には国家の刑罰権が及ばないことを想起せよ)。
目的的行為論とは異なる立場を前提にして批判を加えるのは
適切とはいえないであろう。

715:元ヴェテ参上
18/11/16 10:40:29.25 oGHubcyT.net
>>714
再考します。
井田総論第2版レビュー試論(4)−正当防衛論
(4)対物防衛
井田は、対物防衛を否定しながら(303頁)、民法720条2項が「他人の物から生じた急迫の
危難を避けるためその物を損傷した場合」は損害賠償責任を負わないと規定していることから
この規定を根拠に違法性阻却を認めている(防衛的緊急避難=304頁)。この見解は、法秩序
の統一性を認めることを前提にして、民法上適法な行為は刑法上も適法とされなければならな
いことを根拠としている。しかし、民法720条2項の適用では問題は解決しないように思われる。
 第1に、井田は「民法720条2項は、・・・刑法の緊急避と異なり、法益の均衡も補充性も要件
としていない」(303頁)とするが、オイラの知る限り、民法学説でも補充性と害の均衡を要求す
る見解が有力である(平井、潮見など)。この点について、井田は「物から危険な事態が生じた
とき、いわれのない危難に遭遇した人には、危険源となっているその物を損傷することより危難
から逃れることを可能にすべきであり、他方、物の所有者には、自己の物が他人に危険な事態
を生じさせた場合には、それが破壊されることもあるというリスクを負担させてよい」(303頁)と
説明する。しかし、井田は、刑法の正当防衛で補充性と害の均衡が必要ない理由を、前述の
とおり、攻撃者の「帰責性」に基づく「法確証の利益」に求めており、それが井田が対物防衛を
否定する理由であったはずである。
刑法で認められない違法性阻却が民法であれば認められ、そしてそれが刑法に適用されると
いうのは、奇妙ではないだろうか(佐伯仁志128頁)
 第2に、正当防衛における正当化根拠として、「法確証の利益」という考え方をとるのであれば
「動物や倒れかかってくる大木に対して法確証の利益を説いても全く意味がない」(西田160頁)
法確証の利益説を採りながら、、違法性阻却を認めることは論理的に一貫しないと云わざるを得ない。

716:氏名黙秘
18/11/20 17:16:52.32 ZXrHfVjc.net
ヴェテさん、香川先生の新錯誤論読んだ?
URLリンク(twitter.com)
(deleted an unsolicited ad)

717:氏名黙秘
18/11/20 21:55:06.71 cdowxjcp.net
香川達夫と佐伯ちひろってどっちが年上?

718:氏名黙秘
18/11/20 23:29:35.92 IpXTxIdR.net
香川先生ってまだ現役だったのか

719:氏名黙秘
18/11/22 00:18:01.65 o+E2CrV6.net
香川先生92歳でまだ現役かすごいな
亡くなった俺の祖父と同い年だよ

720:氏名黙秘
18/12/03 21:53:25.89 R7rC0FBO.net
小林・刑法総論の理論と実務、やっぱいいね。

721:氏名黙秘
18/12/07 14:16:47.01 /ukEBaTH.net
>>720
何の連載?

722:氏名黙秘
18/12/07 15:18:21.24 1qUANb1y.net
判例時報の連載「刑法判例と実務」の単行本化。

723:氏名黙秘
18/12/07 15:38:04.50 /ukEBaTH.net
>>722
いくら?

724:氏名黙秘
18/12/07 16:01:29.15 1qUANb1y.net
5,500円+税 ちょっとお高い。

725:氏名黙秘
18/12/07 16:23:35.03 /ukEBaTH.net
たしかに高い。買わない。

726:氏名黙秘
18/12/08 16:49:49.70 eG805xBA.net
東大ローレビューの最新号より、樋口先生の実行の着手についての論文
URLリンク(www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp)(higuchi).pdf

727:氏名黙秘
18/12/08 17:11:11.33 eG805xBA.net
樋口先生ははたしてどこへ行こうとしているのかね?
なんでこの人を山口先生は後継に据えたのか?
たしかに天才なんだろうし、発想はとてつもないけど、
根本的に大事なものを捨ててるような気がしないでもない。

728:氏名黙秘
18/12/08 17:59:03.19 LcFrjlej.net
天才島田聡一郎が生きていればな…

729:氏名黙秘
18/12/08 18:25:54.98 LNULlWAS.net
樋口は異才だけど決して主流にはなれない人だよね

730:氏名黙秘
18/12/08 18:31:18.52 LkULxsT1.net
いちいちラディカルすぎるんだよな。
方法論としては小林先生のアプローチのほうが好きだ。

