ロスト・スペラー 8 ..
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2:創る名無しに見る名無し
14/02/10 20:12:00.61 5LSPvbX9.net
今から500年前まで、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
グランド・マージは一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えるという膨大な作業を成し遂げた。
その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が、共通魔法を世界中に広め、現在の魔法文明社会がある。

『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、過去の『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』以降、封印された。
大戦の跡地には、禁呪クラスの『失われた呪文』が、数多の魔法使いと共に眠っている。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は『禁断の地』と名付けた。


ロスト・スペラー(lost speller):@失われた呪文を知る者。A失われた呪文の研究者。
B(俗)現在では使われなくなった呪文を愛用する、懐古趣味の者。偏屈者。

3:創る名無しに見る名無し
14/02/10 20:13:04.93 5LSPvbX9.net
500年前、魔法暦が始まる前の大戦―魔法大戦で、地上の全ては海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
沈んだ大陸に代わり、1つの大陸を浮上させた。
共通魔法使い達は、100年を掛けて唯一の大陸に6つの魔法都市を建設し、世界を復興させ、
魔導師会を結成して、共通魔法以外の魔法を、外道魔法と呼称して抑制。
以来400年間、魔法秩序は保たれ、人の間で大きな争いは無く、平穏な日が続いている。


唯一の大陸に、6つの魔法都市と、6つの地方。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、グラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、ブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、エグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、ティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、ボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、カターナ地方。
そこに暮らす人々と、共通魔法と、旧い魔法使い、その未来と過去の話。

4:創る名無しに見る名無し
14/02/10 20:14:46.68 5LSPvbX9.net
……と、こんな感じで容量一杯まで、話を作ったり作らなかったりする、設定スレの延長。
規制に巻き込まれた時は、裏2ちゃんねるの創作発表板で遊んでいるかも知れません。

5:創る名無しに見る名無し
14/02/10 20:59:30.89 1YD+ltf3.net
乙です
待ってました!

6:創る名無しに見る名無し
14/02/11 19:48:58.03 d6KSQjQt.net
逆襲の外道魔法使い編


主な登場人物


リベラ・エルバ・アイスロン


ティナーの貧民街で、ワーロック・アイスロンに拾われた娘。
本名のリベラ・エルバに、養父の姓であるアイスロンを加えて名乗る。
己の出自や境遇については、十分理解しており、養父であるワーロックには頭が上がらない。
年頃になって、自我が強くなるに連れ、彼に対する感謝と尊敬の念は、愛情へと傾き始めているが、
表向きには良い家族を装う。
当のワーロックは娘の感情に薄々気付いているが、バーティフューラーの呪いがあるので、
一欠片の望みすら無い状態。
しかし、それも含めて養父を愛しているのだから、業は深まる一方である。
その半面で、養父への愛が真なればこそ、離れるべきかと迷う心もあり、未だ告白には至らず。
リベラ自身は共通魔法使いだが、ワーロックの魔法を一部受け継いでいる。
性格は養父に似て、平穏を愛する、大人しい娘になった。
魔法資質は並程度で、魔法色素は黄。
時は魔法暦520年、共通魔法社会に復讐を企む、外道魔法使いの噂が立つ。
そこへ図った様に、リベラの義弟ラントロックが蒸発。
嫌な予感がした彼女は、養父と共に、義弟ラントロックの行方を追って、禁断の地を発つ。

7:創る名無しに見る名無し
14/02/11 19:52:09.05 d6KSQjQt.net
バーティフューラー・トロウィヤウィッチ・ラントロック


ワーロック・アイスロンとバーティフューラー・カローディアの実子。
女系魔法使いの血統に生まれた、『男の魔女<メール・ウィッチ>』。
母の影響が強く、人を魅了する性質を持っているが、父の魔法は全く使えない……と言うか、
引き継ぐ気が全く無い。
母は彼が十の時に死去。
偏愛的に母を慕っていた余り、無能の父を蔑み、忌み嫌っている。
父が旅商の為、余り家に居付かなかったのも、原因の一。
ラントロックは誰もが見惚れる美少年でありながら、義姉であるリベラに複雑な感情を抱いているが、
当人には弟としか見られていない。
14歳になると本格的な反抗期を迎え、「家族」と言う関係を自ら壊す為に独立する。
その後も父への憎悪は凄まじく、頑なにアイスロン姓を名乗りたがらない。
やさぐれて世を皮肉っている物の、本来の性格は父に似て、任侠心が強い割に、
度胸が少し足りない、素直な性格の愛され系。
強大な魔法資質を持ち、魔法色素は母と同じく七色に変化する。
旅先で知り合った精霊魔法使いコバルトゥス・ギーダフィを、「小父さん」と称して慕うが、
彼には「詰まらない男」だと言われる。
その他の旧い魔法使いと出会った際にも、何かと父と(主に人格面を)比較されるので、
父への反発は強くなる一方だ。

8:創る名無しに見る名無し
14/02/11 19:54:57.63 d6KSQjQt.net
コバルトゥス・ギーダフィ


壮年の精霊魔法使いの男。
各地を旅する自称ベテラン冒険者。
顔は良いのに、相変わらずな女好きの性質が災いして、未だ所帯を持てない。
旅先で偶々リベラと知り合って、彼女がワーロックの娘と知って以降、密かに先回りして現れ、
然り気無く助言をし、窮地に駆け付ける、足長小父さんを演じている。
ワーロック・アイスロンには、憧れに似た奇妙な感情を抱いており、それがリベラを誘惑すると言う、
歪な形で表れる。
リベラが性質的にワーロックと似ているのも、彼女に拘る理由だ。
しかし、実子のラントロックには、「父親に似ていない」と言う理由で、やや冷淡。
だが、確かに彼をワーロックの息子と認めており、時折相談に乗ったりする。
一方ラントロックは、コバルトゥスを恋敵と知りながら、父には無い物を求めて、彼に憧れている。
コバルトゥス自身はラントロックの感情に理解を示しつつも、養娘リベラと実子ラントロックに悩む、
ワーロックの複雑な事情を理解しており、自分がリベラを引き受ければ、全て丸く収まると、
考えている節がある。
元から、俗に言う「(性格が)クソ(な)イケメン」だったが、成長したリベラとの出会いで、
より磨きが掛かった模様。

9:創る名無しに見る名無し
14/02/11 20:06:38.72 d6KSQjQt.net
ルヴィエラ・プリマヴェーラ


旧暦から生きる『悪魔族<デモンカインド>』の魔法使い。
容姿は黒いドレスを着た、蒼い肌のグラマラスな美女。
強大な魔法資質を持ち、あらゆる奇跡と逆奇跡を起こす、闇の魔法を使う。
人が不幸に足掻き、喘ぐ様を愉しむ、破滅的な性格。
彼女が戯れに各地で撒いた災いの種が、魔法暦520年を迎えて、今、花開く。
諸悪の根源にして、打倒されるべき存在。

