もしカミーユ、Zキャラが種・種死世界に来たら12 at SHAR
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285: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 01:05:28
 レコアに笑われ、カミーユは明らかに不満を表情に滲ませ、そっぽを向いてブリッジのドアをくぐった。
レコアが何の気も無しにカミーユの後に続いていく。

 MSデッキまで降りてくると、丁度ギャプランが帰還するところだった。無重力の中をゆっくりと流れ、
MS固定用のアームに支えられ、床底に静かに降ろされる。胸部のコックピット・ハッチが開き、中からは
タイトなパイロット・スーツに身を包んだロザミアが降りてきた。
 ギャプランはアームに降ろされた後、メカニック・クルーによってMS専用の巨大ハンガーに設置され、
即座に各部の整備に入っていた。何やら色々とデータを集めているようだが、それも後にエリカに検証を
依頼する為のものなのだろう。

「あんなお嬢ちゃんが、ギャプランを動かしてたってのか?」

 カミーユとレコアが下まで降りていこうとした時、不意に声を掛けられ、そちらに振り向いた。男の声は、
少女に身体を支えられた金髪の青年。それを睨みつけるように、レイが傍らに待機していた。

「あら、ロアノーク大佐じゃないの」
「皮肉のつもりかい? 今の私は、ザフトに捕らえられている連合軍の元大佐だよ」
「失礼。私も、昔は階級のある組織に所属していたものだから、偉い人を見ると、つい大佐とお呼びしたくなってしまうのよ」

 レコアの言に、苦笑で応えるネオ。
 レコアは、ネオの事をあまり好意的に見ることが出来ない。それは、敵であったということよりも、ステラ
が不憫だと感じる思いがあったからだ。彼は、果たしてステラの気持ちに応えられるような器の持ち主
なのだろうか。レコアとしては、不幸な少女の成り行きは、見たくない。ネオの何処か生き急いでいる感じ
が、レコアの女としての警戒感を呼んでいるのかもしれない。
 カミーユはそんな妙に攻撃的なレコアを横目で見つつ、レイに問いかけた。

「何でネオをここに連れて来たんだ?」
「偶然テスト中のギャプランを見かけて、興味が湧いたようです。どうしてもと言うので見るだけなら、と連れて来ましたけど―」
「それがどうして?」
「ネオは、ヘブンズ・ベースでギャプランに乗っていましたが、乗りこなせなくてシンに返り討ちに遭ったのです」
「純粋に、パイロットが気になったってわけか―なるほどね」
「カミーユたちが迷惑でしたら、直ぐにでも追い返しますけど―」

 目敏い男、ネオはカミーユとレイの会話に耳を傾けていた。ふと、聞こえてきた名前に、過去の出来事を
思い出し―いや、本当にとりとめもなく、態々確認するまでもないことなのだが、つい口が勝手に動いて
しまった。

「君が、カミーユか?」

 カミーユは振り向き―

「そうですけど」
「成る程、そういうことだったのか」

286: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 01:06:06
 ネオと、どこかで会った事があっただろうか。ファントム・ペインの元指揮官だっただけあり、ネオの感触
には戦場の何処かで感じたことのある、ある種の懐かしさを感じるが、こうして面と向かって対面する
ような事はなかったはずである。何かに納得したように表情を綻ばせるネオに、カミーユは首を傾げた。

 本当にどうでもいいことだったのだが、ネオにはどうしても記憶に引っ掛かる出来事があった。それは、
勿論ネオとしての記憶であり、自身の本質に迫るようなシリアスなものでは決してない。ただ、ベルリン
での決戦前のエマの放言が、今になって急に思い出されたのである。ネオは、エマの名前を間違えて
カミーユと呼んでしまった。それに対し、深い不快感を露にして、本人に殴り飛ばされろとまで言って
のけた。その理由は、当時は全くもって見当もつかなかったが、カミーユ本人を目の前にして、やっと
要領を得られた。カミーユという人物は、やや中性的な、所謂美少年といった顔立ちをしてはいるが、
やはりどう見ても男なのである。当然ながら、エマはどう見ても女性で、そんな人が男であるカミーユと
間違われたのは侮辱の極みだったのだろう。怒るのも、無理のないことだ。
 しかしながら、ネオにも言いたい事はある。カミーユなんて男とも女とも取れるような名前、間違えても
仕方ないではないか―今エマが目の前に居れば、そう言ってやりたい気分だった。