731:氏名黙秘
18/12/08 18:46:50.33 LNULlWAS.net
小林も相当ラディカルだと思うけどw

732:氏名黙秘
18/12/08 20:11:08.57 8bYqYPbk.net
ははは、一応古典的結果無価値論をベースにしてるじゃんw

733:氏名黙秘
18/12/09 10:45:12.95 EDbgv/HV.net
結局、基本書として広く読まれて
法学部生・司試受験生・法曹つ社会に影響を与えられるか
これが学者としての存在意義だと思う
とすると、結果無価値なら、平野→前田西田→?
行為無価値なら、団藤→大塚→(大谷)→大塚井田→?
というところだろうな。奇天烈でラディカルな学説って
結局は学者のオナニーで終わる

734:氏名黙秘
18/12/09 11:07:24.92 /e6bg3HJ.net
>>733
前田をその系譜に置くことがおっさん臭い。山口を理解できない可哀想な年寄り。

735:氏名黙秘
18/12/09 15:29:51.29 SigCf4RE.net
山口も昔はラディカルだったのにもう忘れられてるのな

736:氏名黙秘
18/12/09 17:41:26.92 EVhhZ8eB.net
実行行為概念不要論とか舌鋒鋭かったね

737:氏名黙秘
18/12/09 17:42:56.80 xylylz6h.net
舌鋒鋭くなって ナンバーガール

738:氏名黙秘
18/12/09 21:44:00.34 URgqDIlM.net
山口説は昔は過激だったが、結果無価値論を徹底する
という意味では、ある意味超保守的であったといえる。
しかし、
樋口説は故意と過失の二元的構成に親和的で、主観的
違法性論にも親和的で、結果無価値とは相容れない立場
に至っているのではないかと思われる。

739:氏名黙秘
18/12/10 14:31:02.38 5VYozlhj.net
危険運転致死傷罪が世間でもすっかり有名になったな
停車中の事故が「運転」といえるかという新論点を
ニュースでもワイドショーでもとりあげている
それにしても懲役23年は重すぎやしないか?

740:氏名黙秘
18/12/11 20:11:46.85 skgixGET.net
成文堂書店の近刊案内より。
2月
 『法益論』
  嘉門 優 著
  本体価格6,000円
  978-4-7923-5267-7

741:氏名黙秘
18/12/11 20:16:36.08 nQyOyBn/.net
鼻から牛乳?

742:氏名黙秘
18/12/11 20:21:11.45 skgixGET.net
成文堂書店の近刊案内より。
大谷 實 著 『刑法講義総論 (新版第4版の改訂)』2019年3月予定

743:氏名黙秘
18/12/11 21:28:26.42 skgixGET.net
指示を受けてマンションの空室に赴き詐欺の被害者が送付した荷物を
名宛人になりすまして受け取るなどした者に詐欺罪の故意及び共謀が
あるとされた事例
URLリンク(www.courts.go.jp)

744:氏名黙秘
18/12/12 14:20:37.82 DPbN/PPF.net
大谷の改訂もういいよ
見てて痛々しい
どうせ弟子たちが書くんだろうけど

745:氏名黙秘
18/12/12 17:48:27.05 pepk7AN3.net
その点、本人がガチでやってる
伊藤眞、高橋和之、江頭憲治郎、菅野、塩野らは立派だな

746:氏名黙秘
18/12/12 17:49:36.58 fCt1pnCW.net
菅野労働法の改訂には厚労省が噛んでるらしいよ。

747:氏名黙秘
18/12/12 20:20:02.80 DPbN/PPF.net
菅野は司法研修所に行ったらしいけど
弁護士資格は持ってるの?

748:氏名黙秘
18/12/12 20:34:32.40 1SzzVd37.net
スレチだが、伊藤眞民訴の改訂は早稲田ロー修了生の判事補(衆議院法制局参事)が協力しているそうで(第4版補訂版はしがき)。
最新版ではどうか知らんけど。

749:氏名黙秘
18/12/12 20:39:54.85 DPbN/PPF.net
団藤綱要の英訳は若かりし佐伯がやった
佐伯が自白してた
おかげで平野に睨まれたらしい

750:氏名黙秘
18/12/12 21:28:24.42 lq2MXB8X.net
どいつもこいつも自分で書いてねえな

751:氏名黙秘
18/12/12 22:59:38.44 2ZhTAAjR.net
社会的に一個の行為か複数の行為かの判定って、
構成要件の判定より先にやるんだよね。。。

