【ライダー・戦隊】スーパーヒーロータイム!【メタル】
at MITEMITE
230:仮面ライダーW ◆ea7yQ8aPFFUd
12/01/01 01:30:43.44 1dS5twmf
「そんなことがあったのか・・・。」
翔太郎の話を聞き、少し暗めの声を出す照井。
「フィリップの助言のおかげでドーパントを倒すことが出来た・・・だが・・・。」
「だが?」
「・・・俺は、未だにフィリップの力を欲しているのかもしれない・・・哀れなハーフボイルドだよ、まったく・・・。」
「・・・。」
黙りこむふたり・・・であったが、そんな空気を変えようと、亜樹子が『何か』を抱えて彼らの前に現われた。
「ジャーン!!」
そう言って、ふたりの前にその『何か』を見せる亜樹子。
それは、未開封の風都ワインであった。
ドラゴン・ドーパントによる事件以降、亜樹子は風都酒造から報酬とともに風都ワインを特別に一本貰っていたのだった。
「翔太郎くんも、いつまでもウジウジしない!ハーフボイルドならハーフボイルドらしく堂々としてなさい!!」
「・・・おい、俺は別にスキ好んでハーフボイルドになった訳じゃねぇよ。」
「兎にも角にも・・・寂しい時や悲しい時には酒が一番の薬!それに、今日は大晦日だし、三人で飲んじゃいましょう!!」
「・・・そうだな・・・話には聞いていたものの、風都ワインを味わったことはまだ無かったしな。」
照井が言う。
「賛成一票!翔太郎くんは?!」
「え・・・あ・・・。」
「沈黙は無効票と見なされ、賛成二票・反対ゼロ票で可決となりましたっ!!」
そう言って、風都ワインをふたりの前に置き、三人分のグラスを取りに行く亜樹子。
その姿を見て、翔太郎が思いついたように叫ぶ。
「・・・亜樹子!グラスは四つにしてくれ!!」
「四つ・・・?・・・ああ!OK!!」
231:仮面ライダーW ◆ea7yQ8aPFFUd
12/01/01 01:35:55.12 1dS5twmf
照井によって封が切られる風都ワイン。
中に詰められた液はボトルから放たれ、大き目の氷が入った四つのコップに並々と・・・そしてほぼ同じ量が注がれた。
そして、亜樹子がそのうちのひとつを手に取ると、立ち上がって語り始めた。
「さて・・・今年はミュージアムやら財団Xやらの大騒動がありましたが・・・無事、年末を迎えることが出来ました!
来年も鳴海探偵事務所および風都警察が無事に活動出来ますよう・・・乾杯!!」
「乾杯!」
「乾ぱ・・・!!」
翔太郎がふたりのグラスに自身のグラスを付けようとしたその時だった。
翔太郎は全身に謎の感覚を感じ、そしてグラスを握ったまま近くの窓から外をのぞくのであった。
「どうしたのよ、翔太郎くん!」
「今・・・フィリップの声が・・・聞こえた気がした・・・。」
「フィリップくん・・・?」
翔太郎の言葉に、ふたりの窓の側へ駆ける。
だが、窓の先には薄暗い曇り空が広がっているのみであった・・・と思われたが、
その数秒後、風都の街に白い雪が舞いだすのであった。
この光景に、三人の顔は満足そうであった。
「フィリップくん・・・雪が好きだったもんね。」
「ああ・・・。」
雪を見て言う、亜樹子と照井。
一方の翔太郎は黙りつつも、嬉しそうな顔をしながらグラスを口に傾けるのであった。
粉雪舞う風都の街。
その上空に、人知れず飛ぶエクストリーム・メモリの姿があった。
誰も気づかないような高い場所から、鳴海探偵事務所を見つめるエクストリーム・メモリ。
その目線の先には、風都ワインを楽しむ左 翔太郎・鳴海 亜樹子・照井 竜の姿があり、
そして彼らが囲む机の上に四つ目のコップがあることに気付いた。
エクストリーム・メモリが言う。
『照井 竜、亜樹ちゃん、それに翔太郎・・・君たちと新年を迎えられなくて残念だ・・・
だが、僕はもうすぐ君たちの前に現われる。そして、次の新年は一緒に祝おう・・・
三人と四つではなく、四人と四つでね・・・。』
そう言うと、エクストリーム・メモリ・・・いや、フィリップは空の彼方へと飛んでいくのであった。
おわり
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以上です、失礼いたしました。
232:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 15:11:14.98 3IJJsWwq
14話@
六十数年前、主官庁を沈没させるべく東京の地下にトンネルを築いていたモグラ型改造兵士らは、仮面ライダーの必殺技「ライダーハイスピードブレード」で一匹を残して壊滅した。
しかし残る一匹を尋問する寸前、仮面ライダーは進駐軍の兵士達が落盤に巻き込まれる音を聞いた。
仮面ライダーネメシス14話「因縁の卜部」
/
六十数年後、香の匂いがきつい何処かの暗闇。
董仲僧正の肩を叩く、もう一人の若い僧。
「相変わらずのしかめ面でいらっしゃる。卜部の鬼…ですか?」
頷く董仲。
卜部の鬼により常に妨害される自分達ザラキ天宗の謀略。
妖魔ですら軽々と粉砕する卜部の鬼にとっては、自分達の改造兵士など屁でもなかろう。
そんなことは六十数年前の時点で分かりきっていた筈だが。
しかし、当時と今は状況が異なる。
妖魔が東京に解放されたという点だ。
若い僧…玄達は笑む。
「改造兵士に妖魔の力を組み込めば良い」
ムカデ妖魔の牙が刺さり、京也の病院に連れて来られた御杖 峻=スラッシュ。
但し、体内に流入した毒そのものは鬼の生命力で既に無効化されており、病院に着く頃には既に単なる脇腹の軽い切り傷でしかなかった。
「おれは非常に気分が悪い。何故だか分かるか?てめえが嫌いだからだ」
京也に消毒薬を塗られながらそう毒づく御杖 峻。
しかし京也は気にしない。柄の悪い患者なら慣れている。
それより、と聞いてみる。
「御杖峻。あんた保険証持ってるか?ここ初診だろ?」
「…あっ」
保険証が無かったので、代金が一万超えた。
都市保安庁宛の領収書を受け取り、紫のハーレー型に乗って帰ってゆく。
もう少し突っ込んで話をするべきだ、と彼の後ろ姿を見送りながら京也は思った。
/
六十数年前、レイモンド・マグラーの開いた視界に日光が射し込んできた。
いつの間にか地上に戻れていた。周囲では、部下達も一様に息を吐いている。
そしてもう一人、卜部武政がいた。
