リレー小説「中国大恐慌」 at MITEMITE
[2ch|▼Menu]
[前50を表示]
450:創る名無しに見る名無し
18/12/19 20:27:50.17 boVanM0m.net
その頃メイファンとララはJ-20ジェット戦闘機に乗り広州へ向かっていた。
「なんか私とハオ兄をくっつけようとする輩がいるようだが……」
「あー、うん」
「はっきり言って私はアレを異性だと思って見たことは一度もないぞ」
「ふーん。へぇ〜」
「ララまで何だ」
「別にぃ」
「しかし本当にあのリー・シューフェンとアレが恋人同士なのか? いまだに信じていないが、私は」
「まだ信じてなかったんだ!」
「だって生き物の種類が違いすぎるだろ」
「ユニコーンとカマドウマぐらい違うって言いたいの?」
「うまいたとえだな」
ララは黙ってしまった。
「しかし美人は三日見れば飽きると言うが……」
「シューフェンさん、見飽きないよねぇ」
「唇をぷにぷにするのも飽きないな」
「あれはやみつき」
「しかしこのナイトフライトもなんだか毎日の楽しみになって来たよ」
「うん、私も私も〜」
「明後日はちょっと遅く飛ぶことになるがな」
「……」
「ジョー・サクラバ戦、見逃すわけにはいかん」
「メイファンさぁ」
「なんだ」
「あんたいっつもリウ・パイロンの試合がTVであれば必ず見てるけどさぁ」
「それがどうした」
「いっつも楽しそうなのが腹立つんだけど」
「楽しそうだと? バカ言うな。奴に対する憎しみを忘れないようにするために観ているだけだ」
「ならいいけど」
「フン」
「まさか、あんた」
「何だ」
「今でもまだ好きだとか」
「……冗談でも許さんぞ」
「ならいいけど……」
「着くぞ」

451:創る名無しに見る名無し
18/12/19 20:49:58.83 m5zx4KG9.net
「シン・シューフェンさんのご家族の方、いらっしゃいますか」
病室に入って来た看護婦が聞いた。
一同は顔を見合わせ、いないよな? そういえば来てないよな? と表情で語り合った。
「あ、あの……」シューフェンが口を開く。
しかしシューフェンの口からは言わせたくないとばかりにリウが言った。
「彼女のご両親は彼女が高校生の頃に事故で亡くなっています。親戚も遠くに住んでいて……」
「リ、リウリウ……リウ・パイロン!?」看護婦は今頃気がついて動転した。
「はい」
「シュシュシュシュシュフェシュフェ、シューフェンさんとはどういうご関係で?」
「恋人です」
「大スクープ!」
そう叫んでから看護婦ははっと我に返り、仕事口調に戻った。
「ではリウさん、ちょっと先生のところへ……」
「なんだろう?」
リウはシューフェンの顔を振り返ると、看護婦について歩き出した。
「ちょっと行って来るよ」
シューフェンは不安剥き出しの顔をしていた。
先生はリウに何を言うのだろう? あの人はこれから何を聞かされるのだろう?
どうすることも出来ずにシューフェンはリウを見送った。

452:創る名無しに見る名無し
18/12/19 21:00:25.86 m5zx4KG9.net
「さすがにちょっと早く来すぎたな」
メイファンはシューフェンの部屋を窓から覗き込むと、言った。
「まだ帰って来てすらいない」
シューフェンはいつも22時から22時半の間に就寝する。今はまだ20時前だった。
「ここで待つとしよう」
メイファンはベランダの隅に座り込んだ。
「なんか私達、覗き魔みたいね」ララが言った。

453:創る名無しに見る名無し
18/12/19 21:27:43.38 m5zx4KG9.net
先生はリウ・パイロンが入って来たのに驚き、応援していることを伝えると、話しはじめた。
「これはシューフェンさんのレントゲン写真なのですが」
「はい」
「どうも変な影が写っているのですよ」
「変な……影?」
「倒れた時に頭を打ったということなので頭のレントゲンを撮ったのですが」
「ええ」
「ここ、左の側頭葉のあたりに、黒い小さな影があるのです」
リウは目を凝らして見た。確かに不自然な黒い小さな影が写っている。ぼやけて写っているだけだが、何か無機質な感じがし、精密機械のようにも見える。
「何なんですか、これ?」
「これだけでは何とも……。シューフェンさんから何かの病気の話とか、聞いたことはありませんか?」
「いえ……。本人には聞いたんですか?」
「一応問診で、大きな病気をしたことはあるか? と、だけ」
「何と答えてましたか?」
「何もない、と。やたら大袈裟なくらいに強調していたのが逆に気になりまして……」
「大袈裟に……わざとらしいぐらいに否定した、と」
「はい」
「僕が聞いてみましょうか」
「いや、患者さんが自己判断で大きな病気の自覚症状があるのに隠してしまうというのは実はよくあることなんです」
「ははぁ。怖がってですか」
「まぁ、そんなようなものですね」
「では、どうすれば」
「明日、また来てください。CTスキャンにかけてみます。今日は点滴が終わったので帰っていただいて結構です」
「ありがとうございます」リウは嬉しそうに頭を下げた。

454:創る名無しに見る名無し
18/12/20 05:49:41.82 JO60towi.net
メイファンはベランダの隅に座って星空を見ながらララと会話していた。
「シューフェンさんの爆弾、もう要らないよね」
「そうだな。今日は準備していない。明日にでも除去するか」
「っていうか、メイ……」
「ん?」
「あれって本当に仕掛ける意味あったの?」
「嘘でよかったんじゃないかってことか?」
「うんうん」
「おいおい私はプロだぞ?」
「どういうこと?」
「それじゃハオ兄が使い物にならなかった時、シューフェンの首なし死体と一緒に監禁してやれないじゃないか」
「本気だったの!?」

455:創る名無しに見る名無し
18/12/20 05:53:02.88 JO60towi.net
ツイ・ホークはジョアンナを乗せて車で帰った。
リウはジョアンナの白いアウディを借り、シューフェンを送った。
信号で止まるたびにキスを交わした。
ルームミラーからぶら下がる黄色いミニオンのマスコットが楽しげに揺れていた。
やがて町を外れ、郊外へ出ると、シューフェンは運転するリウのベルトを外し、ジッパーを下ろした。

456:創る名無しに見る名無し
18/12/20 05:58:17.79 JO60towi.net
ハオは今日もパソコンでシューフェンのウェイボー(twitter)を見ていた。
未だに検閲により外部にメッセージを送信すること等は出来ないが、閲覧することは自由に出来た。
映画クランクアップの話とファンや関係者への感謝の言葉が書いてあり、ハオのことは今日も何も書いていなかった。
「照れやがって」

457:創る名無しに見る名無し
18/12/20 06:08:47.85 JO60towi.net
「リウ・パイロンって、今、西安にいるんだよね」ララが言った。
「そうだな」星空を見ながらメイファンが答える。
「もし町中でばったり会ったりしたら……ちゃんと殺してくれる?」
「いきなりはさすがに無理だ」
「どこかに監禁して、動けないように縛って?」
「そうだな」
「でも、いつもの仕事みたいに簡単に首をはねちゃダメよ」
「そうだな」
「メイはいつもあっさり首を斬って殺しちゃうからつまんない。もっともっと、じっくり時間をかけて、思い知らせないと……」
「仕事では効率を重視するからな」

458:創る名無しに見る名無し
18/12/20 06:12:22.33 JO60towi.net
シューフェンはリウの股の間に顔を埋め、湿った音を立てながらゆっくりと頭と手を動かしていた。
たまらなくなったリウは道路脇に車を停めた。
シートを倒し、彼女も押し倒し、キスをしながらパンティーの上から花弁を指でなぞった。
シューフェンはのけ反り、呻き声を上げた。