752:氏名黙秘
18/12/13 08:19:11.17 bZKsLCA1.net
ヴェーバーの概括的故意の論点の盲点だな

753:元ヴェテ参上
18/12/13 17:42:21.09 qdJHOI1g.net
井田総論第2版レビュー試論(5)−共犯論
ちょっと時機に後れたが、最後に宿題だった共犯論を投下します。ただ、オイラは間接正犯
否定説・共謀共同正犯否定説・純粋惹起説なのだが、これではレビューにならないのでw、
私見はひとまず措きます。
なお、中山は『新版概説刑法T』(2011年)、松宮は第4版(2009年)に拠った。
(1) 正犯の概念
井田は、大塚281頁に示唆されてか「正犯とは、実現事実を第1次的に帰せられるべき主犯者
(中心的存在)であり、共犯とは、第2次的な刑事責任を負うべきものである」とする(476頁。
同じようなフレーズは、479頁、480頁、484頁注24、485頁、488頁、508頁注11、509頁
にも見られる。山口307頁も同旨か)。しかしこれでは抽象的で結論を述べたに過ぎない。より
実質的な説明が求められる。
そこで井田は「実質的客観説の内部に、2つの異なった見解がある」とし(478頁)
@ 行為がもつ構成要件実現ないし結果発生の現実的危険性を基準とするもの
   (これが多数説であるとする:大塚160頁、大谷398頁、川端541頁、福田250頁)
A 行為者が構成要件実現ないし結果発生のプロセスに対して有する支配性を基準とする
   もの(ドイツの通説:伊東382頁、照沼亮介・体系的共犯論と刑事不法論〔2005年〕、
   西田328頁、橋本正博・「行為支配論」と正犯理論〔2000年〕、藤木275頁)
後者の行為支配説を支持する。即ち「行為支配説によれば、正犯性の基準として、当該違法
事実の実現について主導的役割を演じた者が正犯とされる」(480頁)。なお、井田は「故意を
違法要素とする体系を前提としなければ、行為支配説をとることはできない」とするが(480頁)、
上述の学説の分布をみればそこまで断言することはできないであろう。

754:元ヴェテ参上
18/12/13 17:51:13.52 qdJHOI1g.net
(2a)罪名従属性
井田は、共犯の従属性について、実行従属性・要素従属性に加えて、罪名従属性を要求する。
即ち「学説の多数は(そしておそらく判例も)、正犯と共犯とが同一の構成要件に関わるもので
あることを要求する(すなわち、殺人罪の正犯が存在しなければ、殺人罪の教唆犯は成立しない
とする)」(483頁)。「共犯の罪名従属性は、共犯行為の輪郭を明確なものとして、共犯処罰の
範囲の無制限な拡大に歯止めをかけるため、これを要求すべきである」(484頁)。
これに対して「反対説は、正犯者の行為がB罪の構成要件に該当する違法な行為にすぎない
場合でもA罪の教唆犯をさせてよいとする」(483頁)。「反対説は、共犯行為としての類型性の
要求を無視することによって共犯の成立範囲を無限定なものとし、因果関係が肯定される限り
で共犯の成立を認めるものであり、それは拡張的共犯論と呼ばれる」(484頁)。「故意ある
道具が問題となる場合についていえば、収賄罪の正犯が存在しないところにその教唆犯を
認める(「正犯なき共犯」を肯定する)ことになってしまう」(484頁注24)
 しかし、井田は別の個所(510―11頁)で「甲が殺人罪の故意で、乙が傷害罪の故意で共同
してAに暴行を加え、その結果、Aを死亡させたというケースでは」「傷害罪の範囲(したがって、
傷害致死罪の限度)では、一部行為の全部責任の法理の適用を肯定する。甲と乙の間では
傷害致死罪の限度で共同正犯が成立し、それぞれの故意に応じて、甲は殺人(既遂)罪、乙は
傷害致死罪の刑事責任を負うことになる」とする(部分的犯罪共同説)
 甲に殺人罪、乙に傷害致死罪が成立するとする限り、罪名従属性は放棄されていると云わざる
を得ない。罪名従属性を貫徹しようとするならば、完全犯罪共同説(殺意のなかった乙について
も、殺人罪の共同正犯が成立するが、38条2項により傷害致死罪の刑の限度で処断される)
によらざるをえないであろう(泉二627)

