【LRS】シンジとレイの結婚生活5日目 at EVA
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500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 02:29:33
>>499
グッジョブ!

やりとりが夫婦漫才みたいで可愛い
ほのぼのした

501:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 12:47:47
フッ……乙と言っておこう

502:499
07/10/30 21:53:37
>>500-501
ちょwおまえらこんなんでいいのか!?
読んでくれたのはうれしいが、もっと正直に言ってくれていいんだぜ?
ダメなトコをいってくれたほうが次に書くときの参考になるんだぜwww

503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/31 00:08:37

じゃあもっと長いの書いてくれ

504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 12:51:08
ぼけ波さんの需要が以外と多い件について

505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 22:55:12
投下まだ?

506:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 23:20:02
>>496-498の後日談

僕はトボトボと帰る。
疲れた…。お腹もすいた…。
もうじき家だと思ってがんばって歩く。
家をみると明かりがついていた。
今日は彼女のほうが早く帰ってきてたみたいだ。

「ただいま」
「おかえりなさい」

そういって出迎えてくれた。
僕は彼女に倒れこみたかった。
ただ、できなかった…
彼女は包丁を持って出迎えたんだよ!?
包丁ってやばいでしょ!?刺されるよ!?
てか、包丁持ってそのきれいな笑顔はやめてよ…
あきらかなアンバランスでしょ!?
はっきりいって怖いよ!?

「どうしたの?」

どうしたの?じゃないよ…。君がどうしたの、だよ…

「いや、包丁を持って出迎えてくれる斬新な姿に驚いただけだよ」
「そう?よくわからない」

だれだってわからないよ…。むしろわかる人なんてきっといません。

507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 23:21:21
「綺麗?」

ちょ、ちょっと待って?今どこからこの会話になったの?
まったくわかんなかったんだけど…
僕どこか聞き漏らした?
てか、ごめん。僕じゃこの質問の答えはきっと出せない…。誰か教えて?

「綺麗だと思うよ?包丁がなければもっと」

とりあえず、間違ってないよね?ここで間違うと刺されるかもしれないし…

「うれしい」

そういって彼女はこっちに来た。いつもなら抱きしめるよ?
ただ今は違う。包丁を持ったままこっちに来てる。
わかるよね?
すっごく怖い!!笑顔だから余計に!!!

「ちょ、ちょっと待って!ストップ!!」
「どうして?」

どうして、じゃない!ダメッ!!死ぬから!!!

「包丁を置いて?」
「あっ」
「ね?ちょっと危ないでしょ?」
「わたしもあなたを刺したくない」

さ、刺したくないって…
僕としては先日の君の「いつか刺す」を覚えているわけで…
非常に怖いわけで…
まぁ、いいや。お腹すいたし…

508:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 23:24:30
「お腹すいたよ」
「あ、ごはんまだできてない」
「え、台所大丈夫?焦げたりしてない?」
「…まずいかも…」
「マジですか…」

そういって台所に足早に向かっていったよ。
ははは、こういうところも彼女らしい気もするな。
そういうところも好きだけどさ。

「ははは、ドジッ子だなぁ〜」
「笑わないで」
「いや、君らしいなってさ」
「…いつか刺す…」

…台所からそんな声が聞こえた…
…これは幻聴だと信じたい…
てか、幻聴以外はあってはいけないんだ。
僕は血をみることになるから…
だからこう一度願うんだ

…これは幻聴だと信じたい…

509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/01 23:28:12
とりあえず、書いた。
もっと長いほうがいいってあったけど長いやつを書く前にこっちが浮かんだから
書いたわw
あぁ、ドッジボールネタを使いたかったorz

とりあえず、長いやつはまたなんか閃いた書くよ。

510:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/02 17:16:29
ドジっことからかわれただけでいつか刺すと言ってしまうアヤナミたんが可愛い

511:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/02 23:34:40
なかなか面白かったです

512:名無しさんが氏しでも代わりはいるもの
07/11/07 06:14:30 hYwcxkdC
レイ「布団干す」

シンジ「眠いよう〜、なんで?」

レイ「昨夜、乱れて布団が湿っぽいから」

シンジ「・・・そうか」

レイ「朝ご飯できてる」

シンジ「ありがとう、こっちへおいで」

チュ〜

レイ「無言で顔を赤らめる」

513:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/07 21:43:41
湿っぽいw

514:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/09 02:43:37
可愛いなぁ

515:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/14 04:31:49
ほしゅ

516:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 01:05:33 5y2iEx/6
sage

517:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 04:00:52

「碇くん…」

「なに…?」

「あなたと結婚するわ。」

「…え、確定?」

「お父様の了解も得たわ。」

「僕の意志は?」

「実は荷物も全部持ってきているの。」

「ちょっと…綾波?」

「今日から碇レイです、」



こうして僕たちの新婚生活は(かなり強引に)始まった。



518:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 04:03:11
>517ゆっくり投下していきます。



519:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 08:18:07
ガンガってくれ

520:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 22:21:13
517続き
綾波との新婚生活1日目。
綾波が引っ越してきた。(急に)
僕の家は1ルームマンションなのでかなり狭い。
でも綾波の荷物は段ボール一個と少なかった。

「綾波?他の荷物は?ベッドとか…」
「置いてきたわ」
「どうして?自分のがあったほうがいいだろ?」
「碇くんの家は1ルームだから、置けないと思って。」
(なんで知ってるの…綾波。)

そんな思いは他所に綾波は手に持っていたカバンから一枚の紙を取り出した。
「はい、婚姻届け。印鑑押して。」
「…。」
「…碇くん?」
「僕で…、僕なんかでいいの?」
「当然よ。」
「なんで僕なの?」

「貴方には私しかいないもの。」

すこし微笑んだ綾波が余りにも綺麗で、僕は渡された紙切れに印鑑を押した。


521:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 01:15:39
gj

522:無題
07/11/25 04:40:54
「あなたはずるい」
「え?」
皿洗いの途中で声をかけられてぼくは後ろを向いた。
妻が後ろに立っていて眉根を少し寄せてぼくを見ていた。
普段感情を表に出さない彼女が、珍しく怒っていると思える表情をしていた。
うん、滅多に見ないけれど確かに彼女は怒っている。

皿を洗う手を止めてぼくは聞いてみた。
「なにが『ずるい』の?」
「それ」
彼女が指さした。
指の先には流しときれいに洗われた皿があった。
「えっと、お皿?」
すすいだ皿を持ってぼくが聞き返すと彼女は首を横に振った。
「お皿洗い」
彼女はぼくに近づいた。
「私がやるはずだったのに」
本当ならばぼくが料理を作ったので、皿洗いは彼女のはずだった。
しかし……。
ぼくは妻のおなかに目をやった。
そろそろ臨月に近い。
ぼくは男だからわからないけど、きっと重くて大変だろう。