459:創る名無しに見る名無し
18/12/20 06:13:06.05 JO60towi.net
「シューフェンさん、遅いね……」
「何かあったのかな」

460:創る名無しに見る名無し
18/12/20 11:07:39.29 JO60towi.net
ハオはシューフェン個人のSNSを今日も検索した。
検索結果の一番上に『リー・シューフェンの恋人は散打王リウ・パイロン』の文字が出て来た。
「ん?」
記事を書いたのは『ちゃめっ子ナース』という看護婦らしく、話題のウェイボーとして取り上げられ、閲覧数がうなぎ昇りになっていた。
ハオは鼻で笑うと「なんか勘違いしてんなコイツ」と吐き捨て、コメントを送信したが当然のように検閲でブロックされた。
「正しくは『未来の散打王リー・チンハオ』ですよ」と何度も打ち込んではブロックされ、遂には諦めた。

461:創る名無しに見る名無し
18/12/20 11:15:16.01 JO60towi.net
リウ・パイロンとリー・シューフェンはジョアンナ・ポンの白いアウディの中で繋がっていた。
歪んだ三日月の明かりが二人の結合部を淫靡に照らし出していた。
「エロぉい……」嬉しそうに笑いながらシューフェンが言った。
リウはシューフェンの身体を気遣いながらも激しく腰を振った。
暗闇の中で白いアウディがぎしぎしと音を立てて揺れていた。

462:創る名無しに見る名無し
18/12/20 11:27:43.67 JO60towi.net
「まず、額に釘を刺そう」ララが言った。
「はは」メイファンが小声で笑う。
「それを金槌で思い切り打ち込んで」
「それじゃ死んでしまうぞ」
「じゃあ、それはなし。とりあえずぺニスは絶対に切り落とす」
「スパッといくのか?」
「ううん。ノコギリで、少しずつ少しずつ引いていく。一引きごとに身体を交代しよう」
「ララらしいな」
「苦しみはじっくりと与えなきゃ。後でノコギリ買おう。あ、帰って来た?」
ララはメイファンがぴくりとしたのでそう聞いた。
メイファンはベランダの隅から窓側へしゃがんで移動し、険しい顔つきになった。
「おい」何やら覚えのある気配に注意を払いながら、言った。「1人じゃないぞ」

463:創る名無しに見る名無し
18/12/20 13:20:50.83 S6I0RVnb.net
先生はシャン・パイロンが入って来たのに驚き、応援していることを伝えると、話しはじめた。
「これはオーウェンさんのレントゲン写真なのですが」
「はい」
「どうも変な影が写っているのですよ」
「変な……影?」
「倒れた時に頭を打ったということなので頭のレントゲンを撮ったのですが」
「ええ」
「ここ、左の側頭葉のあたりに、黒い小さな影があるのです」
リュウマチは目を凝らして見た。確かに不自然な黒い小さな影が写っている。ぼやけて写っているだけだが、何か無機質な感じがし、精密機械のようにも見える。
「何なんですか、これ?」
「これだけでは何とも……。オーウェンさんから何かの病気の話とか、聞いたことはありませんか?」
「いえ……。本人には聞いたんですか?」
「一応問診で、大きな病気をしたことはあるか? と、だけ」
「何と答えてましたか?」
「何もない、と。やたら大袈裟なくらいに強調していたのが逆に気になりまして……」
「大袈裟に……わざとらしいぐらいに否定した、と」
「はい」
「僕が聞いてみましょうか」
「いや、患者さんが自己判断で大きな病気の自覚症状があるのに隠してしまうというのは実はよくあることなんです」
「ははぁ。怖がってですか」
「まぁ、そんなようなものですね」
「では、どうすれば」
「明日、また来てください。CTスキャンにかけてみます。今日は点滴が終わったので帰っていただいて結構です」
「ありがとうございます」リュウマチは嬉しそうに頭を下げた。

464:創る名無しに見る名無し
18/12/20 20:54:55.53 JO60towi.net
部屋に入って来たリウ・パイロンはドアを締めるのも待ちきれずにシューフェンを抱き締めた。
二人はまだ愛し足りないというように激しくキスを交わし合い、もつれ合う。
カーテンの隙間から二人の少女は一つの目でそんな絡み合いを見ていた。
「なぜリウ・パイロンが……」ララが泣くような声で言う。
メイファンは黙って見ている。
リウは慌ただしくシューフェンの上着のボタンを外すと白いブラの上から胸を揉みしだいた。
「帰ろう……」ララが消えるような声でメイファンに言った。
「……」
「逃げよう……メイ」
「……」
しかしブラが外され、シューフェンの少し垂れた乳房が露になると、ララも黙り込んだ。メイファンの口からララの吐息が漏れはじめる。
メイファンは気配を殺し、じっと見ていた。
女の乳首に唾液をいっぱいにつけて浅ましく舌を動かすリウ・パイロンがたまらなく汚ならしいものに見えた。
ララの欲情が自分にも伝わってくるのがたまらなく気持ちが悪かった。
リウの顔がメイファンの中で歪む。馬乗りになり自分を殴ったあの時の、自分を蔑むような笑顔に変わり、
また自分を丸太で刺したあの時の、まるでモノを見るように見下ろす冷たい顔に変わった。
メイファンは口の端を歪めて笑うと、かすれた声で言った。
「今すぐ、ここで殺すか」
リウが激しく仰け反った。
背中から臀部にかけて巨大な爪にえぐられたような衝撃を感じ、シューフェンを守りながら振り返った。
部屋の中には誰もいない。気のせいか。気のせいであるわけがない、こんなものが。まるで殺気の実体化だ。
「なんだ?」
リウの額から汗が激しく滴る。窓の外に何かがいる。
窓の外で獰猛な野獣が今にも自分達に襲いかかろうと身構えている。
「隠れて」と手でシューフェンに合図をするとゆっくりと中腰で歩き出した。拳は顔の前で構えている。
カーテンの向こう、ベランダの隅に何かがいる。いや、この気配を放つそいつを自分はよく知っている。
しかし自分の知るそれよりも遥かにそれは成長し、巨大になっている。
リウの全身を冷たい汗が滴り落ちる。窓の外でそれはゆっくりと立ち上がり、動きを止めた。
リウはカーテンを掴む。拳を構え直す。一気にカーテンを開いた。
歪んだ三日月を背に、黒い工作員服姿の少女が真っ直ぐに立ち、こちらを見ていた。殺気はすべてその瞳から放たれているのだった。
両腕はぶらんと垂れ、闘う気の欠片も見えないが、こちらが気を緩めた瞬間、銃弾のごとくこちらへ飛んで来そうな予感をそれは秘めていた。
リウはカーテンを開ける前から頭にそれしかなかった名前を呼んだ。
「メイファンか」
窓ガラスの向こうでメイファンは何も言わず、表情も変えずに、ただリウにその両の目を向けていた。

465:創る名無しに見る名無し
18/12/20 21:12:05.90 JO60towi.net
「なぜここにいる?」
「……」
「なぜ殺気を放つ?」
リウがそう聞くとメイファンは目を見開き、眉を動かした。「なぜかわからないのか?」と聞きたげだった。
「なぜ喋らん?」
「……」
リウが急に、思い出したように泣きそうな顔になり、言った。
「まさか……お前……仕事で……? シューフェンを!?」
「違う」メイファンは初めて声を聞かせた。
シューフェンは恐る恐るクローゼットの陰から様子を窺った。
リウの向こう側、窓の外に女の子が立っているのが見えた。
黒ずくめの物騒な格好をして、険しい顔をしてはいるが、とても美しい顔をした好感を持てる子だと直観した。
「じゃあ殺気をしまえよ」リウはメイファンに言った。
メイファンはそれを聞いて少し面白そうに白い牙を見せた。
「お前がそれをしまわんと、俺もこの拳を下ろせんだろ」
「あの……」シューフェンが近寄って来て、言った。「上がってもらえば?」

