ダイの大冒険のキャラ ..
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91:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 09:54:23 ft8sv5PM
ダイとの邂逅後なら「コレで俺も魔法剣士だ!」だろ

92:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 10:03:13 5oKZnfCf
>>89
素人童貞に転職www

ヒュンケルが凄いショックを受けている様子が想像できる。
どうすれば童貞から脱け出せるんだと苦悶してる様子がwww
アバン先生あたりに聞けば教えてくれるだろうか。
それともネタとして遊ばれるか。

93:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 10:53:41 PPcyPklQ
>>91
そのためには魔法使いからさらに戦士に転職しなおさないといけない

94:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 12:25:55 ARLirjRj
話の内容が素でわからない
魔法使いに転職って何?

95:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 13:29:54 nwX/PoeR
>>94
DQ6のネタじゃないか?


96:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 13:52:50 4ce4KfsF
>>95 30歳まで童貞だったら魔法使いになれる、という伝説があってだな・・・

97:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 17:34:23 mzJ27NS3
>>95
ちなみに日本人男性は義務教育で忍者か侍の選択授業があるんだぜ!

98:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/14 18:03:16 5oKZnfCf
>>96
20歳過ぎても童貞だったら妖精だったっけ。

99:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/15 01:55:07 azAzId8v
さて次のヒュンケル無双だが、
鎧の魔剣でゴーレムを真っ二つにしていくのか、
マキシマム戦の様に丸腰状態でゴーレムを粉々にするのか・・・

100:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/15 02:30:25 1O+Z2xiI
ヒュンケルさんは素手でオリハルコンを砕く素質を秘めてるチートマン。
青銅が殴ったら逆に砕けちゃうレベル。

101:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/15 03:14:17 f7yV0Rvz
召喚された時期を考えると、今後は中途半端コースだよね?
オリハルコンとかはまだまだ無理じゃないかな。

102:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/15 17:19:10 KNm4kEcn
だが・・・それでブラッディスクライドなら・・・

103:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/15 21:42:03 azAzId8v
読んだことないんだけど、オリハルコンってゼロ魔に出てくるの?

104:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 12:38:07 slLSyNdJ
今夜十時頃に投下予定です。
緊張するぜ……

105:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/16 16:18:12 x98EpoAY
>>104
超楽しみなんだぜ・・・・・・

106:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:20:28 slLSyNdJ
遅れてすいません。今から投下を始めます。

107:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:23:15 slLSyNdJ
―ヴェストリの広場。
五つの外塔と中央の本塔からなる魔法学院の中で、火の塔と風の塔の間に位置するこの中庭は、一種異様な雰囲気に犯されていた。
昼下がりのこの時間、普段なら腹ごなしに学生達が遊ぶここは今、二人の人間のために存在している。

一人は金髪のキザったらしいメイジの少年、ギ―シュ・ド・グラモン。
もう一人は銀髪のキザったらしいルイズの使い魔、ヒュンケル。

遠巻きに見物する学生の一人が、遅れてやってきた友人に急かすように叫んだ。
「早く来い! 決闘が始まるぞ!」、と。

***

事の起こりは半刻ほどさかのぼる。
教室の片付けをし終わった後、ヒュンケルは厨房で食事を取っていた。
メニューは栄養満点の、野菜を柔らかく煮込んだミルクスープ。
完璧に傷病人向けの流動食だったが、その味は食に関心の薄いヒュンケルさえ唸らせるほどのものだった。
料理長のマルト―は強面だが気のいい男で、ヒュンケルが礼代わりに何か手伝おうと言っても笑って取り合わなかった。
彼曰く、「けが人はよく食ってよく寝るのが仕事」ということらしい。
そこでヒュンケルは再度マルト―に礼を言い、午後の予定を聞くために食堂でルイズを探すことにしたのだが、どうにも様子がおかしかった。
探し人はフォークの先にクックベリーパイを刺したまま、あらぬ方向を睨んでいる。
視線の先には―メイドのシエスタ。
どういうわけか、彼女は目の前の金髪の少年に何度も頭を下げていた。


108:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:26:07 slLSyNdJ
「どうしてくれるんだね? 君のおかげで二人のレディが傷ついてしまったじゃないか?」
「も、申し訳ありません! 私の気が回らないばっかりに……!」

朝に会った時は明るい笑顔を見せていたシエスタが、哀れなほど縮こまっていた。
ルイズに事情を聞いてみると、シエスタが拾った香水の小瓶が元で、ギ―シュという少年の二股がバレてしまい、責められているのだという。
頭を下げるシエスタの拳は恐怖のためか、悔しさのためか震えている。
ギ―シュの行いはただの八つ当たりにすぎなかったが、立場的にも実力的にも下の平民が逆らえるはずもなかった。
思えば、これが自分の所属していた場所―魔王軍の理念の典型なのかもしれない。
そう考えると、ヒュンケルの心持はいささか複雑になった。
そして―

「ヒュ、ヒュンケル? なにする気?」

戸惑うルイズの声を背に、ヒュンケルはなおも頭を下げるシエスタへと歩み寄った。
さて、朝と昼の食事の礼はこれで足りるだろうかと考えながら。

***

―そして場面は戻り、ヴェストリの広場。
結局話は巡り巡って、ヒュンケルは今、剣を握っていた。
力を振りかざす者を力で抑えつけるとは本末転倒にも思えたが、
へそを曲げた貴族が「平民」のヒュンケルの言葉に耳を貸すわけもなく、どちらが初めに求めたか、決闘で白黒つけることに話は落ち着いた。
ギ―シュは格好の腹いせができると見込んで、ヒュンケルとは対照的に意気揚々と振る舞っている。

「諸君! 僕、ギ―シュ・ド・グラモンはこの平民に名誉を汚された!
 よって今、この広場にて決闘により勝負をつける!」

芝居がかったギ―シュの言葉に、取り巻きの学生たちが歓声をあげた。
男女の修羅場だろうが決闘だろうが、彼らにはどちらでもいいようだった。
肝要なのは刺激的であること。それに尽きる。
彼らは滅多に見れない暴力沙汰に興奮し、眼を輝かせていた。
色めき立つ観衆の中、ただルイズとシエスタだけが、青い顔をしてヒュンケルを見つめている。
「ヒュンケルさんやめて! メイジに逆らったら死んじゃうわ!」
「アンタまだ怪我も治ってないのよ! つまんない意地張ってないでギ―シュに謝って……!」
ルイズやシエスタが必死にそう言うのを振り払って、彼はこの決闘に臨んでいた。
心配してくれるルイズ達には悪いが、ヒュンケルはこの決闘をある意味ではちょうどいい機会だと捉えてもいた。
ルイズが馬鹿にされる原因の一つには、「平民」のヒュンケルを召喚したことが間違いなく含まれる。
平民はメイジより弱い。
だから恥だ。だから貴族には逆らえない。
ルイズやシエスタが抱えるそんな鬱屈を、少しでも取り除いてやりたかったのだ。


109:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:29:14 slLSyNdJ
「心配するな。俺は不死身だ」

