【ファンタジー】ドラ ..
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2:創る名無しに見る名無し
17/01/02 00:03:14.74 TulIvSlj.net
おつ

3:創る名無しに見る名無し
17/01/02 08:01:48.51 RUmTO285.net
ジェンスレ思い出した

4: ◆KxUvKv40Yc
17/01/03 23:21:26.77 rIEwX2bO.net
第一話『灼熱の廃都』(1スレ目〜89)
赤い風の吹き荒ぶ、灼熱の聖域―イグニス山脈。
ヴィルトリア帝国南部に連なるその魔境に、ただ一人で歩を進める男が居た。
彼の者の名は、アルバート・ローレンス。帝国が誇りし七人の黒騎士の一角であり、黒竜騎士の称号を持つ男だ。
そんなアルバートは、世界中を震撼させている古竜(エンシェントドラゴン)をも操ることが出来ると言われている竜の指輪の捜索を命じられ、遥々このイグニス山脈にやって来たのであった。
そして、アルバートが山道を歩いていると、彼を獲物と見なしたジオリザードマンたちが現れた。
それらを魔剣レーヴァテインで蹴散らしている最中、自らをハイランド連邦共和国の名門魔術学園であるユグドラシアの導師だと名乗ったエルフ、ティターニアと邂逅する。
ティターニアとの共闘でリザードマンを全滅させたアルバートが、彼女の話を聞いてみれば、どうやら自分と同じような目的でこの場所に来たのだと分かる。
このままティターニアと共に探索を続けるべきか考えていた時、二人の前に現れたのは伝説の古代都市の守護者―スチームゴーレムだった。
古代文明の叡智の結晶である強敵と対峙し、途中で合流したハーフオークのジャンや、アルバートを付け回すコインという犯罪奴隷の協力もあり、一行はゴーレムを撃破することに成功。
一体何故、とうの昔に滅びた古代都市の護り手が、まだ活動を続けているのか。
そんな疑問は、次に取ったアルバートの行動によって、すぐに払拭されることとなる。
周囲の風景に違和感を覚えたアルバートは、魔術効果さえも燃やし尽くすことができるレーヴァテインを振り、辺り一面を覆っていた幻術を見事に焼き払う。
すると、その中から現れたのは真紅に彩られた美しい街並み。かつて栄華を誇った四大都市の一つ、灼熱都市ヴォルカナの遺跡に他ならなかった。
考古学者でもあるティターニアが、浮かれた足取りで街の中を駆け回っていると、次いで現れたのは幻の蛮獣ベヒーモスと、その上に跨った赤い髪の少女だ。
赤髪の少女は、指輪の元までアルバートたちを案内すると言い、途中で強引に割り込んできた格闘士のナウシトエも加えつつ、一行はヴォルカナの神殿へと向かう。
そして、ようやく辿り着いた遺跡の最奥部で始まったのは、ベヒーモスと対峙するという試練だった。
アルバートはその突出した力を以てベヒーモスと拮抗し、ティターニアは空間の属性を塗り替える大魔術の詠唱を開始。
ジャン、コイン、ナウシトエらの時間稼ぎの甲斐もあり、発動したティターニアの魔術によって、灼熱のマグマは一変。
突如として極寒の風が吹き荒れ始めた洞窟内で、ベヒーモスの動きは明らかに精彩を欠き、その隙を狙ってアルバートの剣が敵の右腕を断つ。辛くもこれを討ち倒すことに成功した。
彼らを試練を越えた勇者と認め、赤髪の少女―いや、焔の竜イグニスは、ドラゴンズリングに関わる伝説を語り始める。
だが、遂に差し出された指輪を前にして、暴走とも呼べる行動を取ったのはナウシトエだった。
ナウシトエは素早く奪い去った指輪を飲み込むと、その肉体が竜の魔力によって、化け物じみた姿へと変貌する。
この騒動でアルバートは彼女を帝国の敵と見なし、今にも戦いの火蓋が切って落とされようとした時、またしても事態が急変する。
虚空を斬り裂く氷の槍に貫かれ、あっけなく絶命するイグニス。
そして、空中に開いた黒い穴から現れた、神話の登場人物のように美しい男。
それはかつてのアルバートの親友であり、現在はダーマ魔法王国の宮廷魔術師を務める天才。白魔卿の異名を持つ、ジュリアン・クロウリーだった。
憎むべきジュリアンを前に激昂したアルバートは、地を駆け抜けて斬り掛かるが、しかしその剣は悪魔の騎士(デーモンナイト)によって阻まれる。
ジュリアンの護衛であるその騎士と剣戟を交え、無残にも完敗したアルバートは、胴体に強烈なダメージを負って倒れ伏す。
そして、仲間たちもジュリアンの行使する魔術の前に手も足も出ず、為す術もないまま、ナウシトエが腹に抱えた指輪を奪われてしまった。
ティターニアは最後の精神力を振り絞って転移魔術を発動し、満身創痍のアルバートらを、麓のカバンコウまで送り届ける。
傷付いた一行は体を休めながら、それぞれに思いを馳せ、その上空には町並みを照らす黄金色の満月が浮かんでいた。

5: ◆KxUvKv40Yc
17/01/03 23:28:05.33 rIEwX2bO.net
第二話『海精の歌姫』(1スレ目90〜262)
イグニスが遺した言葉を手掛かりに水の指環があると思われるアクア海溝を目指すことにした一行は
海溝に向かう船を手に入れるために自由都市カルディアを訪れた。
街の中を歩いていたところ、物乞いらしき少女が店主に痛めつけられている現場に遭遇。
なんだかんだで少女を助けた一行は、少女から遺跡や指環に関する情報収集を試みる。
情報提供として少女が歌った歌は素晴らしく美しく、歌詞には「ステラマ