755:元ヴェテ参上
18/12/13 17:53:51.36 qdJHOI1g.net
(2b)罪名従属性
 しかも、井田が支持する部分的犯罪共同説には、実は致命的な欠点がある。即ち、殺意のない
乙の行為から死亡の結果が発生した場合には、殺意があった甲には殺人未遂の罪責しか負わ
せることができないはずある(西田398頁、山口319頁、山中889頁)
 甲が窃盗を教唆したところ正犯者乙が強盗を犯した場合、甲は窃盗教唆となることには全く
異論は見られない(西田398頁、前田329頁も参照)。ならば、惹起説を採る限り、共同正犯
も教唆犯も結論は同じはずである。罪名従属性説ではなく罪名独立性説が惹起説の帰結で
ある(山中863頁)。行為共同説によれば、罪名従属性を否定することが可能である(西田
385頁)。山口330頁・佐伯仁志417頁も罪名従属性を否定する。

756:元ヴェテ参上
18/12/13 18:01:04.00 qdJHOI1g.net
(3) 故意への従属性
「通説は(おそらく判例も)、共犯処罰にあたり、故意への従属性も要求する」(485頁)。これに
対し「拡張的共犯論(浅田431頁、佐伯千341頁、内藤1390頁、中223頁、中山229頁、
山中872頁)は、故意への従属性も不要とし、いずれの事例の甲も、殺人の間接正犯ではなく、
殺人罪の教唆犯として処罰されるべきだとする」(485頁)。「そこでは、実行従属性は維持され
るものの、従属性の内容は大幅に緩和され、共犯の範囲は拡大される。それに伴い、間接正犯
の範囲は縮小するのである」(485頁注26)
 ところで井田は「教唆犯にあたる事実を認識しながら、間接正犯にあたる事実を実現した場合」
(558頁。たとえば、医師甲が看護師乙に毒薬が入った注射器を渡して患者Aに注射してこれを
殺すことを指示したが、乙は甲の思惑に反して非故意でこれを実行した場合)「発生結果との関係
で教唆犯の成立のみが認められる」(559頁)とする。このケースで教唆犯の成立を認めると
すれば、故意のない者に対する教唆犯を肯定していることになる。ここでは、故意への従属性
はあっさり放棄されているのである。
 通説も、たとえば団藤403頁は「教唆とは人に犯罪実行の決意を生ぜしめることである。した
がって、過失犯の教唆ということはない」と明言しながら、上のような場合には「このばあいは、
教唆の意思で間接正犯の結果を生じたことになる。おそらく、教唆の限度で責任を問われる
べきであろう」(団藤429頁)とする。つまり、教唆犯の成立には、客観的に正犯者に犯罪を
実行させればよいのであって、故意があったか否かは重視されていないということである
(松宮286頁参照)
「故意が構成要件要素として位置づけられ、故意のない行為は構成要件にも該当しないと考え
られるようになると、故意への従属性が承認されなければならないから、故意のない直接行為者
を利用する背後者は共犯となしえないことになる」(487頁注30)という通説の論理は建前だけ
のものになっている。

757:元ヴェテ参上
18/12/13 18:06:52.46 qdJHOI1g.net
(4) 共同正犯
井田は「判例は、共同正犯については、結果実現(したがって、利益享受)の欲求・動機の強さ
という主観面と、犯罪遂行過程における役割の大きさという客観面とが相まって、共謀者の一員
として共謀に加わり、自分の犯罪として犯罪をともに実現したといえるほど、犯罪実現に主体的
に関わった者は共同正犯となるという考え方に立脚している」。したがって「犯罪達成の(実行者
と変わらぬ)意欲という主観的意思だけで決める主観説ではない」とする(509頁)
 しかし、判例による共同正犯と教唆犯・幇助犯の区別においては、犯罪実現に対してその者が
もつ利害・利益の大きさが重要な判断基準とされており、その意味では判例の基準は主観説的
色彩を帯びているといえよう(西田352頁も参照)。たとえば、平成13年10月25日(スナックの
ホステスが長男に強盗を指示した事例)がそうである。佐伯仁志406頁も「わが国の実務では、
『自己の犯罪』か『他人の犯罪』かで共同正犯と狭義の共犯を区別する主観説をとっている」とする。
 また、井田は「共謀=意思連絡+正犯意思」という等式が成り立つとする(515頁)。「そうで
あるとすれば、実行共同正犯の場合にも正犯意思がその要件になると理解するときには、実行
共同正犯の主観的要件は共謀(正犯意思を含む)と呼びうることになり、実行共同正犯と共謀
共同正犯の要件は統一的に理解されることになろう。それが判例実務の基本的な考え方で
ある」とする(515頁)
 しかし、全員の共同実行か(実行共同正犯)、一部の者の実行か(共謀共同正犯)には決定的
な違いがあるというべきである。また、「共謀」と「意思連絡」にも大きな違いがあると考えられる
から(詳しくは、注釈・島田執筆部分。今、手許にない)井田の所説には賛成できない。

