リレー小説「中国大恐慌」 at MITEMITE
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150:創る名無しに見る名無し
18/12/02 14:54:51.63 b12H6zKA.net
『ハイ、ハオ。私はビーフンよ。お手紙ありがとう。いつもあなたから元気を貰っています』
「なかなかいい書き出しだな、我ながら」メイファンは得意になった。
『ところで去年の11月20日に一緒に食べに行ったものって何だったっけ? 覚えてる? 覚えてたら教えて? 気になって眠れんのだ』
「これだけははっきりさせとかんとな」メイファンは>>116のことが気になって仕方がなかったのだ。
筆が乗って来たところでララが口を挟んだ。
「ねぇメイ。ハオさん、ニセモノの返信はすぐわかるって言ってたよ」
「何だ起きてたのか、ララ。そんなもの口だけだ。わかるものか」
「どうかなぁ。少なくともあんまり長々と書かないほうがいいとは思うよ?」
「フン」メイファンは水を差され、つまらなくなって筆を投げた。「そんなら姉ちゃんが書いたらいいだろ」
そう言うとメイファンは気の流れの中に潜り、身体の中心にただの黒色となって固まった。
「ええ〜??」ララはいきなり交替させられ、うろたえた。「とりあえず服、服」
衣装箪笥を開けるといつも通りメイファンのチャイナ服しかなかった。
メイファンからララに精神が交替する時、彼女は少し身体が大きくなる。そのためどの服を着てもピチピチだった。
「仕方がないなぁ……頑張るか」
メイファンは身体の中で黙ってしまった。機嫌を損ねたのか、眠ったのか。
「うーん、うーん……」
『ハオ、私…』と書き出したものの、それ以下が思い浮かばず、ララは固まってしまった。
そして夜が明け、8時間悩んだ末、遂に決定した。
「うん、これだけでいいんじゃない?」
「そうだな」メイファンも同意した。「これならバレようがない上、謎めいていて奥深い」
「あとは筆跡でバレないかな?」
「新聞紙とかから切り取って貼ればいいんじゃないか?」
「それじゃ脅迫状だよ」
「ならばビーフンの書いたものを何か手下に探させよう」
「頼んだよ、メイ。じゃあ私、寝るね。疲れた……」
そう言うとララはすぐに眠りに落ちた。崩れ落ちようとする身体にメイファンが戻り、鋭い目を開く。
身体は比較的黒くなり、チャイナ服は誂えサイズになった。
「さぁ、今日もビシビシ行くぞ」

151:創る名無しに見る名無し
18/12/02 15:17:24.31 5Zjttdvt.net
そこへ白馬に乗って一人の男がやって来た。
「やぁ、お嬢さん方、私の名前を知ってるかい?」
「もちろんよ、ケン・リュックマン」
「知らない者はいないわ、ケン・リュックマン」
二人は逞しい男の肉体に見惚れ、下半身を濡らした。

152:創る名無しに見る名無し
18/12/02 15:36:24.42 gYHLnw/2.net
「はあ、はあ、どうにか脱出出来たぞ」
ハオはメイファンの監視から逃れ玄関の外へ脱走していた。
ハオはメイファンに見つからないように当てもなく歩き続ける。だか違和感に気づく。
「…暗いな。今は夜なのかな?」
辺りには明かりはない。ハオは空を見上げても星ひとつ見えない暗黒が広がっていだけだ。
「…痛っ!」
ハオは何かにぶつかった。ハオは前に手を伸ばすと塀のようなものが確認できる。
(ブロック塀?違うな。コンクリート壁…うーん、なんか鉄っぽい。)

153:創る名無しに見る名無し
18/12/02 18:24:10.89 htY/R/Hk.net
「…メイファンのところへ帰りたい。」
ハオはポツリと呟いた。ハオが家を飛び出してから二時間を越えていたが歩いても歩いても闇の世界が広がっているばかりで人っ子一人いない。
「疲れた、足が痛い。」
ハオは立ち止まり、壁にもたれ掛かるように座り込んだ。
「…ウチに帰りたい。メイファンのところに帰りたい。」
何かを忘れている気がするが思い出せない。
(…そういえば何で家を飛び出したんだっけ?)
やはり思い出せない

154:創る名無しに見る名無し
18/12/02 20:09:29.47 YNdQJnF+.net
「はぁ、おかしいなあ。」
ハオは溜息を付いた。
「前回外に出たときは普通に通行人が歩いていたし、この家は町の中にあるはずなのに誰もいないし、他の家も見当たらない。うーん」
辺りは相変わらず真っ暗で物音一つ聞こえない。
「夢の中にしては、妙にリアルだしなあ」
先ほど歩いていて壁にぶつかった際の痛みは現実そのものだったことを思い出す。。

155:創る名無しに見る名無し
18/12/02 20:31:16.66 RilRsw3e.net
そこへ黒い忍者装束に身を包んだ男が上から降りて来た。
「やぁ、何かお困りかな?」
「あっ、ケン・リュックマン!?」
「そう、私はケン・リュックマン」
それだけ言うとケン・リュックマンは印を結び、ドロンと消えてしまった。

156:創る名無しに見る名無し
18/12/02 22:25:12.00 VDmo5jgw.net
「待ってくれ!」
チョンボはケンの後を追いかけた。

157:創る名無しに見る名無し
18/12/02 22:58:02.99 8cRNXGya.net
「何だったんだ……」
ハオが茫然としていると、暗闇の中からメイファンの声がした。
「ハオ」
「メイファン!?」ハオは思わず涙混じりに喜びの声を上げた。
「お前の成長ぶりには驚かされる。まさか私に気を悟らせずに外へ出られるまでになっているとはな……」
目を凝らすと、薄明かりを背に立っているメイファンのシルエットがようやく見えて来た。
左手にはどうやら青龍刀を、右手にはスイカのようなものをぶら下げて、颯爽と立っている。
その時、突然に水銀灯の明かりが点いた。
ハオは一瞬目が眩んだが、やがてメイファンの姿をはっきりと見た。
鬼の形相でこちらを睨み、顔は血にまみれ、左手にはやはり青龍刀を、右手には黒い髪をひっ掴み、ララの生首をぶら下げていた。
「ララ!? うわっ! うわぁぁぁ!?」
「お前の監視を怠ったので首をはねた。お前が逃げようとしたせいだ、可哀想に」
「なっ、何で……お前の姉さんだぞ!?」
「私は役に立たない人間は親であろうと姉であろうと殺す。覚えておくんだな」
「女を道具のようにしか考えない男は嫌いなくせにか!? うっ……うひぃぃぁぁぁぁ!!」
「いいから戻れ」メイファンは青龍刀で帰りの方向を示した。「二度と逃げようなどと思うな」

158:創る名無しに見る名無し
18/12/03 05:36:31.25 shU07SF9.net
「あれ、メイファンどこなの?」
しかし、メイファンの指し示した方向には何もなく、ハオはメイファンの方へ向く。
「…バカな、間違えたかな」
これにはメイファンも困惑せざるを得なかった。
歩けども歩けども先には夜の闇より暗い漆黒が広がるばかりである。
「ハオ、お前のせいだぞ。」
メイファンは眉間にシワを寄せ、持っていた青竜刀で前を歩いているハオのケツをツンツンとついた。
ケツに痛みを感じたハオは喘ぎ声のような悲鳴をあげ、前にピョンピョンと跳ねた。

159:創る名無しに見る名無し
18/12/03 06:09:40.30 Y+vvvELN.net
「何だったんだ……」
ハオが茫然としていると、暗闇の中からメイファンの声がした。