6:リス」「人魚」という言葉がちりばめられているのであった。 そんな中、街の衛兵が少女を監視していることに気付き警戒していたところ、港で爆発火災が発生。 駆けつけてみると、反帝国レジスタンスの海賊「ハイドラ」による襲撃であった。 帝国騎士であるアルバートを中心とする一行は、必然的に消火・鎮圧に協力することとなる。 火災がほぼ鎮火しひと段落と思ったのも束の間、港に突如巨大な船が現れ、街に砲撃を開始した。 その船を指揮するのは、ハイドラの首領エドガー・オールストン。 エドガーの狙いは、帝国打倒のために、実は特殊なセイレーンである少女の「滅びの歌」を発動させることであった。 ジャン・ティターニア・ナウシトエは港にてエドガーと戦闘を開始。 一方、敵に路地裏に誘導されたアルバートとそれを追いかけていったコインは、路地裏にてハイドラ団員と戦闘を開始する。 エドガーは予想以上に強く、苦戦するジャン達。 追い詰められて絶体絶命のピンチに陥ったところ、津波のようなものが来て、ジャンとティターニアは暫し気を失うのであった。 気が付いてみると、ジャンとティターニアは美しい人魚の姿になった少女に手を引かれて海の中を進んでいた。 (尚、アルバート・コイン・ナウシトエの三人は戦闘の混乱で消息不明になってしまった) 少女の正体は、セイレーンの女王にして海底都市ステラマリスの守護聖獣クイーンネレイド(通称クイーン)であった。 実は津波のようなものは、クイーンによる戦意喪失効果をもつ歌の大魔術であった。 クイーンは、指環の勇者として認めたジャン達を海底都市ステラマリスの水竜アクアのもとへ連れていくという。 記憶を対価に人間に扮して指環の勇者を探しに地上に来ていた彼女は、指環の勇者と出会ったことで全てを思い出したとのことだ。 道中で流されていたドワーフのマジャーリンを仲間に加え、ステラマリスに到着した一行は 指環の祭壇へと導かれ、青髪の少年の姿をした水の竜アクアと相見える。 アクアは一行に水の指環を渡し、近頃何故か風の竜ウェントゥスが襲撃をしかけてくると告白。 噂をすれば早速、ウェントゥス配下と思われる翼竜の一団が攻め込んできた。 迎え撃つ一行だったが、襲撃に便乗して何故かジュリアンまで現れ、一行から指環を奪おうとする。 アクアがジュリアンの足止めをし、クイーンの転移の歌によって危うくカルディアに逃がされた一行。 別れ際にアクアは、次は大地の竜テッラの元へ向かえと言い残した。 カルディアに転送された一行のもとに、黒騎士の一人であり、指環を集める命を受けている黒鳥騎士アルダガが現れる。 アルダガと会話をしていたところ謎の襲撃者達が襲い掛かってきて戦闘となり、マジャーリンが死亡。 怒りのままに襲撃者達を蹴散らすジャンとティターニアだったが、襲撃者達の死体が巨大なアンデッドとなって襲い掛かってきた。 アルダガはそのアンデッドを一撃で倒した後、ジャンが持つ指環の存在に気づき、指環を渡すよう一行に迫る。 ジャン達は協力して指環を集めないかと交渉するも決裂、戦闘となった。 ジャンとティターニアは激しい戦闘の末に辛くもアルダガを撃破。 戦闘不能となったアルダガは、先々での再戦を予告しつつ強制帰還の転移術によって二人の前から消えて行ったのであった。 ※現在第三話進行中。参加者は常時募集中なのでお気軽にどうぞ。



7:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/06 01:44:32.89 FALY+Lj6.net
名前:ミライユ・ヴィ・エルジュ
年齢:23
性別:女
身長:167
体重:54
スリーサイズ:90/57/87
種族:人間
職業:ギルドマネージャー
性格:明るいが、冷酷で無慈悲
能力:空間を操作する魔法、格闘術
武器:なし(あらゆるものを武器にする)
防具:シンプルな紋様のローブ、プリーツスカート
所持品:事務用品や連絡用マジックアイテム、護身用のナイフ等
容姿の特徴・風貌:茶色の外ハネショートボブで、明るく笑顔で声も大きく快活そうに見える。
簡単なキャラ解説:ハイランド連邦共和国首府・ソルタレクのギルドマスターの直轄のギルドマネージャー。
ギルドマスターに絶対的な忠誠を近い、その感情は常軌を逸しており、完全に耽溺している。むしろ連邦の総領への忠誠心は無いに等しい。
逆に言えばマスター以外は心の中では虫ケラのように扱っている。
密命でギルドの一員として、他国のほか、国内の元老院、ユグドラシアの動向を調査しており、今回はティターニアの監視を主とする。
また、指名手配中のギルド員の始末、新ギルド員の勧誘など、様々な任務に対応。指環についても調査している。
ミライユ以外にもギルド員はマネージャークラスを含め数人が行動を開始している。
一見快活そうに見え、敬語調で明るく喋る裏で計算する性格のため、相手の警戒を解きやすい。

8:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/06 01:45:13.83 FALY+Lj6.net
>>294【了解です!】
>「……行っちゃったよ」
ラテがギルドの会員証を持ったまま、ブツブツと何やらつぶやきながら何かを考えている。
それをティターニアたちの方に向かいながらミライユは気にしていた。
ラテは確か受け取る際に少し抵抗したはずだ。
もしかしたら、何か勘違いしているのかもしれない。
ミライユとて鬼ではない。素早く戻ると、軽く声をかけた。
「あのう、一つ。ラテさんが所属しているレンジャーズギルド、実は冒険者ギルドの一部なんです!
そういうことですから、もしソレを"失くす"などということがあれば、「組織を抜けた、裏切った」ということになりますので、
くれぐれもご注意を。勿論、持っていて犯罪を犯しても同じです。私、仲間割れって、嫌い、なんですよ〜」
軽い感じで話しかけるも、ミライユのウィンクされたもう片方の目は細くテラの目を見据え、笑ってはいなかった。
あぁ、とふと自分の服装を見ながら思った。ミライユはローブの下にチェイン・メイルを着込んでおり、腹部は特に分厚く防護されている。
これはポイントガードの効果もあるが、身体の線を出さないようにするためでもあった。胸や尻を見せつけるのは目立つだけで不利でしかない。
一方で先ほどのラテという女は元々だろうが、なんと健康的で肉感的か。
あれを女好きの紳士であるマスターが見れば、興味を持たないとも限らない。
ここがアスガルドではなく、そこらの無人の荒野だったのなら……
(私は、女に会員証を渡した後、騙して殺害し、事故に巻き込まれた扱いにしてしまっていたかもしれません……)

大男、ジャンはミライユの全身の装備などを見ると妙に冷静な顔になってティターニアに耳打ちをした。
どうやら、怪しい者だと思われているらしい。やはり彼氏か、部下の線が正しいのだろう。
>「いかにも、我がティターニアだ。しかしよく分かったな。
ソルタレクまで名が知れ渡っているとは光栄というべきか恐れ多いというべきか。
このようなところまで遠路来てもらってかたじけない」
「いえいえ、こちら側が勝手に視察を行っただけですから、私についてはお構いなく。
ギルドでは有名ですよっ! 特にマスターの部屋なんかにはティターニア様の……あっ」
うっかりマスターの部屋の様子を伝えそうになるところだった。

9:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/06 01:46:04.19 FALY+Lj6.net
>「実はこのところ研究のために放浪しておったのだが
最近洞窟から強いモンスターが出てくるようになって被害が出ているということで舞い戻ってきたところなのだ。
同行はやぶさかではないのだが洞窟探索には危険が伴うと思うが……それでも良いのであれば共に行こう」
ミライユの同行をあっさりと承諾するティターニア。これなら目標としては達成だ。
「研究……ですか!? それは、一体、どのような!? あぁっ、そういった内容は後にしましょう!」
一瞬だけミライユの頭で「指環」の存在が首を擡げたが、慌てるのもよくない。
>「ジャン殿もよいな? さっきの戦いぶりを見ておっただろう、きっと頼りになるぞ」
今度はゆっくりと頷く。やはりティターニアには従順であることから並々ならぬ信頼関係であることは確定。
グゥー……
「……はッ!」
腹の音を聴いて、ティターニアとジャンがこちらを見た。
ミライユは空腹には弱い。常に腹ペコなのだ。顔を赤らめながら慌てて宿付きの居酒屋を探す。
既に日も暗い。

「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。
今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」
『フェンリル』と書かれたそこそこ高級なこの宿は、大衆酒場というよりは
レストランのような様相をしていた。ちなみに宿は小ぢんまりしておらず、大部屋ばかりである。
席も思いの他空いている。
「3人ですか? 4人ですか!?」
後ろから様子を見ているラテをけん制しながら、情報交換の邪魔にならないのなら、ラテに参加してもらっても良いつもりだ。
恐らく大した影響力はないだろう。それに今後何らかの因縁を付けて誤殺する機会も出てくる。
大きなテーブルに腰掛けたジャンの隣に慣れ慣れしく座り、そのたくましい右腕を手に取った。
同時に正面に腰掛けるティターニアの反応も伺う。
「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね! ちなみにうちのマスターはここまで太くないですが、
力はもう、すっごいんです! この前の暴動のときもすごい活躍をして、五十人斬り?をやっても、全く動じてませんでした。その晩マスターは……」
と、酒も入りすっかりとミライユはマスターの惚気話に入っていった。
良質なこの地方特有の肉料理が運ばれ、モグモグとそれらを食べながら。
この後取ってある宿は、4人用の大部屋が一つだけだ。

【容量オーバーにより、こちらに書かせていただきました。】

10: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 07:00:35.53 QmQFQmYi.net
あ、なんか丁度よく合流出来そうな気がするので
ここらで割り込ませてもらってもいいですか?
投下には3日もかからないと思います

11: ◆KxUvKv40Yc
17/01/06 08:05:44.97 H9lZqN73.net
>9
ではよろしく頼む! ミライユ殿がうまく誘導してくれたな!