758:元ヴェテ参上
18/12/13 18:12:59.89 qdJHOI1g.net
(5) 承継的共同正犯
承継的共同正犯については、限定的肯定説(福田264頁、大谷418頁、平野383頁)と全面的
否定説(浅田419頁、曽根624頁、内藤1425頁、中山221頁、山中916頁)が対立してきた。
 井田は「否定説(全面的否定説)が支持されることになる。ただ、否定説によるときにも、後行者
は幇助犯の罪責を問われうる」(522頁)としながら、別の個所では「詐欺罪・恐喝罪については、
財産移転段階のみに関与した後行者についても、犯罪にとり本質的な違法をともに実現したもの
として共同の主犯者という評価を行うことに賛成できる」(524頁)としており、首尾一貫しないものがある。
 近時、最高裁は傷害罪の承継的共同正犯に関して重要な判断を下した(平成24年11月6日)。
これは、傷害罪については積極的な利用意思を根拠とする限定的肯定説(福田・大谷説)の論理は
通じないことを示したものである。
 しかし、注目すべきは、法廷意見よりも千葉補足意見である(百選166頁〔小林憲太郎〕に
おける決定要旨と補足意見の分量差を見よ)。そこでは、強盗・恐喝・詐欺等については、効果
の継続を根拠とする限定的肯定説(平野説)の立場に基づき、承継的共同正犯が肯定されうる
ことを明確に述べている(推測だが、西田366−7頁の影響を受けた節がある)
 井田説とは、詐欺罪と恐喝罪とで結論が一致するものの、強盗罪については見解を異にする。
この点、井田は「手段としての暴行と脅迫に違法の重点がある強盗罪においては、後行者を
暴行・脅迫という事実について問責しうることの根拠を示すことができなければならないが、
そのような根拠はおよそ示しうるものではない」とする(524頁)。井田説に賛成する。
 否定説を徹底すれば、詐欺罪・恐喝罪についても共同正犯の成立を否定する立場もあり得る
(例えば、内藤1425頁)。これについては、山口373頁が「共犯の適切な成立範囲を確保する」
観点から、後行者に不作為による欺罔・脅迫を認め、先行者との間で共同正犯の成立を肯定
するという試論を展開している。なお、検討を要する。

759:氏名黙秘
18/12/13 18:15:50.84 WKFTyCnp.net
ヴェテさん、小林・刑法総論の理論と実務評もよろしくです。
あと、今話題のあおり運転事例の危険運転致死傷罪の成否についてもコメントよろしくです。

760:元ヴェテ参上
18/12/13 18:18:31.48 qdJHOI1g.net
(6) 過失犯の共同正犯
最高裁の判例には、過失犯の共同正犯を肯定したものがあり(昭和28年1月23日=メタノール
事件)、最近までの裁判例においても肯定説が主流である。学説の多くも肯定説をとる。
 平成28年7月12日(明石歩道橋事故)は肯定説に立脚したうえで、その要件として「共同の
(業務上の)注意義務に共同して違反した」ことが必要であるとし、それを当該事案に適用して、
甲につき業務上過失致死傷罪の共同正犯の成立を否定した。
 井田は「本質的なことは、どのような場合に、他人の結果回避義務違反についても自己が
責任を負うべき関係が肯定されるかである。それは、共同者の各自が自分の行為について
注意を払うだけでは足らず、それぞれ他の者の行為についても気を配り、他の者の担当部分
についても安全を確かめる法的義務が存在し、共同行為者がその義務に違反したとみられる
事態があるときに限られる」とする(528頁)。しかし、共同作業を行う数人が対等な関係にある
ときは、相互的に監督義務を負うことはありえないであろう(山口385頁、佐伯仁志428頁)
 井田は「過失共同正犯が問題となるケースで、共同者のそれぞれが実現事実の全体について
罪責を負うのは、各人が結果について過失正犯(過失の単独正犯)としての罪責を負う場合で
なければならない」とする(528頁)。そうであるならば、過失犯の共同正犯は過失の単独正犯に
解消されるべきであろう(曽根590頁、前田370頁、西田383頁)。なお、井田は初版476頁では、
同時犯解消説を採っていた。上記の平成28年7月12日を機に改説したものと思われる。