「まさか、君が助けてくれたのか?」
「うん、埋まってるの見るとざまあ見やがれって思ったんだけど、やっぱ三次の事があるからねぇ」
レイモンドは救出できた。だがモグラ怪人の最後の一匹を逃がした。それに、落盤が発生した際頭上に感じた奇妙な気配。
あの落盤はレイモンドらの殺害、或いはモグラ怪人の救出を目的とした人為的なものだ。
「モグラがもう一匹いたって事かな。それとも…」
233:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 15:33:23.36 3IJJsWwq
14話A
様々な可能性を捨てきれないまま、武政は一先ず斎への中間報告のため、美月屋へ戻る。
/
六十数年後、御杖峻を見送った翌日。
午前の診療中、卜部京也は患者の中に知った顔を見つけた。
「山内涼…」
凉ちゃん、と呼ばれる斎の友人だ。
「今日はどうした」
「先生さ、愛想無くね?イツキは気い弱えぇんだから普段からもっとソフトに」
余計なお世話だ。
足首に内出血がある。
どうやら満員電車に乗った際ドアに挟まれたらしい。
「こーゆーのって鉄道会社訴えられねーの?」
「やめておけ。訴訟費用の方が高くつく」
凉ちゃんはバイト先を変えたため、大学から池袋を経由し、慶修線という路線を使っている。
自殺の名所がある為か、この路線はよくダイヤが乱れる事で有名だ。
そういえば、昨日ムカデ妖魔を倒したのも慶修線の線路上だっけ。
同じ頃、警視庁図書館。
「フッ。刑事が刑事課の仕事をサボっていいのか?」
背後に突然現れたアゴの長い男に驚く山下山男。
「君は…コブラ事件の時の…」
男は自分のIDカードを見せる。
「都市保安庁の御杖峻だ。てめえはレイモンドファイルの閲覧手段を知りたい。
彼の熱意に御杖峻は笑みを向ける。皮肉めいた暗い笑み。この刑事は利用できる。
「レイモンドファイル…作成者はレイモンド・マグラー。1945〜47年、東京に駐留していたGHQの兵士。あとはてめえで何とかしろ」
そう告げ、紫のハーレーで走り去る。
六十数年前、頭に包帯を巻いたレイモンドへ三次が駆け寄る。
「大丈夫?あの地下トンネルで怪我したの?」
「ああ。しかし生き埋めになった我々を助けてくれた者がいた」
どうやってあの人数を素手で掘り起こせたのか。
「やはりまだ日本にはニンジャがいるのか?」
苦笑するキヌ。
「あたし昭和生まれだからお目にかかってはいないわね」
そんな食堂の様子を脇に見ながら武政は畳に地図を広げ、鉛筆でモグラ怪人が築いたトンネルの経路を書き込み斎に示す。
「一匹取り逃がした。ただ、アイツだけならそこまで大規模な穴は掘れないと思う」
問題はその最後の一匹が口にした「首魁は別にいる」の言葉と、レイモンド救出時に感じた何者かの気配。
「その何者かが首魁で、秘密を守ろうと落盤を起こしてレイモンドを生き埋めにした…んではねえかな、と思う」
黙って聞いていた斎が口を開いた。
234:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 15:51:50.87 3IJJsWwq
14話B
「進駐軍が展開している状況だから武政さん、貴方は一旦追及を断念した。もう一度現地へ行こうと思ってる。何故なら」
頷く武政。
「そゆコト。モグラ怪人は、アレが最後の一匹じゃねえな。作戦には落盤を起こせる誰かがもう一人参加してる」
一方、東京郊外。とある屋敷に来客があった。
「立和田君。トンネル計画は失敗したようだな?」
口髭を蓄え、煙管を燻らせる紳士。
その紳士に頭を下げる、立和田と呼ばれた若い男。
「申し訳ありません。しかし、モグラ男の残る一匹を仮面ライダーから逃がす事には成功しました。これで秘密は守られます」
「よし、今度こそ都市保安団を沈没させるんだな。せっかくの人鬼なんだ。有効に使ってくれ」
口髭を蓄えた紳士、御杖喜十郎はそう言って笑み、立和田に「召鬼」の呪符を渡した。
/
六十数年後。
講義終了からバイトが始まるまでの僅かな間、病院に京也を訪ね、他愛ない話をする。
それが斎の日課となっていた。
「凉ちゃんが来たんですか?」
「足首にアザを作って。骨に異常は無かった。心配する程じゃない」
言って京也は一人でブラックコーヒーを啜っている。
来客に茶を出す気配りを、この男は知らない。
斎の方も、この居心地の悪さに多少は慣れた。
時計を気にしつつ、斎は懐より御守りを取りだし、京也に示す。
「実は…西川口のPQC研究所が襲われた時、わたし…」
言葉が途中で止まった。
顎の長い嫌な面が見えたからだ。
「よう卜部京也。デートか?卜部の血脈の分際で」
御杖峻だ。嫌味を言いに職場に来たのか。
「…遠慮を覚えるがいい。ムカデにやられたあんたのケガを見たのは俺だが」
「金は払ってやった。差し引きゼロだろうが?」
なぜこうも尊大なのだろう。
卜部の人鬼。御杖峻は京也をそう呼び蔑む。
しかし、と斎は思う。
それはすなわち恐怖の裏返し。
「あの…御杖さん。あなたは、卜部さんが怖いんですか?」
京也は国家の脅威かも知れないが、それ以上に御杖峻には何処か、京也への個人的な執着が見える、と斎は感じていた。
「…そうなのか?」
斎の指摘を聞き、京也もようやく気付いた。
御杖は一瞬だけ固まり、直ぐに皮肉気に笑んだ。
「フッ。お前、女の分際で鋭いな」
「一定の社会的地位にあるなら親交の無い女性をお前と呼称したり性差別を肯定する発言は控えろ」
こういう時にだけ、京也はやたら饒舌になる。
235:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 16:14:48.41 3IJJsWwq
14話C
斎の洞察力と京也の堅苦しさに苛立ちながら、御杖峻は頷いた。
「そう、個人的な執着だ。だが怖いんじゃねぇ。許せねぇんだ。おれの曾祖父は、卜部武政に殺された」
そろそろバイトの時間だが、斎は御杖の話を聞きたくなった。
だがその時、切り忘れていた彼女の携帯が鳴った。
「ごめん凉ちゃん、今病院に…」
「助けてイツキ!電車にザラキの…」
切れた。
凉ちゃんが助けを求めている。
「卜部さん!パソコン貸して下さい!」
そこから線路の情報を閲覧してみる。
確かに、事故によるダイヤの乱れが生じていた。
原因は、テロ。ザラキの改造兵士か?