12: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 19:31:48.36 07vFe33q.net
っと、そう言えばあの女の子は大丈夫かな?
あの歳であんな馬鹿でかい魔物に襲われたんだ。さぞや肝を冷やしただろう。
私があの子だったら多分ちびってたね。
えーと……うん、もうお母さんと会えたみたい。
逃げる時に手を離しちゃったのか、泣きながら謝ってる。
ろくに息も出来ないんじゃないかってくらい泣いてるせいで、逆に女の子が慰めてるよ……。
アンデッド系の魔物が出て来るダンジョンとかでも、自分よりビビってる人がいるとなんか冷静になるって言うよね。
トレジャーハンターは基本ぼっちなのでそういう感覚、私には分かりませんがね!
ま、あの感じなら私が首を突っ込む必要はなさそう。
なんて感じでちょっとした満足感を得て前を向き直すと、ミライユさんが目の前にいた。
って、えぇええええええええええええええええ!?すっごいびっくりしたんだけど!
えっ、なに、この人思い立ったら即行動って感じでちょっと怖いんだけど。
いや私も人の事言えないけどさ、なんて言うか……言葉にしちゃうとちょっと失礼なんだけど、とにかく怖い。
>「あのう、一つ。ラテさんが所属しているレンジャーズギルド、実は冒険者ギルドの一部なんです!
「へ?……あ、はぁ、それはどうも……」
と、思ったら話しかけられた内容はわりと普通だった。
まぁ冒険者同士の互助を旨とするなら、そりゃ提携関係くらい組んでるか。
それをまるでそっちの傘下みたいな言い方してるのは、ちょっとどーかと思いますがね!へんっ!
ん?あれ?もしかしてこれ、私の態度が懐疑心丸出しで気を使わせちゃった感じ?
うーん、だとしたら申し訳ない事しちゃった……
>そういうことですから、もしソレを

13: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 19:33:55.61 07vFe33q.net
>そういうことですから、もしソレを"失くす"などということがあれば、「組織を抜けた、裏切った」ということになりますので、
 くれぐれもご注意を。勿論、持っていて犯罪を犯しても同じです。私、仲間割れって、嫌い、なんですよ〜」
「……やだなぁ!やっと冒険者になれたのに失くす訳ないじゃないですか!もー!」
……なんて一瞬でも思った私が馬鹿だったね、こりゃ。
レンジャーの訓練を積んだ私の前で、殺気を隠そうともしないのは、見くびられているからかな?
それとも隠そうとして、それでも隠しきれなかった?
さっきは失礼だからって言葉にしなかった事を改めて書き留めておこう。
ミライユさんはまるで、感覚の鋭い獣か魔物のようで、怖いのだ。
私を見下ろす彼女の眼に宿る光を、私は見た事がある。
ダンジョンの奥底で、何度も……アレは知性ある魔物が、矮小な獲物へと向ける殺意の光だ。
あの人は、何故か私を殺そうと思い立って、実際に殺意を抱いて……
多分、周りに人が多すぎるから、やっぱりやめた。
やっぱりやめた、程度の感覚で、人を殺すか殺さないか決められるんだ。
……いやいやいや!怖すぎるでしょ!ホントなんなの冒険者ギルドって。
まず殆ど初対面の私に殺気を向ける理由が分かんなすぎて怖い。
まさか私が冒険者ギルドに懐疑的な態度を見せたから?
どこの独裁者だよ……絶対ろくでもない組織だよ冒険者ギルド。
そもそも、失くしたら裏切り扱いってのがもうおかしい。
だってそれって冒険者ギルドの刺客に会員証を奪われても『紛失』扱いでしょ?
地獄行きの片


14:ケ切符かよ。助けてー粛清されるー。 >「いかにも、我がティターニアだ。しかしよく分かったな。   ソルタレクまで名が知れ渡っているとは光栄というべきか恐れ多いというべきか。   このようなところまで遠路来てもらってかたじけない」 でも……これでもう、見て見ぬふりは出来ない。 あの人は、いとも簡単に人を殺せる……魔物だ。 目の前で、魔物が人ににじり寄るのを、我が身可愛さで見過ごす訳にはいかない。 それに……冒険者ギルドが魔物をけしかけるほどの二人。 あの二人が何者なのか……私も冒険者なんだ。気にならない訳がない。 さぁて、それじゃあ……レンジャーのスキルを見せてやる。 私は人混みに紛れ込むと、そのまま気配を消し去った。 ……とは言っても、気配を消すって具体的に何をしてるの?と思う人もいるだろう。 実は言葉にしちゃうと結構簡単で、これは魔力を纏っているのです。 と言っても魔法使いがよく使ってる硬い壁みたいな感じではなくて、どっちかと言うとこれは布。 さっき魔力の話をしたけど、魔力ってのは別に人体以外にも宿ってるし巡ってる。 自然物に宿る魔力は人によってはマナって呼ぶ事もあるね。私もその方が区別付けやすくて好き。 ともあれ、そのマナの巡りは一定じゃない。 そして一定じゃないって事は、対流が生まれ、模様が生まれ……風景が生まれる。



15: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 19:36:20.87 07vFe33q.net
察しのいい人はもう分かっただろう。
私達レンジャーは、そのマナの風景に溶け込むように、魔力の迷彩布を被るのだ。
なにしろ空間そのものと同化するから、今の私は例え視界に映っていても、気付けない。
路傍の石ころ同然だ。
この世界の何処かにある和国出身のレンジャー、ニンジャ達はこのスキルが凄い上手で、固有の別スキル扱いまでされてるとか。
あ、勿論足音や呼吸にも気を使ってますよ?そこは基礎中の基礎。
ちなみに一流のアサシンともなると、そこにいると言われてもなお、目を凝らしてやっと見えるくらい。
おっぱい揉まれても反応が一瞬遅れるレベル。あの先輩はいつか絶対ぎゃふんと言わせてやる……。
まぁ流石に私はそこまで上手くは隠れられません。
が、こんだけ人がいれば問題ないね。木が隠れるなら森の中。
さておき私はミライユさんと、彼女に絡まれた二人へと忍び寄る。
>「ジャン殿もよいな? さっきの戦いぶりを……
……うん、二人とも意識はミライユさんに向いてる。
これなら上手くやれる……私は二人の背後に回り込むと、
「どーもこんにちわ!お話中にすみませんが今、洞窟の話をしてましたよね!」
なるべく不意を突くように、大きな声で挨拶をした。
「洞窟って、テッラ洞窟の事ですよね?実は私もあそこに目を付けてるんですよ!
 魔物が急に強くなったって事は、きっと何かあるに違いないって!お二人もそうなんですよね?
 ……あ、すみません、私トレジャーハンターのラテって言います!」
うーん敬語を使うと体がむずむずする……え?なんでそんな脅かすような真似をしたのかって?
「でもちょっと当てが外れちゃいまして……
 オオネズミですらあれだけ凶暴化してるとなると、
 私だけじゃ大して潜れなさそうなんです」
ちっちっち、その脅かすのが大事なのですよ。
「なので……もし良ければ私もそちらのパーティに混ぜてもらえませんか?」
小説とか絵物語を読んでるとよくアサシンっぽい登場人物が
『彼はまだ来ていないのか?』
『……ここにいる』
『なっ……まるで気配を感じなかったぞ……』
みたいなやり取りをしてたりしない?
アレって実は創作の中だけのカッコつけじゃなくて、現役のレンジャーもよくやるんだよね。
理由は主に二つ。
まず遊撃を担当するレンジャー系列の冒険者は、いざって