160:創る名無しに見る名無し
18/12/03 10:12:53.62 ZBMPgc9R.net
「ここで休むか」

161:創る名無しに見る名無し
18/12/03 10:25:48.74 PvPQ++eV.net
「あたしを勝手に殺さないでよ」ララの声がした。

162:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:24:13.96 50R7u3fH.net
「いやいや、あんたキョンシーですやん」
そう言ってララの額にお札を貼りつける

163:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:26:55.18 TR4HeYxf.net
ビー・ドンファンという若い格闘家が宣言をする。
「俺は中国にはびこるインチキ伝統武術の使い手と片っ端から勝負してやる。そして奴らのインチキを世間の明るみに出してやる。『胡散臭い中国』のイメージを払拭するのだ!」
ドンファンが語り終えると壇上に散打王リウ・パイロンが上がり、二人で肩を組んだ。

164:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:32:45.23 wK7ZfVSz.net
「何だったんだ……」
ホイホンが茫然としていると、暗闇の中からミンミンの声がした。

165:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:40:02.57 TR4HeYxf.net
リウはマイクを手にすると語り始めた。
「私はビー・ドンファン君を指示する!」
会場から拍手が湧き起こった。
「先日、私と対戦することの決まった日本のある格闘家が言った、『中国の武術は見た目は派手だが軽い、実戦では使えない』と。
彼に罪はない。彼は知らないのだ、今、中国にようやく現代化の波が押し寄せていることを。彼はいつまでも中国は胡散臭く、
四千年の歴史とやらに固執し、強そうなのは見た目だけのハリボテで、インチキや不正がまかり通る国だと思っているのだ。
実際それは否定できない。見ろ、そこら中に妖しげな伝統武術の看板を掲げて、道場に閉じ籠って「我々は最強だ」などと
うそぶいている輩のなんと多いことか? 奴らは決して対外試合をしない。奴らがやることと言えば演武か、内輪での試合
ばかりだ。それでいて「我々はこんなに凄い」とアピールするための動画を撮ってYouTubeに流しまくっている」
会場から笑いが起こった。
リウも一緒になってひとしきり笑うと、話を続けた。
「日本の作り話の中にいまだにニンジャが存在するように、中国でも作り話の中になら妖しげな中国伝統武術があってもいい。
しかし、我々は現実を見よう。気を飛ばして相手を攻撃するような技は存在しない。髪の毛を針のように硬くして武器にする
ことなど不可能だ。酔えば酔うほど強くなるなどとそんなわけはない。無敗神話をもつ武術家の対外試合を少なくとも俺は
見たことがない。ビー・ドンファン君のように俺は奴らに対外試合を申し込みはしないが、俺は現実に、みんなの目の前で
無敗神話を作ってみせる。タイトル戦ではないが、次のジョー・サクラバ戦も勝って、中国の散打は現実に強いのだという
ことを世界に示してみせよう」

166:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:43:23.68 TR4HeYxf.net
手が上がり、一人の女性が質問をした。
「中国には裏社会があり、そこにいる武術家達は本当に凄まじいほどに強い、という噂がありますよね?
それに関してどう思われますか?」
「裏社会の殺し屋のことか?」リウは即答した。「そんなものはいない」

167:創る名無しに見る名無し
18/12/03 12:55:57.17 TR4HeYxf.net
リウが立食会場に入るとカーテンの影から呼び止める者がいた。
「ようリウ、久しぶりだぁな」
「ジャン・ウーじゃないか。何だってこんな明るい所に?」
「いや、仕事じゃにゃぁよ。たまには旧友に会いに明るい所へ出て来たっていいじゃにゃぁか」
「……相変わらず現代中国人とはかけ離れたナリをしているな」
ジャンは昔のカンフー映画に出て来るような汚いカンフー着を身に纏い、赤いほっぺたに白い髭を生やしていた。
「しかし言うじゃにゃあか、裏の殺し屋なぞ存在しない? カハハ、お前の台詞とは思えん」
「フン」
「前から不思議だったんじゃが、なぜお前は黒色悪夢を庇う?」
「黒色悪夢……」リウは真顔で言った。「なんだそれ」
「お前の師匠のことよ、忘れたか?」
「あぁ……」リウはようやく理解した。「お前らのその通り名で呼び合う癖にはついて行けんな」
「なぜ庇う?」
「ラン・メイファン老師は今でも俺の心の師だよ。だからさ」
「しかしお前、食ったろう」
リウは記憶をたどり、その時のことを再び味わい、ニヤリと笑った。
「そう。未だにあれ以上の美味は味わってないな」

168:創る名無しに見る名無し
18/12/03 20:22:30.83 hejnLN2P.net
辺り一面の闇の中、男が追っ手から逃げていた。
「はあ・・・はあ・・・ぜぇぜえ・・・」
タンクトップにトランクスという格好で、いまいちぱっとしない中年男といった感じだ。男の名前は李青豪(リー・チンハオ)。ニートだ。
その後ろから女が追いかけてくる。女は朴刀を振りかざし、呪詛の言葉を吐き男を追いかけていた。女の名前はラン・メイファン、自称17歳。

169:創る名無しに見る名無し
18/12/03 20:53:47.80 s2B2U+Qu.net
「誰が自称だ」メイファンは>>168の首をはねた

170:創る名無しに見る名無し
18/12/03 22:01:09.53 gY6G6baf.net
「29歳は中年じゃねぇぞぉぉぁぁああ!!!」ハオ及び全国の29歳の皆さんが>>168の首をストンピングした。

171:創る名無しに見る名無し
18/12/03 22:15:41.21 1Dc6m/C6.net
メイファンはハオを見失ってしまった。
彼女は憎悪と怒りに満ちた叫び声が辺りに虚しく響き渡る。

172:創る名無しに見る名無し
18/12/03 22:40:44.24 50R7u3fH.net
「お困りのようですねぇ。けひゃひゃ」
黒頭巾の老婆がメイファンに話しかけてきた。

173:創る名無しに見る名無し
18/12/04 01:08:26.92 qGh0qCiS.net
「やぁ、すまない。待たせたね」
リウが声を掛けた時、シューフェンはまさに蟹焼売を真っ赤な口の中に入れるところだった。
「素敵なパーティーね」慌てて焼売を皿に戻すと、照れながらそう言った。「ところでこれ……何のパーティー……だっけ」
「新しい中国の未来を望む会……かな。グループの名前はまだないんだ」リウはにっこりと笑った。
「主催者は……あなた?」
「イエス!」
「クールね」
「いいだろう?」
リウはおどけながら蟹焼売を10個皿に取ると、シューフェンに言った。
「さぁ、これを早食い競争したら行こう」
「勝てるわけないわ」シューフェンは呆れ顔で笑った。
「僕は10個、君は君が食べたい個数で勝負。これでどうだい?」
「わかった。じゃあ……」シューフェンは皿に12個取った。
「凄いよ!」リウは大笑いした。「しかもでかい!」
「じゃあ競争よ、イー、アール、サン……」
「ちょっちょっちょっと待ってくれ!」
「怖じ気づいたの?」シューフェンは悪戯っぽく笑う。
「オナラが出る前に、先に電話しとくよ」
「オナラじゃなくてゲップてしょ」シューフェンは声を上げて笑った。
「もしもし、ホーク兄かい? 約束の時間に行けそうだ。パーティー抜け出したらそっちへ行くよ。あぁ、もちろん、彼女を連れて」