この日、看護師の王麗華は病院にいなかった。
休暇なので家で寝るかゲームするかしていたかったのだが、交際相手に飲みに誘われた。
洒落たバーというのは嫌いではないが、どうにも相手の話がつまらない。
「僕の友達にも医者がいるって前に言ったろ?」
「ソイツからメールが来てさ、スーパーで買い物して帰ってきたら別の店が大特価だったんだって」
「そんなもん朝のチラシをちゃんとチェックしとけって感じだろ?」
相手の話に、曖昧に相づちを打ちながら若いワインをくゆらせる。
彼の話が麗華の耳からするすると抜けてゆく。
昨日、卜部医師が連れてきたあの患者はどう考えてもおかしい。
「出血量と外傷が比例しないわ…」
思わず口に出してしまい、相手の怪訝そうな視線を食らった。
その時、運良く携帯が鳴った。職場からだ。
「朝子さん?麗華です」
「休日返上してちょうだい。電車でテロだって!」
麗華はカウンターに諭吉を一枚叩きつけ、バッグを掴んで駆け出す。
「ごめん隆司。また今度ね!」
走り去った麗華。置き去りにされた交際相手。
カウンターの内で、マスターが微かに笑った。
/
六十数年前、武政は美月屋の壁に架かる竹槍を見つけた。
「キヌちん、この店にも竹槍ってあるんだね」
「ほら、B29に対抗する為とか言ってやらされた訓練。正直、あれに何の意味があったのか未だに分かんないんだけど」
全く使用された痕が無い綺麗な穂先を見て武政は考える。
「これ高速で回せばドリルになるよな…」
モグラ怪人の武器もドリルだった。
だからどう、という訳でもないが。ただ、と思い、武政は呟く。
「官庁を物理的に地下に沈め、自分らの意志を表明する。モグラの皆さんは明確な目的意識で行動してるな…」
236:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 16:26:58.00 3IJJsWwq
14話D
竹槍を見てそう呟く武政に対し、斎は彼の考えを見抜く。
「徳野村四十人殺し…貴方のお父様が犯人だったのよね」
「…痛いトコ突くねお前」
斎は、愛らしい風貌で容赦なく事実を指摘する。
やや顔をしかめながらも、武政は彼女の言と真意を察し肯定した。
「そうだね…モグラは、ザラキは目的を持って暴れてる。反対に、親父はただ人を殺したくなったから村で四十人殺した。鉈が血脂で錆びたら竹槍に持ち替えたんだってさ」
ザラキと父親、すなわち京也の曾祖父。
どちらがマシか、などと低次元な話はしたくない。
ただ、理不尽な悪意に愛する子息を奪われた親の涙。それは自分の父親とザラキ、どちらが犯人だとしても流れる。
「涙は少ない方が良い…もっかいやっつけてくるわ」
言って武政は再び敵の地下トンネルに向かった。
/
六十数年後、斎は京也に簡単に状況を説明する。
「卜部さん!慶修線に事故があって、凉ちゃんとも携帯繋がんないんです!」
同時に御杖峻の携帯も鳴った。マナーの低下が嘆かわしい。
「はい御杖。…慶修線にクラゲ型の改造兵士。了解」
妙だと京也は思った。
これまでなら、多少の目的を持った破壊活動をしてきたのに。
「改造兵士がそこまでの無差別破壊を…?」
「恐らく敵の狙いは妖魔の召喚だろうぜ。あのゴミクズ共は血の臭いを敏感に察知するからな!」
どこか、状況を楽しんでいる風の御杖峻。
京也は白衣を脱ぎ捨て駐輪場へ向かうと、愛車『TADAKATSU−XR420レイブン』に跨がったまま腰のベルトと「召鬼」の念珠を接触させる。
「…変身」
主が仮面ライダーへ変身すると共に、愛車も生体マシン、スカルゲッターへ変貌する。
「慶修線は地下を通る。コイツで穴を開け、突入する。スラッシュ。あんた、バイクは?」
既にスラッシュへ変身した御杖峻。
余裕綽々で一枚の呪符を取り出す。
「おや、まだコイツは使ってないのか?ライドリーフ!」
スラッシュは「鬼葉」の呪符を読み取る。
同時に空間が割れ、木の葉に似た形状の全長3m程の刃が出現した。
薄暗い駐輪場。
低空に浮揚する刃、ライドリーフ。
スラッシュはその上に屹立し、空中をサーフボードの如く駆ける。
「ついて来るか仮面ライダー?妖魔が来る前に、改造兵士を血祭りにあげる!」
「…俺もそのつもりだ」
スラッシュを追い、仮面ライダーもスカルゲッターを走らせた。
237:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 16:34:30.92 3IJJsWwq
14話E
/
六十数年前、腕のドリルで都市保安団の基礎を破壊、陥没させようと企むモグラ怪人。
そこへ声がかかった。
「せっかく逃がしてあげたのにさあ…心を入れ替えなさいよ」
武政が変身した仮面ライダーだ。
跳躍し、トンネルの天井を蹴りモグラ怪人の背面へ回り込み、一気に殴り飛ばして都市保安団ビルの基礎から引き離す。
「オレね、お前みたいな奴が世界で二番目に嫌いなんだわ」
少々自分に酔う仮面ライダー。
何せ前の戦闘では十数匹を一度に葬ったのだ。
対して今回のモグラ怪人は一匹。勝利は決定的。
しかし、モグラ怪人にもどこか余裕が見えた。
「生憎だな仮面ライダー。確かに俺一人じゃお前を倒せない。だから、トンネル計画の首魁が来てくれてる」
「へぇ?やっとお出ましかいね」
/
六十数年後、地下の慶修線。
クラゲ型の改造兵士は脱線した列車の中に入り、触手からの放電で乗客を一人づつ抹殺してゆく。
その触手が凉ちゃんに触れる寸前に止まった。
トンネルの対向から、ライドリーフに乗ったスラッシュが飛んできた。
「さあて感謝しろ!血の花で彩ってやる!」