ヒュンケルはそう言うと、涙混じりのルイズの罵声を背に、魔剣を強く握りしめた。
すると奇妙なことに傷の痛みが引いて、体が軽くなった。
見れば、左手のルーンが輝きを放っている。
この不思議な力は、そこを起点にして流れてくるかのようだ。
(これは「使い魔」としての能力なのか?)
ヒュンケルはそう疑問に思いつつ、敵と向かい合った。
脳内で、決闘の目的に「腕試し」の項目を付け加える。
ギ―シュは相変わらず芝居がかった姿勢を崩さず、余裕を見せていた。

「僕の二つ名は『青銅』。『青銅のギ―シュ』だ。
 したがって青銅のゴーレム、ワルキューレが君の相手をするよ。
 君はまあ、せいぜいその剣で頑張りたまえ」

言って薔薇の形をした杖を振ると、地面から剣を持った甲冑騎士が湧き出した。
ヒュンケルは授業で四系統魔法の基礎を聞いてはいたが、本格的なものを実際に見るのは初めてである。
繊細な造形をしたワルキューレに少し感心し、「見事だな」と呟いた。
ワルキューレはまるで、芸術家の作った工芸品のようだ。
しかし―
「おほめにあずかり光栄だ、とでも言っておこう。では、覚悟はいいな? いけ、ワルキューレ!」
ギ―シュが命令すると、ワルキューレは猛烈な勢いでヒュンケルに突進した。
まともに直撃すれば、四肢の骨も砕けんばかりのスピード。
剣を振り上げる戦乙女の姿に観客は黄色い声を上げ、ルイズとシエスタは思わず目を瞑りかけ―

「脆いな」

次の瞬間、言葉と共に剣を持ったワルキューレの腕が宙を舞っていた。
片腕をなくしたゴーレムを、ヒュンケルは木偶人形でも斬るようにそのまま両断してみせる。
「これは観賞用の人形か? 俺を倒したければ全力で来い」
そう言ったヒュンケルは、開始から今まで1メイルとして動いていなかった。
眼を疑うような早業に観客が静まり返る中、恐ろしくなめらかな切断面を晒した青銅が、ガシャンと音を立てた。


110:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/16 22:30:40 +3tYkhuf
支援

111:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:31:39 slLSyNdJ
茫然としていたギ―シュはその音でハッと我に帰り、慌てて杖を振り上げる。
「お、おのれ、僕のワルキューレを!」
怒りにまなじりを上げたギ―シュは、目の前にいるのが無力な平民であるという認識を頭から拭いさった。
再び振るわれた杖からはらはらと花が落ち、新たに五体のワルキューレがそこから湧き出した。

「戦乙女が奏でる三重奏、しのぐことはできるかな!」

そう叫ぶとギ―シュは二体を手元に残し、三体のワルキューレでヒュンケルを攻めたてた。
直線的に攻めた先ほどとは違い、三体で円を描くようにヒュンケルに攻撃を仕掛ける。
これにはヒュンケルも防戦一方で、黙りこくっていた見物人たちも再び威勢を盛り返し始めた。
「さすがギ―シュ! 腐ってもメイジだ!」
「その平民のイケメン顔を台無しにしてやれ!」
時には同時に、時には時間差で、ワルキューレはヒュンケルに剣を振るった。
ヒュンケルは防ぐのに手いっぱいで、手も足も出せないでいる。
……少なくともぱっと見は、そう見えた。
所詮は平民。貴族がちょっと本気を出せば敵わない。
ルイズやシエスタも含め、殆どの観客はそう考えた。
しかし、そこで誰かがぼそっと呟く。
彼は遊んでる、と小さな声で。

***

「……なかなかしぶといね」

圧倒的優位と周囲に見られるのと裏腹に、ギ―シュは苛立っていた。
あらゆる角度から攻撃を仕掛けているのに、ヒュンケルはその全てを防いでいるのだ。
防戦一方に追い込んでいるといえば聞こえがいいが、髪の毛一本たりともヒュンケルの体は傷ついていない。
ヒュンケルはワルキューレの攻撃を時には受け、時にはそらし、あるいは微妙に重心をずらすだけでかわしていた、


112:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:34:52 slLSyNdJ
観客の中には、ギ―シュご自慢のゴーレムなどそっちのけで、ヒュンケルの動きを注視する者も出始めている。
(このままでは僕の沽券にかかわるな)
いい加減、じれったくなったギ―シュは、ついに護衛用のワルキューレまで前線に追いやった。
これで五対一。
さっきよりもさらに倍近くのワルキューレをヒュンケルは相手することになる。
ワルキューレは素早くヒュンケルを包囲すると、少しずつその輪を縮め始めた。
前方に二体。後方に一体。左右双方に一体。
逃げ場はない。

「多少はやるようだけど、これで終わりさ。せめてもの情けに、医務室へは僕が送ってやろう。
 レビテーションも使えない、君の主人の代わりにね」

無言のヒュンケルを、ギ―シュと観客が嘲り笑う。
普段なら怒り狂うはずのルイズは、顔を青くしてヒュンケルを見つめるばかりだった。
そして……

「行け、ワルキューレ! 奴を一気に叩きのめせ!!」

裂帛の気迫と共に叫んだギ―シュ。
しかし、次の瞬間にはその目は驚きに見開かれていた。
それもそのはず、今まで待ちの構えを崩さなかったヒュンケルが、突如として走り出していたのだ。
標的はもちろん、ワルキューレの錬成者であるギ―シュ自身。
ヒュンケルは四方から来るワルキューレのうち三体を無視し、正面の二体を瞬時に斬り伏せた。
すれ違ったと思ったら斬れていた。そんなスピードだ。
他のワルキューレはギ―シュの動揺がうつったのか突然の動きに対応できず、ヒュンケルの後方で互いに衝突している。
ヒュンケルはワルキューレを斬ったそのままの勢いでギ―シュに迫りくる―!
「今だ! 錬金!!」
間一髪、ギ―シュは杖を振り上げ、ヒュンケルの背後に新たなゴーレムを出現させた。
ギ―シュが錬成できるのは七体のワルキューレ。
これが最後に残しておいたとびっきりの一体だ。
もはや、ギ―シュに余裕はない。
「斬り捨てろワルキューレ!」
ワルキューレは完璧なタイミングで不意をつき、ヒュンケルに背後から斬りつけた。
ヒュンケルの体は剣を受けて真っ二つに割れると、跡形もなく消えうせ―消えうせ?


113:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:39:29 slLSyNdJ
「残像だ」
「ひぃッ!」

思わず悲鳴を上げたギ―シュのすぐ後ろ、涼しい顔をしてヒュンケルが立っていた。
慌てて振り返った刹那、ヒュンケルの手元が閃き、ギ―シュの薔薇を模した杖の花弁が全て斬り落とされた。
はらはらと花が落ち、ギ―シュとヒュンケルの間に赤い線が引かれる。
その瞬間、ギ―シュの目には点々と落ちた薔薇の一線が、彼我の越え難い実力を示しているように映った。
あるいは、ワルキューレを十体出せたってこの男には敵わないのかもしれないとギ―シュは悟った。

「こ、降参だ。僕の負けを認めるよ。杖を失っては何もできない。
 まさか、『ゼロ』の使い魔に負けるとはね……」

言い終えると力が抜けてしまったのか、ギ―シュはその場にへたりこんだ。
ヒュンケルと、彼に走り寄って来た「ご主人様」を、思い出したかのように歓声が包み込んだ。


***

―ところかわって中央の塔。
四つの瞳がこの戦いを見つめていた。
トリステイン魔法学院の長であるオールド・オスマンと、『炎蛇』の二つ名を取るコルベール教師である。
オスマンは鏡に映った広場の映像を消すと、興奮した面持ちのコルベールに向き合った。
彼の手元には「始祖プリミルの使い魔達」という年代物の書物が握られている。
「あの剣の冴え、彼こそまさにガンダ―ルヴに相違ありません! まさかこの目で伝説の使い魔を見れるとは……!」
大発見とばかりに息巻くコルベールとは対照的に、
オールド・オスマンは普段の様子からは信じられぬほど険しい表情で黙考していた。


114:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:42:17 slLSyNdJ
興奮していたコルベールもオスマンのその様子にただならぬものを感じ、齢300とも言われる老メイジを注視する。
オスマンはもしやポックリ逝ってしまっているのではないかと思うほど黙りこくった後、ようやく口を開きこう言った。

「コルベール君、彼がガンダ―ルヴかもしれんことは内密にするんじゃ。
 王宮の連中が聞きつけたらミス・ヴァリエール共々どうなるか分かったもんじゃないわい」

コルベールもそれを聞くと心当たりがあるのか、暗い顔になった。
ガンダ―ルヴの異名は「神の盾」。
幾千の軍にも匹敵した、戦闘に特化した使い魔だと伝えられている。
目的のためには手段を選ばぬところのある政治家達がその存在を掴んだら利用されるか、あるいは……。

「分かりました。彼のことは内密にしておきましょう。
 それにしてもあの動き、本調子だったらと思うと空恐ろしいですな。
 ……いや、昨日の今日で普通に歩いてるのを見た瞬間から私は戦慄しましたが」
「伝説もさもあらんというもんじゃな。わしもあれほどの使い手は滅多に見たことがないわ」

比較的平静を保っていたオスマンも、内心では興奮していたのだろう。
彼らは気付かなかった。
学院長室の扉の裏、こっそりと盗み聞きをしている人影の存在を。
影はサイレントの魔法で足音を消すと、誰にも気取られぬままその場を離れて行った。



115:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/16 22:50:10 slLSyNdJ
以上で終了。支援ありがとうございました。
大地斬一発な展開を避けたらやたらと長く地味目に…。

最初に書きためていた分は大体ここまでなので、
これからは7〜10日に一回程度のペースになると思います。

116:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/16 23:16:16 TBk6Um+U
乙です!
面白かったです

読んでてワクワクしました
やっぱり無双は楽しい

117:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/16 23:35:30 x98EpoAY
乙です。
これでシエスタがエイミの様にヒュンケルさんに猛烈アタックするのか・・・
なんという・・・事だ

118:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/17 21:10:05 jaUhKViL
乙です!
最近の心の潤いだ。
相変わらずヒュンケルつええ。

119:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/20 01:38:49 ntctZGt6
こっそりと投下。

120:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/20 01:41:31 ntctZGt6
「ようこそ!『我らが剣』!!」

厨房へやってきたヒュンケルにかけられた第一声はそんな大唱和だった。
あの決闘の後、ヒュンケルは涙目のルイズに怒られ、キュルケを始めとする惚れっぽい女子に囲まれ、
それを見たギ―シュに弟子入り志願され、何故かさらにまたルイズに怒られた。
そしてようやく夕食の時間になって落ち着くと思った矢先に冒頭の一言である。
見ると、料理長のマルト―やシエスタをはじめ、厨房の全員がヒュンケルを英雄でも見るような顔で見つめていた。
朝や昼に来た時は「メイジに召喚された気の毒な病人」的な扱いでしかなかったのだが、さっそく決闘の効果が出ているらしい。
予想を超えた状況にたじろぐヒュンケルを、使用人達は口々に「我らが剣」だとか「平民の希望」だとかいう言葉を使って囃したてた。
特に興奮した様子のマルト―などは、ヒュンケルが昨日まで半死人だったことも忘れたのか、ばんばんと豪勢なディナーを出してくる。

「どんどん食べてくれ、我らが剣! いやあ、貴族を剣一本でノシちまうなんて信じられん! こんないい気分になったのは初めてだぜ!!」

マルト―はそう言いながらヒュンケルのグラスに酒を注ぐと、「ほれほれ」と急かして自分のそれと乾杯させた。
よく見ると、マルト―の後ろには使用人達が酒を片手にぞろぞろと列をなしている。
もしかしなくてもこれは、ヒュンケルと杯を交わすために違いない。
正直、さほど社交的とはいえないヒュンケルにとってはあまり歓迎できない状況だったが、
無意識に逃げ場を探すように振り向いた先にはシエスタが立ちふさがっていて、目が合うと顔を赤らめて微笑んだ。

「ヒュンケルさん、今日は私のためにありがとうございました。それであの、お礼にお菓子を作ったのでよかったら食べてください……!」

シエスタは大皿に盛ったお菓子を、おずおずとヒュンケルに差し出してくる。
実際のところそのお菓子の山はヒュンケル一人で食べきれる量ではなかったが、
シエスタの目には昼間のギ―シュ以上の気迫がみなぎっていて、ヒュンケルの本能が「断ってはまずい」と警報を鳴らしていた。
ヒュンケルはとうとうこの圧倒的庶民的空間から脱出することを諦め、また新しく注がれた酒を呷った。


121:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/20 01:44:25 ntctZGt6
***

―2時間後、ようやくヒュンケルは酒宴という名のカオスから解放された。
普段あまり嗜まない酒を大量に飲んだせいか、少し足がおぼつかなくなっている。
さすがのヒュンケルも今日はさすがに疲れていたが、千鳥足で帰ったらルイズに何を言われるか分かったものではなかった。
罵られて喜ぶ性質でもなし、酔い醒ましをしてから帰った方が無難だろう。
(月夜の散歩でもしてくるか……)
散歩とは言っても、ヒュンケルは学院の構造をさほど分かっていない。
自然、足は昼に訪れたヴェストリの広場に伸びた。
夜の広場は静まりかえり、月光が芝生に奇妙に幻想的なコントラストを描いていた。
ヒュンケルはしばらくその風景に見とれていたが、やがて振り返ると夜の沈黙を破った。

「何か用か?」

言葉の先、月明かりの中で、青髪の少女が立っていた。
ルイズよりもさらに幼い容貌の彼女は、無機質な瞳でヒュンケルを見ている。
感情を窺わせないその表情と、直前まで自分に気配を悟らせなかったその動きから、ヒュンケルは少女にそれ相応の腕を認めた。
また、少女の視線は、ヒュンケルにとって馴染みのあるものでもあった。
「昼間の決闘、見ていたな?」
ヒュンケルがそう問うと、少女は小さく頷いた。
少女は自分の顔を指さし、「タバサ」と名乗る。

「タバサ、お前は俺に勝てたか?」

昼間の決闘の時にかすかに感じた異質な視線。
その中には値踏みするような色と、かすかな戦意が感じられた。
おそらく目の前の少女は、ヒュンケルの実力を測ると同時に「自分が戦ったのなら」とシミュレートしていたに違いない。
タバサはしばらく黙っていたが、必要最低限に音量を絞った声で返答した。
「分からない。あなたはあの時、手を抜いていた。なぜ?」
どうやらタバサは、それが聞きたくてここまで来たようだった。
ヒュンケルが適切な言葉を探す様子を、眼鏡越しの瞳で見つめている。


122:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/20 01:52:59 ntctZGt6

「手を抜いた、というわけではないさ。あれは腕試しだった」
「……ギ―シュの?」
「いや、俺自身のだ。剣を握った時、この使い魔のルーンから不思議な力を感じた。
 傷の痛みを感じなくなり、体が本調子に近い状態になったのだ。
 なにより……これ以上ないほど磨いたと思っていた剣の腕が、今まで以上に高まるのを感じた」

そう、ギ―シュのゴーレムなどやろうと思えばいつでも粉砕できた。
いや、正確に言えば即座に粉砕すべきだった。
いかに当代随一の剣の腕を誇るヒュンケルとはいえ生身の人間。
ギ―シュのゴーレムの動きはそれなりのものではあったし、複数を相手に延々打ち続ければ手傷を負う可能性もなくはない。
しかしそれでもなお、敢えてわざわざ時間をかけたのは、今までになく剣と一体になって動く自分を発見したためだった。
ギ―シュとの決闘はそういう意味では格好の機会だったし、存分に腕を振るうことができたとも思う。

タバサは説明するヒュンケルを黙って見ていたが、やがて「ガンダ―ルヴ」と一言呟いた。
耳慣れない言葉にヒュンケルが眉を潜めると、スポンジに水を染み込ますようにもう一度言いなおし、説明した。

「伝説の使い魔の名。あらゆる武器を自在に操ったと伝えられている」
「……タバサは俺がその『ガンダ―ルヴ』だと?」
「分からない。ただ頭に浮かんだだけ」

タバサはそう言うと、ヒュンケルに背を向けて歩き出した。
もうだいぶ夜もふけっている。
月が動いたせいか、芝生からは先ほどの不思議な美しさが消えていた。
女子寮である火の塔に入る前、タバサは足を止めて振り返った。


「さっきの言葉は訂正する」
「なんだ?」
「もしあなたが本気を出したら、たぶん私は敵わない。それだけ」

言い終わるとタバサは携えていた本を抱えなおし、建物の中に消えていった。
ヒュンケルは少女のかすかな足音に耳を傾け、左手のルーンを指先でなぞった。
いつのまにか、酔いは醒めていた。

123:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/20 02:02:04 ntctZGt6
投下終了。本当はルイズパートを付けて一話分だったんだけど、
雰囲気が違いすぎるので切って分けました。
なので次の投下は三日後くらいで。

124:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/20 03:20:33 DfM3XtC1
おお、寝る前に覗いたら思いがけなく投下されてたw嬉しい
乙!!ついにタバサ登場
ワクテカするなあ

125:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/20 15:57:25 JNmZL3o/
投稿乙



126:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/20 16:52:46 Lk6AwaDI
久しぶりに来てみたら、新作が!
作者乙!!

127:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/20 21:13:52 KEg+/J0L
乙です。
7〜10日で投下ってことだったから驚いた。

128:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/21 13:48:05 r7mSErau
ヒュンケルはコルベールやアニエスなんかと絡ませても面白そうだな。

129:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/21 19:05:25 byi/O39r
ヒュンケルの指導でアバン流刀殺法を習得した銃士隊とか

130:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/21 23:36:14 llQTmAvb
アニエスにヒュンケルさんの過去知られたら・・・・・・


131:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/21 23:51:29 r7mSErau
ヒュンケルはアニエスとコルペールどっちの立場でもある感じだしな。
どんな反応受けるんだろ。


132:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 01:36:59 MkBuPqEc
オリハルコンも単なる槍投げで貫通してしまう武器それがロンベルク製
(マキシマムのドタマは単なる魔槍の投擲でブチ抜かれた)

ぶっちゃけノヴァでも通常オーラ剣でオリハルコン斬れるし、
オリハルコン壊せないなんていってるのは素手で戦うマァムとか除けば、
ロモス大会の強豪とかベンガーナの精鋭軍団程度のレヴェルでしょうねえ
まあ魔法には非常に強いのでメイジ相手ならオリハルコン兵は無双しそうですが

133:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 01:44:20 MkBuPqEc
勇者アバンが倒した魔王ハドラーの時点で既に、
仮にも世界を支配しかかっているし、
列国最強のカール王城をアバンさえいなければ一晩で落とすところだったし、
そこらへん探せば何人でもいるスクウェアメイジなんかより明らかにずっと強いだろうね
烈風カリンとかなら別かも知れんが

まあこの時点のヒュンはイオナズン防げないしスクライドも完全版アバストには劣りそうだから、
魔王ハドラーには鎧なしでは勝てないかも知れないが…
タバサには余裕で勝てるだろーな

あでも何気にガンダールヴ効果でパワーアップしてるのか

134:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 03:17:43 moXnYicX
ヒュンケル「s.CRY.ed」

135:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 03:47:24 G5fwt5V2
相当強いメイジすら恐れるハルケギニア最強幻獣のドラゴンはゼロ戦の機銃で穴だらけになって死ぬ
ダイ世界のドラゴンは顔面以外は大地斬でも斬れない鋼の強度を誇る

そのダイ世界ドラゴンのブレスをアバンの修行三日目の初期レベルダイは海波斬は真正面から斬り裂くことができ、
ベンガーナ時点のまだまだ弱かったポップはベタンで数匹まとめてぶっ殺せる

そのポップのベタンはボラホーンには全く効果がなく、
にもかかわらずボラホーンは魔剣戦士時代のヒュンケルより遥かに弱い

136:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 03:59:42 G5fwt5V2
まーワルキューレはさまよう鎧より弱そうだからなぁ(材質が青銅だし。さまよう鎧は多分鉄でしょ)
さまよう鎧一体ならチウでも倒せるところからすると…ギーシュはチウに勝てるかどーかくらいか?

137:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 04:03:26 G5fwt5V2
チウ「この間ワルキューレにからまれた時に(薬草を)全部使ってしまったんだった」
ルイズ「ワルキューレ相手に薬草5つも使ってんじゃないわよ!」

138:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 15:15:05 moXnYicX
違和感0だなw

139:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 15:50:18 G5fwt5V2
チウ「さてこの世界でも獣王の笛で仲間を増やすとするか…
   フレイムやシルフィードは…(チラッ)、強そう…いや主人がいるから駄目だな
   ルイズさん、このあたりにモンスターは出ませんかね?」
ルイズ「モンスター? 妖魔ならオーク鬼とかがたまにでるけど」
チウ「(身長2mくらいの怪力モンスターか…グリちゃんみたいなもんだな。よし勝てる!)」

ピィ〜〜………
オークおに があらわれた!(7体)

チウ「ふ…複数でやってくるモンスターだったのね…」

140:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/23 15:50:37 yh820dSp
ギャグっぽくいってたがその元ねたの軍隊アリとかチウと
同じサイズだったから普通に考えたらかなり怖いよな

141:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 00:36:34 wkBDWZlj
なぜこの世界に鎧は飛んでなくて剣だけあるか不思議だ

142:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 01:26:25 oT13p+7e
ダイ戦でぶっこわれたのがまだ再生してないんだろうよ<鎧

143:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:37:52 PrNtQcyM
こんばんは。今から投下を始めます。

144:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:40:37 PrNtQcyM
ヒュンケルがタバサと話している頃、ルイズは所在なさげに部屋を歩き回っていた。
その幼くも美しい顔はくしゃみをこらえたネコのような面相で、なんともむず痒い微妙な雰囲気を漂わせている。
ルイズが考えているのは無論、使い魔のヒュンケルのことだった。
思えばあの平民を呼んで以来、ルイズの心は平常心という言葉からはかけ離れたところにあった。
ルイズにとってヒュンケルという人間との関わりは、予想外の連続だったのである。
彼は瀕死かと思えばすぐに回復し、冷たいやつかと思えば意外と優しくて、ただの平民かと思えばとても強くて―。
こうまでコロコロ変わられると評価のしようもなく、ルイズはヒュンケルに対する態度を決めかねていた。
もちろん彼女はご主人様で、ヒュンケルはその使い魔だという前提は変わらない。
変わらないのだがなんというかその、予定よりもう少し待遇を良くしてやってもいいかなぁと思ったりもする。
例えばそれは、やらせるつもりだった家事雑事を免除するとか、食事をルイズの隣の席でする権利をあげるとか、
その他おおよそヒュンケルにとっては意味のなさそうなものだったが、彼女は大真面目に頭を悩ませていた。
目下ルイズの課題は、帰って来たヒュンケルにかける第一声についてである。
ご主人様としての威厳を保持しつつ、ヒュンケルへの親密さをアピールする必要がこれには求められる。
「おかえりなさい……はダメね。ま、まるで、同棲してるカップルみたいだし……。
 『遅かったわね』はなんだか嫌味だし、『よくぞここまで来た』は大魔王みたいだし……」

すっかり自分の世界に入ってしまったルイズは気がつかなかった。
背後のドアがそっと開き、そこから誰かが入ってきたことを。
ルイズは相も変わらずぶつぶつ呟きながら、台詞に合わせた百面相に忙しい。

「や、やっぱりインパクトが大事かしら。ご主人様の威厳をビシッと感じさせるような……」
「そんなんじゃだめよお。レディは威厳なんかより色気よ色気」
「そう言われても私のお乳じゃあ……ってその声まさかっ……!?」

ごく自然に一人言に割り込んできた声にぎりぎりと振り向くと、そこにはヴァリエール家累代の敵が立っていた。
キュルケ・フォン・ツェルプスト―はルイズを見て小馬鹿にしたように笑うと、ここがさも自分の部屋であるかのような自然さで椅子に座った。
落ち着いた様子のキュルケとは対照的に、なにか致命的なところを見られてしまった気がするルイズの顔は青くなったり赤くなったり、
もしや魔法でも使ってるんじゃないかというほどの形相を呈している。


145:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:42:50 PrNtQcyM
「どどどどどうしてアンタがこの部屋にいんのよ! さささささっさと出ていきなさいよ!!」
ここ半年の中でも、このドモリっぷりはナンバーワンかもしれない。
吹き出しそうになるのを堪えながら、キュルケは椅子の上で形のいい脚を組みかえた。
「あら、別にいいわよ? せっかくだから風上のマリコルヌのところにでも遊びに行こうかしら。
 話題は……そうね。 『ゼロのルイズが部屋で何をしていたか』、なんて面白そうじゃない?」

キュルケの出した名は、ルイズと特に馬の合わない同級生のそれだった。
気弱なくせにお調子者で小太りで風邪っぴきなアイツがこんなことを知ったらと思うと、サーっと顔から血の気が引いていく。
「よ、要求はなに? お金? 宿題?
言っておくけどヒュンケルの治療に秘薬を使っちゃったから、お小遣いなんてそんなにないわよ」
うっすらと涙を浮かべているルイズの顔は世にも哀れなものだった。
「仇敵に弱みを握られるとは一生の不覚!」ってなもんである。
キュルケはルイズのその様子に満足そうに頷くと、杖を振るって紅茶をティーカップに注ぎ、喉を潤した。
「要求なんて別にないわよ。フレイムに廊下を探させてたんだけど、なかなかダーリンが捕まらないからこっちに来ただけ。
 まあ、おかげでいいものが見れちゃったけど」
キュルケがクフフと笑うのを、ルイズは今度は赤くなった顔で睨んだ。
「なにヌケヌケと人の使い魔をたぶらかそうとしてんのよ! い、言っておくけど、あいつのご主人様はわたしなんだからねっ!」
「あ〜ら、別にあたしはご主人様になろうなんて思ってないわよ? あたしが彼に求めているのはそんなんじゃなくて、身を焦がすような情熱よ!
 ……というわけで、ルイズがご主人様で、あたしが恋人ってことでいいじゃない?」
それで大円団よ、と手を上げるキュルケをルイズは睨んでいたが、しばらく経つと溜め息をついて力を抜いた。


146:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:46:10 PrNtQcyM
「ねえ、真面目な話し、アンタはヒュンケルのことどう思ってる?」
「どうって、いい男じゃない。 クールだし強いし、あたし好きよ、ああいう殿方」
「……アンタはそればっかりね。昼の授業の後に色々聞いてみたんだけど、
アイツ、遠い国から来たとか溶岩に落ちて怪我したとか適当なことばっか言って誤魔化すのよ。
悪いヤツじゃないと思うけど、何か後ろ暗いところでもあるのかしら?」
呆れたように首を振りつつルイズが言うと、キュルケは唇に指を当てて考えた。
どうでもいいことだが、一つ一つのしぐさがいちいち色っぽいのがルイズの癪に障る。
「あたしには分からないわ、ルイズ。でもね、アンタが今言ったとおり彼は悪い人じゃないわ。
ギ―シュに、アンタに対しても謝らせたんでしょう?」

言われたルイズは顔を赤らめてうつむいた。
キュルケの言うとおり、決闘の後、ギ―シュはシエスタとルイズの双方に詫びを入れに来た。
シエスタには理不尽に当たったことに、ルイズには公衆の面前で侮辱して笑ったことに、ギ―シュはそれぞれ謝罪した。
それは頭の冷えたギ―シュが半ば自発的にしたことでもあったが、ヒュンケルが関与していたことは疑いない。
―使い魔はメイジの力に比例する。
決闘後、同級生が自分を見る目に変化が起こったことに気付いた時、ルイズはひそかに喜んだ。
もしかしたらヒュンケルは、シエスタのためばかりじゃなく、ルイズのためにも戦ってくれたのかもしれない。
それは勝手な推測にすぎなかったが、そう考えると胸の辺りがなにか温かいもので満たされた。

「……それにしてもこの剣、凄い業物ね。彼の腕前もあるんでしょうけど、青銅のゴーレムを斬って刃こぼれ一つないわよコレ」

物想いに耽ったルイズの気分を変えるように、キュルケは壁にかけられた剣を話題に出した。
抜き身の魔剣は魔法のランプの明かりを受けて、妖しく輝いていた。
キュルケも剣の相場など詳しくないが、これを買ったなら相当の金額になるのではないかということはよく分かる。
少なくとも、普通の平民の身で持てるものではない。
キュルケはますますヒュンケルに興味を惹かれる自分を感じた。


147:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 19:49:40 N8XS3v8+
支援

148:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:49:41 PrNtQcyM
「これだけの剣を飾っておくだけなのも、あれだけの剣士を丸腰にしておくのも、両方もったいないわね。
 抜き身だから持ち歩けないっていうんなら、私がダーリンに鞘をプレゼントしてあげようかしら?」
言ってからこれは名案と思ったのか、キュルケは指を鳴らしてにんまり笑った。
ちょうど虚無の日も近いし、デートの準備をしなきゃと立ちあがる。
はしゃいで部屋を出て行くキュルケを不思議に静かに見送った後、ルイズはいそいそと財布を取り出して中身をぶちまけた。
大公爵家の娘であるルイズがいう「金欠」など、一般庶民のそれとはまったく違う。
ヒュンケルのために高価な秘薬を買ったとはいえ、金貨はたんまりとあった。

「悪いわね、キュルケ。アンタの計画はご主人様と使い魔の絆を深めるという、崇高な目的のために使わせてもらうわ!」

もはや部屋にはいない仇敵へうそぶいたルイズの目がキュピ〜ンと光る。
ご褒美という名目のプレゼント。
ご主人様として上の立場を誇示しつつ使い魔を喜ばせる方法として、これ以上のものがあろうか?
ルイズは予定表を取り出してぱらぱらとめくると、次の休日の欄にでっかく「お買いもの」と書き上げた。

149:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/24 19:57:05 PrNtQcyM
以上で投下終了です。支援と感想ありがとうございました。
どうも自分の中でも安定しないんですが、会話文は一行開けた方がいいですかね?
改行で空白が多いのもどうかと思うけど、ぎっしり文字が詰まってると見づらいかなと悩み中です。

150:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 20:09:12 N8XS3v8+
乙です!
これも一種のガールズトーク?
個人的にこういうノリの会話大好きなのでとても楽しく読ませてもらいました
ルイズ可愛いなあw

151:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 21:35:31 E4H/NENt
乙です、個人的には一行空けてもらった方がありがたいです。

ヒュンケル……早々と女性陣のハートつかんじゃってるな。
まあ、そうなるよなあ、なると思ったよw

152:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 23:32:16 bCVTHuoX
乙です。
流石長兄ヒュンケル、女の子が憧れる憧れる・・・ッチ

153:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/24 23:51:56 wkBDWZlj
投稿乙です
すぐにフラグ立てるヒュンケルかっこよすぎ

154:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/25 18:17:50 l4ameh9R
フラグは建てても回収どころか自分でへし折るのがヒュンケルさんでもあるけどな

155:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/25 21:59:55 71G/B+FB
黙ってても女の方から勝手にバシバシフラグ立ってくれてしまうスペックの持ち主だけど
本人が発展させたがらないで片っ端からへし折るからね

156:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 11:51:42 8BBtSp6k
乙です。
地の文と台詞の間は1行空けたほうが読みやすいと思うけど、台詞のやり取りは空ける必要はないと思う。

亀だが、
>>42
あと知らないものに無刀陣がある。アバンの書に書かれていたはずだ。

157:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 12:02:09 oSD6F5qY
>>156
必要ないと思った〜というセリフがあるから、存在と大まかな理屈は知っているはず。
同じように聞き流していたグランドクロスが土壇場で会得するぐらいだし、追い詰められたら覚醒してもおかしくはないな。

無難に使えるようになるにはアバンの書が必要……とも言い切れんのよ。
原作のように、半年にも満たない期間で会得したければ必要だろうけど、
教本があるとはいえ、その期間で会得できる人間は、概略さえ知ってればそのうち再現する。

158:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 18:28:45 ddNusnnq
本があって半年のものを仮にヒュンケルの能力に期待して一年で行けるとしてだ…
ゼロ魔の冒険で一年後って話どの辺まで進んでるんだよ

クロスは追い詰められて土壇場で使用したものだがヒュンがこの世界で追い詰められるのって何時の話だ
魔槍はないしデルフも剣だから剣以外の闘技を習得する必要性はなさそうだし…
無刀陣は話の流れからするとどうもアバンの書を読むまで存在自体知らなかったみたいな感じだったが

159:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 21:33:58 SqxOz2Lo
作中時間は半年どころか3ヶ月だった件

そして、「物語の始まり」(要はダイがデルムリン島で勇者修業受けるところから)〜「最終決戦」までが3ヶ月だから
ヒュンケルがアバンの書を手にしてから習得に費やした期間は
……どれだけ多く見積もっても一ヶ月かかってないんじゃないの?
数週間、下手したら数日

160:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 22:16:47 MSRRgy6H
アバンの書が宝物庫に保管か、はたまた始祖の書だったら、無理矢理臭いけど見つける事は可能か

161:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 23:21:48 3w+x8Lb8
どうもよくわからねーんだが
なんでアバンの書で槍技覚える期間の話なんかしてるんだ?

この世界魔槍はないしデルフも剣だし覚える必要性がないと思うんだが
クロスの習得にアバンの書は関係ないし、覚えるとしたら無刀陣くらいだが…
ハドラーやバラン級の強敵と戦いでもしないかぎり…
クロスはおマチさんのゴーレム壊すのに便利そうではあるが、便利ってだけで習得できるもんでもないしおマチさんごときを相手にってのもちょっとな…

162:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 23:31:44 3w+x8Lb8
個人的には空技習得なりクロスなりはヨルムンあたりまでとっとくのがいいと思う
ダイのフレイ・鎧フレイ粉砕イベントをヒュンでヨルムンども相手にやるとか
空技やクロスはアンドバリのゾンビやヘキサゴンスペル相手に使うってのもいいか

まあそうすると大分先までおあずけになるが…

163:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/26 23:53:29 1dY7OdRp
大文字だとsageの効果が出ないってアバンの書に書いてあったよ、マジで

164:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/27 00:26:39 cfRCTFDw
久しぶりに来たんだけど獣王の人最近投下した?

165:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/27 10:41:24 8BuobB2I
最近というのが此処半年以内という事なら投下したと思う

166:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 13:17:54 sAEW+U2f
予想より随分さくさく書けてしまったので、今日の夕方過ぎに投下予定です。
前に一週間一話ペースと言ったけど、あれは我ながら当てにならないようなので
参考程度に留めておいてください。

167:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:40:44 sAEW+U2f
それでは投下します。

168:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:42:54 sAEW+U2f
「起きなさいヒュンケル! すぐに出かけるわよ!」

その日の朝は、ルイズのそんな言葉から始まった。
まだ眠っていたヒュンケルが気だるげに目を開けると、ルイズはとっくに制服を着こんで彼を見下ろしていた。
部屋はまだ薄暗い。
宵っ張りで朝に弱いルイズにしては異常な早起きである。

「どうした? 今日は休みではなかったのか?」

今日は虚無の日―ハルケギニアの休日のはずだった。
額に手を当てながらヒュンケルが聞くと、ルイズはひっくりかえりそうなほどふんぞり返って答えた。

「休みだから出かけるのよ! さあ準備して!」

ルイズは、早くしないとキュルケが云々とぶつぶつ言っているが、
殆ど身一つで召喚されたヒュンケルにはさほど用意することもなかった。
軽く身づくろいをし、「では行くか」と言って部屋を出て行こうとすると、ルイズに慌てた声で呼び止められた。
「忘れ物よ」と言ってルイズは、ヒュンケルに楽器のケースのようなものを渡してくる。