174:創る名無しに見る名無し
18/12/04 01:22:53.24 tKQ90dV4.net
パーティーの壇上に一人の男が上がった。
「やぁ諸君! 私の名前を言ってみろ」
「あっ、ケン・リュックマン!」
「最強の格闘家ケン・リュックマン!」
「でもケン・リュックマンが闘ってるとこって誰か見たことある?」
「や、やべっ」そう言うとケン・リュックマンは逃げ出した。

175:創る名無しに見る名無し
18/12/04 05:28:18.50 z9qGqy5+.net
「ここって地下なの?」
ハオは肩を上下させ階段を登っていた。長い長い先の見えない中空階段だ。1歩1歩歩く度に足音が周囲に反響する。
ハオは立ち止まり、汗を拭うと大きく息を吐いた。
「随分上まで来たけど、何処まで続くんだ。」
ハオは手すりに手を置いて吹き抜けの下を覗いていた。しばらくぼんやりしていると階段室の鉄の扉が開く、メイファンだ。
ハオは逃げようとしたがその前に上を向いた彼女と目が合ってしまう。
「ぜぇぜぇ…み〜つけたぁ」
メイファンはニタリと口端を吊り上げ、白い牙を見せる。
その目は血走り狂気に満ちていた。
「ヒェッ」
ハオは小さく悲鳴を上げ、階段を慌てて駆け上がる。

176:創る名無しに見る名無し
18/12/04 06:26:38.71 DH9A88qS.net
階段を上りきり扉を開けるとそこは地下水路だった。

177:創る名無しに見る名無し
18/12/04 07:40:24.07 wHwwX/Ed.net
メイファン「さあ、逃げろ逃げろっ!凄惨な死が迫ってきているぞ。」
ハオ「ぱああああああっ!」

178:創る名無しに見る名無し
18/12/04 08:22:53.98 cO3fZ9LT.net
ハオ「シューフェン! 俺を守ってくれ!
そして俺は必ず君の元へ帰る! だからそれまでどうか他の男と腰の振りあっこなんかしないで待っていてくれ!」

179:創る名無しに見る名無し
18/12/04 10:05:26.23 SWb3hAiP.net
ケン・リュックマン「むうっ 出るっ!」
ドピュドピュ
メイファン「あん、相変わらず早いわねえ」

180:創る名無しに見る名無し
18/12/04 12:15:43.86 SHHrCk/e.net
リウは高級ドイツ車の後部座席にシューフェンを乗せ、自分は珍しく助手席に座った。
「綺麗に化粧して来てくれたけど、すまない、一度落として貰うよ」
「え?」
すっぴんで中国映画の巨匠ツイ・ホークに会えということだろうか。意図がわからずにいるシューフェンにリウは驚かすように言った。
「香港からジョアンナ・ポンが来てるんだ。彼女が君に最高のメイクをしてくれる」
「ええーっ!?」
メイクアップ・アーティストという裏方の仕事をしていながら、その顔も名前も知らない者はまずいない。
そんな世界トップクラスのジョアンナが自分にメイクをしてくれるというのだ、シューフェンは夢を見ているような気がして来た。

181:創る名無しに見る名無し
18/12/04 12:37:16.91 8crooB4c.net
メイファン「結局は、奴と同じと言うことかリー・チンハオっ。お前も私の元から去るのか!?」
メイファン「許さん…許さんぞ。捕まえたら四肢を切り落として達磨にしてやるっ!」
ハオ「びええぇっっ!」

182:創る名無しに見る名無し
18/12/04 16:20:43.66 BnPRhFwt.net
チョンボ
「ときどき恐くなるんだよな。目がさめたらここじゃないどこかで、エルオーネがいなくて……」
ホイホン
「レインもいなくて?」
チョンボ
「オレ、どうしちまったんだろうな。こんな気持ち……なんだこれ?ああ、目が覚めてもこの部屋でありますように!このちっこいベッドで目が覚めますように!」
ホイホン
「変わったな、チョンボくん」

183:創る名無しに見る名無し
18/12/04 19:56:28.48 SHHrCk/e.net
「ネイホゥ」
シューフェンは広東語でこんにちはと挨拶をした。
「ネイホゥ、ネイホゥ〜」
ネイティブのアクセントでジョアンナは挨拶を返し、ニコニコ笑いながら握手を返して来た。
「ニーハオで通じるよ」リウが横から笑った。
ここは広州郊外にあるスタジオ。その一室でジョアンナ・ポンはシューフェンを待っていた。
眼鏡をかけ、そばかすだらけの顔にひっつめ髪の彼女は、美人とはとても呼べないが、TVや雑誌でしばしば見る顔が目の前にあるのは不思議な感じがした。
彼女は広東語ではなく普通話で喋った。
「ニーハオ、シューフェン。リウから聞かされてた通りのいい女ね。っていうかいい骨格してる。最高だわ、この骨格」
「広州まで来た甲斐があったろう?」リウが言った。
「こんな骨格に出会えるなんて予想外よ。腕がなるなぁ」
さんざん骨格を誉められ、シューフェンは何と答えたらいいやらわからず、ただ笑っていた。
ジョアンナはTVに出る時でもほぼすっぴんのナチュラルメイクで、それがかえって「自分に合うメイクをさすがに知っている」という評判だったが、
目の前の彼女はそれを深く頷かせるほどに魅力的な女性だった。
「さぁ、早速だけどその骨格にお化粧させてちょうだい。殿方はお外で少し待っててね」

184:創る名無しに見る名無し
18/12/04 20:12:25.93 SHHrCk/e.net
ほんの10分もかからずにジョアンナは顔を覗かせた。
「完成よ、リウ。中に入ってもいいわ」
リウがメイクルームに入るとそこに雪の妖精が立っていた。
あまりに透き通ったその肌は、あまりに儚く、そこにあってそこに存在していないもののように見えた。
リウはしばらく言葉を失っていたが、ようやく「綺麗だ」とだけ言うことが出来た。
「これ……私なのね」そう呟くシューフェンの目から、なぜか涙がひとつ零れた。
「光栄だわ、泣くほど気に入ってもらえるなんて」ジョアンナが明るい笑顔で言った。
「綺麗だよ、本当に……何ていうか……」リウはいつものように上手い言葉が出て来ずに困っているようだった。
「ファン・ビンビンとどっちが綺麗?」
思わず言ってしまってから気恥ずかしくなり、ぺろりと舌を出しながら「なんてね」と言おうとしたシューフェンよりも先にリウが答えた。
「もちろん君だ」

185:創る名無しに見る名無し
18/12/05 01:21:35.25 tkPgfP22.net
…………読んでしまった!