ライドリーフ。
このスピードボードは、周囲に仮面ライダーと同じく亜空間バリアを形成し、地下や水中にも潜航する事が出来るのだ。
「来たな御杖の人鬼、スラッシュ。死ねぇ!」
「電気クラゲの化け物め。てめえこそ死ね!」
スラッシュは初っぱなからクラゲ怪人に近接する。
生き残った周囲の乗客を気にもとめず。
やや遅れて仮面ライダーもスカルダイバーに搭乗し走り込む。
「スラッシュ!生存者の救出を優先しろ!」
「ならてめえがやれ仮面ライダー。おれの任務は改造兵士の殲滅だ!」
やむ無く仮面ライダーはクラゲ怪人をスラッシュに任せ、列車の外壁を腕力で引き剥がし、閉じ込められていた乗客に脱出を促す。
しかし、仮面ライダーもまた、クラゲ怪人同様の異形。冷静に行動できる乗客など多くない。
そんな彼らの頭上に巨大な影が現れた。
暗がりが増す。
10mはあろうかという…三葉虫が滞空している。
妖魔だ。
クラゲ怪人が撒いた血の臭いを嗅ぎ付けたか。
スラッシュはクラゲと激突の真っ只中。
仮面ライダーが一人で乗客らの避難を完了する必要があるというのに。
三葉虫がトンネルの外壁に衝突し、一部が崩れ、欠片が落下する。
その方向にいたのは…凉ちゃん!
238:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 16:46:09.50 3IJJsWwq
14話F
/
六十数年前、仮面ライダーの背後に現れる細身の男。
彼がトンネル計画の首魁か。
「よう仮面ライダー。お前の事はザラキの中じゃもっぱらの噂だ」
仮面ライダーの牙から、ふっという吐息が漏れる。
苦笑い特有の吐息だ。
「噂になるのは親父の犯行だけで十分です。…おたく、ザラキの信者か?」
男もまた、苦く笑う。
「信者じゃない。俺は腹が減ってるから協力してるに過ぎない」
首を傾げる仮面ライダー。
「言われたのさ。お前を倒せば組織での立場を保証するってな。こんな時代だ。立場と食料は誰だって欲しいだろ」
この男はザラキに洗脳されている訳ではない。
自分の意志で協力している。
「誰に言われたの」
「御杖…喜十郎と言った。この呪符も奴からもらったもんだ」
その呪符にはしっかりと「召鬼」の文字が書かれ、男の目は赤く光っている。
驚く仮面ライダー。というより、武政。
「変身!」
そう言って腰の宝玉「オニノミテグラ」へ呪符を接触させる男。
ベルトより「力の嵐」が生じ、その中で男は赤い複眼、黒い皮膚、白い生体強化外骨格を備えた「人鬼」へ変貌した。
武政と同様に。
「おたく!お仲間だったのか…」
「俺の名はディグ。ザラキの障害、都市保安団と仮面ライダー。お前らを抹殺するのが仕事だ!」
ディグと名乗った人鬼はモグラ怪人を下がらせ、時空断裂境界から「鬼角」の呪符を取り出した。
「ライダーホーン!」
ディグの左腕から鋭い角が伸びた。
それがドリルのように回転する。
ディグは仮面ライダー目掛け、一直線に突貫を試みた。
「うぉい、ちょっと待て!」
続く
次回、15話「情を棄てたくて」
239:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/15 16:59:43.28 3IJJsWwq
14話、以上ですが、何でこう丁寧に書けないのかな私は。
>>233の御杖峻と山下山男の会話
「都市保安庁の御杖峻だ。てめえはレイモンドファイル」の閲覧手段を知りたい。
と、わけの分からない事になっていますが本来は
「都市保安庁の御杖峻だ。てめえは山下山男とか言ったな。『仮面ライダー』についてお調べのようだが」
―悪法もまた法なり―
御杖峻はソクラテスの言葉を引用する。
「仮面ライダーは上層部の更に上…政府レベルの機密事項だ。て事は?危険な事象だ。てめえのような一介のデカが首を突っ込むな」
山下山男はポケットから数枚の写真を取り出す。
あの日、蜘蛛モンスターに食い殺された男の残骸。
「黙ってろというのか?冗談じゃない。俺は東京に何が起こってるのか突き止める!」
その為には仮面ライダーと接触を取りたい。
その仮面ライダーに関するデータベース、「レイモンドファイル」の閲覧手段を知りたい。
彼の熱意に御杖峻は笑みを向ける。皮肉めいた暗い笑み。この刑事は利用できる。
です。
何でこう落ち着きが無いのか悔しいな
240:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 01:48:32.66 6iNUsldN
15話@
クラゲ型改造兵士と奴に呼び寄せられた三葉虫型妖魔。この二体により地下鉄に閉じ込められた多数の乗客。
乗客を省みず戦うスラッシュと乗客の救助に奔走する仮面ライダー=卜部京也。
だが斎の友人、凉ちゃんに向かって瓦礫が落下してくる。
「超変身!」
仮面ライダーはウィザードフォームに変身し、超加速能力「ライダーアクセラレート」を発動、駆け出した。
仮面ライダーネメシス15話「情を棄てたくて」
/
その六十数年前、仮面ライダー=卜部武政はもう一人の人鬼「ディグ」の猛攻を受けていた。
敵は腕から生えた生体ドリル「ライダーホーン」で仮面ライダーを執拗に攻め立てる。
「よせっての!おたくもオレと同じ人鬼だろ?」
ディグは仮面ライダーを倒す事でザラキ天宗における地位を約束されたらしい。
終戦直後だ。食糧を得られるだけの立場は誰でも欲しい。
しかし、武政とディグは同じ人鬼だ。分かりあえるかも知れない。
だが、そう言う仮面ライダーをディグは嘲笑う。