466:創る名無しに見る名無し
18/12/21 11:10:09.31 MwQKZpgb.net
ゲームオーバー

467:創る名無しに見る名無し
18/12/21 15:30:54.71 lKi41jFo.net
シューフェンは気だの殺気だのは分からなかった。
ベランダにいることを除けば可愛い女の子だと思っていた。
どこか能天気で抜けているシューフェンはメイファンのもつ凶暴性に気づかず、
リウの制止も聞かずそのまま窓を開けてしまった。

468:創る名無しに見る名無し
18/12/21 18:05:43.86 dgTE9tOj.net
お茶を淹れながらシューフェンはチラチラと二人を見た。
長方形のテーブルの遠いほうの対面に座り、リウは少女からずっと目を離さず、少女はずっとどこを見ているのかわからない無表情でお互い黙っていた。
どういう関係なんだろう? 前の恋人? というには女の子は幼すぎる。
やっぱりこう聞くしかないかな、シューフェンはお茶とお菓子をテーブルに置きながらリウに言った。
「妹さん?」
その瞬間、少女が毛虫にでも触れたような顔をした。
「まぁ、妹分ってところだね」
リウが険しい顔で目を離さずに言った。

469:創る名無しに見る名無し
18/12/21 18:09:41.23 dgTE9tOj.net
メイファンはテーブルを一発叩いて抗議した。
「セフレです」と、ここにいるのがハオならそう言ってやりたいところだが、リウが相手ではそういう冗談も頭から消し飛んだ。
代わりに言ってやる言葉が見つからず、テーブルを叩いただけで黙りこくっている自分がなんだか恥ずかしく、目をうろうろさせた。
「どうしたの?」と心配するような顔でシューフェンがこちらを見ている。
それに気づいて必死で目を逸らした。
「それにしても」シューフェンがメイファンを見つめながら言った。「綺麗な子ね、ロン」
「はぁ?」メイファンは素っ頓狂な声を出してしまった。「めめめめっそうもない!」
そこで遂にシューフェンと目を合わせてしまった。
メイファンはリー・シューフェンのファンだった。
映画はまだ公開されていないものの、試写会のチケットはなぜか二枚ももうゲットしていたし、毎日のようにTVのバラエティー番組等で見る彼女をアイドルとして崇拝していた。
毎晩眠っているシューフェン様に会ってはいたが、起きているシューフェン様にお会いするのは初めてであり、ドギマギしないよう、出来るだけ見ないようにしていた。
TVの中でいつも見ているリー・シューフェンの麗しい顔が自分を見つめ、ぷにぷにの唇が言った。
「ううん。若くて肌はピチピチだし、健康的な色をしてて、いいなぁ。私なんか生っ白いし、こういう顔に憧れてたの。何といっても目が綺麗よ」
「めめめめっそうもないー」と繰り返し、メイファンは目の前のお茶をぐびぐび飲んだ。
「美味しいでしょ? 私の好きなお茶なの。康福茶(カンフーちゃ)っていって、健康にもなれるし幸せにもなれるお茶なのよ」
「けけけけ健康さいこー」
「こっちのお菓子も美味しいのよ。食べてみて」
「うまうまうまうま」
「ふふ。可愛い……。そういえばまだお名前聞いてなかったわよね」
「ラララ…ラン・メイファンですぅ」
ただの17歳少女になってしまった。
「あの、サインお願いしていいですかぁ」
そう言うとメイファンはキョロキョロし、自分の工作員服の胸に斜めに刺さっているアーミーナイフを2本抜いた。
「これにお願いしますぅ。あ、1本はメイファンに、もう1本はララさんへって書いてもらえますかぁ」
それを聞いてリウが何かを思い出して呆れたような表情をした。

470:創る名無しに見る名無し
18/12/21 18:11:24.70 dgTE9tOj.net
「なんだシューフェンのファンなのか」納得してリウは警戒を解いた。「しかしベランダにいるというのは行き過ぎだぞ」
リウはメイファンとの関係をどう説明するか悩んでいたので、さっきのシューフェンからの一言は非常に助かった。
こんな若い小娘を師匠だと言ったら返って変に疑らせてしまいそうだった。
メイファンからは殺気がすっかり消え去り、何の危険もないただの女の子に見えた。
しかしリウは完全に警戒を解いてはいなかった。
お茶を飲みながら談笑しながら、殺気の欠片もないところからいきなり隣の人の首をはねるのが殺し屋ラン・メイファンであると知っていた。
「しかしメイファン、大きくなったな」リウは特に胸のあたりを見ながら言った。「9年振りか」
メイファンは呆けたような顔をしてシューフェンの話を聞いており、リウの言葉はすべて無視していた。
「おい、聞いてるのか」
また無視をする。
「再会を祝してお茶で乾杯しようぜ」
するとメイファンは3本目の胸のナイフを抜き、何の感情も感じさせずに横に振った。シューフェンの首が胴体から外れて落ちる。そんな未来を見てリウは急いでテーブルを蹴り飛ばした。
お茶やお菓子が散乱し、シューフェンは悲鳴を上げ、メイファンは確かに手をかけていたナイフから手を離した。
「おい!」リウは息を切らしながら睨み、シューフェンを背中に隠れさせた。
「フン。さすがだな」殺し屋は涼しい顔で褒めて遣わした。「反応が段違いだ」
「試したのか?」
「まさか」メイファンは意外な言葉に驚いた顔をした。
「だろうな」
リウにはわかっていた。あのまま自分が止めずにいればメイファンは間違いなくナイフを振り切っていた。
「相変わらず何を考えているのかわからん! メチャクチャだ、お前は!」

471:創る名無しに見る名無し
18/12/21 18:30:10.09 dgTE9tOj.net
シューフェンはわけがわからなかった。
メイファンちゃんとお話していたら、いきなりリウがテーブルをこっちに向かって蹴飛ばした。
せっかく可愛いファンとお友達になったのに、なぜロンは邪魔をするの? DV夫の素質なの?
しかしメイファンちゃんも妙なことを怖い声で言い出した。
わけがわからない時は黙って二人の会話を聞く他ない。
「コラ」メイファンはリウを睨み、言った。「再会を祝すだと? 呪うの間違いじゃないのか」
「何の話なんだ」リウはオーバーアクションで説明を求めた。
「私達にしたことを覚えていないとは言わさんぞ」
「おい、ちょっと待て。さっきも言ってたが、『私達』というのはお前と、ララか?」
「他に誰がいるんだ」
「お前、17歳だろ? まだそんなことを言っているのか……」
「何だと?」
「いいか? ララというのはお前が作り出したもうひとつの人格だ。お前は二重人格なんだ」
「ほう?」
「お前は病気なんだ。医者には行ってないのか?」
「つまり、ララという人間は存在しない、と?」
「当たり前だ」
「ひどい……」メイファンの口から別の女性の憤る声が漏れた。
「ララという愛称をつけてくれたのはお前だぞ」メイファンが言った。リウは答えた。
「子供の遊びに付き合ってやっただけだ。しかし未だに子供のままだとはな。どうせその殺気の理由もガキみたいな理由だろ」
「私達にしたことを本当に覚えていないのか?」
「知らんね。俺は俺の歴史の中に他人から恨まれるようなことは数知れんほどして来ているからな、いちいち覚えてなどいない」
「おい……」
「それに、恨むのはそいつの問題であって俺の問題ではない。少なくとも俺自身は、他人から恨まれて当然だなどと自分自身を責めなければならないようなことは一度もしたことがない」
「おい!?」