16:桙ノ切り捨てられやすい。 だから依頼者や同行者を事前に観察して、ヤバそうならそのままさよならする為。 あの有名なアサシン、ミスター13さんはこっちが理由だね。あの人の場合、裏切ったら相手がこの世からさよならするけど。



17: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 19:37:57.48 07vFe33q.net
もう一つは……実力を知ってもらう為だ。
不意の突けないレンジャーとか、ねえ?
その点ではさっきの私はかなり上手く出来た気がする!
この人達もかなりの手練っぽいけど、最悪でもちょっとビクッとくらいは……したよね?ね?
私みたいな村娘Aはかなり背伸びしないと舐められがちなのです。
「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません!
 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、
 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」
 
これは特に嘘偽りなく本当。
そもそもこの都で上手い事マジックアイテム仕入れて、よそで捌くだけで収支的には問題ないくらい。
なんか冒険者が泊まるには無駄に高級な宿屋で無駄にお高そうな料理を食べたりしない限り、今回の冒険に赤字はないのだ!

【ラテさんがパーティ加入申請を飛ばしました】

あ、結構余白が出来ちゃったからてきとーに落書きしよっと。
ちなみに今回使ったレンジャースキルは実は【スニーク】だけじゃなかったりする。
さっきの私って実力を示しつつも、隙のないアサシンって感じは全然しなかったでしょ?
アレは素が出ている訳ではなく、そういうスキルなのです。
レンジャー系でも特にシーフやエージェント、アサシンなんかが使うスキル【ヒュミント】だ。
意味は人的諜報。騙したり、籠絡したり、魅了したり、とにかく人の心情を利用して利益を得る為のスキルだ。
最近やっと一端の冒険者になれてやる気出してます!ふんす!
って雰囲気は、きっとこの人達の心から庇護欲を引きずり出す!はず!
重ねて申し上げますが素が出てる訳じゃないんだからね!
いやホント、馬鹿な事書いてんなーとか思ってるでしょ?
訓練させられるんですよ、ちゃんと。
先輩に「チワワだ!チワワの気持ちになれ!」って言われながら上目遣いの練習を一時間くらい。
どさくさに紛れて「体も使え!押し付けろ!」とか言われて流石にマスターにセクハラで訴えました。
いつもは物静かで優しいお爺ちゃんって感じのマスターなんだけど、
その時は私の訴えを聞くや否や、思わず震えるほど冷たい声で「けしからん」って言って立ち上がり……
そのまま先輩のもとへ向かうと
「チワワにだって牙はあるからこの子は精々ハムスターじゃろ。丸みもあるし」
とか厳重注意してくれました。ハムスターにだって前歯があるわい!噛み付いたるぞ!
もうやだあのギルド……。
ちなみにこの【ヒュミント】。
達人が使えばお互い武器を構えて相対した状況でも、致命的な油断を誘えるとか。
まさに魔性って奴ですね。
また人によっては【テンプテーション】とか【ハニートラップ】みたいな呼び方もします。
私はそういう露骨な言い方はよくないと思います!
……え?さっきからシーフやらアサシンのスキルばっかだけど、トレジャーハンターのスキルはどうしたって?
この街中で何をしろと。鍵開けか。
勇者じゃあるまいしそんな事したら犯罪ですよ犯罪。

18: ◆ejIZLl01yY
17/01/06 19:38:52.57 07vFe33q.net
そんな感じでとりあえずパーティ申請送りました
ふと気づいたけど私も結構怪しい奴だこれ!

19:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/07 16:57:45.21 AenxSHOl.net
名前:


20:Wャン・ジャック・ジャンソン 年齢:27歳 性別:男 身長:198 体重:99 スリーサイズ:不明 種族:ハーフオーク 職業:冒険者 性格:陽気、もしくは陰気 能力:直感・悪食 武器:良質な量産品の手斧・ナイフ 防具:鉄の胸当て 所持品:ロープ・旅道具一式 容姿の特徴・風貌:薄緑の肌にごつい顔をしていて、口からは牙が小さく覗いている          笑うと顔が歪み、かなりの不細工に見えてしまう 簡単なキャラ解説: 暗黒大陸の小さな村で生まれ、その村に立ち寄った魔族の冒険者の 生き方に憧れ冒険者を目指し大陸を飛び出た。 それ以降、人間の異なる価値観に戸惑いつつも今ではそれなりに名が売れた冒険者として 日々、未知の風景を求めて探索している。



21:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/07 16:58:58.01 AenxSHOl.net
>「ソルタレクの冒険者ギルド……か。まあ適当に話を合わせてくれ」
小声で返ってきた返答に、小さく頷いてティターニアの後ろへ一歩下がる。
二人は護衛対象と護衛という関係である以上、ジャンは必要以上に声を出す気にならなかった。
そうして二人の会話を眺めていると、どうやらこのミライユと名乗った女性もこちらに同行してくるようだ。
武器の腕前は問題なく、魔術の扱いにも慣れている。
>「ジャン殿もよいな? さっきの戦いぶりを見ておっただろう、きっと頼りになるぞ」
「ああ、俺としても歓迎だ。魔術も武器も使える奴ってのは貴重だからな」
ゆっくりと頷き、またティターニアの後ろに控える。
仮に指環を狙う刺客だったとしても、同じ冒険者である以上なんらかの取引に応じるだろうとジャンは考えていたのだ。
そして宿でも探そうかと後ろを振り向いた瞬間、目の前の空間からぬるりと少女が現れた。
>「どーもこんにちわ!お話中にすみませんが今、洞窟の話をしてましたよね!」
>「洞窟って、テッラ洞窟の事ですよね?実は私もあそこに目を付けてるんですよ!
 魔物が急に強くなったって事は、きっと何かあるに違いないって!お二人もそうなんですよね?
 ……あ、すみません、私トレジャーハンターのラテって言います!」
>「でもちょっと当てが外れちゃいまして……
 オオネズミですらあれだけ凶暴化してるとなると、
 私だけじゃ大して潜れなさそうなんです」
何もないところから姿を現し、いきなりまくし立ててきたラテと名乗った少女。
見れば先ほどオオネズミを狩っていた冒険者のようだが、レンジャーの技である姿隠しを使いわざわざ背後から来たようだ。
こういった行為を行うレンジャーは少なくない。なぜかというとレンジャーを名乗りマジックアイテムの価値を偽って
仲間からだまし取る者、嘘の偵察で仲間をまとめて殺し、遺留品をかっぱらう者は後を絶たないからだ。
だからこそ、多くのレンジャーは他の冒険者と組むときには、自分がきちんとギルドで学んできたことを
証明するために自分の実力を示す行為を行う。
それは弓の技術や罠外し、簡易な鑑定などがあるが、やはり一番有名なのはこの姿隠しだろう。
ジャンも未熟な姿隠しならば背後に来る前から見抜けるが、ラテの姿隠しは分からなかった。
つまり、ギルドでしっかりと学んできたということだ。
「……見たところ、経験はあるみてえだな。その箱、ミミックだろう?
 単独で狩ったなら大したもんだ」
ラテの装備を上から下まで点検する。動きやすい服装に、魔除けと思われる大量のアクセサリー。
ミミックの箱を担いでいる理由はよく分からないが、たぶん振り回して鈍器にでもするのだろう。
それから盾にできそうな石板に、なんと呼べばいいのか分からない武器のようなもの。これもきっと振り回すんだろうとジャンは思った。
>「なので……もし良ければ私もそちらのパーティに混ぜてもらえませんか?」
>「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません!
 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、
 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」
レンジャーにしてはいい条件……のような気がする。
実際レンジャーだけで魔物を倒せるかというと難しいだろうし、このまま断るのも……悪い気がする。
(なんだこの…この違和感。そういえばレンジャーはまだ何か対人の技があった気がするんだが……
まぁいいか)
持ち前の前向きな姿勢がヒュミントに大きく影響され、結局ジャンは了承した。