10:創る名無しに見る名無し
14/02/11 20:08:36.00 d6KSQjQt.net
ワーロック・アイスロン


落ち零れの共通魔法使いの男が、十数年放浪の旅を続けた結果、新しい魔法使いになった。
優柔不断な性格も、不惑を越えて、幾分落ち着いた様子。
だが、妻に先立たれ、養娘リベラに想いを寄せられ、実の息子ラントは養娘に好意を抱くと言う、
家庭内三角関係に頭を抱えている。
彼としては、養女にも実子にも、関係の無い人と一緒になって欲しい。
そこに加えて、コバルトゥスが邪な目的でリベラに近付くから、悩みの種は増えるばかり。
『素敵魔法<フェイブル・マジック>』と言う、奇跡の魔法の使い手だが、使う機会を自ら制限している為、
その発動は滅多に見られない。
Loveisallの呪文を完全に使い熟せる様になっても、人前で使うのは恥ずかしいらしい。

11:創る名無しに見る名無し
14/02/11 20:10:14.44 d6KSQjQt.net
……と言う話を、何時か作ろうと思っている(今とは言っていない)。

12:創る名無しに見る名無し
14/02/12 18:56:26.16 ItEm6eFn.net
最後の冒険者


古の時代―旧暦と呼ばれる頃―、魔法とは一部の魔法使いだけの物であった。
その事を憂いた『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』は、誰でも簡単に魔法が扱えるよう、
『共通魔法<コモン・スペル>』を創り出した。
それは魔法を科学する事。魔法を種類・威力・用途毎に体系付けて細分化し、『呪文<スペル>』を唱える、
或いは描く事で使用可能にする、画期的な発明。
偉大なる魔導師は一生を懸けて、世界中の魔法に呪文を与えると言う、膨大な作業を成し遂げた。
その思想に共感し、その偉業に感銘を受けた多くの魔導師が共通魔法を世界中に広めたが、
それは『古い魔法使い達<オールド・マジシャンズ>』の特権的な地位を脅かす行為だった。
偉大なる魔導師と『共通魔法使い<コモン・スペラー>』達は、時の権力者に迫害されたが、
彼等は決して諦めず、各地で同志を募り、遂に決起する。
新たな魔法秩序を巡る戦い―『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』の始まりである。
魔法大戦には多くの魔法使いが、我こそ新世界の支配者にならんと参戦した。
戦渦は世界中に拡がり、世界その物を蝕んで行った。

13:創る名無しに見る名無し
14/02/12 18:58:32.39 ItEm6eFn.net
激しい戦いが3年も続いた結果、1つの小さな島を残して、全ての大陸が海に沈んでしまった。
魔法大戦の勝者、共通魔法使いの指導者である、偉大なる魔導師と8人の高弟は、
唯一残った小さな島の東岸に、沈んだ大陸に代わる、1つの大陸を浮上させた。
それが私達の唯一大陸。
共通魔法使い達は、100年を掛けて唯一大陸に6つの『魔法都市<ゴイテオポリス>』を建設し、
世界を復興させた後、8人の高弟を中心に魔導師会を結成した。
そして、共通魔法以外の魔法を『外道魔法<トート・マジック>』と呼称して抑制した。
こうして新たな魔法秩序、私達のファイセアルスが完成したのである。
今も唯一大陸には、6つの魔法都市と、それを中心とした6つの地方がある。
大陸北西部に在る第一魔法都市グラマーを中心とした、砂漠のグラマー地方。
大陸南西部に在る第二魔法都市ブリンガーを中心とした、豊饒のブリンガー地方。
大陸北部に在る第三魔法都市エグゼラを中心とした、極寒のエグゼラ地方。
大陸中央に在る第四魔法都市ティナーを中心とした、商都のティナー地方。
大陸北東部に在る第五魔法都市ボルガを中心とした、山岳のボルガ地方。
大陸南東部に在る第六魔法都市カターナを中心とした、常夏のカターナ地方。
共通魔法と魔導師会を中心とした、新たな魔法秩序の下で、人々は長らく平穏に暮らしている。

14:創る名無しに見る名無し
14/02/12 19:01:31.87 ItEm6eFn.net
『失われた呪文<ロスト・スペル>』とは、魔法科学が発展して行く過程で失われてしまった呪文を言う。
世界を滅ぼす程の威力を持つ魔法、自然界の法則を乱す虞のある魔法……。
それ等は『禁呪<フォビドゥン・スペル>』として、魔法大戦以降、封印された。
大戦の跡地―嘗て1つの小さな島だった場所には、禁呪クラスの失われた呪文が、
数多の魔法使いと共に眠っていると云う。
忌まわしき戦いの記憶を封じた西の果てを、人々は禁断の地と名付けた。

15:創る名無しに見る名無し
14/02/12 19:02:55.37 ItEm6eFn.net
時は魔法暦200年、開花期と呼ばれる頃。
共通魔法文明の成長が、最も著しかった時期。
共通魔法は益々発展し、人々の生活は益々豊かになり行く、希望の時代。
しかし、魔法暦200年は共通魔法の発展に、翳りが見え始めた頃でもある。
大陸中を大魔導路と共通魔法結界で覆う、大魔導計画の中止によって、大陸の僻地開拓熱は、
最早嘗て程の勢いを失っていた。
魔導師会に先駆けて、幾つもの秘境を拓いて来た冒険者達も、冒険を諦めて日常に戻る者が、
増える様になって来た。
大陸極北点到達、最高峰ガンガーの制覇、周辺小島群の発見、主立った偉業は殆ど達成され、
開拓すべき土地が、残っていなかった事もある。
そこで冒険者達は最後の開拓地を求めて、グラマー地方の西に挙って群がった。
グラマー地方の西、唯一大陸の西端に在るは、禁断の地。
魔法暦の始まりから200年間、冒険者達の進入を拒み続けて来た、最後の秘境である。

16:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:28:13.02 XQV1/ppB.net
ここに6人の若き冒険者が居る。
君には6人の中から、物語の主人公となる人物を選んで欲しい。


1人はグラマー地方出身だ。
優れた魔法資質を持ち、大抵の共通魔法は使える。
特に炎の魔法が得意だ。
魔法大戦の六傑に憧れ、「蒼焔(そうえん)」を自称する。
しかし、彼は魔導師ではない。
勉強に飽きて、魔法学校の中級課程を卒業した後、冒険者になった。
才能に頼り、修練を怠った、愚か者だ。
自分の能力なら、禁断の地を制覇出来ると、表立っては言わないが、密かに信じている。
尤も、全く根拠が無い訳ではない。
彼は妖獣退治等の危険な依頼を、幾つか熟した経験がある。
公平な目で見れば、初心者上がりの中級者よりは、少し上位の実力。
戦闘では魔法主体だが、それなりに武器も使える万能型。
単純な戦闘能力では、6人の中で最も強い。

17:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:30:27.90 XQV1/ppB.net
1人はブリンガー地方出身だ。
立派な体格だが、心根は優しく、穏やかな性格。
ブリンガー地方民の平均的な性質だな。
だが、動植物にも情けを掛ける所は、少々行き過ぎている。
彼は金儲けや名誉ではなく、動植物の調査をしに、禁断の地へ入りたいと言う、学者肌の人物だ。
振る舞いは知的で、欲気に欠ける。
良い事だと思うかも知れないが、冒険者としては考え物。
先を急ぐ事が無いし、臆病に見える位、慎重だ。
前進に犠牲や多大なリスクを要する場面では、迷い無く引き下がるだろう。
その為に、他の冒険者達とは、反りが合わない事もあるかも知れないな。
戦闘能力は、魔法・武器・遠近、全部そこそこと言った所。
技術は無いが、体力はあるし、腕力も強い。
彼の生物の知識は、禁断の地の怪物相手にも、活かせるかも知れない。

18:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:33:40.86 XQV1/ppB.net
1人はエグゼラ地方出身だ。
力自慢で、頭を使う事が苦手、力押し一辺倒の大馬鹿者。
何でも腕力で解決したがる。
それなりに魔法も使えるが、他人との連携は苦手。
危険を顧みない無謀な性格を、自分でも理解していて、相談役を求めている。
そう言う意味では賢い。
冒険者としては駆け出しだが、喧嘩慣れしているので、殴り合いには滅法強い。
反面、探索では見落としが出易い。
それを補う仲間も必要になる。
戦闘では常に前に立ち、敵の注意を引き付けるだろう。
彼にとって、敵に背を向けるのは恥。
撤退には仲間の指示が不可欠だ。

19:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:40:35.67 XQV1/ppB.net
1人はティナー地方出身だ。
小柄で素捷く、お喋りな明るい性格で、場を和ませるムード・メイカーになるだろう。
ティナー地方の商家の者で、禁断の地には、金儲けにやって来た。
故に、金にならない事は大嫌いだ。
金も宝も命あっての物種と言う考えから、引き際を間違える事はしない。
非力で単独での戦闘能力には期待出来ないが、連携魔法は得意。
拾った物の鑑定が出来るのも長所。
何でも持って帰る訳には行かないのが、探索と言う物。
取捨選択は重要だ。
また観察眼が鋭く、敵に明らかな弱点があれば、直ぐに見抜くだろう。

20:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:41:40.45 XQV1/ppB.net
1人はボルガ地方出身だ。
両親が冒険者で、幼い頃から共に冒険へ赴いていた為、若くしてベテランの雰囲気を漂わせる。
しかし、カターナ地方で活動するのは初めてなので、何も知らない者には侮られるだろう。
知識・経験共に豊富で、冒険に必要な事は、確り心得ている。
如何なる状況にも適応出来る能力を備えており、戦闘でも探索でも頼りになる。
彼の言う通りにしていれば、先ず間違いは起こらないが、先輩風を吹かしたがる為に、
少々説教臭い。
人によっては、疎ましく思うだろう。
今、禁断の地には、大陸中から多くの冒険者が集まっている。
彼は顔が広いので、もしかしたら知り合いと出会すかも知れない。
その時は、助言や協力を得られるだろうが、妙な因縁を持ち越す事も有り得る。

21:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:42:38.71 XQV1/ppB.net
1人はカターナ地方出身だ。
お気楽と言うか、呑気と言うか、とにかく不思議な人物で、冒険者には向かない性質に思われる。
先ず、冒険者を志した理由からして、異様である。
何とか公学校を卒業したは良いが、就職先が見付からず冒険者に。
開花期の勢いが衰え始めたと言っても、この時代は未だ未だ、余程選り好みしなければ、
普通に希望した職に就ける。
それなのに、彼は志して冒険者になった訳ではない。
何もやる気が無く、取り敢えず面白そうだから、冒険者になったのだ。
よって、知識も準備も能力も、彼には足りない物だらけ。
のらくらした性格で、付き合う人も限られるだろう。
彼の冒険は図太い神経と、幸運だけを頼りにする事になる。
ワイルド・カードに成り得るか?

22:創る名無しに見る名無し
14/02/13 19:51:03.52 XQV1/ppB.net
ゲームブック方式と言うか、場面場面で選択を提示するので、それで展開が変わる話にしたい。
レスが無くても適当に進めるので、お気軽に。
多数決ではなく最初の意見を優先します。

23:創る名無しに見る名無し
14/02/13 20:03:45.81 Lwws2408.net
蒼焔さんが実力派厨二みたいで気になる

24:創る名無しに見る名無し
14/02/14 19:57:06.06 PHsPyGpj.net
>>23
良いIDだから彼の名前はルース君にしよう。
ルース・イスダル・ソハラディア。

25:創る名無しに見る名無し
14/02/14 19:59:10.24 PHsPyGpj.net
グラマー地方の西端 レフト村にて


若き冒険者ルース・イスダル・ソハラディアは、第一魔法都市グラマーの西門から、
夕陽の荒野と砂漠の死都を越えて、今回の冒険の拠点となるレフト村に着いた。
禁断の地への挑戦は、命懸けである。
優れた魔法資質を持つルースにとって、夕陽の荒野と砂漠の死都を渡る旅は、
然して危険な物ではなかったのだが、問題は日数だ。
第一魔法都市グラマーからレフト村まで、距離にして約2街。
途中に物資を補給出来る場所が無い上に、移動に最短でも2日は掛かるので、
無一文になっては帰れない。
それにも拘らず、ルースは他の冒険者と同じく、荒野と砂漠を越えた。
彼の胸には功名心と冒険心。
禁断の地―今まで誰も、中心地まで辿り着けなかった、伝説の地。
嘗て、幾多の魔法使い達が争い、散って行った場所を、ルースは己の目で見てみたかった。
そして、出来る事なら、偉大な発見の1つや2つでもして、冒険者として名を残したかった。
勿論、簡単でない事は解っている。
100年以上、名のある冒険者が何百人と挑んでも、栄えある成果を手に出来たのは、
指折り数える程だ。
しかし、それで恐れていては、冒険者は名乗れない。

26:創る名無しに見る名無し
14/02/14 20:00:30.67 PHsPyGpj.net
レフト村は狭い集落だが、今は冒険者で賑わっている。
道で擦れ違う者は、殆どが物々しい格好をしており、この村の住民でない事は一目瞭然だ。
村民の人口より、冒険者の方が多いのではないだろうか?
人が多く集まる所は、金が集まる所でもあり、商人の姿も見られる。
一方で、人が増えれば、犯罪も増える。
特に冒険者には、ならず者が多い。
その為、犯罪を取り締まる、魔導師会の執行者が、村の各所に配置されている。
執行者が冒険者を見る目は、冷たく厳しい。
それは同じグラマー地方民である、ルースに対しても同様だ。
悪さをしたら許さないぞと言う、脅しを込めて睨まれる。
ルースとて実力なら魔導師に引けは取らない積もりだが、流石に魔導師会を敵に回す様な、
命知らずな真似は出来ない。
故に、不愉快ではある物の、外方を向いて、遣り過ごす他に無い。

27:創る名無しに見る名無し
14/02/14 20:03:05.41 PHsPyGpj.net
ルースは先ず村の施設を確認した。
彼に必要そうな施設は、全部で5つ。
大きな酒場、中級・低級の各宿、それに魔法道具店と、冒険者向けの店。
所持金は20万MG。
この日の為に、今まで稼いで貯めた金の殆どを、下ろして来た。
安宿に泊まって、食事は最低限で済ませるなら、2ヶ月弱は滞在可能だろう。
ルースは考える。
先に宿を確保しようか?
旅の疲れもある。
個人で活動する積もりなら、長く泊まれる安宿が良い。
それとも酒場に行って、仲間を募る?
1人より2人、3人の方が、諸々の費用が安上がりで済むかも知れない。
様子を探りに、行き成り禁断の地に突入しても良い。
本格的な攻略の前に、雰囲気を掴んでおくのも大事だ。

28:創る名無しに見る名無し
14/02/15 01:49:09.85 XVVectlG.net
自分なら慎重に行きたいが
キャラクタ的には酒場につっこんだほうが、色々と起こしてくれそう