472:創る名無しに見る名無し
18/12/21 18:41:38.57 dgTE9tOj.net
メイファンはリウ・パイロンが8歳の時の自分をレイプしたことをシューフェンに教えようとして言った。
「おい、この男はな……!」
しかしそこで言葉が止まってしまった。
もしもそれをリウが横から否定したとする。シューフェンは自分とリウ、どちらの言うことを信じるだろう?
しかもその上自分の恥を晒すことになる。
「あぁ、もしかして、あのことか?」
リウはようやく思い出したらしく、メイファンに言った。
「それだ」
メイファンはリウがはっきり言わないことから察し、肯定した。
「あのことにしても……」リウは平気な顔で言った。「お前が弱かっただけの話だろう」

473:創る名無しに見る名無し
18/12/21 22:30:25.10 dgTE9tOj.net
「メイファン」リウは少しだけ優しい顔になり、言った。「過去にこだわるな」
メイファンは何も言えなくなっていた。暫くリウが一人で喋り続けた。
「過去の恨みや憎しみに囚われて何になる? そんなものが何を産むと言うんだ」
「過去はただ糧とするべきだけのものだ。未来のために、な」
「お前がいつまでも後ろ暗い仕事を抜けられずにいるのも、過去に囚われているからじゃないのか」
「忌まわしい過去など忘れろ。お前の未来をもっともっと明るくすること、それだけを考えろ」

474:創る名無しに見る名無し
18/12/21 22:53:47.07 dgTE9tOj.net
「政治家の息子らしく」メイファンは喋り出した。「詭弁がお好きなようだな」
リウは黙って聞いた。
「責任逃れをしようとしているとしか聞こえん。素直に謝罪しようという気持ちはないのか」
「ない」
「謝る必要はないと?」
「どこにそんなものがある」
メイファンの顔が怒りと憎しみで歪みはじめた。
「大体」リウは言った。「謝ったら何がどう変わると言うんだ?」
「何!?」
「過去をなかったことにでも出来るのか?」
メイファンの歯軋りが激しい音を立てた。
確かに過去は変えられない。自分の気持ちも済むわけがない。
ただ、それでも、罪を罪と認めることで、少しでも相手の気持ちを軽くしてやろうとかいうことには思いが及ばないのだ、この未来バカは。

475:創る名無しに見る名無し
18/12/21 23:46:05.52 dgTE9tOj.net
「お前……」メイファンは牙を見せて笑った。「弱くなったよな?」
「何の話だ」リウは少し身構えた。
「こんなに弱い奴だったか? 怯えて損したぞ」
「だから何の話だ」
「TVでは『気』が見えんからな。今、対面して『気』を読んでみたらびっくりだ。まるで子ネズミじゃあないか」
「メイファン、それも違うぞ」
「あ?」
「『気』などというものは存在せん。それも子供じみたお前の妄想だ。ぼちぼち大人になれ」
「は?」
「『気』なんてものはマンガや映画の中だけに出て来るインチキだ。そろそろ卒業しろ」
「何を言う。お前だって『気』が使えるだろ」
「生憎そんな超能力みたいなものは持っていない」
「じゃあさっき私の殺気を感じ取った能力は? 私がシューフェンの首をはねる未来を見た能力は? 何だと言うんだ?」
「カンだ」
「く、首をはねる?」シューフェンが言った。
「カンだと?」
「あぁ。動物的なカンだ。そういうものは存在する」
「じゃあ私のもカンか? 私はカンで何でも武器に作り変えてしまえるのか? カンの鎧を纏い、身を守っている、と?」
「お前のは特別だ」
「特別なカンか」メイファンは馬鹿にして笑った。
「お前は……たぶん、産まれた時から人間として大切な部分が欠けている」
メイファンの笑いが止まる。リウは続けて言った。
「お前のはそれを補うために備わったスーパー・センス(超感覚)だ。それで説明がつく。少なくともマンガのような超能力ではない」
「はん!」メイファンは笑い飛ばした。「そんなに妖しい中国伝統武術がお嫌いか? 弱くもなるわけだ。存在するものを頑なに信じないのではな!」
「散打の王に君臨する俺に言う台詞ではないと思うぞ」
「所詮、表の王者」メイファンは自分を大きく見せる腕組みをして言った。「裏のトップに敵うわけがない」
「やるのか」
「ん? あー、なるほどそうか」
「何だ、いきなり」
「だからお前には見えないんだな」
「何の話だ」
メイファンはシューフェンをチラリと見ると、言った。
「『気』をカンだとか勘違いしているから、見えないんだな。大切な人の重大なアレが」
「何のことだ」
「教えてほしいか」
「あぁ」
「ひざまずいて謝罪したら教えてやらんこともない」
「ふざけるな」
「謝らんのか?」
「断る」
メイファンはこの上なく嬉しそうに顔を歪めて高笑いした。
「ならば後悔して生きろ。あの時メイファンに謝っておけば……と一生過去を引きずって生きろ」
「俺は後悔などせん」
「カスが」

476:創る名無しに見る名無し
18/12/22 00:15:25.65 +FcYSzai.net
見下した笑いを残してメイファンは窓に向かって歩き出した。
しかしその実、後悔するも何もないことを痛感していた。
リウが癌のことを知ろうと知るまいと、シューフェンはいずれ死んでしまう。
ただそれに気づくのが早いか遅いかだけの話なのだ。
リウは考えていた。俺が何に気づいていないって?
気づく……気づく……何のことだ。何に気づいて……
その時、ふいに昨日病院で見た黒い影のことが頭をよぎり、リウははっとした。
メイファンが窓を開けたところでリウが呼び止めた。
「待て! メイファン!」
振り向くとリウは泣きそうな顔をしていた。
「お前……まさかシューフェンの頭に何か仕掛けたか?」
「なぜお前が知っている?」メイファンは純粋に疑問に思って聞いた。
「やはりそうか!」リウの顔がだんだんと怒りに染まる。「何を仕掛けた?」
メイファンはそこでいいことを思いつき、悪魔のような笑いを浮かべて言った。
「そうだ。その女の頭に超小型爆弾を仕掛けた。明後日、試合が終わったらすぐ、西安の『施設』へ来い」
「ば、ばく……?」シューフェンが言った。
「そこで解除してやる。ただしお前が私に勝ったら、な」

477:創る名無しに見る名無し
18/12/22 02:19:13.16 fNbfNARw.net
「待て!」
リウは追いかけた。
しかしメイファンはベランダの手すりをひらりと飛び越えた。
下を見るともう自転車をシャカシャカ漕いで遠ざかっている。
「あのぅ」シューフェンが言った。「ここ24階なんですけどぉ」

478:創る名無しに見る名無し
18/12/22 08:20:16.61 tH/QIiQR.net
メイファンは帰るとジャン・ウーに酒を付き合わせた。
「まさか、まさかだぞ!」メイファンはぐでんぐでんになりながらヤケクソ笑いをする。
「まさか本当に恨まれていると思ってなかったとはな!」老酒をあおる。
「お前がレイプされたのは、お前が弱いからだ」ジャン・ウーがリウ・パイロンの真似を始めた。
「ハハハ」
「未来を見ろ、メイファン! お前をレイプした過去は俺の糧となり、俺の輝かしい未来となっている」
「ククク……」
「お前をレイプしたから俺はこんなに強くなった。お前に感謝する理由はあれど、お前から恨まれる謂れはない!」
メイファンはジャン・ウーの首をはねた。