22:ジャン ◆9FLiL83HWU
17/01/07 16:59:44.80 AenxSHOl.net
「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。
 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」
いかに職業としてのレンジャーが有用であるかをティターニアに語っていると、ふと腹の音が鳴った。
昼に屋台でイモガエルのもも肉串を食ったばかりのジャンではなく、ティターニアでもないようだ。
ラテでもなかった。では誰かというと……
>「……はッ!」
分かりやすく顔を赤く染めている。刺客とは思えないほど感情を表に出すミライユに、ジャンはもしかすれば
刺客ではないのでは、と思い始めていた。
>「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。
今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」
そして何事もなかったかのように宿へ案内してくれ、おまけに奢ってくれるという。
普段泊まることのないような高級さを醸し出す宿は明らかに冒険者向きではないようにジャンには思えたが、
きっと首府のギルドの人間はこういった宿に泊まるのが一般的なのだろうと考えることにした。
ジャンはテーブルに座り、持ち慣れない銀のフォークやナイフをどうにか不器用に使いながら運ばれてきた料理を食べる。
正面にラテ、右隣にミライユ、左隣にティターニアという形になったが、護衛としては悪くない位置だ。
ただ、料理はあまり美味しく感じられなかった。
(奢りなのは嬉しいけどよ……そこらへんの屋台で肉串とかミルクパンでも食ってた方が気楽だぜこりゃあ)
客が少ないとはいえ、見た目はオークであるジャンをじろじろと眺める視線を入ったときから感じているのだ。
旅の途中でもこういった視線を感じることはあったが、よりにもよって居住種族が最も多いであろうここでもそうなるとは!
>「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね! ちなみにうちのマスターはここまで太くないですが、
力はもう、すっごいんです! この前の暴動のときもすごい活躍をして、五十人斬り?をやっても、全く動じてませんでした。その晩マスターは……」
居心地の悪さを感じ始めていた頃、ミライユが話しかけてきた。わざわざ右手を手に取って、分かりやすい世辞を飛ばしながら。
「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」
話をティターニアに振りつつ、早くこの料理が終わってくれと願いながらナイフで肉を切り分ける。
結局、ジャンはこの食事で腹が満たされることはなかった。

23: ◆ejIZLl01yY
17/01/07 19:43:40.32 sAdh7jqa.net
(この人用途が分からない他人の装備は全部鈍器扱いしてる・・・?)

24:創る名無しに見る名無し
17/01/07 22:44:34.47 rCRuv5O1.net
>>19
黙ってろ

25:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 21:27:49.06 +bm/sbWr.net
>「いえいえ、こちら側が勝手に視察を行っただけですから、私についてはお構いなく。
ギルドでは有名ですよっ! 特にマスターの部屋なんかにはティターニア様の……あっ」
世の中には部屋中に好きな吟遊詩人の肖像画を貼る人種も存在するがその類だろうか、と思うティターニア。
少し気にはなるも、うっかり口を滑らせたようだったので詮索はしないことにした。
>「ああ、俺としても歓迎だ。魔術も武器も使える奴ってのは貴重だからな」
おおかた意図は伝わったようで、ジャンもミライユの同行を承諾した、その時だった。
>「どーもこんにちわ!お話中にすみませんが今、洞窟の話をしてましたよね!」
「なぬ!?」
突然、目の前に先ほどのリスかハムスターのような雰囲気の少女が現れた。
隠密の魔術でも使ったのか?と一瞬思うが、魔術師といった出で立ちでもない。
ジャンが少女の素性を見極めようとするように、その全身を検める。
>「……見たところ、経験はあるみてえだな。その箱、ミミックだろう?
 単独で狩ったなら大したもんだ」
「すまぬな。別に変な意味で見ているわけではない。見慣れぬアイテムに興味津々といったところだ。
そなた、面白そうなものを色々持っておるではないか」
小柄ながらなかなかに健康的な肢体の少女である。
要らぬ誤解を招かぬように一言言い添えながら自分も改めて少女の出で立ちを見てみれば、
鞄代わりのミミックをはじめとして、全身を大量のマジックアイテムらしき装備品で固めている。
おそらくトレジャーハンターの類、ということは先程突然現れたように思えたのはレンジャーの姿隠しだろう。
その原理は、魔術師のやり方と発動の過程こそ違えど、魔力を纏っているというものらしい。
ティターニアは以前、盗賊少女を魔術師の素質ありとしてスカウトしたことがあるが
この世界における魔術師とシーフ・レンジャー系技能というのは実は素質に共通する部分があるのかもしれない。
実際冒険者にはその二つを兼ね備えた怪盗のようなクラスもあるし
和国のニンジャというのもレンジャー系技能と忍術という独特の術を併せ持つ、それに近いもののようだ。

26:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 21:31:12.26 +bm/sbWr.net
閑話休題―ラテと名乗った少女は、自分の目的地もテッラ洞窟だと言って、同行を申し出てきた。
只でさえかなり怪しい人物の同行を承諾した直後であり、ついでではないが心理的ハードルが下がっている。
その上密やかに行使されたヒュミントの効果もあり、ジャンがかなり承諾の方向に傾いている。
増してや―本人に自覚は無いが端から見ていればもうお気づきであろう。
ティターニアは可哀そうな子どもや危なっかしいドジっ娘や健気に頑張る若者には滅法弱い。
「我はティターニア。以後よろしく頼む」
ティターニアはラテの作戦の前にあっさり陥落した。効果はてきめんだ。
>「ティターニア、レンジャーってのは一人いるだけで安定するもんだ。
 魔術に頼った偵察が罠を見抜けずに踏み抜いた、なんて例はたくさんあるんだぜ」
「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。
頼りにしておるぞ、ラテ殿」
そんなことを話していると―誰かの腹の虫が鳴った。
>「……はッ!」
ミライユが分かりやすく顔を染めている。
涼しい顔をしていれば分からないのに分かりやす過ぎィ!と内心思うティターニア。
先程のマスターの部屋の内情をうっかり言いかけた時の様子といい、自分達が疑い深くなっているだけで
単なる根っから明るいドジっ娘なのだろうか?との考えが鎌首をもたげてくる。
実際にはドジっ娘属性の有無と良からぬことを企んでいるか否かは何の関連性もないのだが、人間(エルフ)心理としてどうしてもイメージに流されてしまうものである。
>「では、早速ですが、腹ごしらえでもしながらゆっくり語らうとしましょう。
今晩に限り、ティターニア様たちの分は、私の方でお出ししますので、お気になさらず」
「それは誠にかたじけない。ではお言葉に甘えてご馳走になるとしよう」
ミライユに導かれるままに高級な宿付きレストランに入っていく一行。
オークはやはり暗黒大陸に多い種族であり、中央大陸程ではないといえこの西方大陸にもそれ程多くは無い。
外見がほぼオークのジャンは多種族が行き交うこの街でも高級宿となると目立つようで、視線を向けられ心なしか居心地が悪そうだ。
ジャンが人間―特に若い女性から見れば親しみやすい外見ではない事実を改めて思い出したティターニアは、二人にそれとなく怖がる必要はない事を伝える。
「このジャン殿は気は優しくて力持ちを地で行くとてもいい奴でな―
我は一応研究費を貰える身ゆえジャン殿には臨時助手ということで護衛をしてもらっておる。
……といっても上司部下といった堅苦しい関係ではない」
そこで少し視線を外し、半分噛みしめるように、半分冗談めかして言う。
「そうだな、英雄譚風に言うなら”仲間”―とでもいうのかな」
>「すっごい腕……よく鍛えられているし、大体の敵なら一薙ぎですね!」
「……」
視線を戻してみると、ミライユが積極的にジャンの腕を取って話しかけていた。
心配は杞憂だったようだ。それを見たティターニアはニヤリと笑ってからかうように言う。

27:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 21:36:10.12 +bm/sbWr.net
「ほほう、ミライユ殿はたくましい男性が好みか。
ああ、念のため申し添えると我とジャン殿は別に恋人関係というわけではないゆえ遠慮しなくても良いぞ」
学園のある種のサークルが作る自主制作の薄めの冊子の中ではそのようなジャンルも確立されているが
実際にはそのようなカップルが成立するのは非常に稀と思われる。
ただでさえエルフが他の種族とカップルになるのは珍しいというのもあるが、それに加えて。
これまで旅をしてきてなんと


28:なく分かったのだが、どうやらエルフとオークでは美的感覚が決定的に違うようだ。 エルフが一般的に美しいとされるのは人間から見た時の話であり、そういう美的感覚を持つ人間が比較的多いからに過ぎない。 >「ちなみにうちのマスターはここまで太くないですが、 力はもう、すっごいんです! この前の暴動のときもすごい活躍をして、五十人斬り?をやっても、全く動じてませんでした。その晩マスターは……」 話を聞いていると、どうやらミライユは冒険者ギルドのマスターなる人物に心酔していることが分かってきた。 「ふむ、凄いものだな……一度お目にかかってみたいものだ。 ところで……そろそろ腕を離してやってはくれぬか、そのままでは食べられぬ」 ティターニアはそれなりに様になった手つきで料理を食べながら、ミライユにジャンを解放するようにそれとなく伝える。 ジャンもそろそろ困惑しているようで、ティターニアの方に話を振ってきた。 >「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」 「そうだな、下手に夜に動いても危険であろう。今日はここに泊まって明朝に出発するとしよう」 こうしてなんとも微妙な空気の晩餐会は過ぎてゆく―― *☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*゚・*:.。. .。.:*・*☆*



29:ティターニア ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 21:42:52.54 +bm/sbWr.net
さて、取ってある部屋は4人部屋であった。
特にミライユには警戒は必要になるが、いい方向に考えれば話すことで人となりを見極める良い機会でもある。
本当なら学園に寄って挨拶がてら報告もしたいところだが、後をつけられでもして今の時点で核心に気付かれてもよろしくない。
いつのも伝書フクロウ便でまあいいか―ということで、そのまま泊まることにした。
とはいえ、寝るにはまだ早い。
皆がひと段落ついた頃、ティターニアは自分のベッドのふちに腰かけ、学者の間で一般的に知られている知識の範囲で話し始めた。
一応ミライユからインタビューを受けるという名目になっているのと、こちらもミライユ達の反応を見るのも兼ねて、だ。
「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。
この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」
「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―
そなた達は竜の指環、というのを聞いたことがあるか?
古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。
まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを真に受けて本気で探しておる大馬鹿者もおるらしいが……」
このご時世で竜の指環の話題を避けるのは逆に変であるため、敢えて当たり触りのない範囲で話題に出す。
ティターニアが言う大馬鹿者、というのはもちろん褒め言葉である。
「そういえば……最近中央大陸の沖合で突然島が浮上したらしいな。
あの辺りに沈んだ古代都市があったという伝説はあるのだが果たして関係あるのか無いのか」
「そうそう、古代都市といえば明日行くテッラ洞窟、地底都市への入り口があるとかいう都市伝説が学園生徒達の間でまことしやかに囁かれておるぞ。
といっても普段はしょっちゅう学園の生徒たちが探検にいっておるのだ、もしもそんなものがあったらとっくに見つかっておるだろうがな!」
「学生というのはその手の噂話が好きでの、あの想像力には感心するわ。
例えばダーマの図書館が無限地下ダンジョンになっておるとかな」
「古竜には四星竜という手下がおってそれらを全て倒さぬと親玉にたどり着けぬ、とかな。
自主制作の冊子で”奴は我ら四星竜の中では最弱……!”とか言わせてみたりの」
表向き友好的に腹の内を探り合う緊迫した心理戦でもあるのだが、どこか楽しんでいるようにも見えるティターニア。
一見とりとめのない話に見せかけてかなりギリギリの線を攻めてみたりしつつ、夜は更けていくのであった。

30: ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 22:25:34.57 +bm/sbWr.net
【一応テンプレ】
名前: ティターニア・グリム・ドリームフォレスト(普段は名字は非公開)
年齢: 少なくとも三ケタ突入 外見は若いが醸し出すオーラから年齢不詳な印象も受ける
性別: 女
身長: 170
体重: 52
スリーサイズ: 全体的に細身(エルフの標準的な体型)
種族: エルフ
職業: 考古学者/魔術師
性格: 学者らしく思慮深くもあるが本質的には大物か馬鹿か紙一重
変人でオタクだがなんだかんだで穏健派で情に流されやすい一面も
能力: 元素魔術(魔術師が使う魔術。魔術(狭義)といったらこれのこと)
武器: 聖杖”エーテルセプター” 魔術書(角で殴ると痛い)
防具: インテリメガネ 魔術師のローブ 魔術書(盾替わりにもなる)
所持品: ペンと紙 その他一般的な冒険者道具等
容姿の特徴・風貌: メガネエルフ。長い金髪とエメラルドグリーンの瞳。
エルフの標準体型だが人間から見れば長身痩躯。もしかしたら黙っていれば美人かもしれない。
簡単なキャラ解説:
ハイランド連邦共和国の名門魔術学園「ユグドラシア」所属の導師で、実はエルフの長の娘。
研究旅行と称して放浪していたところ偶然にも古代の遺跡の発見の現場に立ち会ったことをきっかけに
学園から正式に指環の調査の命を受け、紆余曲折を経てジャンと共に竜の指環を集めるべく旅をしている。