523:無題
07/11/25 04:41:46
ぼくの視線を感じた妻は表情を和らげた。
「私の身体を気遣ってくれてるのね?……でもお皿洗いが出来ないわけではないわ」
「うん、それはわかってるよ。じゃあ今回だけ」
彼女は少し考えていたようだったけど、うなずいた。
「……じゃあ、今回だけ。でも仕事から帰ってきてあなたも疲れてるのだから、無理はしないで」

彼女はソファに戻ろうと向きを変えてゆっくり歩み始めた。
だが、リビングに敷いてあるカーペットの縁に足が引っかかり前に倒れそうになった。
「あっ……」
ぼくはお皿を手にしたまま走り、倒れそうな彼女の肩をつかんで
そのまま後ろへ支えたままゆっくり倒した。
肩へ手を伸ばしたときに離したお皿は床に落ちてあっけなく割れた。
「……大丈夫?」
「……ええ」
ちょっとびっくりしたように彼女も目を丸くしている。

ぼくは息を吐いた。妻が無事で良かった。もし何かあったら……。
ふと父のことを思い出した。
もし父と同じ立場だったら、同じことをするという確信に近い感覚が
身体の中にわき上がったからだ。
その感覚に総毛立ちつつ、ぼくは支えている彼女を見た。
深い赤色の瞳がぼくを見つめていた。


524:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 04:42:55
「思い出していたの?碇指令のこと」
「うん。もしぼくが父さんだったとしても同じことをしたかもしれないなって」
「そう。でもあなたは同じことはしない、と思う」
「そりゃ、父さんみたいな権力とか立場とかない平凡な人間だしね」
肩をすくめて苦笑してみせる。今のぼくにはそんな大それた力なんてなく、なんとか彼女を養える力しかない。
「いえ、出来ないのではなくてしないの。もしあなたが碇指令と同じ立場であっても」
「どうして?」
彼女の真剣な目にぼくは首をかしげた。
「初めて会ったときのあなたは言っていたわ。『逃げちゃダメだ』って」
「うん」
小さい声で呟いてたんだけど聞こえてたのか。
そういえば彼女を支えるこの格好、あのときベッドから滑り落ちた彼女を
支え起こしたのといっしょだとぼくは気づいた。

「そしてあなたは私の代わりにエヴァの乗った」
「ぼくはそのために呼ばれて来たんだし……」
改めて言われると恥ずかしい。
ぼくはむしろみんなに認めてもらいたくて乗っていたのだったから。

「エヴァに乗らない、パイロットを辞めるということも出来たわ?」
「実際そうしようとしたこともあったしね」
辞めなくて良かった。もし辞めてたら今の生活はなかったはずだ。
「それでも戻ってきてくれた」
「なんで戻ったのか、ぼくにも判らない。気になっていただけなんだ、みんなが」
戻ってきたときのことを思い出す。
戻れときっかけをくれた人は、もういない。


525:無題
07/11/25 04:43:39

「あなたは強い人だわ。だから同じことはしない」
身体と手をしっかり持ってぼくはゆっくりと彼女を立ち上がらせた。
「君こそ命をかけて何度もぼくを守ってくれた」
彼女は視線を落とした。
「……私はあのとき消えたかっただけなの。強くなどないわ」
「そのおかげで今があるし、ぼくは君と生きていられる」
落ちた視線がぼくに戻る
「綾波、今もそう思う?」
ぼくはあのときの呼び名で彼女に聞いた。
「いいえ」
彼女は頭を振り、彼女は微笑んだ。
「もうしない、……いえ、出来ないわ」
その手は大きなおなかを愛おしそうに撫でていた。

526:無題
07/11/25 04:52:20
RS総合スレで最初のほうにレイ不妊症説っていうのが出てて、
ついかっとなって考えて書いた。
反省はしてない。

つか二人の子ども出来てラブラブってのも見てみたいと思って書いてみたんだけど
この手のモノは不慣れなんでいまいちかも。
スレ汚しスマンです。

>>517
楽しみにしてるよ。



527:無題
07/11/25 05:59:06
>>526
LRSね。LRS総合スレッド5.0。
RSってなんだ、一体。

ラブラブはやっぱ書いてて恥ずかしいなぁ。あぁ。
色々粗が……。

528:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 02:48:42
GJです

529:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 01:32:02
520続き
綾波との新婚生活2日目。

ミサトさんやアスカに入籍したことをしらせた。
一応母さんのお墓にも行っておいた。
そして二人で暮らすには足りない食器や寝具を調達するためにホームセンターへいった。
布団、布団カバー、お皿、お茶碗…、様々なものがカゴへ入っていく。
すると綾波はカップ売り場の前で足をとめた。
「綾波?」
「…」
「…?」
近くまで行くとそこには可愛らしいピンク色のマグカップと、色違いの青のマグカップがあった。
「これ…欲しいの?」
「…なにか、二人で同じものが欲しいの。」
「夫婦茶碗みたいな?」
「そう。」
「じゃぁこれ、買おう。」
「いいの?」
「綾波がそう思ってくれてるのは嬉しいし、マグカップは何個あってもいいだろ?」
「…嬉しい。」

綾波は少し頬を紅く染めてはにかんだ。
マグカップ2つでこの笑顔を見ることが出来るなら安いもんだと、心のなかで呟いた。



530:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/05 02:18:21
投下きてた!
ほのぼのしてて良いなー
喜ぶレイが可愛い

531:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/09 18:34:14
ここはまったりしてるな

532:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:13:00
フロイライン・リボルテックの綾波さんをAmazonで予約するシンジ君

533:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 12:52:51 Wj2hmMDa
良スレ発見!!

534:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 08:49:14
今だけの平穏を楽しんでおけ、我は帰ってきた。



荒野へと変えてやる!

535:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 05:59:52
ほしゅ

536:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/03 02:42:59 VtbzJfUy
あげ

537:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 11:48:48
「碇くん、4−4は?」
「0」
「何を言うのよ・・・」

あばばばばばばばばばばばば

538:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/12 08:16:50
さてさて保守

539:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/15 16:30:02
保守

540:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/20 18:33:06
死守

541:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 14:43:33
職人期待age

542:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 18:42:18
母親のクローンと結婚するの?

543:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/22 00:23:03 om1w+W/S
わたしの考えではクローンも育ち方や環境によってオリジナルとは異なってくるんじゃないかと。レイはレイであると信じる!

544:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/24 07:35:06
死守

545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 21:36:12
守護

546:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 22:26:16 x9Spqhkr
シンジ「レイあのさ、えっと、お願いがあるんだけど・・・」
レイ「何、あなた」
シンジ「あのさ、あの・・・裸にエプロンしてくれないかな」
レイ「・・・命令であればするわ」

547:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/01 00:34:32
>>546
いいねいいね

548:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/06 09:07:18
死守

549:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/11 09:42:34
「なにしてるの?」
「古い荷物の整理よ」
「へぇ、第一中の制服だね。レイ、まだ持ってたんだね」
「・・・これは大事な思い出だから」

「あ、お願いがあるんだけど、いいかな?あ、綾波」
「そう、そういう事なのね。碇君」

十分後

「碇君。これでいい?」
「まだ着れるんだね・・・いや、これは・・・綾波ぃ!!」

3日後

「あのさ、プ、プラ・・・」
「プラグスーツは持ってないわ」
「そうだよね、機密の塊だものね・・・退役後に持ってたらおかしいよね」


550:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/11 12:43:37
「でも、碇君が望むならなんとかするわ」
「えっ!?でもどうやって・・・」

十分後

「透明プラグスーツよ。碇君。これでいい?」
「あ、綾波・・・」

551:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/14 19:56:50
バカスw

552:sage
08/02/19 01:37:36 jXdU1rh+
誰か話をしてくれないか。

553:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/19 01:49:55
>>552
ドンマイwww

554:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/19 08:43:52
なんだ

555:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/19 10:04:36
>>552
どうしたの?

556:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/28 00:17:39
捕手

557:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/03 12:01:02
ほす

558:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/05 02:18:12
メタミドホス

559:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/09 08:14:48
死守

560:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/17 20:36:29
hしゅ

561:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/29 23:54:04
このスレは死なせないぞ

562:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 02:57:19
私が保守するからな

563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 18:53:29
…このスレは落ちないわ、私が保守するもの。

564:保守
08/04/12 15:21:34
保守

565:本気で保守1/3
08/04/23 00:50:41
私は幼い子供達の手を引いて廊下を歩いた。
多分ひどい顔をしているのだろう、顔見知りの看護婦も無言で道をあける。
子供達は今日は何も言わない。
幼いながらに感ずるものがあるのか、私を恐れているのかは分からないが。
ここ一週間、一睡もできない。眠る時間すら惜しい。
しかし、日常は容赦無く私を苦しめ、私から時を奪ってゆく。
妻が愛した子供達にすら優しくなんてできなかった。
今はただ、廊下が長く寒気がする。
いつもならエレベーターを待つこともせず軽々とたどり着いた場所が、
とても恐ろしく遠い場所に感じる。
そこに行かなければ、私は苦しまなくて済むのかもしれない。
つらい現実から目を背け、逃げ出してしまえば私は楽になれるだろう。
だが私は逃げない。
私達を残し先に逝く、彼女に、逃げ出す場所はどこにも無いのだから。
覚悟を決めて足を踏み出し、両手の温もりと共に最後の廊下を踏みしめた。







566:本気で保守2/3
08/04/23 00:54:40
白いベッドに横たわる妻の表情は、例える物の無い美しさだった。
ここ二月で見る度に痩せてゆき、もともと華奢だった体を更に小さくさせていたが,
凄絶な程の美しさがあった。
ここは彼女の戦場。
勝算の無い、絶望のみが支配する戦場だったが、弱気な言葉は聞いたことが無い。
すっかり細くなった手に子供達の手を握らせる。
意識を失い三日が経つが、彼女はまだ戦っていた。
今となっては広い部屋だ。
煩雑と置かれていた最新の医療器具も運び出され、壁から伸びるマスクだけが
彼女の命を支えている。私が病院に頼んだんだ。機械に囲まれ死に逝くのは悲しすぎたから。
医者が言うには、あと一時間から三時間しか残されていないらしい。
まさに科学の勝利だ。死神の訪れる時間まで予測可能なんだから。
静寂の支配する病室で、家族水入らずでその時を待った。
今までの感情が嘘のように穏やかな時間だった。


567:本気で保守3/3
08/04/23 00:56:33
「パパ、綾波ってだぁれ?」
娘が私に問いかける。私は目を覚ましそれに答えた。
「ママの事だよ。パパは若い頃、ママの事を綾波って呼んでいたんだ」
「でもお父さん。お母さんはレイっていうんだよ、なんで綾波って言うの?」
知恵の付いてきた息子は屁理屈が多い。まったく誰に似たんだか、、、。
「お母さんはお父さんと結婚する前、綾波レイっていう名前だったんだ。だからずっと綾波って呼んでた」
「お母さんを呼び捨てだったの?」
「まあ、そうなんだけどね。」
「なんで呼び捨てなの?」
「名前で呼ぶのは恥ずかしかったからかな」
「なんで恥ずかしいの?お母さんなのに」
「好きだったからだよ、お母さんの事が」
「僕もお母さんの事大好きだけど呼び捨てたりなんてしないよ、そんな事したらゲンコツじゃあすまないよ」
「ああ、そうだろうね」
しつけに厳しく、口よりも先に手が出ていた綾波のエプロン姿が思い出される。
表情は変わらず、しかしポロポロと涙だけ流しながら小さな拳を握り締め鉄槌を下している。
見るに耐えないからやめてくれって言っても聞かなかった。子供達の凹み様も半端じゃない。
それもこれからは大好きなお母さんの、綺麗な思い出になっていくんだろう。


568:本気で保守4/3
08/04/23 00:58:26
「ママはなんていってたの?」
「ん?なにを?」
「だから、パパをなんていってたの?」
「ママはね、碇君ってよんでたよ、パパのことをね」
「碇君か〜。いいなあ、パパかっこいいなあ。わたしも碇君がいいなあ。ママが起きたら碇君ってよんでもらおっと」
無邪気な子供の言葉だけれど、今はとても愛しい。
「女の子だから碇ちゃんかな。でもね、ママ、もう起きないんだよ」
言葉の意味の分かったお兄ちゃんは雷に打たれたかのようだ。
「起きない訳ないじゃん。ママ早起き一番だもん」
「ママはね、今、死んだんだ」
「しんだ?しんだの?ママ?」
「そうだよ」
「ママ、ガソリンなくなちゃったの?」
「いや、違うんだよ」
「でもパパ、ガソリン無くなったから車がしんだって言ってたよ。大きなお池に行った時いってたじゃん」
息子はボロボロに泣き出しているが、そんな事お構いなしにしゃべっている。
「ママはね、ガソリンじゃ起きないんだよ」
「じゃあ、なにがなくなったの?」
「無くなったんじゃないんだよ。」
「じゃあなんなの?なんでママもう起きないの?」
「そうだ、そうだね。パパもよく分からないけど、きれたんじゃないかと思うんだ」
「なにがきれたの?」

「ママのゼンマイが」



569:本気で保守5/3
08/04/23 00:59:03
ゼンマイという聞いた事も無い言葉だったろうが、娘はそれが手の届かないモノである事を
分かってくれたようだ。私もゼンマイなんて見た事も無い。しかし、見た事もない触れた事もない
モノが命を言葉にする時、一番合っていると思った。