「ザラキの改造兵士も元は人間…彼らを殺してきたのは仮面ライダー、お前だろう?」
一瞬の迷いが生じる。その一瞬にライダーホーンが唸りを上げた。
「ぐあ!…ってぇ…」
足を僅かに抉られた。その傷を庇いながら、今度は仮面ライダーがディグを嘲笑う。
「そうだね…仲間の肉も食った事だし!」
モラルの面では既に武政に怖いものは無い。
仮面ライダーはオメガフォームへ変身、生体剣バーサークグラムでライダーホーンを防ぎ、生体銃バーサークショットによる狙撃でディグをはね飛ばした。
/
六十数年後、超高速化した仮面ライダーは無事に凉ちゃんを救出した。
救出と同時に加速の効果が切れ、すぐ脇に瓦礫が落下した。
しかし仮面ライダーの目に、クラゲ怪人、三葉虫型妖魔、そしてスラッシュの三体に囲まれた他の乗客の姿が映る。
「フ…面倒だ。まとめて切り裂いてやる」
スラッシュが取り出した呪符は「鬼爪」。
彼の必殺技を発動する呪符だ。乗客まで巻き込むつもりか。
「やめろ!」
「黙ってろ…ハデスフェザー!」
仮面ライダーの声は届かず、スラッシュの身体が時空衝撃刃を纏う。
このまま攻撃を放たれれば乗客も巻き添えだ。
「ハデスチョップ!」
スラッシュは必殺の手刀を見舞うが、その一撃に切り裂かれた者は妖魔、改造兵士も含め誰一人いなかった。
241:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 01:56:00.71 6iNUsldN
15話A
寸前で仮面ライダーが亜空間バリア「ライダーシールド」を展開し、ハデスチョップを抑え込んだのだ。
「おれのハデスチョップでも…破れないだと…?」
仮面ライダーは更に専用の弩、ウィザードアローから時空衝撃波を放ち、妖魔を弾き飛ばす。
続いて瞬間移動能力「ライダーシフト」でクラゲ怪人の背後に回り、弓の両端の刃でこれを切り苛む。
転倒するクラゲ怪人。振り返る仮面ライダー。目が合って怯える乗客ら。
しかし、仮面ライダーはスラッシュだけを見ていた。
鈍い音が響いた。無言で一発だけ仮面ライダーがスラッシュを殴った音だ。
「フ…卜部の鬼にしては、随分と甘ちゃんだな」
殴られて尚仮面ライダーを挑発するスラッシュ。仮面ライダーは乗客を向く。
「車両の壁は全て剥がした。早く逃げろ。スラッシュ!敵を追え!」
「フ、言われなくとも!」
凉ちゃんも含め、天井に開いた穴や駅のホームに殺到する乗客ら。
スラッシュは生体サーフボード、ライドリーフに乗り、妖魔とクラゲ怪人を追撃する。
妖魔はザラキが描いたと思しき法陣に飛び込み魔界へ撤退した。そのため目標はクラゲ怪人のみとなる。
下半身をクラゲに似た無数の触腕へ変形させ、高速で逃走するクラゲ怪人。
「しつこい奴め、食らえ!」
触手に蓄積した電気エネルギーをビームに変えて放つが、空を往くライドリーフの機動力の前には命中さえしない。
「ゴミクズの分際で逃げ足は早いな…フルスロットル!」
ライドリーフが速度を上げた。これまでは出力を抑えていたのだ。
マッハ6、或いはそれ以上の速度で一気にクラゲ怪人を追い抜き、逆に正面から突進する。
「ハデスチョップ!」
加速をつけた手刀がクラゲ怪人を両断、爆砕させた。
/
六十数年前。
一旦ペースを掴むと早かった。
ドリルによる近距離戦に特化したディグには遠距離攻撃の手段が無いらしく、生体銃バーサークショットの狙撃に防戦一方。
その隙にやはりリーチの長い槍、ディザストスピアーを呼び出し、仮面ライダーは中、遠距離から怒涛の攻めを叩き込む。
ライダーホーンを備えた右腕をディザストスピアーにねじ伏せられ、そこへバーサークグラムで切り込まれ、遂に変身が解けるディグ=立和田一郎。
「おっしゃ、@ザラキの事全部吐く。Aオレの銃で原子分解される。どっちにする?」
バーサークショットを突き付け、立和田を脅迫する仮面ライダー。
242:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:12:18.68 6iNUsldN
15話B
だがその刹那、彼の額に備わる第三の眼が、自分に向かって飛んでくる強い力を感知した。
「スラッシュレイ!」
「ライダーシールド!」
咄嗟にバリアを張り、自分を狙った「力」即ち時空衝撃波を止める仮面ライダー。
その間に立和田は撤退していた。
時空衝撃波を放った主の気配も既に無い。変身を解く武政。
「あの波動、オレのより鋭かったな…剃刀っぽい」
/
六十数年後、スラッシュは御杖峻の姿に戻り、駅に集う警察、救急車、マスコミを傍目に見ながらベンチでくつろいでいる。
医師として現場で尽力する京也の姿も、御杖にとっては滑稽だった。
そんな彼に、京也を追ってきた斎が缶コーヒーを持ってきた。
「…このおれが紅茶派だという事を知らんのか?」
「私のお金です。何奢ろうが自由です」
二人は缶入りの甘ったるいコーヒーを啜り、暫し駅の喧騒を無言で見る。
先に斎が口を開いた。
「あの…卜部さんから訊きました。何で…ハデスチョップに乗客を巻き込もうとしたんですか?」
チョップの際生じる衝撃波が及ぶ範囲を考えれば、あの瞬間に乗客らが全滅していた可能性もある。
否、仮面ライダーがバリアを張らなければ確実に全滅していた。
しかし御杖峻はシニカルに笑う。
「攻撃の邪魔…だったからな。改造兵士と妖魔の撃滅、それが任務の最優先事項だ。乗客の安否など知った事じゃない」
そうですか、と斎は再びコーヒーに口をつける。
「あなたの攻撃で何十人が死ぬトコだったのに…もし死んでも気にはならないんですか?」