761:元ヴェテ参上
18/12/13 18:26:31.45 qdJHOI1g.net
(7a)共犯と身分
65条1項と2項の関係については、@1項を重く見て、犯罪の成立と科刑を分離する団藤=大塚説
(第1説)、A1項=真正身分犯、2項=不真正身分犯とする判例・通説(第2説)、B1項=違法身分、
2項=責任身分とする第3説(近時の多数説といえよう。佐伯仁志413頁、曽根612頁、内藤1403頁、
西田400頁、橋本283頁、林430頁、平野366頁、堀内278頁、松原423頁、山口343頁。
ただし、論者によって細部は異なる。とくに加減的違法身分の扱い−後述)がある。
 第1説は、既に克服された学説であるが、近時の高裁判例(札幌高裁平成18年8月31日)で、
罪名と科刑の分離を認めたものがある(ただし、会社法の特別背任罪に関するもの)
 第2説に対しては、井田は、同じ種類の身分(たとえば「公務員」)が、ある犯罪(たとえば、収賄罪)
については1項の身分、別の犯罪(たとえば、職権濫用罪)については2項の身分とされることがあるが
「どうしてそのような異なった取扱いがなされてよいのかが明らかでない」と常套的な批判を述べる(568頁)
 井田は、基本的に第3説に与するようであり(569頁)、「65条1項は、身分者に対する特別な義務づけに
ついて独立の保護法益を観念できる場合の身分、すなわち、連帯可能な(一身的でない)違法身分に関する
規定である」(570頁)。これに対し「2項の適用される身分犯は、身分者のみに一身的な特別義務を課す
犯罪である」(571頁)。オイラには少々分かりづらいのであるが、佐伯教授の助けを借りると「違法身分で
あっても法益侵害性に影響する違法身分は1項で、義務違反性に影響する違法身分は2項とする見解」と
いうことになる(佐伯416頁)。
責任身分の位置づけも明らかでない。井田は、行為無価値論によれば「そもそも責任身分は、
ごく例外的にしか認められない」としたうえで、(結果無価値論によれば)責任身分とされる
「保護責任者」(保護責任者遺棄罪)や「業務者」(業務上横領罪)は、違法身分であっても個別的
に作用すべき2項の身分(一身的な〔効果において連帯しない〕違法身分)であるとする(570頁)

762:元ヴェテ参上
18/12/13 18:31:20.45 qdJHOI1g.net
(7b・完)共犯と身分
西田説を筆頭とする第3説に対しては、違法身分と責任身分の区別が、真正身分犯と不真正
身分犯の区別に対応していない、という問題点が従前から指摘されてきた。これに対して、
井田は「たとえ不真正身分犯であっても、違法身分に関わる限りは(加減的違法身分)1項の
適用があるとし、たとえ真正身分犯であっても、責任身分に関わる限りは(構成的責任身分)
2項の適用がある」とする(569頁)。山口347頁も「違法身分はすべて刑法65条1項にいう
構成的身分であり、責任身分はすべて刑法65条2項にいう加減的身分と解される」とする。
 ここで整理すると「違法性は連帯的に、責任は個別的に」という考え方を徹底すると、@構成的
違法身分とB加減的違法身分は正犯と共犯(ないしは共同正犯)の間で連帯し、A構成的責任
身分とC加減的責任身分は個別化すると解することになる(前田338頁注31参照)。これによると、
A構成的責任身分(たとえば、暴力行為等処罰法2条2項の常習的面会強請罪における常習者)
に関与した非常習者は不可罰となるが、それは不合理であろう。また、B加減的違法身分
(たとえば、保護責任者遺棄罪や特別公務員職権濫用罪)に1項を適用し、非身分者を従来より
重く処罰する点については、罪刑法定主義違反の疑いすらある(松宮302頁、松原405頁)。
 とくに、後者の点は重大であって「従来2項の適用領域だとされていた加減的身分のかなりの
部分が違法身分として1項の適用を受けることになり、身分のない共犯の処断刑を引き上げる
結果になる」とする危惧が表明されている(中山研一・法律時報52巻2号142頁)
 こうして第3説には賛成できない。オイラは、第2説(判例・通説)を支持する。
共犯と身分は生煮えのままだったが、以上で井田総論レビューを終わります。
スレを独占して悪かった。


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