29:創る名無しに見る名無し
14/02/15 18:57:02.52 DjNDDNYM.net
ルースは取り敢えず、村の大きな酒場に向かう事にした。
古い木製の看板には、ボトルとグラスの絵が、新しい塗料で描かれている。
店の名前は『西の最果て<ウェスト・エンド>』。
普通、こんな小さな村に、大きな酒場は必要無い。
即ち、この酒場は完全に、冒険者達の憩いの場として、用意された物だ。
酒場は村唯一の食事処でもあり、入り浸っている客の殆どは、食堂の無い安宿に泊まっているか、
或いは宿すら無い者。
当然、柄の良くない者が多い。
ルースはグラマー地方民なので、昼間から酒を飲む事はしない。
一般的なグラマー地方民にとって、呑んだくれは軽蔑の対象だ。
故に、彼は酒場に余り良い感情を持っていないのだが、冒険の情報を集めるには最も効率が良い。
ルースは酒場に踏み入り、充満している酒の臭いに眉を顰めながら、中を見回した。
残念ながら、顔見知りは居ない。
その代わり、カウンターに情報屋の姿を見付けた。

30:創る名無しに見る名無し
14/02/15 18:57:55.14 DjNDDNYM.net
冒険者の始まりは、傭兵の様な物だった。
職の無い暇人は、他にする事が無いので、酒場に屯する。
その性質を利用して、酒場で人材を募集したので、冒険者と言えば、酒場に屯する物と言う、
常識が生まれた。
そこで依頼人と冒険者を繋ぐ役割をしたのが、情報屋と言う職業だ。
復興期の中頃まで、情報屋と言う職業は無く、依頼は酒場のマスターが仕切っていたが、
冒険がグローバル化するに連れて、情報を専門に扱う組織が発達した。
その歴史は割愛するが、情報屋は冒険者には欠かせない、相方の様な存在。
今回の様に、1つの拠点を大勢で攻略する時は、既踏破エリアの情報を後進に教えたり、
メンバー集めの仲介をしたりする。
勿論、只ではないが……。

31:創る名無しに見る名無し
14/02/15 18:58:44.75 DjNDDNYM.net
グラマー地方の情報屋は、フュー・ジールと言い、太陽の紋章のローブを着ている。
『火の魂<フュー・ジール>』は元は酒場の名前で、各地に支店を展開する内に、情報を扱う様になった。
ルースは客には目も呉れず、真っ直ぐ情報屋に向かって行き、カウンター席に腰を下ろしながら、
こう声を掛けた。

 「アーレ」

「アーレ」と言う挨拶は、グラマー地方のみで通じる、冒険者同士の合言葉。
同業者、或いは関係者である事を示す、挨拶である。

 「アーレ」

情報屋は同じ調子で鸚鵡返し、続けた。

 「『蒼焔のルース』……だね?」

ルースの記憶では、この情報屋とは面識が無い。
それにも拘らず、名前を知られていると言う事は、それなりに名を上げた証だ。
ルースは少し気を好くした。

 「俺も有名になった物だ」

 「君は期待の新人だから。
  今時、2つ名を自称するなんて、余程自信が無いと出来る物じゃない」

半分馬鹿にされているのだが、ルースは気付かない。
彼の頭は、新しい冒険の事で一杯だ。

32:創る名無しに見る名無し
14/02/15 19:03:29.95 DjNDDNYM.net
ルースは透かした態度で尋ねる。

 「何か役に立つ情報は無いか?」

 「そうだね。
  先ずは1000MG寄越しなよ」

情報屋は笑顔で応える。
これが実績ある冒険者なら、幾らかヒントでも貰えただろうが、生憎ルースには未だ、
その価値は無いと判断されたのだ。
ルースは渋々1000MGを支払う。

 「毎度。
  はっきり言うけど、今の君では苦労するだろうね。
  入り口で付近を彷徨くのが限界じゃないかな?
  独りで行動するのは、お奨めしない」

金を受け取った、情報屋は冷たく言い放つ。
具体的な事は何一つ言わなかったので、人によっては、小馬鹿にしている様に聞こえるだろう。
しかし、誤解してはいけない。
情報屋は金を貰っている以上、忠実な仕事をする義務がある。
詰まり、これが500MG分の情報であり、ルースの正当な評価なのだ。
ここは堪えて、理由を尋ねるか?
追加料金を取られるが、もっと確実な情報を教えて貰えるだろう。
それとも素直に仲間を紹介して貰おうか?
これも紹介料を取られるが、適切な人物を充てて貰えるだろう。
現在の所持金は19万9000MG。
金が惜しいなら、仲間も情報も諦めて、宿を取りに行くか、禁断の地に突入するか選べる。

33:創る名無しに見る名無し
14/02/15 20:39:34.24 909UGwUF.net
蒼炎さんと他人の絡みをもっとみてみたいので仲間を紹介

34:創る名無しに見る名無し
14/02/16 19:31:08.05 3kyC93qX.net
ルースは情報屋の口振りに反感を抱いたが、脅したり、声を荒げたりと言った、
大人気無い振る舞いはしなかった。
だが、これ以上情報屋の「情報」に対して、金を払う気分にもなれなかった。

 「じゃあ、誰か紹介してくれ」

それでも今までの経験から、情報屋の情報自体は信頼出来る物だと、ルースは理解している。
情報屋が「単独行動は推奨しない」と言うならば、それは正しい情報。
故に、同行者を求める。
至極単純な道理。

 「そうしたいのは山々なんだが……」

情報屋は言葉後を濁す。

 「今の所、フリーの腕利きの冒険者は居ないし、君を受け入れてくれそうな所帯も無い。
  荷物持ちでも良いなら、どこか入れてくれるかも知れないが?」

 「冗談じゃない」

 「だろうね」

情報屋の態度は、ルースの性質を知り尽くしている様。
恐らくは、同じ組織の仲間に、彼の為人を伝え聞いているのだろう。
良い意味でも、悪い意味でも、ルースは注目株には違い無い。

35:創る名無しに見る名無し
14/02/16 19:39:51.26 3kyC93qX.net
情報屋は暫し思案した後、ルースに提案する。

 「蒼焔のルース君……紹介料は安くしとくからさ、お守りをしてみないかい?」

 「お守り?」

 「要するに、君より実力の無さそうな人をフォローするんだ」

 「どんな奴だ?」

 「悪い奴じゃない。
  500MG払ってくれるなら、直ぐに紹介しよう」

ルースは少し迷ったが、会うだけ会ってみて、合わなさそうだったら断れば良いと、500MG払った。

 「おーい、クレーク!」

500MG受け取った情報屋は、大声でテーブルに座っていた男を呼び付ける。
男は無言で徐に立ち上がり、ルースと情報屋に向かって悠々と歩いて来た。
酒場の木床が音を立てて軋む。
何と言う威圧感。
男は標準的な体格のルースより、一回り大きい。