「この中にアンタの剣が入ってるわ。しっかり護衛してよね!」

そう言うとルイズはヒュンケルの背を押して、早く早くと急き立てた。


***


トリステイン魔法学院には大きな厩舎がある。
王都トリスタニアに行くのに徒歩で二日はかかるここでは、移動に馬の存在が不可欠なのだ。
そんなわけで何処かに出かける段にあっては、同じ目的でここに来た者と遭遇することはそう珍しいことではない。
今朝も例のごとく、厩舎に近づくルイズ達に向かって先客が手を上げた。

「御機嫌よう。君もお出かけかね?ミス・ヴァリエール」
「おはようございます。オールド・オスマン」

厩舎の前にいたのはこの学院の長、オールド・オスマンだった。
傍らには緑髪の美人秘書、ミス・ロングビルも立っている。
オスマンは馬車の御者に少し待つよう命じると、いそいそと二人のところにやってきた。


169:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:45:21 sAEW+U2f
「そちらが噂の使い魔君かな、ミス・ヴァリエール?」

オスマンはちらりとヒュンケルを見ると、ルイズに聞いた。
ヒュンケルの目にはオスマンの瞳が、不思議な親密さを漂わせているような気がした。

「ええ、こちらが使い魔のヒュンケルです。オールド・オスマンもこんなに早くにお出かけですか?」

ルイズはまだ太陽も昇りきっていない空を見上げて言った。
先に述べたように厩舎で人と会うこと自体は珍しくないが、この場合は時と相手がいささか特殊だ。
ルイズが言うのもなんだが、学院長がこんなに早く出かけるとは火急の用かといぶかしむ。
しかしオスマンは、眉をハの字にして子供のような表情を作ると、少年が友人にするような調子で愚痴った。

「それがのう、『土くれのフーケ』対策がどうので王宮の連中に呼び出されちまったんじゃよ。
 あいつら忙しいとかなんとか言って昼前には来いとか言ってきおった。おかげでこんな早起きする羽目に……」

そこまで言ってオスマンはオヨヨと泣くと、ミス・ロングビルの胸に抱きついた。
そのままオスマンは「かわいそうなワシ……」などと泣き真似をして頬をスリスリしている。
ルイズはおそるおそるロングビルの顔を見上げたが、
かの辣腕秘書はピクリとも眉を動かさずにオスマンを張り手で一蹴すると、眼鏡を掛け直して通告するように言った。

「オールド・オスマン。駄々をこねてないで早く行ってください。遅刻しますよ」

どうやらロングビルの方は王宮に行かず、学院に残るらしい。
彼女は害虫を追い払うように手を振って急かしたが、オスマンがいなくなるのが嬉しいのか、その口元はほころんでいた。
まあ、あんなセクハラされてりゃそうなるわよねとルイズも内心同情する。
片頬を腫らしたオスマンは「つれないのう」と嘆きながら馬車に乗りかけたが、思いついたようにぴたりと足を止めた。

「そうじゃ、ミス・ヴァリエール。もしや君も王都に行くのかね?」
「え、ええ。そのつもりですけど?」

なんだか悪い予感を感じつつルイズが答えると、オスマンはにやりと笑って言った。

「それならせっかくじゃから、ワシと一緒に行かない?」


170:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:47:32 sAEW+U2f
***

馬車で街へ向かう道中、ルイズはどうにも落ち着かずにモジモジしていた。
―オールド・オスマン。
齢三百とも言われるこの老メイジは、ある意味貴族の位階などを超越した偉大なメイジだ。
オスマンは気さくなエロジジイとしても有名であるが、重々しい肩書きと裏腹のそんな振る舞いがルイズにとってはまた妙な緊張を強いた。
オスマンは今、ルイズの隣で両の頬を赤く腫らして使い魔のネズミを撫でていた。
馬車に乗りこむ際に、使い魔の目を通してロングビルの下着を覗いていたのがバレたのだ。
ロングビルの必殺の張り手を二発も食らったオスマンはそれでもさほど堪えた様子も見せず、
ネズミ―モートソグニルに「白かあ。黒の方が似合うのにのう」などと呟いている。
ちなみにこの馬車は一つの席に二人ずつ乗れる四人乗りなのだが、
オスマンの希望でルイズとオスマンが隣同士、ヒュンケルは一人で座っていた。
ルイズにとってなんとなく気に入らない配置だったが、
学院長に異議を唱えるもはばかられ、ルイズはそわそわと膝を動かしていた。

「ところでオールド・オスマン。『土くれのフーケ』とは?」

意外なことに、最初に話題を出したのはヒュンケルだった。
土くれのフーケ。
それはオスマンが王都に行く理由として挙げた人物だ。
どうやらヒュンケルが学院長の相手をしてくれそうだと安堵の吐息をつくルイズの横で、オスマンがその白眉を持ち上げた。

「フーケといえば有名な盗賊よ。巨大なゴーレムを操り、強力な防御魔法がかけられた壁をも錬金して
土くれに変えてしまうことからその二つ名が来ておる。なんじゃ、君は新聞を読まんのか?」

長い顎鬚を揉みながらからかうように笑うオスマンに、ヒュンケルは文字が読めぬことを伝えた。
ヒュンケルは不思議なことにこの世界の言葉は使えたが、文字の読み書きまではできなかった。
当然新聞も読めず、この世界にきて日が浅いこともあってまだまだ世事には疎い。
そしてそんなヒュンケルを、オスマンは珍獣でも眺めるようにまじまじと見つめた。


171:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:49:22 sAEW+U2f
「学がなさそうな顔でもないがのう。一体、君はどこから召喚されてきたんじゃ?」
「……遠いところです」

ヒュンケルは未だ誰にも、自分が異世界から召喚されたことを告げていなかった。
言って信じてもらえるか疑わしかったこともあるが、本心のところは自分でも分からない。
あるいはまだ、自分の過去と向き合う覚悟ができていないからだとも思う。
それきり沈黙したヒュンケルの様子をどう感じたか、オスマンは話題を変えるように明るく言った。

「そういえば君は、ミスタ・グラモンを剣で一蹴したそうじゃな。
随分な名剣だぞうじゃが、ちょっとワシにも見せてくれんか?」

無邪気に両手で拝んでみせるオスマンに、ヒュンケルはルイズの様子を窺った。
安心したら今度は退屈になったのか、ルイズは心なしか苛々している様子だった。
自分の愛剣を見世物のように扱うのは気が引けたが、ルイズの手前、学院長の頼みを断るのも角が立つ。
ヒュンケルは魔剣を入れていたケースを開けると、オスマンにそれを差し出した。

「ほうほう、コレがその剣か。見たことのない、珍しい金属で出来ているのう。
 それに土メイジの魔法とも違う、不思議な力を感じるが?」

土系統のメイジは物の材質の見極めに秀でている。
卓越した土のスクウェアであるオスマンは、魔剣を少し触っただけでその特異性を言い当てた。
心なしかこちらを見つめる目にも鋭いものを感じて、ヒュンケルはその身を引き締めた。
オスマンが言う不思議な力、それは魔剣に潜む能力「鎧化」の力に他ならないだろう。
さて、なんと答えたものかとヒュンケルは頭を悩ませたが、なにを考えたかオスマンはまたネズミの方に耳を傾けた。