479:創る名無しに見る名無し
18/12/22 08:50:47.31 J1iiptBi.net
次の日の朝は講師二日酔いのため、朝特訓は中止となった。
「メイファンさん、メイファンさん」
ハオが駆けてきた。
「なんだ」
「外出して来てもいいっすか?」
「いいぞ」
「やっふぅ!」
「ただしこれは置いて行け」
メイファンはハオのズボンを踏んで脱がせると、尻に挟んで隠していたスマホを奪った。
「スマホ決済できねーと金ねーんだよ!」
「300円でいいか?」
「よくねーし日本円で渡されたって困るんだよ!」
「ではやめておけ」
「っていうかさぁ、俺、ここに来てもう半年ぐらいになるよな?」
「そんなにいるのか。奇跡だな」
「メイファンさん、未払い金が相当溜まってますよ?」
「未払い金だと?」
「ぼく、あなたに『仕事をしないか』と誘われて来たんで。当然あなたには賃金を支払う義務が……」
「ハオ、お前、何人殺した?」
「は?」
「私らの仕事は『1殺なんぼ』の歩合制だ。見習いのお前に支払うべき金はない」
「歩合制なの!? 報酬制ですらなくて!?」
「むしろお前のほうが金を払うべきなんだぞ? これだけの特訓を無料で受けられていることをむしろ有り難く思え」
「あの酷い仕打ちに金払うの!?」
「どうしても金が欲しいなら、この建物の裏にグッチやルイヴィトンの偽物を作っている工場がある。そこでバイトしろ」
「国家主席自ら作らせてたの!?」
ふいに優しい顔つきになるとメイファンは、どこからともなく500元札を取り出すとハオに渡した。
「午後の特訓までには帰って来いよ」
ハオはウキウキとしながら町へ繰り出した。その後ろ姿を見送りながらメイファンは言った。
「あいつを見てると、ほっとするな」

480:創る名無しに見る名無し
18/12/22 09:09:28.15 tH/QIiQR.net
中国で本当に「クリスマス中止のお知らせ」 警察「クリスマスしてる人を発見したら通報するように」
2018/12/19 18:38ゴゴ通信

【簡単に説明すると】
・中国「クリスマス中止のお知らせ」
・中国当局中国当局が中国各地での「クリスマス中止令」が下された。
中国、北京近くの都市である廊坊市都市局は、街中の店が路上にクリスマスツリーを立てたり
装飾や照明を照らしたりするなどのクリスマスプロモーションを禁止するようにと命令。
社会を秩序を乱すという理由で屋外のクリスマス公演や宗教活動をすることも厳しく禁止しており、
市民がこれを発見した場合、すぐに通報するように呼びかけた。
クリスマスイブの24日夜には露店がクリスマスの靴下やリンゴ、サンタクロースの人形などを売ることを大々的に取り締まる方針。
他の地方政府の教育当局は、各学校に送った公文書で「クリスマスを厳しく禁止し、
学生がクリスマスの活動に参加せず、プレゼント交換もしないようにしてほしい」と指示。
中国での「クリスマスとの戦争」は、昨年から本格化してきた。
一昨年までは、中国では普通にクリスマスを楽しんでおり、その様子を現地メディアが報じている。
しかし、昨年10月の第19回中国共産党全国代表大会で、習近平国家主席が、中国文明の偉大な復活を唱えた後、
思想統制を強化してから、雰囲気は大きく変わり、クリスマスや宗教活動に規制が掛かった。
クリスマスだけでなく、地下にある教会までも閉鎖されるなど習近平共産党は自身以外を崇拝することを許さないようだ。

481:創る名無しに見る名無し
18/12/22 19:00:54.71 K0vJO8vv.net
                    |ミシ   __,,,〜,__ ! 
                    (6ミシ  ,,(/・)、 /(・ゝ |  
                     .し.    "~~´i |`~~゛ .i   ほいさっ ほいさっ
                     ミ:::|:::::........ f ・ ・)、 ...:::i
                      丿ヽ::::::::::::-=三=-:::/
     ____          /   ヽ:::::::::::゛::::ノ/`ヽ、
    /:::::::::::::::::::::\       ./ |    :;  ̄ ̄ ̄,    ヽ、
  o /::::       :::ヽ o   .l  io,'  :;l´      、    i、
   O   \、 ,/  ::.il O     ヽ/ ̄´ `ヽ、 ;o', _;メ、    ヽ
   |::⊂《;.・;》 《;・;.》つ      /      `゙'''''''" ;;;;;ン、_    !
   (6.  ⌒ ) ・・)'⌒ヽ 6)      i っ       ;;;;;;;〈 /   ノ
   |  ┃iuUuui┃  |   ,-一!;;:,,     _;;;;:::''''-ヽ/   /   ズボボッ
   |  ┃|,-v-、|┃  |   i ,,,;;;;:;ヾξζ/、`、`/ ̄` ノ ≡≡   ズボボッ
   \  ヽニニノ  /|---┴―'´ ̄`ヽξ 、`、`i l_i_/ ̄ヽ、≡≡
     `┬― ''´,. -'_           !ッ、__`、`、` 、`、 ヽ
      / /  ヽi  i_, ---―ヽ、   l ζ  `゙'''ー /゛ , , , ノ
     / /     i  !     /  ハ   i、  ._ノ゙ ̄l ,' ', ,' ,/
   -―'  ノ   -―'  ノ    i_ノ一ヽ   l ̄ _,/´`i ', ' '/
 
12月24日の午後9時から翌25日の午前3時までの6時間は
1年間で最もセックスをする人の多い「性の6時間」です。
貴方の知り合いや友人ももれなくセックスをしています。
普段はあどけない顔して世間話してるあの娘もセックスをしています。
貴方が片想いしているあの綺麗な女性もセックスをしています。
貴方と別れたあの娘も貴方がその娘にやってきたことを別の男にやられています。
貴方の将来の恋人や結婚する相手は、いま違う男のいちもつでヒィヒィ言っています。
すべてを諦めましょう。そして、ともに戦いましょう

482:創る名無しに見る名無し
18/12/22 20:03:09.87 Y7u1Oqi4.net
リウはシューフェンを昨日の病院ではなく、広州中央警察へ連れて行った。
今朝の飛行機で西安へ戻る予定だったのをずらし、夜の飛行機を予約した。
爆発物探知機を使用し、シューフェンの頭の中の黒い影の正体を明らかにしてもろうのだ。
リウは正直、半信半疑だった。メイファンは昔もよくそういう嘘を言った。
子供じみた悪戯にもほどがある。大体シューフェンの頭に爆弾を埋め込まなければいけない理由がさっぱりわからなかった。
芋饅顔の刑事と黒縁眼鏡をかけたカマキリが出て来て、言った。
「確かに爆発物反応がありました。爆弾です」
リウは目の前がくらくらと歪むのを感じた。「本気かよ……」
「すぐに爆発物処理班を呼び、処理させますので」
「いや、ちょっと待ってください!」
「何でしょう?」
「奴がどこかで見ているかもしれない。うかつに刺激すると起爆されてしまう」
「ふむ?」
「それに下手な手術で頭に傷痕を残されても困る」
「? あの……あなたはこれを埋め込んだ人物に心当たりが?」
「ある。というか確定している」
「教えていただけますか。我々警察で対応いたしますので」
リウは『ラン・メイファン』と言いかけて呑み込んだ。その名前は誰も知らないことにもすぐ気がついた。
奴には特に警察関係者なら知らない者はいない通り名があった。ジャン・ウーが言ってたな、なんだったっけ……と記憶をたぐり、思い出した。
「黒色悪夢だ」
「黒色悪夢!」
「それじゃ私達は手出しできないな」
習近平直属の用心棒であり、殺し屋でもあると噂される凄腕の武術家。
その姿を見た者は皆死んでいるので、誰もその姿を見たことはなく、幽霊のような細身で長身の男とも、髭を蓄えた大男とも言われていた。
「私が奴のところへ行き、起爆装置を奪って来ます。爆弾の除去はそれからお願いします」
本当は戻るつもりはなかった。一度蓋を開けて見事に醜い傷痕を残さず閉めているメイファンにやらせる。
「黒色悪夢を知っているのですか!」
「どんな奴です?」
「あの……。えぇと、国家機密なんで」
「ああ! そうか!」
「うぁぁ知りたい!」