聖杖『エーテルセプター』
エルフが成人(100歳)のときに贈られる、神樹ユグドラシルの枝で出来た杖。
各々の魔力の形質に合わせて作られており、魔術の強化の他
使用者の魔力を注ぎ込んで魔力の武器を形作る事もできる。
魔術書
本来の用途以外に護身用武器防具としての仕様も想定して作られており、紙には強化の付与魔術がかけられている。
持ち運びのために厚さ重さが可変になっており、最大にすると立方体の鈍器と化す。
最初に持っていたものはアルダガ戦にて大破したため、現在のものは最新版である。

31: ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 22:26:41.72 +bm/sbWr.net
【ついでにラテ殿のも】
名前:ラテ・ハムステル
年齢:18
性別:女
身長:153cm
体重:54kg
スリーサイズ:わりと健康的
種族:人間
職業:トレジャーハンター兼行商人
性格:リアリストになりたいなぁと常日頃から思ってるお人好し
能力:レンジャーの心得スニーク編&サバイバル編・アイテム作成&合成・数奇な運勢
武器:大量の低レア武器・お手製魔力爆弾・未鑑定投射武器【不銘】
防具:帷子・大量の低レア防具・大量の加護アクセサリー・呪われた予言の石版
所持品:冒険者セット・エルダーミミックの死骸・お手製ポーション各種・お手製ドーピング薬・お手製、濃縮!ドーピング薬
容姿の特徴・風貌:赤毛のポニーテール・完全武装した子リスのような少女
簡単なキャラ解説:
共和国のレンジャーズギルドに所属する冒険者です
冒険者ってなんかカッコいい!なりたい!なノリで家を飛び出して早三年
ろくに弓も引けなかった小娘でしたが、やる気だけはあったので去年ついにトレジャーハンターとしての活動を許可されました!
でもお宝なんてそうそう見つからないので
副業として、数だけは集まる低レア武器や手作りアイテムを売り歩く行商人ごっこも最近始めました
ダンジョン内でしんどそうな人を見つけたら色々ちょっとお高めに売りつけては後で心を痛めています
素質的には正直ただの村娘Aと言われへこんだ事もありましたが
幸運にも見つけた幾つかのレア装備やお手製アイテムなどでがんばります
ちなみにトレジャーハンターって要はただの遺跡荒らし、盗掘家ですが
収穫物の何割かをギルドに献上する事でちゃんと社会に貢献しています
シーフとかアサシンとか、レンジャーズギルドにはその手の人材が結構いるようで、私は一応それらの講習も受けています
私掠船みたいなもんですね。低レア武器は献上の対象外なのでちょっと助かっています
テッラ洞窟には最近やたら強くなった魔物が出て来るって噂を聞いてやってきました
ギルドからの依頼じゃないので何か見つけても献上しなくていい!がんばろう!

32: ◆KxUvKv40Yc
17/01/08 22:27:41.68 +bm/sbWr.net
『未鑑定投射武器【不銘】』
町に持ち帰って色々調べても未鑑定なままの武器。弓のような銃のようなパチンコのような?
間近で見ても輪郭がはっきり捉えられない。少なくとも私にはわかんない
でも未鑑定って事はつまり色んな可能性を秘めてるって事で、この武器はなんでも投射出来る
ちょっとお高い鑑定士に頼めばハッキリしそうだけど、鑑定が難しいって事は最悪とんでもなく呪われてるって事
呪われてるかどうかも未確定のままにしときたいからこのままでいーや
『呪われた予言の石版』
宝箱に『此処に古の預言者ナビィの遺した滅びを封じる。無知である事は、未知である事。その未来決して知るべからず』
とか書かれてた。知るべからずなら残さなきゃいいじゃんと思ったんだけど、この石版割れないの。なんで知ってるって?落っことしたから
ともあれこの石版は凄く頑丈なので、私は刻まれた文字に留め具を合成して盾にリメイクしました
ちなみに枕詞の呪われた、は予言ではなく石版の方にかかってるみたいで、実際文字を目にすると胸がモヤモヤする
多分だけど読んだら死んじゃう呪いとか施されてる。知るべからずだし
ちなみに私はなんて書いてあるか解読出来なかったから平気!
トレジャーハンターとして古代言語の勉強もした私が読めないから、多分まだ未発見の文字とかじゃないのこれ
『エルダーミミックの死骸』
幾人もの冒険者を喰らったミミックの死骸。私が倒したんじゃなくて、見つけた時には既に死んでた
すぐ近くに上半身のない骸骨があったから……うぅ、つまりそういう事だったんだろうなぁ
なんとも言えないけど、あの人より先に私が見つけてたら100%死んでただろうから、せめて両手を合わせて、遺骨は持ち帰ってギルドに弔ってもらった
ともあれこの宝箱、死してなお強い魔力を秘めている。具体的には中が超広い。詰め込んだ物の重さも感じない
低レア武器を沢山持ち帰って売るのって、人一人が持ち運べる重量を考えると効率悪いんだけど
私がそれで行商人の真似事が出来てるのはこの箱のおかげ。自分が箱の中に入るのはちょっと怖すぎてした事がない

33:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/09 01:52:25.13 TGmddEgC.net
(……ん? あれは……)
先ほど別れたはずの1188番のラテ・ハムステルの気配がミライユの横にスライドし、
一瞬でティターニアの正面へと移動する。
ミライユはそれを目線だけで追っていった。
(へぇ……あの女、なかなかの使い手じゃないですか)
>「なので……もし良ければ私もそちらのパーティに混ぜてもらえませんか?」
「あ、もしお宝があっても、それはそっちの取り分で構いません!
 私一人じゃそもそも深い所まで行けないだろうし、
 強くなった魔物の素材も結構な価値が出そうですしね」
 
>「うむ、高度な魔術罠を見破れる魔術師が超単純な物理罠を見抜けるとは限らぬからな。
頼りにしておるぞ、ラテ殿」
上から目線も様になっている。あざといキャラだが、それは他人に言えたことではない。
しかし、ミライユはラテのその姿が気に食わず、思わず唇を軽く噛んでいた。
「あっ、そうだ」
ミライユはそういえば報酬などについてはまだ話していなかった。
天下のソルタレクの冒険者ギルドとて、ただ飯ただ宿を与えるだけの慈善事業ではない。
何よりマスターへの貢納という意味で収益がないのは色々とまずいのだ。
「では、私は報酬の4分の1を頂くということで結構です。お二人が半分で、
残りの4分の1はラテさんの取り分ということで、彼女にお任せします
財宝についてはティターニア様のものということで、邪魔をするつもりはございません!
もっとも、ギルドにとって無関係のものであれば、ですが!」
4分の1とはいえ、時には桁違いの収穫があることを、ミライユは身をもって知っている。
かつてはただの一冒険者だった立場だけに、金銭感覚にはシビアなのだ。
笑顔を崩さないまま、報酬については先におことわりを入れておいた。