 「クレーク、そこの彼が案内してくれるそうだ」

情報屋がルースを指して言うと、クレークと呼ばれた男は、背を屈めて礼をする。

 「私はクレーク・ユーグフと言います。
  宜しく、お願いします」

 「待ってくれ。
  俺は未だ、お前と行くと決めた訳じゃない」

馬鹿丁寧な挨拶をされたルースは、それを取り消す様に、慌ててクレークを制した。

36:創る名無しに見る名無し
14/02/16 19:51:06.79 3kyC93qX.net
情報屋は2人の遣り取りを見て、半笑いで背を向ける。

 「後は当人同士で、上手く話を付けてくれ」

これ以上は感知しないと言う意思表示だ。
ルースとクレークは向き合って、暫し沈黙した。
先にルースが口を利く。

 「俺は『蒼焔<ブルー・ロー>』のルース」

 「ブルーさん?」

 「違う、『蒼焔<ブルー・ロー>』だ」

 「ああ、ブルーローさん」

 「そうじゃない、俺の名前はルースだ」

 「ルースさん?」

クレークは今一つ理解していない様子ながら、改めて自己紹介する。

 「私はクレーク・ユーグフ。
  禁断の地に同行してくれる、仲間を探しています」

彼は見掛けこそ厳ついが、嫌に礼儀正しく、旅服も皺が少なくて、余り着熟れていない印象を受ける。
何より瞳が清い。
それがルースには気になった。

 「不躾で悪いが、あんたは冒険者って感じがしないな。
  『駆け出し<フレッジリング>』にしても妙だ。
  何が目的で、禁断の地に行くんだ?」

自分より体格の大きい相手に、ルースが堂々と接する事が出来るのは、己の魔法資質が故である。
魔力を捉える魔法資質は、彼我の魔法資質の差を理解する助けになる。
腕力で劣っていようが、十分に魔法資質で上回っていれば、どんな巨漢も恐るるに足らない。
逆に、クレークにもルースの魔法資質の高さは伝わっている。
それが魔法資質の機能なのだ。

37:創る名無しに見る名無し
14/02/16 19:55:53.94 3kyC93qX.net
ルースの無遠慮な態度にも、クレークは顔色を変えず応対する。

 「私はブリンガー地方で、性無い学者をしている者です。
  これまで禁断の地に入った学者は、何れも魔法学が専門で、優秀な魔導師でした。
  故に、魔法的な影響や魔法生物が主たる関心事で、それ以外の観点からの考察が、
  大きく欠落していると感じます。
  私は地理学的、生物生態学的な観点から―」

滔々と語り出したクレークだが、生憎とルースは長話が嫌いである。

 「もっと端的に説明してくれ。
  何が目的なんだ?」

 「……学術調査です」

薀蓄を遮られて、クレークは不服そうな顔だが、ルースは気に留めない。

 「こんな僻地下りまで、態々学者様が来なくても、誰かに依頼した方が、安上がりだろうに」

 「見識の無い者の報告なんて、当てに出来ません。
  自分で現場を見なくては」

そう言い切るクレークに、ルースは少し好感を持った。

 「見上げた根性だ。
  それで、何が出来る?」

 「私は『在野研究者<フィールド・ワーカー>』です。
  今まで、それなりに危険な所へも赴きましたし、体力には自信があります」

ルースの問いに、クレークは力強く答える。
ルースは大きく頷いた。
どうせ本格的な探索の前に、現地を下見する必要がある。
クレークは全くの素人ではない様だし、学者の道楽に付き合うのも悪くないだろう。

 「良いだろう。
  宜しく、クレーク」

 「は、はい、お願いします、ルース……さん?」

2人は固く手を取り合った。
ルースの所持金は残り19万8500MG。

38:創る名無しに見る名無し
14/02/16 19:58:08.30 3kyC93qX.net
>>33
仲間の名前もIDから取ったよ。
今回は選択無し。

39:創る名無しに見る名無し
14/02/17 18:31:58.41 yDb4Jq0a.net
禁断の地は砂漠の近くに在りながら、緑の豊かな森となっている。
しかし、その隣に在るレフト村は、乾いた砂が舞う荒野の中。
禁断の地との間には、緑の境界線が引かれている。
不思議な事に、禁断の地の緑は、レフト村や周囲の砂漠を、決して侵食しない。
グラマー地方の半分が砂漠に埋もれているのは、禁断の地の「穢れ」に因る物。
故に、生き物が棲息しないのだ。
禁断の地を覆う緑は呪われた色で、そこに住まう物達は尽く呪われている。
一部では、そんな迷信が未だに囁かれる。

40:創る名無しに見る名無し
14/02/17 18:39:54.69 yDb4Jq0a.net
ルースとクレークは早速、禁断の地に向かう事にした。
ルースはクレークに探索の準備をして来るよう伝えると、自分だけ一足先に、
禁断の地の入り口で待機する。
本格的な探索をしないなら、特別な準備は必要無いと言うのが、彼の考えだった。
増上慢ではない。
冒険に必要な最低限の物は、常に身に付けている。
それに禁断の地は過去に、何千何万と言う冒険者が訪れた場所。
しかも、今は数十年振りの『繁忙期<ラッシュ・アワー>』で、ルースは流行の後追い―詰まり、
乗り遅れた方なのだ。
当然、浅いエリアは先行者に探索し尽くされていて、目星い物は何も無い。
その代わり、危険も駆除されている。
学術調査が目的なら、先を急ぐ事は無いだろうし、今日一日は日が暮れるまで、
のんびり付き合えば良いと、ルースは思っていた。
数点して、クレークがルースと合流する。
彼の装備は、旅服にハンティング・ブーツ、頭にはハンター・ハットを乗せ、腰には複数のポーチ、
右手には伸縮式のロッド、そしてバックパックを背負った、冒険者としては至って普通の格好。
コメントする様な所は特に無く、ルースはクレークを従えて、禁断の地に入った。

41:創る名無しに見る名無し
14/02/17 18:41:27.00 yDb4Jq0a.net
禁断の地の入り口には、2人の執行者が立っていたのだが、彼等は今将に魔境に挑もうとしている、
ルース達を呼び止めたりしなかった。
挨拶も何もせず、全くの無視。
2人の執行者は、「魔法大戦の遺物」と呼ばれる、禁断の地に棲息する凶悪な魔法生物が、
村に侵入しない様にする為の、見張りと守衛を兼ねて、配置されている。
執行者にとって、守るべきは村の治安であり、禁断の地で冒険者が何をしようと、どうなろうと、
関知しないと言う事だ。

42:創る名無しに見る名無し
14/02/17 18:44:58.31 yDb4Jq0a.net
いざ、禁断の地。
緑の絨毯を踏み締め、数巨歩いた所で、ルースは突然悪寒に震えた。
反射的に足が止まる。

 「どうかしましたか?」

彼の直ぐ後ろを歩いていたクレークが、異変を察して声を掛ける。

 「何か、感じないか?」

ルースは逆に問うたが、クレークは何も感じていない様で、不思議そうな顔をするのみ。

 (……何とも思わないのか?)