「フ…ならんな。ハデスチョップが成功して連中が死んだとしても、警察は全てをザラキの仕業と結論付けるしマスコミもそれに同調する。おれは悠々と公務員様を続けられるのさ」
欠如している。この男には人の倫理観が。
だが、それならそれで、やはり斎には納得がいかない。
「…なら、なんでPQCを守ったんですか」
PQC。光量子触媒発電システム。
スラッシュはその実験施設を改造兵士から守った。
民間人の命など無価値と言うなら、何故。
「わたしは…あなたが優しい人なんだって思います。だからムカデ妖魔にやられた時、ほっとけなかった。で…今のあなたは、その…自分の優しさをムリして否定してるっぽいから…」
途中で斎の言葉が止まった。
御杖峻は、斎の喉元へ指先を突きつけ黙らせた。
「黙れ…女の分際で」
243:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:27:23.15 6iNUsldN
15話C
斎とて、自分の命は惜しい。
これ以上続ければ、御杖峻はスラッシュへ変身し、その爪で自分の喉を切り裂くのだろう。
だが御杖の手を、先刻まで応急処置に奔走していた筈の京也が捻り上げた。
「彼女までも傷付ける気か」
「フッ。下らん博愛を吐くから脅かしただけの事だ」
京也は御杖峻によく似た男を思い出した。額の古傷が疼く。
「この女もてめえも、おれを責めるがな…」
御杖峻は京也の手を振り解き、指を差す。
「大体だ卜部京也。ザラキの改造兵士も元は人間。それを殺してきたのはてめえじゃないのか?」
その指摘は正しい。
人の命。それを奪ってきた自分。
それを何とも思わない御杖峻、そして…自分の父親。
その時、救急車の側から京也を呼ぶ女性の声が聞こえた。
「卜部先生!搬送しますから乗って!」
看護師、王麗華に頷く。御杖峻と斎を無視して。
「…急患が増えた。失礼する」
京也はそう言い残し、救急車へ乗り込む。
御杖峻をもう一度殴りたかった。彼への憤り、自分が戦う意味の揺らぎ、父親への恨み、全てを込めて。
/
六十数年前、ある屋敷で立和田一郎は自分の雇い主、御杖喜十郎に頭を下げていた。
「申し訳ありません。仮面ライダーを倒せず…次は必ず!」
御杖喜十郎は煙管を燻らせながら笑う。
「やむを得んさ。仮面ライダーは強い。よし…改造兵士に君を援護させよう。董仲僧正に頼んでみるよ」
一方、美月屋では鏑木三次が下手な絵で紙芝居を作り、見よう見まねでレイモンド・マグラーに日本のヒーローを教えていた。
「バハハハハハ!え〜っと次何だっけ?」
「『何とかバトンを受けてみよ!』じゃねえの?つあー染みる染みるって!」
縁側で三次の紙芝居ごっこに付き合いながら、ディグにやられた足の傷をキヌに手当てされる武政。
とはいえ、鬼の治癒力がその傷を迅速に塞いでいるが。
「でもその…卜部さんと同じ力を持った奴って?」
レイモンドらに聞こえぬよう、声を抑えて問うキヌ。武政も同程度の声量で応じる。
「同じじゃない。オレの方が強かった」
そういう話ではないが。一方の斎はわら半紙に幾つかの家名を書き並べていた。
「武政さんを襲ったのは、恐らく立和田家の人間が変身した人鬼。念珠の代わりに呪符で鬼を覚醒させる…考えたわね」
武政としては、自分と同種の力を持つディグ=立和田を殺したくはなかった。
244:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:37:06.43 6iNUsldN
15話D
しかし斎は逆に、ディグを危険視していた。
改造兵士など比べ物にならない力を持つ人鬼がザラキに与すれば、それは脅威だ。
「武政さん…可能なら、ディグを殺して」
歯に衣着せぬ率直な斎の物言い。戸惑う武政。
/
六十数年後、凉ちゃんは無事大学へ復帰していた。
「大したケガが無くて良かったねえ」
のんびりした、それでいて満面の笑みを浮かべる斎。
「うん、顔やられなくてラッキーだった。顔に傷とか付いたらあたし副業できねーからさ」
副業。ああ、街角に立つあれか。
とりあえず退院祝い、と斎が大学の最寄り駅近くの公園で二人分の手作り弁当を広げた。
「イツキ、あんた作ったの?あざっす」
「うん。遠慮しないでね」
御杖峻はああ言っていたが、凉ちゃんが無事という事は、京也と御杖峻の連携はうまくいったのだろう。
やはり人鬼同士、分かり合えるものだ。
「でさあイツキ、仮面ライダーって聞いた事ある?」
「ほぇっ!?な、無いよ?」
唐突な問い。
凉ちゃんに曰く、怪物らに囲まれた際、その中に一匹だけ自分達を助け、脱出を手伝ってくれた者がいたという。
「そいつ白黒で目が赤くてカマキリに似てるんだけどさ、それ言ったら刑事が『やはり仮面ライダー…』とかって」
山下山男刑事だ。
しかし、斎には言えない。自分がその仮面ライダーを覚醒させた張本人だなどと。
で、と凉ちゃんは自慢気に携帯電話を取り出し、画面メモから斎にとある個人サイトを見せる。
これは古今東西の都市伝説を収集、紹介しているサイトで、終戦直後の日本に「仮面ライダー」という謎の生物が出現した逸話も掲載されている。
「この話は他にも何個かのサイトが載せてたんだけど、いつの間にかそのサイトがほとんど閉鎖してんの。生き残ってたのはここだけ」
政府からの圧力か。
そして終戦直後の仮面ライダーというと、やはり自分が何故か名を知っていた、京也の祖父「卜部武政」だろうか。
明るい陽光に似合わぬ物憂げな表情を浮かべる斎。
そんな陽光を影が遮った。
いつの間にか頭上に滞空していたのは、京也と御杖峻が取り逃がした三葉虫型妖魔だ!
