【明城学院】シンジと ..
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598:うとするのを止めて、ハンカチを渡す。  「まあいいわ…。ねむい」  そう言って、僕の肩の方向にこてんと頭を倒して、そのままスヤスヤ寝息を立て始める。  僕は突然の彼女の行動に、これも遺跡のご利益だろうか?と意味不明の思考をする。  まあ、不安げに拍動していた僕の心臓は、別の理由で早い脈拍を維持していく。    僕は眠らない。まだ降りる駅は先だし、朝焼けの陽光を受けて輝くアスカの髪の輝きを、 神聖なもののように見届ける使命がある。なんかある。うん、きっと。    騒がしい改札口方面を抜けると、ようやく人心地ついた気がする。今でも電車から降り る際の、人波が動く流れにうまく乗れない。アスカも同じようなので、手を繋いで駅の外 に出た。モスグリーンのコート、青いマフラー、茶色の皮手袋を着こんでいるけど、吐く 息も白むほど寒く、そして風もあった。厚ぼったい服を嫌うアスカはさらに寒そうだ。  とっととタクシーでも拾って目的地にでも行こう。と、いつの間にかホットおしるこの 缶を飲んでいるアスカに提案すると、アスカはぐびぐびと飲み干しながら。  「…えーっと、シンジ、そのね、言い忘れてたけど」 何かバツの悪そうな表情のままうつむいた。僕は嫌な予感半分で聞いてみようとした。 タイヤの擦れる派手な音。駅前のロータリーに不似合いな、真っ赤な車体。 衆目の意識がそこに集中する中、開かれたドアの先から、金髪の、妙齢の… あ、この人たぶん。




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