【春よ】逆転裁判121【来い】
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751:枯れた名無しの水平思考
06/12/20 15:18:21 2ZBmeKRP0
法廷で見た時、なんてムカツク奴なんだと思った。
尊敬する先生も響也の話をする時は苦虫を噛み潰して飲み下したような顔をする。
だけど、オレは見た。それから聴いた。
あれは、検事局から近い公園での話だ。
その日、たまたま用事があって検事局の近くを訪ねていた。
事務所に帰るには公園を通るのが近道だ、と先生が言っていたっけ。
時刻は午後九時。外は小降りの雨。
「うう、寒いな」
オレはコンビニで買ったビニール傘を差して、小さく身震いした。
急いで帰ろう、と走ろうとした時、オレの耳に何か聞こえてきた。
「歌・・・・?」
誰かが歌ってる。雨だというのに、こんな時間に誰だろう。
キョロキョロと見回した後、公園のベンチで人影を見つけた。
アイツだ。
アイツが歌っていた。傘もささずに、濡れたままで。
歌、うまいんだなぁ・・・・。
オレは当然のことを思いながら、響也に近づいた。
「・・・・風邪、ひくぞ」
傘を差し出す。
響也はやるせないような切ないような顔で、オレのことを見上げた。
ドキ、と心臓が大きな音を立てて動いた。
「なんだ、キミか・・・・」
「なんだ、じゃなくて・・・・ええと、何してんだよ?」
こんな雨の中で、歌なんか歌っちゃって。
しかも、響也はいっこうに立ち上がる様子も見せない。
なんか立ち去る気にならない。響也が心配だ。
オレは傘を差し出したまま響也の顔をのぞきこんだ。
「・・・・なんか、イヤなことでもあったのか・・・・?」
「べつに・・・・キミには関係ないだろ」
響也はプイッと顔をそらした。
「早く行けよ」
「イヤだね」
ムカツク。こうなったら、とことん付き合ってやる。
響也は嫌がるわけでもなく、何も言わずにオレをにらんでから、また歌を歌った。
うん、やっぱりうまいや。
黙って聴いていたけど、そのうちあるコトに気が付いた。
雨のせいで気づかなかったけど、響也は泣いていた。
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