186:創る名無しに見る名無し
18/12/05 06:26:05.38 lFnLnb8d.net
殺風景な部屋。その中央にはベッドが置かれ
男が仰向けに横たわり、その横に少女が抱きつくようにすやすや眠っていた。
男の目は虚ろでただ天井を眺めている。
男の手足は折れているようで、添え木ごと包帯が何重にも巻かれていたほか、
体のあらゆる箇所にある血の滲む包帯がなんとも痛々しい。
男の名はリー・チンハオ。通称ハオ。ここから逃げ出す為脱走したのだが失敗し重傷を負ってしまったのだ。
そしてその横にいる美少女はラン・メイファン。ハオをここに閉じ込め、彼にこのような仕打ちをした張本人だ。

187:創る名無しに見る名無し
18/12/05 09:32:54.11 7+Y08Eg5.net
社交辞令の口調だった。
ツイ・ホークはシューフェンと握手をしながら「なんと美しい人だ」と言った。
が、その顔には「この程度の美人などいくらでも見慣れている」と書いてあった。
「主役は元々ファン・ピンピンの予定だったけど、ニュースで知っての通り、巨額脱税事件であんなことになってしまってね」
「代役で売り出し中のジョイ・ウェンにお願いしたんだが、これも今回の大停電絡みでへそを曲げ、降りてしまった」
「そこへリウから『いい女優の卵がいる』と聞き、君を待っていたんだよ」
ツイ・ホークの話にシューフェンは頭の中が大混乱してしまった。
なななな何、そのビッグネームばっかり出て来る壮大な話、聞いてない、それでどうして素人の私のところに話が来ちやうの???
ただの女優オーディションみたいなのだと思ってたのに、これじゃ私、既に期待の大新人みたいじゃない。場違いだ、場違いもいいとこだわ、私!
シューフェンは助けを求めるようにリウを振り返った。リウは少し意地悪そうにクックツクと笑っていた。
「演技歴はどれくらい?」
ホークの質問にシューフェンは顔を真っ赤にし、しどろもどろに答えた。
「高校の時、演劇部でした」
暫しの沈黙が部屋に漂った。あまりの居心地の悪さにシューフェンは思わず謝った。
「ごごごめんなさい! 素人です! 失礼します!」
「いや、いいよ」ホークは笑って見せた。「変なこだわりのある経験者よりよっぽどいい」
「とりあえず、ピンと来たかい?」リウがホークに聞いた。
「いや、悪いが今のところ……」ホークは正直に答えた。「しかし天下の散打王が魅了された女性だ、何か持っているんだと期待しているよ」
そう言うとホークは机の上にあった台本を手に取り、シューフェンに渡した。
「テストだ。とりあえずここの蛍光ペンで囲んだところを読んでみてくれ」

188:創る名無しに見る名無し
18/12/05 10:53:35.14 5oG7BJEL.net
あらすじを聞かされてシューフェンは少しびっくりした。
舞台は上海。主人公は不治の病に冒された余命半年の女性、ツァイイー。同居人の恋人は冴えないニートだが、彼の優しさを深く愛していた。
やがて彼に病のことを打ち明けずに死んだ彼女は幽霊となるが、冥界の魔王の息子と相愛関係になり、強大な魔力を使えるようになる。
彼女を追って魔界までやって来た彼は魔王の息子と対決する。激しい戦いの末に勝敗は決し、最後に彼女が選んだ人は……
『余命半年……私と同じだ』シューフェンは主人公に共鳴した。

189:創る名無しに見る名無し
18/12/05 11:24:18.92 tLDgH5+I.net
…………読んでしまった!

190:創る名無しに見る名無し
18/12/05 12:12:36.70 dOw2ZCNF.net
ツイ・ホーク「ちなみに魔界の王子役には台湾のアクション俳優ワン・リー、彼氏役には『格闘神』ケン・リュックマンを予定している」
シューフェン「ケ、ケン・リュックマン!」
リウ「何だって? ケン・リュックマン!?」
二人は逞しい男の胸筋を思い浮かべて恍惚とした」

191:創る名無しに見る名無し
18/12/05 16:27:24.04 KWAqM4dC.net
湯ババア「千鳥のノブか、贅沢な名だね。お前の名前は今から千だよ!」
大吾「するとババア、わしの名前は何になるんじゃ」
ノブ「千鳥は芸名じゃあ、そしてお前雇い主にババアはあかん」

192:創る名無しに見る名無し
18/12/05 18:03:24.67 HfeVJhOe.net
マクドに入った。だが味が変だった。
「これ、なんの肉使ってんだ?」

193:創る名無しに見る名無し
18/12/05 18:30:37.56 2bt+awqK.net
下痢沢 尿男「もしもーし?」

194:創る名無しに見る名無し
18/12/05 21:01:07.15 iLPFDTjP.net
ある店のラーメンを食べ、僕は不思議に思った。
「麺は熱々なのにスープはぬるい。これってわざとなのかな??」

195:創る名無しに見る名無し
18/12/05 23:18:04.16 EuqaZzzp.net
簡素なベッドにハオが拘束されている。彼は何も身に付けていない。ハオはと脱走に失敗してしまった彼はこれから罰を受けるのだ。
その横でメイファンが豹のような鋭い目で彼を見つめ、手には錘が握られている。
「お前はシューフェン一筋のはずなのに私と体を重ねる形で彼女を裏切った。」
メイファンの口調は冷静だった。メイファンは錘をハオの右足の脛に錘を振り下ろすと鈍い音を立てて潰れ、どす黒く変色した。
「ギャアアッ!足っ!俺の足っ!」
脛を砕かれたハオは断末魔をあげ、もだえ苦しみ拘束具をガチャガチャと鳴らした。
「そして、そのようなことをしておきながら私を捨ててここから逃げようとした。そう。リウ・パイロンのようにな。」
「そ、それはお前のでっち上げだ!俺はし…」
メイファンはハオの反論を遮る錘を左足に振り下ろし粉砕すると彼は再び絶叫し、口から泡を吹きながら気絶した。
「おっとまだ眠るには早いぞ、チンハオ?」
メイファンはつかさず桶でハオの顔に水をかけ
彼を覚醒させた。
「ゴホッゴホッゴホッ…ち、ちく、畜生!」
ハオは水を吸い込んでしまったのか大きく咳き込んだ。
「た、確かに、おおお前を抱く妄想はしたさ。だけど、あくまで妄想だ。それをお前は事実だと捏造しただけじゃねえか、このキチガイ女めっ!」
「捏造だと?それは都合の悪いことをなかったことにしたいお前の願望だ。」
メイファンは険しい表情で左腕を打ち砕いた。ハオは呻き声を上げると嗚咽した。

196:創る名無しに見る名無し
18/12/05 23:28:00.81 Rt9Oc31v.net
「…ゆ、許して、もう逃げ出さない、メイファンだけを見るから、やめて、やめてよ。」
ハオは拷問の記憶が蘇ると唯一動く右手で顔を覆い、体をガタガタ震わせながら涙を流した。

197:創る名無しに見る名無し
18/12/05 23:38:47.53 NlYRS0+g.net
ミンメイ「なにか言ってもらおうだなんて思ってないわ。話を聞いてくれるだけでいいのよ」
チョンボ「だったら壁にでも話していろよ」

198:創る名無しに見る名無し
18/12/06 00:07:44.63 kUL2LuDZ.net
       ....::::::::::  
    彡⌒ミ....:::::::::髪も仏もキャッシュバックもない…
    (/ヨミヽ)、....:::::::
―─(,ノ―ヽノ―

199:創る名無しに見る名無し
18/12/06 06:45:21.29 WqSNkj1C.net
二ヶ月後ハオの骨折は完治したが、折れた心は完治しなかった。
メイファンの心はあの日を境に壊れてしまい厳しい訓練を行うこともなくなった。