「さあ、二人とも、ママにお別れのキスをしてあげなさい」
冷たくなりつつある綾波の手を離し、もはや必要のない無粋なマスクを丁寧にとりはずす。
私は小さな娘を抱きかかえ、枕元へ降ろしてやる。
「おやすみ、ママ」
「ざようだら、おがあざん」
子供達は別れを済まし、ひとしきり涙を流したあと眠りに落ちていった。
「さようなら、綾波。ありがとう、綾波」


570:本気で保守6/3
08/04/23 01:04:40
凄まじい閃光と爆炎。轟音が響き渡る。金属が砕ける音と共に何かが弾け飛ぶ。
「エヴァ零点壱号機沈黙、シンクロ率48.3%まで低下!脊椎及び左腕損傷!」
「シンジ君!パイロットは?」
「モニター問題無し。恐らく気を失いました!!」
「やっぱり年には勝てないわね。チャンスよ二人とも」
彼女の視線の先には中学生の男の子と小学生の女の子が並んで立っている。
が、すごく不機嫌な表情で口を開く。
「シンジ君って馴れ馴れしいですね。不愉快なので訂正していただけますか?」
「パパを年だなんてどの口で言うの、おばさん?」「ぐっ。」
(お、、おばさん、、この私がおばさん、、、。)ガク。ort
「遊んでいる暇は無い!急いでくれ!」
「そうですね。今は一刻を争うときですから」
「マイクOK。電源OK。ボリュームOK。準備完了」
「「せーの」」「「あ〜さひぃ〜をうけぇてぇ〜〜」」
「エヴァ再起動。シンクロ率225%突破。まだ上昇中です」「脊椎及び左腕回復」
「「〜〜のおぉとぉ〜さぁわやぁか〜〜」」「A・Tフィールド展開を確認」
「パイロット沈黙を守っています。エヴァ再起動、暴走を開始!」
(シンジ君、レイ、あなた達の子供は)
「ママー、パパを守ってー!」「お父さんも頑張ってー!」
(今日も元気ね)

あなた達は死なないわ。わたし達が守るもの

第三新東京市、今日も真夏日炎天下






571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/23 01:07:01
長文、乱文すまん。俺なりに精一杯やった。悔いはない。

572:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/23 01:13:14
>>571

綾波死亡は悲しいな
でもエヴァの中で生きてるなら……
次はハッピーエンドで頼む
これは切実な願いだわ

573:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/23 20:02:32
てst

574:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/23 20:03:27
やっと書き込めた。
こんどはもっと明るいのにします

575:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/03 03:22:50
>>571
乙。悲しいけどさわやかなラストだ。

576:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/04 15:50:13
保守しつつあげ

577:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/15 23:04:48
GJ!!
しかしシンジのモノローグでの一人称が「私」なのに激しく違和感

578:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/15 23:58:18
大人になっただけだろ

579:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/16 00:06:29 jWhHqqe1
URLリンク(pyrenees.k-free.net)

綾波マジかわいいよ!

580:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 14:09:49
投下途切れてるから駄作だけど投下


結婚以来、彼女は少し体重が増えた。腰のラインが、大人の女性らしい
曲線美を備え、胸も少し大きくなった。もともとが痩せ気味だったし
とてもいいと思う。実際、独身時代の彼女の食生活ときたら、粗食で
少食で偏食で、そりゃひどいもんだった。だから結婚以来僕は、彼女の
食生活を矯正すべく奮闘した。偏食はいまだに直らず肉が苦手だけど
乳製品や卵を中心にしたメニューを工夫した甲斐があって、かつての
少食から、どうやら人並みの量を食べられるようになった。しかし…
「…あの、碇君」
「何、綾波?」
「…このスパゲティー、バターやクリームが多すぎると思う」
「そう?そんなに使ってないけどな。綾波って、乳製品は苦手だった?」
「…苦手じゃないけど…」
「いままでは美味しいって言ってくれてたでしょ?どうしたの急に」
「……だってわたし、あの…太ったから」
目を伏せて、やっとの思いで言う彼女。
「違うよ綾波。太ったんじゃなくて、痩せすぎから普通になったんだよ」
「…でも…」
「ダメだよ。僕が結婚以来、料理を工夫してきたのは綾波を太らせるため
だったんだから」
「…ひどい、碇君」
「ひどくないよ。だいたい、昔の綾波の食生活がひど過ぎたんだ。あの
頃の綾波は、痩せてて色白過ぎて、見るからに不健康そうだった。最近
ようやく顔色も良くなったし、ふっくらして健康そうになった。綾波の
場合、美容より、まず健康を考えなきゃ」
「…そう、かな」
「それに、胸も大きくなったしね」
「…バカ」
彼女は僕をぶつ真似をする。以前は、そうしたボディランゲージ
なんか無縁だったのに。

581:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 14:10:52


「それにさ。最近、綾波っておいしそうにご飯食べるよね。最初に
会った頃は、購買のパンを義務的に口に入れるだけだったのに」
「…そうね。あの頃は、仕方なく食事してた。食欲が無ければ
一日何も食べないこともあったの。食事が待ち遠しくなったのは
碇君と結婚してから」
「よかった。安心したよ」
「…ねぇ、碇君。以前に約束したわ。料理を教えてくれるって」
「そうだね。そろそろいいかも」
「…そろそろ?」
「だって、美味しさが分からなきゃ、美味しいものは作れないだろ?」
「…そうか。そうね…わたし、碇君にいっぱい美味しいものを作って
太らせてやるから」
「勘弁してよ」
「…覚悟なさい」
そう言って笑う彼女は、やっぱり昔より健康そうで、幸福そうだった。

582:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 17:56:04
うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
>>580-581GJ!!!!!

583:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 22:38:44
LRSスレのポチャ波ネタからの派生かな

GJ

584:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 22:55:59
>>580
>>581
いい!!

585:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 23:04:54
おっと見てる人はいるんだな
じゃあ俺も投下してみる
このスレの頭であった呼び方ネタ
こういうの書くのはずいぶん久しぶりなんで大したもんじゃないしネタもベタいけどそこは勘弁してくれ

586:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 23:06:05
 最近、機嫌が悪いらしい。
 綾波はもともとそれほどはっきりと感情を出す方ではないけど、付き合ってみると微妙な表情の
変化で気付くことはできる。ここ最近、綾波は非常に機嫌が悪い。
さてようやくそれに気付いた僕だけど、それが何故なのかはさっぱりわからなかった。喧嘩らしき
ものはしてないし、アスカ絡みの変なトラブルも記憶に無い。

「ねえ」
「…………なに」
「なんか、僕怒らせるようなことしたかなあ」
「…………」

 返事が無い。綾波は僕には嘘を付かない(少なくとも、僕が知る範囲で僕に嘘をついたことはな
かった)ので、してないならしてないという。答えが無い、ということは答えたくない、という意思表示
であり、即ち肯定ということだ。

 にんじんの皮を剥きながら、僕は首を捻った。

 今日は前から約束していた、綾波に料理を教える日だ。綾波は、料理が…………あまり上手では
ない部類、だということを自分で非常に気にしているらしく、結婚にあたり料理を覚えたいと言ってい
た。家事くらいするよ、と言ってはみたが、そこは妙に頑なに料理を覚える、の一点張りだった。そこ
まで意地を張る綾波というのも珍しく、そこがまたかわ……いやそんなことはどうでもいいんだけど。

 とりあえず無難にカレーから、ということで、綾波は神妙な顔つきでキッチンに立つ僕の横で立って
いるわけなんだけど、ふと気付くとじとっと睨まれている、ような気がして、あまり集中できない。

「で、いいかな綾波。こうやって皮を剥いたら……」

 綾波に顔を向けると、やっぱり睨んでいた。ちょっとの間視線を合わせた後、すっと目を逸らす……
非常にわざとらしい。

587:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 23:08:20
「ねえ、やっぱり怒ってるよねえ」
「そう?」
「いや、あのさあ」

 僕はちょっと真剣な顔になって、綾波に向き直った。

「怒ってるのはいいんだ、何か僕が怒らせるようなことをしちゃったんなら。でもさあ、
どうして怒っているのか教えてくれなきゃ、何もできないじゃないか」
「…………」
「綾波!」
「…………」

 今、何かに反応した。ぴくっと、眉のはしっこが上がった……ような気がする。
 ……よくよく見れば、ぷくっと頬がふくれている……?

 しばらく黙っていたが、綾波はぽそっと呟いた。

「…………あやなみ」
「ん?」
「名前…………」
「な……まえが、どうかした?」

 かすかな苛立ちを、軽くひそめた眉にこめて綾波はさらに呟いた。

「結婚するのに、あやなみ?」

 …………ようやく気が付いた。そういうことか。ミサトさんか誰かにからかわれ
たのだろうか。言われてみれば、ずっと苗字で呼んでいたけど確かにこのまま
というわけにはいかない。
ただ……

588:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 23:09:17
『レイ』

と実際に発声しようとしてみて改めて思う。こいつはなかなか恥ずかしいぞ、今更だけども。
いやいや照れているわけにもいかない。レイ、レイ、レイ。うーん、馴染まない。

 と、そこでまた別のことに気が付いた。

「で、でもさあ、僕のことだってまだ『碇君』だろ」

 綾波もまた、はっとした表情になった。綾波だって、未だに僕を名前で呼んでくれたことは
ない。これまた今更な話なんだけど。

 綾波は、しばらく難しい顔で考え、何回かぱくぱくと口を開くが声は出ず、ということを繰り
返していた。
 綾波はなんて呼ぶだろう?アスカみたいに『シンジ?』……ないな。『シンジ君』……あたり
だろうな、無難なとこでは。いやでもこれも照れるな。

 綾波は意を決したようで、ついに僕に向かって呼びかけた。

「……シンジさん」

 うわっ…………こ、これは。
 綾波は軽く頬を染めながらも、何故か睨むような表情で僕を見ている。
 想像以上の破壊力で、おそらく僕の顔も赤くなっているに違いない。
 しかし綾波の努力を無にする訳にもいかない。綾波……じゃない、レイも微妙に期待の篭っ
た目で返答を待っている。

「レ、レイ」

589:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/18 23:10:19
 舌がもつれてしまったが、綾……レイは満足したようで、赤い顔のまま嬉しそうに頷き、
珍しく満面に笑みを浮かべた。それはとても可愛い表情で、もうそれだけで剥きかけの
にんじんや流しっぱなしの水道やそもそも料理を教えるだとかはなんだかどうでも良く
なってきて、もう一度囁くように「レイ」と呼びかけるとどちらともなく距離が縮まってきて

 バダン!
「よーやっとるかねー! カレー出来たぁーん?」
 という声で二人の距離は3cmから3mに広がった。部屋に入ってきたミサトさんは部屋
に漂う妙な空気に気付きもせず(わざとかもしれないが)、レイに近寄り「どお?どお?」
と尋ねだした。レイは内心どう思ってるかは分からないが、表面的には曖昧な笑みを浮
かべて相槌を打っていた。
 僕はため息をつき、落ちていたにんじんを拾い上げる。
「まだ全然出来てませんよ、1時間はかかりますからミサトさんは部屋で待ってて下さいよ」
「あらお邪魔?そりゃ二人っきりでイチャイチャしたいのは分かるけど」
「そっ、そんなことないですよ! じゃあそこで待っててください、すぐ作りますから……
綾波、そこのジャガイモとって」
「…………」
 ちょっと反応が遅れた。予想通り、呼び方を元に戻したのが不満らしい。僕はミサトさん
に気付かれないように、そっと綾波の耳に囁いた。
「まだ恥ずかしいからさ、結婚するまではあの呼び方は二人きりのときだけで、ね」

 それを聞いたレイは、満足そうに頷いてくれた。

590:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/19 04:06:39
イイヨーイイヨー

591:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/19 18:03:02
いいな、また賑やかになってきた
GJ

592:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/19 18:09:24
夫婦設定だと難しいな
この二人の結婚生活はハプニングなさそうで

593:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/20 03:32:34
すまん>>580-581が好評だったんでもう一本書いた。
見逃してやってくれ


「パパー、おきなさいー」
「日曜日だから、もう少し寝かせてよアイ」
「だめー、おきてー」
「わかったわかった、起きるから」
娘のアイが僕を起こしに来た。この子ももう五歳。子供が育つ
のは早いものだ。アイに手を引っ張られてダイニングに行く。
「ママー、パパおこしたよー」
「あらアイちゃん、よく出来たわね…おはよう、シンジさん」
「ああ、おはようレイ」
「早く顔洗ってらっしゃい」
「かおあらってらっしゃいパパ」
「わかったわかった」
妻もすっかりエプロン姿が板についた。子供を持ってから
物腰にも柔らかさが出て、ますます美しくなった。

「「「いただきます!」」
今日の朝ごはんは、葱と豆腐の味噌汁、イカと大根の煮付け、
だし巻き卵にしらすおろし。妻はすっかり和食党になった。
肉や油っ濃いものや刺激物が苦手な彼女が和食に走るのは
むしろ当然かも知れない。
「あ、この煮付け、味が染みてておいしいね」
「そう、よかった」
「料理うまくなったなぁレイ」
「…ありがとう」
嬉しそうに目を伏せる妻。彼女はいつまでも初々しい。

594:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/20 03:33:32


「パパー」
朝食を終えてリビングに行くと、早速アイがじゃれついてくる。
妻の青い髪と僕の黒い瞳を受け継いだこの子は、とにかく元気
いっぱいの明るい子だ。アイを抱っこして、一緒にテレビを見る。

「…お茶入れたわ」
朝食の後片付けを終えた妻が紅茶を持って来た。アイには
大好きなココア。
お気に入りのアニメ番組が始まると、アイは僕の膝から
飛び降りてテレビにかじりつく。その隙に、僕は隣に座った
妻の手を握る。子供ができると、こんなことも中々できない。
妻が、ぽつりとつぶやく。
「…わたし、幸せ」
「僕も。最高の奥さんをもらえたからね」
「…やめて、恥ずかしい…」
アイはまだテレビに夢中だ。僕はアイの目を盗んで、レイに
キスをした。

595:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/20 19:08:20
GJですね

596:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/21 11:54:25
和食党の綾波さんいいよ綾波さん

597:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/22 02:24:49
楽しませてもらいました

598:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/03 05:25:47
保守

599:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/17 02:42:17
「碇君、まだー?お腹減ったー」
「あと5分待って、綾波」
結婚して二年。僕らは愛の結晶を授かった。出産予定日は来月。
彼女のお腹はだいぶ大きくなった。最近、家事はほとんど彼女に
任せていたのだが、もともと華奢な彼女は、大きなお腹を抱えて
立ち居振る舞いもしんどそうなので、ここ一月ほど、久しぶりに
僕が家事全般を引き受けている。
「はい、お待たせ」
「美味しそう。いただきます!」
待ちきれない、という感じで箸を取り、彼女はご飯を食べ始めた。
夕飯のメニューは、豚肉のショウガ焼き、手羽先と大根の煮物、胡瓜
とワカメの酢の物にポテトサラダ。そう、彼女が肉を食べるのだ。
妊娠三ヶ月の頃だった。テレビのグルメ番組で、画面にアップに
なった『シャリアピン・ステーキ帝国ホテル風』を見て、ぽつりと
「…美味しそう」
とつぶやいたのだ。それを見た僕はスーパーに飛んで行って、最高級
サーロインを無理して買って、シャリアピン・ステーキを作った。
彼女は、肉を一切れ切って、少し躊躇ってから口に入れた。そして
二百cのステーキを、ぱくぱくと平らげてしまったのだ!妊娠
すると体質や好みが変わるとは聞くが、まさか綾波がそうなる
とは思わなかった。以来彼女はトンカツや焼肉やハンバーグを、
ぱくぱくむしゃむしゃ食べるようになった。
もう一つの彼女の変化は、明るくおしゃべりになったことだ。
以前は、必要事項だけをぽつりとつぶやく、という感じだったのに
妊娠してからは、僕を相手に色々おしゃべりするようになった。
といっても彼女の話題は、最近読んだ本の内容とか、近所の家の
庭の花が咲いたとか、たわいのないものだったけど、僕は一生懸命
聞き役を務めた。彼女も、以前にはなかった「自我」が出て来たん
だなぁ、と感じたから。大体、彼女が「お腹減ったー」とご飯を
催促するなんて、以前なら想像もつかなかった。目の前でショウガ
焼きにかぶりつく彼女を
見て、ずっとこうならいいのにと思った。

600:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/17 02:43:09
「ごちそうさま。おいしかった、碇君」
「はい、お茶」
「ありがとう」
「……でも、たくさん食べてくれて嬉しいよ。肉まで食べられる
ようになったし」
「わたしが食べてるんじゃないもの。この子が『ママお腹空いた』
って言うからよ」
「そうかぁ。この子は食いしん坊なのかな」
「きっとそうよ」
「それに、明るくなったね綾波。以前なら、一日中一言も喋らない
なんてこともあったのに」
「それもきっとこの子のせい。きっと、明るくて元気な子だわ。
しょっちゅうお腹を蹴るもの」
「そうかぁ。おーい、パパだよー」
綾波のお腹に呼び掛けた。彼女がニッコリ笑った。
「あっ、蹴った」
「返事したのかな?」
「きっとそう」
僕は彼女のお腹に頬を寄せた。温かい。それは命の温かさ。
ふと、涙腺が緩んだ。
「…なぜ泣くの?」
「…あ、ごめん。…僕なんかがこんなに幸せでいいのかなって」
「いいの」
彼女が凛として言った。赤い瞳が、僕を真っ直ぐ見つめている。
「わたしは、碇君が不幸になるなんて許さない。あなたには幸せに
なる権利がある。わたしとこの子のために、幸せになる義務がある。
だから、幸せになって。全世界があなたを責めても、わたしは
あなたを許すから」
「…ありがとう。綾波をお嫁さんにもらってよかったよ」
「当然よ」
そう言って彼女は明るく微笑んだ。

601:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/20 01:05:50
投下乙です。

602:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/22 22:13:14
GJ!

603:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/06/28 20:53:07
干す

604:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/05 14:28:29


605:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 02:51:38
全力で死守

606:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 05:28:29
三本連続投下。今回はちょい痛注意


ピンポーン

来たな。僕はアイの手を引いて玄関へ向かった。
プシュー
「…父さん、いらっしゃい」
「うむ。久しぶりだなシンジ」
「おじーちゃん!」
「おおアイ、こんにちわ」
父さんはアイを抱き上げる。かつての鬼司令も、孫娘の前では
甘いおじいちゃんだ。
「…レイは?」
「料理中だよ。『碇司令』に自分の腕前を見てもらうんだって
大張り切りさ」
「…そうか」
父さんをリビングに案内し、ソファーに座らせる。その膝に早速
アイがよじ登って甘える。
「いらっしゃい、お義父様」
「うむ、邪魔しているぞレイ」
「シンジさん、ちょっとお願い」
「うん」
キッチンに行き、料理を運ぶのを手伝う。
今日のメニューは、初鰹のタタキ、木の芽田楽、菜の花の辛子和え、
白魚の吸い物、白瓜の浅漬けに、ちょっとビール。ご飯は菜飯。
「…御馳走だな。レイが一人で作ったのか?」
「最近、腕を上げてね彼女。今日も『あなたは手出し無用よ』って」
「…そうか。たいしたものだ」

607:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 05:30:29
彼女が吸い物を盆に載せて現れた。
「…さあ、召し上がれ」
父さんと僕は早速箸を取った。アイはママの隣で子供用メニュー。
「…うん、美味い。たいした腕だ」
「…よかった」
微笑むレイ。実際、彼女の料理の腕の向上は著しい。父さんの箸も
進むこと。最後の菜飯まできれいに平らげた。