結局のところラテはティターニアらのパーティーに入ることになった。
いや、むしろミライユの管理するパーティーへの同行を許可された、という感覚なのが彼女の正直な気持ちだ。
ティターニアたちはカネで操っている一人に過ぎない。主導権はこちらにあるのだ。
ラテに至っては「たかがフリーでヒラの冒険者が直轄のマネージャーと同じ立場に立てると思ったつもりか」
とすらミライユは感じていた。
『フェンリル』でも食事代と宿代を払わなくてはならないのは癪だが、一日の辛抱だ。
心理的に緊迫したミライユだったが、美味しそうな名物料理や酒の数々を目にすると途端に表情が明るくなり、
満面の笑顔でそれらにかぶりついていた。フリー時代からミライユは食いしん坊キャラで知られていた。
円形にテーブルでは左側にジャン、正面にティターニア、右側にラテがいる。
これだけ密着していれば相手の様子を観察するのは容易だが、とりあえず絡んだジャンがいまひとつの反応をした。
>「お、おう……そうかい。ところでティターニア、結局洞窟に行くのは明日でいいのか?」
どうやらティターニアの支持待ちらしい。一方、ティターニアは。

34:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/09 02:56:24.40 TGmddEgC.net
>「このジャン殿は気は優しくて力持ちを地で行くとてもいい奴でな―
我は一応研究費を貰える身ゆえジャン殿には臨時助手ということで護衛をしてもらっておる。
……といっても上司部下といった堅苦しい関係ではない」
「ほほう、ミライユ殿はたくましい男性が好みか。
ああ、念のため申し添えると我とジャン殿は別に恋人関係というわけではないゆえ遠慮しなくても良いぞ」
「勿論、たくましい男性が好みです! ただ、私は、先約がありますので、別にお付き合いしたいとかでは……
お二人ともやっぱり付き合うならたくましい男性が良いですよね、ね!?」
ティターニアとラテの両方の顔を見合わせながら、ジャンに笑顔を返す。
ジャンが食事をしにくそうにしているので、腕から手を離した。
(なるほど、良いことを聞きました。つまり、ティターニアの彼氏でもなければ、
どこかに所属している訳でもない…… ということは、こちら側に入れても問題ないですよね?)
「頼りになる方が助手で、ティターニア様もお喜びでしょう。ジャンさん、ところで、
冒険者ギルドには興味ありませんか? 今なら、私の権限で、仮会員証を発行できますが……!
ギルド正会員になれば、安定した収入も、夢じゃないですよ!」
周囲の客が「うるさいなぁ」という感じの視線をこちらに送ってくる。ついでに言えば、どうやらジャンの緑色の皮膚が
忌み嫌われているらしい。
テーブルを見ると食事や酒が殆ど無くなっていた。
半分近くはミライユ自身が飲み食いしてしまっていた気がするが……
「では、お会計は私のほうで、皆さん、宿が取れていますので、お部屋までどうぞ!」



宿は大部屋で、ベッドが横に一列に並んでいた。
配置が四角だったらどうしようと悩んでいたが、運に恵まれたらしい。
宿代を出している以上、ミライユが配置については注文をつける。
「では、男性のジャンさんが一番窓側で、その隣にティターニア様。これならお互い慣れてるし、何も起きません……よね?
その隣に私、そしてその隣のドア側にラテさん、でいかがでしょう?」
ジャンをギルドに勧誘するのは今である必要はない。最も情報を得なくてはならないティターニアをとりあえず、
ジャンの隣に置いて安心させ、話を聞き出す。そして、得体の知れないラテを孤立させ圧迫し観察する。完璧な配置だ。
「綺麗な部屋で良かった〜! これで、安心して、寝れそうです!」
ミライユはベッドに腰掛け、欠伸をすると、ローブと、続いてスカートを突然脱ぎだした。
その下はチェイン・メイルになっており、肩から腰にかけて防護しており、特に腹にはさらにチェインが巻かれている。
これは特に腹を意識して防護するものではなく、身体のラインを隠すのが主目的だ。少しでも注目されるのを避けるために。
そして腹のチェインと全身のメイルを脱ぐと、完全に下着姿になった。
胸は大きく、さらに目立つのは普段は見れないくびれた腰から尻への柔らかいラインだった。
細かい斬り傷や矢傷の痕が残っており、鍛えられた臍周りには痣のようなものも見られる。

35:ミライユ ◆6Nqsyb3PfY
17/01/09 02:57:07.56 TGmddEgC.net
「あぁー、重い重い! こうやって武装を取るとスッキリしますね!」
チラリ、とジャンの方を見て、目を合わせる。折角の機会なのだ。さらにティターニアの方を見て、
右隣のラテにも見せびらかす。スタイルなら勝ってはいるだろう。スタイルなら。
>「我の専門は考古学でな、と一言でいってもまあ節操のないもので世界の謎を解き明かす学問、とでも言おうかな。
この世界と魔力や魔術は切り離せぬものであるゆえ魔術学園でも研究対象となっておるわけだ」
ティターニアが眠るにはまだ早いとばかりに薀蓄を垂れ流しはじめる。
ミライユはそれを聞き流しつつ、下着の上から直接スカートを履き、ローブを着る。こうなると今までのミライユとは印象もだいぶ違う。
外に出ればあっという間に男達に襲われるだろう。
>「我々の業界で今アツい話題と言ったら当然古竜の復活―
そなた達は竜の『指環』、というのを聞いたことがあるか?
古竜を倒せるとも伝説によっては自在に操ることが出来るとも言われておる。
まあおとぎ話のようなものだ。冒険者の中にはそれを……」
(『指環』―!)
思わぬキーワードにグキリ、とローブを着込む体勢で驚いたので、腰を捻ってしまう。
ローブに手をかけたまま、ベッドに倒れこみ、ジタバタするミライユ。
「痛たた、何でもありません、何でもありませんったらー!!」
ジャラジャラジャラ……。
ミライユのローブの懐から、五枚ほどの銀色のプレートが音をたてて宿の床に落ちる。
No.547、No.780、No.1012、No.1017、No.1102
それは男女五枚の名前の刻まれたギルドの正会員証だった。
「うう〜、痛かったぁ……はッ!」
ようやく着替え終わったミライユは、ようやく大事なものを落としたことに気付いた。
他の三人にそれらを見る時間を充分に与えてしまう。恐らく名前も一部見られてしまっただろう。
「あぁ、うっかり落としちゃいました…… これ、ラテさんと同じでまだ正式にお渡ししていない会員証なんです。
あ〜 危ない危ない……これ失くしたら、マスターに怒られちゃいますね」
(……な訳ないでしょう! 余計なもの見られちゃったかなぁ?)
それは今回ソルタレクを出立する際、ついでにマスターに課せられた任務。
―「偽の任務で特に素行の悪い会員五名を"始末"してこい」との内容。
相手は男三人、女二人。ミライユは前もって六人パーティーを組み、その中でも男二人とは特に親しくして、
金を払って自分の傘下に引き込んだ。
そして目標のポイント。ミライユたちはキャンプと偽ってまずは男二人と組んで残りの男を抹殺し、女二人を攻撃した。
ミライユからは「好きにして良い」と言われていた男たちは、それなりの反撃を受けながらも女たちに重傷を負わせ、慰み者にした。
男とミライユが女たちを殺すと、次は男たち二人をミライユは脅した。最初男たちは抵抗したが、ミライユの強さを前に屈し、最後は「殺し合って生き残った方を助ける」
というミライユの提案に乗り、殺し合いが始まった。それをミライユは唇を吊り上げながら観察し、最後に生き残った男も命乞いをさせた上で殺した―。
以上が事の顛末だった。
一瞬だけ当時の光景が思い起こされたが、五枚の会員証をさっさと懐に回収すると、既に頭の中は指環のことで一杯だった。
「弱いのが悪い」それがミライユの考え方。マスター以外は転がっている石くれに過ぎない。


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