200:創る名無しに見る名無し
18/12/06 09:53:04.75 vq+qDw6R.net
シューフェンは台本読みを終えても、まだぽろぽろと涙をこぼしていた。
「やめてくれよな」リウが涙目で笑いながら言った。「本当に君が半年後に消えてしまうんじゃないかと思ったよ」
「ツァイイーだ!」ツイ・ホークが忙しく涙を拭きながら拍手をした。「僕のイメージ通りなんてものじゃない。君はツァイイーそのものだよ!」
「ピンと来たか?」リウがホークに再び尋ねる。
「いや」ホークはシューフェンに言ったのに「ヒロイン役は君しかいないと思う。引き受けてくれるかい?」
シューフェンはおどおどしながら答えた。
「先に聞いておけばよかったんだけど……」
「ん?」男二人が声を揃える。
「撮影期間ってどのぐらいかかるんですか?」
「実は主演女優がドタキャンする前にほぼ完成してるんだ、この作品。だからあとは君次第さ」
「私次第……」
「君が頑張ってくれれば半年以内、君が鈍ければ1年以上かかるだろうね」ホークはそう言って笑った。
シューフェンも輝くほどに笑い、ぺこりと頭を下げた。
「私、頑張ります。どうぞよろしくお願……あっ!」
「どうした?」
急に顔を歪め、お腹を押さえたシューフェンを心配し、二人は声をかけた。
「ごめんなさい、お昼に蟹焼売食べすぎちゃって……」
シューフェンは激痛の収まらないお腹から手を離し、冗談っぽく笑った。
「ごめん、僕が早食い競争なんかさせたから」リウが恐縮して頭を下げた。

201:創る名無しに見る名無し
18/12/06 18:17:09.76 yH+4IPpI.net
「さて名前をどうする?」リウが提案した。
「さすがに本名は問題があるよね」ホークが言う。「漢字まで同じなんだよね?」
「ええ、シン・シューフェン。漢字で書くとたぶん文字化けすると思うけど、辛樹芬なの」

202:創る名無しに見る名無し
18/12/06 18:30:13.71 yH+4IPpI.net
「文字化けしなかったわ」シューフェンは嬉しくなった。
台湾の有名な元女優に辛樹芬というまったく同じ名前の人がいるのである。
日本のアイドルにも岡田奈々という有名女優と同じ名前の人がいるように、構わないとも言えたが、ホークは良しとしなかった。
「君のご両親は相当の映画好きか、あるいは逆に相当芸能界に疎いかだね」リウが笑う。
「樹芬という名前はいいと思う。苗字を芸名にしよう」ホークが提案すると、シューフェンはすぐに案を出した。
「李樹芬……ってどう? リー・シューフェン」
「おっ? いいじゃないか」ホークが食いついた。
「さすがのセンスだ」リウが感心した。「中華一ありふれた姓と香り立つように美しい名の結婚か。行けるよ」

203:創る名無しに見る名無し
18/12/07 02:59:43.20 4fgFEpTr.net
ラン・メイファンの話をしよう。
少し長くなるかもしれんが、構わんかの。
ワシはあの子のことは自分のことのようによく知っておる。
胸が悪くなるような話

204:創る名無しに見る名無し
18/12/07 03:01:06.02 4fgFEpTr.net
ラン・メイファンの話をしよう。
少し長くなるかもしれんが構わんかの。
ワシはあの子のことは自分のことのようによく知っておる。
あまりきもちのよい話ではないかもしれん。
あんたが耳を塞いだらワシは話すのをやめることにしよう。

205:創る名無しに見る名無し
18/12/07 03:13:04.84 4fgFEpTr.net
17年前の9月11日、モンゴルに近い小さな田舎町にメイファンは産まれた。
夫妻は4年前に初めて授かった子をお腹の中にいるうちに亡くしていたので、妊娠している間は大変喜んだ。
しかし、産まれた瞬間からメイファンは忌み嫌われた。
彼女は真っ黒で、背中には獣のように毛が生えていた。
それだけならもちろん夫妻も愛を注いで育てたことじゃろうな。
しかしメイファンは、産まれた瞬間に、喋ったのじゃ。
正確には赤子の泣き声の合間に嬉しそうな声が混じっておった。
「パパー ママー ようやく会えたー くらいよー みえないよー」
悪魔か何かが出て来たかのように、その場にいた全員が戦慄したそうじゃ。

206:創る名無しに見る名無し
18/12/07 03:34:03.28 4fgFEpTr.net
4年前、母親のお腹の中で消失してしまった子は、実は生きておったんじゃ。
身体は消失したが、彼女は『気』だけの存在となり、胎内で成長し、外の音を聞きながら学習しておった。
初め、彼女は自分が身体を得て、ようやく産まれることが出来たものと勘違いしておった。
身体は自分ではなく妹のもので、自分はそこに寄生するただのバケモノだと気づくのにそう時間はかからんかった。
両親が彼女のことをバケモノ扱いし、霊能力者や退魔師に相談し、TV局に売り物にしようとしたからじゃ。
4歳の姉は幼いながら危険察知能力を働かせ、他の新生児は喋らないということも学習し、すぐに何も言わなくなった。
せっかくTV番組に出したのに喋らなくなってしまったので、両親は腹を立て、妹の身体に傷をつけるような扱いをした。
それから長い間、名前のない姉は、メイファンと名付けられた赤子に対してしか、口をきかなくなった。

207:創る名無しに見る名無し
18/12/07 03:43:16.06 4fgFEpTr.net
普段は普通の赤ちゃんなのに、一人にしておくと何やら喋り出すのが薄い壁越しに聞こえ、両親はノイローゼになった。
やがて妹も喋り始める年頃になると、ノイローゼは一層ひどくなった。
姉妹は身体は一つだが、心は別々じゃ。テレパシーで会話できるわけではない。
メイファンは一人で会話をするようになり、一人なのにケタケタ笑ったり、誰かと喧嘩を始めたりする。
それどころか姉妹が同時に喋る時、一つの口を使って喋るので、言葉は宇宙人の言葉のようになり、口はありえない形で動いた。
あまりの気持ち悪さに両親は何度もメイファンを殺そうとした。
恐らく普通の子ならとっくに事故を装って殺されていたじゃろう。
しかしメイファンは、2歳の頃には高い戦闘能力を身につけており、容易に殺すことなどできない子になっておった。

208:創る名無しに見る名無し
18/12/07 03:51:07.18 4fgFEpTr.net
『気』だけの存在である姉を通して、メイファンは気というものを理解するようになっておった。
相手の気を読むことで、0.5秒先の相手の動きが見えたそうじゃ。
今は……おそらく0.5秒では済まんじゃろうな。武術家は筋肉の動きから相手の動きの先を読むというが、
メイファンはその更に前から筋肉の動きを読むことが出来る。たぶんじゃが、5秒は先の相手の動きが見えておるんではないかな。……
話を戻そう。おまけに気をモノに込めることによって、例えば大人用の野球のバットを軽々と振り回し、使うことが出来た。

209:創る名無しに見る名無し
18/12/07 05:28:39.74 r87o786n.net
ハオはベッドの上に下着姿であぐらをかきテレビを見ている。その顔はメイファンの拷問によりやつれ不精髭も伸び
実年齢より10歳以上も年上に見えた。

210:創る名無しに見る名無し
18/12/07 07:25:29.09 vgMnarT9.net
ハオの隣にはメイファンが寝ていた。

211:創る名無しに見る名無し
18/12/07 08:09:00.86 biu0cWTm.net
3歳まで育てておきながら両親はメイファンを捨てた。
70km離れた町へ行った時、棒術が強いことでそこそこ有名なある道場の前に置き去りにし、それきり帰って来なかった。
門前に立ち尽くしているメイファンに門下生が声をかけると、姉が口を借りて「お母さんがここで待ってろって」と言おうとしたが、
メイファンが「捨てられた。メシくれ」と同時に喋ったもんだから、ありえない口の動きが「お母んられこっこっ……くわはれろっ!」みたいに喋った。
エイリアンみたいに見えたことじゃろうな。
「妖怪変化め!」と突きつけた門下生の棒を易々奪い取り、メイファンは門下生を地に這いつくばらせ泣かせた。
道場の師範はボケ老人で、「あぁ、そう言えば小さな入門生が来るとか婆さんが言っておったな」とメイファンを受け入れた。
ちなみに婆さんは3年前に他界しておった。