「なんじゃモートソグニル。ん、ピンク? いやいや、見るのはバスト80サント以上に限ると言ったじゃろうに」

つい先ほど閃かせた眼光はどこへやら、オスマンは再びただの好々爺に戻っていた。
一体、この小さな使い魔は何を見たのか?
ささやかな謎はすぐに暴かれる。
こいつめーなどと言ってネズミをツンツンつつくオスマンの隣で、何かがぶちりと切れる音が聞こえたから―。


172:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 18:52:01 sAEW+U2f
「こ、こ、こ、このエロジジイ〜〜っ!!!」

沈黙を守っていたルイズが、顔を真っ赤にしてぶちぎれた。
初めこそ緊張で忘れていたが、ルイズからしてみれば今日は使い魔との初めてのお出かけ。
絶対口に出したりはしない―というより、
彼女自身そう思う自分を目いっぱい否定していたが、ルイズは今日という日を楽しみにしていたのだ。
乗っていく馬も事前にチェックし、道中の会話もシミュレーションし、
ルイズの手綱さばきに感心するヒュンケルの声まで脳内で再生されていたのに、
オスマンはそれを初っ端から邪魔したばかりかルイズのNGワード「お乳」を見事に踏みつけた。

―この恨み、晴らさでおくべきか。

もはやルイズは、立場も場所も失念していた。
馬車の中、誤解じゃ〜と喚く声と同時に、爆発音がヒュンケルの耳をつんざいた。

***

どこかから愉快な音が聞こえた気がして、キュルケは髪をいじっていた手を止めた。
少しメイクに力を入れすぎて、予定より遅い時間になってしまった。
そろそろ寝ぼすけのルイズも起きてしまうかもしれない。
キュルケはマントを羽織ると使い魔のフレイムを撫で、「今日はお留守番よ」と言いつけた。
忠実な使い魔は少し寂しげな声をあげたが、結局またのそのそと寝床に戻って二度寝を始めた。
キュルケは部屋から出ると、慣れた手つきで隣室に解錠の魔法をかけた。
鍵が開いたのを確かめ、ルイズを起こさぬよう静かにドアを開ける。

「ヒュンケル〜? 起きてる〜?」

ドアから顔だけ出したキュルケは、そのままの姿勢で固まった。
阿修羅のごとく怒り狂うルイズが待ち伏せしていたならまだマシだったが―部屋はもぬけの殻になっていた。
ルイズもヒュンケルもおらず、壁にかかっていた剣もない。
まさかと思いつつ部屋に入ったキュルケは、テーブルの上に自分宛ての置き手紙を見つけた。
震える手で取って読んでみるとそこには、
「や〜いや〜いバ〜カ!ヒュンケルはわたしのものよお!」といった趣旨のことが
ルイズ独特の高慢ちきさで書いてあった。
キュルケは手紙をグシャッと潰してついでに焼き払うと、猛ダッシュで外へ駆けだした。


173:ゼロの剣士 ◆/YI2FnXeqA
10/11/27 19:02:28 sAEW+U2f
投下終了。感想と質問へのアドバイスありがとうございました。
励みになります。

それからwikiの方で過去話をちょっといじりますが、
誤字など細かいとこを修正するだけなので気になされずに。

174:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/27 21:02:55 5HxKKjTS
投下乙です。


175:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/27 22:43:57 kgGVQTrO
乙です!
いやあ、ルイズ可愛いなあw
魔剣の話題が少し出て来たのにワクワク
秘密の多いキャラはこうやって少しずつ確信に近付いていく感じが醍醐味だな

ヒュンケルの秘密ったって読者にはとっくにネタバレだけどw
ルイズ目線だと全てが謎なので
何か新鮮というか楽しい

176:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/28 00:24:03 HgEySUdz
魔剣はヒュンケルの氏素性を、一軍団を率いる将軍だったことを明らかにするヒントだったのに・・・
ルイズのお馬鹿

177:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/28 01:57:10 nB2m1Vut
>ルイズの手綱さばきに感心するヒュンケルの声まで脳内で再生されていたのに

可愛すぎるw

178:虚無と銃王 ◆8/Q4k6Af/I
10/11/28 23:50:13 tpQAEt40
ヒュンケルの方、お疲れさまでした
まったくもって久しぶりなのですが、最新話を投下したいと思います

179:名無しさん@お腹いっぱい。
10/11/28 23:51:20 tpQAEt40
虚無と獣王
33  虚無と伝説の剣


クロコダインはルイズをその背に隠すような形のポジションを確保すると、4人のワルドをその隻眼で睨みつけた。
肩に乗っていたフレイムはブレスを吐いた後、素早く床へと降り立ち、床に座り込んでいたキュルケのもとへと駆けつけている。
途中まで同行していたサンドリオンの『遍在』は、現在レコンキスタ艦隊所属の竜騎士たちを相手にしている筈だ。
礼拝堂へと急ぐ道筋において、時間最優先でいくつかのフネをフライパスしてきたのだが、相手がこちらを見逃してくれる訳がない。
不用意に近付いてきたメイジを通常の3倍近い長さのブレイドで斬って落としたサンドリオンは、なんとそのまま主のない火竜に飛び移った挙げ句、気性の荒い事で知られるそれを尋常ではない目の力だけで服従させた。
「必ず追いつく。先に礼拝堂へ!」
短く告げる言葉の中に焦りの様なものと、それを押さえつけて最善を尽くそうとする意志を感じ取ったクロコダインは、短く「恩に着る」とだけ言い残してその場を後にする。
その後、礼拝堂の大きさからして翼竜は身動きが取りにくく敵の的になると判断し、ワイバーンを『魔法の筒』に格納した上で屋根を突き破り─現在に至るという訳である。

ルイズの目を通して大体の事情は把握していたクロコダインだが、視界が同調していたからこそ判らない事もあった。
ルイズの心身状態である。
ざっと見たところ大きな怪我はなさそうで密かに胸を撫で下ろすクロコダインだが、だからといって裏切りを働いた男を許す理由にはならない。
体の怪我はある程度見れば判るが、心の傷は外からは判らないからだ。
ワルドを露ほども疑っていなかったルイズにとって、この背信はいかほどの衝撃であったかは想像に難くない。
故にクロコダインは無言のまま腰のデルフリンガーを抜き放ち、その切っ先をワルドへと向けた。
「相棒といると飽きなくていいねえ、今度のお相手はスクエアメイジかい!」
カタカタと陽気な声で鍔を震わせる大剣は、既に刀身を輝かせた実戦モードだ。
「フレイム、キュルケをルイズたちと合流させろ。そこの御仁、すまんがまだ戦えるだろうか?」
ウェールズとはこれが初対面となるクロコダインである。
「この程度で音を上げる様では物笑いの種となってしまうな。父や部下たちに指を指して笑われるのが目に浮かぶよ」
余りにも突然現れた見た事もない獣人に最初は驚き警戒した王子だったが、『遍在』の一人を鮮やかに消滅させた手並みを見れば味方であるのは瞭然だ。
正直に言えば精神力の限界が近いのだが、ウェールズにも意地というものがある。
「無理はして下さるな。身を守るのが最優先でいい」
一旦言葉を区切り、クロコダインはルイズに語りかけた。
「後はオレの仕事だ。遅れてしまった分は、戦働きで返そう」


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