「はあ!?コイツ死んだって聞いたんですけど!」
マスコミからは、自衛隊が倒したという報道がなされていた。
倒せていないにもかかわらず。
以前に狙った獲物は追い続けるのか、妖魔は凉ちゃんに襲い掛かる。
245:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:41:52.10 6iNUsldN
15話E
/
六十数年前、都市保安団ビルの地下。
基礎周辺に空いた穴に一匹の人外が蠢いていた。
暗闇の中から現れ、その人外に話しかける青年。
「よ…トンネル計画はまだ進んでたのかよ」
人外はモグラ怪人、青年は武政だ。
「都市保安団は進駐軍と結託し我らザラキ天宗を社会的に消そうとしている。その保安団のビルを倒壊させれば、我らの正義の証明にもなるだろう」
そうモグラ怪人が演説をぶつので、武政は失笑する。
「正義は我にあり…てか。でもやり方が宜しくない。出てきなよ、『立和田』さん!」
瓦礫の影から現れた立和田。
そしてモグラ怪人とは別の新たな改造兵士。アリクイに似ていた。
「仮面ライダー!お前を倒して俺は地位を得る!変身!」
赤く光る目。顔の右横に掲げた「召鬼」の呪符をベルトに接触させ、立和田は人鬼「ディグ」へ変身する。
「出世したら、この二人を大事にしろよ。出世させる気無いけどさ!」
「召鬼」の念珠を握った右拳を天に突き上げる武政。
目は赤く光り、腰にベルトが形成される。
「変身っ!」
右斜め下へ拳を振り下ろす。同時に力の嵐が生じ、武政も人鬼「仮面ライダー」へ変身する。
モグラ怪人は地中での活動能力を極め、アリクイ怪人は腕力と巨大な爪で挑んでくる。だが。
「スペックが違う!」
確かにアリクイ怪人はスタミナがある。しかしそれは他の改造兵士と比較しての事であり、仮面ライダーにとっては木綿豆腐か絹ごしか、の違いでしかない。
仮面ライダーの連続パンチを浴び、自慢の爪を振るおうとするも逆に投げ飛ばされあっさりダウンするアリクイ怪人。
モグラ怪人もドリルで必死の抵抗を試みるが、仮面ライダーの生体強化外骨格を貫く事が出来ない。
「正直、おたくを殺したくなくなっちゃったんだけど…とりあえず殴らせて。悪い」
という事で「とりあえず」のパンチを浴び、気絶するモグラ怪人。さて、先にディグとの決着をつけようか。
地下トンネルの壁を幾度も蹴り、ジグザグな軌道を描いてディグに飛び込む仮面ライダー。
「ライダーキック!」
強烈な飛び蹴りが叩き込まれた、かと思いきや、仮面ライダーの方が撥ね飛ばされた。
ディグは「鬼冑」の呪符を読み、体を高速回転させて攻撃を受け流す防御技「ライダースピンディフェンダー」を発動していたのだ。
思わぬ反撃によろめく仮面ライダーをディグの生体ドリル、ライダーホーンが突き飛ばす。
246:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:51:26.51 6iNUsldN
15話F
倒れ込む仮面ライダー。そこへのし掛かるアリクイ怪人。
「…やべっ」
仮面ライダーが危ない。ディグは仮面ライダーと同じ「昂鬼」の呪符を読み、全身の力を高める。
突き出したライダーホーン。
ディグは空中に浮遊し、ライダーホーンを中心に回転を始めた。
「ライダードリル!」
ディグ自身が巨大なドリルと化して放つ必殺の突撃技。
わライダードリルは仮面ライダーとアリクイ怪人に直撃、爆発が生じた。
爆煙から浮き上がったのは、ディグと仮面ライダーの姿。
わアリクイ怪人はディグのライダードリルをマトモに食らい、爆死を遂げたのだ。
荒い息でディグを睨む仮面ライダー。
「おたく…ザラキでアイツと仲間だったんじゃないの?」
「仮面ライダー。お前を倒すのは俺だ。俺が手柄を独占しなければ出世できない。奴に手柄を奪われてたまるか!」
はあん、と頷き、仮面ライダーは屹立した。
「オレね、お前みたいな奴が世界で二番目に嫌いなんだわ」
/
六十数年後、空中から破壊光線を吐き、或いは頭の触覚を鞭の様に用いて公園を破壊してゆく三葉虫妖魔。
そこへ生体空中サーフボード「ライドリーフ」へ乗ったスラッシュが駆けつけた。
「今度は逃がさん。てめえの血、見せてもらうぜ」
妖魔と対峙し、初めてスラッシュは妖魔が背後の女子大生を狙っている事に気付いた。
良い囮になる。
斎は、自分が優しい人間だなどと知った口を叩いた。
鬼である以上、非情でなくてはいけない。
PQC発電システムを守ったのは、アメリカが強く推すこのシステムを、ひいては日米同盟を守るため。
研究員らの命を惜しんだからではない。
そうであってはならないのだ。
スラッシュは斎の腕を掴むと、そのまま妖魔の付近へ投げ飛ばした。
「痛っ…何するんですか…」
妖魔の狙いが変わった。
妖魔は、斎を本能的に狙う謎の習性を持つ。
だから眼下の斎に襲いかかった。
「イツキを囮にすんのかよありえねーだろ!」
「喚くな、耳が腐る」
抗議する凉ちゃんを突き飛ばし、妖魔の隙を伺う。
腹を見せた。今だ。
「スラッシュレイ!」
スラッシュの手から、剃刀に似た波動、時空衝撃刃が飛ぶ。
波動は三葉虫妖魔を直撃する。だが、敵の強固な鱗が波動を跳ね返した。
「何だと!?」
ザコ妖魔に自分の技が効かない。狼狽するスラッシュ。
そこへ再び狙いを変えた妖魔が破壊光線を吐いてきた。
247:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 02:58:41.03 6iNUsldN
15話G
光線をかわしつつ敵の隙を伺うスラッシュ。今回も妖魔の撃滅が任務。
二人の女子大生の生命などどうでも良い。
後でマスコミが都合良く歪曲した報道をしてくれる。
そんな思考が悲劇を生んだ。