212:創る名無しに見る名無し
18/12/07 10:51:55.26 aqGR9649.net
姉はメイファン以外の誰にも知られていない存在ながら、明るくお喋り好きで、人と関わりたがった。
妹のメイファンは反対に人間嫌いで、必要以上のお喋りを鬱陶しく思う子だった。
道場での暮らしは2年以上続き、姉はたくさんのお兄ちゃんが出来たことがとても嬉しかった。
しかし口で明るく「お兄ちゃん、おはよう」と言いながら、獣が威嚇するような目で睨んで来るメイファンを好きになってくれるお兄ちゃんは一人もいなかった。
また、3歳児のくせにやたら強いのもお兄ちゃん達の気に障った。
どこを見ているのかわからない顔をして的確に痛いところを棒で突いて来るメイファンは、1日で道場の最強になってしまい、嫌われていた。
師範は優しかったが、頭のおかしい人だということは子供でもすぐにわかった。
姉が自分で動かせる身体の部位はほぼ口だけだった。
目や指先も動かせることはあったが、メイファンの意志がそこにあるとそちらに優先された。
妹は姉を可哀想に思っていた。
姉が身体を自由に動かせれば、愛嬌のある姉だから、きっと皆に愛されるのに、と歯痒く思っていた。

213:創る名無しに見る名無し
18/12/07 10:59:01.53 aqGR9649.net
4歳にしてメイファンは道場の師範代に登り詰めた。
ただ、一人で会話する気持ちの悪い子供を心から師範代と仰ぐ者は誰もいなかった。
11月11日は姉の誕生日となった。
その日、メイファンが姉に名前をプレゼントしたのだ。
4歳児の少ない漢字知識の中から妹は「楽」という字が姉には似合うと選び、2つ並べて「楽楽(ラーラァ)」にした。
それまで自分のこともメイファンと呼んでいた姉は、8歳にして初めて自分の名前を得た。

214:創る名無しに見る名無し
18/12/07 12:04:03.88 aqGR9649.net
しかし道場で暮らしたこの頃は、メイファンの人生の中で一番幸せな時期じゃったかもしれん。
彼女の武術の才はこの頃磨かれ、開花した。
嫌われようとも「自分もお前ら嫌いだから」で済ますことが出来た。
あの男がやって来てから、あの子は心に深い傷を負うことになる。

215:創る名無しに見る名無し
18/12/07 12:23:44.61 oOeAHsnL.net
ハオはベッドを独占するメイファンを見た。
「俺、ずっとこの子と一緒なのかなあ…」
ハオはたばこに火を付けた。

216:創る名無しに見る名無し
18/12/07 18:22:23.05 mZZnEptb.net
「美少女ならまだしも微妙なんだよな。こいつ…」
そう呟いてハオは煙を吐き出しタメ息をついた

217:創る名無しに見る名無し
18/12/07 21:48:00.34 AJlAGHwF.net
「…まあ、どちらかと言えば可愛いけどガキっぽ過ぎるんだよなあ。」
ハオは眠るメイファンの頬に優しく触れた。
メイファンはすやすやと眠っている。
「おかしいな、あんなことをされたのにムラムラしてきた。」
ハオは頬を触れた手を布団の下に入れ
掬うようにお椀型の乳房を撫で回す。
「うーん」
違和感に気が付いたメイファンは目を開けた。

218:創る名無しに見る名無し
18/12/08 05:42:59.57 k2DwYDvV.net
「おはよう、ハオ。」
寝起きのメイファンは目をこすった。

219:創る名無しに見る名無し
18/12/08 05:50:57.29 6V8FZTWj.net
「ヒェッ」
ハオは驚いてベッドから転げ落ちた。

220:創る名無しに見る名無し
18/12/08 06:35:28.69 h/OsWAwZ.net
ハオはシャワー室でメイファンの体を洗っている。

221:創る名無しに見る名無し
18/12/08 11:22:23.66 W5vXwW8w.net
12年前のことじゃ。道場にやって来たその男はメイファンを引き取りたいと言った。
目の前に大金を積まれ、師範は大喜びでメイファンを譲ったが、その後師範はじめ道場の人間は全員が火事で焼死する。
彼が殺したのかどうかはわからないが、その男こそ後の国家主席、
当時はまだ中国共産党の一党員であった習近平じゃった。
習はメイファンを表向きは養女として引き取ったが、その実籍は入れておらんかった。
もしもの時に自分に火の粉が降り注ぐのを恐れたのじゃろうな。何しろ元よりメイファンを殺し屋として使うつもりだったのじゃから。
念のため言っておくがこの物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは何の関係もないぞい。

222:創る名無しに見る名無し
18/12/08 11:35:42.89 W5vXwW8w.net
五歳の時、メイファンは初めて人を殺した。
ターゲットは習の敵対勢力の中心人物じゃった。
習はメイファンを迎え入れると、予め用意していた養護施設に住まわせ、あれこれとプレゼントをした。
円月刀を仕込んだキティちゃんのバッグ、毒針を仕込んだディズニーの雨傘、剣の飛び出るアンパンマンのぬいぐるみ、等々。
まさか五歳の女の子が殺し屋とは誰も思わず、暗殺を重ねても犯人はバレなかった。
念のためメイファンに黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)という通り名をつけ、仕事は電話で人を介し依頼した。
繰り返すがこの物語はフィクションであり、実在の……(略)

223:創る名無しに見る名無し
18/12/08 12:24:01.06 W5vXwW8w.net
ラーラァはメイファンが人を殺すのをメイファンの中から見ていた。
初めのうちは目を覆っていたが、そのうち慣れた。
それでメイファンが幸せなのならそれが一番よいことだった。
メイファンはといえば、ほぼ何も考えとらんかった。
自分の手にかかって他人が死ぬのはどうでもいいし、それをしておけば自分が裕福に暮らせるのもどうでもよかった。
ただ、彼女の頭の中はどうすればラーラァを外に出してあげられるかということで一杯じゃった。
幼い頭で試行錯誤を重ねるうち、自分をもラーラァ同様『気』だけの存在にすることが出来れば、身体の支配権を交代することが可能なことがわかって来た。
それまで専ら武器を使うことと相手の動きを読むことに使って来た『気』の中に自分を潜らせることに大変な努力をした。
習がもしそれを知れば、無駄なことに力を費やすメイファンを止めさせたことだろう。
しかし仕事はきっちりやりながら、自分のための努力もしっかりやった。
それが身を結び、遂にメイファンはラーラァと身体を交代することが出来るようになる。
初めて自分の意思で身体を動かせるようになったラーラァはどんな気持ちじやったろうな。
それはラーラァにしかわからん。