ルースが感じたのは、森中に分布している、幾つもの小さな気配。
それも今まで感じた事の無い、奇妙な魔力の纏い方をしている。
動物とも植物とも、無機物とも有機物とも付かない。
その全てが連動して、自分達を監視する様に、動いているのだ。

 「見られている」

ルースは態と短い言葉で教え、クレークの反応を試した。

 「ええ、変な気配は感じていますよ」

意外にも、クレークは同意する。
しかし、軽く答えた事から、重大な脅威とまでは認識していないと判る。

43:創る名無しに見る名無し
14/02/17 18:54:47.31 yDb4Jq0a.net
ルースには「幾つもの小さな気配」が、何か巨大な物の統制下にある様に思えてならない。
深入りすれば、牙を剥かれると言う、確信めいた予感がある。
クレークは魔法資質がルースより低い為に、連動する夥しい小さな気配に、気付けないのだ。
……だが、この事実をクレークに伝えるべきか、ルースは迷った。
飽くまで、巨大な物が潜んでいる「様に思える」程度。
唯々不気味と言うだけで、何の確証も無いし、差し迫って危険な状況にあるとも言えないので、
危機感を訴えても伝わり難いだろう。
一端の冒険者が、『魔境<イーリー・ホーント>』を前に、怖気付いていると思われるのも困る。
あれこれと独り思案に耽るルースに、クレークが声を掛ける。

 「ルースさん、先に進む前に、この辺りを少し調べても良いですか?」

 「ああ、俺は周囲を警戒しておく。
  余り遠くに行くなよ」

当初、浅いエリアを探索するだけなら、然して対策は必要無いと、ルースは高を括っていたが、
甘い考えだった。
これが百年以上に亘って、進入者を阻んで来た、伝説の秘境なのだ。

 (流石は、禁断の地……)

ルースはクレークの所作と、それに反応する小さな気配を、注意深く観察した。
クレークはビンに土や苔、木の皮を詰めたり、急か急かノートに何かを書き込んだりしているが、
その内容まで気に掛ける余裕は、ルースには無かった。
約1角後、一通り近辺を調べ終えたクレークは、ルースに謝る。

 「済みません、時間を取らせてしまって。
  さあ、行きましょう」

先に進みたいのは、ルースも同じだったが、その意思とは逆に、気分が乗らない。
ずっと魔力の探知に集中していたので、神経が消耗しているのだ。
しかし、未だ撤退には早過ぎる。
ここはクレークの自由に進ませて、自分は警戒に専念するべきだろうか?
それとも先輩冒険者として、やはり自分が先導するべきだろうか?

44:創る名無しに見る名無し
14/02/18 18:55:56.82 r8jf9swH.net
1日置いてレスが無い時は、書き込み時間の小数点以下1桁で勝手に判定します。
奇数ならクレークを先に、偶数ならルースが先。
どうなるかな?

45:創る名無しに見る名無し
14/02/18 19:42:26.73 CIBvJRZP.net
クレークさん

46:創る名無しに見る名無し
14/02/19 19:35:10.43 V3W4NPpJ.net
反応の鈍いルースに、クレークは再び声を掛けた。

 「どうしました?
  具合悪いですか?」

能天気な奴めと、ルースは苛付きながらも、平静を装う。

 「いや、どうと言う事は無い……。
  クレーク、ここからは、あんたが先行してくれ。
  進行のペースも、あんたに合わせる。
  だから、一々俺に確認を取らなくて良い。
  俺は後方から周囲を警戒しておく」

ルースの提案を、自分への配慮と受け取ったクレークは、申し訳無さそうな顔をする。
冒険者としては初心者で、進行を止めている自覚があるのだから、そう思い込むのも宜なるかな。

 「あ……、済みません」

 「気にするな」

誤解させる積もりは無かったのだが、上手い具合に勘違いしてくれたので、ルースは訂正しなかった。

47:創る名無しに見る名無し
14/02/19 19:37:52.28 V3W4NPpJ.net
それから数針、クレークは数巨進む度に足を止めて、採取や観察を繰り返したが、その間に、
これと言った問題や危険は発生しなかった。
相変わらず、無数の怪しい気配が自分達を監視している―様に、ルースは感じるが、
それだけで全く変化が無い。
好い加減に慣れ始める。

 (俺の気にし過ぎか?)

気を張っているのが馬鹿馬鹿しくなる。
未だ村から半区も離れていない。
幾ら何でも、こんな所で生死を懸ける事態にはならないだろうと、慢心しそうになる。

48:創る名無しに見る名無し
14/02/19 19:46:37.64 V3W4NPpJ.net
数点後、後発の冒険者達が、2人を追い越して行った。
彼等は擦れ違い様に、何をやっているんだと、ルース達を奇異の目で見る。
冒険者は誰も、我先にと禁断の地の未踏破領域へと向かう。
浅いエリアには何も無いと判っているし、早くしなければ、誰かに先を越されてしまうだろう。
そんな中で、未だ村に近い所を、彷徨彷徨(うろうろ)しているとなれば、奇妙に思われて当然だ。
彼等はルースが振り向いて、目が合いそうになると、ついと視線を逸らし、挨拶もしない。
人見知りな訳ではなく、これが普通の態度なのだ。
特に、禁断の地の様な、同業者が多く集まる未踏破領域では、互いがライバルになり得る。
予め取り分を決めた仲間以外とは、協力すべきでない。
それは不要なトラブルを招く。
仲間であっても、人は欲に目が眩む物で、他人に命を預けるのは難しい。
緊急事態でもないのに、下手に馴れ合ったり、ライバルを助ける様な真似はしない。
緊急事態であっても―いや、緊急事態「だからこそ」、人を信用してはならない。
現実の見えない者から、蹴落とされるのだ。
故に、冒険者はクールでドライ、そしてシビアであれと言われる。

49:創る名無しに見る名無し
14/02/19 19:48:28.45 V3W4NPpJ.net
更に数点後、先を歩いてたクレークが、倒木を跨いだ後、急に小さな呻き声を上げて蹲った。

 「ぐっ……!」

 「どうした?」

ルースは回り込んで尋ねる。
クレークの右足首には、虎挟みが食い込んでいた。
幸い、発条(バネ)付きの本格的な罠ではなく、簡易な仕掛けの物だったが、
挟み部分に毒が塗られていないとも限らない。

 「間抜けな罠に掛かったな。
  自分で治せるか?」

 「ええ、大丈夫です」

クレークは虎挟みから足を抜くと、傷口に手を当てて、共通魔法を唱えた。
浅い傷を治す程度なら、誰でも出来る。
共通魔法とは便利な物だ。
ルースはクレークが傷を治している間、虎挟みを取り上げて調べた。
特殊な仕掛けは無く、毒が塗られていた形跡も無い。
実に良心的な罠だ。

50:創る名無しに見る名無し
14/02/19 19:54:13.84 V3W4NPpJ.net
魔法による応急手当てを終えたクレークは、その場で足踏みして、傷の治り具合を確かめる。
そして、忌々し気に呟いた。

 「一体誰が、こんな事を……」

 「この程度で一々腹を立てていたら、身が持たんぞ」

ルースはクレークを諌める。

 「俺達冒険者にとって、同業者は商売敵だ。
  積極的に敵対はしないが、ライバルは少ない方が良い。
  足の引っ張り合いは珍しくない」

 「だからと言って、こんな事が許されると!?」

クレークは憤慨したが、ルースは冷たく突き放した。

 「罠としては、優しい方だと思うが?
  ここは禁断の地、都市法の及ばない無法地帯。
  横取り、闇討ち、何でもあり。
  警戒してない奴が悪い。
  この罠は警告みたいな物だ。
  その気になれば、数角で死に至る様な、猛毒を仕掛ける事だって出来た。
  尤も、そこまでやる奴は、もう『冒険者』とは呼べないがな」

ルースの説明が少なからずショックだった様で、クレークは呆然としている。
確かに、在野研究者には想像も付かない世界だろう。

 「怖気付いたか?
  今から引き返すか?」

 「……いいえ、進みます。
  これからは気を付けるので」

ルースが挑発気味に訊ねると、クレークは険しい表情で断言した。
彼の足取りは、明らかに慎重になっていた。
さて、そろそろルースは、禁断の地の雰囲気に慣れて来た。
強がるクレークを抑えて、自分が前に出るべきだろうか?
それとも、未だ後方で警戒を続けるべきだろうか?