破壊光線の爆風に吹き飛ばされた凉ちゃんが全身を強打し、意識を失ったのだ。
「凉ちゃん!?」
愕然とする斎。しかし、スラッシュにとっては有利。
少なくとも理性では、この状況を有利だと判断した。
涼ちゃんを庇おうとする衝動を、理性で抑え込んだ。
破壊光線を吐いた直後に露出する口を狙えば良いと気づいた。
「スラッシュレイ!」
再びの時空衝撃刃。
しかし、敵も自分の柔らかい部位が分かっている為か、今度は素早くスラッシュレイを回避する。
「くそっ!スラッシュレイ!」
右腕、左腕、交差した両腕、そこから開いた両腕より計六発のスラッシュレイを見舞うが、その全てが三葉虫妖魔のスピードに回避されてしまう。
万策尽きたか?スラッシュ、斎、凉ちゃんへ破壊光線が吐かれる。
その時、
「スカルダイバー!」
車体にバリアを発生させるスカルゲッターの特殊形態、スカルダイバー。
これを駆る仮面ライダー=京也が戦場に滑り込み、ダイバーのバリアで光線を弾いた。
「斎ちゃん…状況は?」
冷静に問う京也がとても頼もしく思えた。
「…凉ちゃんがケガ、妖魔は固い甲羅とスピードを併せ持ってます!」
「固い甲羅とスピード…分かった。超変身!」
仮面ライダーはウィザードフォームへ変身。
分身を形成する「鬼幻」
超加速する「鬼走」
敵の居場所を看破する「鬼眼」
この三つの念珠の属性を、ウィザードアローへ同時に伝達させた。
再び破壊光線を吐かんとする妖魔。
力を蓄積したウィザードアローへ手をかける仮面ライダー。
「イリュージョンアロー・アクセルホーミング!」
発射された時空衝撃波は「鬼幻」の効果で無数に分裂、一斉に妖魔を直撃する。
スラッシュレイでも破れなかった表皮。
しかし多量の波動を同時に撃ち込まれたために各部に次々と破損が生じる。
不利と見て逃走を図る妖魔。だが波動には更に「鬼走」「鬼眼」の効果が付与されている。
このために「無数に分裂した」時空衝撃波が「超高速で」「敵を追尾する」効果が生まれる。
逃げ切れず、破れた表皮から体内へ無数の波動を撃ち込まれた妖魔は爆発炎上、消滅した。
248:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 03:08:17.39 6iNUsldN
15話H
「凉ちゃん、凉ちゃん!」
妖魔は撃滅したが、仮面ライダーに息をつく暇は無かった。
意識の無い凉ちゃんへ必死に呼び掛ける斎。
「…病院へ運ぶ。斎ちゃんは救急車を呼んでくれ。待っている間に少しでも応急措置をしてみるが…」
愛車に繋いだバッグから応急措置セットを取り出す京也。
斎を助手に応急措置を始める。
仮面ライダーとて万能ではない。人の傷を癒す技は持っていないのだ。
だから京也は、京也の力で彼女を救わねばならない。
一方、スラッシュ=御杖峻は、見事にプライドを打ち砕かれていた。
全力で戦おうが情を棄てようが、卜部の鬼には及ばない。
無力感に支配された御杖峻に、足元で毒々しいダリアの花から伸びた触手が妖魔の肉片を採取していた事など、気付く余裕は無かった。
/
六十数年前、仮面ライダーはひたすらに通常形態ブレイクフォームによる肉弾戦でディグを追い詰めていた。
オメガフォームへ変身すれば楽、なのだが、仮面ライダー=武政は今、とにかくこのディグをぶん殴りたかったのだ。
腕のライダーホーンはかわす。
かわしたら一発打ち込み、隙ができたら三、四発と続ける。
仮面ライダーは武器が無いにも関わらず、ディグを圧倒していた。
それはこれが本気を出せばどうなるのか、ディグを恐怖させるに充分だった。
「ライダーキック!」
仮面ライダーの飛び蹴りが放たれるが、ディグは防御技ライダースピンディフェンダーで迎撃する。
しかし、それも計算の内。
狙い通り弾かれるライダーキック。
だがこの場は地下。天井がある。だから仮面ライダーは吹き飛ばされながら体勢を整え、天井を蹴る。
その反動で再び降下、回転の中心、ディグの頭頂を狙った。
「ライダーキック!」
生体強化外骨格に守られているとはいえ頭部。
鋭い蹴りがディグの意識を遠のかせた。
ふらつくディグへ突撃する仮面ライダー。ディグも錯乱する意識の中、辛うじて「昂鬼」の呪符を発動した。
「ライダーパンチ!」
「ライダードリル!」
二人の人鬼の必殺技が激突し、空間に歪みが生じる程の破壊的反発力が発生、巨大なエネルギー爆発を作る。
その爆発が止んだ頃には、既にディグも、気絶したままだったモグラ怪人も姿を消していた。
「…まだだな。トドメは刺せちゃいない」
そう武政は呟いた。
249:ネメシス ◆tGQDjD.pyA
12/01/26 03:12:36.26 6iNUsldN
15話I
しばらくの後、とある屋敷で御杖喜十郎は窓から外を眺めていた。
背後には、居心地悪そうな立和田とモグラ怪人最後の一匹。
「ふむ…改造兵士も借り受けたが仮面ライダー撃破には至らなかった…か」
煙管を燻らせながら窓を締める。
「すまんが立和田君。私は割と短気なタチでね」
立和田の横にいるモグラ怪人を見据える御杖喜十郎。
「スラッシュレイ!」
御杖喜十郎の振るった手から放たれた「時空衝撃刃」がモグラ怪人を寸断した。
驚く立和田の前に在る者は既に御杖喜十郎ではなく、鮫を思わせる人鬼の姿。
「スラッシュ…と呼んでくれたまえ」
この人鬼の怒りを買えば自分もこのモグラ怪人と同じ運命。
立和田に残された道は、仮面ライダー=卜部武政完全抹殺だけだった。
続く
次回、16話「敵対関係について」
250:創る名無しに見る名無し
12/01/26 03:13:26.15 6iNUsldN
15話、以上です
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