224:創る名無しに見る名無し
18/12/08 12:39:27.71 W5vXwW8w.net
メイファンはラーラァを習に紹介したが、習は役に立つものにしか興味がなかった。
「それが何の役に立つのか?」と聞かれ、ラーラァは何も答えられなかった。
メイファンは身体を姉に交代すると少し大きくなり、服が破れることもあったが、習はラーラァのために服を買ってやることはなかった。
この頃からメイファンは反抗心からか服を着なくなり、室内ではいつでも全裸で過ごすようになった。
メイファンは才能のみで最強の殺し屋となった。
ゆえに身体を鍛えるようなことは何もしとらんかった。
その上メイファンのように『気』を扱うことの出来ないラーラァはただの10歳の子供に過ぎず、習は黒色悪夢に弱点が出来てしまったと嘆いた。
また、二人は同時に起きていることは以前の通りに出来たものの、同時に寝ることが出来なくなった。
『気』を収める部屋のようなものがまだ小さかったらしく、メイファンが意識を失ってそこに入って来ると、寝ていたラーラァがびっくりして必ず起きてしまった。
メイファンが寝ている時にラーラァが一緒に寝ようとしても同じだった。
今では一緒に寝られるようになっておるが、この頃からメイファンの身体は約6年間一度も眠らず、ずーっと起きている子供として不気味がられた。
寝る子は育つと言うが、メイファンが年齢よりも幼く見えるのはこの頃のせいかもしれん。

225:創る名無しに見る名無し
18/12/08 12:48:03.43 W5vXwW8w.net
メイファンが7歳のある日、習のところへ一人の男がやって来た。
男は立派な体格にグレーのスーツ姿の紳士で、習の支持者であり協力者の共産党党員じゃった。
男の名前はリウ・ポホェイシェン。
習は彼にだけはメイファンのことを話しておった。
その日リウが習を訪ねて来たのは、彼の評判に傷をつけてくれている不良息子、パイロンのことについての相談だった。

226:創る名無しに見る名無し
18/12/08 16:39:39.85 b3yJKqKL.net
「もう上海は駄目だ。広州に移り住もう」
恋人のシューフェンを抱きながら、ハオは言った。
「広州へ行ってどうするの? 仕事は? あっちに知り合いでもいるの?」
「知っての通り、俺の生まれはド田舎の村だよ。他のどの町へ行ったって知り合いも親戚もいない」
「じゃあ……」
「散打をやる。俺が強いのは知ってるだろう? チャンピオンになってお前に綺麗な服を着せてやる」
「何甘いこと言い出してんの!?」
「これはチャンスだと思うんだよ。神様が俺に散打をやれと告げているんだ」
そう言いながらハオはシューフェンに挿入した。
「バっ……! バカにも程がある……っ! ハオ……! ハオ! ハオっ!」

227:創る名無しに見る名無し
18/12/08 16:41:01.22 xQVGE+HE.net
ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」

228:創る名無しに見る名無し
18/12/08 17:09:12.72 Alv+gJtk.net
リウ・パイロンは父親の言うような不良息子というよりは、むしろ真面目で運動熱心な大学生だった。
共産党の一党支配を批判し、中国民主化を声高に謳うので、父親にとっては身内のガンであった。
遊び好きで仲間内の人気も高く、散打のジムに通い、その強さは相当なものでアマチュアながらTVで取り上げられるほどだった。
型と演武にばかりこだわる中国伝統武術を否定しており、その伝統武術の大家でもある父にとっては、息子でありながら目の上のたんこぶであった。
自信家で自己主張の強い息子の鼻柱をなんとかへし折り、自分の敷くレールの上を進ませる方法は何かないものだろうかと日頃考えていた。
ある月の綺麗な夜、リウ氏一家は習近平の屋敷に招かれた。
習氏への感謝と服従を誓う意思を家族ぐるみで示すための食事会、というのは表向きだった。
パイロンは欠席を望んだが、家族のためと懇願され、そう言われては断る理由もなく、しぶしぶ同席した。
その席の余興で赤い中国服を着た7歳の女の子が演武を披露した。
その動きは適当で、いい加減で、マンガじみており、ふざけているとしかいえなかった。
父親はパイロンに言った。「あの子はラン・メイファン。7歳にして棒術の達人なんだ。間違いなくお前より強いぞ」
冗談だと思ったパイロンは一笑に伏したが、習がこんなことを言い出した、
「パイロン君は散打をやるそうだが、メイファンとどちらが強いかな?」
それを受けて父親が言った。
「闘わせてみましょう。おいパイロン、お前が負けたらあの子の弟子になるというのはどうだ?」

229:創る名無しに見る名無し
18/12/08 19:31:07.67 Alv+gJtk.net
散打とやらよりメイファンの伝統武術のほうが強い、大学生と7歳の女の子でもその差は歴然だ、そんなことを言われ、パイロンのこめかみに血管が浮きはじめた。
フーとひとつ大きく溜め息を吐くと、彼は笑い、茶番に仕方なく付き合うことを決めた。
「散打は太極拳をベースにしています。だから僕は決して伝統武術を馬鹿にしているわけではない」
そう前置きした上で、しかし現代における中国最強の格闘技は散打である。それを今から御覧に入れて差し上げる、と宣言し立ち上がった。
「いいか? お前が負けたらその子の弟子になるんだぞ?」
父親の言葉に可笑しそうに頷きながら、パイロンはメイファンと向かい合った。
「僕はリウ・パイロン。劉白龍だ。君の名前……何だったっけ」
「ラン・メイファン」
「可愛い名前だね」
パイロンは必殺の誉め言葉とスマイルを投げたが7歳の女の子は無表情を崩さなかった。
「どんな漢字?」
「知らん」
「知らないのかよ!」
パイロンは大笑いしたが、メイファンにその笑いは心地よく感じられた。
馬鹿にして笑っているのではなく、自分の返事にウケて心から面白がってくれていることが気の流れでわかった。
自分が初めて他人を面白がらせ、笑わせたらしいことが嬉しかった。

230:創る名無しに見る名無し
18/12/08 19:42:03.04 Alv+gJtk.net
パイロンにも棒が渡されたが、彼は不要と言った。
「散打は棒を使わない。僕は散打を皆に見せたいんだ」
頭の中では試合の流れが出来上がっていた。メイファンの棒を足を使ったスゥエーや捌きでかわし、懐に一気に詰めて頭を撫で撫でしてやる、そして……
「僕が負けたら僕は君の弟子になる」
パイロンは思いついて言った。
「でもこれじゃ不公平だよな? 僕が勝ったら君は何をしてくれるんだい?」
「お前のカノジョになってやってもいいぞ」
口を結んだ怖い顔でそう即答され、パイロンは笑いながら答えた。
「それは嬉しいな。お願いするよ。ただし、13年後に、ね」
そして言うまでもなくメイファンはカノジョにはならず、パイロンが彼女の弟子になったのじゃ。

231:創る名無しに見る名無し
18/12/08 19:55:04.80 Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンの棒を一撃もかわせず、すべてまともに食らった。
自身の攻撃は一発もかすらなかったどころか、攻撃を出させてすら貰えなかった。
どれだけプライドを傷つけられ、どれだけ自信をズタズタにされたことじゃろうな、それは奴にしかわからんことじゃ。
父親はそれだけが目的だったので、笑顔の消え去った息子をしたり顔で優しくハグし、連れて帰ろうとした。
だが、メイファンが「弟子になると言ったではないか。ここで暮らさせる」と言い出した。
習がメイファンを抑えたが、今度はパイロンが「ここで暮らし、メイファンを老師(中国語で年齢関係なく「先生」の意味)とし、教えを乞う」と頑なになった。
ここから7歳の老師と大学生の弟子、二人の奇妙な師弟関係が始まったのじゃ。