483:創る名無しに見る名無し
18/12/22 20:20:13.65 Y7u1Oqi4.net
シューフェンはリウが戻るまで警察が保護することになった。
「爆弾の威力が不明なので」と、爆発しても他に被害の及ばないジュラルミン壁の独房に軟禁された。
TVは観られるが、明日のリウの試合は観に行けないことが確定した。
囚人のようでは決してないが、まるで危険物を扱われるように誰もがシューフェンに近寄ろうとしなかった。
リウは警察署を出ると、ぶるっと身を震わせた。
「メ、イ、ファ、ァ、ァ、ァ、ァァァァァン……!」
空に浮かぶ三日月が満月なら狼男に変身してしまいそうだった。

484:創る名無しに見る名無し
18/12/22 21:10:57.73 t+25obRp.net
リウは表向き、余裕を見せているがメイファンのことが怖かった。
昔から何を考えているか分からない、底知れない怖さがあった。何をするか分からない乱暴なガキ、じゃじゃ馬娘を通り越して小さな核弾頭と言った印象を持っていた。

485:創る名無しに見る名無し
18/12/22 21:20:15.05 9IhuEVwN.net
ハオは夕方には帰って来た。今日も収穫はゼロだった。
インターネットカフェに入ってシューフェンのSNSに書き込もうとしたが、監視でもされているのかそこでもブロックされた。
シューフェンのスマホに公衆電話から連絡しようと思ったら番号を覚えていなかった。
ハオはスマホからシューフェンの番号をメモすると、ベッドに寝転んだ。明日こそこれで電話連絡できるぞ。
寝ようと思っていたらすうっとドアが開き、女の子が入って来た。目を凝らして見たらメイファンだった。

486:創る名無しに見る名無し
18/12/22 21:31:12.81 9IhuEVwN.net
「ハオ兄、一緒に寝てもいい?」
そう言うと返事も待たずにメイファンはハオの布団に潜り込んで来た。
アニメ柄のパジャマを着ており、黒髪からシャンプーのいい匂いが漂う。
ぬいぐるみか抱き枕を抱くようにハオにしがみつくと、不安そうな声で言った。「忘れさせて」
『気』の鎧は解いていた。少女らしい甘酸っぱいフェロモンが漂って来る。
「せっくすして、ハオ兄」

487:創る名無しに見る名無し
18/12/22 22:45:58.96 NXHiCNd+.net
リウのトレーナーの楊はジムで一人、ヤケ酒を浴びていた。
「今日の昼には戻るっつってたよな〜、リウ?」
「夜に帰って来て、しかも何もせずに上がりやがった……」
「試合は明日だぞ!? 明日!!」
「はいっ! やる前から負け確定〜w」
「もう俺、あいつのトレーナーなんかやめだやめ」
「本を書いてやる。タイトルは何がいいかな〜」
「女で身を滅ぼした散打王」?
「散打王をダメにした悪女」?
「はははベストセラーで俺、大儲け〜www」

488:創る名無しに見る名無し
18/12/23 05:24:36.43 REQM3gfa.net
「なにかがおかしい。」
目の前のメイファンに対しハオは思った。
いつもの彼女なら家では衣類など着ないし、風呂から上がりでもこんな良い匂いはしない。
後者に関してはいつもメイファンの体を洗っているハオにはよく分かっていることだ。

489:創る名無しに見る名無し
18/12/23 06:34:20.35 jecJvK+i.net
それにいつもは先にベッドに入って寝ているか黙って入って寝るかで
そもそもいつものメイファンならば「せっくす、して?」なんて口にしない。

490:創る名無しに見る名無し
18/12/23 07:13:47.52 G4XFajDN.net
「お前、誰だ?」
ハオが聞くと少女は胸に抱きついていた顔を上げ、潤んだ瞳で至近距離から見つめて来た。
「メイファンだよ」
「しっ……しかし!」
「メイファンの中にはララの他にもいっぱいいるの。自分でもどれがほんとうのメイファンなのかわからないの」
そう言うとさらに顔を近づけて来る。
「私は処女じゃない。でもキスの味は知らないんだ。教えてくれ、ハオ兄」
濡れた瞼を閉じて、桃色の唇を半開きにして、彼女は愛してもらえるのを待っている。

491:創る名無しに見る名無し
18/12/23 08:31:18.12 6qX9Owum.net
「うおぉぉぉもうどうにでもなれぇぇえ!」そう叫ぶとハオは突進した。
小さなメイファンの唇を大きな口で塞ぐ。舌を突っ込み、ぐちゅぐちゅと音を立てて動かすと、メイファンのほうからも舌を絡めてきた。

492:創る名無しに見る名無し
18/12/23 08:56:33.56 6qX9Owum.net
パジャマのボタンを全部外し、ばっと開くとすぐにおっぱいが出た。
チョコレートプリンの上に小さなピンク色のアーモンド粒がちょこんと乗っている。
さんざん見慣れているはずのそのおっぱいが、今夜はやたら美味しそうな御馳走に見えた。
右手で乱暴に揉むと、固そうに見えたおっぱいはいとも容易くハオの手の動きに合わせ、ぷりんぷりんと揺れた。
たまらずアーモンド粒に吸い付き、舌でいじめるとメイファンは「あっ」と声を上げた。
舌を這わせながら下のほうへと移動を開始する。
メイファンの身体はボディーラインから想像する通りの柔らかさだった。
格闘技をやっている女の子の身体だとは思えない柔らかさ。
まるで猫のようにしなやかで、ハオの腕の中でそれが艶かしい反応で揺れた。
ワイルドな陰毛を唇に挟んで引っ張り、脚を開かせる。
そしてその間を覗き込むと、ピンク色の割れ目からはもう大量の愛液が溢れ出していた。
それを指で掬って、小さいが形のよいクリトリスに塗ってやる。指で円形にぐりぐりしてやるとメイファンはのけ反り悲鳴を上げた。
「よーし、もっといじめてやるぞ。日頃のお返しだ」
ハオはそう言うと舌を固く伸ばし、割れ目を上下にぴしぴしと攻撃した。クリトリスを同時に優しく指で愛撫する。
メイファンの腰が浮く。頭と爪先だけでブリッジをし、お願いもっととねだるように、股間をハオに押し付けてきた。