食事の後も、大好きなおじいちゃんにじゃれついていたアイも、
はしゃぎ疲れたのか、おじいちゃんの膝の上で眠ってしまった。
「あらあら…」
レイが立ち上がり、父さんの膝からアイを抱き取り、子供部屋に
連れて行く。父さんが呟いた。
「…レイは、お前の母親に似てきたな…」
「やっぱり、そうなの?」
「まあ、料理の腕はレイが上だがな。ユイは、料理は苦手だった…」
「そうか。母さんがいなくなったのは、ちょうど今のレイぐらいの歳か…」
「そうだ。もちろんユイとレイは別の人格だが、ふとした表情が
似ているな…」
「そうなんだ」
「…レイは、遅いな」
「見て来るよ」

「…どうした」
「ごめん父さん。レイ、アイと一緒に寝ちゃってた。夕べから、
下ごしらえとか張り切ってたから、疲れたんだね。起こさずに来たよ」
「うむ、その方がいい。シンジ、お前に少し話がある」
「話?」
「…レイのことだ。といっても、前のレイ…二人目のことだ」

608:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 05:32:05
「二人目…父さんの眼鏡を持っていたレイだね」
「うむ。彼女のことで、私は懺悔せねばならんのだ」
「懺悔って…」
「…私は一度だけ、彼女を抱いた」
「……!」
「分かっていたのだ。レイはユイではないと。だが、ユイと同じ顔で
微笑むレイを見た時、私は自分を押さえられなかった」
「………」
「彼女は私を拒まなかった。だが、全て終わった後、彼女の視線に
私は耐えられなかった。私はその時悟った。ユイは私の元を去り、
レイも私のものにはならないと。結局最後はそうなった。彼女は
お前を守って、死んだ」
「…父さん」
「…彼女が自爆した時、正直ほっとした。自分の罪を直視しなくて
済むからな。今のレイは三人目。生まれた時からお前のもののレイだ。
だが、歳を重ねるごとに悔恨の念は募る。彼女が自爆したのは自分の
せいではないのかと。お前は聞きたくない話だったかもしれん。
だが、私はお前に話さずにはいられなかった。…すまん」
廊下から、すすり泣きの声が聞こえる。慌ててドアを開けると、
レイがいた。
「ごめんなさい…立ち聞きする気はなかったの…」
僕は彼女を抱きしめた。彼女は、しばらく僕の胸で泣いたあと、
「…もういい」と言って顔を離した。
「…ごめんなさい。前の私…二人目の彼女が可哀相で…」
父さんが目を伏せた。僕は聞いた。
「…その、レイ、分かるのかい?二人目の気持ちが…」
「…不要な記憶は引き継いでいないから分からない。でも、彼女が何か
この世に心残りがあったのは感じていたの。それが何か、今わかった」
僕は彼女をソファーに座らせた。

609:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 05:34:42
「…二人目の彼女は、『碇司令』を慕っていたわ。だけど、それは娘が
父親に抱く感情だったの。でも『碇司令』から求められた時、彼女は
それを拒めなかった。だって、彼女には何もなかったから。相手を
受け入れる以外に、自分の気持ちを示す方法を知らなかったから」
「………」
「でも彼女は、男女の感情を感じている人がいたわ。それはもちろん
『碇くん』。その人への気持ちを示すには、命を投げ出すほかなかった」
「…すまん。シンジ、お前は私をどうしたい…?」
「…分からない。もしあの頃それを知っていたら…綾波が死んだのが
父さんのせいだなんて考えたら…父さんを殺そうとしたかもしれない」
隣に座ったレイが、僕の腕をギュッと抱いた。
「…でも、今は分からない。もし今、僕のそばからレイがいなくなったら
…自分がどうなるか、分からない。そこにレイと同じ笑顔を浮かべる
女の子が現れたら、その子に何もしない自信はない」
「…シンジさん、私、どこにも行かないから。ずっと一緒だから」
「うん…ありがとう」
レイは顔を上げ、凛として話し始めた。
「ありがとうございます、お義父様。正直に打ち明けて下さって。
二人目の彼女の心残りは『自分の気持ちを知ってほしい』ということ。
『碇司令』を慕う気持ち、『碇くん』を愛する気持ち。それを知って
欲しかった。今、それを知ってもらって、彼女も喜んでいますわ」
「…分かるのかい、レイ?」
「彼女はここにいるもの」
そう言って、レイは胸を押さえた。
「だからもう、罪悪感に囚われるのは止めて下さい。今、お義父様が
正直に告白して下さったことで、彼女は『碇司令』を許しましたから」
「…すまん」

610:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/10 05:35:38
その夜レイは、いつになく激しく僕を求めた。僕も、その気持ちは
同じだった。お互いを強く確かめ合わずにはいられなかった。
僕らの抱えた過去の重さに押し潰されないために抱き合った。
終わったあと、彼女の蒼銀の髪を撫でながら言ってみた。
「ねぇ、レイ」
「…なに?」
「そろそろアイに弟か妹を作ってあげたいね」
「…そう、そうね」
レイがやっと微笑んでくれた。
僕らに必要なのは、未来だから。過去の重さを振り払うには、より良い
未来に向かって行くしかないから。

「…ありがとう、シンジさん」
「…レイ」
「ありがとう、ここにいてくれて。あなたとだから、私は進んでいけるの」
「それは僕のほうだよ。どうしようもなく駄目な奴だった僕が、今まで
何とかやって来れたのは、君がそばにいて『あなたは駄目じゃない』って
言ってくれたおかげだよ。君が僕を信じてくれたから、僕は自分を
信用する気になったんだ」
「だって、あなたは駄目じゃないもの」
「…ありがとう」
僕はレイにキスをした。大丈夫、僕らは明日からも進んでいける。
【終わり】

611:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/11 10:52:38 9qqTLq7+
投下乙

痛い話と承知で読んだけどやっぱゲンレイは…orz

612:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/11 11:11:44 z5CEum7n
ゲンレイとかやめてくれ(´Д`)ウェ

ゲンドウはレイに手を出さなかったからいいのに……

613:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/11 12:03:43
すまん。だが後悔はしていない。書きたかったのはゲンレイではなく
「シンジとレイの、過去の克服」だ。

614:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/11 16:18:45
女のためにゲンドウを殺そうとするシンジは萎える

シンジとレイというか、ゲンドウが過去を克服する話じゃね?

615:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 04:45:18
> 女のためにゲンドウを殺そうとするシンジは萎える

(゚Д゚)ハァ!?意味がわからん。

616:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 08:45:12
>>615
何がどう意味わからん?

617:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 08:57:48
>>616
髭眼鏡なんかどうでもいい存在ってこと。邪魔なら殺すだけ。

618:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 09:36:02
> 女のために
クソ親父ブチ殺すには十分な理由だろ

619:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 14:46:24
お前らならまだしもシンジはそんな奴じゃねーよ本編見ろw
ちと自己投影しすぎだぞ

620:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 15:20:54
つか本編のヘタレシンジじゃレイもアスカも嫁に出来そうにない訳だが

621:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 15:38:36
>620
アスカが嫁とか想像したくもない
萌えオタ氏ね

622:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/12 15:44:02
いいから設定厨はスルー汁
なにもかも本編通りでFF書けるわけない罠

623:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/14 13:34:42
ゲンドウに対する侮辱なFFは此処ですか?

624:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/19 21:02:53
補充

625:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/22 05:31:56
四本目。今度は痛くないよ。

「あの、碇君…」
「なに、綾波?」
「あの、私…妊娠したみたいなの」
僕は、かじりかけのトーストを床に落としてしまった。彼女を問いただすと、
今まで一日の狂いもなく、28日周期で来ていた生理が来ないので、妊娠検査薬
を使ってみたら陽性だったと。
僕は慌てて会社に休みの電話を入れ、彼女を車に乗せて、ネルフの診療所に
飛んで行った。

案の定、診療所でもちょっとした騒動になった。彼女は結局ほとんど丸一日、
検査責めになった。その結果『間違いなく妊娠。受精卵はすでに子宮に着床し、
安定している』と診断された。

僕らが結婚する時、リツコさんから『彼女は子供を産めない』と宣告されていた。
僕の母の遺伝子を持つ彼女との結婚が黙認された理由の一つはそれだった。
僕も、いずれは養子を取ろうかと考えていた。
僕の精子を受精した彼女の卵子は、細胞分裂を開始せずに死滅するはずだった。
しかし、なぜかその受精卵は細胞分裂を開始し無事に子宮に着床して、元気に
発育中だという。

ネルフ内部でも議論が持ち上がった。リリスの欠片を持つ彼女がどんな子供を
産むのか。人類にとって危険な存在になる可能性があるのではないかと。
議論は紛糾したが、作戦部長の葛城三佐が『リリスの欠片を持つ綾波レイは
人類の味方だった。ならばその子も、人類の味方になりうる』『どんな理由で
あれ、新しい生命を殺す権利が我々にあるのか』の二点を主張して突っ張り
通してくれたらしい。ミサトさんには、いつまで経っても世話になりっ放しだ。

626:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/22 05:33:46
その後も彼女は検査責めだった。出て来る検査結果は、胎児は順調に発育中、
懸念された先天的異常も皆無、母子共にきわめて健康、というものだった。
もう臨月。彼女のお腹は、はっきりそれと分かるほど大きくなった。

僕も正直、迷いがなかったと言えば嘘になる。使徒云々というより、彼女が
母さんの遺伝子を持つ、という事実が僕を迷わせた。だけど、彼女の迷いの
ない態度が僕を勇気付けた。妊娠の診断を聞いた彼女は、僕に軽やかな笑顔を
向けて言った。
「私、産むわ。あなたの子供だもの」
その笑顔を見て、僕も決意した。たとえどんな子が生まれようとも、その結果を
全て引き受けようと。何が何でも彼女と子供を守るのが僕の義務だと。

予定日の数日前から入院していた彼女に、陣痛が始まった。僕は彼女の手を
握る。陣痛の間隔がだんだん狭まる。
「そろそろ分娩室に行きましょうか」
看護士さんが声を掛ける。「待ってるから」
「うん」
僕も立ち会いを申し込んでいたのだけど、彼女は骨盤が小さくて、帝王切開の
可能性もあるということで、僕は分娩室前で待機になった。

627:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/22 05:35:09
「…どう、シンジ君?」
「あ、リツコさん。難産みたいですね…」
「そう…」
隣に座ったリツコさんが、僕のほうをチラリと見る。
「どうしました?」
「シンジ君…一つ、あなたに言わなきゃいけないことがあったの。でも、
なかなか言えなくて…」
「…彼女のことですか?」
「結論から言うわ。妊娠したのは、レイの中のリリスよ」
「!…それって」
「碇ユイのクローンに妊娠能力はない。ならば受胎したのはリリス。すぐ出る
結論ね」
「……それって、どういう…」
「分からないわ。使徒が子供を産むなんて。しかも、ヒトであるあなたの子。
使徒とヒトの子供なんて、想像もつかない」
「…そんな!」
「…ごめんなさい。言えなかったの。シンジ君とレイの笑顔を見たら、とても
言えなくて。それに、使徒そのものの子供なんて、表沙汰になったら世界中が
大騒ぎよ」
「そんな…そんな」

オギャー オギャー

元気な産声。僕と、使徒リリスの子。
ドアが開いて、看護師さんが手招きする。僕は覚束ない足取りで分娩室に入る。
「可愛い女の子ですよ」
赤くてしわくちゃ。微妙に青みを帯びた産毛を除けば、まるで普通の新生児。
抱かされた赤ん坊をリツコさんにも見せたけど、無言。僕は子供を看護師さんに
渡すと、綾波に歩み寄った。

628:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/07/22 05:36:58
「お疲れ様。大変だったね」
「…大変だったわ」
そう言って微笑む彼女。今までの中で、最高の笑顔かもしれない。その笑顔に
勇気付けられて、言おうと思っていた言葉がすらすらと出た。
「ありがとう、綾波。君を奥さんにしてよかったよ」
「…ありがとう。私を奥さんにしてくれて」


「…普通の赤ん坊でしたね」
「…そうね」
僕とリツコさんは、一足先に病室で綾波を待った。
「あの子が、使徒の子だなんて、僕にはとても…」
「私にもわからないわ、シンジ君。他の使徒ならともかく、リリスは万物の母。
人類リリンはリリスの子孫。ひょっとしたらあの子は、100%人間の可能性も
有り得るわね」
「あの…綾波にはどう言えばいいんでしょう」
「…たぶん何も言う必要はないわ。おそらくレイ自身は気付いてる」
「綾波が…?」
「だって、彼女はリリスだもの。碇ユイの遺伝子を使って再構成された肉体は
仮のもの。彼女の本体はリリスだもの」
「でも僕には、綾波がそんなとてつもないものだとは、どうしても思えなくて。
純粋で、甘えん坊で、ちょっとヤキモチ焼きで。とても可愛い奥さんの彼女が
使徒リリスだなんて…」
「…渚君も、純粋だったわね」
「!」
「…純粋でない生き物って、人間だけなのかもしれないわ」
「………」
「ねぇシンジ君。こんなこと言っておいて何なんだけれど、レイには今まで
通りに接してあげて。だってあの子は、今日突然リリスになった訳じゃないし」
「…もちろんです。彼女の正体が何であれ受け入れると決めて、彼女と付き合い
始めたんですから。さっきも、彼女の笑顔を見たらとても幸せそうで、あの
笑顔を守りたい、とつくづく思いました」


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