232:創る名無しに見る名無し
18/12/08 20:01:29.89 3SknyXyB.net
ハオ「そうだシューフェン、お前もこれを機会に女優デビューしろよ」
シューフェン「な、何を言い出すの!?」
ハオ「演劇やってたって言ってたじゃないか」
ハオはそう言いながら、入り口あたりを擦っていたのを突然奥まで突いた。
シューフェンは悲痛な叫びを上げ、天国へ逝きそうになったが何とか戻って来ると、答えた。
「高校生の頃の話よ」
「いいじゃないか。お前、綺麗だし、なれるよ、女優。やってみろよ」
「そんなにあたし、綺麗かな」
「あぁ、綺麗だ」
シューフェンは暫く下半身の快感と照れ臭さの両方と闘っていたが、やがて聞いた。
「ファン・ビンビンより綺麗?」

233:創る名無しに見る名無し
18/12/08 20:19:36.98 Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンにとって初めて気の許せる他人じゃった。自分を色眼鏡で見ない人間は彼が初めてだと言えた。
パイロン自身、異能の持ち主と言えるほどの天才じやったから、天才同士わかり合えるものがあったのかもしれんな。
パイロンはメイファンを、稽古の時は「老師」と呼び、遊ぶ時などは「メイ」と呼んだ。
メイファンは迷うことなくどんな時でもパイロンを「お兄ちゃん」と呼んだ。
メイファンは笑うことが多くなったなどということはなく相変わらずの無表情じゃったが、パイロンのことが大好きなのはそれでもバレバレじゃった。
ただ、パイロンが何を考え、メイファンに対してどんな思いを抱いておったのかは……
メイファンの愛情表現はドSじゃった。
パイロンを青アザが出来るほどに棒で突きまくったり、プロの殺し屋と対戦させ痛めつけさせたり、
ペットの人喰い虎と闘わせたり、それ用には細すぎるロープを足に巻いて600m近い高さのビルの117階から飛び降りさせたり、……した。
本当はもっとあるんじゃが、むごすぎてワシにはこれ以上言えん。
それでも稽古が終わるとパイロンは風呂でメイファンを洗ってやったり、すごろくを作って一緒に遊んでやったり、ゼリーを作って一緒に食べてやったりしておった。
ラーラァはそんな二人を黙って身体の中から眺めながら、どんな風に思っていたんじゃろな。

234:創る名無しに見る名無し
18/12/08 20:35:45.57 Alv+gJtk.net
パイロンはメイファンのお気に入りのオモチャじゃった。
彼が棒で突かれまくって痛そうな顔をするのや虎に食われそうになって必死の形相になるのを見て面白がった。
しかしそれは単に彼を虐めているのではなく、実際パイロンはみるみる強くなって行った。
ラーラァがパイロンの傷の手当てをしたいと言い出した時、メイファンは複雑な気持ちじゃった。
何でも分かち合って来た姉に対し、初めて物を取られたくないような気持ちになった。
反対に、パイロンにラーラァを紹介したいという気持ちもずっと心にあった。
その夜、メイファンは身体を交換し、ラーラァはパイロンの部屋のドアをノックした。

235:創る名無しに見る名無し
18/12/08 20:38:28.34 DcOutyTy.net
場面は変わり現在。
モニタールームで数人の男たちがモニターを眺めている。その1人である習はつまらなそうな顔をしていた。
「なんだかなぁ」
習は深い溜息を付くと、部下と思われる男の一人にあとのことを任せモニタールームを後にした。
モニターには風呂場でいかがわしいことをしているハオとメイファンが映っていた。

236:創る名無しに見る名無し
18/12/08 20:49:02.41 Alv+gJtk.net
部屋に入って来た初めて見るはずの白い肌の少女を見て、パイロンは「なんだ、お前か」というような顔で微笑んだ。
その時パイロンは既に『気』の使い方を学び、会得していたから、あるいはラーラァの中に隠れておるメイファンの『気』に気づいておったのかもしれんな。
しかしそれなら奴にとっては最高のチャンス。メイファンはとんでもない隙をパイロンの前に晒していたことになるはずじゃ。
自分を虐げ、恨み重なるメイファンの身体にボディーブローを入れることも容易かったはずじゃ。
しかし奴はラーラァを「ララ」という愛称で呼び、とても優しく誠実な話し相手になった。
イケメンではないがとても男らしいパイロンにラーラァはうっとりとなっていた。
その姉の姿を身体の中からメイファンは、パイロンの瞳の中に見ていた。

237:創る名無しに見る名無し
18/12/08 21:01:28.56 Alv+gJtk.net
パイロンは稽古が終わった後、毎晩施設内の道場に一人で入り、自主的にトレーニングをしておった。
それを気で感じ取り、メイファンは毎晩自分の部屋で、感心すると同時に自分のことが恥ずかしくなるのだった。
大した努力などせずに、ほとんど才能だけで強くなった自分はパイロンに負けているような気がした。
それでメイファンも毎晩イメージトレーニングをするようになり、それはあの子のような『気』の使い手にとっては絶大な効果があった。
メイファンもまたパイロンと出会った時よりも更に強くなり、二人は限界など存在せぬかのように高め合って行った。
そしてその日がやって来るーー

238:創る名無しに見る名無し
18/12/08 21:12:51.69 Alv+gJtk.net
ある日、パイロンは徒手空拳でメイファンと勝負がしたいと申し出た。
メイファンが「徒手空拳」の意味がわからなかったので、「武器を使わず、素手で」と言い直した。
メイファンは断った。
リーチの差やパワーの差など『気』でカバー出来る自信があったが、何よりメイファンは素手で闘ったことがなかった。
自分が負けるからではなく、一発でもかすらせたりしたら師匠の面目が丸潰れになるじゃないかと断った。

239:創る名無しに見る名無し
18/12/08 21:23:52.56 Alv+gJtk.net
するとパイロンが挑発した。
「メイは武器がないと弱いんだな。武器なしだとやっぱり俺のほうが強いということか。なるほど、わかった。泣かせたら可哀想だからやめておいてやるよ」
メイファンは挑発に簡単に乗った。
「俺が勝ったらここを出て行く。いいな?」
そのパイロンの申し出にメイファンは首をひねった。
メイファンはパイロンを監禁しているわけではなく、自由にさせていた。
大学に行くことも出来たし、家に帰ることだって出来たのに、彼は自発的にここにいた。
出て行ってもいいが、ちゃんと戻って来るんだぞ? そう思いながらメイファンは承諾した。
「メイが勝ったら何でも望みを聞くよ。何がいい?」
メイファンはしどろもどろになりながら即答した。
「私をお前のお嫁さんにしろ」

240:創る名無しに見る名無し
18/12/08 23:48:40.98 fVFw74Gp.net
ある男性が不良にからまれていた。
「オレ様はよ、すごいんだぜ」
そこへたまたま母親と、男の子の親子連れが通りかかった。
「ボク様〜!、ボク様〜!ボク様はよ、すごいんだじぇ。ボク様〜!」
男の子は言った。
不良がその男の子をちらっと見た。
「こら、真似しちゃいけません!」
いやいや、真似になってないと思うぞ。
「ボク様〜!、ボク様〜!」
いやいや、なんかすごいなこの男の子。
すると、その隙を見て、からまれていた男性がダッシュして逃げていった。
「あ!おい、ちょっと、まて」
不意をつかれた不良は、追いかけることができなかった。
しばらくしてから怖い顔をして男の子を振り返った。、
「ガキぜ。どうしてくれるんぜ」
その不良は言った。
「ガキじゃない、ボク様〜!、ボク様〜!」
「こら、真似しちゃいけません!」
この状況で2回言うとまずいと思うんだ。


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