「何です? 人の顔をじろじろと見て」
「い、いや、すまない。―しっかし、あのギャプランを本当にあのお嬢ちゃんが動かしてたってのかよ?」
「そうですよ」

 この少年も、妙に神経質そうな顔をしている。ネオは誤魔化すように視線をギャプランとロザミアに向け、
改めて驚嘆の意を示した。
 ネオにとっては、少し冗談が過ぎる現実だ。連合軍のエース・パイロットとして、それこそ数多居るMS
パイロットの中でも凄腕と鳴らしていたのに、ギャプランは全く自分の言う事を聞いてくれなかったので
ある。それなのに、自分よりも遥かに若い、しかも女性にあそこまで見事に操られてしまったのでは、
ネオの立つ瀬がない。テストを見学させてもらった感じでは、デ・チューンが施されている様子もないこと
から、ロザミアが純粋にギャプランを手懐けていた事が覗えた。

「驚いたな、私ですら扱いきれなかったというのに―ステラと、どっちが上手かな?」
「ステラの方が、上手だもん」

 ネオが舌を巻いて苦笑していると、ステラがふわっと浮き上がってロザミアへと向かっていった。
それを見送るカミーユの視線―ステラに違和感を抱いている証拠だった。

「彼女、強化人間なんでしょ?」
「分かっちまうかい?」
「何となく、ロザミィに似ています。あの感じは―」
「ロザミィって言うのは―あの子のことか? じゃあ、彼女もエクステンデッド……」

 正確には違うが、本質的には同じ事。戦闘能力に特化した強化人間ならば、或いはギャプランを使い
こなせるのかもしれない。いや、寧ろその為にギャプランは設計されていると読んだ方が、正確だろうか。
イレギュラーの技術が詰まったあの化け物MSは、そう考えれば納得がいく代物だ。
 道理で、使いこなせなかったわけだ―ネオの見つめる先で、ステラがロザミアに詰め寄っているのが
見える。何やら、ギャプランを使わせろと言っているようだが―

「何よあんた! これはあたしがお兄ちゃんと一緒に戦うために使うものなんですからね!
あんたなんかに壊されでもしたら、あたしのMSが無くなっちゃうじゃないか!」
「ステラはお前なんかよりも上手に使えるもん! ネオに証明するんだもん!」

287: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 01:06:51
「あんたなんかに使いこなせるもんですか」
「出来るもん!」

 まるで子供の喧嘩のように言い合いをする2人。ロザミアがステラを否定すれば、ステラはロザミアを
否定する。低レベルな水掛け論の応酬に、しかし周囲のメカニック・クルーは全く興味を示していない。
子供同士の喧嘩と思われて、放って置かれているのだ。

「嘘ばっかり言ってんじゃないわよ。どうせ、出来るわけないでしょぉ!」
「なにおっ!」

 舌を出して挑発するロザミアに、遂にステラが癇癪を起こして飛び掛った。2人はもつれ合うように絡み
ながら、無重力を流れて取っ組み合いの喧嘩に発展した。ヒステリックに互いを掴み合い、髪を引っ張る
手も容赦ない。

「お止しなさい、2人とも!」

 そこへ、壁を蹴って流れてきたレコアが仲裁に入り、2人を引き剥がす。しかし、尚も臨戦態勢の2人は、
今にも掴みかかろうと息を荒くして睨み合ったままだ。

「レコアはどっちの味方なのさ!」
「レコア、ステラの方がギャプランを上手く使えるってコイツに言って!」

 ロザミアとステラに挟まれ、レコアは同時に意見を求められる。こんな下らない喧嘩をしている場合じゃ
ないって言うのに―レコアはこめかみに青筋を浮かべ、我侭な2人に対して次第に苛立ちを募らせて
いく。
 そんな時、遅れてやってきたカミーユとネオが、それぞれいがみ合う2人を宥めに取り掛かった。それを、
不思議な様子で眺めるレイは、それぞれの対応を興味深そうに見つめていた。

「そこまでにしておけ、ステラ。お前がMSを上手に動かせるって事は、私が一番良く知っているから」
「でも―」
「喧嘩は駄目だ、ステラ」

 ネオの額には、汗が滲んでいる。ベッド暮らしからは解放されたとはいえ、未だに彼の身体は全快には
程遠い。誰かに身体を支えてもらわなければ移動さえままならないのだ。
 少し痛みに顔を歪ませつつも微笑むネオに気付いたステラは、ネオを放って勝手に飛び出して行って
しまった事を後悔し、潮らしくなって小さな声で一言、ごめんなさいと呟いた。

 一方のロザミアの癇癪は、少し長引いている。それも当然だろう。いきなり誰とも知れない少女が降って
来たかと思えば、何の前触れも無しに自分のMSを使わせろと言われたのだ。生意気を言われれば、腹が
立って当たり前なのだ。尚更ロザミアとなればその怒りを鎮めるのも一苦労である。

288: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 01:07:42
「放してお兄ちゃん! アイツはあたしに生意気を言ったのよ! ザフトにお世話になってるくせに!」
「それを言ったら、僕やロザミィだって同じだろ? この人達に拾ってもらわなかったら、僕たちがこうして
ここに居られるわけがないんだから」
「そうだけど―でも、あたし達の方が先にここに居たんじゃないか!」