51:創る名無しに見る名無し
14/02/19 23:28:19.82 wCnzVG/n.net
ここは前に出てみては……?

52:創る名無しに見る名無し
14/02/20 19:21:32.96 0AsKxUL0.net
了解。
2つ訂正があります。
1つは>>32の「500MG」の所で正しくは「1000MG」。
挨拶料500+情報料500で1000と書こうとしたけど面倒臭いから取り消した名残。
もう1つは「在野研究者」で正しくは「野外研究者」。
在野研究者は大学に在籍していない民間の研究者で、フィールドワークとは無関係。
最初から辞書引いておけば良かった。

53:創る名無しに見る名無し
14/02/21 19:27:08.08 Ymq13XS/.net
ルースはクレークを呼び止める。

 「まあ、待てよ。
  あんた罠探知の魔法、知らないんだろ?」

 「罠探知?
  そんな魔法が?」

クレークは半信半疑と言った風に問い掛ける。
罠を見抜く魔法等、普通に生活していれば、縁の無い物だ。
彼が知らないのも無理は無い。

 「どんな魔法ですか?
  呪文を教えて下さい」

クレークはルースに手間を掛けさせない様、自分が魔法を使う積もりだった。
ある程度の魔法資質を有している事が前提になるが、呪文さえ知っていれば使えるのが、
共通魔法の強み。
しかし、ルースは意地悪く断る。

 「嫌だね。
  探知系の魔法は、探索に欠かせない物だけに、使えるだけで重宝される。
  簡単に他人に教える訳には行かんよ」

 「私達は同じ『仲間<パーティー>』でしょう?」

 「馬鹿を言うな。
  今日出会ったばかりで、1日限りの付き合いになるかも知れないのに、仲間も何もあるか?」

正論を吐かれ、クレークは口を閉ざした。
冒険者とは世知辛い商売なのだ。

 「それに探知系魔法の効力は、魔法資質の高さに比例する。
  あんたの魔法資質じゃ不足だ。
  ここからは俺が先導する。
  先を急ぐ様な事はしないから、安心しな」

 「……はい」

クレークは不満気な表情だったが、ルースの好意を素直に受け取り、黙って彼に付いて行く。

54:創る名無しに見る名無し
14/02/21 19:30:03.02 Ymq13XS/.net
素人のクレークの手前、見栄を張った物の、実はルースは複雑な魔法を複数同時に扱えない。
魔法学校で高度な詠唱描文技術を、修得しなかった為だ。
彼は周囲に気を配りながら、罠探知の魔法を使う事は出来ない。
だが、自分達を追い越して行った冒険者が居る事で、怪しい気配への警戒感は大分薄れていた。
先行者の身に何かあれば、痕跡が残る。
彼等を無視して、自分達だけが襲われるとは考え難い。
今の所、目立つ道は1本で、迷う心配も無い。
森の中の道は、特に整備されていないのだが、何度も冒険者が探索に入るので、
最初は獣道程度だった物が、邪魔な草を刈り、石を除けてとやっている内に、
自然と道幅が広くなって、立派な道になる。

55:創る名無しに見る名無し
14/02/21 19:36:26.19 Ymq13XS/.net
時々クレークに呼び止められながら、ルースは森の深いエリアへ向かう。
進めば進む程、木の生える密度が高くなり、木漏れ日が徐々に細り、暗んで行く。

 「不気味ですね……」

唐突に、クレークが零す。
ルースは一旦立ち止まり、ジャケットの内ポケットから懐中時計を取り出して、時刻を確認した。
出発は南の時、現在は南西の時と半角を少し過ぎた頃。

 「西の時が近くなったら、引き返そう。
  妖獣の類に襲われると危ない」

本来なら、夜間探索や野宿も行うべきだが、今日は程々で引き揚げる積もりだった。
クレークが冒険慣れしていれば、また違う判断も出来たが、そんな事を言っても仕方が無い。
ルースの提案に、クレークは意見する。

 「この辺りは未だ大丈夫だと思いますよ。
  小型の動物しか棲息していません」

 「何故そんな事が……って、あんたは学者だったな」

 「ええ、生物生態学が専門です。
  足跡や糞、食べ残し、マーキングの跡……妖獣も魔法生命体も、生き物なんですから、
  生活していれば、何らかの証拠が残ります」

遭遇前から、棲息する生物の種類が判るなら、意外に役立ちそうだなと、ルースは考える。
しかし、今から予定を変更する気は無かった。
危機回避等の緊急性が無く、柔軟性を求められる場面でもないのに、不用意に予定を変更すれば、
思わぬ落とし穴に嵌まる。

 「悪いが、予定は変えない」

 「私は構いませんが……、良いんですか?」

 「深入りするには、準備不足だ。
  よく言うだろう?
  『未だ行ける』は、『もう危ない』」

クレークは抗議しなかった。
経験のあるルースに従うのが、賢明と判断したのだ。

56:創る名無しに見る名無し
14/02/21 19:37:59.72 Ymq13XS/.net
ルースはクレークに明かり魔法を使って貰い、薄暗い森の中を行く。
あれから罠らしい罠は無いが、無い無いと油断していると、引っ掛かるのが罠と言う物。
警戒を怠る事は出来ない。
進行が順調なのは、未だ浅いエリアだから。
過去、何千何万と言う冒険者を退けた禁忌の領域が、1日や2日で制覇出来るなら、苦労は無い。
そんな事を考えながら、道を歩いていたルースは、又も悪寒に襲われた。
足が止まり、冷や汗が噴き出す。

 「ルースさん……」

クレークは神妙な声で、ルースに呼び掛ける。
魔法資質がルースより低い彼にも、環境の変化が解ったのだ。

 「ここが第2エリアと言った所かな……」

恐らくは、一定の地点に到達する度、ルース達を監視する無数の気配が、徐々に濃くなるのだろう。
その様に予想して、ルースは探知魔法を使いながら、境界を前後した。
……やはり1本のラインを境に、突然雰囲気が変わる。
ルースは悩む。
ここから先は、今までとは違うと予想される。
多少の危険は予想していたが、それ以上の事が起こるかも知れない。
予定よりは数針早いが、大人しく引き返すか?
それとも、「冒険者」らしく危険を覚悟で進むべきだろうか?

57:創る名無しに見る名無し
14/02/22 22:20:53.90 U1gL57d3.net
書き込み時間の小数点以下1桁が奇数なら引き返す、偶数なら進む。

58:創る名無しに見る名無し
14/02/22 23:09:57.52 wrE0tWMp.net
すすむ!