493:創る名無しに見る名無し
18/12/23 09:08:03.67 6qX9Owum.net
「俺のもしてもらおうか」
ハオがそう言って体勢を入れ換えようとすると、メイファンのほうから上に乗り、押し倒してきた。
「ハオ兄の如意棒、こんなに大きくなってるよ」
意地悪そうな笑顔でそう言うと、指でくすぐり、握って上下にさすると、すぐにぺろぺろと音を立てて舐めはじめた。
金玉から先っちょまで舌を行ったり来たりさせながら指で愛撫する。そのたびにメイファンのほっぺたや顎がハオの太ももやお腹に心地よく当たる。
「く、口に入れてくれぇぇぇ」
ハオが泣くようにそう言うと、メイファンは「フフン」と勝ち誇ったように笑い、先っちょに少しだけ吸い付いた。
「は、早くぅぅぅ」
ハオがちんちんを突き出して催促するとメイファンは素早く顔を引き、ニヤリと笑うといきなり口の中に全部入れた。

494:創る名無しに見る名無し
18/12/23 09:31:36.57 6qX9Owum.net
「ハァ、ハァ、ゴムなんかいらんだろ?」
鼻息を荒くして如意棒を割れ目にあてがうハオにメイファンは嬉しそうに言った。
「いいから早く入れて」
小さな割れ目をかき分けていきなり奥まで挿入した。
ヒダが絡み付き、大量の愛液が飛び散った。
「あぁ、こりゃえぇわー!!」
ハオはのっけから絶叫し、メイファンは普段からは信じられないような甲高い声で鳴いた。
「おおっ! おおっ! シュ……メイファ〜ン!」
「きゃふん! きゃふん! きゃふん!」
「腰が止まらん! 腰が止まらん!!」
「きゃっ……ふん! きゃふん! きゃゃゃーっ!」
ハオはメイファンの両足首を掴んで持ち上げ、天井を仰ぎながら激しく突きまくった。
視線を下に戻すとベッドの上に自分のちんぽを突っ込まれて喘ぐ美少女のすべてが丸見えだ。
メイファンの興奮と性感は既に最高潮に達てしているように見えた。
よーしこれ俺、イカせてやれるんじゃね? スタミナには自信があるぜ!
腰の動きをさらにさらに早めると、興奮に我を忘れたメイファンの手刀が飛んで来て、ハオの右腕を関節のところで綺麗に両断した。
「えっ?」
それでもハオの腰は別の生き物のように動きを止めず、メイファンはハオの右腕を愛おしげに抱き締め、
手の甲の皮を牙で削り取り、出て来た血をちゅーちゅーと吸ったり舐めたりしている。ハオは腰を動かし続けながら、困った顔をして言った。
「ちょっ……」

495:創る名無しに見る名無し
18/12/23 09:51:07.26 6qX9Owum.net
すぐにララが出て来て治療をした。
ピューピューと噴き出して止まらない腕の血をまず一時的に止め、そこに切断された腕の先をくっつけた。
「っていうかララ、起きてたの?」
「うん。お兄ちゃんのちんぽ、私もメイと一緒に感じてたよ。凄かった」
そう言うと白い少女はベッドに仰向けに寝転んだ。
月明かりの下、綺麗な髪が枕の上で乱れ、お椀型のおっぱいはどんぶり型に変身していた。
「次は私を見ながらしてください」
そう言ってララは妖艶に微笑んだ。
甘酸っぱかったフェロモンは強烈なほどの甘さに変わり、ハオに襲いかかった。
しかしそれでもハオの如意棒は大きくなることを忘れ、干し柿の食べ残しのように萎びきっていた。
「で、できるかーっ」
恐怖が性欲を凌駕したのである。

496:創る名無しに見る名無し
18/12/23 10:00:51.56 syOLJsFd.net
お前らの両手足をいただく!
                     ,.,.,.,.,.,.,.,.,__
                   ,;f::::::::::::::::::::::::::ヽ               .   i ! .
                   i/'" ̄ ̄ヾ:::::::::::i           . :    ,ノ キ、 : .
                   |,,,,_ ,,,,,,_  |::::::::|  ---‐=======´,.  , ==
                  (三);(三)==r─、|              ,./  !|l´. :
                   { (__..::   / ノ′              ,.r'.::1   i l|
                   ', ==一   ノ             ,.r'´:::::::;!  i |l
                    !___/ \         ,.-'´::::::::::::::::;r'゙  ,' |l
                  _/ | \    /|\_     ,.r'´::::::::::::::::::::::::i  / ll
               / ̄/  | /`又´\|  | ̄,.-'´:::::::::::::::::::::::;:- '゙   /  .ll
              ,/   \  |  .!;;;;!  | ,.-'´:::::::::::::::::::::::::::::/     /   l!
             /     /;;;;;;;;|  !;;;;! ,.-'´:::::::::::::::::::::::::::::;:- '   , '    l
            ./'    /;;;;;;;;;;;|  l;;;;:-'´:::::::::::::::::::::::::::::::::;f´    , '      !
            /    /';;;;;;;;;;;;;;| ;-'´::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;ノ    ,:'
          /    ,i゙ ;;;;;;;;;;;;;;:-'´::::::::::::::::::::::::::::::::::;f´       /
         /     ! ;;;;;;;;;-'´:::::::::::::::::::::::::::::::::;:- '゙       /
         ム-.、   /. ;:-'´:::::::::::::::::::::::::::::::::;;;ノ      ,. '´

497:創る名無しに見る名無し
18/12/23 10:03:42.10 ZqzIMN5p.net
>>496がハオである

498:創る名無しに見る名無し
18/12/23 10:10:02.53 FOCQpZ5O.net
ハオはしばらくの間インポになってしまった。

499:創る名無しに見る名無し
18/12/23 11:04:15.44 RHgqWK10.net
翌朝、ララが目を覚ますとハオは向こうを向いて眠っていた。ララはなんだか寂しくなって寝起きの顔を曇らせた。
「おはよう、ララ」メイファンの声が自分の口を動かして言った。
「おはよう、メイ」
「昨夜はすまん」
「何が?」
「とても眠れなくて、遂にお前との約束を破ってしまった」
「いいよ。あたしも気持ちよかったもん……。でも最後までしてほしかったな」
「あぁ」
「でも、よかったの? シューフェンさんに一途なお兄ちゃんじゃなくしてしまって……」
「いや、ハオ兄は私達のことを思い、私達のために抱いてくれたんだ。あれはハオ兄の優しさだ」
「単に誘惑に負けただけに見えたけど……?」
「ハオ兄は私達のためにビルの111階から飛び降りないだろう。しかしシューフェンのためなら飛んだ。あれが全てだよ」
「そうかなぁ」
「私よりお前はよかったのか? お前は本気でハオ兄のことを……」
「いいよ。所詮ヴァーチャル体験みたいなもんよ。ちょっと悔しいだけ」
「ん?」
「お兄ちゃん、ララに変わったとたん、しなしなになっちゃった」
「あれは私が斬っちゃったからだろ」
「それにね。私も、シューフェンさんに一途なお兄ちゃんのことが好きなの。私に振り向いちゃったら、もうそのお兄ちゃんのことは好きじゃないかもしれない」
「……」
「どうしたらいいんだろうね」ララはそう言うと涙を拭き、その手でハオの大きな背中をそっと触った。

500:創る名無しに見る名無し
18/12/23 11:20:29.73 RHgqWK10.net
ハオは動着に着替え、すごく嫌そうな顔をしながら道場に入った。
最近なぜか室内でも服を着るようになったメイファンが、黒いチャイナ服を着て既に待っていた。
「昨夜は……どうも」と俯くハオを無視してメイファンは言った。
「ハオ、今日がお前の散打デビュー戦だ」
「は? 聞いてねぇ……」
「今日、リウ・パイロンがここへやって来る。お前は奴の攻撃を捌き、遠慮なく拳を打ち込んで、殺せ」
「は!? いきなり王者決定戦!?」
「嬉しいだろう?」
「こっ、心の準備が……」
「そのために、特訓だ。60%本気の『牙突』を捌いてみせろ! 行くぞっ」
「あっ、あの……」
いきなりメイファンの棒を額に喰らい、ハオはばたりと倒れた。