 まるで、体育会系のようなことを言う。空手部に所属していたカミーユには、先輩後輩の上下関係と
いったものの感覚は分かるつもりだが、流石にそれとは少し違う。しかし、このまままともな説得を続けて
も上手く行く気配がない。仕方無しに、奥の手を使わざるを得なかった。

「いつまでも喧嘩してるようじゃ、僕はもうロザミィを妹と思えないよ」
「そんな! どうしてお兄ちゃん、悪いのはあっちじゃない!」

 カミーユに言われ、ロザミアは泣きそうに表情を歪めた。
 分かってはいたが、少し卑怯だっただろうか。強化人間として情緒不安定な事を逆手に取り、ロザミアが
一番嫌がることを交換条件に言う事を聞かせる―正直、人間としてあまり褒められたやり方ではない。
しかし、口に出してしまった事はしょうがない。今回限りと割り切って、今はロザミアを宥める事に全力を
尽くすしかない。

「ステラと仲直りするなら、僕はロザミィを許す」
「う…分かったわよ。お兄ちゃんの意地悪……」

 渋々といった感じではあるが、何とかロザミアの癇癪を治める事に成功した。振り向けば、ネオもステラ
を説得してくれたのか、しかしやはり少し罰の悪そうな表情でこちらを覗っている姿があった。
 2人が歩み寄り、お互いに“ごめんなさい”を交わす。

「ほら、仲直りの握手―ねっ?」

 そこへレコアが入り、2人の手を掴んで強制的にではあるが、握手を交わさせた。2人は少しの間
しかめっ面をして見詰め合っていたが、やがてお互いに笑みを見せた。

289:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 01:26:46
規制かな?

290:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 01:35:15
支援、でなんとかなるんだっけ?

291:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 01:40:01
さるさんだったら無理ぽ

292:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 01:43:17
支援は力なんだ!支援は、このスレを支えているものなんだ!

293:sage
08/08/01 01:50:22
支援波

294:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 01:52:26
ロザミィとステラの喧嘩ワロスwww

295: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 02:01:36
「お互い、我侭なお嬢さんを持つと大変だな?」

 和解する2人を見守っているカミーユに、ネオが話しかけてきた。カミーユは振り向き―

「大変じゃないですよ。僕達は、彼女達が苦しまないような世界にしていなかなくちゃいけないんです。
そうでしょ?」

 カミーユの瞳が、ネオに何かを訴えかけてくるようだった。それは、互いに背負わなければならない
宿命が同じだからだろうか。
 ロザミアとステラという強化人間は、彼等に依存していかなければ生きていけないような脆弱さを孕んで
いる。それを支えていくのが、依存される側である自分達の役目なのだと、暗にカミーユは諭してきている
ような気が、ネオはしていた。

「あぁ、そうだな……」

 同意して頷くネオ。果たして、カミーユが本当に言いたい事は何なのかは分からないが、そう思うことで
自分を納得させた。
 このカミーユという少年は、不思議な感覚を持っている。言葉の中に、それ以上の意味が込められて
いるような、例えるならば仙人の様な悟りの境地に達しているような、そんな感じが垣間見られた。
 今のネオは、不確定な“ムウ”という事実との間で揺れ動く不安定な精神状態でもある。しかし、何故か
カミーユと言葉を交わしただけで、少しだけその悩みが軽くなったような気がした。

296:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 02:02:21
支援

297: ◆x/lz6TqR1w
08/08/01 02:04:15
最後の最後でさるさんとかどんだけー
今回は以上です

改行に少しだけ手を加えてみました
これまでが手抜きだったんですけどいかがなもんでしょう?


298:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 02:16:46
個人的には今までも別段読みにくいと思った事はないので特に……>改行
参考にならなくてお母ちゃんごめんね

アスランがやはりのどっちつかずっぷりでわろたw
ユウナとデュランダルの件は今回も感動的
本質の所ではそう本編と変わってないのにどのキャラも魅力的だ
GJでした

299:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 21:53:21
原作と違いアスランにとってメンタル的にかなり良い方向に物語が進んでるが
この状況下で最後まで理想的なアスランで通せるんだろうか

300:通常の名無しさんの3倍
08/08/01 23:20:03
やさぐれアスランわろすw

301:通常の名無しさんの3倍
08/08/03 00:25:42
このスレの寿命は8/8までです。
7日中には次スレを立てるか統合するかしましょう。

302:通常の名無しさんの3倍
08/08/04 18:06:09
とりあえず保守

303:通常の名無しさんの3倍
08/08/05 21:39:53
ユトナかっこい〜

304:通常の名無しさんの3倍
08/08/06 17:38:15
ウトナとユウナな

305:通常の名無しさんの3倍
08/08/06 22:37:55
……ウナトじゃね?


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