59:創る名無しに見る名無し
14/02/23 19:40:30.97 rYvvXDpj.net
「予定は変えない」―ルースは自分の言葉を曲げなかった。
未だ何も起こっていないのに、弱気になって引き返す等、冒険者ではない。
そう信じている彼は、少し語気を強めて言う。

 「行くぞ、クレーク」

 「えっ……、はい」

クレークは意外そうに小さな声を上げた後、了解の返事をした。
進むと言っても、ルースの足取りは慎重である。
罠探知と気配察知を交互に使い、進行ペースを落としてでも、不測の事態を避けるべく、
警戒に集中している。
自然と2人は無言になる。

 「……クレーク、獣が数匹。
  魔犬の様だ」

途中、ルースは索敵に引っ掛かった物を、クレークに告げる。

 「魔犬ですか?
  どの辺りに居ます?」

 「左前方。
  彼方(あちら)も此方に気付いた様だ。
  動揺している」

気配を察知する魔法は、常に逆探知される虞を孕む。
しかし、「見られていると判る」事と、「誰が見ているか判る」事の間には、超え難い壁がある。
この魔犬の場合は前者だ。
魔犬は己より強大な魔法資質を感じて、怯えている。
直ぐに襲い掛かって来る様子は無い。

60:創る名無しに見る名無し
14/02/23 19:41:24.66 rYvvXDpj.net
ルースは無視を決め込んだが、クレークは安心出来なかった。
少し歩いた後、彼はルースに訊ねる。

 「魔犬、付いて来ますか?」

 「どうだかな……。
  追い掛けて来るって様子じゃないが、逃げ出すって様子でもない。
  気になるのか?」

 「魔犬は狡猾です。
  距離を保って付いて来る様でしたら、弱るのを待っているかも知れません」

妖獣退治の経験があるルースにとって、魔犬程度は幾ら数が揃っても、取るに足らない相手。
禁断の地には、魔犬如きとは比べ物にならない位、凶悪な魔法生物が棲息していると聞く。
そんな中でクレークの忠告は、用心し過ぎに聞こえる。

 「解った、留意する」

返事は口先だけで、余り気に留めない。

61:創る名無しに見る名無し
14/02/23 19:46:39.44 rYvvXDpj.net
道形(みちなり)に数巨進んだ所で、ルースは前方に人の気配を感じた。
更に、複数体の妖獣と戦闘している事も判る。
妖獣は見慣れない大型の物が2体と、魔犬の類であろう小型の物が2体。
人の方はルースより魔法資質が低い物の、それなりに戦闘能力があり、善戦している。
救援に間に合わないなら、傍観に徹しようかと考えていたルースだが、今から急げば、
助けられそうなので、救援に行く事にした。
冒険者同士はライバルで、犯罪者染みた信用ならない連中も多いが、そうでない者だって居る。
その事を「冒険者」であるルースは、誰より知っている。
『忘恩者<イングレイト>』だったとしても、恩は掛け捨て。
一々咎めたり、惜しいと思ったりはしない。

 「クレーク、この先で誰か妖獣に襲われている」

 「それは急いで助けに行かないと!」

クレークはルースが助けに行かないと思い込んでいる様で、必死に訴えた。
少し前に、同業者への警戒を訴えたばかりなので、仕方の無い反応ではある。

 「ああ、そうだな。
  急ごう」

ルースの答にクレークは拍子抜けし、逆に訝った。

 「……ルースさん、何か目論見でもあるんですか?」

 「何も無い。
  冒険者だって人の子だ。
  良い奴も居れば、悪い奴も居る」

 「ああ、失礼しました。
  急ぎましょう!」

淡々としたルースの説明に、クレークは安堵した様に大きく頷くのだった。

62:創る名無しに見る名無し
14/02/23 19:51:47.41 rYvvXDpj.net
ルースが先に立ち、クレークが後に続く形で、2人は妖獣と戦闘中の冒険者の元に急ぐ。

 「居たぞ!
  クレーク、あんたは後方で支援を頼む!」

 「はい……って、ルースさん!
  あ、あれは何ですか!?」

ルースとクレークが見た物は、緑色をした得体の知れない化け物だった。
熊の様な巨体で、全身に蔦を絡ませている。

 「し、知らん、俺に訊くな!
  あんたこそ、生物学者じゃないのか?」

流石にルースも動揺する。
彼は確かに、気配察知の魔法で、大型の妖獣2匹と、小型の妖獣2匹を捉えた。
小型の妖獣は予想通り魔犬だったが、大型の妖獣だと思っていた物が予想と全然違ったのだ。
クレークは目を見張って、怪生物を凝視する。

 「植物を巻き付けている?
  それとも体毛?」

 「分析は後だ!
  何だろうと関係無い!
  とにかく支援を頼む!」

ルースは覚悟を決めて、冒険者を助ける為に、火の魔法を唱えながら飛び出した。

63:創る名無しに見る名無し
14/02/23 19:54:22.90 rYvvXDpj.net
今回は選択肢は無しで

64:創る名無しに見る名無し
14/02/24 19:08:11.63 UqqDiaty.net
ルースが自らを『蒼焔』と称するのは、得意の火系統の魔法で、青白い炎を操る事が出来る為だ。
青白い炎はH1万2000度以上の、鉄をも蒸発させる超高温。
勿論、瞬間最大火力であり、持続させるのは困難。
彼の炎は一瞬の青い閃きとなって、敵を灼(や)く。
魔力を極限まで圧縮させた、高速で飛ぶ極小の青い『火の玉<ファイア・ボール>』は、
傍目には光弾の様に映る。

 「BG4CC4!!」

右手に嵌めた白い耐熱手袋で、ルースが標的を指差すと、その先端から「黄色い」光弾が飛ぶ。

 (威力の減衰が早い!
  何時も通りとは行かないか……)

禁断の地に独特の魔力の流れが、共通魔法を妨害する様に作用している。
光弾の温度が通常の半分程度までしか上がらない。
それでも生物を仕留めるには十分。
光弾を撃ち込まれた緑色の化け物は、内側から燃え上がり、あっと言う間に火達磨になった。
パチパチ罅焼きの音を立てながら、全身を痙攣させて倒れ込み、沼田(ぬた)打ち回って果てる。
叫び声を上げる事も出来ない。

65:創る名無しに見る名無し
14/02/24 19:13:41.35 UqqDiaty.net
もう1体の緑色の化け物は、ルースの方が危険だと判断したのか、直ぐに狙いを彼に変えた。
激昂する様に両腕を伸ばし、掴み掛かろうとする。
ルースは化け物を睨み付け、共通魔法を唱える。

 「E16H1H3D4!
  F2A3、F2A3!」

『邀撃<インターセプション>』の火炎魔法で、接近して来た相手を直接燃やす。
外側からの燃やされ、緑色の化け物は、黒焦げになりながら蹲る様に縮まる。
先に燃やされた個体と同じく、ゴーゴーと激しい燃焼音の合間に、薪を燃やした時の様な、
パチパチと言う罅焼きの音が聞こえる。
2体の化け物を焼殺したルースは、気を抜く事無く、冒険者に目を遣った。
だが、彼は既に2匹の魔犬を始末した後で、ルースと目が合うと、両手の短剣を腰の鞘に納め、
先ず礼を述べる。

 「有り難う御座います」

ルースより少し小柄な、若い男。
戦い慣れている様子だが、邪気は感じない。
ここで漸く、ルースは気を緩める。

 「大丈夫か?」

 「ええ、見慣れない奴だったので、少し様子を窺いつつ、戦っていました」

よく見れば、彼は殆ど息が上がっていない。
これは救援に入るまでも無かったかと、ルースは少し後悔した。


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