501:創る名無しに見る名無し
18/12/23 18:12:18.25 2kEZnbpU.net
「ララちゃんっ、明日の夜は空けておいてねっ」
お茶を持って来たララに習近平が踊りながら言った。
「え。何があるの? ピンちゃん」
「またまたぁ〜トボケちゃってぇ〜明日は恋人達のピンクな夜、クリトリスイボ……じゃなくてクリスマスイヴだろぉ?」
「えー! だって中国、クリスマス禁止じゃん」
「誰がそんなこと言ったんだ」
「アンタじゃん!」
「いいんだ。庶民はクリスマス禁止。僕らはクリトリス満喫でいいんだ。国家主席の私が許す」
「独裁者だなぁ」
「その通りだもんっ!」
「でも、たぶん今夜起こることで明日はそれどころじゃないと思うよ〜?」
「今夜? 今夜何が起こると言うんだね?」
「んー……」
「?」
「ヒ・ミ・ツ」明らかにララの下手な物真似をするメイファンの声が言った。
「おのれメイファン〜! またワシらのスイート・タイムの邪魔をしよるか!」

502:創る名無しに見る名無し
18/12/23 18:34:50.01 2kEZnbpU.net
ハオは自室で一人、パソコンで酷(you ku。中国YouTube)で動画を見ていた。
珍しくエロ動画ではなく、リウ・パイロンの過去の試合動画だ。
「全てデカイ攻撃でKO勝利しているな。喰らってる奴らはアホなのか?」
ロングフックやら豪快な投げ技やら飛び蹴りやらも多いが、中でも最も多いパターンがアッパーによるフィニッシュだった。
「こんな動きが大きなモン、捌きの天才であるこの俺様が喰らうかよ」
しかもただのアッパーではなく、地を掠めるようなやたら低空からのアッパーである。
しばらく見ていてハオははっはっはと笑い出した。
リウのデカイ攻撃をまず捌く、体勢の崩れたリウの懐に飛び込み、自慢のショートレンジの連打を叩き込み、フィニッシュはチンハオ流八卦掌。
「参ったな、負けるイメージが湧かねぇや」

503:創る名無しに見る名無し
18/12/23 18:47:41.48 jecJvK+i.net
ハオは黙り込みしばらく動画を見続ける。
その視線はリウ・パイロンのファイトそのものではなく、その容姿に移っていた。
ハオはホモではないはずだが、リウ・パイロンにウットリとしていた。

504:創る名無しに見る名無し
18/12/23 18:50:55.21 2kEZnbpU.net
ジョー・サクラバは気合い十分だった。
日本で名前を知られていない相手とは言え、リウ・パイロンを舐めてかかる気はまったくなかった。
「萬漢全席は汚ぇ味だったし、中国美女とやらは整形アゴの鶏ガラみてぇな女だった……」
姿見の前でジャブの素振りを連打する。
「てめぇだけは楽しませてくれよ? このジャブでてめぇの大振りを封じ、関節技に持ち込んで決める!」
そこへゴージャス哀川が入って来た。
「おぅ、ゴージャス! 勝ちのイメージ、見えたぜ!」

505:創る名無しに見る名無し
18/12/23 19:30:40.27 2kEZnbpU.net
TV画面に大きな白文字で両者の名前がローマ字で浮かび上がる。
Liu bai long
VS
Joe Sakulaba
ももクロの「ココ☆ナッツ」に乗ってまずジョー・サクラバが入場した。
解説者がその輝かしい戦績、戦闘スタイル、明るい人柄、五歳の娘にはからっきし弱いことを紹介し、
サクラバがリングに上がりガウンを脱ぎ捨て、両手を高く上げるとアウェーながら観衆は一層沸き上がった。
次いでリウ・パイロンの登場である。
台湾のデスメタル・バンド、反中華人民共和国を叫ぶ閃霊楽団の「皇軍」に乗って現れると、観衆はマックスで沸き上がった。
しかし何だかその入場姿には力強さが感じられない。
高く掲げた両拳を打ち鳴らしながらのいつもの登場に観衆は沸いたが、解説者は不安そうに言った。
「こんなにだるそうなリウは見たことがありません」

506:創る名無しに見る名無し
18/12/23 19:55:01.44 2kEZnbpU.net
リングに上がり、被っていたフードを脱いだリウの顔を見て、観衆はざわざわとし始めた。
頬がこけ、目にはまったく生気というものがない。
口は乾ききったように開け放たれていた。
しかしやがて観衆が目の前の現実を打ち消そうとするようにリウ・コールが始まる。
「Liu! Liu! Liu! Liu!」
その会場を揺るがす声援はしばらく鳴りやまなかった。

507:創る名無しに見る名無し
18/12/23 20:36:02.86 2kEZnbpU.net
ゴングが鳴った。
しかしまずは予告通りのお遊びである。
青いトランクスのサクラバが両腕をぶらんとしてそれを待つ。
赤いトランクスのリウがゆっくりと右腕を上げ、オープンフィンガーグローブを嵌めた手でサクラバの額に軽くデコピンをした。
次いですぐにサクラバの眼前で両手をポンと優しく打って猫だましをする。
それをサクラバは緊張した眼差しで見つめていた。既に額から大量の汗が滴っている。
リウが最後のお遊び『壁ドン』を決める。
なよなよした動作でサクラバの右側の何もないところをドンと突いた。
「よし! 来いや!」サクラバが吠えると同時に闘志を燃え上がらせた。
しかしリウはやはり生気がなく、壁ドンから引いた腕をダランとさせている。
最前列席で鼻クソをほじりながら、リウのトレーナーの楊が言った。
「女と何発やったか知らねぇが、脱け殻だぜ。照明が黄色く見えてんじゃねぇか?」
来ないならこっちから行くぜとばかりにサクラバが前に出た。
振りの小さなジャブでまず様子を窺った……つもりだった。
しかししっかり動きを見ていたはずのリウ・パイロンが、眼前から消えた。
サクラバの下のほうで何かマグマのようなものが音を立てていた。
メラメラと音を立てて何かが沸き上がって来る。
一瞬が数秒に感じられるスローモーションの世界で、それは恐ろしいほどのスピードで地底から襲いかかって来た。
狂戦士のような形相のリウ・パイロンがそこにおり、その溶岩のような拳が真下から飛んで来た。
ここからの数時間のために全ての力と闘気、そして怒りを溜めていた。
ここからは体が張り裂けようと構わない、100%全開だ。
サクラバはとっさにガードしたが、超低空アッパーを受けて185cm86kgの体が2m浮き上がった。
浮き上がったその足を掴むと、リウはマットに思い切り叩きつけた。
叩きつけるとすぐさまその背中に跨がり、逆エビ固めに入る。
レフェリーがカウントを始めるが、サクラバは既に泡を吹いて失神していた。
観客席最前列でゴージャス哀川と一徹がただ大きく口を開けていた。
試合終了のゴングが鳴った。開始からわずかに13秒であった。
腕を取って高く持ち上げたレフェリーをリウはロープまで投げ飛ばした。
白目を剥いてゴリラのように牙を剥くと、誰も知らないその相手の名前を吠えるように叫んだ。
「メ、イ、ファァアァァアァン!!!」


次ページ
最新レス表示
スレッドの検索
類似スレ一覧
話題のニュース
おまかせリスト
▼オプションを表示
暇つぶし2ch

1638日前に更新/652 KB
担当:undef